JP2012136434A - 耐硫酸塩セメント - Google Patents

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Abstract

【課題】高アルミナ高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントの混合物である、高炉スラグセメントで製造したコンクリートは、長期間、硫酸塩が残留している土壌と触れていると、エトリンガイト生成により膨張する。この結果、コンクリート構造体の破壊等の問題が起きている。この問題を解決するために、硫酸塩起因の膨張が起きづらい高炉スラグセメントが求められていた。
【解決手段】アルミナ比率が12〜17.5質量%の高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主体とする混合セメントにおいて、高炉スラグ微粉末の混合比率を10〜60質量%として、かつ、比表面積が7,000cm2/g以上である石膏をSO3質量換算で2〜4質量%の比率で混合する。この混合セメントを耐硫酸塩コンクリートの原料として使用する。
【選択図】図2

Description

本発明は、硫酸塩に耐久性のある、ポルトランドセメントと高アルミナの高炉スラグ微粉末の混合物を主成分とするセメントであって、耐硫酸塩性能を有するものに関する。更に、低カルシウムアルミネートのポルトランドセメントと高アルミナ高炉スラグ微粉末を用いて製造する、高硫酸塩耐久性の混合セメントにも関する。これらのセメントを適用できる構造物は、例えば、硫酸塩を含む土壌に施工される構造物のコンクリートやモルタル、海水からの硫酸イオンの侵入が問題となる構造物のコンクリートやモルタル、下水処理場の処理水等の硫酸イオンを有する水に触れる構造物のコンクリートやモルタルなどである。
ポルトランドセメントや高炉スラグセメントなどのセメントは、土壌強化剤、土木構造物や建築等のセメントコンクリートに広く用いられている。セメントの利点としては、セメントと骨材との混合物を水とともに混合したモルタルや生コンクリートを型枠内などに流し込むことにより、色々な形状の構造体を製造できること、圧縮強度の高いコンクリート構造物を製造できることなどである。また、大量に存在する石灰石や粘土を焼成して製造したり、高炉スラグやフライアッシュなどの他産業の副産物も混合して使用できることから、安価に大量供給できる利点がある。この利点により、セメントは最も大量に使用される工業製品の一つとなっている。
セメントのうち、高炉スラグセメントはガラス化率の高い高炉スラグ(水砕高炉スラグ)を微粉砕したもの(高炉スラグ微粉末、GGBFS(Ground Granulated Blast Furnace Slag))の単体もしくは高炉スラグ微粉末とポルトランドセメント等との混合物である。水砕高炉スラグは1,300〜1,500℃で溶融状態にある高炉スラグを水冷することにより急速冷却して製造したガラス質を多く含む粒状物である。この水砕高炉スラグを粉砕ミルで、比表面積3,000cm2/g以上、高活性の製品では4,000〜6,000cm2/gに粉砕した高炉スラグ微粉末がセメント原料となる。なお、高炉スラグは製鉄高炉で銑鉄を生産する際に副産物として生成する多成分系の無機物であり、一般的には、SiO2を30〜35質量%、CaOを40〜45質量%、MgOを2〜8質量%、また、Al2O3を6〜18質量%含むものであり、また微量成分として、TiO2、CaS、FeOなどを含む。水砕高炉スラグのガラス化率は、95%以上であると、性能の良い高炉スラグセメントを製造できる。
水がアルカリ性であると、高炉スラグ微粉末に含まれるCaOとAl2O3は粉体から水中に溶出して水和反応を起こして、セメント構造体の固化に寄与する。しかし、水が中性又は酸性の条件では、高炉スラグ微粉末の凝結反応は極めて遅いため、特殊な場合を除いて、ポルトランドセメントなどの強アルカリのセメントと高炉スラグ微粉末を混合した混合セメントとされたものを使用する。一般的に、高炉スラグ微粉末を30質量%以下の比率で含むセメントは、混合されるセメントとほぼ同等の機能を持つ。つまり、これで製造したセメント固化体の初期強度や最終強度は混同されるセメントとほぼ同等である。この混合セメントは、建築・土木でのポルトランドセメントの置き換え需要等に用途に用いることができる。また、高炉スラグ微粉末を30〜70質量%含むセメントは、セメント固化体の初期凝結が遅いものの、最終強度が高いことや、発熱量が低いことなどの特徴を有することから、大型構造物や土木用途に用いられる。このように、セメントの用途に従って、高炉スラグ微粉末の混合率を変化させる。また、高炉スラグセメントは、耐海水性が高く、また、アルカリ骨材反応抑制効果等もあり、種々の悪環境での耐久性が強いものであることから、消波ブロックや橋脚コンクリートなどにも用いられる。
なお、高炉スラグには、高アルミナ品(Al2O3:10%以下)と高アルミナ品(Al2O3:10%以上)とがある。高アルミナの高炉スラグ微粉末は、コンクリートが固化する際に水和物を生成するアルミニウムイオンの多く放出する。この結果、コンクリートやモルタルの強度がより高くなるため、高アルミナ高炉スラグを原料とする高炉スラグ微粉末からは、良質の高炉スラグセメントが製造できる。
このように、高アルミナの高炉スラグ微粉末を用いた高炉スラグセメントは、セメント固化体の最終強度が高い特徴があることから、これは優秀な材質である。しかし、主として高アルミナの高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントからなるセメントでは、硫酸塩を含む土壌において、硫酸イオンの影響により固化後に、数年から十数年の長期間をかけて膨張する場合がある。これは、高炉スラグ中アルミナからアルミニウムイオンが、また、高炉スラグとポルトランドセメントに含まれる石灰分からカルシウムイオンが溶出して、これが硫酸イオンと反応して、硫酸塩を作り、最終的にエトリンガイトを形成する。このエトリンガイトに、更に溶出してきたアルミニウムイオンが反応して、アルミニウム・カルシウムのモノサルフェート(モノサルフェート塩)を形成する。このコンクリートが固化した後に、更に硫酸イオンが浸透してくると、モノサルフェート塩と硫酸イオンが反応して、再度エトリンガイトが生成する。この際に、これが容積膨張することから、セメントコンクリートが膨張し、ひどい場合は、コンクリートが膨張して構造物が破壊される。なお、硫酸塩土壌は、日本においては、火山近隣地区や一部の海岸地区に多く、また、外国では、中東や北米西海岸などの乾燥地帯に多い。これらの土壌中には、土壌中に硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等が残留しており、この硫酸塩のセメントコンクリート侵食の影響により、土壌に接するセメントコンクリート膨張劣化問題が起きやすい。
この硫酸塩膨張によるコンクリート構造物の損傷問題の解決には、高炉スラグセメントに硫酸塩膨張に強い低カルシウムアルミネートのポルトランドセメントを混合して、これを使用している。 また、特に硫酸塩の影響の大きい用途には、更に高アルミナの高炉スラグ微粉末の混合比率を60質量%以上、望ましくは70質量%以上とする場合がある。この対応の考え方の原理は、ポルトランドセメント比率が低下して、ポルトランドセメントのカルシウムイオン溶出が減少することから、アルミニウムイオンとカルシウムイオンのバランスが変化して、エトリンガイト生成に必要なカルシウムイオンが不足する状態を作って、エトリンガイト生成を防止できる。
特開平8−12387号公報 特開2005−35877号公報 特開2004−59396号公報
高アルミナの高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主な原料とした混合セメントでは、硫酸塩膨張を防止するために、種々の対策が行われていた。例えば、低アルミナのポルトランドセメントとの混合セメントで、高炉スラグ微粉末の混合比率を60質量%以上、望ましくは70質量%以上にする対応では、ポルトランドセメント単独の場合よりも、硫酸塩環境でのコンクリート膨張を抑制できたものの、コンクリート初期凝結が遅かった。この結果、初期凝結が遅れても良い構造物である、ダムや土手などの一部の土木用途しか用いることができてこなかった。従って、コンクリート製のパネルやトンネルセグメントの製造や建築基礎用のコンクリート用途への適用ができない問題があった。
また、硫酸塩起因のコンクリート膨張を抑制する方法としては、例えば特開平8−12387号公報に記載されているように、高炉スラグ微粉末から初期溶出するアルミニウムイオンと反応する硫酸イオンを予め生コンクリート中に入れることが行われていた。この方法では、エトリンガイトを早い時期、つまりコンクリート強度が発現する前、に形成することで、コンクリート固化後のエトリンガイト生成を少なくする対応方法があった。具体的には、高炉スラグセメントに多量の石膏(CaSO4、無水結晶と水和結晶の場合がある)を添加することが知れていた。この方法では、高炉スラグセメントに石膏を添加することで、硫酸塩環境下での膨張を抑制することが行われていた。
しかし、高炉スラグ微粉末を10〜60質量%含む高炉スラグセメントにおいては、硫酸塩耐久性を高めるためには、最も硫酸塩膨張抑制効果が大きいポルトランドセメントと混合したセメントの場合であっても、全セメント量に対する石膏の添加量をSO3量換算で4質量%以上添加する必要があった。しかし、石膏から溶出する硫酸イオンは、また、セメント凝結を遅延させる効果もあるため、石膏添加量を増加させると、コンクリートの極初期(1〜3日以内)の凝結が遅くなる問題があった。この結果、早期に凝結する必要のある用途である建築基礎やコンクリート製パネルやトンネルセグメントなどへの適用が難しかった。また、石膏を大量に添加したセメントで製造したコンクリートでは、最終強度が低下する問題もあった。この効果を抑制するためには、SO3量換算で4質量%程度以下の条件で、石膏を添加する必要があった。つまり、従来技術では、高アルミナの高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントとの混合セメントのコンクリート凝結速度の条件と硫酸塩膨張問題を同時に解決する方法がなかった。
また、硫酸イオンが多く存在する環境下で、更に酸性の環境での耐久性の高いコンクリートの製造方法として、例えば特開2005−35877号公報や特開2004−59396号公報に記載されているように、セメントに加えて、100ミクロン以下の粒径の高炉スラグ粉、製鋼スラグ粉等、及び、ガラス化率10%以下のスラグ骨材を添加することが記載されている。しかしながら、この方法においては、コンクリート施工時の原料配合により、コンクリートの耐硫酸性を向上するものであり、セメントそのものの耐硫酸塩性能を向上させるものではなかった。従って、この方法においては、一般骨材しか手に入らない場所や、高強度の骨材を使用する必要のある構造物への適用が難しいものであった。
高炉スラグを高炉スラグセメントの原料として使用することにより、鉄鋼生産で発生する副産物である高炉スラグを付加価値の高い工業原料とすることができる。このことにより、資源の有効利用や省エネルギーが可能となる。しかし、この用途を拡大するためには、高アルミナの高炉スラグ微粉末を用いた高炉スラグセメントの硫酸塩土壌での耐久性を高める必要があったが、この目的とセメントの凝結機能の両方の基準を満足する従来技術はなかった。従って、これらの従来技術の欠点を克服するために、高い耐硫酸塩性能と従来セメントと同等の凝結機能の両者を有する高炉スラグセメントの製造技術が求められていた。
本発明は、以上に記載されているセメントの技術的な課題を解決するためになされたものであり、その技術の詳細は(1)〜(9)に記載される通りである。
(1)高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主体とする混合セメントにおいて、アルミナ含有比率が12〜17.5質量%の高炉スラグ微粉末の混合比率を10〜60質量%とし、かつ、当該混合セメントに、比表面積が7,000cm2/g以上である石膏がSO3質量換算で2〜4質量%混合されていることを特徴とする耐硫酸塩セメント。
(2)高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主体とする混合セメントにおいて、アルミナ含有比率が12〜17.5質量%の高炉スラグ微粉末の混合比率を10〜60質量%とし、かつ、当該混合セメントに、比表面積が7,000cm2/g以上である石膏がSO3質量換算で4質量%以下、かつ、石膏比表面積(cm2/g)とSO3比率の積で計算される値(単位:cm2/g・%SO3)がセメント混合物に対して15000cm2/g・%SO3以上である条件で、石膏が混合されていることを特徴とする耐硫酸塩セメント。
(3)高炉スラグ微粉末の含有成分を用いて計算される塩基度B(=(CaO質量%+Al2O3質量%+MgO質量%)/(SiO2質量%))が1.7〜2.0であり、かつ、その比表面積(S)が3,500〜6,000cm2/gであることを特徴とする前記(1)又は(2)のいずれかに記載の耐硫酸塩セメント。
(4)混合されるポルトランドセメントの結晶構造物の比率として、カルシウムアルミネート含有率を8質量%以下であり、かつ、カルシウムアルミネートとトリカルシウムシリケートの合計を58質量%以下としてあることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の耐硫酸塩セメント。
(5)混合されるポルトランドセメントのカルシウムアルミネート含有率が5質量%以下で、かつ、カルシウムアルミネートの質量の2倍とカルシウムアルミネート・フェライトの質量の合計が20質量%以下の含有率であることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の耐硫酸塩セメント。
(6)比表面積が3,500〜4400cm2/gであって、アルミナ含有率が12〜17.5質量%であり、かつ、塩基度Bが1.76〜2.0の高炉スラグ微粉末、及び、カルシウムアルミネート含有率が5質量%以下で、かつ、カルシウムアルミネートの質量の2倍とカルシウムアルミネート・フェライトの質量の合計が20質量%以下の含有率のポルトランドセメントを原料として用い、当該高炉スラグ微粉末と当該ポルトランドセメントの混合物の質量合計を100とした際の、当該高炉スラグ微粉末の比率を10〜60質量%とし、当該混合物に7000cm2/g以上の比表面積の石膏が2〜4質量%(SO3換算)の比率で添加されていることを特徴とする前記(4)記載の耐硫酸塩セメント。
(7)高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主体とする混合セメントに、2〜5質量%の炭酸カルシウム粉を添加してなることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の耐硫酸塩セメント。
本発明による耐硫酸塩セメントを用いて、コンクリート構造物を製造することで、硫酸塩の残留する土壌や硫酸イオンを有する水に接する条件においても、このコンクリート構造物の異常膨張を防止することができる。本発明の耐硫酸塩セメントを適用すると膨張抑制効果を発揮できるコンクリート構造物の主な例として、建築基礎コンクリート、道路構造物、橋梁基礎、トンネルセグメント、河川や海岸の土手の法面、コンクリート製の建築基礎パイル、トンネル内や斜面の崩落対策の固化用モルタルやコンクリートなどがある。このように、本発明の耐硫酸塩セメントは、硫酸塩含有土壌や硫酸イオン含有水に接するコンクリート構造物のほとんどに適用できる。
25質量%高炉スラグ微粉末を含むセメント混合品に、5,000〜26,000cm2/gの石膏を3質量%添加したモルタルの耐硫酸塩性能試験を行った結果を示す図である。この実験では、モルタルバーを26週間にわたって硫酸ナトリウム水溶液に浸漬させた際のモルタルバー膨張を測定した。 高耐硫酸塩性能セメントの単独品、従来法の高炉スラグセメント、及び、本発明のセメント混合品を硫酸ナトリウム水溶液中に浸漬した際の膨張率の経時変化を測定した結果を示すものである。
本発明の耐硫酸塩セメントに用いる高アルミナの水砕高炉スラグは、石灰分(CaO)が38〜45質量%、シリカ分(SiO2)が30〜35質量%、アルミナ(Al2O3)が12〜17.5質量%のものである。また、これはマグネシア(MgO)を3〜8質量%と少量のTiO2、FeO、CaS等の無機物質を含む。1,300〜1,500℃の溶融状態にある、この高炉スラグを水中に投入して、ガラス化率が95%以上の粒状スラグ(水砕高炉スラグ)を得る。水砕高炉スラグは平均粒子径が0.5〜3mm程度の粒状の物質である。水砕高炉スラグのガラス化率が高いほど、セメントとしての反応活性が高いことから、本発明の耐硫酸塩セメントの原料には、ガラス化率が95%以上、望ましくは98%以上のものであると、より効果が大きい。
本発明を適用する高炉スラグ微粉末の化学成分の範囲は、まずアルミナが12〜17.5質量%である。この条件のものとする理由は、この範囲のアルミナ含有率の高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントの混合品では、凝結初期に溶出してきたアルミニウムイオンとカルシウムイオンに水中の硫酸イオンが反応して、コンクリート中にエトリンガイトを形成する。その後に、更にアルミニウムイオンが溶出して、エトリンガイトがモノサルフェートのアルミニウム・カルシウム塩(モノサルフェート塩)となる。固化後に長期間かけて、このモノサルフェート塩に硫酸イオンが反応して、再度エトリンガイトが生成する際に、水和物膨張が起きてセメント固化体が膨張する。この結果として、コンクリートやモルタルの硫酸塩膨張問題が起きる。ところが一方では、この成分の高炉スラグ微粉末は、アルミナの水和固化反応への寄与があり、コンクリートやモルタルの強度が高い利点があるため、硫酸塩膨張問題を解決できれば、優秀なセメントの原料となることから、本発明の対象となる高炉スラグ微粉末をアルミナ含有率12〜17.5質量%とする。
この水砕高炉スラグを粉砕ミルで、高炉スラグ微粉末にする。粉砕ミルはいずれの型式のものでも良いが、水平面で回転するテーブルと複数のローラーから構成される縦型ミルや、ボールミル、ロッドミル、振動ミルなどで粉砕処理することが良い。この高炉スラグ微粉末は、比表面積が3,500cm2/g以上であることが、本発明の条件である。比表面積が小さすぎると、高炉スラグ微粉末の反応活性が低下して、コンクリート強度が低くなるため、本発明では、3,500cm2/g以上の比表面積の高炉スラグ微粉末を使用する。また、一方、高炉スラグ微粉末の比表面積が高すぎると、凝結初期にアルミニウムイオンの溶出量が多すぎて、コンクリート固化後のエトリンガイトからのモノサルフェート塩生成が多く起きる場合がある。従って、比表面積を6,000cm2/g程度以下とすると本発明の効果が大きくなる。なお、本明細書に記載されている比表面積とは、カラム内の粉体に空気を透過させて空気流量と圧力差を測定して、比表面積を求める方法、いわゆるブレーン法、によるものである。
この高炉スラグ微粉末に、ポルトランドセメントと石膏粉を混合して、混合セメント(高炉スラグセメント)を製造する。ポルトランドセメントの結晶構成物の配合は、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2(C2S))が10〜40質量%、トリカルシウムシリケート(3CaO・SiO2(C3S))が40〜70質量%、カルシウムアルミネート(3CaO・Al2O3(C3A))が11質量%以下、カルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al2O3・Fe2O3(C4AF))が6〜18質量%である。また、微量成分として、酸化マンガン、酸化燐等を含む。このポルトランドセメントのうち、本発明において、高い耐硫酸塩性能が有るポルトランドセメントは、C3A含有率が8質量%以下であり、かつ、C3AとC3Sの合計が58質量%以下のものを用いる。また、特に高い耐硫酸塩性能を求められる場合のポルトランドセメントとして、C3A含有率が5質量%以下であり、かつ、C3Aの質量の2倍とC4AFの質量の合計が20質量%以下のものを用いる。これらのポルトランドセメントのブレーン値は3000〜4000cm2/g程度である。
本発明を実施するために、高炉スラグ微粉末そのものが適切に強度発現できる性能を有することが良い。そのためには、高炉スラグ微粉末の含有成分の関係が塩基度B(=(CaO質量%+Al2O3質量%+MgO質量%)/(SiO2質量%)))が1.7以上、望ましくは1.7〜2.0、であることが望ましい。この塩基度Bは、高炉スラグ微粉末の活性度に影響を与える因子である。水和反応を起こす主たる成分である石灰分とアルミナ分と、これらの成分を固定させて、イオン溶出を防止する組成であるシリカ分の比率を適正にすることで、コンクリート強度発現の高い高炉スラグ微粉末の条件を定めるものである。なお、酸化マグネシウムはスラグの塩基性に影響を与え、これが多く含まれる場合は、水和反応活性が高い。
セメント混合品に対する高炉スラグ微粉末の混合比率は10〜60質量%とする。なお、ここで、ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末のみの混合物をセメント混合品と定義する。高炉スラグ微粉末の比率を10質量%以上と規定する理由は、10質量%以下であれば、セメント混合品の耐硫酸塩性能は、混合されているポルトランドセメントとほぼ同等であり、本発明の技術を使用する必要がないからである。また、高炉スラグ微粉末の比率を60質量%以下と規定する理由は、この比率では、凝結後の石灰分不足が起きてモノサルフェート塩の生成が少なく、セメント混合品の耐硫酸塩性能が混合されたポルトランドセメントと同等かより良い。従って、この場合もまた、本発明の技術を使用する必要がないことが理由である。
前記の現象を確認するために、本発明者らは下記の実験を行った。高アルミナ高炉スラグ微粉末(
の表1記載のGGBFS1)と高耐硫酸塩ポルトランドセメント(
の表2記載のPC3)とのセメント混合品において、混合比率を変えた際の耐硫酸塩性能を調査した。この図は、モルタルバーを26週間、4%硫酸ナトリウム水溶液中に浸漬させた後に、長さ膨張を測定した結果をグラフにしたものである。なお、このセメント混合品には、5,100cm2/gの比表面積の無水石膏をSO3換算で2質量%混合した。GGBFS1の混合比率が10質量%以下である場合は、膨張率の増加はほとんどなかった。つまり、この混合比率では、高炉スラグ微粉末中アルミナによるエトリンガイト生成が少ないことから、本発明を適用する効果が小さい。GGBFS1の混合比率を60質量%以上であると、ポルトランドセメント比率が低下して、ポルトランドセメント中からのカルシウムイオン溶出量が減少することから、凝結後に、コンクリート内にて、エトリンガイト生成に必要なカルシウムイオンが不足する。また、コンクリート中にアルミニウムを含む水和物が多く形成されていることから、硫酸イオンこれらの水和物とも反応することから、モノサルフェート塩からエトリンガイトへの反応が遅い。以上の理由から、従って、本発明の高炉スラグ微粉末の混合比率は10〜60質量%の範囲で技術的な意味を持つ。
本発明の対象範囲である10〜60質量%の高炉スラグ微粉末比率のセメント混合品に、石膏粉体を混合する。石膏としては、CaSO4の無水和物と水和物を用いることができる。つまり、無水石膏、半水石膏、二水石膏などを用いる。ただし、溶解速度が大きいII型無水石膏が50%以上あることが更に望ましい条件である。本発明では、石膏の比表面積を7,000cm2/g以上、望ましくは7,000〜24,000cm2/gとする。混合比率は、SO3換算で2〜4質量%とする。なお、通常、初期凝結を遅らせる目的でセメントに添加される石膏の比表面積は3,000〜5,500cm2/g程度であり、本発明に用いる石膏よりも粗いものである。
セメント混合品に添加する石膏の比表面積を大きくする理由は以下の通りである。本発明者らは、石膏添加量の影響調査の実験を行い、以下の事実を解明した。なお、セメント混合品は、高耐硫酸塩ポルトランドセメント(PC3)と高炉スラグ微粉末(GGBFS1)との混合物を使用し、比表面積5,200cm2/gの二水石膏を用いた。
石膏添加比率を増やせば、硫酸ナトリウム水溶液中でのモルタルバーの膨張率が低減された。つまり、耐硫酸塩性能に寄与する固化後のエトリンガイト再生成の防止効果は、石膏添加量、つまりSO4イオン溶出量、に影響されることが見出された。なお、この実験での高炉スラグ微粉末混合比率は25質量%であった。4%硫酸ナトリウム水溶液中のモルタルバー浸漬時での26週間後膨張率では、石膏添加率がSO3換算で1〜2質量%であれば、0.3%以上の膨張率となり、2.5質量%であれば、0.2%以上の膨張率であった。また、SO3換算で3〜4質量%の添加率であれば、0.1〜0.2%程度と改善されるものの、一般的に要求される0.1%以下とならなかった。一方、添加率4質量%以上では、0.05〜0.1%程度の膨張率にとどまり、元々の高耐硫酸塩ポルトランドセメントの膨張率(0.05%)に近い値となった。つまり、高耐硫酸塩セメントと高アルミナ高炉スラグ微粉末とのセメント混合品において、硫酸塩膨張の問題が起きづらい条件は、SO3換算の石膏添加4質量%以上で達成できることが判明した。このように、石膏の硫酸塩膨張抑制の効果は顕著であった。
上記と同一のセメント混合品で、モルタル凝結と固化の実験を行った結果では、SO3換算で4質量%未満の石膏添加率である場合には、6時間以内の過剰なモルタル凝結が見られず、正常な生コンクリートの初期凝結防止効果が得られた。さらに、28日後には、約50N/mm2の十分なモルタル圧縮強度となった。いずれの結果も一般的なポルトランドセメントのモルタルとほぼ同等の結果であった。しかしながら、SO3換算の石膏添加4〜6質量%では、石膏の効果が十分で生コンクリートの流動性が低下することは認められなかったが、セメントと石膏の反応が過剰となり、初期凝結が遅れて施工後1〜3日後のコンクリート強度が低下する問題があった。従って、ただ単に石膏粉添加比率を増加させることでは、耐硫酸塩性能とコンクリート強度とを両立することができないことが確認された。
そこで、本発明者らは、石膏粉の比表面積を変える実験を行って、モルタルの耐硫酸塩性能と初期強度を調査した。この実験では、先の実験と同じ配合のセメント混合品を使用して、これに、5,000〜26,000cm2/gの石膏を3質量%添加した実験を行った。その結果を図1に記載する。高アルミナ高炉スラグ微粉末と高耐硫酸塩セメントのセメント混合品においては、7,000cm2/gの石膏を3質量%の比率で添加した実験では、従来粉末度(約5,000cm2/g)の石膏を添加されているセメント混合品に対し、硫酸ナトリウム水溶液中のモルタルバー膨張が少なくなる。26週間の硫酸ナトリウム水溶液への浸漬実験では、膨張率が0.08%となった。(判定基準は0.1%以下)また、12,500cm2/gと21,000cm2/gの石膏を添加したセメント混合品での26週間の硫酸ナトリウム水溶液への浸漬実験では、膨張率が0.05%程度に止まった。このように、7,000cm2/g以上の比表面積の石膏を添加したセメント混合品では、耐硫酸塩性能は向上する。一方、7,000cm2/g以上の石膏を添加した場合は、モルタル初期強度(1〜7日後)が改善された。ただし、石膏の比表面積が24,000cm2/g以上であると、モルタル最終強度の低下やや低下する、程度の小さい問題が起きた。従って、本発明においては、セメントに添加する石膏の比表面積を7,000cm2/gが条件であり、更に望ましくは7,000〜24,000cm2/gとする。
高アルミナ高炉スラグ微粉末(GGBFS1)と高耐硫酸塩セメント(PC3)を25対75で混合したセメント混合品に7,500、12,500、21,000cm2/gの比表面積の石膏を添加した耐硫酸塩性能と初期強度の調査を行った。この実験では、各々の石膏の添加比率を1〜6質量%(SO3換算)の範囲で変化させた。この結果、いずれの石膏粉の場合も、添加率が2質量%(SO3換算)以下では、耐硫酸塩性能の向上効果は小さかった。2質量%の場合では、いずれの石膏粉の場合でも26週間の硫酸ナトリウム水溶液浸漬時の膨張率が0.1%以下となり、満足できる耐硫酸塩成績となった。比表面積を高くすることで、硫酸塩膨張を抑制できる石膏添加比率が3から2質量%(SO3換算)に低減した。また、2〜6質量%(SO3換算)の石膏添加率では、いずれも26週間の硫酸ナトリウム水溶液浸漬時の膨張率が0.09%以下と良好であった。しかし、石膏添加率が4質量%(SO3換算)以上である場合は、生コンクリートの流動性が低下することが確認された。従って、本発明において、耐硫酸塩性能と生コンクリート流動性の両者を満足できる条件は、石膏添加比率で2〜4質量%(SO3換算)である。
本発明のセメント混合品の水和物を観察すると、水と混合後に、微細な石膏の溶解が迅速に行われたため、凝結初期の硫酸イオンがエトリンガイトからモノサルフェート塩に転換することを防止するに十分な量の硫酸イオンが存在することが判明した。この結果、初期に生成したエトリンガイトに、更に溶解してきたアルミニウムイオンが加わっても、それと十分に反応できる硫酸イオンが水中にあるため、このアルミニウムイオンはエトリンガイトになり、モノサルフェート塩が生成しづらい。従って、硫酸塩膨張のメカニズムである、凝結後にモノサルフェート塩がエトリンガイトになる量が減少する。これが、微細な石膏を用いると硫酸塩膨張が抑制できる理由である。
従って、凝結初期の硫酸イオン供給を多くすることが重要である。このためには、この期間の石膏の溶解速度(溶解量/時間)を大きくして、絶えず硫酸イオン過剰状態とする。極初期の石膏溶解速度は、石膏と水との界面積、つまり、石膏の混合比率と比表面積の積、に影響される。そこで、本発明者らは、石膏の混合比率(SO3換算)と比表面積の積(cm2/g)にて、石膏の表面積に相当する指標を計算して、この値と耐硫酸塩性能との関係を調査したところ、この値が15000cm2/g・%SO3以上であると、ASTMの硫酸塩膨張試験での膨張率がGGBFSを混合していないセメントと本発明の範囲でGGBFSが混合されているセメント混合物でほぼ同じとなることが判明した。
また、石膏の耐硫酸塩性能向上効果をいっそう改善させる方法として、比表面積の異なる石膏を混合して使用すると、更に良い。8,000〜30,000cm2/gの比表面積の石膏(20〜80%)と3,500〜6,500cm2/gの石膏(80〜20%)を混合して使用する場合は、粒度の細かい石膏の耐硫酸塩性能向上の効果と、粒度の粗い石膏での適度な初期凝結遅延効果が、同時に得られることから、更に望ましいものである。
また、高炉スラグ微粉末の比表面積を適切な範囲にすることで、本発明の効果は大きくなる。まず、前述したように、反応活性維持のためには、高炉スラグ微粉末の比表面積が3,500cm2/g以上であることが重要である。一方、高炉スラグ微粉末の比表面積が高くとなると、凝結後の時点でも高炉スラグ微粉末からのアルミニウムイオンの溶出が多くなり、エトリンガイト生成が進むことから、本発明において、コンクリートの耐硫酸塩性能が低下する。従って、高炉スラグ微粉末の比表面積を6,000cm2/g以下することが良い。また、特に高い耐硫酸塩性能が要求される場合は、高炉スラグ微粉末の比表面積を4,400cm2/g以下することが良い。
本発明において、耐硫酸塩性能向上のためには、高炉スラグ微粉末からのアルミニウムイオン溶出量を制御する観点が重要であり、強度発現の条件が許す限り高炉スラグ微粉末の低比表面積であることが良い。従って、セメント活性度を保てる条件下で、極力、高炉スラグ微粉末の比表面積を低くすることにより、本発明の効果を大きくできる。そこで、反応活性の指標である高塩基度Bに応じて、高炉スラグ微粉末の比表面積を調整することも本発明の範囲である。本発明者らは、水砕高炉スラグ微粉末の塩基度Bと比表面積S(単位:cm2/g)の関係を調査した結果、5500-980B<S<6280-980Bの条件であれば、更に本発明の効果を大きくできることを解明した。具体的には、水砕高炉スラグの塩基度Bが1.78〜2.0の高炉スラグ微粉末場合は、比表面積を3、500〜4,400cm2/gの範囲とすると、本発明の効果は大きくなる。
この条件を満たすことと、以下の条件で原料配合することにより、極めて耐硫酸塩性能が高い高炉スラグセメントを製造できる。このためには、比表面積が3,500〜4,400cm2/gであって、アルミナ含有率が12〜17.5質量%であり、かつ、塩基度Bが1.76〜2.0の高炉スラグ微粉末を用いる。また、カルシウムアルミネート含有率が5質量%以下で、かつ、カルシウムアルミネートの質量の2倍とカルシウムアルミネート・フェライトの質量の合計が20質量%以下の含有率のポルトランドセメントを用いる。当該高炉スラグ微粉末と当該ポルトランドセメントの質量合計を100とした際の、当該高炉スラグ微粉末の比率を20〜60質量%とする。このセメント混合品に、7,000cm2/g以上の比表面積の石膏を2〜4質量%(SO3換算)の比率で添加する。この高炉スラグセメントは、高耐硫酸塩ポルトランドセメントと同様の耐硫酸塩性能を有する。また、高比表面積の石膏には、高炉スラグセメントのコンクリート初期強度を改善する効果もある。これは、コンクリート凝結初期に適切な強度のエトリンガイトを形成することが理由である。このことから、20〜60質量%の高炉スラグ微粉末の混合率であっても、通常のポルトランドセメントと同等のコンクリートの初期強度と最終強度が得られる。
本発明のセメント混合品に、1〜5質量%の炭酸カルシウム粉を添加した場合には、本発明の効果が大きくなる。この添加物により、モルタルやコンクリートの凝結初期に、いっそう多くのカルシウムイオンを水中に放出することにより、これらの強度が高くなる前に、十分なエトリンガイトを形成して、未反応のアルミニウムイオンを水中から減少させることにより、凝結後にアルミニウムイオンを減少させて、エトリンガイト生成による膨張を防止する。なお、炭酸カルシウム粉としては、2,500〜6,000cm2/g程度に粉砕した石灰石を用いることが経済的である。
本発明の高炉スラグセメントには、シリカフューム、発電所のフライアッシュや鉄鋼溶解炉のダストなどのコンクリート強度発現に寄与するセメント代替物が混在していても良い。ただし、これらを混合したセメントでは、コンクリート構造物の固化反応の遅れや最終強度低下の問題などがあることから、セメント混合品に対する、これらの物質の混合比率は25質量%以下であることが望ましい。
本発明の実施例に使用した高炉スラグ微粉末、ポルトランドセメント、及び、石膏の物性と化学成分を表1から3に示す。GGBFS1は、アルミナ13.4質量%、塩基度B1.74のものである。GGBFS2とGGBFS3は、アルミナ15.4質量%、塩基度B1.80のものであり、GGBFS2は比表面積が高く、GGBFS3は比表面積がやや低いものである。また、GGBFS4はアルミナ16.8質量%、塩基度B1.89のものである。ポルトランドセメントのPC1は、耐硫酸塩性能を配慮せずに製造された通常ポルトランドセメントであった。PC2とPC3はいずれも耐硫酸塩性能を考慮して製造されたものであり、PC2はASTMに規定されているType 2セメント同等品であり、また、PC3は更に耐硫酸塩性能の高い、ASTMに規定されているType 5 セメント同等品である。混合用の石膏は、排煙脱硫で製造された無水石膏を粉砕して、比表面積を5,200cm2/g(石膏1)、7,500cm2/g(石膏2)、12,500cm2/g(石膏3)、及び、22,000cm2/g(石膏4)であった。なお、石膏2、3、4はいずれも80質量%以上がII型無水石膏であった。特に、石膏3は95質量%がII型無水石膏であった。
Figure 2012136434
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表4及び5に示す各ポルトランドセメント単独とセメント混合品を原料とするモルタルを用い、その1週間後と4週間後の圧縮強度、及び、26週間硫酸ナトリウム水溶液中に浸漬した際のモルタルバー膨張試験(ASTMに規定される測定方法に準拠した方法)を行った。この結果を同じく表4及び5に示す。
Figure 2012136434
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例1から例3は、GGBFS1に耐硫酸塩ポルトランドセメント(CP2)を混合した結果であり、いずれも、浸漬26週間後の膨張率は0.1%以下であった。比表面積の大きい石膏を添加した結果ほど、膨張率が低い傾向にある。例4は、GGBFS1に、高耐硫酸塩ポルトランドセメント(CP3)を添加したセメントの結果であり、比較的高アルミナの高炉スラグ微粉末であっても、モルタルの硫酸塩水溶液中膨張率は小さかった。なお、例1から例4でのセメント混合物中の石膏表面積は19500〜58800cm2/g・%SO3と本発明でも良好な条件内であった。
例5から例8は、比較的高アルミナの高炉スラグ微粉末であり、かつ、比表面積が比較的小さいものを用いたセメントの例である。まず、例5に示すように、CP1と混合したセメントの場合、モルタルの硫酸塩水溶液中膨張率は、CP1単独の場合よりも改善されていた。耐硫酸塩性能の悪いポルトランドセメントの耐硫酸塩性能を改善することも可能である。また、例6から例8に示すように、耐硫酸塩性能の高いCP2とCP3との混合セメントであれば、元々のポルトランドセメント単独の場合でのモルタルの硫酸塩水溶液中膨張率と同等の水準に収まっていた。例9は、比表面積の異なる2種類の石膏を添加したセメントの場合を示すものである。このセメントでのモルタルの硫酸塩水溶液中膨張率は、非常に良好であった。
例10と例11は、高炉スラグ微粉末の比表面積を小さくして、いっそう耐硫酸塩性能を向上させた実施例である。この結果では、モルタルの硫酸塩水溶液中膨張率が極めて良かった。また、このモルタル試験体では、通常高炉スラグ微粉末の比表面積を低下させた場合に生じるモルタル初期強度(7日の結果表示)の低下はなかった。これは、高比表面積の石膏を添加したことにより、低比表面積の高炉スラグ微粉末の活性度低下を補完する効果があったことが理由である。
また、硫酸塩水溶液中への浸漬実験のモルタルバー膨張の傾向を示す参考として、高耐硫酸塩性能セメント(CP3)の単独品、従来法の高炉スラグセメント(OP3:80質量%とGGBFS2:20質量%を含むセメント混合品に、5,100cm2/gの石膏を2.5質量%(SO3)添加したもの)、及び、本発明のセメント混合品(OP3:80質量%とGGBFS2:20質量を含むセメント混合品に、12,500cm2/gの石膏を2.5質量%(SO3)添加したもの)のモルタルを硫酸ナトリウム水溶液中に26週間浸漬した際の膨張率の経時変化を図2に示す。この図に記載されるように、従来法のセメント混合品では、浸漬後約17週後から急速な膨張が認められたものの、本発明のセメント混合品では、高耐硫酸塩性能のポルトランドセメントとほぼ同等の膨張率しかなかった。また、このセメント混合品の26週後のモルタル膨張率は0.05%以下と良好であった。
本発明の耐硫酸塩セメントは、建築基礎コンクリート、道路構造物、橋梁基礎、トンネルセグメント、河川や海岸の土手の法面、コンクリート製の建築基礎パイル、トンネル内や斜面の崩落対策の固化用モルタルやコンクリートなどの、硫酸塩含有土壌や硫酸イオン含有水に接するコンクリート構造物のほとんどに適用でき、それらのコンクリート構造物の異常膨張を防止することができる。

Claims (7)

  1. 高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主体とする混合セメントにおいて、アルミナ含有比率が12〜17.5質量%の高炉スラグ微粉末の混合比率を10〜60質量%とし、かつ、当該混合セメントに、比表面積が7,000cm2/g以上である石膏がSO3質量換算で2〜4質量%混合されていることを特徴とする耐硫酸塩セメント。
  2. 高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主体とする混合セメントにおいて、アルミナ含有比率が12〜17.5質量%の高炉スラグ微粉末の混合比率を10〜60質量%とし、かつ、当該混合セメントに、比表面積が7,000cm2/g以上である石膏がSO3質量換算で4質量%以下、かつ、石膏比表面積(cm2/g)とSO3比率の積で計算される値(単位:cm2/g・%SO3)がセメント混合物に対して15000cm2/g・%SO3以上である条件で、石膏が混合されていることを特徴とする耐硫酸塩セメント。
  3. 高炉スラグ微粉末の含有成分を用いて計算される塩基度B(=(CaO質量%+Al2O3質量%+MgO質量%)/(SiO2質量%))が1.7〜2.0であり、かつ、その比表面積(S)が3,500〜6,000cm2/gであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の耐硫酸塩セメント。
  4. 混合されるポルトランドセメントの結晶構造物の比率として、カルシウムアルミネート含有率を8質量%以下であり、かつ、カルシウムアルミネートとトリカルシウムシリケートの合計を58質量%以下としてあることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の耐硫酸塩セメント。
  5. 混合されるポルトランドセメントのカルシウムアルミネート含有率が5質量%以下で、かつ、カルシウムアルミネートの質量の2倍とカルシウムアルミネート・フェライトの質量の合計が20質量%以下の含有率であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の耐硫酸塩セメント。
  6. 比表面積が3,500〜4400cm2/gであって、アルミナ含有率が12〜17.5質量%であり、かつ、塩基度Bが1.76〜2.0の高炉スラグ微粉末、及び、カルシウムアルミネート含有率が5質量%以下で、かつ、カルシウムアルミネートの質量の2倍とカルシウムアルミネート・フェライトの質量の合計が20質量%以下の含有率のポルトランドセメントを原料として用い、当該高炉スラグ微粉末と当該ポルトランドセメントの混合物の質量合計を100とした際の、当該高炉スラグ微粉末の比率を10〜60質量%とし、当該混合物に7000cm2/g以上の比表面積の石膏が2〜4質量%(SO3換算)の比率で添加されていることを特徴とする請求項4記載の耐硫酸塩セメント。
  7. 高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントを主体とする混合セメントに、2〜5質量%の炭酸カルシウム粉を添加してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐硫酸塩セメント。
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