JP2012139704A - 狭窄ノズル及びこれを用いたtig溶接用トーチ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の狭窄ノズル7は、タングステン電極棒2の先端部周囲にタングステン電極棒2と同心状に配置され、タングステン電極棒2の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路7dを形成する筒状のノズル本体7aと、ノズル本体7aの内周面に円周方向へ所定の間隔をおいて突出形成され、タングステン電極棒2をノズル本体7aの中心位置に保持するノズル本体7aの長手方向に沿う複数の位置決め用突条7bと、複数の位置決め用突条7b間に形成され、ノズル本体7aの長手方向に平行に延びて高速ガス通路7d内を流れるシールドガスGを整流化する複数のガス整流溝7cとから成る。
【選択図】 図3
Description
(1)TIG溶接法は、プラズマ溶接法等の他の溶接法に比べて溶接能力や溶接強度が劣る。
(2)TIG溶接法は、タングステン電極棒やシールドガスとして使用するアルゴンガスが比較的高価であり、経費が嵩む。
(3)TIG溶接法は、溶接時にシールドガスが風の影響を受け易く、シールド効果が悪い。尚、シールド効果が悪いと、溶接2番部(溶接熱により母材部に生ずる熱影響部のことをいい、溶接熱によって急熱・急冷されて母材の組織が変化した部分)に黒っぽい焼けやビード表面に酸化膜が発生する。
(4)TIG溶接法は、小電流で溶接を行う際にアーク長を短くしないと、アークが不安定になる。
(5)TIG溶接法は、溶接速度を速くすると、溶接2番部にアンダーカット(へこみ)が発生する。
しかも、タングステン電極棒21を交換したときに、タングステン電極棒21を元の位置(狭窄ノズル25の中心位置)にセットし難く、再現性及び作業性に劣るという問題があった。
(1)即ち、本発明の請求項1の狭窄ノズルは、シールドガスの一部をシールドノズルから放出される層流化したシールドガスよりも速い高速整流ガスとし、この高速整流ガスをアークの周囲に流す構成としているため、タングステン電極棒側から被溶接物である母材側へ向って流れるプラズマ気流の速さが従来の速さ(約100m/sec)の2倍〜3倍の速さ(約200〜300m/sec)に達し、アークに作用する電磁力及び磁界が強化され、アークのエネルギー密度、アークの指向性及び硬直性がそれぞれ高められて安定したアークが得られる。
その結果、本発明の請求項1の狭窄ノズルは、溶接速度を従来の溶接速度に比較して5倍〜20倍速い溶接速度(1000mm/min〜7000mm/min)とすることができて高速溶接を行えるうえ、ビード幅が裏表とも均一で且つビードの波形の間隔が等間隔に形成されて高品質の安定した溶接を行える。
(2)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、シールドガスを高速整流ガスにして流すと共に、高速溶接が可能となるため、溶接時にシールドガスが風の影響を受けることがなく、また、熱影響部の急熱・急冷によって結晶の粗大化を抑止し、溶接金属の曲げ延性も向上する。
(3)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、高速のプラズマ気流により溶融金属内に発生する金属蒸気(不純物)の溶融金属への再付着・混入を防止でき、高品質な溶接を行える。
(4)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、ノズル本体によりシールドガスを絞って高速整流ガスとして放出しているため、シールドガスの使用量が少なくて済み、コストの低減を図れる。
(5)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、ノズル本体の内周面にタングステン電極棒をノズル本体の中心位置に保持する複数の位置決め用突条を突出形成しているため、タングステン電極棒の交換時にタングステン電極棒を元の位置(狭窄ノズルの中心位置)に正確且つ確実にセットすることができ、タングステン電極棒の取り付け位置の再現性を向上できて作業性も良くなる。
即ち、本発明の請求項2の狭窄ノズルは、位置決め用突条及びガス整流溝をノズル本体の先端から離れた位置に形成し、また、ノズル本体の先端と位置決め用突条及びガス整流溝との間に位置する高速ガス通路の内径を位置決め用突条及びガス整流溝の上流側の高速ガス通路の内径よりも大きく形成しているため、ガス整流溝を通過した高速整流ガスの流れが高速ガス通路の下流側部分で安定化し、乱流の発生が防止される。
その結果、高品質の安定した溶接を確実且つ良好に行える。
このように、横断面形状が楕円形状のアークを形成した場合、予熱効果が上がって溶け込みが大きくなると共に、裏波も出易くなる。
しかも、このTIG溶接用トーチは、狭窄ノズルからアークの周囲に流す高速整流ガスとその外側にシールドノズルから流す層流化したシールドガスとにより二重にシールするようになっているため、シールド効果が高められて溶融池への空気の進入を確実に遮断することができ、表面ビードの酸化皮膜が少なく、ビード表面に光沢のある溶接を行えると共に、タングステン電極棒の寿命が長くなる。
また、トーチボディ1の上端部開口の内周面には、タングステン電極棒2を保持する電極コレット3が上下動自在に螺挿される雌ネジ1aが形成され、トーチボディ1の下端部開口の内周面には、シールドガスGを層流化するガスレンズ5が着脱自在に螺着される雌ネジ1bが形成されている。
尚、電極・メインガス管接続金具11には、図示していないが、メインガス供給管及びパワーケーブルがそれぞれ接続されている。
この電極コレット3は、トーチボディ1内へ上方側から螺挿されており、コレット本体3′の上端部に固定したコレットハンドル4を回転させることによりトーチボディ1内で上下動するようになっている。
更に、ホルダー5′の保持筒部5dと支持筒部5fとの間の空間は、環状のガス室5gとなっており、支持筒部5fの基端部近傍に形成した複数のガス流通孔5h及びホルダー5′のガス通路5aを介してトーチボディ1内に連通されている。
このフィルター5″には、600メッシュのステンレス鋼製の金網3枚と300メッシュのステンレス鋼製の金網2枚を組み合せたものが使用されている。
このシールドノズル6は、その雌ネジ6aをガスレンズ5の保持筒部5dの雄ネジ5cにねじ込むことによりガスレンズ5の外周面に取り付けられており、ガスレンズ5のフィルター5″を通過して層流化されたシールドガスGをタングステン電極棒2の先端部周囲に放出するようになっている。
このノズル本体7aは、その雄ネジ7eを支持筒部5fにねじ込むことによりガスレンズ5の先端面中央位置に取り付けられる。このとき、ノズル本体7aは、タングステン電極棒2の先端部周囲にタングステン電極棒2及びシールドノズル6と同心状に配置されてタングステン電極棒2の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路7dを形成する。
その結果、高速ガス通路7d内に流入したシールドガスGは、ガス整流溝7cを通過して整流化されて高速整流ガスG3となり、高速ガス通路7dの下流側部分で安定化してからノズル本体7aの先端開口から放出されることになる。
また、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cは、図4及び図6に示す如く、ノズル本体7aの内周面に60°ごとに六つずつ形成されており、位置決め用突条7bの横断面形状は、位置決め用突条7bの頂面が円弧状になったほぼ台形状に形成されていると共に、ガス整流溝7cの横断面形状は、U字状に形成されている。
更に、狭窄ノズル7の全長は18mmに、直径の最も大きい部分の外径は6mmに、ノズル本体7aの基端部側の内径は2.7mmに、ノズル本体7aの先端部側の内径は3.0mmに、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cの長さは約2mmに、ガス整流溝7cの幅は0.5mmに、ガス整流溝7cの深さは0.75mmに、対向する二つの位置決め用突条7b間の差し渡し距離は1.7mmに、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cの形成位置はノズル本体7aの先端から3mmの位置になるようにそれぞれ設定されている。
そして、対向する二つの位置決め用突条7b間の差し渡し距離は、タングステン電極棒2を摺動自在に保持できるようにタングステン電極棒2の外径よりも0.1mm大きめに設定されている。
先ず、タングステン電極棒2を保持固定した電極コレット3をトーチボディ1内に挿着し、タングステン電極棒2の円錐状の先端が狭窄ノズル7の先端から僅かに突出した状態になるようにタングステン電極棒2の突出長さを設定する。
この実施の形態では、前記溶接は、電源に直流を使用し、タングステン電極棒2を直流溶接機の負極に接続して溶接を行う正極性(棒マイナス)となっている。
また、高速ガス通路7dに流入したシールドガスGは、その速度を増して高速ガスG2となると共に、複数のガス整流溝7cを通過することにより整流され、高速整流ガスG3となってノズル本体7aの先端開口からアークaの周囲に放出される。
その結果、シールドガスGの一部がアークa内に引き込まれ、プラズマ気流Pと呼ばれる高速のガス流が発生する。このプラズマ気流Pは、母材Wの溶け込み形成に大きく影響し、また、アークaの指向性及び硬直性(アークaがその形状を保持する性質)にも影響を与えるものであり、その速度が速くなればなる程、アークaの指向性及び硬直性を高めることができる。
また、発生したアークaは、狭窄ノズル7から放出される高速整流ガスG3によるサーマルピンチ効果により絞られてエネルギー密度の高い安定したアークaとなる。
その結果、前記TIG溶接用トーチを使用すれば、溶接速度を従来の溶接速度に比較して5倍〜20倍速い溶接速度(1000mm/min〜7000mm/min)とすることができて高速溶接を行えるうえ、ビード幅が裏表とも均一で且つビードの波形の間隔が等間隔で形成されて高品質の安定した溶接を行える。
更に、このTIG溶接用トーチは、高速のプラズマ気流Pにより溶融金属内に発生する金属蒸気(不純物)の溶融金属への再付着・混入を防止でき、高品質な溶接を行える。
そのうえ、このTIG溶接用トーチは、アークaの周囲に流す高速整流ガスG3とその外側に流す層流化したシールドガスGとにより二重にシールするようになっているため、シールド効果が高められて溶融池への空気の進入を確実に遮断することができ、表面ビードの酸化皮膜が少なく、ビード表面に光沢のある溶接を行えると共に、タングステン電極棒2の寿命が長くなる。
加えて、このTIG溶接用トーチは、狭窄ノズル7によりシールドガスGを絞って高速整流ガスG3として放出しているため、シールドガスGの使用量が少なくて済み、コストの低減を図れる。
また、このTIG溶接用トーチは、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cをそれぞれノズル本体7aの内周面の円周方向へ等角度ごとに配置し、ノズル本体7aの先端から高速整流ガスG3をアークaの周囲に均等に流す構成としているため、タングステン電極棒2から母材W側へ向って流れるプラズマ気流Pが均等に流れることになり、真円度の高い横断面形状が円形のアークaを形成することができ、溶接中のアークaが安定することになる。
表1からも明らかなように、本発明の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチは、アークaの指向性、溶接速度、シールド効果、溶接品質等に於いて何れも従来のシールドノズル23や狭窄ノズル25を用いたTIG溶接用トーチに比較して全ての面で優れた効果を発揮することができる。
図8の写真から明らかなように、従来の狭窄ノズル25を用いたTIG溶接用トーチに於いては、溶接部に亀裂が生じているが、本発明の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチに於いては、亀裂が生じておらず、従来のものよりも強度的に優れた突合せ溶接を行えることが判る。
このように、横断面形状が楕円状のアークaを形成した場合、予熱効果が上がって溶け込みが大きくなると共に、裏波も出易くなる。然も、電流を上げても良好な溶接を行える。
Claims (6)
- トーチボディ(1)の先端部に配設したガスレンズ(5)によりトーチボディ(1)の内部を通って流入して来たシールドガス(G)を層流化すると共に、層流化したシールドガス(G)をトーチボディ(1)の先端部に配設した筒状のシールドノズル(6)から被溶接物である母材Wへ向って放出し、シールドガス(G)の雰囲気中でシールドノズル(6)の中心位置に配設したタングステン電極棒(2)と母材(W)との間にアーク(a)を発生させ、そのアーク(a)の熱で母材(W)を溶融するようにしたTIG溶接用トーチに取り付けられる狭窄ノズル(7)に於いて、前記狭窄ノズル(7)は、タングステン電極棒(2)の先端部周囲にタングステン電極棒(2)と同心状に配置され、タングステン電極棒(2)の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路(7d)を形成する筒状のノズル本体(7a)と、ノズル本体(7a)の内周面に円周方向へ所定の間隔をおいて突出形成され、タングステン電極棒(2)をノズル本体(7a)の中心位置に保持するノズル本体(7a)の長手方向に沿う複数の位置決め用突条(7b)と、複数の位置決め用突条(7b)間に形成され、ノズル本体(7a)の長手方向に平行に延びて高速ガス通路(7d)内を流れるシールドガス(G)を整流化する複数のガス整流溝(7c)とから成り、トーチボディ(1)から放出されるシールドガス(G)の一部を前記高速ガス通路(7d)に流してシールドノズル(6)から放出される層流化したシールドガス(G)よりも速い高速整流ガス(G3)とし、当該高速整流ガス(G3)をノズル本体(7a)の先端開口からアーク(a)の周囲に流す構成としたことを特徴とする狭窄ノズル。
- 位置決め用突条(7b)及びガス整流溝(7c)をノズル本体(7a)の先端から離れた位置に形成し、また、ノズル本体(7a)の先端と位置決め用突条(7b)及びガス整流溝(7c)との間に位置する高速ガス通路(7d)の内径を位置決め用突条(7b)及びガス整流溝(7c)の上流側の高速ガス通路(7d)の内径よりも大きく形成し、ガス整流溝(7c)を通過した高速整流ガス(G3)の流れを高速ガス通路(7d)の下流側部分で安定化するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の狭窄ノズル。
- 各ガス整流溝(7c)を、ノズル本体(7a)の先端開口から高速整流ガス(G3)をアーク(a)の周囲に均等に流すべくノズル本体(7a)の内周面に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の狭窄ノズル。
- 各ガス整流溝(7c)を、ノズル本体(7a)の先端開口から高速整流ガス(G3)をアーク(a)の周囲の相対する位置に多く流すべくノズル本体(7a)の内周面に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の狭窄ノズル。
- 筒状のトーチボディ(1)と、トーチボディ(1)内へ上下動自在且つ回転自在にねじ込み挿着され、タングステン電極棒2を着脱自在に保持する電極コレット(3)と、電極コレット(3)の上端部に取り付けられ、電極コレット(3)を正逆回転させてトーチボディ(1)に対して上下動させるコレットハンドル(4)と、トーチボディ(1)の下端部に着脱自在に取り付けられ、トーチボディ(1)の内部を通して流入して来たシールドガス(G)を均質拡散させて層流化するガスレンズ5と、ガスレンズ(5)又はトーチボディ(1)にタングステン電極棒(2)の先端部を囲繞する状態で着脱自在に取り付けられ、ガスレンズ5により層流化されたシールドガス(G)をアーク(a)の周囲に放出する筒状のシールドノズル(6)と、タングステン電極棒(2)の先端部周囲に配設された請求項1〜請求項4に記載の何れかの狭窄ノズル(7)とから構成したことを特徴とするTIG溶接用トーチ。
- 狭窄ノズル(7)をガスレンズ(5)の先端面中央位置に着脱自在に取り付ける構成としたことを特徴とする請求項5に記載のTIG溶接用トーチ。
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