JP2012149314A - 固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セパレータの使用環境下で接触抵抗を低く保持でき、また耐久性にも優れた固体高分子形燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】金属板の表面に、SnOとNi3Sn4の薄膜X線回折ピーク強度比SnO/Ni3Sn4が0.046以下を満足するNi3Sn4系皮膜を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、接触抵抗値が低く、かつ耐食性に優れる固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板およびその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、発電効率に優れ、また、CO2を排出しない燃料電池の開発が積極的に進められている。この燃料電池は、電気化学反応によってH2とO2から電気を発生させるものであって、その基本構造はサンドイッチのような構造を有している。具体的には、電解質膜(イオン交換膜)、2つの電極(燃料極および空気極)、O2(空気)とH2の拡散層および2つのセパレータから構成されている。
そして、使用される電解質膜の種類に応じて、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、アルカリ形燃料電池および固体高分子形燃料電池等が開発されている。
これらの燃料電池のうち、固体高分子形燃料電池は、他の燃料電池に比べて、
(i) 発電温度が80℃程度であり、格段に低い温度で発電ができる、
(ii) 燃料電池本体の軽量化、小型化が可能である、
(iii) 短時間で立上げができ、燃料効率や電力の出力密度が高い
等の利点を有している。
このため、固体高分子形燃料電池は、電気自動車の搭載用電源、家庭用または業務用の定置型発電機、携帯用の小型発電機として、今日最も注目されているタイプの燃料電池である。
固体高分子形燃料電池(以下、本発明において、単に燃料電池と言った場合は、固体高分子形燃料電池を指すものとする。)は、高分子膜を介してH2とO2から電気を取り出すものであり、図1に示すように、膜−電極接合体1を、ガス拡散層2,3(たとえばカーボンペーパ等)およびセパレータ4,5によって挟み込んで、これを単一の構成要素(いわゆる単セル)として、セパレータ4とセパレータ5との間に起電力を生じさせるものである。
なお、膜−電極接合体1は、MEA(Membrance-Electrode Assembly)と呼ばれていて、高分子膜と、その膜の表裏面に白金系触媒を担持したカーボンブラック等の電極材料とを一体化したものであり、厚さは数10μm〜数100μmである。また、ガス拡散層2,3は、膜−電極接合体1と一体化される場合も多い。
固体高分子形燃料電池は、上記のような単セルを、直列に数10〜数100個つないで燃料電池スタックとして使用している。
ここに、セパレータ4,5には、
(a) 単セル間を隔てる隔壁
としての役割に加えて、
(b) 発生した電子を運ぶ導電体、
(c) O2(空気)とH2が流れる空気流路6、水素流路7、
(d) 生成した水やガスを排出する排出路
としての機能がそれぞれ求められる。
従って、固体高分子形燃料電池を実用に供するためには、耐久性や電気伝導性に優れたセパレータが必要である。
ここに、燃料電池の耐久性は、電気自動車の搭載用電源として使用する場合、約5000時間がその耐用時間として想定されている。また、家庭用の定置型発電機等として使用する場合、約40000時間がその耐用時間として想定されている。
しかし、セパレータに腐食が生じた場合には、その腐食によってセパレータの金属イオンが溶出し、電解質膜のプロトン伝導性が低下して、燃料電池の発電能力が失われてしまう。
すなわち、セパレータには、長時間の発電を前提とした耐食性が要求されることになる。
他方、電気伝導性については、セパレータ4,5とガス拡散層2,3との接触抵抗ができるだけ小さいことが望まれる。というのは、セパレータとガス拡散層との接触抵抗が大きいと、燃料電池の発電効率が低下するからである。
従って、セパレータとガス拡散層との接触抵抗が小さいほど、発電特性が優れていることになる。
現在までに、セパレータの素材としては、グラファイトを用いる燃料電池が実用化されている。このグラファイトからなるセパレータは、接触抵抗が比較的小さいだけでなく、腐食をしないという利点がある。しかしながら、グラファイトからなるセパレータは、衝撃によって破損しやすいので、小型化が困難なだけでなく、加工性が極めて悪いので、空気流路や、水素流路など、セパレータを形成するための加工コストが高くなるという欠点がある。
これらグラファイトのセパレータが有する欠点は、固体高分子形燃料電池の普及を妨げる原因ともなっている。
そこで、近年、セパレータの素材として、グラファイトに替えて金属素材を適用することが試みられている。特に、耐久性向上の観点から、ステンレス鋼や、チタン、チタン合金等を素材としたセパレータの実用化に対して、種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、スタンレス鋼またはチタン合金等の不動態皮膜を形成しやすい金属を、セパレータとして用いる技術が開示されている。しかしながら、不動態皮膜の形成は、接触抵抗の上昇を招くので、発電効率が低下してしまう。すなわち、これらの金属素材は、グラファイト素材に比べ、接触抵抗が大きくなり易く、しかも耐食性に劣る等の改善すべき点が種々指摘されている。
また、特許文献2には、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)等の金属セパレータの表面に金めっきを施すことにより、接触抵抗を低減し、高出力を確保する技術が開示されている。しかしながら、金めっき層が薄いと、ピンホールの発生を防止することが困難になり、耐食性に対して問題がある。一方、金めっき層が厚いと、コスト高になるという問題がある。
特開平8-180883号公報 特開平10-228914号公報
上述したように、燃料電池を開発するに際し、安価で、耐食性に優れ、しかも実使用環境下で長時間にわたって接触抵抗が小さいセパレータが望まれていた。
また、最近では、従来にも増して接触抵抗の低減が求められており、具体的には、実使用環境下において、接触抵抗:10mΩ・cm2以下のものが求められている。
本発明は、上記した種々の問題点を有利に解決するもので、接触抵抗が低く、かつ実使用環境下での耐久性に優れた燃料電池用セパレータに用いる金属板を、低コストで提供することを目的とする。
発明者らは、上記の目的を達成するために、固体高分子形燃料電池のセパレータ使用環境下において、接触抵抗を低く抑制することができる金属板を開発すべく、鋭意検討を重ねた。
特に、固体高分子膜(電解質)は、スルホン酸基を持ったフッ素系ポリマーが用いられることが多く、この場合セパレータの使用環境は硫酸酸性環境となる。そこで、発明者らは、硫酸酸性環境での耐食性の検討を進めた。
その結果、Niめっきをし、重ねてSnめっきをした金属板を、高温中で合金化熱処理することにより生成するNiとSnとの金属間化合物、すなわちNi3Sn4を含んだNi3Sn4系皮膜を積極的に生成させ、さらに、アルカリ浸漬処理を施すことで、接触抵抗を低く抑制すると共に、硫化物を含んだ環境下においても、極めて優れた耐食性を示すことを見出した。
加えて、詳細に検討を重ねた結果、上記Ni3Sn4系皮膜中のSnOと、Ni3Sn4の薄膜X線回折ピーク強度比(SnO/Ni3Sn4)を特定の範囲にすることが、金属板の耐食性の向上に関して極めて重要であるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.金属板の表面に、薄膜X線回折法で測定したSnOとNi3Sn4のピーク強度比SnO/Ni3Sn4が0.046以下を満足するNi3Sn4系皮膜を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板。
2.前記Ni3Sn4系皮膜が、薄膜X線回折法による測定でNiピーク強度を持たないことを特徴とする前記1に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板。
3.前記金属板が、ステンレスおよびチタンのうちから選んだいずれかであることを特徴とする前記1または2に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板。
4.固体高分子形燃料電池セパレータ用の金属板を製造するに際し、素材金属板に酸処理を施して、表面の不動態皮膜を除去したのち、該表面に、Ni層ついでSn層をこれらの膜厚比(Sn層厚み/Ni層厚み)が2以上となるように形成し、ついで合金化熱処理を施して、表面にNi3Sn4系皮膜を生成させたのち、アルカリ浸漬処理により、該表面のNi3Sn4系皮膜中のSnOとNi3Sn4の薄膜X線回折ピーク強度比SnO/Ni3Sn4を0.046以下とすることを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板の製造方法。
5.前記アルカリ浸漬処理が、pH:12以上の水溶液に、40〜80℃の温度範囲で1分間以上、浸漬させるものであることを特徴とする前記4に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板の製造方法。
本発明によれば、セパレータの実使用環境下での接触抵抗が長期間にわたって低く維持される、固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板を、低コストで得ることができる。
燃料電池の基本構造を示す模式図である。 薄膜X線回折測定によるSnOピーク強度(cps:2θ=50.7°)とNi3Sn4ピーク強度(cps:2θ=44.5°)の比SnO/Ni3Sn4の値と、接触抵抗との関係を示したグラフである。 接触抵抗の測定要領を示した図である。 接触抵抗に及ぼすNiとSnの膜厚比と、アルカリ浸漬処理の影響を示したグラフである。 NiとSnの膜厚比と、電流密度との関係を示したグラフである。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において、基材として用いる金属板に特に制限はないが、ステンレス(例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス等)およびTi材などを好適に使用することができる。特に、高Cr含有フェライト系ステンレスは、耐食性が高いので、厳しい耐食性が要求される環境下で使用される固体高分子形燃料電池用セパレータ(以下、単にセパレータという)材料として、とりわけ有利に適合する。
本発明では、金属板の表面に、Ni(めっき)層やSn(めっき)層を溶融(合金化)した時に生成する酸化物や金属間化合物、すなわち、SnOやNi3Sn4を含むNi3Sn4系皮膜を有しているところに特徴がある。
以下、本発明のNi3Sn4系皮膜につき具体的に説明する。
ここに、本発明のNi3Sn4系皮膜は、薄膜X線回折のピーク強度を測定し、SnOのピーク強度とNi3Sn4のピーク強度の比が以下に示す条件を満足していれば、NiとSnの合金やSnの酸化物だけでなく、その他、金属板の成分組成とSnおよびNiの合金や、金属板の成分同士の合金、Sn単体、その他不可避的不純物が入っていても問題はない。但し、Ni単体、すなわち、薄膜X線回折のピーク強度を測定した場合のNiピーク強度(cps:2θ=51.9°)は、後に示す条件で測定した場合、100cps以下となることが望ましく、0cpsであることがより望ましい。
図2に、Ni3Sn4系皮膜中のSnO量と、Ni3Sn4量が分極後(セパレータ実使用環境下)の接触抵抗に及ぼす影響について調べた実験結果を示す。図中、横軸は、薄膜X線回折測定によって求めたSnOピーク強度(cps:2θ=50.7°)とNi3Sn4ピーク強度(cps:2θ=44.5°)との比SnO/Ni3Sn4を示す。また、縦軸は、接触抵抗を示す。
なお、使用環境下での接触抵抗値は、次のようにして求めた。
図3に示すように、2枚の試験片8を両面から同じ大きさの3枚のカーボンペーパ9(東レ製TGP-H-120)で交互に挟み、さらに銅板に金めっきを施した電極10を接触させ、単位面積当たり9.8 MPa(=10 kgf/cm2)の圧力をかけて2枚のセパレータ間の抵抗を測定し、接触面積を乗じ、さらに接触面数(=2)で除した値を接触抵抗値とした。なお、測定は位置を変えて4ヶ所で行ない、その平均値を示した。また、本発明では、前述したように、接触抵抗:10mΩ・cm2以下を良好とする。
薄膜X線回折測定は、理学電機製ロータフレックス(RU-300)を使用して次の条件で行った。
・使用X線:Cu-Kα(波長=15.4178nm)
・Kβ線の除去:グラファイト単結晶モノクロメータ
・管電圧・管電流:55kV・250mA
・X線入射角度:2.0°
・スキャニングスピード:4°/min
・サンプリングインターバル:0.020°
・D.S.スリット:0.2mm
・R.S.スリット:5.0mm
・検出器:シンチレーションカウンター、積算回数:1回
図2に示したとおり、後述する合金化熱処理によって、金属板の表面に、SnOやNi3Sn4が形成され、薄膜X線回折測定によって求めたSnOピーク強度(cps:2θ=50.7°)とNi3Sn4ピーク強度(cps:2θ=44.5°)との比SnO/Ni3Sn4が0.046以下の場合に、接触抵抗が10mΩ・cm2以下となっていることが分かる。従って、本発明では、SnO/Ni3Sn4の比を0.046以下に規定する。
また、同図より、Niピーク強度の無いことが好ましいことも併せて確認できる。
本発明において、上記のピーク強度比SnO/Ni3Sn4を0.046以下とするには、以下に述べる製造方法において具体的に説明するが、金属板表面に形成したNiおよびSnの(めっき)層の厚みを所定比として溶融し、合金化することで達成される。
なお、上記ピーク強度比の下限は、特に限定はされないが、好ましくは、0である。また、上記ピーク強度比の好適範囲は、0〜0.04である。
次に、本発明における金属板の製造方法を説明する。
本発明では、前述したように、素材として用いる金属板に特に制限はなく、従来から公知の金属板を用いるため、その素材の製造方法について特段の制限はない。
ここで、本発明に用いる金属板、すなわち、前記したような、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレスおよびTi材などは、いずれも、表面に不動態皮膜を有しているのが普通である。そのため、本発明では、まず酸洗処理を施して、金属板表面の不動態皮膜を除去する必要がある。
というのは、かような不動態皮膜が残存していると、めっき密着性が低下してしまい、めっきが剥離するからである。
ここに、酸洗に使用する酸の種類は、不動態皮膜を除去するものであれば、ふっ酸、硝酸、硫酸、塩酸などの酸、あるいはこれらを混合した酸を使用できるが、中でも弗酸(弗酸:5質量%)が安定して不動態皮膜を除去することができるため好ましい。
ついで、酸洗処理により不動態皮膜を除去した金属板の表面に、まず、Ni(めっき)層を形成する。Ni(めっき)層の形成手段については、特に制限はなく、無電気めっきなどが好適である。
重ねて、Ni(めっき)層上に、Sn(めっき)層を形成する。Sn(めっき)層の形成手段についても、特に制限はなく、電気めっき、溶融めっき、蒸着およびスパッタリングなどが適用可能であるが、電気めっきによる方法は、生産性の観点や膜厚の制御が容易であることからより有利である。また、Snを電気めっきする場合のめっき浴は、メタンスルホン酸浴や硫酸浴、硼ふっ酸浴などのいずれも使用できるが、浴の管理が容易である点で、メタンスルホン酸浴がとりわけ好適である。
本発明において、Ni(めっき)層の厚みとSn(めっき)層の厚みの比(Sn/Ni)は、2以上とする必要がある。というのは、上記比が2に満たないと、合金化熱処理後に、後述するアルカリ浸漬処理を施しても、セパレータの接触抵抗が10mΩ・cm2以下にならない場合があるからである。
一方、上記比の上限値に特段の定めはないが、2.2〜2.8程度とするのが好ましい。
本発明における合金化熱処理は、250〜500℃程度の温度範囲に加熱し、1分以上保持することで行うことが望ましい。また、処理雰囲気は、非酸化性雰囲気が好ましい。というのは、酸化性雰囲気ではSnOが多く形成され、セパレータの接触抵抗が10mΩ・cm2以下とならない場合があるからである。
このような合金化熱処理を施すことで、NiとSnの合金、すなわちNi3Sn4が形成されるのである。
なお、本発明における合金化熱処理については、熱処理炉に入れて加熱する方法や、鋼材に電流を流して板を発熱させる、いわゆる通電加熱の方法などで行うことができる。
加えて、本発明では、上記合金化熱処理を施した後に、アルカリ浸漬処理を行う。本発明におけるアルカリ浸漬処理は、pHが12以上、40〜80℃の温度範囲の溶液中に1分以上浸漬させることによって行うことがより望ましい。
図4に、Ni(めっき)層の厚みとSn(めっき)層の厚みの比(Sn/Ni)と、アルカリ浸漬処理が、セパレータの接触抵抗に及ぼす影響について調べた結果を示す。
同図より、セパレータの接触抵抗を10mΩ・cm2以下とするためには、上記厚みの比(Sn/Ni)が2以上で、かつ上述した条件のアルカリ浸漬処理を行うことが必要であることが分かる。
ここに、燃料電池(PEFC)の起動停止時には、カソード(空気極)側の電位が上昇する。この時の、セパレータの使用環境は、電位が1.0V(vs.SHE)程度、温度:80℃、pH2程度という、極めて厳しい環境になる。従って、セパレータには、上記した接触抵抗の他に、使用環境下での電流密度が低いという特性(換言すれば、安定性に優れている)ことも必要である。
以下、セパレータの使用環境下における安定性について調査した結果を説明する。
板厚:0.2mmの金属板SUS447J1を使用して、温度: 60℃の弗酸(弗酸:5質量%)で酸洗処理した後、ワット浴を使用して、pH:4.5〜5.2、温度:45℃、電流密度:2A/dm2の条件でめっき時間を調整して、上記金属板の表面に厚さ:0.5μmのNi層を形成した。ついで、ROHM and HAAS社製メタンスルホン酸すずめっき浴 RONASTAN TP浴を使用して、pH:0.2〜0.4、温度:45℃、電流密度:5A/dm2の条件でめっき時間を調整して、上記金属板の表面に厚さ:0.1〜1.3μmのSn層を形成した。その後、熱処理炉を用い、Arガス雰囲気中、250℃で5分間保持する合金化熱処理を行って、Ni3Sn4 系皮膜を形成した。さらに、アルカリ浸漬処理を、pHが12、60℃の溶液中に2分浸漬させることによって試料(試験片)とした。
本発明における電流密度は、測定用試料を、温度が80℃で、pH:2の硫酸水溶液中に浸潰して、参照電極に飽和KCl Ag/AgClを用いて200mV/min の掃印速度で、電位:-0.2〜1.2V (vs.SHE)の範囲のサイクリックボルタモグラム(電位−電流曲線)を5サイクル測定し、この5サイクル目における電圧上昇時、1.0V(vs.SHE)での電流密度を求めて得た値とする。
Ni(めっき)層の厚みとSn(めっき)層の厚みの比(Sn/Ni)と、電流密度との関係を図5に示す。
図5に示したとおり、5サイクル目における電圧上昇時1.0Vでの電流密度の値を、3μA/cm2以下にするためには、Ni(めっき)層の厚みとSn(めっき)層の厚みの比(Sn/Ni)を、2.6,2.0,1.2,0.8にすればよいことが分かる。なお、電流密度の値:3μA/cm2以下を評価基準としたのは、電流密度が小さいほど、セパレータ使用環境下で安定しているといえるが、特に、3μA/cm2以下の場合は、溶出イオン量が少なく燃料電池の寿命が長期間となるからである。特に好ましくは、2.5μA/cm2以下である。
従って、本発明では、前記したアルカリ浸漬処理の試験結果と併せて、Ni(めっき)層の厚みとSn(めっき)層の厚みの比(Sn/Ni)を、2以上に限定する。
以上述べたとおり、前述したような合金化熱処理およびアルカリ浸漬処理を併せて施すことで、Ni(めっき)層の厚みとSn(めっき)層の厚みの比(Sn/Ni)が2以上の金属板を、SnOのピーク強度とNi3Sn4のピーク強度の比SnO/Ni3Sn4が0.046以下であるNi3Sn4系皮膜を有する金属板(セパレータ)にすることができるのである。
いずれにしても、合金化熱処理における在炉時間や通電時間、および、アルカリ浸漬処理条件を調整することで、SnOおよびNi3Sn4の生成量をSnO/Ni3Sn4比で0.046以下とすることが肝要であり、この比を満足するものであれば、いずれの製造条件、および製造方法でも用いることができる。
板厚:0.2mmの金属板、SUS447J1、SUS304およびTi板を使用して、温度: 60℃の弗酸(弗酸:5質量%)で酸洗処理した後、ワット浴を使用して、pH:4.5〜5.2、温度:45℃、電流密度:2A/dm2の条件でめっき時間を調整して、上記金属板の表面に厚さ:0.5μmのNi層を形成した。ついで、ROHM and HAAS社製メタンスルホン酸すずめっき浴 RONASTAN TP浴を使用して、pH:0.2〜0.4、温度:45℃、電流密度:5A/dm2の条件でめっき時間を調整して、金属板の表面に厚さ:0.1〜1.3μmのSn層を形成した。その後、熱処理炉を用い、Arガス雰囲気中、250℃で5分間保持する合金化熱処理を行って、Ni3Sn4系皮膜を形成した。さらに、アルカリ浸漬処理を、pHが12で、温度が60℃の溶液中に2分浸漬させることによって施し、試料(試験片)とした。
上記試料における接触抵抗の測定結果、およびセパレータの実使用環境下での安定性(耐食性)について調べた結果を、試料作製条件と共に、表1および2に示す。
なお、使用環境下での接触抵抗値は、以下のとおり評価した。
前掲図3に示したように、2枚の試験片8を両面から同じ大きさの3枚のカーボンペーパ9(東レ製TGP-H-120)で交互に挟み、さらに銅板に金めっきを施した電極10を接触させ、単位面積当たり9.8 MPa(=10 kgf/cm2)の圧力をかけて2枚のセパレータ間の抵抗を測定し、接触面積を乗じ、さらに接触面数(=2)で除した値を接触抵抗値とした。なお、測定は位置を変えて4ヶ所で行ない、その平均値を示した。なお、上記の接触抵抗の値を以下の基準で評価した。
○:接触抵抗10mΩ・cm2以下
×:接触抵抗10mΩ・cm2
また、実使用環境下での安定性(耐食性)は、以下とおり評価した。
試料を、温度:80℃、pH:2の硫酸水溶液中に浸漬し、参照電極に飽和KCl Ag/AgClを用いて、200mV/min の掃印速度で、電位を-0.2〜1.2V(vs. SHE)のサイクリックボルタモグラム(電位−電流曲線〉を5サイクル測定し、5サイクル目における電圧上昇時1.0Vでの電流密度の値を実使用環境での安定度とした。なお、電流密度が小さいほど、実使用環境下において安定であるとみなせるため、本発明では以下の評価基準とした。
◎:電流密度2.5μA/cm2以下
○:電流密度2.5μA/cm2超3μA/cm2以下
×:電流密度3μA/cm2
Figure 2012149314
Figure 2012149314
表1および2に示したとおり、本発明に従って表面に生成させたNi3Sn4系皮膜の薄膜X線回折ピーク強度比(SnO/Ni3Sn4)が0.046以下となっている金属板は、接触抵抗が10mΩ・cm2以下に抑えられているだけでなく、セパレータの実使用環境下での電流密度が低い、すなわち安定性(耐食性)にも優れていることが分かる。
一方、上記ピーク強度比が0.046を超えたものは、いずれも、5サイクル目における電圧上昇時1.0Vでの電流密度が大きく、使用環境下での安定性(耐食性)に劣っていることが分かる。
本発明によれば、従来から使用されている金めっきステンレス製セパレータやグラファイト製セパレータと、同程度に接触抵抗が低くかつ耐食性に優れたセパレータを、安価に得ることができる。その結果、従来の固体高分子形燃料電池では、耐久性を考慮して高価な金めっきステンレス製セパレータやグラファイト製セパレータを使用していたのに対し、本発明では、セパレータ用金属板から作製した安価なセパレータを用いることができるので、固体高分子形燃料電池の製造コストを大幅に削減することができる。
1 膜−電極接合体
2,3 ガス拡散層
4,5 セパレータ
6 O(空気)流路
7 水素流路
8 試験片
9 カーボンペーパ
10 銅板に金めっきを施した電極

Claims (5)

  1. 金属板の表面に、薄膜X線回折法で測定したSnOとNi3Sn4のピーク強度比SnO/Ni3Sn4が0.046以下を満足するNi3Sn4系皮膜を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板。
  2. 前記Ni3Sn4系皮膜が、薄膜X線回折法による測定でNiピーク強度を持たないことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板。
  3. 前記金属板が、ステンレスおよびチタンのうちから選んだいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板。
  4. 固体高分子形燃料電池セパレータ用の金属板を製造するに際し、素材金属板に酸処理を施して、表面の不動態皮膜を除去したのち、該表面に、Ni層ついでSn層をこれらの膜厚比(Sn層厚み/Ni層厚み)が2以上となるように形成し、ついで合金化熱処理を施して、表面にNi3Sn4系皮膜を生成させたのち、アルカリ浸漬処理により、該表面のNi3Sn4系皮膜中のSnOとNi3Sn4の薄膜X線回折ピーク強度比SnO/Ni3Sn4を0.046以下とすることを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板の製造方法。
  5. 前記アルカリ浸漬処理が、pH:12以上の水溶液に、40〜80℃の温度範囲で1分間以上、浸漬させるものであることを特徴とする請求項4に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用金属板の製造方法。
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