JP2006503709A - ロウ付用製品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、コアシート、4〜14重量%範囲の量でケイ素を含むアルミニウム合金製の該コアシート上のクラッド層、該クラッド層の外表面でニッケルからなる任意層、および該ニッケル層の外表面でニッケル‐スズ合金からなる拡散層を含んでなる、ロウ付用シート製品に関する。本発明は、異なる金属層をメッキして、ニッケルからなる層の外表面へニッケル‐スズ合金からなる拡散層を形成するために、100〜500℃範囲の温度で1秒間〜300分間にわたりメッキロウ付用製品を保持することにより、メッキロウ付用製品を焼鈍処理に付すプロセスステップからなる、このようなロウ付用製品の製造方法にも関する。

Description

本発明は、4〜14重量%の量でケイ素を含むアルミニウム合金製であるアルミニウム層と、該AlSi合金層の外表面にニッケルからなる別な層を含んでなり、一緒になってアルミニウム層とその外部のすべての層がロウ付作業用のフィラー金属を形成している、ロウ付用シート製品のようなロウ付用製品に関する。本発明は、このようなロウ付用製品の製造方法、およびこのロウ付用製品製の部品を少くとも1つ含んでなるロウ付アセンブリーにも関する。
アルミニウムおよびアルミニウム合金は、様々なロウ付およびハンダ付プロセスにより接合されうる。ロウ付とは、定義によると、ベース金属の固相線以下で450℃以上の液相線を有するフィラー金属または合金を用いることをいう。ロウ付は、フィラー金属の融点により、ハンダ付と区別される:ハンダは450℃以下で融解する。ハンダ付プロセスは本発明の分野に属さない。
ロウ付用製品、特にロウ付用シート製品は、熱交換器および他の類似装置で広い用途を有している。従来のロウ付用シート製品はコアまたはベースシート、典型的にはAluminium Association(“AA”)3xxxシリーズのアルミニウム合金を有し、コアシートの少くとも一表面にアルミニウムクラッド層を有しており、アルミニウムクラッド層は4〜14重量%範囲、好ましくは7〜14重量%範囲の量でケイ素を含むAA4xxxシリーズ合金製である。アルミニウムクラッド層は当業界で知られる様々な手法で、例えば圧延接合、クラッディング、爆発クラッディング、熱スプレーフォーミングまたは半連続もしくは連続鋳造プロセスにより、コアまたはベース合金へ接合される。
制御雰囲気ロウ付(“CAB”)および真空ロウ付(“VB”)は、工業規模アルミニウムロウ付に用いられている、2つの主要プロセスである。工業用真空ロウ付は1950年代から用いられ、CABはNOCOLOK(商標)ロウ付用フラックスの導入後1980年代初期に一般化した。真空ロウ付は本質的に不連続プロセスであり、物質クリーン性で高い要求を出している。存在する酸化アルミニウム層の破壊は、クラッド合金からマグネシウムの蒸発により主に引き起こされる。そこで必要以上に多くのマグネシウムが常に炉に存在している。過剰のマグネシウムは炉内のコールドスポットで凝縮するため、頻繁に除去されねばならない。適切な装置への資本投資は比較的多くなる。
ロウ付用フラックスはロウ付前に適用されねばならないため、CABはVBと比較してロウ付前に追加プロセスステップを必要とする。ロウ付用アルミニウム合金向けロウ付用フラックスは、フッ化アルミニウムまたは氷晶石を時々含有した、アルカリ土類塩化物およびフッ化物の混合物から通常なる。CABは、本質的に、適正なロウ付用フラックスが用いられるならば、大量のロウ付アセンブリーが製造されうる連続プロセスである。ロウ付用フラックスはロウ付温度で酸化物層を溶解して、クラッド合金を適正に流動させる。NOCOLOKフラックスが用いられる場合は、表面がフラックス適用前に完全にクリーンであることを要する。良いロウ付結果を得るために、ロウ付用フラックスはロウ付されるアセンブリーの全表面に適用されねばならない。これは、デザインのせいで、あるタイプのアセンブリーで難しいことがある。例えば、エバポレータータイプ熱交換器は大きな内部表面を有しているため、内部へ近づきにくいという理由で問題が生じうる。一方で、良いロウ付結果のために、フラックスはロウ付前にアルミニウム表面へ接着しなければならない。残念ながら、ロウ付用フラックスは乾燥後に、小さな機械的振動のせいで容易に落ちることがある。ロウ付サイクルに際して、HFのような腐蝕臭も生じる。このことは、炉へ適用される物質の耐蝕性に、高い要求を出している。
理想的には、CABに用いうるが、公知のロウ付用フラックスの適用に際する要件および欠点を有しない物質が、利用されるべきである。このような物質はロウ付アセンブリーの製造業者に供給可能であり、アセンブリーパーツの形成後に直接用いうる。追加のロウ付用フラックス作業は行わなくてよい。現在、唯一の無フラックスロウ付プロセスが工業規模で用いられている。このプロセス用の物質は、例えば、AA3xxxシリーズコア合金クラッドから片側または両側でAA4xxxシリーズ合金のクラッディングにより作製される標準ロウ付用シートである。ロウ付用シートが用いられる前に、天然酸化アルミニウム層がロウ付サイクルに際して障害とならないように、その表面は修飾されねばならない。良いロウ付を行う方法は、クラッド合金の表面に特定量のニッケルを被覆させることである。適正に用いられると、ニッケルは下層アルミニウムと、おそらく発熱しながら反応する。電気メッキが用いられる場合、ニッケルの接着は、例えば熱交換器の製造で用いられている典型的な成型作業に十分耐えられねばならない。
アルミニウムロウ付用シートのアルカリ溶液でニッケルメッキするプロセスは、US‐A‐3,970,237、US‐A‐4,028,200およびUS‐A‐4,164,454の各々から知られている。これらの文面によると、ニッケル、コバルトまたはその組合せは、鉛と混合すると、最も好ましく被覆される。鉛添加は、ロウ付サイクルに際して、アルミニウムクラッド合金の湿潤性を改善するために用いられる。これらメッキプロセスの重要な特徴は、ニッケルがアルミニウムクラッド合金のケイ素粒子上へ優先的に被覆されることである。ロウ付に向いたニッケルを得るために、アルミニウムクラッド合金の表面はニッケル被覆用の核として作用する、比較的多数のケイ素粒子を含有しているべきである。十分な核形成部位を得るために、ケイ素粒子が埋封されたアルミニウムの部分は、化学的および/または機械的前処理により酸洗い前に除去されるべきである、と考えられている。これは、ロウ付用またはクラッド合金のメッキ作用向けの核として働けるほど十分なケイ素被覆を得るための必要条件と考えられている。顕微鏡規模でみると、ロウ付用シートのSi含有クラッディングの表面はニッケル‐鉛小球で覆われている。しかしながら、ロウ付用シートで適切なニッケルおよび/またはコバルト層の形成のための鉛の使用はいくつかの欠点を有している。自動車製品のような製造品で鉛の使用は望ましくなく、極めて近い将来、鉛含有製品または鉛もしくは鉛ベース成分を用いる1以上の中間処理ステップで製造された製品は、禁止の可能性すらありうる、と予想されている。
参考のためその全体でここに組み込まれるJ.N.Mooijらの国際PCT特許出願WO00/71784は、ロウ付用シート製品とその製造方法について開示している。このロウ付用シート製品では、ニッケル層の接合を改善するために、AlSi合金クラッド層とニッケル層との間に、亜鉛またはスズを含む非常に薄い接合層が、好ましくはメッキにより形成されている。ニッケル層への鉛の添加はビスマスの添加で置き換えられたが、ロウ付用シート製品の優れたロウ付特性を維持している。
ニッケル含有層を有した公知ロウ付用シート製品の欠点は、ASTM G‐85によるSWAAT試験でみられる、ロウ付用製品の腐蝕寿命限界である。腐蝕寿命は穿孔なしで典型的には4日間の範囲であるため、ロウ付用製品で可能な面白い用途を制限している。ロウ付用製品で公知ニッケルメッキロウ付用シートのいくつかの用途のうち、このように比較的短い腐蝕寿命は不利益ではない。しかしながら、良い耐蝕性は、特にラジエーターおよびコンデンサーのような熱交換器に用いられるロウ付用製品で、有益な性質と考えられている。これらの熱交換器は、例えば道路用凍結防止剤による深刻な外部腐蝕攻撃へ曝されている。
発明の具体的説明
本発明の目的は、ロウ付作業、理想的には無フラックスCABロウ付作業で使用のNiメッキロウ付用シート製品であって、ASTM G‐85によるSWAAT試験で測定されたときに改善されたロウ付後耐蝕性を有するものを提供することにある。本発明の別の目的は、アルミニウム合金製のコアシートが該コアシートの少くとも一表面でアルミニウムクラッド層(アルミニウムクラッディングとしても知られている)へ接合されたロウ付用シート製品であって、アルミニウムクラッド層が4〜14重量%の量でケイ素を含むアルミニウム合金製であり、一緒になってアルミニウムクラッド層とその外部のすべての層がロウ付作業用のフィラー金属を形成するように、別な層がアルミニウムクラッド層の外表面でニッケルを含有しており、ロウ付用シート製品がASTM G‐85によるSWAAT試験で測定されたときに改善されたロウ付後耐蝕性を有するものを提供することにある。本発明のさらに別の目的は、理想的にはシート製品の形で、ロウ付用製品を製造する方法を提供することにある。
本発明によると、一面において、コアシートと、該コアシートの少くとも片側の、4〜14重量%の量でケイ素を含むアルミニウム合金製のクラッド層と、該クラッド層の少くとも一外表面でニッケル‐スズ合金からなる拡散層とを含んでなる、ロウ付用シート製品が提供される。
ニッケルに対して適切なモル比でフィラー金属へ重要な合金元素としてスズの添加により、改善された腐蝕性能がロウ付後条件下でロウ付用製品から得られる。本発明によるロウ付用製品では、ASTM G‐85による穿孔なしロウ付後腐蝕寿命が7日間を超える。その製品は、制御雰囲気条件下でロウ付用フラックス物質なしに無フラックスロウ付され、同時に非常に良いロウ付後腐蝕性能を達成して、Niメッキロウ付用製品の適用可能性を高めている。
本発明は、ASTM G‐85によるSWAAT試験で試験されたときに、カソード反応がNiメッキロウ付用製品の全体腐蝕速度を支配していると思われる考察に一部基づいている。このシステムのカソード反応はHydrogen Evolution Reaction(“HER”)であるらしい、と推測されている。ロウ付用シートのようなNiメッキロウ付用製品がロウ付作業、典型的には無フラックスCAB作業に付されているとき、HERを触媒すると考えられる小さなNiアルミナイド粒子が形成されている。金属フィラーへ十分量なスズの添加と、ニッケル‐アルミナイドと比較して低いHER用交換電流密度を有することにより、触媒効果は減少し、ロウ付用製品のロウ付後腐蝕性能は著しく改善される。
純スズ金属の上層は、例えば顧客へのメッキコイル輸送に際して、湿潤条件下の前ロウ付条件で進行性酸化を受けやすい、と考えられている。形成された表面酸化物はロウ付プロセスに悪影響を与える。好ましくは拡散焼鈍処理により得られる、ニッケル‐スズ拡散層の形で、ロウ付後腐蝕性能を改善するために必要なスズを用意することにより、遊離スズはもはや存在しなくなり、そのためスズの有害な進行性酸化の発生が避けられる。Ni‐Sn合金層は空気中で薄い安定な表面酸化物膜を形成することがわかった。
好ましくは、Ni‐Sn合金拡散層とクラッド層との間に、ロウ付作業に際して下層AlSi合金と、おそらく発熱しながら、反応を始める、好ましくは環境面の観点から無鉛の、ニッケルまたはニッケル合金の層が存在している。スズのような合金元素が多すぎる量で存在すると、この反応は生じないか、またはその程度が少くとも有意に減少する。したがって、クラッド層とNi‐Sn合金拡散層との間のニッケル層は96重量%以上のニッケルを含み、好ましくは無スズである。このニッケル層の厚さはさほど大きくなくてよく、好ましくはせいぜい0.4ミクロンである。ニッケルまたはニッケル合金の薄層は、ロウ付作業に際して、融解フィラー金属の表面張力を低下させるために、4重量%以下の範囲で合金元素としてビスマスを場合により含有してもよい。
ロウ付用シート製品の態様において、AlSi合金クラッド層とその外部のすべての層がロウ付作業用の金属フィラーを形成し、Ni:Snのモル比が10:(0.5〜9)の範囲、好ましくは10:(0.5〜6)の範囲となるような組成を有している。モル比が低すぎると、ロウ付後腐蝕寿命で有意の改善はみられないことがある。モル比が10:6より大きくなると、ロウ付性はさほど効率的でなくなり、10:9より大きなモル比のとき、ロウ付性は非常に乏しくなることがわかった。
本発明によるロウ付用シート製品の態様は、AlSi合金クラッド層の外表面とニッケルまたはニッケル合金からなる薄層との間の中間接合層として、亜鉛を含む任意の薄層により更に特徴付けられる。亜鉛含有中間接合層により、AlSi合金クラッド層とニッケルからなる薄層との間で非常に有効な接合が形成され、ロウ付用製品で後の変形、例えば曲げ操作に際して、その接合が有効に残る。好ましくは、中間接合層は0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm(300nm)以下、最も好ましくは0.01〜0.15μm(10〜150nm)範囲の厚さを有している。最良の結果が得られる場合、約30nmの厚さが用いられている。亜鉛の薄い接合層は、本発明による製品のロウ付後腐蝕性能に、有害効果を有しないことがわかった。
ロウ付用シート製品の態様において、コアシートはアルミニウム合金であり、好ましくはAA3xxx、AA5xxxまたはAA6xxxシリーズアルミニウム合金製である。
本発明によると、他の面において、アルミニウムロウ付用製品の製造方法が提供され、その方法は(a)4〜14重量%の量でケイ素を含むアルミニウム合金のアルミニウムベース基板を用意し、(b)アルミニウムベース基板の少くとも一外表面へ、ニッケルまたはニッケル合金からなる金属層をメッキし、(c)ニッケルまたはニッケル合金からなる層の外表面へ、スズまたはスズ合金からなる別な金属層をメッキし、および(d)ニッケル‐スズ合金からなる拡散層を形成するために、100〜500℃の温度で1秒間〜300分間にわたりメッキロウ付用製品を保持することにより、メッキロウ付用製品を焼鈍処理に付すステップからなる。
焼鈍処理は、適用スズ層が適用ニッケル層へ拡散してNiSn合金層を形成する、という効果を発揮する。純スズ金属の上層は、湿潤条件下の前ロウ付条件で進行性酸化を受けやすい、と考えられている。形成された表面酸化物はロウ付プロセスに悪影響を与える。ニッケル‐スズ拡散層の形で、ロウ付後腐蝕性能を改善するために必要なスズを用意することにより、本質的に遊離スズはもはや存在しなくなり、そのためスズの有害な進行性酸化の発生が避けられる。Ni‐Sn合金層は空気中で薄い安定な表面酸化物膜を形成することがわかった。空気中の更なる酸化は、本質的に約320℃以上の温度のときのみ生じる。空気中の更なる酸化は、実質的に約320℃以下の温度で避けられる。
スズの融点は約232℃である。焼鈍処理はスズの融解温度以下でも行えるが、300分間もかかる長い浸漬時間を要することがある。焼鈍処理は、スズの融解温度以上、例えば約250℃または約300℃で行ってもよく、それによりスズは固体ニッケルまたはニッケル合金層中へ拡散する。好ましい焼鈍処理は、1〜600秒間、更に好ましくは1〜300秒間の浸漬時間にわたり、230〜350℃の温度である。
焼鈍処理は、好ましくはスズまたはスズ合金の酸化を防ぐ保護環境、例えば乾燥空気雰囲気、窒素ガス雰囲気、HN雰囲気、アルゴンガス雰囲気またはそれらの組合せ中で行われる。
一態様において、一緒になってアルミニウムベース基板とその外部のすべての層がロウ付作業用の金属フィラーを形成し、重量%で、少くとも:
5〜14%のSi
0.03〜8%のNi
0.01〜7%のSn
0.3%以下のBi
0.3%以下のSb
0.3%以下のZn
5%以下のMg
残部のアルミニウムおよび不可避の不純物からなる組成を有するが、但しNi:Snのモル比は10:(0.5〜9)の範囲、好ましくは10:(0.5〜6)の範囲である。
フィラー金属中で典型的な不純元素は、特にAlSi合金基板またはAlSi合金クラッド層に由来する鉄であるが、これは約0.8%以内であれば許容しうる。他の合金元素が存在してもよく、典型的にはアルミニウムベース基板またはアルミニウムクラッド層に由来する。典型的には、各不純元素は0.05%以下の範囲で存在し、不純元素の合計は0.3%を超えない。
モル比が低すぎると、ロウ付後腐蝕寿命で有意の効果はみられないことがある。Ni:Snのモル比が10:6より大きくなると、ロウ付性はさほど効率的でなくなり、10:9より大きなモル比のとき、ロウ付性は非常に乏しくなる。
適用されるNi:Sn比に応じて、拡散焼鈍処理は、アルミニウムベース基板層の外表面でニッケルからなる層と、ニッケルからなる該層の外表面でニッケル‐スズ合金からなる拡散層も形成する。拡散焼鈍処理に際して、メッキスズはメッキニッケルまたはニッケル合金層中へ上から拡散し、そのためクラッド層の近くに存在するニッケル下層の一部は未合金のままである。ロウ付作業に際して下層AlSi合金と、合金化層よりも良く、おそらく発熱反応を始めることから、少くともスズと合金化していない、この未合金化ニッケル層が存在している方が好ましい。スズのような合金元素が多すぎる量で存在すると、相当であるがそれより小さな程度でこの反応が生じる。拡散焼鈍Ni‐Sn合金層は、典型的には約0.2〜0.6μmの厚さを有する。
好ましくは本発明によるロウ付用製品において、ニッケルまたは90%以上のニッケルを有するニッケル合金、例えばNi‐Biからなるメッキ層は、2.0μm以下、好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.05〜0.5μm範囲の厚さを有する。2.0μm超のコーティング厚さの場合はメッキに長い処理時間を要し、後のロウ付作業に際して融解フィラー金属にしわを生じさせることがある。このニッケル含有層で好ましい最低厚さは約0.25μmである。しかも、気相または蒸気相から金属または金属合金の被覆用に他の技術、例えば浸漬、熱スプレー、CVD、PVDまたはそれ以外の技術も用いてよい。好ましくは、ニッケル含有層は本質的に無鉛である。
本発明によるロウ付用製品において、スズまたは90%以上のスズを有するスズ合金からなる層は、拡散焼鈍前に、望ましいNi:Snモル比へ調整される。このスズ層は、好ましくはメッキにより適用される。しかし、気相または蒸気相から金属または金属合金の被覆用に他の技術、例えば浸漬、熱スプレー、CVD、PVDまたはそれ以外の技術も用いてよい。
一態様において、ロウ付用製品は細長いアルミニウム合金ストック、例えばアルミニウム合金シートまたはストリップ、アルミニウム合金ワイヤまたはアルミニウム合金ロッドである。
一態様において、アルミニウム基板は、最も重要な合金元素として4〜14重量%、更に好ましくは7〜14%でSiを有する、AA4xxxシリーズアルミニウム合金シートまたはストリップ製であり、片または両面にNiまたはNi合金、例えばNi‐Bi合金によりメッキしてもよく、ロウ付用フラックス物質の不在下で、後のロウ付作業、特に不活性雰囲気ロウ付作業に用いられる。AA4xxxシリーズ合金において、5%以下のMgのように、他の合金元素も特定の性質を改善するために存在してよく、残部は各々0.05wt%以下、全部で0.25wt%以下の不純物、およびアルミニウムからなる。鉄も通常0.8wt%以下の量で不純物として存在してよい。
AA4xxxシリーズ合金製のアルミニウム合金ワイヤまたはロッドも、Niまたは90%以上のニッケルを有するNi合金層、例えばNi‐Bi合金でメッキし、次いでロウ付用フラックス物質の不在下で、ロウ付作業、特に不活性雰囲気ロウ付(CAB)作業に用い、溶接作業で溶接フィラーワイヤまたは溶接フィラーロッドとして用いてよい。
一態様において、アルミニウム基板は、アルミニウム合金製のコアシートへ接合されたアルミニウム合金シートである。別な態様において、AlSi合金クラッド層は全ロウ付用製品厚さの全厚の約2〜20%の厚さを有している。典型的なアルミニウムクラッド層厚さは40〜80ミクロンである。アルミニウムコアシートは、典型的には5mm以下、更に好ましくは0.1〜2mmの厚さを有している。
一態様において、本発明による方法は、AlSi合金層の外表面とニッケルまたはニッケル合金からなる薄層との間に、中間接合層として、亜鉛を含む薄層を被覆することで更に特徴付けられる。中間接合層により、AlSi合金層とニッケルからなる薄層との間で非常に有効な接合が形成され、ロウ付用製品で後の変形、例えば曲げ操作に際して、その接合が有効に残る。亜鉛のこのような中間層を適用する上で最も適切な方法は、直接または浸漬メッキによる。好ましくは、適用される中間接合層は0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm(300nm)以下、最も好ましくは0.01〜0.15μm(10〜150nm)の厚さを有している。最良の結果が得られたときは、約30nmの厚さが用いられた。0.5μm超のコーティング厚さでは、接着性を改善する上で更なる利点を有しないと思われる。
本発明は、諸部品のうち少くとも1つが、前記のようなロウ付用シート製品または前記の方法で得られるロウ付用製品である、ロウ付けで接合された、諸部品のアセンブリー、例えば、典型的には自動車向けの、熱交換器、または燃料電池、典型的には電気化学燃料電池を更に提供する。ロウ付作業は、好ましくはロウ付用フラックス物質不在の不活性雰囲気(CAB)中または真空下で行われる。
一態様において、ロウ付で接合されている諸部品のうち少くとも1つが、前記のロウ付用シート製品製であるか、または前記の本発明による方法で生産され、少くとも1つの他の部品がスチール、アルミニウム処理スチール、ステンレススチール、メッキまたは被覆ステンレススチール、青銅、真鍮、ニッケル、ニッケル合金、チタン、メッキまたは被覆チタン製である、ロウ付アセンブリーが提供される。
本発明は、図面を参考にして、非制限例により更に説明される:
図1は、拡散焼鈍処理後における、本発明によるロウ付用シート製品の構造を示した、略縦断面図である。
図1は、Al‐Si合金からなるアルミニウムクラッド層2で片側または両側が覆われたコアシート1(アルミニウムベース基板としても知られている)、ニッケルまたはニッケル合金とスズまたはスズ合金の2つの別々に適用された金属層の拡散焼鈍処理によるニッケル‐スズ合金拡散層3、および拡散焼鈍処理の結果として合金化されなかったニッケルまたはニッケル合金からなる層4を有し、その利点が前記された亜鉛の任意接合層5も適用されている、本発明によるロウ付用製品、本ケースではアルミニウムロウ付用シートを概略で示している。図1では、層3、4および5がロウ付用シートの片側のみで示されているが、それらがロウ付用シート製品の両側でも適用しうることは、当業者であれば直ちに明らかとなるであろう。そのため、所望であれば、コア1のみと接触するように示されたクラッド層2に、他の層、例えば3および4、場合により5も更に形成してよい。
実験室規模で、AA3003コア合金ロールクラッドの両側をAA4045クラッド合金で被覆した、0.5mmの全厚および両側で50ミクロンのクラッド層厚を有する、アルミニウムロウ付用シートで試験を行った。以下の連続前処理ステップを各サンプルで用いた:
‐ChemTec 30014浴(市販浴)中50℃で180秒間の浸漬により洗浄し、次いですすぎ、
‐ChemTec 30203浴(市販浴)中50℃で20秒間にわたりアルカリエッチングし、次いですすぎ、
‐酸性酸化溶液、典型的には50%硝酸中室温で60秒間かけてデスマットし、次いですすぎ、
‐室温で60秒間ChemTec 19023浴(市販亜鉛酸浴)を用いて亜鉛酸浸漬して、約30nmの厚さを有する薄い亜鉛層を形成し、次いですすぐ。
両側で上記前処理後、最初に0.5ミクロン厚(4.45g/m)のニッケル層を電気メッキにより形成し、形成されたニッケル層の上にスズ層も0.9、1.8および3.0g/mの様々な厚さの電気メッキにより形成した(表1参照)。
ニッケルメッキ浴は公知のWath-bathであり、その組成は次の通りであった:
270g/L NiSO・6H
50g/L NiCl・6H
30g/L HBO
スズメッキ浴は、Shipley Ronal供給のRONASTAN(商標)と称される市販Methane Sulfonic Acid(“MSA”)浴であり、下記組成を有していた:
25g/L Sn
60g/L 0.84MのMSA
3.5g/L 硫酸
45ml/L 添加TP
4.5ml/L 酸化防止剤TP
金属層のメッキ後に、メッキされたロウ付用シート製品を保護不活性窒素雰囲気下250℃で8分間にわたり拡散焼鈍して、Ni‐Sn拡散層を形成した。拡散焼鈍パネルは銀色光沢があった。拡散焼鈍製品のサンプルをGlow Discharge Optical Emission Spectroscopy(“GDOES”)により分析した。GDOES深さプロファイルによると、スズが拡散焼鈍処理後にニッケルと完全に合金化していることを示した。遊離スズはもはや存在していなかった。得られたNi‐Sn合金拡散層は、平衡相NiSnから主に構成されていた。Ni‐Sn合金拡散層の下には、拡散焼鈍処理前に元々にメッキされていたニッケル層の組成を有し、拡散焼鈍処理の結果としてスズと合金化されなかった、約0.35ミクロン厚の無スズニッケル層が存在していた。外気中250℃で拡散焼鈍を繰返しても、有害な酸化物の検出には至らなかった。
Erichsenドーム試験(5mm)およびT曲げ試験を用いて、接着性についてメッキ標品を試験した。次いで、接着性に不可、可または良の評価を付けた。試験されたすべてのサンプルは、良い接着性能を有していた。
ロウ付後耐蝕性の評価のために、サンプルを擬似ロウ付サイクルに付した。サンプルを流動窒素下で室温から580℃に加熱し、580℃で2分間保持し、580℃から室温へ冷却した。すべてのサンプルが優れたロウ付性を有していた。ロウ付サイクル後、ASTM G‐85による試験の何日目かで最初に穿孔が出現するまで、各タイプのメッキロウ付用シートのサンプル4個をSWAATで試験し、個別の結果が表1で示されている。SWAAT試験用サンプルの寸法は100mm×50mmであった。
参考として、AA3003コア合金クラッドの両側をAA4045クラッド合金で被覆して、0.5mmの全厚および各50ミクロンのクラッド層厚を有し、それ以外の別な金属層を有しない、典型的なアルミニウムロウ付用シートは、穿孔なしで16日間以上のSWAAT試験性能を有していることを、付け加えておく。
別な参考品として、参考のためここに組み込まれるJ.N.Mooijらの国際PCT出願WO01/88226の実施例に従い製造された、薄い亜鉛接合層と唯一のNiBi合金電気メッキ層を有するロウ付用シート製品(同様のコアおよびクラッド層組成および厚さ)も、その腐蝕性能について試験した。
この例の場合、試験されたすべての製品が同様のAA3003シリーズコア合金を有していた。
Figure 2006503709
表1の結果から、合金元素としてビスマスが少量添加されたニッケルからなる層を有する、従来から知られているロウ付用シート製品は、4日間の平均SWAAT試験結果を有することがわかる。本発明に従う量および拡散焼鈍後におけるスズ層の適用は、良い接着性能および優れたロウ付性能を維持しながら、SWAAT試験性能の著しい向上をもたらしている。ニッケルの量に対してスズの量を増すことにより、改善されたSWAAT試験結果が得られる。スズはロウ付サイクルに際して融解金属フィラーの表面張力も低下させ、こうして融解フィラー金属の流動性を改善する。ロウ付後腐蝕性能を改善するスズの量は、表面張力を低下させる同様の目的でビスマス、アンチモン、マグネシウムまたは鉛の添加の必要性を克服する上で、はるかに十分なものである。SnとBiおよび/またはSbおよび/またはMgおよび/またはPbとの組合せ添加もなお可能である。
本発明を詳しく記載してきたが、ここで記載された本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更および修正が行いうることは、当業者に明らかであろう。
拡散焼鈍処理後における、本発明によるロウ付用シート製品の構造を示した、略縦断面図である。

Claims (32)

  1. コアシート(1)と、該コアシート(1)の少くとも片側の、4〜14重量%範囲の量でケイ素を含むアルミニウム合金製のクラッド層(2)と、該クラッド層(2)の少くとも一外表面でニッケル‐スズ合金からなる拡散層(3)とを含んでなる、ロウ付用シート製品。
  2. クラッド層(2)の外表面と拡散層(3)との間に、ニッケルまたはニッケル合金からなる層(4)が存在している、請求項1に記載のロウ付用シート製品。
  3. ニッケルまたはニッケル合金からなる層(4)が、せいぜい0.4ミクロンの厚さを有している、請求項2に記載のロウ付用シート製品。
  4. 拡散層(3)が約0.2〜0.6ミクロンの厚さを有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のロウ付用シート製品。
  5. クラッド層(2)の外表面とニッケルからなる層(4)との間に、接合層として、亜鉛を含む層(5)が存在している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のロウ付用シート製品。
  6. 接合層(5)が0.5ミクロン以下の厚さを有し、好ましくは接合層(5)が0.3ミクロン以下の厚さを有し、更に好ましくは接合層(5)が0.01〜0.15ミクロンの厚さを有している、請求項5に記載のロウ付用シート製品。
  7. コアシート(1)がアルミニウム合金製であり、好ましくはコアシート(1)がAA3xxx、AA5xxxおよびAA6xxxシリーズ合金からなる群より選択されるアルミニウム合金製である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のロウ付用シート製品。
  8. クラッド層とその外部のすべての層がロウ付作業用の金属フィラーを形成し、Ni:Snのモル比が10:(0.5〜9)の範囲、好ましくはNi:Snのモル比が10:(0.5〜6)の範囲となるような組成を有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のロウ付用シート製品。
  9. 一緒になって、4〜14重量%の量でケイ素を含むアルミニウム合金のアルミニウムベース基板と、その外部のすべての層が、ロウ付作業用の金属フィラーを形成し、重量%で、少くとも:
    5〜14%のSi
    0.03〜8%のNi
    0.3%以下のBi
    0.3%以下のSb
    0.01〜7%のSn
    0.3%以下のZn
    5%以下のMg
    残部のアルミニウムおよび不可避の不純物
    からなる組成を有するが、但しNi:Snのモル比が10:(0.5〜9)の範囲である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のロウ付用シート製品。
  10. ロウ付用シート製品が、ASTM G‐85による穿孔に関するSWAAT試験で、7日間以上のロウ付後腐食寿命を有している、請求項1〜9のいずれか一項に記載のロウ付用シート製品。
  11. アルミニウムロウ付用製品の製造方法であって、
    (a)4〜14重量%の量でケイ素を含むアルミニウム合金のアルミニウムベース基板層を用意し、
    (b)アルミニウム基板の少くとも一外表面へ、ニッケルまたはニッケル合金からなる金属層を適用し、
    (c)ニッケルまたはニッケル合金からなる層の外表面へ、スズまたはスズ合金からなる金属層を適用し、および
    (d)ニッケル‐スズ合金からなる拡散層をアルミニウムベース基板の外表面へ形成するために、100〜500℃の温度で1秒間〜300分間にわたりメッキロウ付用製品を保持することにより、被覆ロウ付用製品を拡散焼鈍処理に付す
    ステップを含んでなる方法。
  12. ニッケルまたはニッケル合金からなる金属層が、メッキ法を用いて、好ましくは電解メッキ法を用いて適用される、請求項11に記載の方法。
  13. ニッケルまたはニッケル合金からなる金属層が、PVD、CVDおよび熱スプレーからなる群より選択される方法を用いて適用される、請求項11に記載の方法。
  14. スズまたはスズ合金からなる金属層が、メッキ法を用いて、好ましくは電解メッキ法を用いて適用される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. スズまたはスズ合金からなる金属層が、PVD、CVDおよび熱スプレーからなる群より選択される方法を用いて適用される、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 拡散焼鈍処理が保護雰囲気下で行われる、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 拡散焼鈍処理が230〜350℃の温度で行われる、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 拡散焼鈍処理が、230〜350℃の温度で、1〜600秒の浸漬時間、好ましくは1〜300秒の浸漬時間にわたり行われる、請求項17に記載の方法。
  19. クラッド層とその外部のすべての層がロウ付作業用の金属フィラーを形成し、Ni:Snのモル比が10:(0.5〜9)の範囲、好ましくはNi:Snのモル比が10:(0.5〜6)の範囲となるような組成を有している、請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 一緒になって、4〜14重量%の量でケイ素を含むアルミニウム合金のアルミニウムベース基板と、その外部のすべての層が、ロウ付作業用の金属フィラーを形成し、重量%で、少くとも:
    5〜14%のSi
    0.03〜8%のNi
    0.3%以下のBi
    0.3%以下のSb
    0.01〜7%のSn
    0.3%以下のZn
    5%以下のMg
    残部のアルミニウムおよび不可避の不純物
    からなる組成を有するが、但しNi:Snのモル比が10:(0.5〜9)の範囲である、請求項11〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. アルミニウムベース基板がAA4000シリーズアルミニウム合金製である、請求項11〜20のいずれか一項に記載の方法。
  22. アルミニウムベース基板が、アルミニウム合金製のコアシートへ接合されたアルミニウム合金シートであり、好ましくはコアシートがAA3xxx、AA5xxxおよびAA6xxxシリーズ合金からなる群より選択されるアルミニウム合金製である、請求項11〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. アルミニウムベース基板が、アルミニウムコアシートを、該コアシートの少くとも一表面で、AA4xxxシリーズアルミニウム合金製のアルミニウムクラッド層により形成されたアルミニウムベース基板へ接合させた、アルミニウムロウ付用シートである、請求項21または22に記載の方法。
  24. ステップ(b)によるメッキ前に、亜鉛を含む接合層がアルミニウム基板の外表面へ被覆される、請求項11〜23のいずれか一項に記載の方法。
  25. ステップ(b)によるメッキ前に、亜鉛を含む接合層がアルミニウム基板の外表面へ被覆され、該接合層が0.5ミクロン以下の厚さを有し、好ましくは該接合層が0.3ミクロン以下の厚さを有している、請求項24に記載の方法。
  26. 拡散焼鈍処理が、アルミニウムベース基板層の外表面にニッケルからなる層、およびニッケルからなる該層の外表面にニッケル‐スズ合金からなる拡散層を形成するものである、請求項11〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 拡散層(3)が、約0.2〜0.6ミクロンの厚さを有している、請求項11〜26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 少くとも1つの部品が、請求項1〜10のいずれか一項に記載されたロウ付用シート製品、または請求項11〜27のいずれか一項に記載された方法で得られた製品である、ロウ付により接合された諸部品のアセンブリー。
  29. 部品が、ロウ付用フラックス物質の不在下、不活性雰囲気中でロウ付作業により接合されている、請求項28に記載のアセンブリー。
  30. 少くとも1つの他の部品が、スチール、アルミニウム処理スチール、ステンレススチール、メッキまたは被覆スチール、メッキまたは被覆ステンレススチール、青銅、真鍮、ニッケル、ニッケル合金、チタン、およびメッキまたは被覆チタンからなる群より選択される物質を含んでなる、請求項28または29に記載のアセンブリー。
  31. アセンブリーが自動車向けの熱交換器である、請求項28〜30のいずれか一項に記載のアセンブリー。
  32. アセンブリーが燃料電池であり、更に好ましくはアセンブリーが電気化学燃料電池である、請求項28〜30のいずれか一項に記載のアセンブリー。
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