以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の電子筆記装置である手書き入力装置1は、図1(a)に示すように、電子記録端末である座標検出装置3を有する。使用時には、操作者が、電子筆記具である電子ペン2を持つ。電子ペン2は、筆記具としての機能に加え、入力される位置座標、すなわち座標データの入力手段として機能する。
図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示すように、座標検出装置3は、ノート30を略覆うように所定の第2方向(図1(b)中左右方向)に見開き可能な形状に構成された、可塑性部材からなるシート体10を有している。なお、以下の説明においては、上記の見開き形状にシート体10が設置された状態(図1(b)の状態)を基準として、図1(b)中の左右方向を第2方向4と定義し、第2方向4と直行する図1(b)中の上下方向を第1方向5と定義する。
シート体10は、左側シート部10Lと、右側シート部10Rと、上記第2方向4の中央部に位置する折り曲げ部10Tとを備えている。左側シート部10Lは、上記第2方向4に沿って折り曲げ部10Tの一方側(図1(b)中左側)に設けられ、左側コイルシート100Lを備えている。右側シート部10Rは、上記第2方向4に沿って折り曲げ部10Tの他方側(図1(b)中右側)に設けられ、右側コイルシート100Rを備えている。折り曲げ部10Tは、操作者により折り曲げ可能な部分である。
図1(b)及び図1(c)に示すように、左側シート部10Lの上記第2方向4における折り曲げ部10Tと反対側の端部、すなわち左端部に、当該第2方向4に沿って連続するように回路基板25aが設けられている。また、右側シート部10Rの上記第2方向4における折り曲げ部10Tと反対側の端部、すなわち右端部にも、当該第2方向4に沿って連続するように回路基板25bが設けられている。左端部の回路基板25aには、制御回路部20a及び電池21が収納されており、右端部の回路基板25bには、制御回路部20bが収納されている。これら2つの回路基板25a,25bは、それぞれ剛性を有する基板(特に図示せず)を備えている。
そして、略ノート形状の被筆記体である、上記第2方向4に見開き可能な形状のノート30が、上記シート体10に重なるように配置されている。なお、上記左側シート部10L及び右側シート部10Rに、図1(a)に示すようなノート保持部11がそれぞれ設けられていてもよい。これにより、座標検出装置3を容易かつ確実にノート30と一体化することができ、操作者による取り扱い性を向上することができる。
操作者は、電子ペン2を用いて、ノート30の左筆記面31Lや右筆記面31Rに手書きの所望の文字列等を筆記する。この筆記動作に対応した電子ペン2の移動により、筆記された文字列等に対応した後述のストロークデータが生成され、その生成されたストロークデータが電子ファイルに保存される。その際、操作者は、実際にインクを用いてノート30の左筆記面31Lや右筆記面31R等に筆記を行うことができる。
操作者が手書き入力装置1を使用する際には、電子ペン2に備えられた図示しない電源スイッチがオンされる。電子ペン2は、図2に示すように、先端に設けられたペン先2aと、ペン先2aの筆記面31への接触状態に応じて動作する先端スイッチ42と、信号生成手段であるLC発振回路41及び磁界印加用コイル44と、電池43とを有する。
磁界印加用コイル44は、LC発振回路41と電気的に接続されており、位置検出用の筆記信号として、交番磁界(以下適宜、単に「磁界」と称する)を送信する。
先端スイッチ42は、ペン先2aの筆記面31L,31Rへの接触状態に応じて動作する。先端スイッチ42は、磁界印加用コイル44からの磁界の送信と停止を切り替えるための指令信号S0を、LC発振回路41に対して出力する。この先端スイッチ42は、操作者が文字等を筆記するために、ペン先2aを筆記面31L,31Rに押しつけた、すなわちペンダウンしたときに、オンとなる。この場合、LC発振回路41に対して指令信号S0が出力される。一方、操作者が文字等の筆記を止め、ペン先2aを筆記面31L,31Rから離した、すなわちペンアップしたときに、先端スイッチ42はオフとなる。この場合、LC発振回路41に対して指令信号S0は出力されない。
LC発振回路41は、先端スイッチ42から上記指令信号S0が入力されることによって、交番磁界(以下適宜、単に「磁界」と称する)を発生し、上記磁界印加用コイル44を介して送信する。交番磁界は、筆記面31L,31Rへの筆記内容に対応したデータ入力を行うための筆記信号として機能する。なお、このLC発振回路41と上記磁界印可用コイル44とを併せて、各請求項記載の信号生成手段に相当する。
電池43は、電子ペン2の電源スイッチがオンにされることで、LC発振回路41に電力を供給する。
座標検出装置3は、コイルシート100L,100Rと、制御回路部20と、電池21とを有する。なお、上記の2つの制御回路部20a,20bは後述の図3に示すようにバス51を介して相互に信号送受可能に接続されており、図2中では図示の煩雑を回避するために、2つの制御回路部20a,20bを1つの制御回路部20で一体に示している。
コイルシート100L,100Rは、図3に示すように、センスコイル部110を含む。すなわち、図3に示すように配置されたセンスコイル部110が、例えば外形が略長方形の薄板状に樹脂成形されることにより、コイルシート100L,100Rが構成されている(なお、後述するコネクタを含めた正確な形状は図4参照)。これらコイルシート100L,100Rの全体は、可塑性を備えているため緩やかに折り曲げが可能である。
センスコイル部110は、図3に示すように、上記第2方向4に対応したX軸方向に配列されたm個のループ状のセンスコイルX1〜Xmと、上記第1方向5に対応したY軸方向に配列されたn個のループ状のセンスコイルY1〜Ynとによって構成されている。センスコイルX1〜Xmと、センスコイルY1〜Ynとは、直交した位置関係で配置されている。また、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynは、例えば表面に絶縁被膜層が形成された銅線によって形成されているので、図中で重なっている箇所でも互いに短絡することはない(後述する引き出し線についても同様)。また、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynは、電子ペン2のLC発振回路41から発生し磁界印加用コイル44から送信された磁界に対応して、電子ペン2から座標検出装置3に情報を入力するための信号S1(図2参照)を発生する。すなわち、電子ペン2は、座標検出装置3に対して情報送信可能となっている。また、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynは、後述の図4に示すように引き出し線を介して後述のマルチプレクサ62に接続されている(図3では引出線を省略している)。
センスコイルX1〜Xmは、それぞれ、X軸方向の幅P1の辺とP1より長いY軸方向の長さP2の辺とを備え、すなわちY軸方向(第1方向)を長径方向とした略長方形状に形成されている。センスコイルX1〜Xmのそれぞれは、所定の一定ピッチでX軸方向に連続して配列されている。例えば、隣接するセンスコイルX1〜Xmは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。
センスコイルY1〜Ynは、それぞれ、X軸方向の幅P3の辺とP3より短いY軸方向の長さP1の辺とを備え、すなわちX軸方向(第2方向)を長径方向とした略長方形状に形成されている。センスコイルY1〜Ynのそれぞれは、所定の一定ピッチでY軸方向に連続して配列されている。例えば、隣接するセンスコイルY1〜Ynは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。
なお、この図3においては、視覚的にわかりやすくするため、便宜上、センスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとの各辺がそれぞれ重ならないようにしており、上記ピッチで配列された状態では図示されていない。また、マルチプレクサ62に入る引出線を省略してセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの形状を図示している。なお、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynが、各請求項記載のコイルに相当する。
図2に戻り、制御回路部20は、マルチプレクサ62(以下適宜、「MUX62」と称する)と、増幅回路64と、整流回路66と、マイコン80と、フラッシュメモリ72とを有する。
MUX62は、マイコン80からのコイル選択信号S3に基づき、コイルシート100L,100Rに設けられているセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのうち、1つのセンスコイルを順番に選択する。そして、MUX62は、選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynにおいて、電子ペン2のLC発振回路41から発生される磁界との磁気誘導によって発生した上記信号S1を入力し、対応する信号S11を増幅回路64へ出力する。なお、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynが、電子ペン2のLC発振回路41から発生された磁界と磁気誘導することが、実質的には、磁界を受信することに相当する。
増幅回路64は、MUX62から入力される信号S11を増幅する。増幅回路64で増幅された信号S13は、整流回路66に入力される。整流回路66は、増幅回路64から入力された信号S13を振幅検波した後、平滑化して直流信号に変換する。整流回路66で振幅検波された信号S14は、マイコン80に入力される。
マイコン80は、座標検出装置3で実行される各種の処理を制御する。マイコン80では、CPU80aと、ROM80bと、RAM80cと、その他のA/D変換機能部や割り込み機能部等とが、1つの集積回路として構成されている。マイコン80は、A/D変換機能により、上記入力された振幅検波後の信号S14をデジタル信号に変換する。このとき、マイコン80の上記ROM80bには、位置座標テーブル(後述の図11(b)参照)が記憶されている。マイコン80は、上記デジタル信号に対し、位置座標テーブルを適用することにより、電子ペン2とノート30との接触点の座標データ(以下適宜、単に「電子ペン2の座標データ」という)、すなわち、X軸方向のX座標及びY軸方向のY座標を算出する。なお、算出された座標データはフラッシュメモリ72に記憶される。
フラッシュメモリ72には、電子ファイルが予め用意されており、マイコン80で算出された複数の座標データを含むペン位置データ列に基づくストロークデータ等が、上記電子ファイルに書き込まれ、ページ番号に対応して保存される。
電池21は、座標検出装置3に備えられた図示しない電源スイッチがオンにされることで、マイコン80等に電力を供給する。
本実施形態の例では、シート体10に備えられる左側コイルシート100Lと右側コイルシート100R、及び2つの回路基板25a,25bが、図4に示すように配置され、接続されている。なお、この図4に示す例では、図示の煩雑を回避するために、各コイルシート100L,100RのそれぞれにおいてY軸方向に配列された8個のループ状のセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8のみを示し、X軸方向に配列されたm個のループ状のセンスコイルX1〜Xmの図示を省略している。また、同様に図示の煩雑を回避するために、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8どうしが重複しない配置で示している。
この図4において、各コイルシート100L,100Rのセンスコイル部110L,100Rは、それぞれ4つのコネクタ(左側コイルシート100Lではコネクタ91〜94、右側コイルシート100Rではコネクタ95〜98)を介して隣接する回路基板25a,25bに接続している。また、2つの回路基板25a,25bどうしは、バス51を介して信号を送受可能に接続している。各センスコイル部110L,100Rにおいて、それぞれが備える8つのセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8は、接続するコネクタ91〜95に対応してY軸方向に配列された4つ(左右合計8つ)のコイル群LG1〜LG4,RG1〜RG4に区別される。
すなわち、図示する例では、左側センスコイル部110Lが、図中の上から順にそれぞれ2つのセンスコイルLY1〜LY2,LY3〜LY4,LY5〜LY6,LY7〜LY8を含んだ左側第1〜4コイル群LG1〜LG4を有する。また、右側センスコイル部110Rが、図中の上から順にそれぞれ2つのセンスコイルRY1〜RY2,RY3〜RY4,RY5〜RY6,RY7〜RY8を含んだ右側第1〜4コイル群RG1〜RG4を有する。各センスコイル部110L,100Rがそれぞれ隣接する回路基板25a,25bと接続するための4つのコネクタ91〜94,91〜98(左右合計8つ)は、当該センスコイル部110L,100R全体のY軸方向(第1方向)の中央位置にてX軸方向に延びる第1対称軸SL1に対し互いに線対称となる位置でY軸方向に配列されている。
上記図4中のA部を拡大した図5に示すように、左側第1コイル群LG1は図中上方の2つのセンスコイルLY1,LY2を含み、左側第2コイル群LG2は図中下方の2つのセンスコイルLY3,LY4を含んでいる。各コイル群LG1,LG2に対応する2つのコネクタ91,92は、Y軸方向(第1方向)に隣接する左側第1,2コイル群LG1,LG2全体のY軸方向(第1方向)の中央位置にてX軸方向に延びる第2対称軸SL2に対し互いに線対称となる位置に、それぞれ配置されている。これらコネクタ91〜98は、それぞれ雄コネクタと雌コネクタの2つの独立した部品からなり、雄コネクタを所定の方向で雌コネクタに装着することで、機械的な連結とともに電気的にも接続する一般的な部品である。この例では、特に図示しないが、コイルシート100L,100R側に雄コネクタを、回路基板25a側に雌コネクタをそれぞれ設けて接続するが、逆に割り当てるよう設けて接続してもよい。
また、左側第1コイル群LG1と左側第2コイル群LG2についても、上記第2対称軸SL2に対して互いに線対称となる位置に、それぞれ配置されている。各センスコイルLY1〜LY4は、それぞれ一対の引き出し線を引き出している(以下においては、各一対の引き出し線を単一の線U1〜U4として扱うよう記載する)。また、コイルシート100Lの側辺には、上記第2対称軸と重なる位置で回路基板25aへ向けて突出する連結部102が形成されている。左側第1コイル群LG1と左側第2コイル群LG2の各センスコイルLY1〜LY4の引き出し線U1〜U4は、この連結部102を通過するよう延設して2つのコネクタ91,92に接続している。左側第1コイル群LG1の2つのセンスコイルLY1,LY2のそれぞれの引き出し線U1,U2は、連結部102の先端の図中上方側に位置するコネクタ91に接続され、左側第2コイル群LG2の2つのセンスコイルLY3,LY4のそれぞれの引き出し線U3,U4は、連結部102の先端の図中下方側に位置するコネクタ92に接続されている。このようにして、左側第1,2コイル群LG1,LG2における4つのセンスコイルLY1〜LY4のそれぞれの引き出し線U1〜U4は、上記第2対称軸SL2に対して互いに線対称となる位置で配置されている。
ここで、本発明における線対称とは、対称軸を挟んだ概略的な配置関係を意味している。例えば、特に図示しないが、ある対称軸を挟んだ2つのコイル群が異なる数のセンスコイルを備える場合であっても、各コイル群の引き出し線は当該対称軸に対して互いに線対称となる位置で配置できる。つまり、引き出し線を線対称な位置で配置するということは、対称軸によって2分された引き出し線グループどうしの概略的な配置関係を意味するものであって、グループ間の本数の違いは対称性を阻害しない。
そして、本実施形態では、各コネクタ91〜94がY軸方向(第1方向)に沿った方向D1,D2で雄コネクタと雌コネクタを装着し、連結している。これにより、各引き出し線U1〜U4は、回路基板25aの内部のMUX62と電気的に接続する(後述の図8参照)。
ここで、連結部102上に延設するそれぞれの引き出し線U1〜U4の長さ(図中のB部中における長さ)は概ね一律とみなせるので、コイルシート本体101L上における配置長さの差で各引き出し線U1〜U4全体の長さが異なってくる。本実施形態においては、この左側第1,2コイル群LG1,LG2において、4つのセンスコイルLY1〜LY4それぞれの引き出し線U1〜U4の引き出し位置を、当該左側第1,2コイル群LG1,LG2に対応する連結部102からのY軸方向(第1方向)における距離が遠いセンスコイルLY1,LY4ほど、X軸方向(第2方向)における連結部102に近い側に位置するように配置している。これによりY軸方向における距離の差を、X軸方向における距離の差で相殺して、コイルシート本体101L上での左側第1,2コイル群LG1,LG2における各センスコイルLY1〜LY4のそれぞれの引き出し線U1〜U4の長さのばらつきを小さくしている。
図示する例では、2つのセンスコイルLY1,LY4が連結部102からY軸方向において比較的離れているため、それらの引き出し線U1,U4の引き出し位置P1a,P4aは、X軸方向で比較的連結部102に近い側の位置に配置される。また2つのセンスコイルLY2,LY3は連結部102からY軸方向において比較的近いため、それらの引き出し線U2,U3の引き出し位置P2a,P3aは、X軸方向で比較的連結部102から離れた側の位置に配置される。これにより、各引き出し線U1〜U4上において、各引き出し位置P1a〜P4aから、コイルシート本体101Lと連結部102との境界上に位置する点P1b〜P4bまでの距離が概ね一律となり、すなわち各引き出し線U1〜U4それぞれの全体の長さのばらつきが小さくなる。なお、連結部102上に延設するそれぞれの引き出し線U1〜U4の長さ(図中B部中における点P1b〜P4bからコネクタ91,92までの長さ)にも若干の差異があるが、引き出し位置P1a〜P4aの位置調整によりそれらを相殺してもよい。
そして、上記図4に示されている他のコイル群LG3,LG4,RG1〜RG4については、上記図5に示した左側第1,2コイル群LG1,LG2と上記第1対称軸SL1または上記折り曲げ部10Tに対して線対称な態様で、コネクタ91〜98及び引き出し線が配置されている。
以上のような本実施形態の構成に対し、他の比較例として、センスコイル部110L,100Rと回路基板25a,25bとを1つのコネクタ99で接続する場合の構成を図6に示す。
上記図4に対応する比較例の図6において、各コイルシート100L,100Rはそれぞれ1つのコネクタ99を介して回路基板25a,25bと接続している。各センスコイル部110L,100Rの各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8は、それぞれ1つのコネクタ99に集中して引き出し線を接続している。このように多くの引き出し線を接続するコネクタ99は、その長さが長くなってしまうので、X軸方向に沿った幅寸法が限定されている回路基板25a,25bに対しX軸方向に沿った接続方向D3,D4でしか接続できない。また、図6に示すように、コネクタ99からY軸方向に離れて位置しているセンスコイル(例えばLY5〜LY8,RY5〜RY8)の引き出し線の長さは非常に長くなってしまう。
ここで、上記図1(c)を拡大した図7に示すように、座標検出装置3をX軸方向(第2方向4)に見開き状態にした際には、可塑性を有するコイルシート100L,100Rと剛性を有する回路基板25a,25bとの間の境界部分に曲げ応力が集中して、見開き方向に沿った曲げモーメントが発生しやすい。このため、コイルシート100L,100Rと回路基板25a,25bとの間に設けられるコネクタ91〜98,99には、X軸方向に沿った引っ張り加重Fが付加されやすい。これは、コイルシート100L,100Rと回路基板25a,25bとをX軸方向に連続して配置していることに起因している。しかし、シート体10のX軸方向に沿った見開き易さを考慮すると、剛性を有する回路基板25a,25bをX軸方向全体に渡って配置することは好ましくない。また、回路基板25a,25bを折り曲げ部10Tの近傍に配置した場合でも、同様の曲げモーメントと引っ張り加重Fがコネクタ91〜98,99に付加される。
上記図6に示した構成例では、コネクタ99の接続方向D3,D4と上記引っ張り加重Fの付加方向とが同じX軸方向で一致するため、シート体の見開き操作を繰り返した場合には、コネクタ99における接続状態が解除されたり、接触不良となるおそれがある。
一方、上記図4、図5に示した本実施形態の構成では、各コネクタ91〜98がY軸方向に沿って接続しており、この接続方向D1,D2がX軸方向に沿った引っ張り加重Fの付加方向と直交するので、上記弊害を回避し、各コネクタ91〜98の強固な接続状態を維持できる。
また、センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8の引き出し線自体もインダクタンス成分(いわゆるL成分)を潜在的に有しているので、引き出し線の長さが長いほどノイズを受けるなど磁界の受信に影響が生じ、またそれらの長さのばらつきが大きいほどセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8間で検出信号レベルに差が生じてしまい、座標検出装置3の位置検出精度を低下させる原因となる。
この点についても、上記図4、図5に示した本実施形態の構成は、上記図6に示した構成例と比較して、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8の引き出し線の長さを短くし、かつ、長さのばらつきを小さくして座標検出装置3の位置検出精度を向上できる。
また、本実施形態の回路基板25a,25bに備えるMUX62の詳細な回路構成を図8に示す。なお、この図8は、上記図4における左側の回路基板25aを拡大してその内部構成を示しており、図示しない逆側の回路基板25bにも同等のMUX62が備えられている。また、電池及びフラッシュメモリについては図示を省略している。
MUX62は、内部に4つのサブMUX62a〜62dと1つのメインMUX62Mを有している。4つのサブMUX62a〜62dは、それぞれ2つの入力端子と1つの出力端子を有しており、1つの出力端子が2つの入力端子のどちらか一方と接続するよう切り替え動作を行う。1つのメインMUX62Mは、4つの入力端子と1つの出力端子を有しており、1つの出力端子が4つの入力端子のいずれか一方と接続するよう切り替え動作を行う。4つのサブMUX62a〜62dはそれぞれ4つのコネクタ91〜94の近傍に配置され、各コネクタ91〜94が接続する2つの引き出し線を対応するサブMUX62a〜62dの2つの入力端子に接続している。また、各サブMUX62a〜62dの出力端子が、メインMUX62Mの4つの入力端子に接続し、メインMUX62Mの出力端子は、制御回路部20aの増幅回路64に接続されている。
そして、4つのサブMUX62a〜62dは、上記第1対称軸SL1に対して線対称となるようY軸方向に配列されている。また、左側第1,2コイル群LG1,LG2に対応する2つのサブMUX62a,62bどうしは、上記第2対称軸SL2に対して線対称となる位置に配置されており、左側第3,4コイル群LG3,LG4に対応する2つのサブMUX62c,62dどうしにおいても同様に配置されている。また、メインMUX62Mは、上記第1対称軸SL1上に重なるよう配置されている。なお、これらサブMUX62a〜62dとメインMUX62Mとが、各請求項記載の複数のスイッチに相当し、各コネクタ91〜98からMUX62を含む配線全体が、各請求項記載のスイッチ回路に相当する。
このような接続構成のMUX62では、各コネクタ91〜98から対応する各サブMUX62a〜62dの入力端子までの接続配線の長さをそれぞれ短くできるとともに、それらの長さのばらつきを小さくできる。また、各サブMUX62a〜62dの出力端子からメインMUX62Mの入力端子までの接続配線の長さのばらつきも小さくできる。そして、マイコン80からのコイル選択信号S3に基づいてメインMUX62Mと各サブMUX62a〜62dの接続の選択を切り替えることで、コイルシート100Lが備える8つのセンスコイルLY1〜LY8のうち任意の1つだけを増幅回路64に接続して検出信号を入力できる。これにより、各センスコイルLY1〜LY8の引き出し線の引き出し位置から増幅回路64までの接続経路の長さをそれぞれ短くできるとともに、それらの長さのばらつきを小さくできるので、電子ペン2により筆記を行った際に、検出対象のセンスコイルLY1〜LY8が切り替えられても引き出し線により誘起されるノイズの大きさが同じであるので検出された座標データは連続したものとなり、座標検出装置3の位置検出精度を向上できる。言い換えれば、後述する図11(b)で示した曲線が各センスコイルLY1〜LY8で同一のものとなり、図11(c)で示した座標算出関数もセンスコイルLY1〜LY8によりばらつきがなくなる。
カーブ樹脂製の定規を使用して斜め線を筆記した際の座標検出結果を図9に示す。
しかし、同じMUX62を上記図6に示した構成のコイルシート100Lに適用しても、図10に示すように、各センスコイルLY1〜LY8の引き出し線の引き出し位置から、各サブMUX62a〜62dの入力端子までの接続配線の長さが大きく異なるので、座標検出装置3の位置検出精度を低下させてしまう。このように、コイルシート100L,100RとMUX62の接続関係においても、本実施形態の構成は有利である。
<座標データ算出方法>
次に、本実施形態において、上記図3に示したセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの検出結果に基づき座標データを算出する方法を、以下、順を追って詳細に説明する。
<位置座標テーブル>
前述したように、座標データの算出には、マイコン80のROM80bに記憶された位置座標テーブルを用いる。この位置座標テーブルについて、図11(a)、図11(b)、図11(c)、図12(a)、及び図12(b)を参照して説明する。なお、図示する例では、XセンスコイルX1〜X3の検出結果からX軸方向に沿ったX座標データを算出する場合の例を示している。また、図11(a)では、各XセンスコイルX1〜X3の配置を分かり易くするために、各XセンスコイルX1〜X3をそれぞれ略矩形形状で示し、またそれぞれの下辺をずらした配置で図示している。
図11(a)において、3つのXセンスコイルX1〜X3の中心線をそれぞれC1,C2,C3とする。これらXセンスコイルX1〜X3にそれぞれ発生する電圧値ex1,ex2,ex3は、図11(b)に示すように、各XセンスコイルX1〜X3の中心C1〜C3においてそれぞれ最大になる。このとき、各XセンスコイルX1〜X3は、自己のヌル点Nが隣接するセンスコイルX1〜X3の中心の外側となるように設定されたピッチ間隔Pで、X軸方向に重なるよう配列されている。
このとき、図11(c)に示すように、相互に隣接するXセンスコイル間の電圧差は、XセンスコイルX1〜X3の中心C1〜C3上においてそれぞれ最大値となる。また、当該電圧差は、相互に隣接するXセンスコイルX1〜X3のそれぞれの中心C1〜C3の間の中間点において最小値となる。例えば、図11(c)において、(ex1−ex2)のグラフの右半分つまり実線で示す部分は、XセンスコイルX1の中心C1から、XセンスコイルX1とXセンスコイルX2のそれぞれの中心C1,C2間の中間点Q1までの範囲、すなわち重ねピッチ間隔Pの2分の1の距離範囲Mにおける、(ex1−ex2)の挙動を示している。
仮に電子ペン2が中心C1と中間点Q1の間の位置Q2に存在したとすると、その位置に対応する(ex1−ex2)を検出すれば、中心C1から位置Q2までの距離△Xを検出できる。また、中心C1のX座標位置は既知であるから、その結果位置Q2のX座標が求められる。例えば、図11(c)における上記(ex1−ex2)の特性を示す実線部分を8bitのデジタルデータに変換すると、図12(a)に示すグラフが得られる。なお、この図12(a)に示すグラフは、単なる直線的な変化を示すグラフではなく、上記図11(b)に示したような緩急のある電圧値の増減変化を反映したグラフである。そして、このグラフをテーブル形式に変換することにより、図12(b)に示す位置座標テーブルが得られる。
<コイル電圧値を用いた座標決定>
前述したように、電子ペン2から発生された磁界とセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynとの磁気誘導によって発生した信号S1は、増幅回路64で増幅され、整流回路66で振幅検波され、信号S14(図2参照)となってマイコン80に入力される。マイコン80は、入力された信号S14を、振幅つまり電圧値に対応したデジタル信号に変換する。CPU80aは、このデジタル信号の表す電圧値を用いて、前述の位置座標テーブルを用いて電子ペン2の座標を決定する。以下、XセンスコイルX1〜Xmを例にとって上記座標決定の詳細手順の一例を説明する。
まず、CPU80aは、上記信号S14から変換されたデジタル信号によって示される電圧値e1〜emを、XセンスコイルX1〜Xmのコイル番号と対応付けて、RAM80cの電圧値記憶エリアに順次記憶する。
その後、CPU80aは、XセンスコイルX1〜Xmのコイル番号に対応付けて、電圧値記憶エリアに記憶されている電圧値e1〜emの中で最大の電圧値emaxを選択する。そして、CPU80aは、電圧値emaxを発生したXセンスコイルX1〜Xmのコイル番号XmaxをRAM80cに記憶する。なお、コイル番号は1から始まる整数であって、X−Y座標の原点に近い側のセンスコイルから順に対応して割り当てられる番号である。
次に、CPU80aは、電圧値emaxを発生したXセンスコイルの両隣のXセンスコイルの電圧値のうちいずれか大きい方を電圧値emax2として決定する。そして、CPU80aは、決定された電圧値emax2を発生したXセンスコイルのコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAM80cに記憶する。例えば、図11(a)中の位置Q3に電子ペン2が位置している場合、図11(b)に示すように最大の電圧値emaxがXセンスコイルX2から検出され、CPU80aは、その両隣のXセンスコイルX1の電圧値e1及びXセンスコイルX3の電圧値e3を比較し、大きい方の電圧値e3を電圧値emax2として決定する。そして、CPU80aは、大きい方に決定された電圧値emax2を発生したXセンスコイルX3のコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAM80cに記憶する。
その後、CPU80aは、RAM80cに記憶されたコイル番号Xmax及びコイル番号Xmax2を比較して、コイル番号Xmax2はコイル番号XmaxからX軸の+方向又は−方向のどちらに存在しているかを判定する。なお、X軸の+方向とは、図1(b)及び図3中において右側へ向かう方向であり、X軸の−方向とはその逆の方向である。判定の結果、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して+方向である場合、CPU80aは、変数SIDEを1に設定する。一方、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して−方向である場合、CPU80aは、変数SIDEを−1に設定する。例えば、電圧値emaxがXセンスコイルX2で発生され、コイル番号XmaxとしてXセンスコイルX2を示すコイル番号がRAM80cに記憶され、XセンスコイルX3のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、CPU80aは、変数SIDEを1に設定する。一方、電圧値emaxがXセンスコイルX2で発生され、コイル番号XmaxとしてXセンスコイルX2を示すコイル番号がRAM80cに記憶され、XセンスコイルX1のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、CPU80aは、変数SIDEを−1に設定する。
そして、変数SIDEを設定したCPU80aは、下記(式1)により、変数DIFF0を算出する。
DIFF0=(emax)−(emax2)・・・(式1)
CPU80aは、予め求めた位置座標テーブル(図12(b)参照)に登録されているDIFFのうち、上記算出されたDIFF0に最も近いものを抽出し、そのDIFFに対応する位置座標(図中のΔX)を読み出す。そして、CPU80aは、位置座標テーブルから読み出した位置座標(図中のΔX)を、変数OFFSETとする。
その後、CPU80aは、上記のようにして算出された変数SIDE及び変数OFFSETを用いて、下記(式2)により、電子ペン2のX軸方向の位置Q3を求める。
Q3=Cmax+OFFSET×SIDE・・・(式2)
ここで、Cmaxは、コイル番号Xmaxに対応するXセンスコイルの中心(図11に示す例ではXセンスコイルX2の中心C2)のX座標を示す。
なお、以上は、X軸方向のXセンスコイルX1〜Xmでの磁気誘導に基づく信号S14による電子ペン2のX座標の算出を例に説明した。電子ペン2のY座標についても、Y軸方向のYセンスコイルY1〜Ynでの磁気誘導に基づく信号S14により、同様の手法により算出される。
以上説明したように、CPU80aは、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、上記した手法により電子ペン2の座標データ(X,Y)を算出する。
<座標検出装置が行うフロー>
以上説明した機能を実現するために、座標検出装置3が備えるマイコン80のCPU80aで行われる制御処理の内容を、図13により説明する。
図13において、この処理は、使用者が座標検出装置3の電源をオンした場合に開始される。まずステップSS30で、CPU80aは、MUX62を切り替えて、左右2つのコイルシート100L,100Rそれぞれの各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8から磁界を受信する。
その後、ステップSS40で、CPU80aは、上記ステップSS30で各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8が磁気誘導により検出した信号の受信信号強度RSSIを検出する。
そして、ステップSS50に移り、CPU80aは、上記ステップSS40で検出された受信信号強度RSSIのうちの最大値が所定のしきい値SI1以上となるかどうかを判定する。これは実質的に、いずれかのセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8が電子ペン2から十分な強度の磁界を受信して、筆記動作が開始された状態にあるかを判定することに相当する。受信信号強度RSSIがしきい値SI1よりも小さい場合には、判定が満たされず、ステップSS30に戻り同様の手順を繰り返す。
一方、ステップSS50において、受信信号強度RSSIがしきい値SI1以上となる場合には、筆記動作が開始された状態にあると判定され、ステップSS50の判定が満たされて、ステップSS90に移る。
ステップSS90では、CPU80aは、コイルシート100L,100Rに備えられたセンスコイル部110L,110Rのスキャン処理を実行する。具体的には、CPU80aは、MUX62の接続切り替えを制御してセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8に通電し、ペン2との間で磁界の送受信しているこれらセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8からの検出信号を入力する。
その後、ステップSS100で、CPU80aは、上記ステップSS90で入力した検出信号が、マイコン80に入力されたかどうかを判定する。これは言い換えれば、電子ペン2による筆記動作が継続されているかどうかを判定することに相当する。検出信号がマイコン80に入力されていない場合には、電子ペン2による筆記動作が停止しているとみなされ、ステップSS100の判定が満たされず、ステップSS110に移る。
ステップSS110では、CPU80aは、現時点から最も直近に上記ステップSS100の判定が満たされてから、すなわち、電子ペン2によって筆記が行われてから、所定時間が経過したかどうかを判定する。これは実質的には、後述のステップS120で電子ペン2の座標データが、所定時間算出されていないかどうかを判定することに相当する。電子ペン2によって筆記が行われてから所定時間が経過していない場合には、ステップSS110の判定が満たされず、上記ステップSS90に戻り同様の手順を繰り返す。一方、電子ペン2によって筆記が行われてから所定時間が経過した場合には、電子ペン2の座標データが所定時間算出されていないとみなされ、ステップSS110の判定が満たされて、上記ステップSS30に戻り同様の手順を繰り返す。
一方、ステップSS100において、検出信号がマイコン80に入力されていた場合には、電子ペン2による筆記動作が行われているとみなされ、ステップSS100の判定が満たされて、ステップSS120に移る。
ステップSS120では、CPU80aは、上記ステップSS90における各センスコイル部110L,110Rのスキャン結果に基づく電子ペン2の座標データの算出を行う。この座標データの算出は、上記図11、図12で説明した手法により行う。算出された座標データ(x,y)は、フラッシュメモリ72に記憶される。そして、このようにしてステップSS120が終了した後は、上記ステップSS90に戻り同様の手順を繰り返す。なお、このフローは、例えば使用者が座標検出装置3の電源をオフにした場合に終了する。
以上において、上記図13のフローにおけるステップSS120の手順が、各請求項記載の演算手段に相当する。
以上説明したように、本実施形態では、各コネクタ91〜98の接続方向がY軸方向に沿っていることにより、回路基板25a,25bとコイルシート100L,100Rとの接続部においてX軸方向に直交するY軸方向の線に沿って折れ曲がりや変形等が生じた場合でも、検出される座標精度を低下させることなく、強固な接続状態を維持することができる。
また、回路基板25a,25b上に複数のコネクタ91〜94,95〜98がY軸方向に配列され、複数のコイル群LG1〜LG4,RG1〜RG4から各群ごとに引き出されてくる引き出し線を、それら複数のコネクタ91〜94,95〜98が適宜に分担してMUX62へと接続する。これにより、単一のコネクタ99がコイルシート100L,100RのすべてのセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8の引き出し線を一括してMUX62へ接続する上記図6の構成に比べ、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8からMUX62までの引き出し線の長さを短くし、かつ、長さのばらつきを小さくすることができる。この結果、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8からの出力値のばらつきが小さくなるので、電子ペン2の位置検出精度を向上することができる。
また、上記実施形態では特に、コイルシート100L,100Rに複数のセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8をY軸方向に配列されたセンスコイル部110L,100R全体の当該Y軸方向の中央位置にてX軸方向に延びる第1対称軸SL1を想定し、この第1対称軸SL1に対して複数のコネクタ91〜94,95〜98を互いに線対称となる位置にそれぞれ配置している。これにより、センスコイル部110L,100R全体で見て、各コネクタ91〜94,95〜98に対応する各コイル群LG1〜LG4,RG1〜RG4のコイル数が均等に2分される。また、センスコイル部110L,100R全体で見て、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8のそれぞれの引き出し線を上記第1対称軸SL1に対して線対称となるように配置可能となる。この結果、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8からMUX62までの引き出し線の長さのばらつきを抑え、配線長を短くすることができ、電子ペン2の位置検出精度を向上することができる。
また、コイルシート100L,100Rと回路基板25a,25bとを単一のコネクタ99で接続する上記図6の構成では、コイルシート100L,100Rと回路基板25a,25bとの間に当該コネクタ99の接続部分を中心とした偶力が発生しやすく、当該コネクタ99に機械的な負荷が生じやすい。これに対しても本実施形態では、第1対称軸SL1に対して線対称となる位置に配置された複数のコネクタ91〜94,95〜98でコイルシート100L,100Rと回路基板25a,25bとを接続しているため、上記偶力の発生を抑えることができ、強固な接続状態を維持できる。
また、上記実施形態では特に、Y軸方向に隣接する2つのコイル群LG1〜LG2,LG3〜LG4,RG1〜RG2,RG3〜RG4のそれぞれのY軸方向の中央位置にてX軸方向に延びる第2対称軸SL2を想定し、各コイル群LG1〜LG4,RG1〜RG4におけるセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8が第2対称軸SL2に対して互いに線対称となる位置で引き出し線を配置して対応するコネクタ91〜98に接続する。これにより、当該隣接する2つのコイル群LG1〜LG2,LG3〜LG4,RG1〜RG2,RG3〜RG4全体で見て、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8のそれぞれの引き出し線は上記第2対称軸SL2に対して線対称となるように配置される。この結果、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8からMUX62までの引き出し線の長さのばらつきを抑え、配線長を短くすることができ、電子ペン2の位置検出精度を向上することができる。
また、上記実施形態では特に、各コイル群LG1〜LG4,RG1〜RG4において、複数のセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8それぞれの引き出し線の引き出し位置を、当該コイル群LG1〜LG4,RG1〜RG4に対応する連結部102からのY軸方向における距離が遠いセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8ほど、X軸方向における連結部102に近い側に位置するように配置する。これによりY軸方向における距離の差を、X軸方向における距離の差で相殺して、コイルシート本体101L,101R上での各コイル群LG1〜LG4,RG1〜RG4における複数のセンスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8のそれぞれの引き出し線の長さのばらつきを小さくすることができる。この結果、各センスコイルLY1〜LY8,RY1〜RY8からの出力値のばらつきが小さくなるので、電子ペン2の位置検出精度を向上することができる。
なお、上記実施形態では、1つのコイルシート100L,100Rにおいて4つのコネクタ91〜94,95〜98で回路基板25a,25bと接続する構成であったが、本発明はこれに限られない。他にも、上記図4に対応する図14及び図15に示すように、1つのコイルシート100L,100Rにおいて2つのコネクタ91A〜92A,93A〜94Aで回路基板25a,25bと接続する構成としてもよい。この場合には、1つのコネクタ91A〜94Aで4つのセンスコイルLY1〜LY4,LY5〜LY8,RY1〜RY4,RY5〜RY8の引き出し線を接続する。つまり、これら4つのセンスコイルLY1〜LY4,LY5〜LY8,RY1〜RY4,RY5〜RY8が、1つのコイル群LG1A〜LG2A,RG1A〜RG2Aを構成する。
図14では、同一のコイルシート100L,100Rに対応してY軸方向に配列する2つのコネクタ91A〜92A,93A〜94Aが、互いにY軸方向でコイルシート100L,100Rの外側へ向く方向で接続している。また図15では、同一のコイルシート100L,100Rに対応してY軸方向に配列する2つのコネクタ91A〜92A,93A〜94Aが、互いにY軸方向でコイルシート100L,100Rの内側へ向く方向で接続している。このように、同一のコイルシート100L,100Rに対応してY軸方向に配列する2つのコネクタ91A〜92A,93A〜94Aが、互いにY軸方向で逆向きの接続方向で接続することで、コイルシート100L,100Rと回路基板25a,25bとの間でY軸方向に沿って付加される剪断力に対しても強固な接続状態を維持できる。
また、上述した実施形態及び各変形例では、左筆記面31Lと右筆記面31Rにそれぞれ対応して個別に2つのコイルシート100L,100Rを備えた構成であったが、本発明はこれに限られない。他にも、特に図示しないが、左筆記面31Lと右筆記面31Rの両方に対応する一体型のコイルシートを1つだけ備える構成に、本発明を適用してもよい。この場合には、同じY軸方向位置にループ状のセンスコイルが1つだけ左右の筆記面31L,31Rに渡って配置される。
また、上述した実施形態及び各変形例では、MUX62を回路基板25a,25b上に設けた構成であったが、本発明はこれに限られない。他にも、特に図示しないが、MUX62を各コイルシート100L,100R上に設けてもよい。この場合には、コイルシート100L,100Rと回路基板25a,25bとの間に渡って接続する配線は、上記図2に示すS3とS11の2つの信号線だけとなるため、各コイルシート100L,100Rとそれに隣接する回路基板25a,25bとを接続するコネクタは1つ設けるだけでよい。そしてこのコネクタの接続方向をY軸方向に沿うよう配置することで、強固な接続状態を維持することができる。なお、この場合における上記S11の信号線が、各請求項記載の出力線に相当する。
なお、以上において、図2、図8、図10等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図13等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。