JP2012166204A - エレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金 - Google Patents
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Abstract
【課題】 溶接時に溶融プール上に生成する溶融スラグを効率的に溶融プールから排出する。
【解決手段】 エレクトロガスアーク溶接の開先部の被溶接材表面に当接して溶接進行方向に摺動するエレクトロガスアーク溶接用摺動銅当金において、該水冷摺動銅当金の被溶接材開先部に対する面に、上方から下方に順に、溶接ビード形成のための、被溶接材表面に平行な第1の溝16と、溶融スラグを排出するための、第1の溝の下部に連続し被溶接材表面に対して傾斜した第2の溝17とを設け、第2の溝17は、溝幅が上方から下方に順に広く(θ1)、かつ溝深さが上方から下方に順に深い(θ2)ことを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】 エレクトロガスアーク溶接の開先部の被溶接材表面に当接して溶接進行方向に摺動するエレクトロガスアーク溶接用摺動銅当金において、該水冷摺動銅当金の被溶接材開先部に対する面に、上方から下方に順に、溶接ビード形成のための、被溶接材表面に平行な第1の溝16と、溶融スラグを排出するための、第1の溝の下部に連続し被溶接材表面に対して傾斜した第2の溝17とを設け、第2の溝17は、溝幅が上方から下方に順に広く(θ1)、かつ溝深さが上方から下方に順に深い(θ2)ことを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、エレクトロガスアーク溶接に用いられる水冷摺動銅当金に関するものであり、溶接時において溶融プール上に生成する溶融スラグを効率的に溶融プールから排出することができるエレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金に関する。
エレクトロガスアーク溶接法は、高能率な自動溶接法であり、造船,エネルギー産業および建築等の大型構造物の溶接施工に広く採用されている。図5の(a)にエレクトロガスアーク溶接法の概要を示す平面図を示す。図5の(b)は、図5の(a)上のVb−Vb線縦断面を示す。垂直に立てられた、隣り合う2枚の鋼板1a,1bにより形成される開先2に対し、開先の裏面には長い固定式の裏当材3を当接し、表面には水冷摺動銅当金4の当金ブロック4aを当てて、裏当材3,当金ブロック4aおよび鋼板1a,1bで囲まれた空間に溶接トーチ5の先端を挿入する。該空間を大気から遮断しブローホールの無い健全な溶接金属を形成するため、水冷摺動銅当金4(当金ブロック4a)の上部には、シールドガス供給用パイプ12付きのシールドガスフード6が設けられシールドガスが供給される。溶接ワイヤ7は、溶接トーチ5から該空間に連続供給され、溶融プール8と溶接ワイヤ7間に発生するアークの熱により溶融し、溶接金属9を形成する。図中11a,11bは、水冷摺動銅当金4の内部に水を供給および排出する冷却水循環用パイプである。
溶接台車(図示せず)に搭載された水冷摺動銅当金4および溶接トーチ5は、溶接の進行により上昇する溶融プール8の上面に合わせて水冷摺動銅当金4の鋼板との接触面14が開先2の両側に鋼板1表面に接しながら順次上昇する。溶融プール8上には溶融スラグ10aが生成する。溶融スラグ10aは、溶接ビード表面と水冷摺動銅当金4のビード形成溝13の間から適宜排出され、溶接ビード表面を覆いながら凝固して溶接ビードの外観を良好にする。ビード形成溝13に排出された溶融スラグ10bは、凝固して溶接ビードの外観を良好にする役割があるが、被溶接材である鋼板1a,1bの板厚が厚くなると、生成する溶融プール8に滞留する溶融スラグ10aの量が多くなり、溶融スラグ10aの排出が十分行われなくなる。その結果、アーク切れ,溶接ワイヤ7と溶融プール8との短絡を繰り返し、アークが不安定になり、溶融スラグ10が飛び跳ねる現象(以下、スラグ跳ねという。)が多発するようになる。スラグ跳ねが多発すると、溶接トーチ5先端やシールドガスフード6に付着し、溶接トーチ5と鋼板1a,1bの干渉,シールド不良が起こり、溶接の継続が不可能になる。
スラグ跳ねを軽減する技術として、例えば特許文献1に、溶融プール中の溶融スラグを効率よく排出してスラグ跳ねを軽減する溶接方法が提案されている。しかし、水冷摺動銅当金の切欠き部に溶融スラグだけでなく、溶融メタルも流れて凝固するので、溶接ビードの左右端がオーバーラップになりやすく、溶接後にビード形状の修正のためのグラインダ研削作業が必要となる場合がある。また、特許文献2には、水冷摺動式銅当金の溶接ビードを形成する溝に溶接方向に平行に筋状の溝を設け、その筋状の溝に溶融スラグを吸引し、排出するという技術が提案されている。しかし、溶接を繰返し行うと熱により水冷摺動銅当金の表面が粗くなり、その筋状の溝に入り込んだ溶融スラグが、該当金に癒着するようになるので、スラグを効果的に排出することができなくなる。さらに、特許文献3では、溶接進行方向から後方にかけて漸次深さが深くなるスラグ逃がしの溝を設けた水冷摺動銅当金が記載されている。しかし、特許文献3に記載のスラグ逃がしの溝においても、鋼板の板厚が厚くなると溶融プール上の溶融スラグが多くなりスラグを十分排出できずスラグ跳ねが生じるようになる。スラグの排出量を多くするためにスラグ逃がしの溝の傾斜を大きくすると溶融メタルまでも排出されて溶接が継続できなくなるという問題もある。
本発明は、エレクトロガスアーク溶接時において溶融プール上に生成する溶融スラグを効率的に溶融プールから排出することができ、かつ、良好な溶接ビード形状が得られるエレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、エレクトロガスアーク溶接の開先部の被溶接材表面に当接して溶接進行方向に摺動するエレクトロガスアーク溶接用摺動銅当金(4)において、該水冷摺動銅当金の被溶接材開先部に対する面に、上方から下方に順に、溶接ビード形成のための、被溶接材表面に平行な第1の溝(16)と、溶融スラグを排出するための、被溶接材表面に対して傾斜した第2の溝(17)とを設け、第2の溝(17)は、溝幅が上方から下方に順に広く、かつ溝深さが上方から下方に順に深いことを特徴とするエレクトロガスアーク溶接用摺動銅当金にある。なお、理解を容易にする為に括弧内には、図面に示し後述する実施例の対応要素の符号を参考までに付記した。以下も同様である。
本発明のエレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金(4)によれば、エレクトロガスアーク溶接において、溶融プール(8)上に生成する溶融スラグ(10a)を効率的に排出することができ、かつ、良好な形状の溶接ビード形状および欠陥の無い溶接金属を得ることが可能となるので、高能率に高品質の溶接部を得ることができる。
本発明者らは、エレクトロガスアーク溶接で溶融プール上に生成する溶融スラグを効率的に溶融プールから排出することができ、かつ、良好な溶接ビード形状を得ることができるように水冷摺動銅当金の溝形状について種々検討を行った。その結果、溶接ビード形成のための、被溶接材表面に平行な第1の溝(16)、溶融スラグを排出するための、被溶接材表面に対して傾斜した第2の溝(17)を設け、第2の溝(17)の溝幅は、上方から下方に順に広くし、かつ溝の深さは上方から下方に順に深くすることによって、溶融スラグを効率的に溶融プールから排出することができるとともに良好な溶接ビード形状を得ることができることを見出した。
図1に、本発明のエレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金4の縦断面を示し、図2の(a)には水冷摺動銅当金4の鋼板対向面を、図2の(b)には(a)に示す水冷摺動銅当金4の右側面を、図2の(c)には(a)に示す水冷摺動銅当金4の上面を、それぞれ示す。水冷摺動銅当金4は、溶接ビード形成のための、鋼板対向面(被溶接材表面)に平行な第1の溝16を有し、次いで溶融スラグを排出するための第2の溝17を有する。
図3の(a)には、水冷摺動銅当金4の基体である当金ブロック4aの、図2の(a)上のIIIa−IIIa線での横断面を示す。この横断面に現れた第1の溝16の幅W1および深さD1は比較的に小さい。図3の(b)には、IIIa−IIIa線より下方のIIIb−IIIb線での横断面を示す。この横断面に現れた第2の溝17は第1の溝16の下端に連続しており、第2の溝17の幅W2および深さD2はそれぞれ、第1の溝16のものより大きい。図3の(c)には、IIIb−IIIb線より下方のIIIc−IIIc線での横断面を示す。この横断面に現れた第2の溝17の幅W3および深さD3は、それぞれIIIb−IIIb線横断面のものよりさらに大きい。すなわち、第1の溝16は垂直方向で溝幅が一定であるが、その下部に連続する第2の溝17は、上から下に順に溝幅が連続的に広くかつ深くなっている。
図1を参照して、本発明の水冷摺動銅当金4を用いるエレクトロガスアーク溶接を説明する。開先裏面に固定式の裏当材3を当接し、表面には水冷摺動銅当金4を当て、裏当材3,水冷摺動銅当金4および鋼板1で囲まれた空間に溶接トーチ5を挿入する。該空間を大気から遮断するために水冷摺動銅当金4にはシールドガスフード6が設けられシールドガスが供給される。溶接ワイヤ7は、溶接トーチ5から該空間に連続供給され、溶融プール8と溶接ワイヤ7間に発生するアークの熱により溶融し、溶接金属9を形成する。水冷摺動銅当金4および溶接トーチ5は溶接台車(図示せず)に搭載されており、溶接の進行により上昇する溶融プール8の上面に合わせて、下方から上方へ順次上昇する。溶融プール8上には溶融スラグ10aが生成する。また、溶接トーチ5には揺動装置(図示せず)が備えられている。溶融プール8の溶融メタルは、溶接の進行に伴い鋼板1a,1bおよび水冷摺動銅当金4で冷却されて溶接金属9となる。
溶融スラグ10aは、溶接ビード表面と水冷摺動銅当金4の第1の溝16との間から適宜排出され、溶接ビード表面を覆いながら第1の溝16で溶接ビードの外観を良好にする。また、溶融スラグ10bの融点は溶接金属9の融点より低いので、下から上への溶接進行にともなって、第2の溝17の途中で凝固して凝固スラグ15となる。
第2の溝17が、上方から下方に順に幅広(図2上のθ1)および深く(図1のθ2)なっているので、溶融プール8上の溶融スラグ10aが、開先2の両側の鋼板1a,1b(図5の(a)の1a,1bと同様)の表面にそって第1の溝16にそして第2の溝17にスムーズに排出されるので、溶融プール8上の溶融スラグ10aが適量となってスラグ跳ねが軽減され長時間の溶接が可能になる。また、溶融プール8の溶融メタルは溶接の進行に伴い第1の溝16部で冷却されるので、溶融プール8から溶融メタルが流れることがなく溶接ビードの左右端にオーバーラップが生じることがない。
仮に、当金ブロック4aの上端から下端まで溝が連続して傾斜して深くなっているだけでは、鋼板1の板厚が厚くなると溶融プール8上の溶融スラグ10aが多くなり、溶融スラグ10aの排出が十分できず、スラグ跳ねが起こるようになる。また、溶融スラグ10aの排出性を良くしようとして該溝の傾斜角度を大きくすると、溶融プール8から溶融メタルが排出され溶接の継続ができなくなる。
しかし、本発明のように、上方から下方に深さが一定の第1の溝16の下方に連続して幅と深さが連続的に広く深くなる第2の溝17を形成することによって、溶融プール8からの溶融メタルが排出されることなく、溶融プール8上の溶融スラグ10aのみがスムーズに排出されてスラグ跳ねが起こらず長時間の溶接が可能となる。なお、第2の溝17の幅方向の傾斜角度θ1および深さ方向の傾斜角度θ2は、θ1=10〜20°、θ2=2〜5°であることが好ましい。
以下、実施例により本発明のエレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金4について詳細に説明する。図4に示す開先形状に加工した板厚50mm、長さ1000mmの鋼板1a,1bを用い、開先裏面に固形裏当材3を当て、開先表面には図2に示す水冷摺動銅当金4を、表1に示すサイズに加工して当てた。溶接は、JIS Z 3319 YFEG-22に該当するワイヤ径1.6mmの溶接ワイヤを用い、表2に示す溶接条件でエレクトロガスアーク溶接を実施し、溶融プール上の溶融スラグのスラグ跳ねの有無およびビード形状を調査した。また、溶接終了後、超音波探傷試験を実施して溶接欠陥の有無も調査した。また、比較例として図6に示す水冷摺動銅当金4を表1に示すサイズに加工したものも用いて溶接に供した。
表1に示す本発明例の水冷摺動銅当金を用いた場合は、水冷摺動銅当金が第1の溝16と第2の溝17を有し、第2の溝17の溝幅および深さが適正であるので、溶融プール上の溶融スラグが少なくなってスラグ跳ねがなく、アークも非常に安定していた。また、溶接ビード形状はオーバーラップがなく良好で、超音波探傷試験においても溶接始終端を除き、溶接欠陥は認められず、極めて満足な結果であった。比較例の水冷摺動銅当金を用いた場合は、溶接中に溶融プール上に滞留する溶融スラグが多くなってスラグ跳ねが頻発し、溶接開始後約500mmの位置で、シールドガス供給口を塞いでしまったので溶接長750mmで溶接を中止した。超音波探傷試験の結果、溶接開始後約500mm以降の溶接金属には、気孔と考えられる球状の欠陥が多数検出された。
1 鋼板
2 開先
3 裏当材
4 水冷式摺動銅当金
4a:当金ブロック
5 溶接トーチ
6 シールドガスフード
7 溶接ワイヤ
8 溶融プール
9 溶接金属
10a、10b 溶融スラグ
11 冷却水循環用パイプ
12 シールドガス供給用パイプ
13 溶接ビード形成溝
14 鋼板との接触面
15 凝固スラグ
16 第1の溝
17 第2の溝
2 開先
3 裏当材
4 水冷式摺動銅当金
4a:当金ブロック
5 溶接トーチ
6 シールドガスフード
7 溶接ワイヤ
8 溶融プール
9 溶接金属
10a、10b 溶融スラグ
11 冷却水循環用パイプ
12 シールドガス供給用パイプ
13 溶接ビード形成溝
14 鋼板との接触面
15 凝固スラグ
16 第1の溝
17 第2の溝
Claims (1)
- エレクトロガスアーク溶接の開先部の被溶接材表面に当接して溶接進行方向に摺動するエレクトロガスアーク溶接用摺動銅当金において、
該水冷摺動銅当金の被溶接材開先部に対する面に、上方から下方に順に、溶接ビード形成のための、被溶接材表面に平行な第1の溝と、溶融スラグを排出するための、第1の溝の下部に連続し被溶接材表面に対して傾斜した第2の溝とを設け、第2の溝は、溝幅が上方から下方に順に広く、かつ溝深さが上方から下方に順に深いことを特徴とするエレクトロガスアーク溶接用摺動銅当金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011026944A JP2012166204A (ja) | 2011-02-10 | 2011-02-10 | エレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011026944A JP2012166204A (ja) | 2011-02-10 | 2011-02-10 | エレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2012166204A true JP2012166204A (ja) | 2012-09-06 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2011026944A Withdrawn JP2012166204A (ja) | 2011-02-10 | 2011-02-10 | エレクトロガスアーク溶接用水冷摺動銅当金 |
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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KR20170015522A (ko) | 2014-07-25 | 2017-02-08 | 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 | 일렉트로 가스 아크 용접 방법 및 일렉트로 가스 아크 용접 장치 |
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CN112589371A (zh) * | 2019-10-01 | 2021-04-02 | 株式会社神户制钢所 | 焊接用滑动铜垫板和焊接方法 |
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2011
- 2011-02-10 JP JP2011026944A patent/JP2012166204A/ja not_active Withdrawn
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