JP2012162492A - 可食性シート、可食性シート接合体、及び薬物包装体 - Google Patents
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Abstract
口溶け性に優れ、嚥下が容易であり、不快な味覚を有する薬物、食物を服用、摂取する際に、その不快な味覚を抑制でき、口腔内が粘つくという不快感を与えることのない、可食性シート、可食性シート接合体、及び、塩基性薬物の苦味が抑制され、口溶け性に優れ、嚥下が容易である薬物包装体を提供する。
【解決手段】
塩基性基含有化合物(a1)及びアニオン性高分子(a2)を含むマスキング剤(A)、水溶性微粒子(B)、並びに非イオン性水溶性高分子(C)を含有する材料から形成され、内部に水溶性微粒子(B)が分散状態で存在することを特徴とする可食性シート;前記可食性シートが袋状に加工されてなる可食性シート接合体;並びに、前記可食性シートによって、塩基性薬物が包装されてなる薬物包装体。
【選択図】 なし
Description
〔1〕塩基性基含有化合物(a1)及びアニオン性高分子(a2)を含むマスキング剤(A)、水溶性微粒子(B)、並びに非イオン性水溶性高分子(C)を含有する材料から形成され、内部に水溶性微粒子(B)が分散状態で存在することを特徴とする可食性シート。
〔2〕前記塩基性基含有化合物(a1)として、アミノ酸及び/又はアミノ糖を含有する〔1〕に記載の可食性シート。
〔3〕前記アニオン性高分子(a2)として、カラギーナン及び/又はアルギン酸を含有する〔1〕又は〔2〕に記載の可食性シート。
〔4〕前記マスキング剤(A)として、さらに、高甘味度甘味料(a3)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の可食性シート。
〔5〕前記水溶性微粒子(B)として、酵素変性デキストリンを含有する〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の可食性シート。
〔6〕前記非イオン性水溶性高分子(C)として、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の可食性シート。
〔7〕可食性シート全体に対して、マスキング剤(A)の含有量が1〜50質量%、水溶性微粒子(B)の含有量が5〜70質量%、非イオン性水溶性高分子(C)の含有量が25〜60質量%である〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の可食性シート。
〔8〕塩基性薬物を服用するための〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の可食性シート。
〔9〕〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の可食性シートが、袋状に加工されてなる可食性シート接合体。
本発明の第3によれば、下記〔10〕の薬物包装体が提供される。
〔10〕〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の可食性シートによって、塩基性薬物が包装されてなる薬物包装体。
本発明の薬物包装体は、包装された塩基性薬物の苦味が抑制され、口溶け性に優れ、嚥下が容易である。
1)可食性シート
本発明の可食性シートは、塩基性基含有化合物(a1)及びアニオン性高分子(a2)を含むマスキング剤(A)、水溶性微粒子(B)、並びに非イオン性水溶性高分子(C)を含有する材料から形成され、内部に水溶性微粒子(B)が分散状態で存在することを特徴とする。
本発明の可食性シートには、塩基性基含有化合物(a1)及びアニオン性高分子(a2)を含むマスキング剤(A)が用いられる。本発明において、マスキング剤(A)は、不快な味覚を有する薬物、食物を服用、摂取する際に、その不快な味覚を抑制するために添加される。
このような塩基性基含有化合物(a1)としては、例えば、アミノ酸やアミノ糖が挙げられる。
アミノ糖としては、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン及びメグルミン等が挙げられる。
このような塩基性基含有化合物(a1)としては、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物や、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸水素塩、炭酸ナトリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
なお、本明細書において粘度とは、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
硫酸基を有するアニオン性高分子としては、例えば、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸等が挙げられる。
カルボキシル基を有するアニオン性高分子としては、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、キサンタンガム、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
これに対して、(a1)と(a2)を併用することで、マスキング効果に優れ、かつ、口溶け性においても優れる可食性シートが得られる。
当該観点から、塩基性基含有化合物(a1)とアニオン性高分子(a2)の質量比は、(a1)/(a2)=50/50〜90/10であることが好ましく、65/35〜85/15であることがより好ましい。
マスキング効果を有するその他の化合物としては、例えば、矯味剤が挙げられる。矯味剤としては、サッカリン、グリチルリチン酸、白糖、果糖、マンニトール、高甘味度甘味料等の甘味料;クエン酸、酒石酸、フマル酸等の酸味料;等が挙げられる。
高甘味度甘味料(a3)は、砂糖の100倍以上の甘味度を有するものであれば特に限定されない。
高甘味度甘味料(a3)としては、例えば、アセスルファムカリウム(甘味度:砂糖の約200倍)、サッカリンナトリウム(甘味度:砂糖の約400倍)、ステビア抽出物(甘味度:砂糖の約300倍)、アスパルテーム(甘味度:砂糖の約200倍)、スクラロース(甘味度:砂糖の約600倍)、ネオテーム(甘味度:砂糖の約7000〜13000倍)及びタウマチン(甘味度:砂糖の約3000〜5000倍)等が挙げられる。
高甘味度甘味料(a3)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、塩基性基含有化合物(a1)とアニオン性高分子(a2)の合計量は、マスキング剤(A)全体に対して、70〜100質量%であることが好ましく、高甘味度甘味料(a3)を含有する場合は、(a1)と(a2)の合計量は、70〜99.9質量%であることが好ましく、高甘味度甘味料(a3)の含有量は、0.1〜30質量%であることが好ましい。
本発明の可食性シートには、水溶性微粒子(B)が用いられる。水溶性微粒子(B)は可食性シートの内部に分散状態で存在する。ここで、「分散状態で存在」とは、可食性シートの内部に水溶性微粒子(B)が微粒子状で存在することを意味する。
水溶性微粒子(B)の平均粒径は、コールカウンター法による測定で、通常1〜300μmであり、好ましくは5〜50μmである。
水溶性微粒子(B)は、5質量%水溶液の37℃における粘度が、10mPa・s以下のものが好ましく、5mPa・s以下のものがより好ましい。また、後述する製造方法において容易に分散させることができることから、水溶性微粒子(B)は、後述する脂肪族アルコール系溶媒に難溶性又は不溶性であるものが好ましい。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、口溶け性に優れ、後味が良いことから酵素変性デキストリンを含むものが好ましい。
なお、一般的に、水溶性微粒子(B)の添加量を多くすれば、口腔内における可食性シートの崩壊時間を短くでき、水溶性微粒子(B)の添加量を少なくすれば、口腔内における可食性シートの崩壊時間を長くすることができる。
本発明の可食性シートには、非イオン性水溶性高分子(C)が用いられる。ここで、非イオン性水溶性高分子は、25℃の水(100g)に対して1g以上溶解できる、非イオン性の高分子を意味する。非イオン性水溶性高分子(C)は、5質量%水溶液の37℃における粘度が、1,000〜100,000mPa・sであることが好ましい。
また、後述する製造方法において(B)成分を容易に分散させることができることから、非イオン性水溶性高分子(C)は、後述する脂肪族アルコール系溶媒に易溶性であることが好ましい。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にヒドロキシプロピルセルロースを含むことが好ましい。
本発明の可食性シートは、可塑剤(D)を含有していてもよい。可塑剤(D)を添加することにより、可食性シートの口溶け性及びヒートシール性をさらに向上させることができる。
可塑剤(D)としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール、トリアセチレン、ポリソルベート80等が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の可食性シートは、例えば、保持基材上に、可食性シート形成用組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥して成膜することにより作製することができる。
用いる保持基材の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは25〜100μmである。
可食性シート形成用組成物の塗膜を形成後、溶媒を乾燥除去して、保持基材上に可食性シート形成用組成物の乾燥塗膜を形成した中間体を作成したのち、保持基材を剥離除去し、次いで、所望の形状に裁断して可食性シートを形成することができる。なお、保持基材を剥離除去する前に乾燥塗膜を裁断してもよい。また、上記中間体を2枚用意し、乾燥塗膜同士を加熱ラミネートにより接着し、次いで、両側の保持基材を除去したのち、所望の形状に裁断して可食性シートを形成してもよい。
溶媒を乾燥除去するときの温度は、通常50〜100℃、好ましくは60〜90℃である。
乾燥時間は、通常数十秒から数分間である。
可食性シートの坪量は、特に限定されないが、通常20〜400g/m2、好ましくは30〜200g/m2である。
本発明の可食性シート接合体は、本発明の可食性シートが袋状に加工されてなる。
本発明の可食性シート接合体は、袋状になっているため、その袋の内部に、薬物等を簡便に挿入することができる。得られる可食性薬物包装体は、口溶け性に優れ、嚥下が容易であり、口腔内が粘つくという不快感を与えることがなく、薬物等が有する不快な味覚を抑制することができる。
すなわち、図1(a)に示すように、四角形の2枚の可食性シート1a、1bを重ね合わせ、三方の端部2aを接合することにより、開口部3aを有する可食性シート接合体4aを形成することができる。
本発明の可食性シートは、このような条件で、簡便かつ強固にシールすることができる。
例えば、図2(a)に示す連続製造装置を用いることによって実施することができる。
先ず、図2(a)に示すように、長尺の可食性シート1eを、図中、下方向に一定速度で搬送しながら、折り曲げ成形機Aによって長尺方向に連続的に二つ折りにしていく。
その後、二方がシールされたシート1eを、点線P部分で、例えば、ヒートシール機B付近に設けられた切断機(図示を省略)により切断すれば、図2(b)に示すように、可食性シート接合体4dを得ることができる。
本発明の薬物包装体は、本発明の可食性シートによって、塩基性薬物が包装されてなる。
塩基性薬物としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、アムロジピンベシル酸塩、塩酸セフォチアムヘキセチル、塩酸セフキャネルダロキセート、塩酸レナンピシリン、塩酸バカンピシリン、塩酸タランピシリン、塩化ベルベリン、ジギトキシン、スルピリン、塩酸アゼラスチン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、塩酸プロメタジン、塩酸パパベリン、塩酸チクロピジン、アミノフィリン、フェノバルビタール、パントテン酸カルシウム、塩酸ドネベジル、塩酸アミノグアニジン等が挙げられる。
塩基性薬物は、互いに薬効を妨げない限り、二種以上を組み合わせて用いることができる。
包装する塩基性薬物の量は、本発明の効果が発現できる量であれば特に制約はない。使用する薬物の種類、用いる可食性シートの大きさ等にもよるが、通常、薬物包装体全体の0.001〜35質量%であり、薬物包装体1個あたり、通常、0.01mgから10gである。
薬物包装体の大きさは、特に制約はなく、用途、薬物、嚥下する者等によって適宜決定されればよい。
(i)可食性シートを前記のようにして袋状に加工して可食性シート接合体を形成し、形成された袋の中空部に塩基性薬物を充填し、所望により開口部をシールする方法、
(ii)適当な大きさ、形状の可食性シートを2枚用意し、一方の可食性シートの中央部に、所望により凹部を形成し、塩基性薬物を載置し、その上からもう一枚の可食性シートを被せるように重ね合わせ、可食性シートの外周部を接合する方法、
(iii)可食性シートを包装紙のように用いて塩基性薬物を包む方法、
等が挙げられる。
また、前記(ii)の方法においても、2枚の長尺の可食性シートを用いることにより、連続的に薬物包装体を製造することができる。
また、本発明の薬物包装体においては、マスキング剤(A)を使用することで、塩基性薬物の溶出に起因する苦味が抑えられる。マスキング剤(A)に塩基性基含有化合物(a1)とアニオン性高分子(a2)を併用することで、口溶け性を低下させることなく、優れたマスキング効果が得られる。
エタノール203質量部に、可塑剤としてグリセリン6質量部と、水溶性微粒子として酵素変性デキストリン(商品名:アミコールNo.19、日澱化学社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:1mPa・s未満)38.55質量部と、塩基性基含有化合物としてアルギニン19.15質量部と、アニオン性高分子としてアルギン酸(商品名:スノーアルギンSSL、富士化学工業社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:5000mPa・s)8.1質量部と、非イオン性水溶性高分子としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC、日本曹達社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:5500mPa・s)28.2質量部とを、ネオミキサーを用い攪拌しながら順次添加して分散させ、可食性シート形成用組成物を調製した。
次いで、可食性シート中間体を2枚用意し、これらを加熱ラミネート(ラミネート条件:温度120℃、圧力0.5MPa)により接着し、次いで、両外層の保持基材を除去したのち、縦14.3mm×横21.4mmの角Rを有する長方形状に裁断して可食性シート(坪量120g/m2)を得た。なお、得られた可食性シートを裁断した断面を電子顕微鏡で観察したところ、配合した水溶性微粒子が元の粒径のままで可食性シート中に分散状態で存在していた。
第1表に記載の配合で可食性シート形成用組成物を調製したこと以外は実施例1と同様にして可食性シートを得た。
なお、カラギーナンは、5質量%水溶液の37℃における粘度が5000mPa・sのものを使用した。
[マスキング効果]
各実施例及び比較例の可食性シートを水なしで口腔内に含ませ、可食性シートが口腔内で唾液により崩壊した後、塩酸ジフェンヒドラミンを50mg/g含有する散剤0.5g(増量剤としてD−マンニトール使用)を舌の上にのせ、次いで口に水を含んでから吐き出したときの服用感を、下記の4段階の基準で評価した。
◎:苦くない。
○:やや苦い。
△:苦い。
×:非常に苦い。
各実施例及び比較例の可食性シートを水なしで口腔内に含ませ、可食性シートが口腔内で唾液により崩壊した後、吐き出し、口の中の感覚を、下記の4段階の基準で評価した。
◎:口腔内がさっぱりとしていた。
○:口腔内がはじめは粘ついたがすぐにさっぱりとした。
△:口腔内がやや粘つく感じがした。
×:口腔内が粘ついて感触が悪かった。
各実施例及び比較例の可食性シートを、それぞれ水なしで口腔内に含ませ、可食性シートが口腔内の唾液で崩壊するまでの時間を測定した。試験は3回行い、その平均値を算出した。
上記すべての試験結果を総合して、下記の4段階の基準で評価した。
◎:すべての評価項目で満足する結果が得られた。
○:すべての評価項目でほぼ満足する結果が得られた。
△:いずれか一つ以上の評価項目でやや不十分な結果が得られた。
×:いずれか一つ以上の評価項目で不十分な結果が得られた。
評価結果を第2表に示す。
実施例1〜12の可食性シートは、マスキング効果に優れ、かつ良好な口溶け性を有している。
一方、比較例1の可食性シートは、マスキング効果、口溶け性の両方に劣る。
また、水溶性微粒子(B)等を用いることで、比較例1に比べて口溶け性が改善する例もあるが(比較例2〜4、7)、これらにおいてはマスキング効果の向上には至っていない。
さらに、水溶性微粒子(B)と共にアニオン性高分子(a2)を用いることで、マスキング効果が改善される例もあるが、(比較例6、8)、これらにおいては口溶け性が大きく低下している。
Claims (10)
- 塩基性基含有化合物(a1)およびアニオン性高分子(a2)を含むマスキング剤(A)、水溶性微粒子(B)、並びに非イオン性水溶性高分子(C)を含有する材料から形成され、内部に水溶性微粒子(B)が分散状態で存在することを特徴とする可食性シート。
- 前記塩基性基含有化合物(a1)として、アミノ酸および/またはアミノ糖を含有する請求項1に記載の可食性シート。
- 前記アニオン性高分子(a2)として、カラギーナンおよび/またはアルギン酸を含有する請求項1または2に記載の可食性シート。
- 前記マスキング剤(A)として、さらに、高甘味度甘味料(a3)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の可食性シート。
- 前記水溶性微粒子(B)として、酵素変性デキストリンを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の可食性シート。
- 前記非イオン性水溶性高分子(C)として、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の可食性シート。
- 可食性シート全体に対して、マスキング剤(A)の含有量が1〜50質量%、水溶性微粒子(B)の含有量が5〜70質量%、非イオン性水溶性高分子(C)の含有量が25〜60質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の可食性シート。
- 塩基性薬物を服用するための請求項1〜7のいずれか1項に記載の可食性シート。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の可食性シートが、袋状に加工されてなる可食性シート接合体。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の可食性シートによって、塩基性薬物が包装されてなる薬物包装体。
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