JP2012154023A - 作業機械の旋回制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】旋回用電動モータの出力トルクの過剰な上昇を抑え逆行を自動的に防止する。
【解決手段】手段31は装置20からの指令に基づき回転速度の目標値を、手段32は回転速度センサ81からの検出値と目標値の偏差を、手段33は偏差の解消方向の第1目標トルクを、手段34は装置20からの指令に基づき目標値と同方向の第2目標トルクを算出する。手段50は電動モータ12の回転角度の変化量を第1範囲内で、手段60は同変化量を第2範囲内で算出する。手段40は手段50,60からの変化量に基づき所定時間t前の回転角度に戻る方向の第3目標トルクを算出し、手段73は第1目標トルクを第2,第3目標トルクのうち第1目標トルクと同方向で絶対値が大きい方に制限する。第1範囲の略全体は一方向の変化量の範囲を、残りの僅かな範囲は他方向の変化量の範囲を規定し、第2範囲の略全体は他方向の変化量の範囲を、残りの僅かな範囲は一方向の変化量の範囲を規定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、旋回体を電動モータの出力トルクによって駆動する旋回装置と、相反する2方向のいずれかへの選択的な操作に伴って、その操作の操作方向および操作量を旋回指令信号に変換する旋回操作装置とを備え、その旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき電動モータを制御する作業機械の旋回制御装置に関する。
従来の作業機械の旋回制御装置としては、油圧ショベルに備えられたものがある。その従来の旋回制御装置は、相反する2方向に回転可能な電動モータの出力トルクによって旋回体を駆動する旋回装置と、中立位置から相反する2方向への選択的な操作が可能であって、操作方向および操作量を旋回指令信号に変換する旋回操作装置(操作レバー)と、この旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき電動モータを制御する制御手段とを備えている。
その制御手段は、電動モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき電動モータの目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段と、回転速度検出手段により検出された実際の回転速度の、目標回転速度に対する速度偏差を算出する速度偏差算出手段と、この速度偏差算出手段により算出された速度偏差が解消される方向の電動モータの目標トルクを算出する第1目標トルク算出手段とを備えている。これらにより、電動モータの回転速度のフィードバック制御が行われ、この結果、旋回操作装置の中立位置からの相反する2つの操作方向のいずれについても、中立位置からの操作量の増加に伴い旋回体の旋回速度が大きく制御され、操作量の減少に伴い旋回体の旋回速度が小さく制御される。
油圧ショベルにより行われる作業の種類には、押付作業がある。この押付作業は溝の内側面にフロント作業装置のバケットの外側面を押し付けることによって、溝の内側面を押し固め整形する作業である。この押付作業の際、旋回体は旋回しない、すなわち実際の回転速度は0から変化しない。このため、第1目標トルク算出手段により算出された目標トルクに電動モータの出力トルクを制御するフィードバック制御だけでは、旋回操作装置の操作量に関係なく出力トルクが略最大に維持される状態となる。この状態では、溝の内側面にバケットを押し付ける方向の電動モータの出力トルクの調節ができない。
そこで、制御手段には、旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき、目標回転速度と同方向の電動モータの目標トルクを算出する第2目標トルク算出手段と、速度偏差が所定値以上となった状態、すなわち押付作業が開始されて旋回が停滞した状態を検知する検知手段と、この検知手段により旋回の停滞が検知されたときに、電動モータの制御を、第1目標トルク算出手段により算出される目標トルクに基づいて行う状態から、第2目標トルク算出手段により算出される目標トルクに基づいて行う状態に自動的に切り替える切替手段とが設けられている。これらにより、押付作業の際は、第2目標トルク算出手段により算出された目標トルクに基づき電動モータの出力トルクが制御される。この結果、旋回操作装置の中立位置からの相反する2つの操作方向のいずれについても、中立位置からの操作量の増加に伴い電動モータの出力トルクが大きく制御され、操作量の減少に伴い電動モータの出力トルクが小さく制御される。つまり、溝の内側面にバケットを押し付ける方向の電動モータの出力トルクを調節することができるようになる。(特許文献1参照)
特開2008−328398号公報(段落0051)
ところで、旋回体の旋回の停滞は、前述のように押付作業が行われた場合の他に、傾斜地で上り側に向かってフロント作業装置のバケットが空中で旋回された場合と、強風に抗してフロント作業装置が旋回された場合にも生じる。これら2つの場合、旋回の停滞だけでなく逆行が生じることもある。
前述した従来の旋回制御装置は、前出の2つの場合に旋回が停滞すると、押付作業時と同じく、旋回操作装置の操作量に応じて電動モータの出力トルクを制御する状態となる。この状態で旋回体の逆行を防止するためには、フロント作業装置に作用する重力成分、フロント作業装置に作用する風力に抗して少なくとも旋回体が停止するように、オペレータが旋回操作装置の中立位置からの操作量を調節する必要がある。
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、旋回体の旋回速度のフィードバック制御に起因する電動モータの出力トルクの過剰な上昇を抑えることができるとともに、逆行を自動的に防止することができる作業機械の旋回制御装置を提供することにある。
前述の目的を達成するために本発明に係る作業機械の旋回制御装置は次のように構成されている。
〔1〕本発明に係る作業機械の旋回制御装置は、相反する2方向に回転可能な電動モータの出力トルクによって旋回体を駆動する旋回装置と、中立位置から相反する2方向への選択的な操作が可能であって、操作方向および操作量を旋回指令信号に変換する旋回操作装置と、この旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき前記電動モータの出力トルクを制御する制御手段とを備えた作業機械の旋回制御装置において、前記制御手段は、前記電動モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段と、前記回転速度検出手段により検出された実際の回転速度の、前記目標回転速度に対する速度偏差を算出する速度偏差算出手段と、前記速度偏差が解消される方向の第1目標トルクを算出する第1目標トルク算出手段と、前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき、前記目標回転速度と同方向の第2目標トルクを算出する第2目標トルク算出手段と、前記回転速度検出手段による回転速度の検出値に基づき、予め設定された第1算出範囲内での前記電気モータの回転角度の変化量を算出する第1変化量算出手段と、前記回転速度検出手段による回転速度の検出値に基づき、予め設定された第2算出範囲内での前記電気モータの回転角度の変化量を算出する第2変化量算出手段と、前記第1,第2変化量算出手段のそれぞれにより算出された変化量に基づき、前記電動モータの回転角度が前記所定時間前の回転角度に戻る方向の第3目標トルクを算出する第3目標トルク算出手段と、前記第1目標トルクを前記第2,第3目標トルクのうち前記第1目標トルクと同方向で絶対値が大きい方の目標トルクに制限する目標トルク制限手段と、を備えており、前記第1算出範囲の略全体は、前記電動モータの相反する2つの回転方向のうち一方向の前記変化量の算出範囲を規定しており、その略全体を除いた残りの算出範囲は他方向の前記変化量の算出範囲を規定しており、前記第2算出範囲の略全体は、前記他方向の前記変化量の算出範囲を規定しており、その略全体を除いた残りの算出範囲は前記一方向の前記変化量の算出範囲を規定していることを特徴とする。
この「〔1〕」に記載の作業機械の旋回制御装置においては、回転速度検出手段が電動モータの実際の回転速度を検出し、目標回転速度算出手段が旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき電動モータの目標回転速度を算出し、速度偏差算出手段が実際の回転速度の目標回転速度に対する速度偏差を算出し、この速度偏差が解消される方向の電動モータの第1目標トルクを第1目標トルク算出手段が算出する。また、第2目標トルク算出手段が旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき、目標回転速度と同方向の電動モータの第2目標トルクを算出する。また、第1変化量算出手段が回転速度検出手段による回転速度の検出値に基づき、第1算出範囲内で電動モータの回転角度の変化量を算出し、第2変化量算出手段が回転速度検出手段による回転速度の検出値に基づき、第2算出範囲内で電動モータの回転角度の変化量を算出する。第3目標トルク算出手段は、第1,第2変化量算出手段のそれぞれにより算出された変化量に基づき、電動モータの回転角度が所定時間前の回転角度に戻る方向の第3目標トルクを算出する。そして、目標トルク制限手段は第1目標トルクを第2,第3目標トルクのうち第1目標トルクと同方向で絶対値の大きい方の目標トルクに制限する。これにより、フィードバック制御に起因する電動モータの出力トルクの過剰な上昇を抑えることができる。特に、作業機械が油圧ショベルである場合には、押付作業時にオペレータは旋回制御装置の操作量に応じて電動モータの出力トルクを調節することができる。また、第2目標トルクが逆行防止に不十分な場合には、第2目標トルクよりも絶対値が大きな第3目標トルクを第1目標トルクの制限値とすることができ、これにより旋回体の逆行の自動的な防止を旋回体の旋回角度に追従して行うことができる。
また、「〔1〕」に記載の旋回制御装置において、第1算出範囲の略全体は一方向の変化量の算出範囲を規定し、その略全体を除いた残りの算出範囲は他方向の変化量の算出範囲を規定する。これとは逆に第2算出範囲の略全体は他方向の変化量の算出範囲を規定し、その略全体を除いた残りの算出範囲は一方向の変化量の算出範囲を規定する。つまり、第1,第2算出範囲は略全体が規定する算出範囲とは正負の値が逆になる算出範囲を僅かに含む。これら正負の値が逆になる算出範囲内での変化量に基づき算出された第3目標トルクを用いることによって、逆行を確実に防止することができる。
〔2〕 本発明に係る作業機械の旋回制御装置は、相反する2方向に回転可能な電動モータの出力トルクによって旋回体を駆動する旋回装置と、中立位置から相反する2方向への選択的な操作が可能であって、操作方向および操作量を旋回指令信号に変換する旋回操作装置と、この旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき前記電動モータの出力トルクを制御する制御手段とを備えた作業機械の旋回制御装置において、前記制御手段は、前記電動モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段と、前記回転速度検出手段により検出された実際の回転速度の、前記目標回転速度に対する速度偏差を算出する速度偏差算出手段と、前記速度偏差が解消される方向の第1目標トルクを算出する第1目標トルク算出手段と、前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき、前記目標回転速度と同方向の第2目標トルクを算出する第2目標トルク算出手段と、前記旋回体の実際の旋回角度を検出する旋回角度検出手段と、この旋回角度検出手段により検出された旋回角度の登録を指令する登録指令手段と、この登録指令手段により指令された旋回角度を登録旋回角度として記憶する旋回角度登録手段と、前記旋回角度検出手段により検出された実際の旋回角度の、前記登録旋回角度に対する角度偏差を算出する角度偏差算出手段と、前記角度偏差に基づき、前記旋回体を前記登録旋回角度に戻す方向の第3目標トルクを算出する第3目標トルク算出手段と、前記第1目標トルクを前記第2,第3目標トルクのうち前記第1目標トルクと同方向で絶対値が大きい方の目標トルクに制限する目標トルク制限手段と、を備えていることを特徴とする。
「〔2〕」に記載の旋回制御装置は、「〔1〕」に記載の旋回制御装置の制御手段と同様に、第1目標トルクを第2,第3目標トルクのうち第1目標トルクと同方向で絶対値の大きい方の目標トルクに制限する。これにより、フィードバック制御に起因する電動モータの出力トルクの過剰な上昇を抑えることができる。
また、「〔2〕」に記載の旋回制御装置において、旋回角度登録手段は、旋回角度検出手段により検出された旋回角度の登録を、登録指令手段による指令に応じて登録旋回角度として記憶し、角度偏差算出手段は実際の旋回角度の登録旋回角度に対する角度偏差を算出し、この角度偏差に基づき第3目標トルク算出手段は旋回体を登録旋回角度に戻す方向の第3目標トルクを算出する、という点は、「〔1〕」に記載の旋回制御装置の制御手段と異なる。電動モータの出力トルクをその第3目標トルクに制御することによって、旋回体の逆行の自動的な防止を、登録旋回角度から離れる方向の逆行に対して実施できる。
「〔1〕」に記載の本発明によれば、旋回体の旋回速度のフィードバック制御に起因する電動モータの出力トルクの過剰な上昇を抑えることができるとともに、旋回体の逆行の自動的な防止を、旋回体の旋回角度に追従して行うことができる。
「〔2〕」に記載の本発明によれば、旋回体の旋回速度のフィードバック制御に起因する電動モータの出力トルクの過剰な上昇を抑えることができるとともに、旋回体の逆行の自動的な防止を、登録された任意の旋回角度(登録旋回角度)から離れる方向の逆行に対して実施できる。
本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置が設けられた作業機械である油圧ショベルの側面図である。 本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置の構成を示すブロック図である。 図2に示した目標回転速度算出手段により算出される目標回転速度の特性を示す図である。 図2に示した第2目標トルク算出手段により算出される第2目標トルクの特性を示す図である。 図2に示した第3目標トルク算出手段により算出される第3目標トルクの特性を示す図である。 図2に示した第3目標トルク算出手段に備えられた第1,第2補正手段を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態に係る旋回制御装置の構成を示すブロック図である。 図4に示した第3目標トルク算出手段に備えられた第1,第2補正手段を示すブロック図である。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る作業機械の旋回制御装置について図1〜図6を用いて説明する。
図1に示すように、油圧ショベル1は、履帯2aを駆動して走行する走行体2と、走行体2に旋回ベアリング(図示していない)を介して結合している旋回体3と、旋回体3の前部の略中央に設けられたフロント作業装置4とを有する。旋回体3は、フロント作業装置4の左側方に設けられたキャブ3aと、旋回体3の後端部を形成しているカウンタウェイト3cと、キャブ3aの後方からカウンタウェイト3cの間に亘って形成された機械室3bとを有する。フロント作業装置4は、バックホウタイプであり、旋回体3の前部に上下方向に回動自在に結合しているブーム4aと、このブーム4aに回動自在に結合しているアーム4bと、このアーム4bに回動自在に結合しているバケット4cとを有する。
旋回体3は旋回装置10により駆動されるようになっている。この旋回装置10は、相反する2方向に回転可能な油圧モータ11と、この油圧モータ11に伝動可能に接続されており、相反する2方向に回転可能な電動モータ12と、油圧モータ11および電動モータ12を制動するメカニカルブレーキ13と、電動モータ12に伝動可能に接続された減速機14とを備えている。メカニカルブレーキ13は湿式多板型で油圧操作式の装置であり、旋回体3を旋回させる旨の指令があったとき、および、フロント作業装置の作動が指令されたときに、ブレーキ解除圧が付与されて制動が解除されるネガティブブレーキである。減速機14は前出の旋回ベアリング(図示していない)の内周面に設けられたリングギアに伝動可能に接続されている。なお、電動モータ12は旋回体3の減速時に発電機として機能し、これにより旋回体3の慣性エネルギーを電気エネルギーに変換するようになっている。電動モータ3により発電された電気エネルギーはバッテリー(図示していない)に蓄電されるようになっている。
キャブ3a内には、旋回操作装置15が設けられている。この旋回操作装置15は、オペレータに操作される操作レバー16を備えている。この操作レバー16は、中立位置から相反する2方向、例えば左右方向への選択的な傾倒操作が可能であって、旋回操作装置15は中立位置からの操作レバー16の操作方向および操作量を旋回指令信号(電気信号)に変換するものである。運転席に座ったオペレータにとっての左右方向のうち、左方向に操作レバー16が傾倒操作されると、このときの操作方向である左方向と中立位置から左方向への操作量とを示す旋回指令信号が生成されることになる。逆に右方向に操作レバー16が傾倒操作されると、このときの操作方向である右方向と中立位置から右方向への操作量とを示す旋回指令信号が生成されることになる。
キャブ3aの後部にはコントローラ30が設けられている。このコントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムおよびデータを記憶したROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として利用されるRAM(Random Access Memory)、補助記憶装置等を備えており、ROMまたは補助記憶装置に記憶された制御プログラムおよびデータを読み出して、油圧ショベルの制御に関する処理を行うものである。
図2に示すように、コントローラ30は、旋回操作装置15と、電動モータ12の回転速度ωを検出する回転速度検出手段としての回転速度センサ81と、バッテリーから電動モータ12に供給される電力を制御するインバータ80とが電気的に接続されている。回転速度センサ81は電動モータ12の回転速度ωを回転速度信号(電気信号)に変換して出力するようになっている。
コントローラ30と回転速度センサ81は、旋回操作装置15からの旋回指令信号に基づき電動モータ12の目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき電動モータ12の出力トルクを制御する制御手段を構成している。
コントローラ30は、旋回操作装置15からの旋回指令信号に基づき電動モータ12の目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段31と、回転速度センサ81により検出された実際の回転速度ωの、目標回転速度に対する速度偏差を算出する速度偏差算出手段32と、この速度偏差算出手段32により算出された速度偏差が解消される方向の第1目標トルクを算出する第1目標トルク算出手段33とを備えている。これらの手段31〜33は、ROMまたは補助記憶装置に予め記憶された制御プログラムおよびデータにより設定されたものである。
目標回転速度算出手段31は、旋回操作装置15からの旋回指令信号に基づき電動モータ12の目標回転速度を算出する際、予め設定された目標回転速度特性31a(図3に示す)を用いる。この目標回転速度特性31aは、操作レバー16の中立位置からの操作方向(左右方向)および操作量と、目標回転速度との対応関係を規定したものである。目標回転速度特性31aでは、中立位置から左方向の操作量が正の値で扱われ、中立位置から右方向の操作量が負の値で扱われるとともに、左旋回に対応する回転方向(以下「正方向」と呼ぶ)の目標回転速度が正の値で扱われ、右旋回に対応する方向の回転方向(以下「負方向」と呼ぶ)が目標回転速度を負の値で扱われる。次に、目標回転速度特性31aにより規定された対応関係について具体的に説明する。
図3に示すように、操作量が0のとき、すなわち操作レバー16が中立位置にあるとき、目標回転速度は0となる。操作レバー16が中立位置から左方向に操作されたとき、目標回転速度の方向は正方向となる。中立位置から左方向への操作量が大きくなるほど、正方向の目標回転速度も大きくなる。だだし、操作レバー16が左方向の操作の限界位置よりも中立位置寄りに位置して操作量が所定操作量S1に達した場合に、正方向の目標回転速度は最大値Rmaxとなる。左方向の操作の限界位置に対応する操作量Smaxと所定操作量S1との間の範囲内での操作量に対し、正方向の目標回転速度は最大値Rmaxとなる。
操作レバー16が中立位置から右方向に操作されたときは、中立位置から左方向に操作された場合と逆で、目標回転速度の方向は負方向となる。中立位置から右方向への操作量が大きくなるほど、すなわち負の操作量の絶対値が大きくなるほど、負方向の目標回転速度の絶対値も大きくなる。だだし、操作レバー16が右方向の操作の限界位置よりも中立位置寄りに位置して操作量が所定操作量−S1に達した場合に、負方向の目標回転速度は最小値−Rmaxとなる。右方向の操作の限界位置に対応する操作量−Smaxと所定操作量−S1との間の範囲内での操作量に対し、負方向の目標回転速度は最小値−Rmaxとなる。
第1目標トルク算出手段33は、目標回転速度よりも実際の回転速度ωが遅いとき、目標回転速度と同方向の第1目標トルクを算出する。目標回転速度に対して実際の回転速度ωが遅いほど、第1目標トルクの絶対値は大きく算出される。
コントローラ30はさらに、旋回操作装置15からの旋回指令信号に基づき、目標回転速度と同方向の第2目標トルクを算出する第2目標トルク算出手段34を備えている。この第2目標トルク算出手段34は、ROMまたは補助記憶装置に予め記憶された制御プログラムおよびデータにより設定されたものである。この第2目標トルク算出手段34は、旋回操作装置15からの旋回指令信号に基づき第2目標トルクを算出する際、予め設定された第1トルク特性34a(図4(a)参照)および第2トルク特性34b(図4(b)参照)を用いる。これら第1トルク特性34aおよび第2トルク特性34bは、操作レバー16の中立位置からの操作方向および操作量と、第2目標トルクとの対応関係を規定したものである。次に、これら第1トルク特性34aおよび第2トルク特性34bにより規定された対応関係について具体的に説明する。
図4(a)に示すように、操作量が0のとき、すなわち操作レバー16が中立位置にあるとき、第2目標トルクは0となる。操作レバー16が中立位置から左方向に操作されたとき、第2目標トルクの方向は正方向となる。中立位置から左方向への操作量が大きくなるほど、正方向の第2目標トルクも大きくなる。だだし、操作量0から0近傍の所定の小操作量S2未満の範囲内において、第2目標トルクは0となる。また、所定の小操作量S2のときに第2目標トルクはTcとなる。また、操作レバー16が左方向の操作の限界位置よりも中立位置寄りに位置して操作量が所定操作量S1に達した場合に、正方向の第2目標トルクは最大値Tmaxとなる。操作量Smaxと所定操作量S1との間の範囲内での操作量に対し、正方向の第2目標トルクは最大値Tmaxとなる。最大値Tmaxは電動モータ12の出力トルクの最大値に設定されている。
図4(b)に示すように、操作レバー16が中立位置から右方向に操作されたときは、中立位置から左方向に操作されたときと逆で、第2目標トルクの方向は負方向となる。中立位置から右方向への操作量が大きくなるほど、負方向の第2目標トルクの絶対値も大きくなる。だだし、操作量0から0近傍の所定の小操作量−S2未満の範囲内において、第2目標トルクは0となる。また、所定の小操作量−S2のときに第2目標トルクは−Tcとなる。また、操作レバー16が右方向の操作の限界位置よりも中立位置寄りに位置して操作量が所定操作量−S1に達した場合に、負方向の第2目標トルクは最小値−Tmaxとなる。操作量−Smaxと所定操作量−S1との間の範囲内での操作量に対し、負方向の第2目標トルクは最小値−Tmaxとなる。
コントローラ30はさらに、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での変化量を、予め設定された第1算出範囲内で算出する第1変化量算出手段50と、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での変化量を、予め設定された第2算出範囲内で算出する第2変化量算出手段60と、第1変化量算出手段50および第2変化量算出手段60のそれぞれにより算出された変化量に基づき、電動モータ12の回転角度が所定時間t前の回転角度に戻る方向の第3目標トルクを算出する第3目標トルク算出手段40とを備えている。これらの手段50,60,40は、ROMまたは補助記憶装置に予め記憶された制御プログラムおよびデータにより設定されたものである。
第1変化量算出手段50は具体的には、加え合せ手段52、遅延手段51(メモリ装置)、選択手段53を備えて構成されている。選択手段53は、上限値C1を予め記憶しており、遅延手段51から得た加算値がその上限値C1以下かどうかの判定を行うとともに、上限値C1以下であるとの判定結果を得た場合に、その加算値を第3目標トルク算出手段40による演算で使用する値として選択し、その加算値が上限値C1以下ではないとの判定結果、すなわち上限値C1を超えているとの判定結果を得た場合に、その加算値ではなく上限値C1を第3目標トルク算出手段40による演算で使用する値として選択するものである。加え合わせ手段52は、選択手段53の出力値と回転速度センサ81からの回転速度の検出値との加算値を求めるものである。遅延手段51は、この遅延手段51に入力された加算値を次回の選択手段53の入力値として一時的に記憶保持するものである。遅延手段51に前回値が記憶されていない状態においては、選択手段53は上限値C1と比較および第3目標トルク算出手段40への出力は行わず、選択手段53に入力された回転速度センサ81からの回転速度の検出値をそのまま加え合わせ手段52に出力するように設定されている。これら加え合せ手段52、遅延手段51(メモリ装置)、選択手段53による第1変化量算出手段50での処理は、所定時間tの演算周期で行われるようになっている。
上限値C1は正の変化量に対して設定されたもの、すなわち左旋回に伴う電動モータ12の正方向の回転角度の変化量に対して設定されたものである。第1算出範囲は、その略全体が負の変化量の算出範囲を規定しており、その略全体を除いた残りの算出範囲がC1を上限値とする正の変化量の算出範囲を規定している。なお、第1算出範囲の負の変化量の算出範囲に対しては、下限値は設けられていない。
第2変化量算出手段60は具体的には、加え合せ手段62、遅延手段61(メモリ装置)、選択手段63を備えて構成されている。選択手段63は、下限値C2を予め記憶しており、遅延手段61から得た加算値がその下限値C2以上かどうかの判定を行うとともに、下限値C2以上であるとの判定結果を得た場合に、その加算値を第3目標トルク算出手段40による演算で使用する値として選択し、その加算値が下限値C2以上ではないとの判定結果、すなわち下限値C2を下回っているとの判定結果を得た場合に、その加算値ではなく下限値C1を第3目標トルク算出手段40による演算で使用する値として選択するものである。加え合わせ手段62は、選択手段63の出力値と回転速度センサ81からの回転速度の検出値との加算値を求めるものである。遅延手段61は、この遅延手段61に入力された加算値を次回の選択手段63の入力値として一時的に記憶保持するものである。遅延手段61に前回値が記憶されていない状態においては、選択手段63は下限値C2と比較および第3目標トルク算出手段40への出力は行わず、選択手段63に入力された回転速度センサ81からの回転速度の検出値をそのまま加え合わせ手段62に出力するように設定されている。これら加え合せ手段62、遅延手段61(メモリ装置)、選択手段63による第2変化量算出手段60での処理は、所定時間tの演算周期で行われるようになっている。
下限値C2は負の変化量に対して設定されたもの、すなわち右旋回に伴う電動モータ12の負方向の回転角度の変化量に対して設定されたものである。第2算出範囲は、その略全体が正の変化量の算出範囲を規定しており、その略全体を除いた残りの算出範囲がC2を下限値とする負の変化量の算出範囲を規定している。なお、第2算出範囲の正の変化量の算出範囲に対しては、上限値は設けられていない。
第3目標トルク算出手段40は、第3目標トルクを算出する際、予め設定された第1逆行防止特性40a(図5(a)参照)および第2逆行防止特性40b(図5(b)参照)を用いる。第1逆行防止特性40aは電動モータ12の回転角度の所定時間t内での負の変化量と第3目標トルクとの対応関係を規定したものである。第2逆行防止特性40bは電動モータ12の回転角度の所定時間t内での正の変化量と第3目標トルクとの対応関係を規定したものである。次に、それら第1逆行防止特性40a、第2逆行防止特性40bにより規定された対応関係について具体的に説明する。
図5(a)に示すように、変化量が0、または正の変化量である場合に第3目標トルクは0となる。負の変化量に対し、第3目標トルクの方向は正方向となる。この正方向の第3目標トルクの最大値は、電動モータ12の出力トルクの最大値Tmaxに規定されている。0からその最大値Tmaxまでの範囲での第3目標トルクの特性は、負の変化量の絶対値が大きくなるほど正方向の第3目標トルクが大きくなり、負の変化量が所定変化量−S3のときに正方向の第3目標トルクが最大値Tmaxとなるよう、一次関数により規定されている。所定変化量−S3は、この所定変化量−S3に対応する右方向の旋回角度の変化量をオペレータに感じさせない程度のわずかな大きさであることを意図して設定されたものであり、例えば右方向の旋回角度1°に相当するよう設定されている。
図5(b)に示すように、変化量が0、または負の変化量である場合に第3目標トルクは0となる。正の変化量に対し、第3目標トルクの方向は負方向となる。この負方向の第3目標トルクの最小値は−Tmaxに規定されている。0からその最小値−Tmaxまでの範囲での第3目標トルクの特性は、正の変化量が大きくなるほど負方向の第3目標トルクの絶対値が大きくなり、正の変化量が所定変化量S3のときに負方向の第3目標トルクが最小値−Tmaxとなるよう、一次関数により規定されている。所定変化量S3は、この所定変化量S3に対応する左方向の旋回角度の変化量をオペレータに感じさせない程度のわずかな大きさであることを意図して設定されたものであり、例えば左方向の旋回角度1°に相当するよう設定されている。
コントローラ30はさらに、第1目標トルクをこの第1目標トルクと同方向の第2,第3目標トルクのうち絶対値の大きい方に制限する目標トルク制限手段70を備えている。この目標トルク制限手段70は、ROMまたは補助記憶装置に予め記憶された制御プログラムおよびデータにより設定されたものであり、具体的には次に説明する左旋回用目標トルク選択手段71と、右旋回用目標トルク選択手段72と、制限値決定手段73とを備えている。
左旋回用目標トルク選択手段71は、第2目標トルク算出手段34において第2トルク特性34a(図4(a)に示す)を用いて算出された第2目標トルクと、第3目標トルク算出手段40において第1逆行防止特性40a(図5(a)に示す)を用いて算出された第3目標トルクとのうち大きい方を選択する、または、第2,第3目標トルクがいずれも0のときには0を選択するものである。
右旋回用目標トルク選択手段72は、第2目標トルク算出手段34において第2トルク特性34b(図4(b)に示す)を用いて算出された第2目標トルクと、第3目標トルク算出手段40において第2逆行防止特性40b(図5(b)に示す)を用いて算出された第3目標トルクとのうち絶対値の大きい方を選択する、または、第2,第3目標トルクがいずれも0のときには0を選択するものである。
制限値決定手段73は、左旋回用目標トルク選択手段71により選択された目標トルクと、右旋回用目標トルク選択手段72により選択された目標トルクとのうち、第1目標トルクと同じ方向の目標トルクを第1目標トルクの制限値として選択するものである。つまり、第1目標トルクが正方向の場合には第2,第3目標トルクのうちのいずれかが第1目標トルクの上限値に設定され、第1目標トルクが負方向の場合には第2,第3目標トルクのうちのいずれかが第1目標トルクの下限値に設定されるようになっている。
また、図6に示すように、第3目標トルク算出手段40は、電動モータ12の出力トルクが第3目標トルクに制御される場合に、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での変化量に応じて、すなわち第3目標トルクの絶対値に応じて電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートを低減するための補正を行う第1補正手段41および第2補正手段45を備えている。
第1補正手段41は、微分手段42、乗算手段43、減算手段44を備えており、これらによって、負の変化量に基づき、予め設定された補正用ゲイン定数Kを用いて、電動モータ12の出力トルクが正方向の第3目標トルクに制御される際のオーバーシュートを低減する補正処理を行うようになっている。この補正処理によって、正方向の第3目標トルクが大きくなるほど、電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートを低減する度合いが大きく設定される。
第2補正手段45は、微分手段46、乗算手段47、減算手段48を備えており、これらによって、正の変化量に基づき、予め設定された補正用ゲイン定数Kを用いて、電動モータ12の出力トルクが負方向の第3目標トルクに制御される際のオーバーシュートを低減する補正処理を行うようになっている。この補正処理によって、負方向の第3目標トルクの絶対値が大きくなるほど、電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートを低減する度合いが大きく設定される。
このように構成された第1実施形態に係る旋回制御装置20の動作を、(1)平地上でフロント作業装置4を無風の空中に浮かせて旋回体3を旋回させる場合、(2)油圧ショベル1に押付作業を行わせる場合、(3)旋回の逆行を防止する場合、の3つの場合に分けて説明する。
(1) 平地上でフロント作業装置4を無風の空中に浮かせて旋回体3を旋回させる場合について、旋回体3を左旋回させることを例に挙げて説明する。
オペレータが旋回操作装置15の操作レバー16を中立位置から左方向に操作し、操作量をS2以上の任意の正の操作量に維持する。これに伴って旋回制御装置20が旋回指令信号を出力する。この旋回指令信号をコントローラ30が入力すると、このコントローラ30の目標回転速度算出手段31は、旋回指令信号に基づき正方向の目標回転速度を算出する。次に、コントローラ30の速度偏差算出手段32は、回転速度センサ81からの回転速度信号に示される旋回開始当初の実際の回転速度ω、すなわち0の、正方向の目標回転速度に対する速度偏差を算出し、これによって正方向の目標回転速度と同じ大きさの速度偏差を得る。次に、コントローラ30の第1目標トルク算出手段33は、その速度偏差が解消される方向の第1目標トルク、すなわち左方向の旋回速度を加速させるための第1目標トルクとして、例えば最大値Tmaxを算出する。
また、コントローラ30の第2目標トルク算出手段34は、旋回指令信号に基づき第2目標トルクを算出し、これによって目標回転速度と同方向、すなわち正方向の第2目標トルクを得る。
操作レバー16が左方向に操作された直後は、停止した状態の旋回体3およびフロント作業装置4の慣性力、静止摩擦力などに起因した抵抗力が電動モータ12に作用している。このため、コントローラ30の第1変化量算出手段50および第2変化量算出手段60はいずれも、電動モータ12の所定時間t内での回転角度の変化量として0を算出する。これに伴い、コントローラ30の第3目標トルク算出手段40は、第1逆行防止特性40aを用い第3目標トルクとして0を算出し、これと並行して第2逆行防止特性40bを用い第3目標トルクとして0を算出する。
コントローラ30の目標トルク制限手段70において、左旋回用目標トルク選択手段71は第3目標トルクが0なので、正方向の第2目標トルクを選択する。また、右旋回用目標トルク選択手段72は第2,第3目標トルクのいずれも0なので、0を選択する。このように選択された正方向の第2目標トルクと0とのうち、制限値決定手段73は、第1目標トルクと同じ正方向の目標トルクである正方向の第2目標トルクを選択する。つまり、正方向の第1目標トルクの上限値が、正方向の第2目標トルクに設定される。コントローラ30は、正方向の第1目標トルクが最大値Tmaxであり正方向の第2目標トルクよりも大きいので、電動モータ12の出力トルクが第2目標トルクとなるようインバータ80を制御する。
今回は、平地上でフロント作業装置4を無風の空中に浮かせて旋回体3を旋回させるので、押圧作業時における溝の内側面からの反力、傾斜地での重力成分、風力などの外力はフロント作業装置4に作用しない。したがって、前述のように電動モータ12の出力トルクが正方向の第1目標トルクまたは正方向の第2目標トルクに制御されたことによって、電動モータ12が正方向に回転し始め、すなわち旋回体3が左方向に旋回し始め、目標回転速度に対する実際の回転速度ωの速度偏差は小さくなる。これに伴い、正方向の第1目標トルクも小さくなる。
その後の旋回体3が左旋回中、操作レバー16が左方向に操作されている限り、第2目標トルク算出手段34は、正方向の第2目標トルクを算出し続ける。
また、旋回体3が左旋回中、第1変化量算出手段50は加え合わせ手段52および遅延手段51によって、電動モータ12の所定時間t内での回転角度の変化量として正の変化量を算出し、次に、選択手段53によってその正の変化量が上限値C1以下であれば、その正の変化量を第3目標トルクの算出に使用する値として選択し、その正の変化量が上限値C1を超えていれば、この上限値C1を第3目標トルクの算出に使用する値として選択する。そして、第3目標トルク算出手段40は、選択手段53により選択された値に基づき第1逆行防止特性40aを用いて第3目標トルクを算出する。今回の変化量は正の値であるので、第1逆行防止特性40aを用いて算出された第3目標トルクは0である。
一方、第2変化量算出手段60においては第1変化量算出手段50と同じく、加え合わせ手段62および遅延手段61によって正の変化量が算出される。この変化量は下限値C2よりも大きな正の値である。したがって、第2変化量算出手段60は選択手段63によって、下限値C2とその正の変化量のうちその正の変化量を第3目標トルクの算出に使用する値として選択する。そして、第3目標トルク算出手段40は、選択手段63により選択された値に基づき第2逆行防止特性40bを用いて、負方向の第3目標トルクを算出する。
目標トルク制限手段70の左旋回用目標トルク選択手段71は、第3目標トルクが0なので、正方向の第2目標トルクを選択する。また、右旋回用目標トルク選択手段72は第2目標トルクが0なので、負方向の第3目標トルクを選択する。これら正方向の第2目標トルクと負方向の第3目標トルクとのうち、制限値決定手段73は第1目標トルクと同じ方向の目標トルクである正方向の第2目標トルクを選択する。これによりコントローラ30は引き続き、正方向の第1目標トルクが正方向の第2目標トルクよりも大きい場合に、電動モータ12の出力トルクを正方向の第2目標トルクになるようインバータ80を制御する。なお、オペレータは、電動モータ12が正方向の第2目標トルクに制御されている状態において旋回体3の加速が足りないと感じた場合には、操作レバー16の左方向への操作量を大きくすることによって第2目標トルクが大きくすることができ、これにより、旋回体3の加速度を大きくすることができる。
電動モータ12の出力トルクが正方向の第2目標トルクに制御されることによって、電動モータ12の回転速度ωが上昇し、すなわち旋回体3の左方向の旋回速度が上昇し、これに伴い、目標回転速度に対する実際の回転速度ωの速度偏差はさらに小さくなる。したがって、正方向の第1目標トルクもさらに小さくなる。そして、正方向の第1目標トルクが正方向の第2目標トルク以下になると、コントローラ20は電動モータ12の出力トルクが第1目標トルクとなるようインバータ80を制御する。
(2) 油圧ショベル1に押付作業を行わせる場合について、旋回体3を左旋回させることを例に挙げて説明する。
この場合も「(1)」と同様に、操作レバー16が任意の正の操作量となった当初は、コントローラ30は電動モータ12の出力トルクを正方向の第2目標トルクに制御する。今回は押付作業を行うので、バケット4cを左方向に押し付けた溝の内側面からフロント作業装置4のバケット4cに対して反力が作用し、これによって旋回が停滞する、すなわち電動モータ12の実際の回転速度ωは目標回転速度に近づかない。このため、正方向の第1目標トルクは最大値Tmaxに維持される。一方、操作レバー16の左方向の操作量が維持されていた場合には、正方向の第2目標トルクは変化しない。また、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での変化量も変化しないため、第1逆行防止特性40aを用いて算出される第3目標トルクは0であり、第2逆行防止特性40bを用いて算出される第3目標トルクも0である。したがって、コントローラ20は電動モータ12の出力トルクが第2目標トルクになるようインバータ80を制御し、これによりバケット4cは溝の内側面に押し付けられ続ける。
バケット4cが溝の内側面に押し付けられた状態では、オペレータが操作レバー16を左方向にさらに操作して正の操作量を大きくした場合も旋回は停滞したままであり、したがって、電動モータ12の出力トルクは引き続き第2目標トルクに制御される。第2目標トルクは正の操作量が大きくなれば大きくなり、逆に、正の操作量が小さくなれば小さくなるので、押付作業時、オペレータは、操作レバー16の中立位置からの操作量を増減させることによって、溝の内側面に対するバケット4cの押付力を調節することができる。
(3)旋回の逆行を防止する場合について、旋回体3を左旋回に対する逆行を防止することを例に挙げて説明する。
第1,第2目標トルクは、「(1)」で説明したように、操作レバー16の左方向の操作量(正の操作量)に応じて算出される。そして、電動モータ12の出力トルクは、正方向の第1目標トルクが正方向の第2目標トルク以下になるまでは、正方向の第2目標トルクに制御される。
傾斜地に停止させた油圧ショベル1の旋回体3を傾斜地の上り側に旋回させる場合には、フロント作業装置4の重力成分が旋回に抗する外力として作用する。また、強風下で風上に向かって旋回体3を旋回させる場合には風力が旋回体に抗する外力として作用する。したがって、それらの外力に対して正方向の第2目標トルクが小さすぎると、操作レバー16が左方向に操作されているにもかかわらず旋回体3は右方向に旋回する、すなわち右方向に逆行し、電動モータ12も旋回体3とともに負方向に逆行する。
逆行発生時、第1変化量算出手段50は加え合わせ手段52および遅延手段51によって、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での変化量として負の変化量を算出する。この負の変化量は上限値C1よりも小さい。したがって、第1変化量算出手段50は選択手段53によって、その負の変化量と上限値C1とのうちその負の変化量を第3目標トルクの算出に使用する値として選択する。そして、第3目標トルク算出手段40は、選択手段53により選択された値に基づき、第1逆行防止特性40aを用いて第3目標トルクを算出し、これにより正方向の第3目標トルクを得る。
また、第3目標トルク算出手段40は、第1補正手段41により、第1逆行防止特性40aを用いて算出された正方向の第3目標トルクに基づき、電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートの度合いを設定する。
正方向の第2目標トルクが逆行防止に対して小さすぎるほど、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での負の変化量は大きくなり、これに伴い正方向の第3目標トルクも大きくなって、正方向の第2目標トルクを上回る。これにより、左旋回用目標トルク選択手段71は正方向の第2,第3目標トルクのうち大きい方である正方向の第3目標トルクを選択し、制限値決定手段73はその正方向の第3目標トルクを第1目標トルクの上限値に決定する。この結果、電動モータ12の出力トルクは正方向の第3目標トルクに制御され、旋回体3が逆行から復帰する。
なお、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での負の変化量が旋回角度1°に相当する値S3となったときには、正方向の第3目標トルクが最大値Tmaxとなるため、すなわち、逆行する旋回角度が1°よりも小さいうちに旋回体3は逆行から復帰する。これにより、逆行による不快感および操作性の悪化をオペレータが感じるまもなく、旋回体3を逆行から復帰させることができる。
旋回体3を右旋回させる場合の旋回制御装置20の動作は、左旋回させる場合とは第1〜第3目標トルクの方向が反対方向(負方向)になる違いはあるが、これ以外は左旋回させる場合と同様の操作なので、その動作の説明は省略した。
第1実施形態に係る旋回制御装置20によれば次の効果を得られる。
第1実施形態に係る旋回制御装置20において、目標トルク制限手段70は第1目標トルクをこの第1目標トルクと同方向の第2,第3目標トルクのうち絶対値が大きい方に制限する。これにより、フィードバック制御に起因して第1目標トルクの絶対値が過剰な大きさに算出された場合に、電動モータ12の出力トルクを第2目標トルクまたは第3目標トルクに制限することができる。特に、押付作業時には電動モータ12の出力トルクが第2目標トルクに制御されるので、オペレータは旋回制御装置20の操作レバー16の操作量に応じて電動モータ12の出力トルクを調節することができる。また、第2目標トルクが逆行防止に不十分な場合には、第2目標トルクよりも絶対値が大きな第3目標トルクを第1目標トルクの制限値にすることができるので、逆行を自動的に防止することができる。
第1実施形態に係る旋回制御装置20において、第1算出範囲の略全体は一方向の変化量、すなわち負の変化量の算出範囲を規定し、その略全体を除いた残りの算出範囲は他方向の変化量、すなわち正の変化量の算出範囲を規定する。これとは逆に第2算出範囲の略全体は正の変化量の算出範囲を規定し、その略全体を除いた残りの算出範囲は負の変化量の算出範囲を規定する。つまり、第1,第2算出範囲は略全体が規定する算出範囲とは正負の値が逆になる算出範囲を僅かに含む。これら正負の値が逆になる算出範囲内での変化量に基づき算出された第3目標トルクを用いることによって、確実に逆行を防止することができる。
第1実施形態に係る旋回制御装置20において、第3目標トルク算出手段40は、第1変化量算出手段50により算出された回転角度の変化量、および、第2変化量算出手段60により算出された回転角度の変化量に基づき、回転角度が所定時間t前の回転角度に戻る方向の第3目標トルクを算出し、電動モータ12の出力トルクをその第3目標トルクに制御する。これにより、旋回体3の逆行の自動的な防止を、旋回体3の旋回角度に追従して行うことができる。
なお、前述の第1実施形態に係る旋回制御装置20において、第1変化量算出手段50および第2変化量算出手段60は、本発明は第1変化量算出手段および第2変化量算出手段を、回転速度センサ81の回転速度の検出値に基づいて所定時間t内での回転角度の変化量を算出するものであったが本発明はそれに限定されるものではない。第1変化量算出手段および第2変化量算出手段それぞれは、電動モータ12の回転角度を検出する回転角度検出手段と、この回転角度検出手段により検出された最新の回転角度から所定時間t前の前回の回転角度を減算する減算手段とを用いることによって、電動モータ12の回転角度の所定時間t内での変化量を得る構成に替えてもよい。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る作業機械の旋回制御装置について図7,図8を用いて説明する。
図7に示すように、第2実施形態に係る旋回制御装置120は、電動モータ12の回転角度を検出する回転角度センサ182と、回転角度センサ182により検出された回転角度に基づき旋回体3の旋回角度Θを算出する旋回角度算出手段150とを備えている。旋回角度算出手段150は、図1に示すように、フロント作業装置4が走行体2の前進方向を向いた状態(図1参照)を旋回角度0°と算出し、その0から左方向の180°未満の所定の限界角度までの旋回角度を正の値で算出し、0°からの右方向の180°未満の所定の限界角度までの旋回角度を負の値で算出する。また、この旋回角度算出手段150は、コントローラ130に記憶された制御プログラムおよびデータにより設定されたものである。なお、回転角度センサ182と旋回角度算出手段150は、旋回体3の実際の旋回角度を検出する旋回角度検出手段を構成している。
コントローラ130、回転速度センサ81、回転角度センサ182は、旋回操作装置15からの旋回指令信号に基づき電動モータ12の目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき電動モータ12の出力トルクを制御する制御手段を構成している。
旋回制御装置120はさらに、旋回角度センサ182により検出された旋回角度の登録を指令する登録指令手段151と、この登録指令手段151により指令された旋回角度を登録旋回角度Θrefとして記憶する旋回角度登録手段152とを備えている。登録指令手段151は、オペレータが運転席に座った状態で操作可能な個所、例えば操作レバー16の突端部に設けられた自己復帰型のプッシュスイッチである。旋回角度登録手段152は、旋回角度算出手段150により算出された旋回角度を、登録指令手段151が押圧操作されたときに登録旋回角度Θrefとして記憶し、また、登録指令手段151が再度押圧操作されたときに登録旋回角度Θrefを消去するものである。この旋回角度登録手段152はコントローラ130に記憶された制御プログラムおよびデータにより設定されたものである。
コントローラ130はさらに、登録旋回角度Θrefに対する実際の旋回角度Θの角度偏差を算出する角度偏差算出手段153と、その角度偏差に基づき、旋回体3を登録旋回角度Θrefに戻す方向の第3目標トルクを算出する第3目標トルク算出手段140とを備えている。角度偏差Θは旋回体3が右回りで登録旋回角度Θrefを超えた場合に正の値をとり、左回りで登録旋回角度Θrefを超えた場合に負の値をとる。
第3目標トルク算出手段140は、第3目標トルクを算出する際、予め設定された第1逆行防止特性(図示していない)および第2逆行防止特性(図示していない)を用いる。これら第1逆行防止特性および第2逆行防止特性は、角度偏差と第3目標トルクとの対応関係を規定したものである。次に、それら第1逆行防止特性、第2逆行防止特性により規定された対応関係について具体的に説明する。
第1逆行防止特性は、図5(a)に示す変化量を角度偏差に置き換えた特性に設定されている。角度偏差が0、または正の角度偏差である場合に第3目標トルクは0となる。負の角度偏差に対し、第3目標トルクの方向は正方向となる。この正方向の第3目標トルクの最大値は、電動モータ12の出力トルクの最大値Tmaxに規定されている。0からその最大値Tmaxまでの範囲での第3目標トルクの特性は、負の角度偏差の絶対値が大きくなるほど正方向の第3目標トルクが大きくなり、負の角度偏差が所定角度偏差のときに正方向の第3目標トルクが最大値Tmaxとなるよう、一次関数により規定されている。所定の負の角度偏差は、この所定の負の角度偏差を生じさせる左方向の旋回角度の変化をオペレータに感じさせない小ささであることを意図して設定されたものであり、例えば左方向の旋回角度1°に相当するよう設定されている。
第2逆行防止特性は、図5(b)に示す変化量を角度偏差に置き換えた特性に設定されている。つまり、角度偏差が0、または負の角度偏差である場合に第3目標トルクは0となる。正の角度偏差に対し、第3目標トルクの方向は負方向となる。この負方向の第3目標トルクの最小値は−Tmaxに規定されている。0からその最小値−Tmaxまでの範囲での第3目標トルクの特性は、正の角度偏差が大きくなるほど負方向の第3目標トルクの絶対値が大きくなり、正の角度偏差が所定角度偏差のときに負方向の第3目標トルクの絶対値が最小値−Tmaxとなるよう、一次関数により規定されている。所定の正の角度偏差は、この所定の正の角度偏差を生じさせる右方向の旋回角度の変化をオペレータに感じさせない小ささであることを意図して設定されたものであり、例えば左方向の旋回角度1°に相当するよう設定されている。
また、図8に示すように、第3目標トルク算出手段140は、電動モータ12の出力トルクが第3目標トルクに制御される場合に、速度偏差に応じて、電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートを低減するための補正を行う第1補正手段141および第2補正手段145を備えている。
第1補正手段141は、第1実施形態における第1補正手段41と同様のものであり、負の角度偏差に基づき、予め設定された補正用ゲイン定数Kを用いて、電動モータ12の出力トルクが正方向の第3目標トルクに制御される際のオーバーシュートを低減する補正処理を行うようになっている。この補正処理によって、正方向の第3目標トルクが大きくなるほど、電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートを低減する度合いが大きく設定される。
第2補正手段145も、第1実施形態における第2補正手段45と同様のものであり、正の角度偏差に基づき、予め設定された補正用ゲイン定数Kを用いて、電動モータ12の出力トルクが負方向の第3目標トルクに制御される際のオーバーシュートを低減する補正処理を行うようになっている。この補正処理によって、負方向の第3目標トルクの絶対値が大きくなるほど、電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートを低減する度合いが大きく設定される。
なお、図7を参照して分かるように、第2実施形態に係る旋回制御装置120のコントローラ130は、第1実施形態に係る旋回制御装置20のコントローラ30と同じく、第1目標トルク算出手段33、第2目標トルク算出手段34等の、第1目標トルク、第2目標トルクを算出するための構成を備えているが、第1変化量算出手段50、第2変化量算出手段60、選択手段53,63、第3目標トルク算出手段40を備えていない。
このように構成された第2実施形態に係る旋回制御装置120の動作を、(1)平地上でフロント作業装置4を無風の空中に浮かせて旋回体3を旋回させる場合、(2)油圧ショベル1に押付作業を行わせる場合、(3)旋回の逆行を防止する場合、の3つの場合に分けて説明する。
(1) 平地上でフロント作業装置4を無風の空中に浮かせて旋回体3を旋回させる場合について、旋回体3を左旋回させることを例に挙げて説明する。
例えば、既に登録旋回角度が−90°に設定されており、その登録旋回角度−90°で旋回体3が停止しているとする。
この状態でオペレータが旋回操作装置15の操作レバー16を中立位置から左方向に操作し、操作量をS2以上の任意の正の操作量に維持する。これに伴って旋回操作装置15が旋回指令信号を出力する。この旋回指令信号をコントローラ130が入力すると、このコントローラ130の目標回転速度算出手段31は、旋回指令信号に基づき正方向の目標回転速度を算出する。次に、コントローラ130の速度偏差算出手段32は、回転速度センサ81からの回転速度信号に示される旋回開始当初の実際の回転速度ω、すなわち0の、正方向の目標回転速度に対する速度偏差を算出し、これによって正方向の目標回転速度と同じ大きさの速度偏差を得る。次に、コントローラ130の第1目標トルク算出手段33は、その速度偏差が解消される方向の第1目標トルク、すなわち左方向の旋回速度を加速させるための第1目標トルクをとして最大値Tmaxを算出する。
また、コントローラ130の第2目標トルク算出手段34は、旋回指令信号に基づき第2目標トルクを算出し、これによって目標回転速度と同方向、すなわち正方向の第2目標トルクを得る。
操作レバー16が左方向に操作された直後は、停止した状態の旋回体3およびフロント作業装置4の慣性力、静止摩擦力などに起因した抵抗力が電動モータ12に作用している。このため、旋回角度算出手段150により算出された実際の旋回角度Θは、登録旋回角度90°のままであり、したがって角度偏差算出手段153は角度偏差として0を算出する。これに伴い、コントローラ130の第3目標トルク算出手段140は、第1逆行防止特性を用い第3目標トルクとして0を算出し、これと並行して第2逆行防止特性を用い第3目標トルクとして0を算出する。
コントローラ130の目標トルク制限手段70において、左旋回用目標トルク選択手段71は第3目標トルクが0なので、正方向の第2目標トルクを選択する。また、右旋回用目標トルク選択手段72は第2,第3目標トルクのいずれも0なので、0を選択する。このようにして選択された正方向の第2目標トルクと0とのうち、制限値決定手段73は、第1目標トルクと同じ正方向の目標トルクである正方向の第2目標トルクを選択する。つまり、正方向の第1目標トルクの上限値が、正方向の第2目標トルクに設定される。コントローラ130は、正方向の第1目標トルクが最大値Tmaxであり正方向の第2目標トルクよりも大きいので、電動モータ12の出力トルクが第2目標トルクとなるようインバータ80を制御する。
今回は、平地上でフロント作業装置4を無風の空中に浮かせて旋回体3を旋回させるので、押圧作業時における溝の内側面からの反力、傾斜地での重力成分、風力のような外力はフロント作業装置4に作用しない。したがって、前述のように電動モータ12の出力トルクが正方向の第2目標トルクに制御されたことによって、電動モータ12の正方向に回転し始め、すなわち旋回体3が左方向に旋回し始め、目標回転速度に対する実際の回転速度ωの速度偏差は小さくなる。これに伴い、正方向の第1目標トルクも小さくなる。
その後の旋回体3の左旋回中、操作レバー16が左方向に操作されている限り、第2目標トルク算出手段34は、正方向の第2目標トルクを算出し続ける。
また、旋回体3が左旋回中、角度偏差算出手段153は正方向の速度偏差を算出するので、第3目標トルク算出手段140は、第1逆行防止特性を用いて第3目標トルクとして0を算出し、これと並行して第2逆行防止特性を用いて負方向の第3目標トルクを算出する。
目標トルク制限手段70の左旋回用目標トルク選択手段71は、第3目標トルクが0なので、正方向の第2目標トルクを選択する。また、右旋回用目標トルク選択手段72は第2目標トルクが0なので、負方向の第3目標トルクを選択する。このように選択された正方向の第2目標トルクと負方向の第3目標トルクとのうち、制限値決定手段73は第1目標トルクと同じ方向の目標トルクである正方向の第2目標トルクを選択する。これによりコントローラ130は引き続き、正方向の第1目標トルクが正方向の第2目標トルクよりも大きい場合に、電動モータ12の出力トルクが第2目標トルクとなるようインバータ80を制御する。なお、オペレータは、電動モータ12が正方向の第2目標トルクに制御されている状態において旋回体3の加速が足りないと感じた場合には、操作レバー16の左方向への操作量を大きくすることによって第2目標トルクが大きくすることができ、これにより、旋回体3の加速度を大きくすることができる。
電動モータ12の出力トルクが正方向の第2目標トルクに制御されることによって、電動モータ12の回転速度ωが上昇し、すなわち旋回体3の左方向の旋回速度が上昇し、これに伴い、目標回転速度に対する実際の回転速度ωの速度偏差はさらに小さくなる。したがって、正方向の第1目標トルクはさらに小さくなる。そして、正方向の第1目標トルクが正方向の第2目標トルク以下になると、コントローラ120は電動モータ12の出力トルクが第1目標トルクとなるようインバータ80を制御する。
(2) 油圧ショベル1に押付作業を行わせる場合について、旋回体3を左旋回させることを例に挙げて説明する。
この場合も「(1)」と同様に、操作レバー16が任意の正の操作量となった当初は、コントローラ130は電動モータ12の出力トルクを正方向の第2目標トルクに制御する。今回は押付作業を行うので、バケット4cを左方向に押し付けた溝の内側面からフロント作業装置4のバケット4cに対して左旋回に抗する反力が作用し、これによって旋回が停滞する、すなわち電動モータ12の実際の回転速度ωは目標回転速度に近づかない。このため、正方向の第1目標トルクは最大値Tmaxに維持される。また、操作レバー16の左方向の操作量が維持されていた場合、正方向の第2目標トルクは変化しない。
押付作業の際は、オペレータは旋回角度を登録を行わない。したがって、第3目標トルク算出手段140による第3目標トルクの算出は行われない。このため、制限値決定手段73は、第1目標トルクと同じ正方向の目標トルクである正方向の第2目標トルクを選択し、これによって電動モータ12の出力トルクが第2目標トルクに制御された状態で、バケット4cは溝の内側面に押し付けられ続ける。
バケット4cが溝の内側面に押し付けられた状態では、オペレータが操作レバー16を左方向にさらに操作して正の操作量を大きくした場合も旋回は停滞したままであり、したがって、電動モータ12の出力トルクは引き続き第2目標トルクに制御される。第2目標トルクは正の操作量が大きくなれば大きくなり、逆に、正の操作量が小さくなれば小さくなるので、押付作業時、オペレータは、操作レバー16の中立位置からの操作量を増減させることによって、溝の内側面に対するバケット4cの押付力を調節することができる。
(3)旋回の逆行を防止する場合について、旋回体3を左旋回に対する逆行を防止することを例に挙げて説明する。
第1,第2目標トルクは、「(1)」で説明したように、操作レバー16の左方向の操作量(正の操作量)に応じて算出される。そして、正方向の第1目標トルクが正方向の第2目標トルク以下になるまでは、電動モータ12の出力トルクは正方向の第2目標トルクに制御される。
傾斜地に停止させた油圧ショベル1の旋回体3を傾斜地の上り側に旋回させる場合には、フロント作業装置4の重力成分が旋回に抗する外力として作用する。また、強風下で風上に向かって旋回体3を旋回させる場合には風力が旋回体に抗する外力として作用する。したがって、それらの外力に対して正方向の第2目標トルクが小さすぎると、操作レバー16が左方向に操作されているにもかかわらず旋回体3は登録旋回角度を超えて右方向に逆行し、電動モータ12も旋回体3とともに負方向に逆行する。
逆行発生時、角度偏差算出手段153は負の速度偏差を算出する。第3目標トルク算出手段140はその負の速度偏差に基づき、第1逆行防止特性を用いて第3目標トルクを算出し、これによって正方向の第3目標トルクを得るとともに、第2逆行防止特性を用いて第3目標トルクを算出し0を得る。
また、第3目標トルク算出手段140は、第1補正手段141により、第1逆行防止特性40aを用いて算出された正方向の第3目標トルクに基づき、電動モータ12の出力トルクのオーバーシュートの度合いを設定する。
正方向の第2目標トルクが逆行防止に対して小すぎるほど角度偏差は大きくなり、これに伴い正方向の第3目標トルクも大きくなって、正方向の第2目標トルクを上回る。これにより、左旋回用目標トルク選択手段71は正方向の第2,第3目標トルクのうち大きい方である正方向の第3目標トルクを選択し、制限値決定手段73はその正方向の第3目標トルクを第1目標トルクの上限値に決定する。この結果、電動モータ12の出力トルクは正方向の第3目標トルクに制御され、旋回体3が逆行から復帰する。
なお、角度偏差が旋回角度1°に相当する値となったときには、正方向の第3目標トルクが最大値Tmaxとなるため、すなわち、逆行する旋回角度が1°よりも小さいうちに旋回体3は逆行から復帰する。これにより、逆行による不快感および操作性の悪化をオペレータが感じるまもなく、旋回体3を逆行から復帰させることができる。
旋回体3を右旋回させる場合の旋回制御装置120の動作は、左旋回させる場合に対して第1〜第3目標トルクの方向が反対方向(負方向)になる違いはあるが、これ以外は左旋回させる場合と同様の操作なので、その動作の説明は省略した。
第2実施形態に係る旋回制御装置120によれば次の効果を得られる。
第2実施形態に係る旋回制御装置120において、目標トルク制限手段70は第1目標トルクをこの第1目標トルクと同方向の第2,第3目標トルクのうち絶対値が大きい方に制限する。これにより、フィードバック制御に起因して第1目標トルクの絶対値が過剰な大きさに算出された場合に、電動モータ12の出力トルクを第2目標トルクまたは第3目標トルクに制限することができる。特に、押付作業時には電動モータ12の出力トルクが第2目標トルクに制御されるので、オペレータは旋回操作装置15の操作レバー16の操作量に応じて電動モータ12の出力トルクを調節することができる。また、第2目標トルクが逆行防止に不十分な場合には、第2目標トルクよりも絶対値が大きな第3目標トルクを第1目標トルクの制限値にすることができるので、逆行を自動的に防止することができる。
第2実施形態に係る旋回制御装置120において、第3目標トルク算出手段140は、登録旋回角度に対する実際の旋回角度の角度偏差に基づき第3目標トルクを算出し、電動モータ12の出力トルクをその第3目標トルクに制御する。これにより、旋回体3の逆行の自動的な防止を、登録した任意の旋回角度(登録旋回角度)から離れる方向の逆行に対して実施できる。
また、第2実施形態に係る旋回制御装置120において、登録指令手段151は操作レバー16の突端部に設けられたプッシュスイッチであったが、本発明は登録指令手段をそれに限定するものではない。メカニカルブレーキ13による電動モータ12の制動動作を検知する検知手段を設け、この検知手段を登録指令手段として、制動動作の検知を旋回角度の登録の指令としてもよい。
1 油圧ショベル
3 旋回体
4 フロント作業装置
10 旋回装置
12 電動モータ
15 旋回操作装置
30 コントローラ
31 目標回転速度算出手段
32 速度偏差算出手段
33 第1目標トルク算出手段
34 第2目標トルク算出手段
40 第3目標トルク算出手段
50 第1変化量算出手段
60 第2変化量算出手段
70 目標トルク制限手段
81 回転速度センサ

120 旋回制御装置
130 コントローラ
140 第3目標トルク算出手段
150 旋回角度算出手段
151 登録指令手段
152 旋回角度登録手段
153 角度偏差算出手段
182 回転角度センサ

Claims (2)

  1. 相反する2方向に回転可能な電動モータの出力トルクによって旋回体を駆動する旋回装置と、中立位置から相反する2方向への選択的な操作が可能であって、操作方向および操作量を旋回指令信号に変換する旋回操作装置と、この旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき前記電動モータの出力トルクを制御する制御手段とを備えた作業機械の旋回制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記電動モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段と、
    前記回転速度検出手段により検出された実際の回転速度の、前記目標回転速度に対する速度偏差を算出する速度偏差算出手段と、
    前記速度偏差が解消される方向の第1目標トルクを算出する第1目標トルク算出手段と、
    前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき、前記目標回転速度と同方向の第2目標トルクを算出する第2目標トルク算出手段と、
    前記回転速度検出手段による回転速度の検出値に基づき、予め設定された第1算出範囲内での前記電気モータの回転角度の変化量を算出する第1変化量算出手段と、
    前記回転速度検出手段による回転速度の検出値に基づき、予め設定された第2算出範囲内での前記電気モータの回転角度の変化量を算出する第2変化量算出手段と、
    前記第1,第2変化量算出手段のそれぞれにより算出された変化量に基づき、前記電動モータの回転角度が前記所定時間前の回転角度に戻る方向の第3目標トルクを算出する第3目標トルク算出手段と、
    前記第1目標トルクを前記第2,第3目標トルクのうち前記第1目標トルクと同方向で絶対値が大きい方の目標トルクに制限する目標トルク制限手段と、
    を備えており、
    前記第1算出範囲の略全体は、前記電動モータの相反する2つの回転方向のうち一方向の前記変化量の算出範囲を規定しており、その略全体を除いた残りの算出範囲は他方向の前記変化量の算出範囲を規定しており、
    前記第2算出範囲の略全体は、前記他方向の前記変化量の算出範囲を規定しており、その略全体を除いた残りの算出範囲は前記一方向の前記変化量の算出範囲を規定している
    ことを特徴とする作業機械の旋回制御装置。
  2. 相反する2方向に回転可能な電動モータの出力トルクによって旋回体を駆動する旋回装置と、中立位置から相反する2方向への選択的な操作が可能であって、操作方向および操作量を旋回指令信号に変換する旋回操作装置と、この旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき前記電動モータの出力トルクを制御する制御手段とを備えた作業機械の旋回制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記電動モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき前記電動モータの目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段と、
    前記回転速度検出手段により検出された実際の回転速度の、前記目標回転速度に対する速度偏差を算出する速度偏差算出手段と、
    前記速度偏差が解消される方向の第1目標トルクを算出する第1目標トルク算出手段と、
    前記旋回操作装置からの旋回指令信号に基づき、前記目標回転速度と同方向の第2目標トルクを算出する第2目標トルク算出手段と、
    前記旋回体の実際の旋回角度を検出する旋回角度検出手段と、
    この旋回角度検出手段により検出された旋回角度の登録を指令する登録指令手段と、
    この登録指令手段により指令された旋回角度を登録旋回角度として記憶する旋回角度登録手段と、
    前記旋回角度検出手段により検出された実際の旋回角度の、前記登録旋回角度に対する角度偏差を算出する角度偏差算出手段と、
    前記角度偏差に基づき、前記旋回体を前記登録旋回角度に戻す方向の第3目標トルクを算出する第3目標トルク算出手段と、
    前記第1目標トルクを前記第2,第3目標トルクのうち前記第1目標トルクと同方向で絶対値が大きい方の目標トルクに制限する目標トルク制限手段と、
    を備えている
    ことを特徴とする作業機械の旋回制御装置。
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