JP2012166682A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関を駆動力源とする従来の車両と同様の変速感覚でマニュアルシフトを実行することができるハイブリッド車の制御装置を提供する。
【解決手段】駆動力源として内燃機関および電動機を有するハイブリッド車両であって、少なくとも前記内燃機関の出力トルクを複数の変速比で変速して駆動輪へ伝達させる変速手段と、前記変速を運転者のマニュアルシフト動作に基づいて実行するマニュアルシフト手段とを備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記マニュアルシフト手段による前記変速を実行する場合に、前記電動機の出力特性を前記内燃機関の出力特性に基づいて設定する出力特性制御手段(ステップS6,S7,S8)を設けた。
【選択図】図1
【解決手段】駆動力源として内燃機関および電動機を有するハイブリッド車両であって、少なくとも前記内燃機関の出力トルクを複数の変速比で変速して駆動輪へ伝達させる変速手段と、前記変速を運転者のマニュアルシフト動作に基づいて実行するマニュアルシフト手段とを備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記マニュアルシフト手段による前記変速を実行する場合に、前記電動機の出力特性を前記内燃機関の出力特性に基づいて設定する出力特性制御手段(ステップS6,S7,S8)を設けた。
【選択図】図1
Description
この発明は、走行のための駆動力源として内燃機関と発電機能のある電動機とを備えているハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、運転者の操作により選択的に変速を行うマニュアルシフトが可能なハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
ハイブリッド車両は、複数の駆動力源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関、およびモータ・ジェネレータなどの電動機を搭載した車両であり、内燃機関と電動機とが持つそれぞれの特性を生かしつつ、燃費を向上し、かつ排気ガスの低減を図ることが可能である。すなわち、駆動力源として内燃機関と電動機とを備えたハイブリッド車両は、内燃機関を燃焼効率の良い運転点で運転し、かつ車両に要求される駆動トルクを電動機で付加することができ、さらに減速時にエネルギ回生を行いその際に発生させた電力を走行のために使用することもできる。そのため、走行に対する要求を満たしつつ、燃費を向上させることができ、また排気ガスの低減を図ることができる。そのようなハイブリッド車両に関する発明の一例が特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載された発明は、エンジンと、そのエンジンの回転速度を変速して車輪に駆動力を伝達する変速装置と、それら変速装置およびエンジンを制御する駆動制御装置と、第1,第2の差動機構およびそれら各差動機構をそれぞれ駆動する第1,第2のモータならびにそれら各モータをそれぞれ制御する第1,第2の制御装置を有する変速装置とを備えたハイブリッド車両であって、車両のアクセルペダル情報に基づいて車両の目標駆動トルクを決定し、その決定された目標駆動トルクと第1の制御装置または駆動制御装置で作成された第1のモータへのトルク指令値とに基づいて、第2のモータへのトルク指令値を算定して第2の制御装置に指令を与えるように構成されている。そして、この特許文献1には、目標駆動トルクの立ち上がりに対して位相遅れ要素の時定数を設定し、その設定された時定数を取り込んだ位相遅れ要素を目標駆動トルクに付加する点、および、時定数をシフトレバーの位置情報に基づいて大小に切り換えて設定することにより、走行性重視の走行と燃費重視の走行とを運転者がそのときの状況に応じて切り換えることができる点が記載されている。
また、特許文献2には、滑らかなトルク変化による駆動軸へのトルク出力と二次電池などの蓄電装置の過放電を抑止することを目的とした動力出力装置およびこれを搭載する自動車ならびに動力出力装置の制御方法に関する発明が記載されている。そして、この特許文献2には、モータ(MG1)の出力変化が閾値以下の通常時には、比較的大きな時定数T1をモータ(MG2)のトルク制限値を設定する際のなまし処理の時定数として設定し、モータ(MG1)の発電電力が急減することにより出力変化が閾値より大きくなったときには、比較的小さな値の時定数T2をモータ(MG2)のトルク制限値を設定する際のなまし処理の時定数として設定する点が記載されている。
また、特許文献3には、原動機と電動機とを備えて駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、駆動軸に出力すべき要求動力を設定し、その設定された要求動力に基づいて原動機の運転状態を設定し、その設定された運転状態で原動機が運転されるように原動機を制御し、その原動機の制御に伴い駆動軸から出力される動力に基づいて要求動力が駆動軸に出力されるように電動機を制御するとともに、要求動力が増大する過渡時における原動機の制御の応答の速さを抑制する遅れ制御を行なうように構成された動力出力装置に関する発明が記載されている。そして、この特許文献3には、電動機へ電力を供給する蓄電手段の蓄電状態に基づいて前記遅れ制御による遅れの時定数を設定すること、および、蓄電手段の蓄電量が大きいほどその時定数を大きく設定することが記載されている。
そして、特許文献4には、内燃機関と、動力を入出力可能な第1電動機と、それら内燃機関の機関軸と第1電動機の回転軸と駆動輪に動力を伝達する駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段と、駆動軸に動力を入出力可能な第2電動機と、各電動機との間で電力をやり取り可能な蓄電手段と、駆動軸またはその駆動軸に接続された所定の軸の回転速度を取得する回転速度取得手段とを備えたハイブリッド車両を制御の対象として、(a)回転速度取得手段により取得された回転速度を用いて導出される車両進行方向の実加速度と、駆動軸に出力すべきトルクから推定される車両進行方向の推定加速度との差に基づいて路面勾配を算出し、(b)複数の仮想シフトレンジの中から、算出された路面勾配に対応した仮想シフトレンジを勾配起因シフトレンジとして設定し、(c)駆動軸または所定の軸の回転数と回転速度取得手段のサンプリング間隔とに基づくエイリアシングが発生しているか否かを判定し、(d)算出された路面勾配が所定範囲内にありかつエイリアシングが発生していないと判断された場合に、勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、算出された路面勾配が所定範囲内にありかつエイリアシングが発生していると判断された場合には、制御用シフトレンジを保持し、(e)算出された路面勾配が所定範囲内にある場合に、設定された制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように内燃機関と第1,第2電動機とを制御するハイブリッド車両の制御方法に関する発明が記載されている。そして、この特許文献4には、シフトレバーを操作することにより、エンジン目標回転数と車速とに応じて決まる複数の仮想シフトレンジのいずれかが選択されて設定される構成、すなわちマニュアルシフト(シーケンシャルシフト)が可能なハイブリッド車両の構成が記載されている。
上記の特許文献1,2,3に記載されている各発明では、モータ制御における制御遅れ要素の時定数が、シフトレバーの位置情報に基づいて、あるいは、モータの出力変化の大小や蓄電手段の蓄電量の大小に応じて変更される。すなわち、上記の特許文献1に記載されている発明は、走行性を重視した走行と燃費を重視した走行との両方を可能にするために、モータ制御における制御遅れ要素の時定数を変化させて、モータの応答速度を変化させている。また、特許文献2に記載されている発明では、蓄電装置の過放電を抑制するために、モータ(MG1)の出力変化の大きさに応じてモータ(MG2)の時定数を変化させて、モータ(MG1)の発電電力の増減に応じてモータ(MG2)のトルク制限値に対する追従性を変化させている。そして、特許文献3に記載されている発明では、蓄電手段の負担が過大になることを防止するために、蓄電手段の蓄電量が大きいほど時定数が大きくなるように設定されている。このように、モータ制御における時定数を変化させることにより、モータの応答特性や出力特性を変化させることができる。
ところで、内燃機関および有段もしくは無段階に変速比を変更可能な変速機を搭載した従来の車両では、内燃機関の出力特性が変速機で設定されている変速段(もしくは変速比)に応じて増大もしくは減少された状態で駆動力が伝達される。一般に、内燃機関はその回転速度に応じて過渡的な出力が大きく異なる特性を有しているため、運転者は、走行時に変速比もしくは変速段の変化および内燃機関の回転速度の変化に応じて出力特性に差がついた変速感覚を得ることになる。一方、駆動力源として内燃機関およびモータを搭載したハイブリッド車両では、モータの過渡的な出力特性が内燃機関ほど回転速度の変化に依存しないことから、運転者が走行時に受ける変速感覚が、内燃機関のみを駆動力源とする従来の車両と異なったものになる。特に、上記の引用文献4に記載されている発明のようなマニュアルシフトが可能なハイブリッド車両においては、マニュアルシフトを実行する際の変速感覚が、従来の車両におけるマニュアルシフトを実行する際の変速感覚と大きく異なることになる。すなわち、ハイブリッド車両では、内燃機関のみを駆動力源とする従来の車両と比較して変速段の違いによる駆動力の過渡出力特性の差が小さくなり、変速段をマニュアルシフトによって制御する利点が減少してしまう。その結果、運転者の意図する変速感覚を得られない、もしくは運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。
そのような課題に対して、例えば、上記の特許文献1,2,3に記載されている各発明のように、モータを制御する際の時定数を変更することによってモータの出力特性を変化させる技術を適用することが考えられる。すなわち、上記の特許文献1,2,3に記載されている構成を、特許文献4に記載されているようなマニュアルシフトが可能なハイブリッド車両に適用することにより、そのハイブリッド車両におけるマニュアルシフトの際の変速感覚を、従来の車両におけるマニュアルシフトの際の変速感覚に近似させることが考えられる。
しかしながら、前述のように、ハイブリッド車両におけるモータの出力特性は内燃機関の回転速度には依存しないことから、上記の特許文献4に記載されているようなマニュアルシフトが可能なハイブリッド車両に、特許文献1,2,3に記載されているようなモータの時定数を変更する技術を適用したとしても、ハイブリッド車両におけるマニュアルシフトの際の変速感覚を、従来の車両におけるマニュアルシフトの際の変速感覚に近づけることは容易ではなかった。
このように、マニュアルシフトが可能なハイブリッド車両において、そのマニュアルシフトを実行する際の変速感覚を、内燃機関を駆動力源とする従来の車両の場合と同様の変速感覚にするためには、未だ改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、内燃機関を駆動力源とする従来の車両と同様の変速感覚でマニュアルシフトを実行することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動力源として内燃機関および電動機を有するハイブリッド車両であって、少なくとも前記内燃機関の出力トルクを複数の変速比で変速して駆動輪へ伝達させる変速手段と、前記変速を運転者のマニュアルシフト動作に基づいて実行するマニュアルシフト手段とを備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記マニュアルシフト手段による前記変速を実行する場合に、前記電動機の出力特性を前記内燃機関の出力特性に基づいて設定する出力特性制御手段を備えていることを特徴とする制御装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記出力特性制御手段が、前記内燃機関の回転速度もしくは前記変速手段により設定される変速比に応じて前記電動機の出力特性を変更する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記出力特性制御手段が、前記内燃機関の回転速度が相対的に低い場合に、前記電動機の出力を制御する際の時定数を大きくし、前記内燃機関の回転速度が相対的に高い場合には、前記時定数を小さくする手段を含むことを特徴とする制御装置である。
また、請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記出力特性制御手段が、前記変速手段により設定される変速比が小さいほど前記電動機の出力を制御する際の時定数を大きくする手段を含むことを特徴とする制御装置である。
そして、請求項5の発明は、請求項1または2の発明において、前記出力特性制御手段が、前記内燃機関の回転速度から前記変速手段の出力回転速度を引いた差が正の値から負の値になるにつれて前記電動機の出力を制御する際の時定数を大きくする手段を含むことを特徴とする制御装置である。
請求項1の発明によれば、マニュアルシフトが可能なハイブリッド車両において、そのマニュアルシフトを実行する場合に、電動機の出力特性が内燃機関の出力特性に基づいて設定される。具体的には、電動機の出力特性が内燃機関の出力特性に近似するように設定される。そのため、ハイブリッド車両としての変速過渡時における出力特性を、内燃機関を駆動力源とする従来の車両の出力特性に近似させることができる。その結果、ハイブリッド車両においても、内燃機関を駆動力源とする従来の車両と同様の変速感覚でマニュアルシフトを実行することができる。例えば、内燃機関を駆動力源とする従来の車両におけるマニュアルシフトの変速感覚に慣れた運転者がハイブリッド車両でマニュアルシフトを行った場合であっても、その運転者に違和感を感じさせることなく、従来の車両と同様の変速感覚で、ハイブリッド車両におけるマニュアルシフトを実行することができる。
また、請求項2の発明によれば、ハイブリッド車両のマニュアルシフトを実行する場合に、電動機の出力特性が、内燃機関の回転速度、もしくは、内燃機関と駆動輪との間の変速手段による変速比(もしくは変速段)に応じて変更されて設定される。そのため、ハイブリッド車両の出力特性を、内燃機関を駆動力源とする従来の車両の出力特性に適切に近似させることができ、ハイブリッド車両においても、内燃機関を駆動力源とする従来の車両と同様の変速感覚でマニュアルシフトを実行することができる。
また、請求項3の発明によれば、ハイブリッド車両のマニュアルシフトを実行する場合に、電動機の出力特性が、内燃機関の回転速度の高低に応じて変更される。すなわち、内燃機関の回転速度が低いほど電動機の出力特性を決める時定数が大きくされ、反対に、内燃機関の回転速度が高いほど電動機の時定数が小さくされる。そのため、ハイブリッド車両のマニュアルシフトの際に、そのマニュアルシフトにより設定される変速比(もしくは変速段)に応じて、電動機の出力特性を適切に変更して設定することができる。
また、請求項4の発明によれば、ハイブリッド車両のマニュアルシフトを実行する場合に、電動機の出力特性が、内燃機関と駆動輪との間の変速手段による変速比に応じて変更される。すなわち、変速手段により設定される変速比が小さいほど(もしくは、変速段が高速段であるほど)電動機の出力特性を決める時定数が大きくされ、反対に、変速手段により設定される変速比が大きいほど(もしくは、変速段が低速段であるほど)電動機の時定数が小さくされる。そのため、ハイブリッド車両のマニュアルシフトの際に、そのマニュアルシフトにより設定される変速比(もしくは変速段)に応じて、電動機の出力特性を適切に変更して設定することができる。
そして、請求項5の発明によれば、ハイブリッド車両のマニュアルシフトを実行する場合に、電動機の出力特性が、内燃機関の回転速度と変速手段からの出力回転速度との偏差に応じて変更される。すなわち、内燃機関の回転速度から変速手段の出力回転速度を引いた差が(負の値も含めて)小さいほど電動機の出力特性を決める時定数が大きくされ、反対に、内燃機関の回転速度から変速手段の出力回転速度を引いた差が大きいほど電動機の時定数が小さくされる。そのため、ハイブリッド車両のマニュアルシフトの際に、そのマニュアルシフトにより設定される変速比(もしくは変速段)に応じて、電動機の出力特性を適切に変更して設定することができる。
つぎに、この発明を図を参照して具体的に説明する。図3は、この発明に係るハイブリッド車両の構成例であって、いわゆる2モータタイプのハイブリッド車両の構成および制御系統を模式的に示している。すなわち、この図3に示すハイブリッド車両Veは、駆動力源として内燃機関1と2基の電動機2,3とを備えており、内燃機関1の動力を電動機2と出力軸4とに分割するように構成されている。
内燃機関1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する動力機関であり、この図3に示す例では、スロットル開度などの負荷を電気的に制御することが可能な電子制御式のスロットルバルブや電子制御式の燃料噴射装置等を備えていて、所定の負荷に対して回転数を電気的に制御することにより燃費が最も良好な最適運転点に設定できるガソリンエンジンが搭載されている。以下の説明では、この内燃機関1をエンジン1と記す。
電動機2,3は、いずれも、モータおよび発電機のいずれか一方もしくは両方の機能を有する電動機であり、この図3に示す例では、モータとしての機能と発電機としての機能を兼ね備えたモータ・ジェネレータが搭載されている。以下、この実施例の説明では、電動機2,3を、第1モータ・ジェネレータ(MG1)2、および、第2モータ・ジェネレータ(MG2)3と記す。
エンジン1の動力を第1モータ・ジェネレータ2と出力軸4とに分割するための動力分割機構として差動作用のある遊星歯車機構5が設けられており、この図3に示す例では、サンギヤ5sとリングギヤ5rとの間に配置したピニオンギヤをキャリヤ5cによって自転および公転が可能に保持したシングルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。そしてその遊星歯車機構5のキャリヤ5cにエンジン1が連結され、かつサンギヤ5sに第1モータ・ジェネレータ2が連結され、さらにリングギヤ5rに出力軸4が連結されている。この遊星歯車機構5が差動作用をなすことにより、第1モータ・ジェネレータ2の回転数に応じてエンジン1の回転数が変化する。したがって、第1モータ・ジェネレータ2によってエンジン1のエンジン回転数を制御できるように構成されている。なお、出力軸4には、歯車伝動機構6、およびデファレンシャル7を介して、駆動輪8が動力伝達可能に連結されている。
一方、第2モータ・ジェネレータ3は、遊星歯車機構9を介して上述の出力軸4に連結されている。遊星歯車機構6は、この図3に示す例では、サンギヤ9sとリングギヤ9rとの間に配置したピニオンギヤをキャリヤ9cによって自転および公転が可能に保持したシングルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。そしてその遊星歯車機構9のサンギヤ9sに第2モータ・ジェネレータ3が連結され、リングギヤ9rに出力軸4が連結されている。そしてキャリヤ9cが回転不可能に固定されている。したがって、この遊星歯車機構9は、第2モータ・ジェネレータ3の出力トルクを減速して出力軸4へ伝達させる減速機構として機能している。
前述のように、第1モータ・ジェネレータ2および第2モータ・ジェネレータ3は、いずれも電動機として機能するとともに発電機としても機能することが可能な周知の同期電動機として構成されている。そして、それら第1モータ・ジェネレータ2および第2モータ・ジェネレータ3は、それぞれ、インバータ10,11を介して蓄電装置12に連結されている。すなわち、インバータ10によって第1モータ・ジェネレータ2の発電量や第1モータ・ジェネレータ2が電動機として機能する場合のトルクあるいは回転数を制御し、また、インバータ11によって第2モータ・ジェネレータ3の発電量や第2モータ・ジェネレータ3が電動機として機能する場合のトルクあるいは回転数を制御するように構成されている。
さらに、上記の第1モータ・ジェネレータ2および第2モータ・ジェネレータ3は、インバータ10,11を介して、それらの間で電力を相互に供給できるように構成されている。すなわち、第1モータ・ジェネレータ2および第2モータ・ジェネレータ3のいずれか一方により発電される電力を、他方のモータ・ジェネレータで消費できるようになっている。例えば、エンジン1の出力により第1モータ・ジェネレータ2が駆動されて発電機として機能した場合には、その第1モータ・ジェネレータ2により発電された電力を第2モータ・ジェネレータ3へ供給し、第2モータ・ジェネレータ3を電動機として機能させることができる。したがって、エンジン1が出力した動力の一部を、第1モータ・ジェネレータ2により電力に一旦変換した後、第2モータ・ジェネレータ3により再び動力に変換して、その動力を出力軸4に伝達することができるように構成されている。
そして、上記のエンジン1、および各モータ・ジェネレータ2,3の動作状態を制御するための電子制御装置(ECU)13が設けられている。この電子制御装置13には、例えば車両Veの車速を検出する車速センサ14、例えばアクセルペダルやアクセルレバーなどによる運転者のアクセル操作を検出するアクセル開度センサ15、例えばシフトレバーやシフトスイッチなどによる運転者のマニュアルシフト操作を検出するシフトポジションセンサ16、あるいは、エンジン1の出力軸の回転速度を検出するエンジン回転数センサ(図示せず)や、各モータ・ジェネレータ2,3の回転軸の回転速度を検出するためのレゾルバ(図示せず)などの各種センサ装置類からの検出信号が入力される。これに対して、電子制御装置13からは、エンジン1を制御する信号、各モータ・ジェネレータ2,3を制御する(すなわち各インバータ7,8および蓄電装置9を制御する)信号などが出力されるように構成されている。
また、この発明に係るハイブリッド車両Veは、例えばシフトレバーやシフトスイッチあるいはシフトパドルなどを運転者が操作することにより、運転者が意図する任意の変速段もしくは変速比への変速、すなわち、いわゆるマニュアルシフトが実行可能なように構成されている。ハイブリッド車両におけるマニュアルシフトについては公知の変速制御であり、それに関しては、例えば前述の特許文献4に記載されているので、ここではその制御内容の詳細な説明を省略する。
ところで、上記のようなマニュアルシフトは、内燃機関(エンジン)のみを駆動力源とする従来の車両においても実施されていた。エンジンを駆動力源とする従来の車両におけるマニュアルシフトでは、設定される各変速段(もしくは変速比)に対して、それぞれに適したエンジンの回転数が対応しているので、運転者は違和感無く変速を行うことができる。これに対して、例えば上記の特許文献4に記載されているようなハイブリッド車両においてマニュアルシフトを実行する場合には、ハイブリッド車両では各変速段(変速比)におけるモータの過渡的な出力特性の差が、エンジンの過渡的な出力特性の差と比較して小さくなる。したがって、マニュアルシフトを実行する際に運転者が受ける変速感覚が、エンジンを駆動力源とする従来の車両においてマニュアルシフトを実行する際の変速感覚と大きく異なることになる。その結果、ハイブリッド車両におけるマニュアルシフトの際に、運転者の意図する変速感覚を得られなかったり、あるいは運転者が違和感を感じてしまったりする可能性があった。
そこで、この発明に係るハイブリッド車両Veの制御装置では、エンジンのみを駆動力源とする従来の車両と同様の変速感覚でマニュアルシフトするために、以下の制御を実行するように構成されている。その制御の一例を、図1のフローチャートに示してある。このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図1において、先ず、運転者によりマニュアルシフトを実行するモードが選択されたか否かが判断される(ステップS1)。例えば、前述のシフトポジションセンサ16のセンサ値に基づいて判断することができる。
マニュアルシフトを実行するモードが選択されていないことにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、この制御を行う必要がないので、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。これに対して、マニュアルシフトを実行するモードが選択されたことにより、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進み、マニュアルシフトによって運転者が選択した変速段(もしくは変速比)Sが読み込まれる。また、現在のエンジン1の回転速度NEが読み込まれる(ステップS3)。
さらに、運転者によるアクセル操作量PAおよび現在の車速Vなどが読み込まれるとともに、それらアクセル操作量PAおよび車速V等に基づいて要求駆動力Fが算出される(ステップS4)。この要求駆動力Fは、車両Veの駆動力源全体、すなわちエンジン1および各モータ・ジェネレータ2,3に対して総合的に要求されるものであり、したがって、ここで算出された要求駆動力Fおよび上述のエンジン1の回転速度NE等に基づいて、第2モータ・ジェネレータ3に対するモータ要求出力Pmが算出される(ステップS5)。
そして、上記のステップS2,S3で読み込まれたエンジン回転速度NEもしくは変速段Sに基づいて、第2モータ・ジェネレータ3の回転制御における時定数taおよびむだ時間tbが算出される(ステップS6)。具体的には、時定数taおよびむだ時間tbが、エンジン回転速度NEもしくは変速段Sを変数とする関数によって算出される。すなわち、時定数taおよびむだ時間tbが、
ta=f(NE),tb=f(NE)
もしくは、
ta=f(S),tb=f(S)
に示すような各関数によって算出される。
ta=f(NE),tb=f(NE)
もしくは、
ta=f(S),tb=f(S)
に示すような各関数によって算出される。
時定数taおよびむだ時間tbを算出するための上記の各関数は、車両Veおよび第2モータ・ジェネレータ3の性能諸元などに基づいて予め求めておくことができ、エンジン回転速度NEもしくは変速段Sの値に応じて、第2モータ・ジェネレータ3の出力特性が変化するように設定されている。
具体的には、図2に示すように、エンジン回転速度NEが相対的に低い場合に、時定数taが相対的に大きくなり、反対に、エンジン回転速度NEが相対的に高い場合に、時定数taが相対的に小さくなるように、上記の各関数が設定されている。もしくは、選択される変速段Sが相対的に高い(すなわち変速比が小さい)場合に、時定数taが相対的に大きくなり、反対に、選択される変速段Sが相対的に低い(すなわち変速比が大きい)場合に、時定数taが相対的に小さくなるように、上記の各関数が設定されている。
図2では、変速段Sが低い場合として、例えば第1速が選択され、変速段Sが高い場合として、例えば第6速が選択された2つの事例について示しているが、第1速および第6速以外の他の変速段についても、上記と同様に設定されている。すなわち、選択される変速段Sが低いほど時定数taが大きくなるように(すなわち、選択される変速比が小さいほど時定数taが大きくなるように)、上記の各関数が設定されている。言い換えると、選択される変速段Sが減速段側から増速段側へなるにつれて、時定数taが大きくなるように、上記の各関数が設定されている。さらに言い換えると、エンジン回転速度NEから出力軸4の回転速度を引いた値が、正の値から負の値に向けて減少するにつれて、時定数taが大きくなるように、上記の各関数が設定されている。
なお、上記の具体例では、第2モータ・ジェネレータ3の回転を制御する際の時定数taおよびむだ時間tbを、エンジン回転速度NEもしくは変速段Sを変数とする関数によって算出する例を示しているが、例えば、上記に示した各関数を基に制御マップを予め設定しておき、その制御マップに基づいて時定数taおよびむだ時間tbを求めることもできる。
上記のようにして時定数taおよびむだ時間tbが求められると、ステップS5で算出されたモータ要求出力Pmに対して、それら時定数taおよびむだ時間tbによる応答遅れ処理を施したモータ要求出力Pmaが設定される(ステップS7)。すなわち、上記のようにして求められた時定数taおよびむだ時間tbに基づいて、第2モータ・ジェネレータ3の出力特性が変更されて設定される。
そして、上記のようにして求められたモータ要求出力Pmaに基づいて、第2モータ・ジェネレータ3の回転が制御される(ステップS8)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
以上のように、この発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、マニュアルシフトが可能なハイブリッド車両Veにおいて、そのマニュアルシフトを実行する場合に、第2モータ・ジェネレータ3の出力特性がエンジン1の出力特性に基づいて設定される。すなわち、第2モータ・ジェネレータ3の出力特性がエンジン1の出力特性に近似するように設定される。具体的には、第2モータ・ジェネレータ3の出力特性を決める時定数taおよびむだ時間tbが、エンジン1の回転速度NE、もしくは、マニュアルシフトにより選択される変速段(もしくはエンジン1と駆動輪8との間の動力伝達経路で設定される変速比)に応じて変更されて設定される。
より具体的には、エンジン1の回転速度NEが低いほど第2モータ・ジェネレータ3の時定数taが大きくされ、反対に、エンジン1の回転速度NEが高いほど第2モータ・ジェネレータ3の時定数taが小さくされる。もしくは、設定される変速比が小さいほど(すなわち変速段Sが高速段であるほど)第2モータ・ジェネレータ3の時定数taが大きくされ、反対に、設定される変速比が大きいほど(すなわち変速段Sが低速段であるほど)第2モータ・ジェネレータ3の時定数taが小さくされる。
そのため、マニュアルシフトを実行する際に、ハイブリッド車両Veとしての変速過渡時における出力特性を、エンジンのみを駆動力源とする従来の車両の変速過渡時における出力特性に近似させることができる。その結果、ハイブリッド車両Veにおいて、エンジンのみを駆動力源とする従来の車両と同様の変速感覚でマニュアルシフトを実行することができ、運転者に違和感を感じさせることなく、従来の車両と同様に、運転者が意図する変速感覚でマニュアルシフトを実行することができる。
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、ステップS6,S7,S8を実行する機能的手段が、この発明における「出力特性制御手段」に相当する。
なお、上述した具体例では、この発明における駆動力制御の対象とするハイブリッド車両として、内燃機関としてエンジン1と、電動機として第1モータ・ジェネレータ2および第2モータ・ジェネレータ3とを備えた、いわゆる2モータタイプのハイブリッド車両の構成を例に挙げて説明したが、例えば、エンジンと、1基のモータ・ジェネレータとを備えたハイブリッド車両であってもよく、あるいは、エンジンと、発電機能を有しないモータとから構成されるハイブリッド車両であってもよい。要は、車両の駆動力を発生させるための駆動力源として、少なくとも、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関と、モータあるいはモータ・ジェネレータなどの電動機とを備えたハイブリッド車両であって、いわゆるマニュアルシフトを実行可能に構成されたハイブリッド車両を、この発明における制御の対象とすることができる。
1…内燃機関(エンジン;E/G)、 2,3…電動機(モータ・ジェネレータ;MG1,MG2)、 9…駆動輪、 13…電子制御装置(ECU)、 14…車速センサ、 15…アクセル開度センサ、 16…シフトポジションセンサ、 Ve…ハイブリッド車両。
Claims (5)
- 駆動力源として内燃機関および電動機を有するハイブリッド車両であって、少なくとも前記内燃機関の出力トルクを複数の変速比で変速して駆動輪へ伝達させる変速手段と、前記変速を運転者のマニュアルシフト動作に基づいて実行するマニュアルシフト手段とを備えたハイブリッド車両の制御装置において、
前記マニュアルシフト手段による前記変速を実行する場合に、前記電動機の出力特性を前記内燃機関の出力特性に基づいて設定する出力特性制御手段を備えていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記出力特性制御手段は、前記内燃機関の回転速度もしくは前記変速手段により設定される変速比に応じて前記電動機の出力特性を変更する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記出力特性制御手段は、前記内燃機関の回転速度が相対的に低い場合に、前記電動機の出力を制御する際の時定数を大きくし、前記内燃機関の回転速度が相対的に高い場合には、前記時定数を小さくする手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記出力特性制御手段は、前記変速手段により設定される変速比が小さいほど前記電動機の出力を制御する際の時定数を大きくする手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記出力特性制御手段は、前記内燃機関の回転速度から前記変速手段の出力回転速度を引いた差が正の値から負の値になるにつれて前記電動機の出力を制御する際の時定数を大きくする手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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