JP2012140982A - スラスト玉軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】スラスト玉軸受において、固定側環状レース部材と回転側レース部材との間に発生するラジアル方向の相対変位によりボールの進み遅れが生じた際、ボールと保持器ポケット周縁部とが当接して過大な応力が生じるのを防止する。
【解決手段】保持器14をボール3と同じ個数とし、1個の保持器で1個ボールを保持するとともに、隣り合う保持器の間に所定の隙間を持たせることで、隣り合うボールの軌道面円周方向の間隔を変化できるようにした。これによりボールの進み遅れを吸収し、保持器ポケット周縁部に過大な応力が生じるのを抑制し、保持器の破損を防止する。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動車や、産業用機械用の油圧ポンプ、油圧モーター、エンジンクランクジャーナル、等に使用されるスラスト玉軸受に関するものである。
コンバインやトラクタ、田植え機、芝刈り機等に代表される農業機械では、動力伝達の手段として、ギアミッション方式から、油圧式無段変速機構(HST:Hydro Static
Transmission)への移行が進んでいる。この様な油圧式無段変速機では、内部にスラスト玉軸受が使用されている。
スラスト玉軸受の一例を図3に示す。スラスト玉軸受30は、固定側の環状レース部材1及び、回転側環状レース部材2を備えており、各環状レース部材1、2の一方の端面には円環状のボール軌道溝1a、2aが形成されている。このボール軌道溝1a、2aが対向するように、固定側環状レース部材1と、回転側環状レース部材2は同心に配置されており、各ボール軌道溝1aと2aとの間に複数のボール3、3が配置されている。複数のボール3、3は、加締め保持器34により、レース部材1、2の周方向に一定間隔で保持されている。加締め保持器34は、板厚が一定の鋼板をプレス加工することで形成されており、玉3を保持する玉ポケット部34aと、玉ポケット部34aを有する面の径方向両端から軸方向に折り曲げられた、玉を抱えるための外側フランジ部34b、内側フランジ部34cとを有している。外側フランジ部34bと内側フランジ部34cは、波形にプレス加工されている。
ボール3、3は、保持器34の外側フランジ部34b周面と内側フランジ部34cとの間に配置された後、加締められて保持器34のポケット部34aに保持されている。
ところで、スラスト玉軸受30によって支持される回転軸が、ラジアル方向に偏芯した状態である場合、図4に示すように、スラスト玉軸受の固定側環状レース部材1と回転側環状レース部材2との間に、ラジアル相対変位(e)が生じ、ボール3、3の各レース部材1、2に対する接触角が変化する。
そのため、ボール3、3の公転半径も変化することでボール3、3がそれぞれ異なる速度で公転し、個々のボール3、3の進み遅れが生じる。そして、ボール3、3の進み遅れによって、ボール3と不図示である保持器ポケット部の周縁部が当接し、図3における保持器ポケット部34の周縁部に過大な応力が発生する可能性がある。この過大な応力は、保持器の損傷の原因となる恐れがあるという問題があった。
特開2007−170465号公報
ここで、保持器ポケット部に過大な応力が生じるのを防止する技術思想として、特許文献1に示されたものがある。これは加締め保持器のポケット隙間を管理し、ポケット隙間δとボール直径daとの比を0.06≦δ/da≦0.12とすることで、ボールの進み遅れによりボールとポケット周縁部とが当接するのを防止するものである。
しかしながら、特許文献1では、保持器の加締めにおいて、塑性変形と弾性変形をコントロールして寸法や形状を規格内に管理する必要があり、そのための加工条件の設定にはロットの初期品毎に加工機の出力(プレスストロークや負荷荷重量など)と出来栄え寸法を確認して行うため条件設定が難しく、その確認の手間を要し、また出来栄えもロット毎にばらつきが生じるという課題があった。
本発明は、ボールの進み遅れに起因する過大な応力がポケットの周縁部に発生することを抑制することのできるスラスト玉軸受の保持器構造を提供することにある。また、固定側環状レース部材と回転側レース部材との間に発生するラジアル方向の相対変位により、保持器に過大な負荷が生じることを防止することができるスラスト玉軸受を提供することを目的としている。
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1の軌道面を有する固定側レース部材と、第2の軌道面を有する回転側レース部材と、前記第1の軌道面及び前記第2軌道面間に転動自在に配置された複数のボールと、ボールを保持する保持器とを備えたスラスト玉軸受において、
前記保持器は、前記ボールの個数と同じ個数であり、1個の保持器が1個のボールを保持すると共に、隣り合う保持器同士の間に、前記軌道面の円周方向に所定の隙間を有することを特徴としている。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスラスト玉軸受において、前記保持器の材質がプレス鋼板製であることを特徴としている。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のスラスト玉軸受において、前記保持器の表面に、塩浴軟窒化処理を施したことを特徴としている。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のスラスト玉軸受において、前記保持器の材質が樹脂製であることを特徴としている。
本発明によれば、ボールの進み遅れが保持器ポケット内で発生しても、隣り合う保持器の隙間によりボールの進み遅れを吸収し、固定側環状レース部材と回転側レース部材との間に発生するラジアル方向の相対変位により、保持器に過大な負荷が生じるのを防止することができる。
本発明の第一の実施例を示す図。 本発明の第二の実施例を示す図。 従来のスラスト玉軸受を示す図。 スラスト玉軸受の固定側環状レース部材と、回転側環状レース部材との間にラジアル方向の相対変位が発生したときの状態を示す図。
以下に、図1(a)、(b)、(c)に示す本発明の第一の実施形態について説明する。
図1に示すスラスト玉軸受10の複数の転動体3、3は、転動体の個数と同数である保持器14、14によって、保持される。保持器14は鋼板製で、ポケット部14aと、保持器14の対向する端部にあるフランジ部14b、14cを有し、保持器14ひとつにつきはボールを1個保持する。保持器14は、隣り合う保持器14との間に隙間を有しており、この隙間で、個々のボールの進み遅れを吸収する。 隙間の値は、保持器の円周方向寸法によって決定される。
保持器14は、図1(b)で示される様に、フランジ部14b、14cの端部を加締めによりボール3側に屈曲させ、保持器14からボールの脱落を防止している。なお、保持器の耐摩耗性を向上させる為に保持器表面に塩浴軟窒化処理の様な表面硬化処理を行う場合は、表面硬化処理後の加締めにより保持器に亀裂が生じることがあるので、図1(c)で示される保持器15の様にフランジ部15b、15cの加締めを行わずに使用することが好ましい。
続いて図2(a)、(b)に示す本発明の第二の実施形態について説明する。図2に示すスラスト玉軸受20の複数の転動体3、3は、転動体の個数と同数である保持器24、24によって保持される。保持器24は樹脂製であること以外は、第1の実施例と同様である。
1 固定側環状レース部材
1a 軌道面
2 回転側環状レース部材
2a 軌道面
3 転動体
10 スラスト玉軸受(第一の実施例)
14 保持器
14a ポケット部
14b フランジ部
14c フランジ部
15 保持器
15b フランジ部
15c フランジ部
20 スラスト玉軸受(第二の実施例)
24 保持器
24a ポケット部
30 従来のスラスト玉軸受
34a ポケット部
34b 外側フランジ部
34c 内側フランジ部

Claims (4)

  1. 第1の軌道面を有する固定側レース部材と、第2の軌道面を有する回転側レース部材と、前記第1の軌道面及び前記第2に軌道面間に転動自在に配置された複数のボールと、ボールを保持する保持器とを備えたスラスト玉軸受において、前記保持器は、前記ボールの個数と同じ個数であり、1個の保持器が1個のボールを保持すると共に、隣り合う保持器同士の間に、前記第1の軌道面演習方向又は第2の軌道面円周方向に所定の隙間を有することを特徴とするスラスト玉軸受。
  2. 請求項1に記載のスラスト玉軸受において、前記保持器の材質がプレス鋼板製であることを特徴とするスラスト玉軸受。
  3. 請求項2に記載のスラスト玉軸受において、前記保持器の表面に、塩浴軟窒化処理を施したことを特徴とするスラスト玉軸受
  4. 請求項1に記載のスラスト玉軸受において、前記保持器の材質が樹脂製であることを特徴とするスラスト玉軸受。
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