JP2012157899A - 金属帯の冷間圧延機および冷間圧延方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ステンレス鋼帯あるいはステンレス箔などの金属帯Sを冷間圧延する際に金属帯Sに光沢ムラが発生するのを防止できる、あるいは圧延荷重を低減しても良好な圧延が可能となる、金属帯の冷間圧延機および冷間圧延方法を提供する。
【解決手段】金属帯Sの冷間圧延に用いる圧延機100の上ワークロール1aの軸芯Xaを下ワークロール1bの軸芯Xbに対して金属帯Sの搬送方向Aにオフセットさせて圧延する。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属帯の冷間圧延機および冷間圧延方法に関する。
金属帯の表面品質に関する需要家の要求は、近年、ますます高まりつつある。ステンレス鋼帯などには優れた光沢が求められるものも多い。しかも、金属帯の表面全面にわたって光沢は均一でムラがないことが求められる。
金属帯を冷間圧延する際に発生する光沢ムラには、さまざまな原因のものがある。ステンレス鋼帯を冷間圧延する際に発生する、図4(a)に鳥瞰図的に示すような帯状のムラであれば、ロールと鋼帯との間での焼き付き(ヒートスクラッチ)に起因するとして、圧延油の温度低減や供給量増加による冷却促進、圧下率や圧延速度の低減による圧延負荷の低減、あるいは、ロールの交換などの対策がとられる。図4(b)に示すような雲状のムラであれば、冷間圧延前の鋼帯の表面粗さ、あるいは、硬さの均一化などの対策がとられる。
しかしながら、発明者らの経験によれば、特に、厚さが0.2mm以下のステンレス鋼帯あるいはステンレス箔などを冷間圧延する際に顕著に発生する光沢ムラとして、図5に示すようなカミナリ状のものがあることが確認されている。
特許文献1では、冷間圧延のさらに後で補助的に軽圧下の冷間圧延を行う、いわゆる調質圧延を対象として、作業ロール(ワークロール)と補強ロール(バックアップロール)の平行度がずれたまま圧延すること(ロールクロス)に起因して、ワークロールの軸方向(鋼帯幅方向)の粗度変動が、光沢ムラの原因になるとしている。
特許文献1では、そこで、図6に示すように、下バックアップロール4のチョック41を調質圧延機10のハウジング9入側に押し付け、それに伴って、上バックアップロールのチョックもハウジング9入側に、そして、上下ワークロール1,1はハウジング9出側に押し付け、ワークロール1とバックアップロール4の軸芯の金属帯S搬送方向へのずれ(オフセット)を圧延中一定に保つことで、ロールクロスを極小化し、光沢ムラの発生を防止することを提案している。
特許第3574638号公報
しかしながら、発明者らの研究によれば、特許文献1のような、ワークロールとバックアップロールの軸芯を金属帯の搬送方向にオフセットさせる方法では、発明者らの経験したカミナリ状のものも含めた、光沢ムラの発生防止にまではつながらない。
また、複数パスの冷間圧延により金属帯を所定厚みにするが、圧延パスが進むにしたがって金属帯は加工硬化するため、後段パスになるほど圧延荷重や圧延張力を高くする必要があり、場合によっては圧延の継続が困難となることもある。例えば、冷間圧延によりステンレス鋼帯にエンボス模様を付けて意匠性を持たせる場合、圧延最終パスではエンボス模様の付いたワークロール(以下、エンボスワークロールという)に交換してステンレス鋼帯にエンボス模様を転写させるが、ステンレス鋼帯はそれまでの圧延パスにより加工硬化しているため、エンボス模様を十分に転写できずに模様が浅くなったり、模様を深くしようとして圧延荷重を上げると、模様が崩れたり模様の深さにばらつきが生じたりする。そのため、従来は圧延最終パス前に焼きなましを行ってからエンボスワークロールを用いて圧延していたため、生産性を阻害し、またコストアップの要因となっていた。
本発明は、従来技術のかような問題を解決するためになされたものであり、ステンレス鋼帯あるいはステンレス箔などの金属帯を冷間圧延する際に金属帯に光沢ムラが発生するのを防止できる、あるいは圧延荷重を低減しても良好な圧延が可能となる、金属帯の冷間圧延機および冷間圧延方法を提供することを目的とする。
発明者らは光沢ムラの原因を探るため研究を重ねた結果、特に、厚さが0.2mm以下のステンレス鋼帯あるいはステンレス箔などの金属帯を冷間圧延する際に顕著に発生する光沢ムラは、図2(a)(iii)に示すように、圧延機の入側にて金属帯Sに作用する張力により金属帯Sに発生する縦皺に、圧延油が溜まったまま圧延されることに起因することに気付いた。なお、図2(a)(i)は側面からみた様子を、同(ii)は出側の様子を示す。
皺の凹部には圧延油が溜まりやすく、油膜厚が厚くなる。皺の凸部には圧延油が溜まりにくく、油膜厚が薄くなる。油膜厚が厚い部分はワークロール1a,1bのなめらかな表面が金属帯Sに転写されにくいため光沢度が低下し、油膜厚が薄い部分はワークロール1a,1bのなめらかな表面が金属帯Sに転写されやすいため光沢度が向上する。その結果、縦皺に圧延油が溜まったまま圧延されると、皺のある部分とそうでない部分とで光沢度が変動して光沢ムラとなる。
そこで、発明者らはこの縦皺を伸ばして解消させることを目的として、図2(b)(iii)に示すように、冷間圧延機の上下ワークロール1a,1bにて金属帯Sをまさに圧延しようとする直前で、金属帯Sのある程度の長さの部分をワークロール1b(1aでもよい)に沿わせることに想到し、そのためには、上下ワークロール1a,1bを金属帯Sの搬送方向にオフセットさせることが有効であると考えた。すなわち、図5を用いて説明した、特許文献1のように、ワークロール1とバックアップロール4をオフセットさせるのではなく、図2(b)のように、上下のワークロール1a,1b同士をオフセットさせることで、縦皺を伸ばして光沢ムラの発生を防止できることを知見した。なお、図2(b)(i)は側面からみた様子を、同(ii)は出側の様子を示す。
そして、図2(b)のようにワークロールをオフセットさせて金属帯を冷間圧延すると、金属帯にせん断歪を加えることができるため、圧延荷重を低くすることができ、あるいは、より高い圧下率で圧延することが可能となることも知見した。
本発明は以上のような知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)金属帯の冷間圧延機であって、該圧延機の上ワークロールの軸芯を下ワークロールの軸芯に対して金属帯搬送方向にオフセットさせたことを特徴とする金属帯の冷間圧延機。
(2)金属帯の冷間圧延方法であって、該金属帯の冷間圧延に用いる圧延機の上ワークロールの軸芯を下ワークロールの軸芯に対して金属帯搬送方向にオフセットさせて圧延することを特徴とする金属帯の冷間圧延方法。
本発明によれば、ステンレス鋼帯あるいはステンレス箔などの金属帯を冷間圧延する際に金属帯に光沢ムラが発生するのを防止できる、金属帯の冷間圧延機および冷間圧延方法を提供できる。
また、本発明を用いて金属帯を圧延すると当該金属帯にせん断歪を加えることができるため圧延荷重の低減効果も得られ、同一の圧延荷重であれば、より高い圧下率で、効率良く良好な圧延を行うことが可能となる。
本発明の実施形態について説明するための線図である。 本発明の実施形態について説明するための線図である。 本発明の実施例について説明するための線図で、ワークロールのオフセット量と光沢ムラとの関係を示す図である。 従来技術について説明するための線図である。 従来技術について説明するための線図である。 従来技術について説明するための線図である。 本発明の実施例について説明するための線図で、ワークロールのオフセット量と圧延荷重との関係を示す図である。
図1は、本発明の実施形態の一例を示す20段圧延機(ゼンジミア圧延機)100である。1a,1bはそれぞれ上下ワークロール、2a,2bはそれぞれ上下第一中間ロール、3a,3bはそれぞれ上下第二中間ロール、4a,4bはそれぞれ上下バックアップベアリングである。5はリール、6はデフレクタロール、Sは金属帯である。
ゼンジミア圧延機100は金属帯Sの搬送方向Aを逆にして往復圧延することができる。二つのリール5は、ともに、巻き取り、巻き戻し、双方の機能を果たすことができる。
ゼンジミア圧延機100は該圧延機100の上下ワークロール1a,1bの軸芯Xa,Xbを金属帯Sの搬送方向Aにオフセットさせている。
金属帯Sの冷間圧延に用いるゼンジミア圧延機100の上ワークロール1aの軸芯Xaを下ワークロール1bの軸芯Xbに対して金属帯Sの搬送方向Aにオフセットさせて圧延することで、先にも図2(b)(iii)を用いて説明したように、ゼンジミア圧延機100の入側にて金属帯Sに作用する張力により金属帯Sに発生する縦皺を、まさに圧延しようとする直前で、ある程度の長さだけ金属帯Sをワークロール1bに沿わせることにより、伸ばして解消することができる。
これにより、ステンレス鋼帯あるいはステンレス箔などの金属帯Sを冷間圧延する際に金属帯Sに光沢ムラが発生するのを防止できる。
また、圧延荷重を低減できるので、エネルギコストを削減できる。圧延荷重を下げない場合はその分圧下率を高めて圧延を行うことができるので、生産性を高めることができ、あるいは、エンボス模様を付与する場合に必要とされていた圧延パス途中での焼きなましの省略が可能となる。
本発明の上記実施形態に登場する20段圧延機(ゼンジミア圧延機)100を用いてSUS430鋼帯を板厚0.4mmから板厚0.05mmまで圧延した。上下ワークロール1a,1bはともに材質がハイス鋼で直径57mmとし、圧延油を鉱油とした場合に、上ワークロール1aの軸芯の下ワークロール1bの軸芯に対する金属帯Sの搬送方向Aへのオフセット量を次第に増やしていったときの光沢ムラの発生の様子を図3に示す。
オフセット量を3mm以上にすると、圧延後の光沢ムラは問題ないレベルにできることがわかった。なお、図3中、光沢ムラのランクを示すA,B,C,Dは、金属帯内の光沢度Gs20°(JIS Z 8741-1997)の違いが、A:20、B:30、C:40、D:50を意味する。
次に、同圧延機100を用いてSUS430鋼帯を板厚4.0mmから板厚0.7mmまで圧延を行なった。この際、圧延最終パスの1パス前で圧延を中断し、ワークロールをエンボス模様が付与されているエンボスワークロールに交換し、その後、最終パス圧延を行なってエンボス仕上げ材を作製した。
図7に、圧下率が同一である場合の圧延結果の一例を示す。比較として、ワークロールをオフセットさせずに圧延最終パス前に焼きなましを行なった場合を黒丸で示した。同図より、ワークロールオフセット量を1〜4mmにすると、圧延最終パス前の焼きなましを行わずとも良好なエンボス模様が形成されることがわかる。また、圧延最終パス前の焼きなましを行なわない場合、オフセット量が4mmと1mmとの場合を比較すると、圧延荷重が約5割に低減していることもわかる。なお、合否判定は、模様の深さが40〜140μmの範囲にあるものを合格、それ以外を不合格とした。
以上の通りであるが、本発明は、以上説明した実施形態に限られるものではない。例えば、以上の例では、20段圧延機(ゼンジミア圧延機)を対象として説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、12段、6段、4段のほか各種の冷間圧延機に適用できる。また、本発明は、厚さが0.2mmを超えるステンレス鋼帯に適用しても何らこれを妨げるべき事情はなく、金属帯Sもステンレス鋼のほか、普通鋼、銅、アルミなど各種の金属帯の冷間圧延に本発明を適用しても何らこれを妨げるべき事情はない。
1,1a,1b ワークロール
2a,2b 第一中間ロール
3a,3b 第二中間ロール
4,4a,4b バックアップベアリング
5 リール
6 デフレクタロール
7 プロジェクトブロック
8 ライナープレート
9 ハウジング
10 調質圧延機
100 20段圧延機(ゼンジミア圧延機)
S 金属帯
A 搬送方向

Claims (2)

  1. 金属帯の冷間圧延機であって、該圧延機の上ワークロールの軸芯を下ワークロールの軸芯に対して金属帯搬送方向にオフセットさせたことを特徴とする金属帯の冷間圧延機。
  2. 金属帯の冷間圧延方法であって、該金属帯の冷間圧延に用いる圧延機の上ワークロールの軸芯を下ワークロールの軸芯に対して金属帯搬送方向にオフセットさせて圧延することを特徴とする金属帯の冷間圧延方法。
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