JP2012153318A - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】サーキット等で安心してスポーティな走行ができるグリップ性能と、一般道でも、安心して走行できるウェット性能とを両立させ、さらに旋回時の操縦安定性を向上させることのできる自動二輪車用空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤは、トレッド踏面の第1の領域内Pにて、指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝6と、第1の領域Pと第2の領域Qとに跨り、第1の溝6の指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって指定タイヤ回転方向の逆方向に傾斜して延びる第2の溝7とからなる屈曲した形状の主溝8と、指定タイヤ回転方向の逆方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して、少なくとも第2の領域Qに跨って延びる第1の副溝9のほか、第3の溝10、第4の溝11、第2の副溝12等の配置及びトレッド周方向に対する傾斜角度を規定した。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動二輪車用空気入りタイヤ、特には、グリップ性能とウェット性能とを両立させ、さらに旋回時の操縦安定性に優れ、様々な路面での安全に走行することのできる自動二輪車用空気入りタイヤに関する。
従来、一般道の走行において、ドライ路面およびウェット路面での操縦安定性を確保するため、トレッド部に多数の傾斜溝を配置したパターンを有する自動二輪車用空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、特に昨今、一般道走行用の自動二輪車用空気入りタイヤをサーキット走行にも使用したいとのニーズが高まっており、上記のような従来タイヤをこの目的のために用いた場合、サーキット走行等でスポーティな走行に必要なグリップ力が十分ではなく、グリップ性能を向上させる必要があった。
特に、駆動輪となる後輪タイヤのグリップ力を高めることにより、直進時のトラクション及びブレーキング力と旋回時の横力を向上させたタイヤが望まれている。
一方、サーキット走行専用の自動二輪車用空気入りタイヤとして、図1に示すようなパターンを有する自動二輪車用空気入りタイヤも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
規定リムに規定内圧を充填したタイヤを最大負荷荷重下で直進走行させた際にタイヤ接地面となる領域を直進時接地域と呼ぶとき、図1に示したパターンは、トレッド部の、直進時接地域の範囲Q1内に、赤道面CLを横切って傾斜する第1の傾斜溝91と、第1の傾斜溝91の各々に対応して赤道面CLを横切らないように設けられる第2の傾斜溝92とがそれぞれ多数、間隔をおいて周方向に配置されている。
第1の傾斜溝91とこれに対応する第2の傾斜溝92とは、互いに離隔し、しかも、赤道面CLに対して互いに反対向きに傾斜して設けられている。
このパターンは、サーキット走行に要求されるグリップ性能を高めるために、トレッド部全面積に占める溝部面積の割合(ネガティブ率)を極めて低く抑えていた。
また、タイヤの六分力(前後力、横力、接地荷重)を最適化して、旋回時における車両の倒れこみの速度を一様化して、旋回時の操縦安定性を確保すべく、タイヤパターン配置を最適化する場合、ブロック剛性を高めるために、ネガティブ率を低くすることがある。
特開2007−331596号公報 意匠登録第1312918号公報
しかしながら、上述の技術のように、ネガティブ率を小さくすると、排水性が悪くなり、ウェット時の性能が十分ではなく、一般道を安全に走ることができないという問題があった。
さらに、このようにネガティブ率が小さいとトレッドの面外曲げ剛性が上がり、旋回時において接地面積が低下し、グリップ性能の向上が妨げられるという問題もあった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、サーキット等で安心してスポーティな走行ができるグリップ性能と、一般道でも、安心して走行できるウェット性能とを両立させ、さらに旋回時の操縦安定性を向上させることのできる自動二輪車用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意究明を重ねた。
その結果、トレッドに設ける溝の配置、形状を適切化することで、グリップ性能とウェット性能とを両立させ、さらに、溝のトレッド周方向に対する傾斜角度を好適化することで旋回時の操縦安定性を向上させることができることの新規知見を得た。
本発明にかかる空気入りタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
(1) 一対のビード部と、該ビード部に連なる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間にトロイダル状に跨るトレッドとを備え、車両装着時の回転方向が指定される自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドの踏面のタイヤ赤道面を境界とする半部をトレッド幅方向に4等分し、前記4等分されたトレッド踏面をタイヤ赤道面側から順に、第1の領域、第2の領域、第3の領域、第4の領域とするとき、
前記トレッド踏面の第1の領域内にて、前記指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝と、前記第1の領域と第2の領域とに跨り、前記第1の溝の前記指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって前記指定タイヤ回転方向の逆方向に傾斜して延びる第2の溝とからなる屈曲した形状の主溝と、
前記指定タイヤ回転方向の逆方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して、少なくとも第2の領域に跨って延びる第1の副溝と、
前記指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向内側に傾斜して、少なくとも第2の領域に跨って延びる第3の溝と、少なくとも第3の領域に跨り、前記第3の溝の指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって前記指定タイヤ回転方向の逆方向に傾斜して延びる第4の溝とからなる屈曲した形状の第2の副溝と、を備え、
前記第2の副溝は、トレッド幅方向に投影したときに、前記第2の副溝の全体が前記主溝に重なる位置に配置され、
前記第1の溝のトレッド周方向に対する傾斜角度θ1は5°以上20°以下であり、
前記第2の溝の前記第1の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ2は27°超39°未満であり、
前記第2の溝の前記第2の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ3は46°超53°未満であり、
前記第1の副溝の、第2の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ4は、46°超53°未満であり、
前記第3の溝の、第2の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ5は、11°超29°未満であることを特徴とする、自動二輪車用空気入りタイヤ。
(2)前記第2の溝の溝中心線を幅方向外側に延長した線上に、前記第3の領域と前記第4の領域とに跨り、前記第2の溝とは離間して配置された補助溝を設けた、上記(1)に記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
本発明によれば、トレッドにおける溝の形状、配置を適切化することによって、グリップ性能とウェット性能とを高い次元で両立させることができる。
また、溝のトレッド周方向に対する傾斜角度を好適化することにより、旋回時の操縦安定性を向上させることができる。
これにより、様々な路面を安全に走行することのできる自動二輪車用空気入りタイヤを提供することができる。
従来の自動二輪車用タイヤのトレッドパターンを示す展開図である。 本発明の自動二輪車用タイヤの幅方向断面図である。 本発明の自動二輪車用タイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態に従う自動二輪車用タイヤ(以下「タイヤ」という)を示す幅方向断面図である。
図2に示すように、本実施形態のタイヤは、慣例に従い、一対のビード部1と該ビード部1に連なる一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2にトロイダル状に跨るトレッド3とを備えている。
図示例では、ビード部1は、ビードコア1aを有し、ビードコア1a間にはカーカス4がトロイダル状に延在し、該カーカス4のタイヤ径方向外側にベルト5を有する。
図示例では、カーカス4は、2枚のカーカスプライからなるが、1枚又は3枚以上のカーカスプライで構成しても良い。
図示例では、ベルト5は、周方向に連続して巻き付けたベルトコードからなる。
図3は、本発明の一実施形態のタイヤのトレッド3の接地面を展開して示す図である。
すなわち、タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、荷重を負荷しないときのトレッドを展開して示す図である。
まず、図3に示すように、トレッド3の接地域を、タイヤ赤道面CLを境界とする半部をトレッド幅方向に4等分する。
この4等分されたトレッド踏面をタイヤ赤道面CL側から順に、第1の領域P、第2の領域Q、第3の領域R、第4の領域Sとする。
なお、図3においては、4等分した様子を一方の半部のみで図示している。
ここでいう、「規定リム」とは所定の産業規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または“Approved Rim”、“Recommended Rim”)のことであり、規定内圧とは同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことである。
また、最大負荷荷重とは、同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことである。
かかる産業規格については、タイヤが生産もしくは使用される地域においてそれぞれ有効な規格が定められており、これらの規格は、例えば、アメリカ合衆国では“The Tire and Rim Association Inc. Year Book”(デザインガイドを含む)により、欧州では、“The European Tire and Rim Technical Organization Standards Manual”により、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA YEAR BOOK”によりそれぞれ規定されている。
図3に示すように、本発明のタイヤは、トレッド3の第1の領域P内で指定タイヤ回転方向に対してトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝6と、第1の溝6の指定タイヤ回転方向の逆回転方向の端部からトレッド幅方向外側に向かって斜めに、指定タイヤ回転方向の逆回転方向に、第1の領域Pと第2の領域Qとに跨って延びる第2の溝7とを有する。
第1の溝6と第2の溝7とは、連結して主溝8を形成している。
また、図3に示すように、主溝8は、タイヤ周方向に間隔を置いて、タイヤ赤道面CLを挟む一方側と他方側のトレッド面に交互に配置したパターンを形成している。
ここで、指定タイヤ回転方向とは、タイヤの車両装着時のタイヤ回転方向に指定された方向をいい、図3の矢印の方向である。逆回転方向とは、指定タイヤ回転方向を順方向としたときの、逆方向をいう。
なお、「第1の溝が第1の領域P内で延びる」とは、第1の溝6の溝全体が第1の領域P内に位置することを意味する。
また、「第2の溝が第1の領域Pと第2の領域Qとに跨って延びる」とは、第2の溝7の溝面積の90%以上が第1の領域又は第2の領域のいずれかに位置することを意味する。従って、第2の溝7を部分的には第3の領域R内に跨って配置しても良い。
また、本発明のタイヤは、トレッド3に、指定タイヤ回転方向の逆方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の副溝9を有している。
なお、第1の副溝9は、少なくとも第2の領域に跨って配置され、図示例では、第1の領域Pから第3の領域Rまで跨って配置されている。
さらに、本発明のタイヤは、トレッド3に、指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向内側に傾斜して延びる第3の溝10と、第3の溝10の指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって指定タイヤ回転方向の逆回転方向に傾斜して延びる第4の溝11とからなる屈曲した形状の第2の副溝12をさらに有している。
この第2の副溝12は、トレッド幅方向に投影したときに、第2の副溝12の全体が主溝に重なる位置に配置される。
また、第3の溝10は、少なくとも第2の領域Qに跨って配置され、第4の溝11は、少なくとも第3の領域Rに跨って配置される。
図示例では、第3の溝10全体が、第2の領域Q内に配置され、第4の溝11が、第1の領域Pから第3の領域Rにまで跨って配置されている。
ところで、第1の溝6の溝中心線を6a、第2の溝7の溝中心線を7a、第1の副溝9の溝中心線を9a、第3の溝10の溝中心線を10aとする。
ここで、「溝中心線」とは、溝の幅に対する中点を繋いでできる線をいうものとする。
また、屈曲形状の主溝8の幅方向内側の屈曲点を点Eとし、第1の溝6の溝中心線6aの指定回転方向側の端点を6bとする。
さらに、第2の溝7の溝中心線7aの、指定回転方向側の端点を7bとし、指定回転方向の逆回転方向側の端点を7dとする。第2の溝7の溝中心線7aが、第1の領域Pと第2の領域Qとの境界線と交わる点を7cとする。
さらにまた、第1の副溝9の溝中心線9aが、第1の領域Pと第2の領域Qとの境界線と交わる点を9bとし、第2の領域Qと第3の領域Rとの境界線と交わる点を9cとする。
加えて、第3の溝10の溝中心線10aの指定回転方向側の端点を10bとし、指定回転方向の逆回転方向側の端点を10cとする。
ここで、第1の溝6のトレッド周方向に対する傾斜角θ1を、上記の点6bと点Eとを通る直線がトレッド周方向に対してなす鋭角とする。
また、第2の溝7の、第1の領域Pにおけるトレッド周方向に対する傾斜角θ2を、上記の点7bと点7cとを通る直線がトレッド周方向に対してなす鋭角とする。
さらに、第2の溝7の、第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角θ3を、上記の点7cと点7dとを通る直線がトレッド周方向に対してなす鋭角とする。
さらにまた、第1の副溝9の、第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角θ4を、上記の点9bと点9cとを通る直線がトレッド周方向に対してなす鋭角とする。
加えて、第3の溝10の、第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角θ5を、上記の点10bと点10cとを通る直線がトレッド周方向に対してなす鋭角とする。
ここで、本発明のタイヤは、以下の構成を満たすことが肝要である。
(A)第1の領域P内で指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝と、第1の領域Pと第2の領域Qとに跨り、第1の溝の指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって、指定タイヤ回転方向の逆回転方向に傾斜して延びる第2の溝とからなる屈曲した形状の主溝を備えること。
(B)トレッド3にて、少なくとも第2の領域に跨って配置され、指定タイヤ回転方向の逆方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の副溝9を備えること。
(C)少なくとも第2の領域Qに跨って配置され、指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向内側に傾斜して延びる第3の溝10と、少なくとも第3の領域Rに跨って配置され、第3の溝10の指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって、指定タイヤ回転方向の逆回転方向に傾斜して延びる第4の溝11とからなる屈曲した形状の第2の副溝12をさらに備えること。
(D)第2の副溝12は、トレッド幅方向に投影したときに、第2の副溝12の全体が主溝に重なる位置に配置されること。
さらに、本発明のタイヤは、上述の溝について以下の傾斜角度に関する規定を満たすことが肝要である。
(a)第1の溝の溝中心線のトレッド周方向に対する傾斜角度は5°以上20°以下であること。
(b)第2の溝の第1の領域における溝中心線のトレッド周方向に対する傾斜角度は27°超39°未満であること。
(c)第2の溝の第2の領域における溝中心線のトレッド周方向に対する傾斜角度は46°超53°未満であること。
(d)第1の副溝の第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角度が46°超53°未満であること。
(e)第3の溝の第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ5が11°超29°未満であること。
以下、本発明の作用効果について説明する。
本発明の目的の1つであるグリップ性能とウェット性能とを向上させるためには、路面からの入力(外力)に対するトレッドの引張り剛性を維持して、外力による陸部の変形をできるだけ抑え、接地面積を確保しつつ、その一方で、溝により接地面内の排水性を向上させる必要がある。
そのためには、トレッドにおける溝は外力の方向に沿った配置とすることが必要である。すなわち、かような配置とすることで、陸部が最も変形しづらくなり、外力に対する引張り剛性が維持されるからであり、また、外力の向きに発生する陸部のすべりは、溝内の水と相対的な動きをするため、排水性が向上するからである。
本発明のタイヤでは、第1の溝6が第1の領域内に傾斜角度20°以下で配置されており、トレッド周方向、すなわち、直進時におけるトラクション及びブレーキング力に沿う方向に配置している。
これにより、車両の直進時において、外力による陸部の変形が抑えられて、第1の領域における接地面積が確保されるため、グリップ力が向上する。また、上述のように第1の領域における排水性も向上する。
また、第2の溝7は、第1の領域Pと第2の領域Qとに跨って、第1の溝6の指定タイヤ回転方向の逆回転方向の端部からトレッド幅方向外側に向かって斜めに、指定タイヤ回転方向の逆回転方向に延びている。すなわち、第2の溝7を、車両旋回時の接地面内で、旋回時の入力に沿う方向に設けている。
これにより、車両の旋回時において、外力による陸部の変形が抑えられて、第1の領域P及び第2の領域Qにおける接地面積が確保されるため、グリップ力が向上する。また、上述のように第1の領域P及び第2の領域Qにおける排水性も向上する。
また、第1の溝と第2の溝とが連結しているため、直進時から旋回時までの排水性がさらに向上する。
ここで、リア用タイヤは、駆動輪であることからタイヤ赤道面付近に非常に大きな前後力が発生するため、この部分の接地面積を増加させることが有効である。
そのため、第1の溝は、図3に示すように指定タイヤ回転方向側をトレッド外側に若干傾けることが肝要である。
第1の領域Pにおけるトレッドの面外曲げ剛性を低減させて、接地面積を確保することができるからである。
具体的には、上記傾斜角度θ1を5°以上20°以下とすることが肝要である。5°以上とすることで上述の面外曲げ剛性を低減させる効果を確保することができ、一方で20°以下とすることで排水性を確保することができるからである。
また、トレッド3にて、少なくとも第2の領域に跨って配置され、指定タイヤ回転方向の逆方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の副溝9を備えることにより、入力に対するトレッドの剛性を保持することができ、また、排水性を高めてタイヤのウェット性能を向上させることができるという効果がある。
さらに、少なくとも第2の領域Qに跨って配置され、指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向内側に傾斜して延びる第3の溝10と、少なくとも第3の領域Rに跨って配置され、第3の溝10の指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって指定タイヤ回転方向の逆回転方向に傾斜して延びる第4の溝11とからなる屈曲した形状の第2の副溝12をさらに備えている。
この第2の副溝12は、トレッド幅方向に投影したときに、第2の副溝12の全体が主溝に重なる位置に配置している。
これにより、旋回時倒れ込み中のトレッド剛性変化を低減することができ、また、排水性を高めてタイヤのウェット性能を向上させることができるという効果がある。
さらに、本発明においては、上述のように、第2の溝の第1の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ2は27°超39°未満であり、且つ第2の溝の第2の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ3は46°超53°未満であることが肝要である。
加えて、第1の副溝の第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角度が46°超53°未満であることが肝要である。
また、第2の副溝の第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ5が11°超29°未満であることが肝要である。
上記のようにθ2を27°超とすることにより、車両が倒れこむ速度が他の領域より速くなる傾向にある第1の領域Pにおいて、トレッドの剛性を高めて倒れこみ速度を低減することができる。
また、θ3を46°超、且つθ4を46°超、且つθ5を11°超とすることにより、車両が倒れこむ速度が他の領域より速くなる傾向にある第2の領域Qにおいて、トレッドの剛性を高めて倒れこみ速度を低減することができる。
これにより、旋回時の倒れこみ速度を一様化して、旋回時の操縦安定性を高めることができる。
一方で、θ2が39°以上の場合、第1の領域Pにおける倒れこみ速度の低減効果が大きくなりすぎ、第1の領域Pにおける倒れこみ速度が遅くなってしまう。また、排水性も低下してしまう。
同様に、θ3が53°以上、又はθ4が53°以上、又はθ5が29°以上の場合、第2の領域Qにおける倒れこみ速度の低減効果が大きくなりすぎ、第2の領域における倒れこみ速度が遅くなってしまう。また、排水性も低下してしまう。
従って、θ2が39°以上、又はθ3が53°以上、又はθ4が53°以上、又はθ5が29°以上の場合、旋回時の倒れこみ速度の一様性が失われ、また排水性が低下してウェット性能が低下してしまうからである。
また、本発明のタイヤのトレッドパターンによれば、ネガティブ率を変更せずに、上記のように溝の傾斜角度により、旋回時の操縦安定性を向上させることができるため、排水性が低下せず、ウェット性能にも優れる。
なお、本発明のタイヤは、ネガティブ率を8.0〜8.5%とすることが好ましい。
ここで、本発明においては、図3に示すように、第2の溝の溝中心線を幅方向外側に延長した線上に、第3の領域Rと前記第4の領域Sとに跨り、第2の溝とは離間して配置された補助溝13を設けることが好ましい。
旋回時においては、キャンバー角に応じてブロックが接地面積を確保できるように変形できること、すなわち面外曲げ剛性を低減させることが有効である。補助溝が第2の溝7のトレッド幅方向外側且つ第2の溝7とは離間した位置にあることで、主溝8と補助溝13とが連結している場合に比べ、溝が旋回時の入力の方向に延びる距離が小さくなる。このため、該入力に対する剛性(面外曲げ剛性)を低減させ、接地面積を増加させて、旋回時のグリップ性能を向上させることができる。これにより、旋回時の横力を大きく発生させることができる。
ここで、「第2の溝の溝中心線の延長線上に補助溝を設ける」とは、第2の溝の溝中心線を、点7dにおける曲率でトレッド幅方向に延長させた線が、補助溝内に完全に含まれることをいう。
なお、例えばピッチ数を6〜16とするとき、主溝、第1の副溝、第2の副溝、補助溝の長さは、以下のようにするのが好ましい。
主溝8がトレッド周方向に延在する長さL1は、1ピッチ長さの60〜70%とすることが好ましい。
また、第1の副溝9がトレッド周方向に延在する長さL2は、1ピッチ長さの18〜28%とすることが好ましい。
さらに、第2の副溝12がトレッド周方向に延在する長さL3 1ピッチ長さの27〜37%とすることが好ましい。
加えて、補助溝13がトレッド周方向に延在する長さL4は、1ピッチ長さの13〜23%とすることが好ましい。
また、このときのネガティブ率は第1の領域Pで9.5〜12.5%、第2の領域Qで8.0〜10.0%、第3の領域Rで6.5〜8.5%、第4の領域Sで3.5〜5.5%とすることが好ましい。
ここでいう、溝長さは、上述のようにタイヤを規定リムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷したときの値である。
また、図3に示すように、主溝8、第1の副溝9、第2の副溝12、補助溝13は、タイヤ周方向に間隔を置いて、タイヤ赤道面CLを挟む一方側と他方側のトレッド面に交互に配置することが好ましい。
これにより、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部と他方の半部とで交互に陸部打音を発生させることができ、同時の打音の発生を回避して、騒音性能を向上させることができる。
このとき、赤道面CLを境界とするトレッドの一方の半部と他方の半部とで、タイヤ周方向にずらす間隔は、1ピッチの長さの50%とすることが好ましい。
次に、本発明のタイヤがグリップ性能、ウェット性能及び、旋回時の操縦安定性に優れていることを確認するため、ドライバーによるドライ路面及びウェット路面のテスト走行を実施した。
ここで、発明例1〜3及び比較例1〜14として、図3に示すタイプのトレッドを有する、タイヤサイズが190/50ZR17M/Cの後輪タイヤを試作した。
実施例に示すタイヤは上記サイズで、ピッチ数8のものを使用、よって1ピッチ長さは240〜250mmの範囲となる。
具体的には、発明例1〜3及び比較例1〜14にかかるタイヤは、上述の配置位置の主溝、第1の副溝、第2の副溝を備え、発明例1〜3及び比較例1〜12、14にかかるタイヤは、上述の配置位置の補助溝を備えている。
なお、発明例1〜3及び比較例1〜14にかかるタイヤは、図2に示す慣例に従う構造であり、ベルトはスチール製のモノスパイラルベルトを用い、またナイロン製のカーカスプライを用いた。
前輪タイヤは、タイヤサイズ120/70ZR17M/Cの汎用品タイヤを共通して用いた。
ここで、発明例1〜3、比較例1〜14について、主溝のトレッド周方向長さL1は1ピッチ長さの65%で共通である。
また、第1の副溝のトレッド周方向長さL2は1ピッチ長さの23%で共通である。
さらに、第2の副溝のトレッド周方向長さL3は1ピッチ長さの32%で共通である。
さらにまた、発明例1〜3、比較例1〜12、14について、補助溝のトレッド周方向長さL4は1ピッチ長さの18%で共通である。
加えて、発明例1〜3、比較例1〜14について、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部と他方の半部とで、トレッド周方向に1ピッチの長さの50%間隔をずらしている。
また各タイヤのネガティブ率は第1の領域Pで10.1%、第2の領域Qで9.5%、第3の領域Rで6.8%、第4の領域Sで3.9%であり、共通である。
各タイヤの諸元は表1に示している。
表1において、上述のように、θ1は、第1の溝のトレッド周方向に対する傾斜角である。θ2は、第2の溝の、第1の領域Pにおけるトレッド周方向に対する傾斜角である。θ3は、第2の溝の、第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角である。θ4は、第1の副溝の、第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角である。θ5は、第3の溝の、第2の領域Qにおけるトレッド周方向に対する傾斜角である。
上記の各後輪用タイヤを、リムサイズ17M/CxMT6.00のリムに装着し、内圧を290kPaとした。また、上記の汎用品の前輪タイヤをリムサイズ17M/CxMT3.50のリムに装着し、内圧を290kPaとした。これらのタイヤをそれぞれ、1000ccスポーツバイクの前輪及び後輪として取り付けた。
グリップ性能は、ドライ路面のテストコースをドライバーによりテスト走行したときの官能評価により行った。評価は、絶対レベルとして満足できるレベルを100として指数化して評価した。
ウェット性能は、ウェット路面のテストコースをドライバーによりテスト走行したときの官能評価により行った。評価は、絶対レベルとして満足できるレベルを100として指数化して評価した。
また、旋回時の操縦安定性は、テストコースをドライバーによりテスト走行したときの旋回時の操縦安定性を官能評価することにより行った。評価は5点満点で、5点が適正であることを示す。
評価結果を表2に示す。なお、表2の旋回時安定性の「+」とは、旋回中に倒れこみ速度が遅くなる時間領域があることを意味し、「−」とは、旋回中に倒れこみ速度が速くなる時間領域があることを意味する。
表2に示すように、比較例1〜14にかかるタイヤがグリップ性能、ウェット性能、旋回安定性のいずれかの特性が適正レベルに満たないのに対し、発明例1〜3に示すタイヤは、グリップ性能、ウェット性能、旋回安定性の全ての特性が適正レベルを満足していることがわかる。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド
4 カーカス
5 ベルト
6 第1の溝
7 第2の溝
8 主溝
9 第1の副溝
10 第3の溝
11 第4の溝
12 第2の副溝
13 補助溝
CL タイヤ赤道面

Claims (2)

  1. 一対のビード部と、該ビード部に連なる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間にトロイダル状に跨るトレッドとを備え、車両装着時の回転方向が指定される自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッドの踏面のタイヤ赤道面を境界とする半部をトレッド幅方向に4等分し、前記4等分されたトレッド踏面をタイヤ赤道面側から順に、第1の領域、第2の領域、第3の領域、第4の領域とするとき、
    前記トレッド踏面の第1の領域内にて、前記指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝と、前記第1の領域と第2の領域とに跨り、前記第1の溝の前記指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって前記指定タイヤ回転方向の逆方向に傾斜して延びる第2の溝とからなる屈曲した形状の主溝と、
    前記指定タイヤ回転方向の逆方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して、少なくとも第2の領域に跨って延びる第1の副溝と、
    前記指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向内側に傾斜して、少なくとも第2の領域に跨って延びる第3の溝と、少なくとも第3の領域に跨り、前記第3の溝の指定タイヤ回転方向の逆方向端部からトレッド幅方向外側に向かって前記指定タイヤ回転方向の逆方向に傾斜して延びる第4の溝とからなる屈曲した形状の第2の副溝と、を備え、
    前記第2の副溝は、トレッド幅方向に投影したときに、前記第2の副溝の全体が前記主溝に重なる位置に配置され、
    前記第1の溝のトレッド周方向に対する傾斜角度θ1は5°以上20°以下であり、
    前記第2の溝の前記第1の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ2は27°超39°未満であり、
    前記第2の溝の前記第2の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ3は46°超53°未満であり、
    前記第1の副溝の、第2の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ4は、46°超53°未満であり、
    前記第3の溝の、第2の領域におけるトレッド周方向に対する傾斜角度θ5は、11°超29°未満であることを特徴とする、自動二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 前記第2の溝の溝中心線を幅方向外側に延長した線上に、前記第3の領域と前記第4の領域とに跨り、前記第2の溝とは離間して配置された補助溝を設けた、請求項1に記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
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