JP2012153550A - 製鋼スラグからの効率の良い有価金属の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CaO−SiO2−P2O5相及び(Fe,Mn)Ox相を含む製鋼スラグに対して地金を除去する地金除去処理を行ってから有価金属を回収する方法であって、処理後に塩基度が1.5未満である製鋼スラグ又は塩基度が2.5を超える製鋼スラグに対し、1250〜1400℃の温度範囲内で塩基度が1.5〜2.5になるように改質処理を行い、地金除去処理及び改質処理を行った製鋼スラグに対して、粉砕後の代表粒径が50μm以下となるように粉砕処理を行い、粉砕処理後のスラグを粗粒と微粒とに分級する分級処理の際に、粗粒の代表粒径と微粒の代表粒径との比が2.5倍以上となるよう処理し、分級処理後に粗粒を回収する点にある。
【選択図】図1
Description
特許文献1では、脱燐用の副原料として、主または石灰と蛍石を用いる転炉吹錬、又は溶銑脱燐処理において生成した滓の組成がCaF2≧2.5%及び2.17×(%P2O5)≧0.76×(SiO2)となるように処理条件を調整して造滓を行い、得られた滓に浮遊選鉱法を施して滓中に析出したP2O5濃度の高い相を分離している。
特許文献4では、溶融状態の転炉スラグにSiO2含有物質の添加によりCaO/SiO2(モル比)=1.5〜2.5にする塩基度調整処理と溶融状態での酸化処理、あるいは核塩基度調整処理とその後のスラグ凝固過程または凝固後の酸化処理とを施して得られたMg-Mnフェライト相とカルシウムシリケート相またはこれらの相とMg−Mnウスタイト相を主構成分とする改質転炉スラグを湿式の磁選処理に付し、得られたスラリー状尾鉱に、高炉スラグ、粘土または石灰石などの調整剤を加え、湿式キルンにて焼成することを特徴としている。
一方、特許文献2〜4では、製鋼で生成した製鋼スラグを粉砕したり磁選することによって、金属を含むものと金属を含まないものとに分離し、分離後に製鋼スラグから有価金属を回収している。しかしながら、これら特許文献2〜4では、製鋼スラグの粉砕/分級条件や磁選条件(磁場強度、磁場勾配など)が詳細に開示されておらず、これらの技術を用いても、十分に有価金属を回収することができないのが実情である。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、CaO−SiO2−P2O5相及び(Fe,Mn)Ox相を含む製鋼スラグに対して地金を除去する地金除去処理を行ってから有価金属を回収する方法であって、処理後に塩基度が1.5未満である製鋼スラグ又は塩基度が2.5を超える製鋼スラグに対し、1250〜1400℃の温度範囲内で塩基度が1.5〜2.5になるように改質処理を行い、前記地金除去処理及び改質処理を行った製鋼スラグに対して、粉砕後の代表粒径が50μm以下となるように粉砕処理を行い、粉砕処理後のスラグを粗粒と微粒とに分級する分級処理の際に、前記粗粒の代表粒径と微粒の代表粒径との比が2.5倍以上となるよう処理し、分級処理後に粗粒を回収する点にある。
前記分級処理後に得られた粗粒に対して、再び、粉砕処理及び分級処理を行うことが好ましい。
製鋼工程では、高炉から出銑した溶銑に対して脱珪処理や脱硫処理を行った後、脱りん処理及び脱炭処理を行うのが一般的である。これらの脱珪処理、脱硫処理、脱りん処理、脱炭処理ではスラグが生成されるが、このような製鋼工程(製鋼精錬プロセス)にて発生した製鋼スラグ(脱珪処理、脱硫処理、脱りん処理、脱炭処理の少なくとも1つを含むスラグ)を本発明では処理することとしている。
即ち、脱りん処理や脱炭処理後に生成された製鋼スラグを冷却してSEM(Scanning Electron Microscope)にて観察すると、主に、CaO−SiO2−P2O5系の鉱物相、CaO−FeOX系の鉱物相、CaO−SiO2−FeOX系の鉱物相、(Fe,Mn)OX相の鉱物相が存在する。
以下、回収方法を具体的に説明する。
上述したように、製鋼スラグ内には、回収目的としている鉄−マンガン酸化物の他、酸化によって発生したりん酸化物(CaO−SiO2−P2O5系の鉱物相)も含まれている。このりん酸化物は、再利用をし難いことから出来る限り、鉄−マンガン酸化物を含む回収物にりん酸化物が混在しないことが好ましい。
しかしながら、この技術で効率よく鉄−マンガン酸化物を回収するためには、磁着し易いようにFe2+をFe3+に酸化処理する必要がある。さらに、磁選時の粒子同士の凝集を防ぐために、湿式処理を実施する必要がある。
そのため、本発明では、出来るだけ酸化処理や湿式処理を行わずに乾式処理にて鉄−マンガン酸化物とりん酸化物とを分離することとしている。具体的には、鉄−マンガン酸化物とりん酸化物との機械的性質の違い(破砕しやすい/破砕し難い)に着目し、斯かる機械的性質を利用することによって鉄−マンガン酸化物とりん酸化物とを分離している。
本発明では、鉄−マンガン酸化物とりん酸化物とを分離するにあたっては、まず、製鋼スラグから地金を除去する磁選処理(地金除去)を行い、次に、地金除去した製鋼スラグを粉砕する粉砕処理を行い、その後、粉砕処理後のスラグを分級する分級処理を行う。
ここで、製鋼スラグを粉砕したとき、粉砕する製鋼スラグ(粉砕対象となる製鋼スラグ)が鉄−マンガン酸化物[(Fe,Mn)OX相]とりん酸化物[CaO−SiO2−P2O5系の鉱物相]とに分かれやすい状態であることが好ましいことから、本発明では、製鋼スラグを粉砕する前(粉砕処理前)に当該製鋼スラグの改質処理を行うことによって、(Fe,Mn)OX相とCaO−SiO2−P2O5系の鉱物相との2相に分かれやすい状態にしている。
そのため、本発明では、1250〜1400℃の温度範囲内で塩基度が1.5〜2.5になるように改質処理を行っている。
そして、改質処理が終了すると製鋼スラグを冷却する冷却処理を行い、冷却処理後に粉砕処理を行うこととしている。
なお、粉砕機1は、スラグをジェットエアーに乗せてスラグ同士を衝突させることにより粉砕するジェットミル方式であってもよく、スラグと共に硬質のボールを容器内に入れて回転させることによってスラグを粉砕するボールミル方式であってもよい。
まとめると、本発明では、50%体積粒径が50μm以下となるように、スラグを粉砕する粉砕機1の能力(粉砕時間など)を設定し、設定した粉砕機1でスラグを粉砕する。尚、50%体積粒径は、マイクロトラック等の粒子分析計で求めることができる。
詳しくは、分級処理では、粉砕後のスラグを分級機2に入れてサイクロン式の当該分級機2を可動させることにより、粗粒と微粒との2つに分ける。同時に、粗粒の50%体積粒径と微粒の50%体積粒径との比が2.5倍以上となるように、分級機2の回転羽の回転数を制御することにより、粉砕後のスラグを分級する。
以上の処理により得られた粗粒は、(Fe,Mn)OX系の鉱物相を多く含む粒子(破砕後のスラグ)であり、この粗粒を回収することで、製鋼スラグから回収する鉄−マンガン酸化物の回収率を向上することができるようになる。分級後に回収した(Fe,Mn)OX相のスラグ(鉄、マンガン酸化物濃縮物、回収物)は、脱りん処理や脱炭処理において、インジェクション、ブラスティングで溶湯中に吹き込んだり、塊成化して炉上から上方投入することにより、製鉄原料としてリサイクルすることができる。
表1〜表3は、本発明の製鋼スラグからの効率の良い有価金属の回収方法に基づいて処理を行った実施例と、本発明とは異なる方法で処理を行った比較例とをまとめたものである。実施例Aは、粉砕処理及び分級処理を1回行った結果であり、実施例Bは、粉砕処理及び分級処理を繰り返し行った、即ち、上述した閉回路分級処理を行った結果である。
改質処理では、溶銑を脱炭処理した際に発生した脱炭スラグと、脱珪処理(脱りん処理の前に行う)にて発生した脱珪スラグとを用意し、両者を混合して塩基度が1.5〜2.5となるよう製鋼スラグの改質を行った(表中、脱炭スラグ、脱珪スラグ、改質後スラグの欄)。この改質処理は、抵抗炉の中にMgO坩堝を入れ、この坩堝に脱炭スラグと脱珪スラグとを混合した混合スラグを投入し、1150〜1500℃の範囲で混合スラグを1時間加熱することで行った。
実施例及び比較例においては、粗粒[(Fe,Mn)OX相のスラグ]の回収率を式(1)により求めた。式(1)に示すように、回収率は、粉砕前のスラグ重量に対する回収した粗粒の割合のことであり、高ければ高いほどよい。また、実施例及び比較例においては、有価金属(T・Fe,Mn)がどれほど効率よく回収されたか分かり易くするために式(2)によって濃縮率を求めた。濃縮率では、有価金属(T・Fe,Mn)は高ければ高いほどよく、P2O5は低ければ低いほどよい。
図4は、粉砕処理においてT・Feの濃縮率(鉄濃縮率)と50%体積粒径との関係をまとめたものである。図4及び表1〜3に示すように、粉砕処理において50%体積粒径が50μm以下である実施例は、比較例に比べて鉄濃縮率が非常に高いものとなった。
以上、本発明によれば、処理後に塩基度が1.5未満である製鋼スラグ又は塩基度が2.5を超える製鋼スラグに対し、1250〜1400℃の温度範囲内で塩基度が1.5〜2.5になるように改質処理を行い、地金除去処理及び改質処理を行った製鋼スラグに対して、粉砕後の代表粒径が50μm以下となるように粉砕処理を行い、粉砕処理後のスラグを粗粒と微粒とに分級する分級処理の際に、粗粒の代表粒径と微粒の代表粒径との比が2.5倍以上となるよう処理し、分級処理後に粗粒を回収すれば、有価金属(T・Fe,Mn)の回収率を向上させることができる(表中、評価、◎、○)。
2 分級機
3 複合装置
Claims (3)
- CaO−SiO2−P2O5相及び(Fe,Mn)Ox相を含む製鋼スラグに対して地金を除去する地金除去処理を行ってから有価金属を回収する方法であって、
処理後に塩基度が1.5未満である製鋼スラグ又は塩基度が2.5を超える製鋼スラグに対し、1250〜1400℃の温度範囲内で塩基度が1.5〜2.5になるように改質処理を行い、
前記地金除去処理及び改質処理を行った製鋼スラグに対して、粉砕後の代表粒径が50μm以下となるように粉砕処理を行い、
粉砕処理後のスラグを粗粒と微粒とに分級する分級処理の際に、前記粗粒の代表粒径と微粒の代表粒径との比が2.5倍以上となるよう処理し、
分級処理後に粗粒を回収することを特徴とする製鋼スラグからの効率の良い有価金属の回収方法。 - 前記代表粒径は、粉砕処理後のスラグを粒子径が小さいものから大きいものへ順番に並べ、並べた後のスラグの体積を小さい方から積算してゆき、積算した体積がスラグ全体の体積の50%となった時点でのスラグの粒子径であることを特徴とする請求項1に記載の製鋼スラグからの効率の良い有価金属の回収方法。
- 前記分級処理後に得られた粗粒に対して、再び、粉砕処理及び分級処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の製鋼スラグからの効率の良い有価金属の回収方法。
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