JP2012137321A - 転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の多分力検出器の校正方法は、タイヤTが装着されるスピンドル軸5と、タイヤTが押し付けられる模擬走行路面2を有する走行ドラム3と、走行ドラム3の回転軸に設けられた回転トルク計7を有する転がり抵抗試験機1に備えられた多分力検出器の校正方法であって、多分力検出器で発生するクロストークの影響を補正するクロストーク補正係数を用いて、多分力検出器の計測値からタイヤTに作用する力を算出する処理を行っているに際しては、クロストーク補正係数を、回転トルク計7で計測された回転トルクと多分力検出器で計測された力とからなる「転がり試験データ」を用いて校正する。
【選択図】図1
Description
ところで、このような転がり抵抗試験機では、試験機を使用するにあたって多分力検出器の校正を行う必要がある。加えて、長時間に亘って多分力検出器を使用し続けると検出値に誤差が生じることがある故、例えば、一定の使用時間毎に多分力検出器の校正が必要となる。
特に、転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器においては、押し付け荷重が転がり荷重へ影響してしまう等のクロストークが問題となる。
前述した特許文献2,3では、クロストークの影響を加味した多分力検出器の校正方法が一部開示されてはいるものの、具体的な手法が開示されるに至っておらず、実際の現場で採用できる技術とは言い難い。
即ち、本発明の転がり抵抗試験機に備えられた多分力計の校正方法は、タイヤが装着されるスピンドル軸と、前記タイヤが押し付けられる模擬走行路面を有する走行ドラムとを有する転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法であって、前記多分力検出器で発生するクロストークの影響を補正するクロストーク補正係数を用いて、多分力検出器の計測値からタイヤに作用する力を算出する処理を行っているに際しては、異なる条件下において多分力検出器に作用する2つの転がり抵抗が正負反転で等しいと仮定して得られた式と、前記多分力検出器で得られた「転がり試験データ」とを用いて、前記クロストーク補正係数を校正することを特徴とする。
また、さらに好ましくは前記2つの転がり抵抗とは、表側を向いて取り付けられて正転回転するタイヤの転がり抵抗と、表側を向いて取り付けられて逆転回転するタイヤの転がり抵抗と、であるとよい。
本発明の転がり抵抗試験機1は、タイヤT(試験用のタイヤ)を走行させる模擬走行路面2が外周面に備えられた円筒状の走行ドラム3と、この走行ドラム3の模擬走行路面2にタイヤTを押し付けるキャリッジ4とを備えている。このキャリッジ4は、タイヤTを回転自在に保持するスピンドル軸5を搭載するスライド台であって、走行ドラム3から水平方向に距離をあけて配備されている。
走行ドラム3は、左右方向と垂直な水平方向に沿った軸回りに回転自在に取り付けられた円筒体であり、その外周面にはタイヤTが転動可能な無端の模擬走行路面2が形成されている。走行ドラム3の回転軸には走行ドラム3を回転させるモータ6が取り付けられており、走行ドラム3はモータ6で駆動可能となっている。
なお、上述したスピンドル軸5は、先端にタイヤTを保持可能な軸部材であり、円筒状のハウジング8に水平方向を向く軸回りに回転自在に挿入された状態で取り付けられている。このスピンドル軸5の回転軸芯は走行ドラム3の回転軸芯と上下方向で同じ高さに且つ平行となるように配備されており、キャリッジ4を水平移動させるとスピンドル軸5に取り付けられたタイヤTが走行ドラム3の模擬走行路面2に対してその法線方向から押し当てられるようになっている。このスピンドル軸5を回転自在に支持するハウジング8には多分力検出器が設けられている。
図1に示すような座標軸、すなわち、キャリッジ4の移動方向(軸荷重の付与方向)を向くz軸、スピンドル軸5の軸芯と同軸なy軸、z軸及びy軸と直交する方向であって走行ドラム3の外周接線方向を向くx軸を設定した場合に、多分力検出器は、これらの座標軸に沿った荷重(fx、fy、fz)、及びこれらの座標軸回りのモーメント(mx、my、mz)のうち、少なくともfxおよびfzを含む2以上を検出する。なお、タイヤTに作用する力を表現する際は大文字のFを用いることとする。(たとえば、Fx、Fy、Fz)
この多分力検出器で計測された荷重及びトルクの計測値は制御部11に送られる。
また、制御部11は、多分力検出器で計測された計測データに基づいて、真の転がり抵抗Fxなどを算出する計測部12を備えている。この計測部12においては、多分力検出器で計測されたfx’、fz’、mx’などの荷重計測値やトルク計測値が入力され、後述の式(1)を用いて、fxが算出される。なお、式(1)には、係数a、bなどが存在するが、これらa、bは、多分力検出器におけるクロストークの影響を補正する係数である。この係数a、bを正確に知ること、言い換えるならば、正確に校正しておくことは、計測部12においてfxを正確に算出するためには不可欠なことである。
次に、制御部11内に設けられたこの校正部13で行われる信号処理、言い換えれば本発明の多分力検出器の校正方法を説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態の多分力検出器の校正方法について説明する。
fxに対する軸荷重fzのクロストーク補正係数a、及びmxのクロストーク補正係数bの校正は、次の順序で行われる。
さらに、図4に示すように、精度の高い荷重検定器14をスピンドル軸5と走行ドラム3との間に設置し、キャリッジ4を走行ドラム3方向に動かすことにより、スピンドル軸5にz方向の押し付け荷重fz(=Fzであり、ドラム荷重)を与える。
なお、図4に示される校正試験において、クロストーク補正係数aを求めることも可能であるが、押し付け荷重fzはfxに比べてかなり大きな値となる為、油圧シリンダ10に僅かな設置誤差があってもfx方向に無視できない大きさの余計な荷重が付与される。よって、図4に示すようなz方向に荷重fzを与える校正実験から、fxに対するfz’のクロストーク補正係数を求めることは困難である。
まず、図3のやり方で求めた校正係数α、及びクロストーク補正係数a、bを用いることで、表側を向けて取り付けられたタイヤTについて多分力検出器で計測される正転時の転がり抵抗fxCW1’及び裏側を向けて取り付けられたタイヤTについて多分力検出器で計測される逆転時の転がり抵抗fxCCW2’は式(1)のように示される。
fxCW1=α・fxCW1’+a・fzCW1’+b・mxCW1’
fxCCW2=α・fxCCW2’+a・fzCCW2’+b・mxCCW2’ (1)
式(1)において、係数aは、z方向の計測値fz’に起因するクロストークの影響度合いを表す係数であり、fz’のクロストーク補正係数である。係数bは、x軸回りのモーメントの計測値mx’に起因するクロストークの影響度合いを表す係数であり、mx’のクロストーク補正係数である。
fxCW1=−fxCCW2 (a)
それゆえ、式(1)及び式(a)から、式(2)が導かれる。
α・(fxCW1’+fxCCW2’)+a・(fzCW1’+fzCCW2’)
+b・(mxCW1’+mxCCW2’)=0 (2)
ただし、式(2)には、2つの未知な係数a、bがあるため、2つのクロストーク補正係数a、bを求めるためには、少なくとも2種類の一次独立となっている「転がり試験データ」を得る必要がある。2種類以上の一次独立となっている「転がり試験データ」が得られれば、式(2)を基にした独立な2次連立方程式を得ることができ、変数a、bを算出可能となる。
α・(fxCW2’+fxCCW1’)+a・(fzCW2’+fzCCW1’)
+b・(mxCW2’+mxCCW1’)=0 (3)
なお、この式(3)の導出は、式(2)を導出した際と同じであるため、詳細な説明を省略する。
以上述べた第1実施形態の校正方法によれば、転がり抵抗試験機1に設けられた多分力検出器のクロストーク補正係数a、bを手間や時間をかけることなく精度良く校正することができ、ひいては、(1本のタイヤTの実験データから)fxを精確に求めることができるようになる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の多分力検出器の校正方法について、説明する。
そこで、第2実施形態では表側を向いて取り付けられて正転回転するタイヤの転がり抵抗と、表側を向いて取り付けられて逆転回転するタイヤの転がり抵抗とが符号反転で等しいと仮定してクロストーク補正係数a、b、cの校正を行う。一般には、正転時と反転時の転がり抵抗は等しくなることから、同一の側を向くタイヤTのfxは正転と逆転とで符号反転で等しいという式を立てることができ、この式においてはfy’の成分も残ることからクロストーク補正係数cを算出することができる。
まず、転がり抵抗係数(転がり抵抗力Fx/タイヤ軸重Fz)が正転と逆転とで必要精度でほぼ等しいタイヤTを用意する。そして、第1実施形態と同様に、図3に示す如く、fxに対する転がり抵抗方向の計測値fx’の校正係数αを求める。
校正係数αやクロストーク補正係数a、b、cを考慮すると、表側を向けて取り付けられたタイヤTについて多分力検出器で計測される正転時の転がり抵抗fxCW1及び表側を向けて取り付けられたタイヤTについて多分力検出器で計測される逆転時の転がり抵抗fxCCW1は式(4)のように示される。
fxCW1=α・fxCW1’+a・fzCW1’+b・mxCW1’
fxCCW1=α・fxCCW1’+a・fzCCW1’+b・mxCCW1’ (4)
一方、上述のように、第2実施形態では、表側を向けて取り付けられたタイヤTについて計測される正転時の転がり抵抗fxCW1と表側を向けて取り付けられたタイヤTについて計測される逆転時の転がり抵抗fxCCW1とが同一の回転速度で且つ同一の押し付け荷重であれば、式(b)に示すように正負反転で等しくなると仮定する。
fxCW1=−fxCCW1 (b)
なお、第1実施形態の式(a)の仮定を設けた場合、fyの項が消えてしまうため、本実施形態では、式(b)の仮定を設けることが好ましい。
α・(fxCW1’+fxCCW1’)+a・(fzCW1’+fzCCW1’)+
b・(mxCW1’+mxCCW1’)+c・(fyCW1’+fyCCW1’)=0 (5)
なお、上述の式(5)のような関係は、裏側を向けて取り付けられたタイヤTについても、同様に成立する。つまり、裏側を向けて取り付けられたタイヤTについて多分力検出器で計測される正転時の転がり抵抗fxCW2と、裏側を向けて取り付けられたタイヤTについて多分力検出器で計測される逆転時の転がり抵抗fxCCW2との間にも、正負反転で等しくなるという仮定が成立する。それゆえ、次の式(6)が成立する。
α・(fxCW2’+fxCCW2’)+a・(fzCW2’+fzCCW2’)+
b・(mxCW2’+mxCCW2’)+c・(fyCW2’+fyCCW2’)=0 (6)
上述のようにして求めた式(5)や式(6)には、3つの未知な変数a〜cがあるため、これらを解く(言い換えれば、校正係数から成る校正行列を求める)ためには、1本のタイヤTで、式(2)、式(3)、式(5)、式(6)のうち3式を利用すれば、これらのクロストーク補正係数a、b、cを精確に算出して校正することができ、ひいては、真の転がり抵抗Fxを正確に求めることができるようになる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の多分力検出器の校正方法について、説明する。
まず、第1実施形態及び第2実施形態と同様にして、真の転がり抵抗fxに対して転がり抵抗の計測値fx’が有する校正係数αを求めておく。
そして、標準荷重(例えば、5000N)でタイヤTを走行ドラム3に押し付けた状態で時計回りCW(正転方向)にタイヤTを回転させ、多分力検出器でfx1、fz1、fy1及びmx1を計測する。
fx1’=fx1−fsx1
fz1’=fz1−fsz1 (7)
fy1’=fy1−fsy1
mx1’=mx1−msx1
上述したようにして求めたfx1’、fz1’、fy1’及びmx1’を、式(2)、式(5)のfxCW1’、fzCW1’、fyCW1’及びmxCW1’に適用する。
このようにして表側を向いて取り付けられたタイヤTの正転回転時のデータ及び逆転回転時のデータが得られた後は、タイヤTの取り付け方向を逆にする。
そして、裏側を向いて取り付けられたタイヤTの正転回転時のデータ及び逆転回転時のデータを、表側を向いて取り付けられたタイヤTの場合と同様に採取する。
fx2’=fx2−fsx2
fz2’=fz2−fsz2 (8)
fy2’=fy2−fsy2
mx2’=mx2−msx2
上述したようにして求めたfx2’、fz2’、fy2’及びmx2’を、式(2)、式(6)のfxCCW2’、fzCCW2’、fyCCW2’及びmxCCW2’に適用することで、第1実施形態及び第2実施形態の手法により、校正係数を求めることが可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 模擬走行路面
3 走行ドラム
4 キャリッジ
4a 垂直壁部
5 スピンドル軸
6 モータ
8 ハウジング
9 リニアガイド
10 油圧シリンダ
11 制御部
12 計測部
13 校正部
14 荷重検定器
15 ベアリング
T タイヤ
Claims (6)
- タイヤが装着されるスピンドル軸と、前記タイヤが押し付けられる模擬走行路面を有する走行ドラムとを有する転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法であって、
前記多分力検出器で発生するクロストークの影響を補正するクロストーク補正係数を用いて、多分力検出器の計測値からタイヤに作用する力を算出する処理を行っているに際しては、
異なる条件下において多分力検出器に作用する2つの転がり抵抗が正負反転で等しいと仮定して得られた式と、前記多分力検出器で得られた「転がり試験データ」とを用いて、前記クロストーク補正係数を校正することを特徴とする転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法。 - 前記2つの転がり抵抗とは、表側を向いて取り付けられて正転回転するタイヤの転がり抵抗と、裏側を向いて取り付けられて逆転回転するタイヤの転がり抵抗と、であることを特徴とする請求項1に記載の転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法。
- 前記2つの転がり抵抗とは、表側を向いて取り付けられて正転回転するタイヤの転がり抵抗と、表側を向いて取り付けられて逆転回転するタイヤの転がり抵抗と、であることを特徴とする請求項1に記載の転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法。
- 前記スピンドル軸には多分力検出器が取り付けられていて、
前記多分力検出器により、走行ドラムの接線方向をx軸、スピンドル軸芯方向をy軸、タイヤに加えられる荷重方向をz軸とした際に、fx、fz、mxの計測が可能であるに際しては、
前記fx、fz、mxを含み且つ一次独立な「転がり試験データ」を用いて、fxに対するfz及びmxのクロストーク補正係数を校正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法。 - 前記スピンドル軸には多分力検出器が取り付けられていて、
前記多分力検出器により、走行ドラムの接線方向をx軸、スピンドル軸芯方向をy軸、タイヤに加えられる荷重方向をz軸とした際に、fx、fz、fy、mxの計測が可能であるに際しては、
前記fx、fz、fy、mxを含み且つ一次独立な「転がり試験データ」を用いて、fxに対するfz、fy及びmxのクロストーク補正係数を校正することを特徴とする請求項1〜3に記載された転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法。 - 前記走行ドラムにタイヤを試験荷重で押し当てた際に得られる多分力検出器の計測値から、タイヤを試験荷重と異なる荷重で押し当てた際に得られる多分力検出器の計測値を差し引いた「差分荷重」を求め、
求められた「差分荷重」を「転がり試験データ」とし、クロストーク補正係数の校正を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の転がり抵抗試験機に備えられた多分力検出器の校正方法。
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