JP2012137475A - 物体の動的変形を考慮した電気伝導解析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】測定対象物体である転写ローラー2を、複数かつ有限個の要素に分割して動的な変形形状を計算して、各時間ごとに変形時の各要素の座標情報を含む動的変形モデルを出力する。前記動的変形モデルに基づいて、測定対象物体の所定部位に電圧条件を与えたときの電気伝導解析を行い、各時間ごとに各要素を流れる電流量を計算し、測定対象物体の動的な電気伝導特性(図8(c)のグラフ)を求める。
【効果】測定対象物体の動的変形モデルを特定し、この動的変形モデルを対象として電気伝導解析を実施するという二段階の手法で、変形を伴う動的状態で使用される構造部材に対して各時点の電気伝導特性を求めることができる。
【選択図】図8
Description
しかしながら、例えばプリンタやコピー機で使用される転写ローラー等の導電性部材は、転動する動的状態で使用される。
導電性弾性体などの軽い材料を用いて、内部に隙間のある、できれば押し出し成形で作りやすい形状とすることが望まれている。
しかしこのように構成すれば、動的状態で変形を伴いやすくなる。また、金属でも柔らかい金属や、薄い金属を用いる場合、動的状態で変形を伴いやすい。
そこで、変形を伴う動的状態で使用される構造部材の電気伝導解析を行う方法を提供することが強く求められている。
前記測定対象物体は、互いに同心に配置された内部円筒体及び外部円筒体、並びに内部円筒体と外部円筒体とを接続する複数のスポーク部を有する回転物体であってもよい。
この場合、前記電気伝導解析方法を用いて、前記スポーク部とスポーク部をとの間の孔の数、若しくは外部円筒体の外径に対する厚みの比率を変えて、動的な電気伝導特性の変動が小さくなるように前記回転物体の形状を最適化することができる。
また、この電気伝導解析方法を用いて、動的な電気伝導特性の変動が小さくなるように前記回転物体の形状を最適化することができる。
図1は、本発明の電気伝導解析方法を実施するための解析装置1を示す斜視図である。この解析装置1は、コンピュータ装置1aと、入力手段としてのキーボード1bと、マウス1cと、出力手段としてのディスプレイ装置1dとから構成されている。コンピュータ装置1aは、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの大型記憶装置(いずれも図示せず)、CD−ROMやフレキシブルディスクのドライブ1a1,1a2などの記憶装置を備えている。
転写ローラー2は、図2に断面図を示すように、導電性弾性体であり、内部円筒体2aと、外部円筒体2cと、両円筒を接続する複数本のスポーク部2bとを一体に成形したものである。この内部円筒体2aの内径部分に金属製の支軸5が通され、所定の荷重で紙3と接触しながら所定の回転数で回転し、図2の右方向に紙3を送り出す。
図4は、本実施の形態におけるコンピュータ装置1aの実行する電気伝導解析の手順を示すフローチャートである。全体の流れは(1)測定対象物体の動的な変形形状を計算して変形時の節点座標を出力する第一段階と、(2)第一段階で求められたモデルに基づいて電気伝導解析を行い、電流量を計算する第二段階と、(3)第二段階で求められた電流量から電気抵抗値を求める第三段階とに分けることができる。
図5(a)に示されるように、各要素はほぼ正方形となっており、その大きさは解析対象物の変形状態を十分に表現し得る程度の細かさである必要がある。しかし要素を小さくしすぎると、計算時間が膨大になるという問題がある。このことから、要素分割の基準としては、解析対象物の変形を十分に表現し得る最大の大きさ、を目安にする。ただし計算資源と計算時間に余裕があれば、より小さく分割するほうが、計算の精度は良くなる。要素の形状は、原則として正方形であるが、転写ローラー2のような複数のスポーク間に孔のある形状を四角形の集合体で表現するため、すべてを正方形で表現することは難しい。好ましくは縦片と横片との比が1:3以下の長方形又は正方形で表現すればよい。
図4のステップS1では、前述した基準により、転写ローラー2を要素分割する。そしてステップS2で、動的変形計算を実行する時間(例えば100msec)を設定し、この時間を、単位時間(例えば1msec)で区切る。この単位時間ごとに、動的変形計算を行う。ここに「動的変形計算」とは転動中の転写ローラー2の変形にともなって変化する各節点座標を算出する処理をいう。
まず、最初の単位時間において、ステップS3で得られた変形時の節点座標情報に基づいて、電気伝導解析のための第2のモデルを設定する(ステップS5)。この第2のモデルは、図6に示すように内部円筒体2aの内面の点に定電圧(例えば1V)を与え、紙3と接触する接触部位6に零電圧を与えるものである。この第2のモデルに基づいて各要素に流れる電流を計算する(ステップS6)。計算方法は材料の電気物性(電気比電気抵抗r;電気抵抗率ともいう)を入力し、境界条件として前記電圧条件を与える。この条件において、電界強度分布Uを計算し、電流密度jと電界強度Uとの関係式としてU=r・jを適用し、単位時間ごとの変形時の各節点の座標情報に基づいて、接触部位6に流れる電流を求める。
これらのS5〜S7のステップは、次の単位時間においても行われる。これらのS5〜S7のステップは、ステップS4で設定された時間が経過するまで繰り返され、ステップS8では、ステップS4で設定された時間が経過したかどうか判定し、経過したと判定されると、次の第三段階に入る。
このモデルを対象にして、Livemore Software Technology Corporation より提供される構造解析ソフトウェアLS-DYNA(登録商標)を用いて動的変形計算を行った。計算を実行した時間は1000msecであり、単位時間1msecごとに、各要素の節点の座標データの組を算出した。
一方、電気抵抗値が極小となる時刻では、電流が多く流れるはずである。図8(b)を見ると、転写ローラー2が紙3に向かって、下方向に圧縮されているとともに、真下にスポーク部2bとスポーク部2bの中間部Bがきており、その両側に各スポーク部2bがあり、これらの短い2本の経路から主に電流が流れる為、電流量が多くなったものと推定される。
そこで、電気抵抗値の変動を小さくするには、転写ローラー2の材料の電気物性、転写ローラー2の外径と内径が同じであれば、一つの方法として電気抵抗値の変動の周期を短くすればよいと考えられる。スポーク数を13,14と増やした場合(実施例2,3)、回転速度が同じであるので変動の周期は短くなり、それに応じて変動の振幅も減少していることが、図9からわかる。
(実施例4)実施例1と同様に導電性弾性体からなり、図10に示すように、スポーク数10本、内部円筒体2aの内径4.5mm、内部円筒体2aの外径6.6mm、外部円筒体2cの外径12.3mm、外部円筒体2cの内径dの転写ローラー2をモデルとして、内径dを変えて、動的変形を考慮した電気抵抗計算を実施し、外部円筒体2cの厚さeと電気抵抗値との関係を調べた。
縦軸のΩmax/minが1の場合、最大値と最小値が同じであり、電気抵抗の変動がない状態を示す。
(○):印刷ムラなし、まったく問題なし。
(×):印刷ムラあり。
図11を見れば、Ωmax/minが1.04以下であれば、印刷ムラは認められないので、Ωmax/minを1.04以下にすればよい。Ωmax/minを1.04以下にするためには、図11から「外部円筒体2cの外径に対する厚さeの比率」を11%以上にすればよいことが分かる。すなわち、外部円筒体2cの厚さeを厚くすることによって、転写ローラー2の剛性を向上させることができ、これによって電気抵抗値の変動を、許容できるレベルにまで抑えることができる。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
1a コンピュータ装置
2 転写ローラー
3 紙
4 感光体ローラー
2a 内部円筒体
2c 外部円筒体
2b スポーク部
5 支軸
6 接触部位
A スポーク部2bと外部円筒体2cとの接続部
B スポーク部2bとスポーク部2bの中間部
Claims (5)
- 測定対象物体の動的変形を考慮した電気伝導解析方法であって、
測定対象物体を、複数かつ有限個の要素に分割する工程と、
測定対象物体の動的な変形形状を計算して、各時間ごとに変形時の各要素の座標情報を含む動的変形モデルを出力する工程と、
前記動的変形モデルに基づいて、測定対象物体の所定部位に電圧条件を与えたときの電気伝導解析を行い、各時間ごとに各要素を流れる電流量を計算する工程と、
前記求められた電流量から測定対象物体の動的な電気伝導特性を求める工程とを有することを特徴とする電気伝導解析方法。 - 前記測定対象物体の動的な電気伝導特性は、電圧条件が与えられた所定部位間の電気抵抗値である請求項1記載の電気伝導解析方法。
- 前記測定対象物体は、互いに同心に配置された内部円筒体及び外部円筒体、並びに内部円筒体と外部円筒体とを接続する複数のスポーク部を有する回転物体である、請求項1又は請求項2記載の電気伝導解析方法。
- 請求項3記載の電気伝導解析方法を用いて、前記スポーク部とスポーク部をとの間の孔の数を変えて、動的な電気伝導特性の変動が小さくなるように前記回転物体の形状を最適化する方法。
- 請求項3記載の電気伝導解析方法を用いて、前記測定対象物体の外部円筒体の厚さの、前記測定対象物体の外径に対する比率を変えて、動的な電気伝導特性の変動が小さくなるように前記回転物体の形状を最適化する方法。
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