JP2012144307A - 重送検知装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】用紙の厚さや重送状態の用紙間の空気層の厚さによる影響を受け難い重送検知技術を提供する。
【解決手段】用紙の搬送経路を挟んで互いに対向する超音波送信部30および超音波受信部40と、周波数fの第1の超音波と周波数f(f>f)の第2の超音波とを送信するように超音波送信部30を制御する送信信号発生部10と、超音波受信部40にて受信された第1の超音波の受信強度Aと同第2の超音波の受信強度Aの比(A/A)が所定の閾値よりも小さい場合に、重送状態であると判定する受信信号処理部60とを有することを特徴とする重送検知装置を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、プリンタ等の画像処理装置において用紙の重送を検知する技術に関し、特に、超音波を用いて重送を検知する技術に関する。
用紙に画像を形成して出力する画像形成装置(例えば、プリンタ)や、用紙に形成されている画像を読み取る画像読み取り装置(例えば、スキャナ装置)、あるいは、両者の機能を合わせ持った装置(例えば、コピー機)などの画像処理装置が一般に普及している。この種の画像処理装置では、用紙トレイに載置された用紙束(或いは原稿束)から用紙を1枚ずつ取り出し、搬送ベルトや搬送ローラ等で形成された搬送路に沿って画像形成部(或いは画像読み取り部)まで用紙を搬送する、といった処理が行われる。
この種の画像処理装置においては、用紙が1枚ずつ搬送されてくることが前提となっているが、湿度や静電気等の影響によって複数枚の用紙が重なり合った状態で搬送されてくることがある。このような現象は「重送」と呼ばれており、重送が発生すると様々な不具合が起こり得る。例えば、2枚の用紙が一部だけ重なりあって搬送されてきた場合(図2(B)参照)には、本来1枚の用紙に形成されるべき画像が複数枚の用紙に亘って形成される、といった不具合が起こり得る。そこで、搬送される用紙の重送を検知し、処理を停止したり、その旨を画像処理装置の利用者に報知したりする技術が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
特許文献1および特許文献2に開示された技術は、何れも超音波センサを用いて重送を検知する技術である。ここで、超音波センサとは、用紙の搬送路を挟んで対向するように配置される超音波送信部と超音波受信部を含み、超音波送信部から送信された超音波のうち用紙を透過して超音波受信部へ到達した成分の受信強度を計測するセンサである。特許文献1に開示された技術では、1枚の用紙を透過した超音波の受信強度を予め計測しておき、その計測値よりも小さい値を基準値として定めておく。そして、画像処理装置の運用過程においては、超音波受信部により受信される超音波の受信強度が当該基準値を下回っているか否かによって重送の有無を判定するのである。一方、特許文献2には、周波数を連続的にスイープさせて超音波を送信し、その受信強度にピークが現れた場合には、1枚の用紙であると判定し、ピークが現れない場合には重送状態であると判定する技術が開示されている。ここで、周波数を連続的にスイープさせて超音波を送信するようにしたのは、超音波受信部が受信可能な周波数帯域のばらつきや、定着熱等の影響による超音波受信部の特性の変化に対処するためである。
特開2000−95390号公報 特開2006−1691号公報
ところで、1または複数枚の用紙を透過した超音波の透過率は、用紙が1枚である場合にはその用紙の厚さに応じて変動し、用紙が複数枚である場合には、それら用紙の間隔(すなわち、用紙間の空気層の厚さ)に応じて変動することが知られている。超音波の透過率が変動すれば、当然に超音波受信部による受信強度も変動する。つまり、超音波受信部による超音波の受信強度は、その超音波が透過した用紙が1枚であればその厚さに応じて変動し、同用紙が複数枚であれば用紙の間隔に応じて変動するのである。このため、特許文献1に開示された技術のように超音波受信部による超音波の受信強度と所定の基準値との比較により重送の有無を判定する態様では、用紙の厚さの変動(例えば、基準値を定める際に用いた用紙と、実際の画像形成に用いる用紙とで厚さが異なる)等に起因して誤判断が起り得る。
一方、特許文献2に開示された技術では、受信強度にピークが現れるか否かによって重送の有無を判定しているため、このような不具合が生じないと考えられる。しかし、本出願人の行った理論計算(シミュレーション)によれば、このようなピークは特殊な条件下でのみ現れる得ることが判明した。なお、このシミュレーションの内容および結果については後に詳細に説明する。したがって、特許文献2に開示された技術を用いたとしても常に重送の有無を正しく判定できるとは限らないと考えられる。
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、用紙の厚さや重送状態の用紙の間隔による影響を受け難い重送検知技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は、画像処理装置の用紙トレイから画像形成部または画像読み取り部に至る搬送路に沿って搬送される用紙の重送を検知する重送検知装置において、前記搬送経路を挟んで互いに対向する超音波送信部および超音波受信部と、第1の周波数帯域に属する第1の超音波と前記第1の周波数帯域よりも高い周波数の帯域である第2の周波数帯域に属する第2の超音波とを送信するように前記超音波送信部を制御する送信信号発生部と、前記超音波受信部にて受信された前記第1の超音波の受信強度と前記第2の超音波の受信強度の比を予め定められた閾値と比較して重送の有無を判定する受信信号処理部とを有することを特徴とする重送検知装置、を提供する。
本出願人の行ったシミュレーションによれば、周波数の異なる2種類の超音波を1枚の用紙を透過させたときの各超音波の透過率の比(周波数の低い方の超音波の透過率を周波数の高い方の超音波の透過率で除算して得られる値)は用紙の厚さには依存しないことが判明した。また、周波数の異なる2種類の超音波を2枚の用紙を透過させたときの各超音波の透過率の比は2種類の超音波の周波数が高いほど用紙間の空気層の厚さには依存しないこと、および、2枚の用紙を透過させたときの各超音波の透過率の比のほうが1枚の用紙を透過させたときの透過率の比よりも大きいことが判明した。本発明の重送検知装置は、このシミュレーションの結果を利用して重送の検知を行うものである。2種類の超音波の透過率の比は、超音波受信部における各超音波の受信強度の比(周波数の低い方の超音波の受信強度を周波数の高い方の超音波の受信強度で除算して得られる値)に一致するからである。
別の好ましい態様においては、前記重送検知装置の送信信号発生部は、前記第1の超音波として前記第1の周波数帯域内で周波数が変動する第1の周波数変調波を前記超音波送信部に送信させるとともに、前記第2の超音波として前記第2の周波数帯域内で周波数が変動する第2の周波数変調波を前記超音波送信部に送信させ、前記受信信号処理部は、前記第1の周波数変調波についての受信強度の平均値と前記第2の周波数変調波の受信強度の平均値とを算出し、これら2種類の平均値の比を前記閾値と比較して重送の有無を判定することを特徴とする。詳細については後述するが、このような態様によれば、超音波送信部から送信された超音波が用紙や他の周辺部材によって反射され、その反射によって共振が生じるような場合であっても、その共振に起因した重送の誤検知を回避することができる。
本発明の1実施形態である重送検知装置1の構成例を示すブロック図である。 同重送検知装置1の動作概要を説明する概念図である。 本実施形態の原理を説明するための図である。 1枚の用紙を透過した超音波の周波数とその透過率との関係を示す理論曲線の一例である。 2枚の用紙を透過した超音波の周波数とその透過率との関係を示す理論曲線の一例である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態の重送検知装置1の構成例を示すブロック図である。
この重送検知装置1は、例えばプリンタなどの画像処理装置(図1では図示略)に内蔵され、複数の搬送ローラRによって形成された搬送路に沿って用紙トレイ(図示略)から画像形成部(図示略)へ搬送される用紙Pの重送を検知するためのものである。図1に示すように、重送検知装置1は、送信信号発生部10、アンプ20、超音波送信部30、超音波受信部40、アンプ50、および受信信号処理部60を含んでいる。
超音波送信部30は、送信信号発生部10から出力されアンプ20による信号レベルの増幅を経た電気信号を超音波に変換して出力する装置である。一方、超音波受信部40は、例えばシリコンマイクロホンであり、超音波送信部30から送信された超音波を収音し、その波形を示す電気信号に変換して出力する。超音波受信部40の出力信号はアンプ50による増幅を経て受信信号処理部60に与えられる。アンプ50は、超音波受信部40の出力信号の信号レベルを受信信号処理部60における信号処理に適した信号レベルまで増幅するものである。図1に示すように、超音波送信部30と超音波受信部40は、用紙の搬送路を挟んで対向するように設置される。このため、超音波送信部30と超音波受信部40との間を用紙Pが通過しているときに超音波送信部30に超音波を送信させると、その用紙Pを透過した成分が超音波受信部40によって受信される。
送信信号発生部10は、第1の周波数帯域(本実施形態では、80〜120[kHz]の周波数帯域)に属する第1の超音波と、第1の周波数帯域よりも高い周波数の帯域である第2の周波数帯域(本実施形態では、100〜160[kHz]の周波数帯域)に属する第2の超音波とを超音波送信部30に送信させる処理を実行する。本実施形態では、第1および第2の超音波として固定周波数の超音波が使用される。具体的には、第1の超音波として周波数f=120[kHz]の超音波が使用され、上記第2の超音波として周波数f=160[kHz]の超音波が使用される。なお、本実施形態では第1の周波数帯域の一部と第2の周波数帯域の一部とが重なりあっているが、両者が周波数軸上で互いに離間していても勿論良い。図1の送信信号発生部10は、所謂発振回路であり上記第1および第2の超音波の波形を表す電気信号を発生させアンプ20に出力する。より詳細に説明すると、送信信号発生部10は、第1の超音波を表す電気信号として周波数fの電気信号を発生させるとともに第2の超音波を表す電気信号として周波数fの電気信号を発生させ、これら2種類の電気信号の各々を以下の要領で出力する。
すなわち、送信信号発生部10は、用紙トレイから画像形成部への用紙の搬送が開始された時点を起算点として計時を行い、時間T1が経過した時点で第1の超音波を示す電気信号を出力し、さらにその後、時間ΔTが経過した時点(すなわち、上記起算点から時間T1+ΔTが経過した時点)で第2の超音波を示す電気信号を出力する。ここで、時間T1は、用紙Pの搬送が開始されてからその用紙Pの中央部が超音波送信部30と超音波受信部40の間を通過するまでに要する時間であり、この時間T1は、用紙Pの搬送速度VR、用紙トレイから超音波送信部30および超音波受信部40の配置位置までの搬送路の長さRLおよび搬送方向の用紙の長さPLに応じて定まる(具体的には、T1=(RL+PL/2)/VR)。また、時間ΔTは時間T1に比較して十分に短い時間(より正確には、PL/2VRに比較して十分短い時間。)である。このような時間間隔で各電気信号を出力するようにしたのは、用紙の中央部を対象として重送判定を行うようにするためである。
ここで、用紙の中央部を対象として重送判定を行うようにしたのは、以下の理由による。本来、一枚の用紙P1が搬送されてくるべきところ、図2(A)に示すように、用紙P1に用紙P2が完全に重なって搬送されてきた場合には、用紙のどの部分で重送判定を行っても特段の問題は生じない。しかし、図2(B)に示すように、2枚の用紙が一部だけ重なりあって搬送されてくる場合に、用紙P1の先端部(或いは用紙P2の後端部)で重送判定を行うと、実際には重送状態であるにも関わらず1枚の用紙であると誤判断されてしまう。つまり、用紙の中央部を対象として重送判定を行うようにしたのは、用紙の重なり具合に起因した誤判断を回避するためである。
受信信号処理部60は、超音波受信部40の出力信号を解析し、超音波受信部40による第1の超音波の受信強度Aを同第2の超音波の受信強度Aで除算して得られる値A/A(すなわち、前者の受信強度Aと後者の受信強度Aの比)を算出するとともに、当該値A/Aと予め定められた閾値thとの大小比較を行う。詳細については後述するが閾値thは第1および第2の超音波の各々の周波数に応じて定まる値である。この閾値thの定め方についても後に詳細に説明する。そして、受信信号処理部60は、第1および第2の超音波の受信強度の比A/Aが閾値thを上回っている場合には重送状態であると判定し、その判定結果を示す判定結果信号を画像処理装置の制御部(図示省略)に与える。この判定結果信号を受け取った制御部は用紙の搬送等を停止し、さらにエラーメッセージ等の出力を行ってその旨を利用者に報知する処理を実行する。
このように、本実施形態では、各々周波数の異なる第1および第2の超音波の受信強度の比A/Aが閾値thを上回っているか否かによって、重送の有無を判定する点に特徴がある。以下、周波数の異なる2種類の超音波の受信強度の比A/Aと閾値thとの大小比較により重送の有無を判定できることの理論的な裏づけ(換言すれば、本実施形態の原理)について説明する。
図3は、第0層から第4層の5つの媒質層を第0層から第4層に向けて伝搬する音波の様子をモデル化した図である。超音波送信部30から送信され、1乃至複数枚の用紙を透過して超音波受信部40に至る音波の伝搬過程は、図3に示すようにモデル化される。例えば、図3の第0層、第2層、第3層および第4層を空気層とし、第1層のみを用紙とすれば、1枚の用紙を透過する音波の伝搬過程がモデル化されることになる。同様に、図3の第0層、第2層、および第4層を空気層とし、第1層および第3層を用紙とすれば、2枚の用紙を透過する音波の伝搬過程がモデル化されることになる。
図3に示すように、第i(i=0〜4)層における音波の波数をk、媒質の密度をρ、当該音波の角速度をωとすると、第i層における音波の入射方向の速度ポテンシャルIおよび反射方向の速度ポテンシャルR(すなわち、第i層と第i+1層の境界で反射する音波の速度ポテンシャル)は、一般に以下の数1で表される。なお、数1においてjは虚数単位である。また、上記各速度ポテンシャルの定式化にあたっては、第0層についてはその左端(すなわち、第1層との境界)を位置座標xの原点とし、第1〜第4層の各々においては、その右端(すなわち、第i(1≦i≦4)層については第i−1層との境界)を位置座標xの原点とした。
Figure 2012144307
一般に、速度ポテンシャルφと粒子速度v、および音圧pの間には、以下の数2の関係がある。ここで、第i層と第i+1層(0≦i≦3)の境界において粒子速度vおよび音圧pが各々連続でなければならないという境界条件に留意しつつ、数1を数2の各々に代入すると、以下の数3に示す関係式が得られる。この数3は、さらに、数4に示す行列形式に書き改めることができる。なお、数3において、i=0を別扱いとしたのは、第0層における原点の取り方が他の層とは異なるからである(数4および数6においても同じ)。また、数3のdは第i(1≦i≦3)層の厚さである(数4および数5においても同じ)。
Figure 2012144307
Figure 2012144307

Figure 2012144307
ここで、以下の数5に示す2行2列の行列BとDを用いると、第i層と第i+1層との各々における速度ポテンシャルの振幅の関係を以下の数6のように表すことができる。なお、数6の右辺における行列B −1は行列Bの逆行列である。
Figure 2012144307
Figure 2012144307
したがって、第0層から第4層までの階層構造を考慮すると、以下の数7が得られ、さらに、この数7は、数値計算を容易にすること考慮して以下の数8のようにまとめ直すことができる。ここで、各層の密度ρi、各層の厚さdiおよび各層における波数kiをパラメータとし、さらに、A (I)=1、A (R)=0として数8を解くと、第0層から第4層の5つの媒質層を透過した音波の透過率A (I)と第0層表面での反射率A (R)が求まる。
Figure 2012144307
Figure 2012144307
図4は、0〜200[kHz]の周波数帯域の音波の透過率の理論曲線を表すグラフであり、これら理論曲線は、以下の表1に示すパラメータを数8に代入して得られたものである。表1において第2層および第3層の厚さがゼロとされていることから明らかように、図4に示す3本の理論曲線の各々は、1枚の用紙を透過した音波の透過率とその音波の周波数との関係を示している。具体的には、図4にて、実線、一点鎖線および二点鎖線で描画された理論曲線の各々は、夫々、厚さが0.1[mm]、0.2[mm]および0.4[mm]の用紙を透過した音波の透過率とその音波の周波数との関係を示している。
Figure 2012144307
図4からは、以下の3つのことがわかる。第1に、0〜200[kHz]の何れの周波数においても1枚の用紙を透過した音波の透過率はその用紙が厚いほど大きく減少することである。第2に、用紙の厚さが0.1[mm]、0.2[mm]および0.4[mm]の何れであっても、1枚の用紙を透過した音波の透過率は周波数が高いほど大きく減少することである。これら2点は、経験的に得られる事実とも一致する。そして、第3に、周波数が一定の値を超えると各理論曲線の勾配が略一定となっていることである。例えば、図4では、周波数が80[kHz]以上になると各理論曲線の勾配が略一定になっている。このことは、周波数が一定値以上であり、かつ、各々周波数が異なる2種類の音波を1枚の用紙を透過させたときのそれら音波の透過率の比rは、その用紙の厚さによらず略一定の値となることを意味している。ここで、透過率の比とは、周波数の低い方の超音波の透過率を周波数の高い方の超音波の透過率で除算して得られる値のことである。表2は、用紙の厚さdが0.1[mm],0.2[mm]および0.4[mm]の各々の場合における、f=80[kHz]かつf=100[kHz]の場合(以下、ケース1)、f=80[kHz]かつf=120[kHz]の場合(以下、ケース2)、f=100[kHz]かつf=120[kHz]の場合(以下、ケース3)、f=120[kHz]かつf=160[kHz]の場合(以下、ケース4)の透過率の比rのシミュレーション結果を示したものである。表2を参照すれば明らかように、ケース1、ケース2、ケース3およびケース4の各々の場合において、透過率の比rが用紙の厚さによらず略一定となっていることが判る。この第3点目の事項は本出願人が行ったシミュレーションにより明らかになったものである。
Figure 2012144307
さて、ここで注目すべき点は、図4に示す3本の理論曲線には、何れも明確なピークが現れていないということである。表1を参照すれば明らかように、上記理論計算に用いたパラメータ(各層の厚さや密度、音速等)は必ずしも特別な値ではなく、画像処理装置の使用環境において一般的に想定し得る値である。つまり、一般的な条件の下で画像処理装置を使用する場合、1枚の用紙を透過した音波の透過率(或いは透過率に応じて定まる受信強度)には明確なピークは現れないと考えられる。なお、本出願人がさらに別のパラメータを用いて理論計算を行ったところ、第1層(すなわち、用紙)の厚さが100[mm]程度であれば、100[kHz]近辺にピークが現れ得ることが判明した。しかし、用紙の厚さが100[mm]というのは現実とはかけ離れた特殊な条件である。したがって、用紙を透過した超音波の受信強度にピークが現れるか否かを重送の判定基準とすることは、一般的な条件化で使用される画像処理装置における重送判定には有効ではないと考えられる。
一方、図5は、0〜200[kHz]の周波数帯域の音波の透過率の理論曲線を表すグラフであり、これら理論曲線は、以下の表3に示すパラメータを数8に代入して得られたものである。表3を参照すれば明らかように、図5に示す3本の理論曲線は、空気層(第2層)を隔てて重ね合わされた2枚の用紙を透過した音波の透過率とその音波の周波数との関係を示している。具体的には、図5の実線、一点鎖線および二点鎖線の各々で描画された理論曲線の各々は、夫々、間隔0.1[mm]、0.05[mm]および0.02[mm]の空気層(第2層)を隔てて重ね合わせた2枚の用紙を透過した音波の透過率とその音波の周波数との関係を示している。なお、図5に示す各理論曲線には、夫々明確なピークが現れているが、これらのピークは理論計算における近似により強調されていると考えられ、実験等を行えば、よりなだらかなピーク、或いは透過率―周波数曲線の肩として観測されると考えられる。
Figure 2012144307
図5からは、以下の3つのことがわかる。第1に、60〜200[kHz]の周波数では、空気層を挟んで重ねられた2枚の用紙を透過した音波の透過率はその空気層が厚いほど大きく減少することである。第2に、80〜200[kHz]の周波数では、空気層を挟んで重ねられた2枚の用紙を透過した音波の透過率は周波数が高いほど大きく減少することである。これらは経験的に得られる事実とも一致する。そして、第3に、周波数が一定の値(図5に示す例では、120[kHz])を超えると各理論曲線の勾配が略一定となることである。このことは、一定値以上の周波数を有し、かつ各々の周波数が異なる2種類の音波を2枚の用紙を透過させたときのそれら音波の透過率の比rはそれら用紙間の空気層の厚さによらず略一定の値となることを意味している。表4は、2枚の用紙間の空気層の厚さdが0.1[mm],0.05[mm]および0.02[mm]の各々の場合における、前述したケース1、ケース2、ケース3およびケース4の各々の場合の透過率の比rのシミュレーション結果を示したものである。表4を参照すれば明らかように、ケース1の場合には透過率の比rは空気層の厚さdに依存しているものの、ケース2、ケース3の順に透過率の比rの空気層の厚さdに対する依存の度合いは小さくなり、ケース4の場合には透過率の比rは空気層の厚さdに依存せず略一定となっていることが判る。この第3点目の事項は本出願が行ったシミュレーションにより明らかになったものである。
Figure 2012144307
さらに、表2と表4とを対比すれば明らかように、周波数の異なる2種類の超音波の透過率の比rは、1枚の用紙を透過した場合のほうが2枚の用紙を透過した場合よりも小さくなっていることが判る。具体的には、1枚の用紙を透過させた場合の透過率の比rは、ケース1〜ケース4の何れにおいても、用紙の厚さが0.1[mm]のときに最大となっており、その最大値はケース1の場合には1.666、ケース2の場合には1.500、ケース3の場合には1.400、ケース4の場合には1.333である。一方、2枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最小値は、ケース1の場合には5.560(空気層の厚さd=0.02[mm])、ケース2の場合には3.710(空気層の厚さd=0.1[mm])、ケース3の場合には2.879(空気層の厚さd=0.1[mm])、ケース4の場合には2.432(空気層の厚さd=0.1[mm])である。このように、ケース1〜ケース4の何れにおいても、1枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最大値は、2枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最小値よりも小さくなっているのであるから、周波数の異なる2種類の超音波の透過率の比rは、1枚の用紙を透過した場合のほうが2枚の用紙を透過した場合よりも小さくなると言えるのである。これは、第2層(用紙間の空気層)における第2の超音波(周波数f2の超音波)の減衰が第1の超音波(周波数f1の超音波)の減衰よりも大きいことに起因していると考えられる。したがって、3枚以上の用紙を透過した場合の上記比rは、いっそう大きな値になると考えられる。
本実施形態の重送検知装置1では、周波数の異なる2種類の超音波の透過率の比rは、1枚の用紙を透過した場合のほうが2枚の用紙を透過した場合よりも小さくなることを利用して重送判定を行うのである。具体的には、周波数fおよびfの組み合わせとして表2および表4に示すケース1〜ケース4の何れを用いる場合であっても、閾値thとして一枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最大値を上回り、かつ2枚の用紙を透過した場合の最小値を下回る値を用いるようにすれば、周波数fの超音波の受信強度Aと周波数fの超音波の受信強度Aの比A/Aが上記閾値th以下であれば重送状態ではないと判定することができ、逆に、当該閾値thよりも大きければ重送状態であると判定することができる。周波数fの超音波の受信強度Aは同超音波の透過率に比例するため、受信強度の比A/Aは透過率の比rと等しくなるからである。前述したように、1枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最大値はケース1〜ケース6の何れにおいても2.0を上回ることはなく、2枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最小値は2.0を下回ることはないのであるから、上記閾値thを2.0とすることが考えられる。
以上が本実施形態の原理である。
以上本実施形態の原理について説明したが、重送検知装置1を画像処理装置に組み込んで実際に重送の検知を行わせる場合には、周波数fおよびfを具体的にどのような値とするのかについて種々の態様が考えられる。前述したように、本実施形態では、周波数f=120[kHz]かつ周波数f=160[kHz]であるから、表2および表4に示すケース4の値が採用されている。ケース4においては1枚の用紙を透過させたときの透過率の比rは用紙の厚さには依存せずに略一定となり、2枚の用紙を透過させたときの透過率の比rも用紙間の空気層の厚さに依存せずに略一定となるのであるから、用紙の厚さや重送状態の用紙の間隔による影響を受けずに重送の有無を判定することができると考えられるからである。ただし、実際の計測ではノイズの影響を受けることに加えて超音波送信部30の送信出力および超音波受信部40の受信感度には制約があり、超音波の周波数が高くなるほど透過率が低下し、超音波受信部40における受信強度が低下する。このため、超音波送信部30および超音波受信部40のデバイス特性を考慮し、受信強度の比(すなわち、透過率の比)を正しく計測できる範囲の上限で周波数fおよびfを設定する必要がある。
ここで注目すべき点は、超音波送信部30および超音波受信部40のデバイス特性を考慮した結果、表2および表4に示すケース1〜ケース3の何れかを採用する場合であっても、閾値thを適切に設定すれば、用紙の厚さや重送状態の用紙の間隔による影響を受けずに重送を正確に検出することができる、という点である。前述したように、ケース1〜ケース3においては、2枚を用紙を透過した場合の透過率の比rは用紙間の空気層の厚さdに依存する。しかし、表2および表4を参照すれば明らかように、ケース1〜ケース3の何れにおいても、1枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最大値が2枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最小値を下回っていることに変わりはなく、閾値thを適切に設定すれば、用紙の厚さや重送状態の用紙の間隔による影響を受けずに重送を正確に検出することができる。閾値thについては、ノイズにより受信強度の比A/Aが変動し得ることを考慮して設定することが好ましい。また、ノイズにより受信強度の比A/Aが変動し得ることを考慮し、重送状態ではないことを検出するための閾値th1(閾値th1は、1枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最大値を上回り、かつ2枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最小値を下回っている値)と、重送状態であることを検出するための閾値th2(2枚の用紙を透過した場合の透過率の比rの最小値を下回り、かつ閾値th1よりは大きな値)とを用意し、超音波受信部40により受信した超音波の受信強度の比≦閾値th1であれば重送状態ではないと判定し、同受信強度の比>閾値th2であれば重送状態であると判定し、閾値th1<同受信強度の比≦閾値th2であれば、判定不能とすることも考えられる。
以上説明したように、本実施形態によれば、2種類の周波数の超音波の受信強度の比と閾値thとの大小比較により重送の有無が判定されるため、用紙の厚さ等に起因した誤判断が生じ難い。つまり、本実施形態によれば、用紙の厚さや用紙間の空気層の厚さによらずに正確に重送の有無を判定することができるのである。
以上本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に以下の変形を加えても勿論良い。
(1)上述した実施形態では、互いに周波数の異なる2種類の超音波の受信強度の比rと閾値thとの大小比較により重送の有無を判定した。しかし、このような固定周波数の超音波を用いるのではなく、第1の周波数帯域内で周波数が変動する第1の周波数変調波(以下、FM変調波)と同第2の周波数帯域内で周波数が変動する第2のFM変調波を用いて重送の有無を判定しても良い。具体的には、送信信号発生部10には、以下の数9で周波数f´が表される第1のFM変調波と周波数が同f´で表される第2のFM変調波とを超音波送信部30に送信させる処理を実行させる。ただし、数9におけるΔfは、周波数(f−Δf)と周波数(f+Δf)が共に第1の周波数帯域に属し、周波数(f−Δf)と周波数(f+Δf)が共に第2の周波数帯域に属し、かつ、f+Δf<f−Δfとなるように定める必要がある。そして、受信信号処理部60には、第1のFM変調波の周波数帯域(すなわち、f−Δfからf+Δfの周波数帯域)における受信強度の平均値Mと第2のFM変調波の周波数帯域(すなわち、f−Δfからf+Δfの周波数帯域)の受信強度の平均値Mを算出させ、両者の比(M/M)と閾値thとを比較して重送の有無を判定するのである。
Figure 2012144307
このようにFM変調波を用いる態様には、以下の利点がある。超音波センサを含む重送検知装置を備えた画像形成装置においては、超音波センサの超音波送信部から送信された超音波が搬送経路上の用紙或いは画像形成装置の他の部材によって反射され、その反射波に起因して特定の周波数で共振が生じ、受信強度に増減が生じる場合がある。上述した第1実施形態のように固定周波数の超音波の受信強度の比と閾値との比較により重送の有無を判定する態様では、上記共振周波数が何れかの超音波の周波数と一致すると、上記比が正しく算出されなくなる虞がある。これに対して、FM変調波を用いる態様では、周波数がある幅をもって平均化されるため、特定の周波数で共振が発生したとしても、その影響は軽減される。つまり、FM変調波を用いる態様は固定周波数の超音波を用いる態様に比較して安定的に重送検知を行うことができる、といった利点があるのである。なお、本変形例ではFM変調波の周波数を連続的に変化させた。しかし、第1および第2の周波数帯域の各々について、中心周波数付近で離散的にいくつかの周波数を選び出し、それら周波数を有する複数種の超音波を用いても良い。
(2)上述した実施形態では、搬送路に沿って用紙トレイから画像形成部へ搬送される用紙の重送検知に本発明を適用した。しかし、スキャナ装置やファクシミリ装置において、原稿トレイ(読み取り対象の画像が形成された用紙(原稿)が載置されるトレイ)から搬送路に沿って画像読み取り部へ搬送される用紙の重送検知に本発明を適用しても勿論良い。また、上述した実施形態では、超音波送信部30に互いに周波数が異なる2種類の超音波を順次送信させたが、超音波毎に異なる送信装置により送信させる、さらに、それら送信装置に同時に超音波を送信させるようにしても良い。同様に、超音波受信部についても各々周波数の異なる超音波を受信する超音波受信部を超音波毎に設けても良い。また、上述した実施形態では、用紙が一枚ずつ搬送されてくるとした場合における用紙の中央部を対象として重送判定を行ったが、用紙の先端部から後端部までの間の複数の箇所を対象として重畳判定を行い、それら複数個所のうちの一箇所でも重送状態であると判定された場合には、エラーメッセージ出力による重送状態の報知や用紙の搬送の停止を行っても良い。
1…重送検知装置、10…送信信号発生部、20,50…アンプ、30…超音波送信部、40…超音波受信部、60…受信信号処理部。

Claims (2)

  1. 画像処理装置の用紙トレイから画像形成部または画像読み取り部に至る搬送路に沿って搬送される用紙の重送を検知する重送検知装置において、
    前記搬送経路を挟んで互いに対向する超音波送信部および超音波受信部と、
    第1の周波数帯域に属する第1の超音波と前記第1の周波数帯域よりも高い周波数の帯域である第2の周波数帯域に属する第2の超音波とを送信するように前記超音波送信部を制御する送信信号発生部と、
    前記超音波受信部にて受信された前記第1の超音波の受信強度と前記第2の超音波の受
    信強度の比を予め定められた閾値と比較して重送の有無を判定する受信信号処理部と、
    を有することを特徴とする重送検知装置。
  2. 前記送信信号発生部は、前記第1の超音波として前記第1の周波数帯域内で周波数が変動する第1の周波数変調波を前記超音波送信部に送信させるとともに、前記第2の超音波として前記第2の周波数帯域内で周波数が変動する第2の周波数変調波を前記超音波送信部に送信させ
    前記受信信号処理部は、前記第1の周波数変調波についての受信強度の平均値と前記第2の周波数変調波の受信強度の平均値とを算出し、これら2種類の平均値の比を前記閾値と比較して重送の有無を判定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の重送検知装置。
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