JP2012158105A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液滴の種類に適した表面光沢度を実現する。
【解決手段】記録媒体に第1種の液滴と前記第1種の液滴とは異なる第2種の液滴とを付着させる液滴付着手段と、前記記録媒体に付着した前記第1種の液滴および前記第2種の液滴に対して個別に電磁波を照射する照射器と、前記照射器に前記電磁波を周期的に照射させる照射制御手段と、前記第1種の液滴の表面光沢度が所定の閾値以上となるように前記照射器に前記電磁波を照射させる周期である照射周期の周波数を第1周波数に設定し、前記第2種の液滴の表面光沢度が前記閾値未満となるように前記照射周期の周波数を前記第1周波数と異なる第2周波数に設定する周波数設定手段と、を備える画像形成装置。
【選択図】図3

Description

本発明は、記録媒体に付着した液滴に電磁波を照射する照射器を備える画像形成装置に関する。
光硬化性のインクに対して少なくとも1回だけフラッシュを照射するようにフラッシュ光源を制御する記録装置が提案されている(特許文献1、参照)。インクに対して少なくとも1回だけフラッシュが照射されることが保証されるため、確実にインクを硬化させることができる。
特開2006−142613号公報
特許文献1においては、確実にインクを硬化させることができても、インク滴の表面光沢度を調整できないという問題があった。すなわち、インクの種類に適したインク滴の表面光沢度が実現できないという問題があった。例えば、印刷物の表面の光沢度を高めるためのインクと、印刷物の下地を構成するインクとでは、インク滴に求められる表面光沢度が異なる。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、液滴の種類に適した表面光沢度を実現する技術の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置において、液滴付着手段は、記録媒体に第1種の液滴と、第1種の液滴とは異なる第2種の液滴とを付着させる。照射器は、記録媒体に付着した第1種の液滴および第2種の液滴に対して個別に電磁波を照射する。照射制御手段は、照射器に電磁波を周期的に照射させる。周波数設定手段は、第1種の液滴の表面光沢度が所定の閾値以上となるように照射器に電磁波を照射させる周期である照射周期の周波数を第1周波数に設定する。一方、第2種の液滴の表面光沢度が閾値未満となるように照射周期の周波数を第1周波数と異なる第2周波数に設定する。これにより、第1種の液滴については表面光沢度を閾値よりも高くし、第2種の液滴については表面光沢度を閾値以下とすることができる。すなわち、液滴の種類に適した表面光沢度を実現できる。
また、液滴付着手段は、第2種の液滴を第1種の液滴よりも先に記録媒体に付着させてもよい。この場合、印刷物において第1種の液滴の方が第2種の液滴よりも表面に近い位置に付着されることとなり、第1種の液滴の方が第2種の液滴よりも印刷物の表面光沢度に大きく寄与することとなる。従って、第1種の液滴の表面光沢度を閾値よりも高くすることにより、印刷物の高い表面光沢度を実現できる。また、第2種の液滴は、第1種の液滴が付着される下地をなす。従って、第2種の液滴の表面光沢度を閾値以下とし、表面粗さをある程度確保することにより、第2種の液滴の表面と、第2種の液滴の後に付着される液滴(第1種の液滴も含む)との接合強度を高くすることができる。
さらに、液滴付着手段は、白色の色材を含む第2種の液滴を記録媒体に最初に付着させてもよい。白色の色材を含む第2種の液滴を記録媒体に最初に付着させることにより、白色の下地を形成することができ、当該下地の上に他の液滴(第2種の液滴を含む)を付着させることにより、白色の記録媒体上に印刷した場合と同様に多様な色を再現できる。このように第2種の液滴によって白色の下地を形成する場合、第2種の液滴の印刷物の表面光沢度に寄与度は低くなるため、印刷物の表面光沢度を高くするために、第2種の液滴の表面光沢度を閾値よりも高くする必要性は低い。従って、第2種の液滴の表面光沢度を閾値未満とすることにより、表面における乱反射を促進して下地の白色感を高めることができる。さらに、第2種の液滴の表面光沢度を閾値未満とすることにより、下地の上に付着される液滴との接合強度を確保することができる。
また、液滴付着手段は、透明な第1種の液滴を記録媒体に最後に付着させてもよい。透明な第1種の液滴を最後に付着させることにより、印刷物の色を変化させることなく、最も表面に付着される第1種の液滴によって印刷物の表面光沢度を調整できる。すなわち、最も表面に付着される第1種の液滴の表面光沢度を閾値よりも高くすることにより、印刷物の表面光沢度を効果的に高めることができる。
さらに、液滴付着手段は、第2種の液滴よりも後において、第1種の液滴と第2種の液滴のいずれとも異なる第3種の液滴を記録媒体に付着させてもよい。ここで、透明な第1種の液滴を最後に付着させる場合、第1種の液滴によって印刷物の高い表面光沢度が実現できるため、印刷物の表面光沢度を高くするために第3種の液滴の表面光沢度を高くする必要性は低い。また、透明な第1種の液滴を最後に付着させる場合、第3種の液滴の表面と第1種の液滴との接合強度を高くする必要がある。従って、周波数設定手段は、第1種の液滴を記録媒体に付着させる場合には、第3種の液滴の表面光沢度が閾値未満となるように照射周期の周波数を第2周波数に設定するのが望ましい。
一方、透明な第1種の液滴を最後に付着させない場合、第3種の液滴が印刷物の表面光沢度に対する寄与度が大きくなるため、印刷物の表面光沢度を高くするために第3種の液滴の表面光沢度を高くする必要性がある。従って、第1種の液滴を記録媒体に付着させない場合には、第3種の液滴の表面光沢度が閾値以上となるように照射周期の周波数を第1周波数に設定するのが望ましい。
ここで、第1周波数は5Hz以上かつ1000Hz未満であることが望ましい。これにより、第1種の液滴の表面光沢度を閾値よりも高くすることができる。電磁波が照射される期間において液滴の表面が偏って硬化することとなる。電磁波は液滴が深さ方向に進行するにつれて減衰するため、表面に偏って硬化に必要な電磁波のエネルギーが付与されるからである。従って、電磁波が照射される期間において液滴の表面の硬化を促進できる。その一方で、液滴の表面は酸素にさらされるため、液滴の表面の硬化が酸素阻害により抑制される。特に、電磁波が照射されない期間においては、酸素によって硬化が酸素阻害により抑制されにくい液滴の内部が偏って硬化することとなる。すなわち、電磁波を照射させる期間と、電磁波を照射させない期間とを設けることにより、液滴の表面と内部とにおける硬化をバランスよく進行させることができる。液滴の表面と内部とにおける硬化をバランスよく進行させることにより、表面と内部とにおいて液滴の硬化にともなう収縮を均一にすることができる。従って、液滴が歪むことにより表面に凹凸が形成され、表面光沢度が低下することが防止でき、高い表面光沢度を実現できる。第1種についての照射周期の周波数を5Hz以上かつ1000Hz未満に設定することにより、第1種の液滴の表面の硬化を促進させる期間の長さと、第1種の液滴の内部の硬化を促進させる期間の長さとが適度の長さとなり、第1種の高い表面光沢度が実現できる。さらに、第1周波数を50Hz以上かつ400Hz未満と設定してもよい。これにより、第1種の液滴の表面が偏って硬化する期間の長さと、第1種の液滴の内部が偏って硬化する期間の長さとをより好適な長さとすることができ、第1種の液滴の表面光沢度をより高めることができる。
一方、第2周波数は5Hz未満または1000Hz以上であることが望ましい。これにより、第2種の液滴の表面光沢度を閾値以下とすることができる。照射周期の周波数が5Hz未満となると、紫外線を照射させない期間が酸素の拡散速度に対して長くなり過ぎ、液滴の内部においても酸素阻害が生じるものと推測される。一方、照射周期の周波数が1000Hz以上となると、紫外線を照射させない期間が酸素の拡散速度に対して短くなり過ぎ、酸素阻害により表面の偏った硬化を抑制できなくなるものと推測される。従って、第2周波数を5Hz未満または1000Hz以上と設定することにより、第2種の液滴の深さ方向に偏った収縮を生じさせることができる。すなわち、第2周波数を5Hz未満または1000Hz以上と設定することにより、第2種の液滴の表面に歪みを生じさせ第2種の液滴の表面光沢度の低くできる。
なお、以上説明したように照射周期の周波数の設定を行うことにより所望の表面光沢度を実現するために、記録媒体上における液滴の厚みが5μm以上かつ10μm以下であるのが望ましい。
なお、本発明の効果は画像形成装置単独でも実現できるし、画像形成装置を他の装置に組み込んだ場合でも実現できる。
(1A)は画像形成装置のブロック図、(1B)は印刷ヘッドの底面図である。 (2A)は駆動信号を示すグラフ、(2B)は照射条件テーブルを示す表である。 (3A)は表面粗さを示すグラフ、(3B)〜(3G)は印刷物を示す模式図である。 ラジカル濃度を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。なお、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
(1)画像形成装置の構成:
(2)印刷結果:
(3)変形例:
(1)画像形成装置の構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる画像形成装置1のブロック図である。画像形成装置1は、紫外線硬化型インクにより記録媒体上に印刷画像を形成するライン型インクジェットプリンターである。画像形成装置1は、コントローラー10と印刷ユニット20と照射ユニット30と搬送ユニット40とUI(User Interface)部50とを備える。コントローラー10は、図示しないASICとCPUとROMとRAMとを備える。ASICと、ROMに記録されたプログラムを実行するCPUとは、後述する印刷制御処理のための各種演算処理を実行する。本実施形態において記録媒体は透明な樹脂フィルムであることとする。
印刷ユニット20は、インクタンク21と印刷ヘッド22とピエゾドライバー23とを備える。インクタンク21は、印刷ヘッド22に供給するためのインクを貯留する。本実施形態のインクタンク21は、W(ホワイト)とC(シアン)とM(マゼンタ)とY(イエロー)とK(ブラック)とCL(クリアー(透明))のインクをそれぞれ貯留する。インクは紫外線硬化型インクであり、電磁波としての紫外線のエネルギーを受け重合が進行する紫外線重合樹脂と重合開始剤と色材(CLを除く)等を含む。例えば特開2009−57548号公報に記載された紫外線硬化型インクをインクタンク21が貯留する。
図1Bは、印刷ヘッド22を記録媒体側から見て示す底面図である。印刷ヘッド22は、インクの種類ごとに設けられ、記録媒体(破線)の搬送方向の上流側からW→C→M→Y→K→CLの順に配列されている。印刷ヘッド22は、それぞれが記録媒体に対面するノズル面を有し、当該ノズル面において複数配列するノズル22aを備える。印刷ヘッド22においてノズル22aは線状に配列され、ノズル22aの配列方向は記録媒体の幅方向(搬送方向の直交方向)とされる。また、ノズル22aは記録媒体の幅よりも広い範囲に配列される。各ノズル22aは図示しないインク室と連通しており、インク室にはインクタンク21から供給されたインクが満たされる。インク室にはノズル22aごとに図示しないピエゾ素子が備えられており、ピエゾドライバー23はコントローラー10からの制御信号に基づいてピエゾ素子に駆動電圧パルスを印加する。ピエゾ素子は、駆動電圧パルスが印加されると機械的に変形し、インク室に満たされたインクを加減圧する。これにより、ノズル22aからインク滴が記録媒体に向かって吐出される。ノズル22aは記録媒体の幅よりも広い範囲に配列されるため、記録媒体の幅方向の全域にインク滴を付着させることができる。本実施形態において、記録媒体上に形成されるインク滴の平均厚みが5μm以上かつ10μm未満となるように、1ショットあたり重量c(例えばc=10ng)でインク滴を吐出させることとする。なお、印刷ヘッド22は液滴付着手段に相当する。
照射ユニット30は、駆動信号生成回路31とLED光源32とを備える。なお、LED光源32は照射器に相当する。図1Bに示すように、照射ユニット30はインクの種類ごとに設けられており、LED光源32は印刷ヘッド22から所定距離d(例えばd=50mm)だけ記録媒体の搬送方向下流側へ離れた位置に設けられている。LED光源32は、LED発光素子を記録媒体の幅方向の複数配列することにより形成され、記録媒体の幅方向の全域においてほぼ均等に電磁波としての紫外光を照射する。LED光源32から記録媒体上に紫外光が照射される照射範囲Aは、搬送方向に所定幅w(例えばw=80mm)を有する。記録媒体を搬送方向へ搬送することにより、印刷ヘッド22から吐出されたインク滴を、当該印刷ヘッド22から所定距離dだけ下流側に備えられたLED光源32の照射範囲A内に位置させることができる。これより、LED光源32が照射した紫外光のエネルギーによって、記録媒体上に付着したインク滴における重合が開始し、進行する。すなわち、各印刷ヘッド22から吐出されたインク滴は、各印刷ヘッド22の下流側に備えられたLED光源32によって硬化させられる。
駆動信号生成回路31は、コントローラー10からの制御信号に基づいてLED光源32に供給する駆動信号を生成する。駆動信号生成回路31はLED光源32ごとに備えられており、LED光源32ごとに異なる駆動信号を生成する。従って、各印刷ヘッド22に対応するインクの種類ごとに異なる紫外光の照射条件によりインク滴を硬化させることができる。コントローラー10は、図示しないROMに照射条件テーブル10aを記録しており、当該照射条件テーブル10aを参照することにより、駆動信号生成回路31に出力させる駆動信号を特定する。
図2Aは駆動信号を示すタイミングチャートである。図2Aの縦軸は駆動信号の電流値およびLED光源32の照度を示し、横軸は時刻を示す。本実施形態の駆動信号は、0または所定値i(約0.75W/cm2の照度相当値)のいずれかの電流値Iを有する矩形パルス電流であり、電流値Iが所定値iとなる照射期間t1においてLED光源32が紫外光を照射し、電流値が0となる停止期間t2においてLED光源32が紫外光を照射しない。本実施形態において、照射期間t1の長さと停止期間t2の長さとの比は1:1であり、照射期間t1の長さと停止期間t2の長さとの和は照射周期Pに相当する。なお、照射周期Pは、照射期間t1においてLED光源32に紫外光を照射させる周期に相当する。また、駆動信号は理想的に矩形パルス電流であるが、図2Aにおいて破線で示すようにLED光源32が実際に照射する紫外光の照度波形は、なまった形状となり、照射期間t1におけるピーク照度が約0.75W/cm2となるように所定値iが決められる。
図2Bに示す照射条件テーブル10aにおいては、インクの種類(W,C,M,Y,K,CL)ごとに備えられたLED光源32のそれぞれに対して出力する駆動信号の照射周期Pの周波数Fが規定されている。また、照射周期Pの周波数Fは、印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせごとに規定されている。なお、印刷物とは個々のインク滴を指すのではなく、複数のインク滴が記録媒体上にて重なった印刷結果全体を指す。本実施形態において、質感モードとして光沢モードと半光沢モードとマットモードとが用意される。Wについてはいずれの質感モードにおいてCLの使用可否に拘わらず照射周期Pの周波数Fが0Hzと規定されている。なお、照射周期Pの周波数Fが0Hzである場合、駆動信号の電流値Iが常に所定値iとなり、紫外光が連続照射されることとする。CLが使用可の場合にのみCLについての照射周期Pの周波数Fが規定されており、CLが使用否の場合にはLED光源32に紫外光の照射をさせない。CLについて、光沢モードについて照射周期Pの周波数Fが200Hzと規定され、半光沢モードについて照射周期Pの周波数Fが10Hzと規定され、マットモードについて照射周期Pの周波数Fが0Hzと規定されている。また、C,M,Y,Kについては、CLが使用否の場合において質感モードに拘わらず照射周期Pの周波数Fが0Hzと規定されている。CLが使用否の場合におけるC,M,Y,Kについての照射周期Pの周波数Fは、光沢モードで200Hzと規定され、半光沢モードで10Hzと規定され、マットモードで0Hzと規定されている。
コントローラー10は、印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせを取得すると、照射条件テーブル10aにて当該組み合わせに対応づけられた照射周期Pの周波数Fを各種類のインクについて特定する。そして、各種類のインクに対応する駆動信号生成回路31に対して、各種類のインクについて特定した照射周期Pの周波数Fの駆動信号を生成させる制御信号を出力する。これにより、各種類のインクに対応する駆動信号生成回路31は駆動信号を生成し、LED光源32に出力する。なお、印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせは、単一の印刷ジョブの印刷において変化することなく、単一の印刷ジョブの印刷期間内においては照射周期Pの周波数Fは変化しない。また、図示しないが駆動信号生成回路31は、電流値Iが所定値iの直流電流を供給する直流電源回路と、各周波数Fのパルス波を生成する可変周期発振回路と、前記直流電流を前記パルス波に基づいてスイッチングするスイッチング回路等を含む。コントローラー10は、照射制御手段および周波数設定手段に相当する。なお、固体発光素子であるLED光源32を用いることにより、紫外光の周期的な照射を電流パルスによって容易に制御できる。
搬送ユニット40は、図示しない搬送モーターと搬送ローラーとモータードライバー等を備え、コントローラー10からの制御信号に基づいて搬送方向に記録媒体を搬送する。これにより、記録媒体上における搬送方向および幅方向の各位置にインク滴を着弾させることができ、二次元の印刷画像を形成することができる。また、記録媒体の各位置を各種類のインクに対応する印刷ヘッド22の直下に順に移動させることができ、W→C→M→Y→K→CLの順に下からインク滴を重ねて付着させていくことができる。すなわち、記録媒体に対して白色の色材を含むWのインク滴が最初に付着され、その後、記録媒体に対してC,M,Y,Kのインク滴が順次に付着され、最後に透明なCLのインク滴が記録媒体に対して付着される。本実施形態において、CLのインク滴は第1種の液滴であり、Wのインク滴は第2種の液滴であり、C,M,Y,Kのインク滴は第3種の液滴である。
また、各種類のインクのインク滴が付着される間には、直前に付着されたインク滴のインクの種類に対応したLED光源32の照射範囲Aに当該インク滴が移動し、当該インク滴が紫外光により硬化させられる。そして、照射範囲Aを移動する間にインク滴が硬化し、その後、さらに記録媒体が搬送されることにより、次の種類のインク滴が重ねて付着される。すなわち、各種類のインクのインク滴は、インクの種類に対応するLED光源32によって個別に紫外線が照射される。むろん、後に付着されるインク滴のインクの種類に対応するLED光源32によっても、先に付着されたインク滴に紫外線が照射されることとなる。しかし、先に付着されたインク滴の硬化がすでにある程度完了しているため、後に付着されるインク滴のインクの種類に対応するLED光源32が、先に付着されたインク滴の表面光沢度に与える影響は無視できる。
なお、Wのインク滴を最下層(最も記録媒体側)に形成しておくことにより、記録媒体が白色でない場合でも、記録媒体が白色であると同様にフラットな分光反射特性を有する下地を形成できる。当該下地の上にそれぞれ分光吸光特性の異なるC,M,Y,Kの各色材を含むインク滴を重ねて行くことにより、多様な色を再現できる。さらに、CLのインク滴を重ねれば、CLのインク滴により印刷物の表面の質感を調整できる。本実施形態において、定速印刷時における記録媒体の搬送速度はv1〜v2(例えばv1=200,v2=1000mm/秒)であり、記録媒体に付着してからインク滴がLED光源32の照射範囲A内に移動するまでの期間の長さは、d/v2〜d/v1秒となる。さらに、照射範囲A内にてインク滴に紫外光が照射される期間の長さは、w/v2〜w/v1秒となる。
UI部50は、画像を表示させる表示部と操作を受け付ける操作部とを備える。UI部50は、印刷物の質感モードの選択指示と、CLの使用可否の指定とを受け付けるための印刷条件設定画像を、コントローラー10からの制御信号に基づいて表示部に表示させる。そして、UI部50は操作部により質感モードの選択指示と、CLの使用可否の指定とを印刷ジョブごとに受け付け、これらの組み合わせを示す操作信号をコントローラー10に出力する。従って、コントローラー10は、印刷ジョブごとに印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせを取得し、当該組み合わせに対応する照射周期Pの周波数Fを特定できる。
次に、以上説明した画像形成装置1によって記録媒体上に印刷される印刷物の印刷結果について説明する。
(2)印刷結果:
図3Aは表面粗さ(表面光沢度)を示すグラフであり、図3B〜3Gは印刷物を示す模式図である。図3Aの縦軸は表面粗さRqを示し、横軸は照射周期Pの周波数F(対数)を示している。表面粗さRqは、以下の手順により計測される。まず、重量cのインク滴を記録媒体上に付着させ、周波数Fの紫外光によりインク滴を硬化させることにより、計測用サンプルを形成する。なお、本実施形態では最も表面側に重ねられ、表面光沢に対する寄与度の大きいCLのインク滴により計測用サンプルを形成することとする。そして、計測用サンプルの各位置xにおける表面の高さh(x)を長さlの区間(x=0〜l)にわたって、例えば焦点深度法等の光学的手法により計測する。なお、高さh(x)がインク滴そのものの曲面形状に影響されないように、長さlは、記録媒体に平行な方向におけるインク滴の大きさよりも十分に小さくすることが望ましい。また、高さh(x)は、計測用サンプルの表面に接触するプローブの変位を計測することにより得られてもよい。次に、高さh(x)を下記の(1)式に代入することにより、表面粗さRqを得る。
Figure 2012158105
(1)式が示すように表面粗さRqは、高さh(x)の平均値に対する偏差f(x)の二乗平均平方根(Root Mean Square)に相当する。ここで、表面粗さRqが小さいほど計測用サンプルの表面が鏡面に近くなるため、表面粗さRqが小さいほど表面光沢度が高くなる。
図3Aに示すように、表面粗さRqは、照射周期Pの周波数Fが150〜200Hzである場合に極小値(約1.5μm)となり、計測用サンプルの表面光沢度は極大値となる。照射周期Pの周波数Fが50Hz以上かつ400Hz未満の光沢帯域B1に属する場合に、表面粗さRqは第1閾値(5μm)未満となり、計測用サンプルの表面光沢度は表面粗さRqの第1閾値に対応する表面光沢度よりも高くなる。また、照射周期Pの周波数Fが5Hz以上かつ50Hz未満、または、400Hz以上かつ1000Hz未満の半光沢帯域B2に属する場合に、表面粗さRqは第1閾値以上かつ第2閾値(約15μm)未満となり、計測用サンプルの表面光沢度は表面粗さRqの第2閾値に対応する表面光沢度よりも高いが、第1閾値に対応する表面光沢度以下となる。一方、照射周期Pの周波数Fが5Hz未満または1000Hz以上のマット帯域B3に属する場合に、表面粗さRqは第
2閾値以上となり、計測用サンプルの表面光沢度は表面粗さRqの第2閾値に対応する表面光沢度以下となる。
図4は、インク滴中のラジカル濃度を示すグラフである。ここでは、以下の条件でインク滴の表面と最深部とにおけるラジカル濃度をモデル化することとする。まず、紫外線が照射される照射期間t1(図2A)においては、最深部のラジカル濃度は、表面のラジカル濃度の増分の50%だけ、単位時間あたりに増加することとする。紫外線はインク滴が深さ方向に進行するにつれて減衰するため、表面に偏ってラジカルの発生に必要な紫外線のエネルギーが付与されるからである。また、表面の近くで生じたラジカルの連鎖は表面の近くで停止する可能性が高く、インク滴の最深部ではラジカル濃度が増加しにくいからである。一方、紫外線が照射されない停止期間t2(図2A)において、表面のラジカル濃度は、紫外線が照射される照射期間t1におけるラジカル濃度の増分の40%だけ、単位時間あたりに減少することとする。また、インク滴の最深部まで酸素が拡散せず、照射期間t1と停止期間t2のいずれにおいても、最深部のラジカル濃度は酸素阻害の影響を受けないこととする。
図4に示すように、照射期間t1においては表面のラジカル濃度の増分が最深部に対して大きくなるため、表面のラジカル濃度が最深部よりも大きくなっていく。一方、停止期間t2においては表面のみ酸素阻害の影響を受けてラジカル濃度が減少するため、照射期間t1に生じたラジカル濃度の差は停止期間t2において抑制される。従って、照射期間t1と停止期間t2とを繰り返して到来させることにより、表面と最深部とにおけるラジカル濃度の差を抑制しつつ、ラジカル濃度を増大させていくことができる。すなわち、表面と最深部とにおけるインク滴の硬化をバランスよく進めていくことができ、表面と最深部とにおいてインク滴の硬化にともなう収縮を均一にすることができる。従って、インク滴が歪むことにより表面に凹凸が形成され、表面光沢度が低下することが防止でき、高い表面光沢度を実現できる。表面と最深部とにおけるラジカル濃度の差が小さければ小さいほど、高い表面光沢度を実現することができる。
また、図3Aが示すように、インク滴の表面光沢度は、各照射期間t1が開始する照射周期Pの周波数Fに依存することが確認された。これは、周波数Fが変化すると、照射周期P(照射期間t1,停止期間t2)の長さと、ラジカル重合反応の反応速度と、インク滴における酸素の拡散速度との相対的なバランスが変化するからであると推測される。図3Aに示すように、照射周期Pの周波数Fがマット帯域B3に属する場合、図4に示したモデルが成り立たなくなる。照射周期Pの周波数Fがマット帯域B3に属する5Hz未満となると、酸素の拡散速度に対して停止期間t2が長くなり過ぎ、インク滴の最深部においても酸素阻害が生じるものと推測される。この場合、インク滴全体が未硬化となる可能性が高くなる。一方、照射周期Pの周波数Fがマット帯域B3に属する1000Hz以上となると、酸素の拡散速度に対して停止期間t2が短くなり過ぎ、酸素阻害により表面の偏った硬化を抑制できなくなるものと推測される。なお、計測用サンプルにおけるインク滴の厚みを5〜10μmに変化させた場合、および、計測用サンプルの形成に使用するインクの種類を変えた場合でも、図3Aとほぼ同様の表面粗さRqが得られた。
図3B〜3Gは、印刷物(記録媒体(ハッチング)の直交断面)を、質感モードとCLの使用可否との組み合わせごとに示す模式図である。図3B,3D,3FはCLが使用可の場合の印刷物を示し、図3C,3E,3GはCLが使用否の場合の印刷物を示す。また、図3B,3Cは質感モードが光沢モードの場合の印刷物を示し、図3D,3Eは質感モードが半光沢モードの場合の印刷物を示し、図3F,3Gは質感モードがマットモードの場合の印刷物を示す。
図2Bの照射条件テーブル10aにおいて、質感モードとCLの使用可否に拘わらず、Wについての照射周期Pの周波数Fはマット帯域B3に属する0Hzとされ、Wのインク滴の表面光沢度は低くされる。これにより、表面における乱反射を促進して白色感を高めることができる。また、図3B〜3Gに示すようにWのインク滴上に他の種類のインク滴が重なって接合することを考慮して、Wのインク滴の表面光沢度を低くしている。インク滴の表面光沢度が低いほど、すなわち表面粗さRqが大きいほど、厚み方向に重なるインク滴同士の接合面積が増大し、高い接合強度を得ることができる。さらに、Wのインク滴は最も表面から遠い記録媒体側に形成され、表面の質感に対する寄与度が低いため、質感モードに拘わらずWのインク滴の表面光沢度は低くしても問題は生じない。
一方、図3B,3D,3Fに示すようにCLが使用可である場合、CLのインク滴は最表面に形成されるため、印刷物の質感に寄与度は最も大きい。従って、図2Bの照射条件テーブル10aにおいて、質感モードが光沢モードである場合、CLについての照射周期Pの周波数Fは光沢帯域B1に属する200Hzとされる。また、質感モードが半光沢モードである場合、CLについての照射周期Pの周波数Fは半光沢帯域B2に属する10Hzとされ、質感モードがマットモードである場合、CLについての照射周期Pの周波数Fはマット帯域B3に属する0Hzとされる。これにより、CLが使用可である場合に、ユーザーが希望した表面光沢度の印刷物を得ることができる。なお、CLが使用可である場合には、上層のインク滴との接合強度の向上を目的として、W,C,M,Y,Kについての照射周期Pの周波数Fはマット帯域B3に属する0Hzとされる。CLが使用可である場合、W,C,M,Y,Kのインク滴が表面の質感に与える影響度は小さいため、接合強度を重視しても問題はない。
これに対して、CLが使用否である場合、図3C,3E,3Gに示すようにC,M,Y,Kのインク滴が表面の質感に与える影響度は大きくなる。従って、図2Bの照射条件テーブル10aにおいて、CLが使用否である場合、C,M,Y,Kについての照射周期Pの周波数Fとして質感モードに応じた値が規定されている。すなわち、質感モードが光沢モードである場合、C,M,Y,Kについての照射周期Pの周波数Fは光沢帯域B1に属する200Hzとされる。また、質感モードが半光沢モードである場合、C,M,Y,Kについての照射周期Pの周波数Fは半光沢帯域B2に属する10Hzとされ、質感モードがマットモードである場合、C,M,Y,Kについての照射周期Pの周波数Fはマット帯域B3に属する0Hzとされる。
以上説明したように、照射周期Pの周波数Fを光沢帯域B1や半光沢帯域B2に属する値に設定することにより、紫外光を連続照射する場合よりもインク滴の高い表面光沢度を得ることができる。また、選択指示された質感モードに応じて照射周期Pの周波数Fを切り替えることにより、所望の表面光沢度を有する印刷物を得ることができる。また、インクの種類に応じて照射周期Pの周波数Fを設定することにより、インクの機能、および、インク滴の付着順序に適したインク滴の表面光沢度(表面粗さ)を実現できる。
(3)変形例:
光沢帯域B1または半光沢帯域B2に属する照射周期Pの周波数Fを設定すればよく、前記実施形態の照射条件テーブル10aに規定された周波数F以外の周波数を設定してもよい。また、C,M,Y,Kについて一様に照射周期Pの周波数Fを設定したが、C,M,Y,Kについてそれぞれ異なる照射周期Pの周波数Fを設定してもよい。すなわち、C,M,Y,Kのうち後にインク滴が付着されるインクの種類であるほど、インク滴の表面光沢度が増すように照射周期Pの周波数Fを設定してもよい。さらに、図3B〜3Gのようにインク滴が厚み方向に重なる確率は、後に付着されるインク滴の記録密度が小さいほど低くなる。従って、印刷する画像データが薄いインク色を示すほど、先にインク滴が吐出されるインクの種類についても、高い表面光沢度を実現する照射周期Pの周波数Fを設定するようにしてもよい。
また、記録媒体の搬送方向に直交する主走査方向にキャリッジ(印刷ヘッド)が移動しながらインク滴が吐出されるシリアルプリンターに本発明を適用してもよい。また、この場合、照射器はキャリッジに備えられてもよいし、キャリッジとは別に備えられてもよい。むろん、複数の種類のインクを使用する画像形成装置に限らず、単一色のインクを使用する画像形成装置においても、照射周期Pの周波数Fを設定することにより、高い表面光沢度のモノクロ印刷画像を得ることができる。さらに、前記実施形態では、紫外線の照射周期Pの周波数Fを設定したが、可視光やマイクロ波等の他の電磁波の照射周期Pの周波数Fを設定してもよい。これにより、他の電磁波により硬化するインク滴によって、高い表面光沢度の印刷物を得ることができる。むろん、電磁波の発生源はLEDに限られず、希ガス光源等であってもよい。
1…画像形成装置、10…コントローラー、10a…照射条件テーブル、20…印刷ユニット、21…インクタンク、22…印刷ヘッド、22a…ノズル、23…ピエゾドライバー、30…照射ユニット、31…駆動信号生成回路、32…光源、40…搬送ユニット、50…UI部、A…照射範囲、B1…光沢帯域、B2…半光沢帯域、B3…マット帯域、P…照射周期、t1…照射期間、t2…停止期間。

Claims (7)

  1. 記録媒体に第1種の液滴と前記第1種の液滴とは異なる第2種の液滴とを付着させる液滴付着手段と、
    前記記録媒体に付着した前記第1種の液滴および前記第2種の液滴に対して個別に電磁波を照射する照射器と、
    前記照射器に前記電磁波を周期的に照射させる照射制御手段と、
    前記第1種の液滴の表面光沢度が所定の閾値以上となるように前記照射器に前記電磁波を照射させる周期である照射周期の周波数を第1周波数に設定し、前記第2種の液滴の表面光沢度が前記閾値未満となるように前記照射周期の周波数を前記第1周波数と異なる第2周波数に設定する周波数設定手段と、
    を備える画像形成装置。
  2. 前記液滴付着手段は、前記第1種の液滴よりも先に前記第2種の液滴を前記記録媒体に付着させる、
    請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記液滴付着手段は、白色の色材を含む前記第2種の液滴を前記記録媒体に最初に付着させる、
    請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記液滴付着手段は、透明な前記第1種の液滴を前記記録媒体に最後に付着させる、
    請求項2または請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
  5. 前記液滴付着手段は、前記第2種の液滴よりも後において、前記第1種の液滴と前記第2種の液滴のいずれとも異なる第3種の液滴を前記記録媒体に付着させるとともに、
    前記周波数設定手段は、前記第1種の液滴を前記記録媒体に付着させる場合には、前記第3種の液滴の表面光沢度が前記閾値未満となるように前記照射周期の周波数を前記第2周波数に設定し、前記第1種の液滴を前記記録媒体に付着させない場合には、前記第3種の液滴の表面光沢度が前記閾値以上となるように前記照射周期の周波数を前記第1周波数に設定する、
    請求項4に記載の画像形成装置。
  6. 前記周波数設定手段は、5Hz以上かつ1000Hz未満の前記第1周波数を設定し、5Hz未満または1000Hz以上の前記第2周波数を設定する、
    請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  7. 前記周波数設定手段は、前記記録媒体上における前記第1種の液滴および前記第2種の液滴の厚みが5μm以上かつ10μm以下である場合において、前記照射周期の周波数を前記第1周波数および前記第2周波数と設定する、
    請求項6に記載の画像形成装置。

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