JP2012135904A - 熱転写受像シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】離型性、耐湿・耐熱性、および印画物の画像濃度等の各性能に優れた熱転写受像シートの製造方法の提供。
【解決手段】本発明の熱転写受像シートの製造方法は、中空粒子を含んでなる水系塗布液を用いて、前記基材上に断熱層を形成する工程と、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含んでなる溶剤系溶液を、ゼラチンを実質的に含まない水系溶液中に乳化させた水系分散塗布液を用いて、前記断熱層上に受容層を形成する工程とを含んでなるものである。この製造方法により製造された熱転写受像シートは、離型性、耐湿・耐熱性、および印画物の画像濃度等の各性能に優れるものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、基材と、該基材上に、断熱層と、受容層とを有する熱転写受像シートの製造方法に関する。
従来、種々の印字方法が知られているが、その中でも熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)は、昇華性染料を色材としているため、濃度階調を自由に調節でき、中間色や階調の再現性にも優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像を形成することができる。
この熱拡散型転写方式とは、色素(昇華性染料)を含有する熱転写インクシートと熱転写受像シートとを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによってインクシートを加熱することでインクシート中の色素を受像シートに転写して画像情報の記録を行うものである。このような熱拡散型転写方式が普及するなかで、印画速度の高速化が進んでおり、従来の熱転写インクシートと熱転写受像シートを用いて従来の熱エネルギーを印画しても十分な発色濃度を得られない等の問題が生じている。
さらに、熱拡散型転写方式では、その他の種々の問題も存在している。例えば、受像シートの離型性不足に起因して、印画の際にインクシートが受像シートの受容層表面に貼り付き、印画後にインクシートを画像受容層から剥離する際に、剥離音の発生、走行不良、および画像上の剥離線の発生等の問題が生じている。
上記のような種々の問題を解決するために、熱転写受像シートの受容層を形成する塗布液については、受容層の性能や製造方法に合わせて、様々な検討がなされてきた。特に、水性の塗布液を用いることは、環境面等の問題から好ましいため、様々な方法が提案されてきた。例えば、塩化ビニル、ゼラチン、およびアミノ基またはエポキシ基を有するシリコーン化合物を含む塗布液を用いて受容層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリエステルを含む水溶性のゼラチン分散液を用いて、受容層を形成することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。なお、水性分散液の製造方法に関しては、酸変性ポリオレフィンやポリアレート樹脂を水性媒体中に分散させることが提案されている(例えば、特許文献3および4参照)。
しかしながら、今尚、離型性、耐湿・耐熱性、および印画物の画像濃度等の各性能に優れた熱転写受像シートの開発が切望されている。
特開2008−6781 特開平8−90938 特開2009−79078 特開2010−18770
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、離型性、耐湿・耐熱性、および印画物の画像濃度等の各性能に優れた熱転写受像シートの製造方法を提供することにある。特に、水系分散塗布液を用いて形成した受容層の性能を改善することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、基材上に、断熱層と、受容層とをこの順に有してなる熱転写受像シートの製造方法において、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含んでなり、かつゼラチンを実質的に含まない水系分散塗布液を用いて、受容層を形成することにより上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一態様によれば、
基材と、前記基材上に、断熱層と、受容層とをこの順に有してなる、熱転写受像シートの製造方法であって、
中空粒子を含んでなる水系塗布液を用いて、前記基材上に断熱層を形成する工程と、
溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含んでなる溶剤系溶液を、ゼラチンを実質的に含まない水系溶液中に乳化させた水系分散塗布液を用いて、前記断熱層上に受容層を形成する工程と
を含んでなる、熱転写受像シートの製造方法が提供される。
本発明の熱転写受像シートの製造方法によれば、離型性、耐湿・耐熱性、および印画物の画像濃度等の各性能に優れた熱転写受像シートを提供することができる。特に、水系分散塗布液を用いて形成した受容層の性能を改善できる。また、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂の断熱層への移行を抑制して、断熱層に含まれる中空粒子の溶剤への溶解を防止し、中空粒子の性能低下を回避することができる。したがって、断熱層と受容層の間にバリア層等の中間層を設けなくてもよくなるため、コストを改善することができる。
本発明の製造方法により製造された熱転写受像シートの一例を示す模式断面図である。
熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、基材と、該基材上に、少なくとも断熱層と、受容層とをこの順に有するものである。好ましい態様では、熱転写受像シートはその他の層をさらに有してもよい。
本発明の一態様によれば、基材上に、断熱層と、受容層とをこの順に有してなる熱転写受像シートが提供される。具体的に、本発明による熱転写受像シートの一例の模式断面図を図1に示す。図1に示される熱転写受像シート10は、基材11と、該基材11上に、断熱層12と、受容層13とをこの順に有してなるものである。
基材
本発明における基材は、受容層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。
このような基材の材料としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられ、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムも使用でき、特に限定されない。また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース合成紙とプラスチックフィルムとの合成紙が挙げられる。本発明においては、市販の基材を用いることもでき、例えば、RCペーパー(三菱製紙(株)製)等が好ましい。なお、基材の厚みは、熱転写受像シートに要求される強度や耐熱性等や、基材として採用した素材の材質に応じて、適宜変更可能であり、具体的に、基材の厚みは、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
断熱層
本発明における断熱層は、熱転写による画像形成時に加えられた熱が、基材等への伝熱によって損失されることを防止できる断熱性やクッション性を有するものである。本発明における断熱層は、中空粒子を含むものであり、親水性バインダーやその他の添加剤をさらに含んでもよい。断熱層は、中空粒子を含むことにより、クッション性を備えることができる。また、好ましい態様によれば、断熱層は2層以上からなるものであってもよい。このように断熱層を2層以上設けることで、印画品質に影響する断熱性およびクッション性と、基材への密着性とを改善することができる。ここで、断熱層のクッション性の程度は、熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができるものである。なお、断熱層のクッション性の程度についても、例えば、断熱層の厚みを変更することにより任意の範囲に調整することができる。断熱層の厚みは、断熱性、クッション性等を所望の程度に調整できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。また、断熱層の密度は、例えば0.1g/cm〜0.8g/cmの範囲内、なかでも0.2g/cm〜0.7g/cmの範囲内であることが好ましい。
中空粒子
本発明で用いる中空粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μmである。中空粒子の体積平均粒径が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を断熱層に与えることができる。また、中空粒子の平均中空率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30〜80%である。中空粒子の平均中空率が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を断熱層に与えることができる。さらに、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。本発明においては、市販の中空粒子を用いることもでき、例えば、HP−1055、HP−91、およびローペイクSE(ロームアンドハース(株)製)、ならびにMH−5055(日本ゼオン)等が好ましい。
受容層
本発明における受容層は、熱転写による画像形成時に熱転写インクシートから転写される昇華性染料を受容するとともに、受容した昇華性染料を受容層に保持することで、受容層の面に画像を形成かつ維持することができる。本発明における受容層は、水系分散塗布液により形成されるものである。
水系分散塗布液
受容層の形成に用いる水系分散塗布液は、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を、従来公知の方法によって分散して調製することができる。例えば、分散剤を含む水系溶液と、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含む溶剤系溶液とをホモジナイザーなどの方法によって分散し調製することが望ましい。なお、本発明において、「水系溶液」とは、水を媒体とする溶液であり、「溶剤系溶液」とは、有機溶媒を媒体とする溶液である。水系溶液と、溶剤系溶液とを別個に調製した後に混合し、ホモジナイザーなどを用いて分散することで、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含む分散体を形成することができる。分散体は、実質的に下記のゼラチンを含まないのがよく、適宜、添加剤をさらに包含することもできる。また、本発明においては、受容層は、ゼラチンを実質的に含まないのがよい。本発明において、「実質的に含まない」とは、受容層の性質を改質するために、意図的にゼラチンを添加していないことを意味するものである。例えば、ゼラチンの含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂の固形分質量に対して、1質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下である。受容層に含まれるゼラチンの量を上記程度まで低減することで、印画時の画像濃度を向上することができる。
分散剤
水系溶液の調製に用いる分散剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。画像の「にじみ」を防止する観点からは、スルホン酸型アニオン界面活性剤であることがさらに好ましい。低分子の界面活性剤は分散性が良好であり、その中でも低分子のアニオン性界面活性剤が特に良好である。また、高分子の界面活性剤やHLBの高いノニオン性界面活性剤は分散液の安定性が良好である。低分子と高分子の界面活性剤と併用することでさらに安定性を上げることができる。例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩、テトラデシルベンゼンスルフォン酸Na塩、ジ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸Na塩、トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸Na塩、モノナフタレンスルフォン酸Na塩、p−ノニルフェノキシプロピルスルフォン酸Na塩、ドデシルスルフォン酸Na塩、パーフルオロオクタンスルフォン酸Na塩、ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩、ジイソオクチルスルホコハク酸Na塩、ジ(1,1,7−トリヒドロ−パーフルオロヘプチル)スルホコハク酸Na塩、ステアリン酸Na塩、2−メチル−ヘキサノールスルフォン酸Na塩、ヘプタデセニルベンズイミダゾールスルフォン酸Na塩、N−メチルオレイルタウライドNa塩、N−パーフルオロオクチルスルフォニル−N−プロピルグリシンK塩、ソルビタンラウリルモノエステル、アルキルナフタレンスルホン酸Na、コハク酸ジオクチルスルホン酸Na、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na等が上げられる。このような分散剤を用いることで、ポリ塩化ビニル系樹脂と下記の溶剤系離型剤とを含む水系分散塗布液が安定な状態をとることができる。本発明においては、市販の分散剤を用いることもでき、例えば、第一工業製薬(株)製のハイテノール、ネオゲンLA−10、ネオゲンLA−12、PSA−C、エオコールSW、ハイテノールLA−10、プライサーフDB−01、エパン485、エパン785、ADEKA(株)のアデカトールLA−50、アデカプルロニックF−68、アデカプルロニックF−88、アデカプルロニックF−108、アデカホープYES−25等が好ましい。
有機溶媒
溶剤系溶液の調製に用いる有機溶媒としては、溶剤系樹脂とシリコーンを溶解させるものであれば良く、酢酸エチル、トルエンやベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。このような有機溶媒を用いることで、分散性を上げ、また水との適度な分散状態を維持する事ができる。これによって受容層用の水系分散塗布液を得ることができる。本発明においては、分散後、または分散と同時に、加熱および/または減圧などの手段によって有機溶剤を除去する工程を入れても良い。
ポリ塩化ビニル系樹脂
本発明に用いる樹脂はポリ塩化ビニル系樹脂が用いられ、一般的な樹脂と共重合してもよく、酢酸ビニルとの共重合体(塩酢ビ系樹脂)が好ましい。本発明において、「ポリ塩化ビニル系樹脂」とは、全体の50%以上の組成比(モル比)で塩化ビニルを含むものがよい。塩化ビニルと酢酸ビニルのモル比、重合度、および分子量等により、溶解性、接着性、および耐薬品性等の種々の性質を変化させることができる。水系分散体の調製にポリ塩化ビニル系樹脂を用いることで、ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含む分散体が安定な状態をとりながら、塗布後に良好な印画適性を得ることができる。本発明においては、市販の塩酢ビ系樹脂を用いることもでき、例えば、日信化学工業(株)製のソルバインC、ソルバインCL、ソルバインCH、ソルバインCN、ソルバインCNL、ソルバインA、ソルバインAL、ソルバインTA2、ソルバインTA3等が好ましい。
溶剤系離型剤
溶剤系溶液の調製に用いる溶剤系離型剤としては、溶剤系シリコーンやフッ素系界面活性剤を挙げることができ、特に溶剤系シリコーンが好ましい。溶剤系シリコーンとしては、ジメチルシリコーン等の各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン、アミド変性シリコーン等を用い、これらを混合して用いたり、各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。また、2種以上の離型剤を混合して用いてもよい。このような離型剤を含む水系分散塗布液を用いて受容層を形成することで、印画時に熱転写インクシートと熱転写受像シートの受容層との融着および印画感度低下などの問題を改善することができる。本発明においては、市販の溶剤系離型剤を用いることもでき、例えば、信越化学工業株式会社製のX−22−163、X−22−173D、X−22−343、X−22−2000、X−22−3000T、KF−101、KF−102、KF−1001、KF−1002、KP―1800U、X−22−4015、X−22−1660B、X−22−160ASD、KF−410等が好ましい。
他の層
本発明においては、断熱層と受容層以外に他の層を設けてもよい。他の層を設けることで、耐溶剤、高温/高湿下での画像保存時の染料拡散バリア、層間接着、白色付与、基材のギラつき感/ムラの隠蔽、および帯電防止等の機能を付加することができる。他の層の形成手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、他の層に、蛍光増白剤、無機微粒子、中空微粒子、および導電性フィラーやポリアニリンスルホン酸のような有機導電材等を添加する方法が挙げられる。
親水性バインダー
本発明の好ましい態様によれば、断熱層や他の層の形成に用いる水系溶液には、親水性バインダーを用いることができる。親水性バインダーとしては、ゼラチンおよびその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸およびその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、ならびにアラビアゴムを挙げることができ、特にゼラチンが好ましい。このような親水性バインダーを用いることで、断熱層や他の層との層間接着性を向上させることができる。特に、水系塗布および同時重層塗布方式により各層を形成する場合には、ゼラチンを用いることで、各塗布液の粘度を所望の範囲に調整し、所望の膜厚を得ることができる。本発明においては、市販のゼラチンを用いることもでき、例えば、RR、R、およびCLV(新田ゼラチン(株)製)等が好ましい。
熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートの製造方法は、
中空粒子を含んでなる水系塗布液を用いて、該基材上に断熱層を形成する工程と、
溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含んでなる溶剤系溶液を、ゼラチンを実質的に含まない水系溶液中に乳化させた水系分散塗布液を用いて、前記断熱層上に受容層を形成する工程と
を含んでなるものである。このように、断熱層上に、該水系分散塗布液を用いて受容層を形成することで、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂の断熱層への移行を抑制して、断熱層に含まれる中空粒子の溶剤への溶解を防止し、中空粒子の性能低下を回避することができる。したがって、断熱層と受容層の間にバリア層等の中間層を設けなくてもよくなるため、コストを改善することができる。さらに、本発明においては、ゼラチンを用いずに、溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂が十分に分散した水系分散塗布液を用いて受容層を形成することができるため、印画物の画像濃度を向上することができる。
本発明において、上記の溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含んでなり、かつゼラチンを実質的に含まない水系分散塗布液は、以下のような方法により調製することができる。まず、水系溶液と溶剤系溶液を別々に調製した。水系溶液は、上記の分散剤と水とを混合して得られる。一方、溶剤系溶液は、上記の溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂と上記の溶剤系離型剤と上記の有機溶媒とを混合して得られる。分散剤が水に溶解しにくい場合には、溶剤系溶液に混合させておいてもよい。この溶剤系溶液を、水系溶液中に加えて、乳化させ、分散体を調製する。その後、分散体を30〜60℃に加温しながら減圧下で脱溶剤し、脱溶剤分の体積変化を純水の追添加により補正し、固形分を調製することで、水系分散塗布液が得られる。このように調製した水系分散塗布液を用いて断熱層上に受容層を形成することで、溶剤系離型剤が、乾燥時に相分離して最表面にブリードアウトし、表面の離型剤密度を高めることができる。また、同時重層塗布により受容層を形成した場合、溶剤系離型剤の下層への移行を抑制し、表面の離型剤密度を高めることができる。
他の好ましい態様によれば、受容層を形成する水系分散塗布液が、分散剤をさらに含んでなることが好ましい。なお、分散剤については、上記で説明したとおりである。
好ましい態様によれば、断熱層を形成する工程と、受容層を形成する工程とは、同時に行ってもよい。さらに、断熱層から受容層間を構成する全ての層を、水系塗布および同時重層塗布方式により形成することが特に好ましい。このような製造方法により、熱転写受像シートの各層の層間接着性の向上やコスト改善等の効果が得られる。このように同時重層塗布を行う場合には、各層を形成する塗布液に界面活性剤を添加して、表面張力を調整することもできる。界面活性剤としては、例えば、サーフィノール440(日信化学工業(株)製)が挙げられる。
熱転写受像シートの各層の塗布には、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ダイコート、スライドコート、およびカーテンコート等の公知の方法を用いることができ、スライドコートやカーテンコート等の複数の層を同時重層塗布できる方法が好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の熱転写受像シートの製造方法は、断熱層と受容層を水系塗布により形成した後に、セット工程や乾燥工程をさらに経るものであってもよい。本発明でいうセット工程とは、例えば、冷風等を支持体上の塗膜面に吹き付けて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め、各層間及び各層内の物質流動性を鈍化させるゲル化促進の工程をいう。冷風を用いる場合の温度条件としては、25℃以下が好ましく、10℃以下であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗布搬送速度にもよるが、10秒以上120秒以下であることが好ましい。
熱転写インクシート
本発明の熱転写受像シートと共に用いる熱転写インクシートは、基材シートの一方の面に熱転写性色材層が設けられており、基材シートの他方の面に耐熱滑性層が設けられている層構成を有するものがよい。以下、熱転写インクシートを構成する各層について説明する。
基材シート
本発明に用いられる熱転写インクシートを構成する基材シートの材料は、従来公知のものを使用することができ、また、それ以外のものであっても、ある程度の耐熱性と強度とを有していれば使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ナイロン、酢酸セルロース、アイオノマー等の樹脂フィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等が挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、これらを任意に組み合わせた積層体を使用してもよい。これらの中でも、薄膜化可能で安価な汎用性プラスチックであるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
基材シートの厚さは、強度、耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は0.5〜50μm程度が好ましく、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。
基材シートは、隣接する層との接着性を向上させるため、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、およびグラフト化処理等の、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。上記表面処理は、1種のみ施されてもよいし、2種以上施されてもよい。
さらに、上記基材シートの接着処理として、基材シート上に接着層を塗布して形成することも可能である。接着層は、例えば、以下の有機材料および無機材料から形成することができる。上記有機材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドンおよびその変性体等のビニル系樹脂、ならびにポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。上記無機材料としては、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナあるいはアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物またはその水和物、疑ベークマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、および酸化チタン等のコロイド状無機顔料超微粒子等が挙げられる。
また、上記の表面処理として、プラスチックフィルムを延伸処理して製造する場合、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行うこともできる(プライマー処理)。
熱転写性色材層
本発明に用いられる熱転写インクシートは、基材シートの一方の面に熱転写性色材層が設けられている。熱転写インクシートが昇華型熱転写インクシートの場合には、熱転写性色材層として昇華性染料を含有する層を形成し、熱溶融型熱転写インクシートの場合には、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層を形成する。なお、昇華性染料を含有する層領域と、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層領域と、を連続した1枚の基材シート上に面順次に設けてもよい。
熱転写性色材層の材料は、従来公知の染料を使用することができるが、印画材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変褪色しないものが好ましい。例えば、赤色染料としては、MS Red G(三井東圧化学社製)、Macrolex Red Violet R(バイエル社製)、CeresRed 7B(バイエル社製)、Samaron Red F3BS(三菱化学社製)等が、黄色染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社製)、PTY−52(三菱化成社製)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製)等が、青色染料としては、カヤセットブルー714(日本化薬社製)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製)、ホロンブリリアントブルーS−R(サンド社製)、MSブルー100(三井東圧化学社製)等が挙げられる。
上記染料を担持するためのバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の樹脂が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましい。
熱転写性色材層の形成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。上記染料およびバインダー樹脂に、必要に応じて離型剤等の添加剤を加え、トルエン、メチルエチルケトン等の適当な有機溶剤に溶解させ、あるいは、水に分散させ、得られた熱転写性色材層用塗布液(溶解液または分散液)を、例えば、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の形成手段により、基材シートの一方の面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。熱転写性色材層は、厚みが0.2〜5.0μm程度であり、また、熱転写性色材層中の昇華性染料の含有量は、5〜90重量%、好ましくは5〜70重量%であることが好ましい。
保護層
本発明に用いられる熱転写インクシートは、熱転写性色材層と同一面側に面順次で保護層を設けてもよい。熱転写受像シートに色材を転写した後、この保護層を転写して画像を被覆することにより、画像を光、ガス、液体、擦過等から保護することができる。保護層として接着層、剥離層、離型層、または、下引き層等のその他の層を設けてなるものであってもよい。
耐熱滑性層
耐熱滑性層は、主に耐熱性樹脂からなるものである。耐熱性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンまたはエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテート−ヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、および塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
耐熱滑性層は、上記耐熱性樹脂に加え、滑り性付与剤、架橋剤、離型剤、有機粉末、無機粉末等の添加剤を配合してなるものであってもよい。
耐熱滑性層は、一般に、上述の耐熱性樹脂、並びに、所望により添加する上記滑り性付与剤および添加剤を溶剤中に加えて、各成分を溶解または分散させて耐熱滑性層塗布液を調製した後、該耐熱滑性層塗布液を基材の上に塗布し、乾燥させて形成することができる。
上記耐熱滑性層塗布液における溶剤としては、上述の染料インキにおける溶剤と同様のものを使用することができる。
耐熱滑性層塗布液の塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられるが、なかでもグラビアコーティングが好ましい。耐熱滑性層塗布液は、乾燥塗布量が好ましくは0.1〜3g/m、より好ましくは1.5g/m以下となるよう塗布すればよい。
画像形成方法
本発明の熱転写受像シートを用いる画像形成方法においては、熱転写受像シートと、熱拡散性色素を含有する熱転写インクシートとを重ね合わせて、記録信号に応じて加熱することにより、該熱転写インクシートが含有する熱拡散性色素を、該熱転写受像シートに転写することにより画像形成することできる。
このような画像形成方法で用いることのできる熱転写記録装置としては、公知のものを用いることができ、特に限定されない。本発明においては、市販の熱転写記録装置を用いることができ、例えば、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)が挙げられる。
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
実施例1
1.水系分散塗布液の調製
まず、下記の組成となるように、水系溶液1および溶剤系溶液1を調製した。この水系溶液1と溶剤系溶液1とを、混合・撹拌した後、ホモジナイザーを用いて分散を行い、溶剤系塩酢ビ系樹脂および溶剤系離型剤を水溶液中に乳化させ、その後、有機溶媒を除去して、水系分散塗布液を調製した。調製した水系分散塗布液の固形分量は、16%であった。この水系分散塗布液を受容層用塗布液として用いた。
水系溶液1の組成
・トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸Na塩(分散剤、固形分100%)5重量部
・アデカプルロニックF−108(分散剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ADEKA(株)製、固形分100%) 5重量部
・純水 600重量部
溶剤系溶液1の組成
・ソルバインC(塩酢ビ系樹脂、日信化学工業(株)製、固形分100%)100重量部
・X−22−3000T(溶剤系シリコーン離型剤(エポキシ変性シリコーン)、信越化学工業(株)製、固形分100%) 5重量部
・酢酸エチル(シリコーン離型剤溶解用溶剤) 600重量部
2.熱転写受像シートの作製
基材シートとしてRCペーパー(三菱製紙(株)製)を用い、下記の断熱層用塗布液および上記で調製した受容層用塗布液を40℃にそれぞれ加熱し、スライドコーティングを用いて、乾燥時の厚みがそれぞれ25μm、5μmとなるように塗布した。塗布後、5℃にて30秒間冷却した後、40℃にて5分間乾燥し、熱転写受像シート1(層構成:基材/断熱層/受容層)を得た。この熱転写受像シートは、図1に示されるような層構成を有していた。
断熱層用塗布液の組成
・ローペイクST(アクリル系中空粒子、ロームアンドハース(株)製、体積平均粒径:0.4μm、固形分30%) 240重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製、固形分10%) 250重量部
・ハイドランAP−40(ウレタン系樹脂、DIC(株)製、固形分22%)25重量部
実施例2
溶剤系溶液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に水系分散塗布液を調製して、熱転写受像シート2を作製した。
溶剤系溶液2の組成
・ソルバインCN(塩酢ビ系樹脂、日信化学工業(株)製、固形分100%)
100重量部
・X−22−3000T(溶剤系シリコーン離型剤、信越化学工業(株)製) 5重量部
・酢酸エチル(シリコーン離型剤溶解用溶剤) 600重量部
実施例3
溶剤系溶液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に水系分散塗布液を調製して、熱転写受像シート3を作製した。
溶剤系溶液3の組成
・ソルバインCNL(塩酢ビ系樹脂、日信化学工業(株)製、固形分100%)
100重量部
・X−22−3000T(溶剤系シリコーン離型剤、信越化学工業(株)製) 5重量部
・酢酸エチル(シリコーン離型剤溶解用溶剤) 600重量部
実施例4
溶剤系溶液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に水系分散塗布液を調製して、熱転写受像シート4を作製した。
溶剤系溶液4の組成
・ソルバインC(塩酢ビ系樹脂、日信化学工業(株)製) 5重量部
・KP−1800U(溶剤系シリコーン離型剤(エポキシ変性シリコーン)、信越化学工業(株)製、固形分100%) 5重量部
・酢酸エチル(シリコーン離型剤溶解用溶剤) 600重量部
実施例5
水系溶液および溶剤系溶液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に水系分散塗布液を調製して、熱転写受像シート5を作製した。
水系溶液2の組成
・ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩(分散剤、固形分100%) 5重量部
・アデカプルロニックF−108(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ADEKA(株)製) 5重量部
・純水 600重量部
溶剤系溶液5の組成
・ソルバインC(塩酢ビ系樹脂、日信化学工業(株)製) 100重量部
・X−22−3000T(溶剤系シリコーン離型剤、信越化学工業(株)製) 5重量部
・酢酸エチル(シリコーン離型剤溶解用溶剤) 600重量部
比較例1
溶剤系溶液の組成を下記のとおりとし、溶剤系溶液を受容層用塗布液として用いた以外は実施例1と同様に、熱転写受像シート6を作製した。
溶剤系溶液6の組成
・ソルバインC(塩酢ビ系樹脂、日信化学工業(株)製) 100重量部
・X−22−3000T(溶剤系シリコーン離型剤、信越化学工業(株)製) 5重量部
・酢酸エチル(シリコーン離型剤溶解用溶剤) 600重量部
比較例2
下記組成の中間層(バリア層)用塗布液を用いて、断熱層と受容層の間に中間層を設けた以外は、比較例1と同様に、熱転写受像シート7(層構成:基材/断熱層/中間層(バリア層)/受容層)を作製した。なお、中間層は、乾燥時の厚みが、2μmとなるように塗布した。
中間層用塗布液の組成
・KM−11(ポリビニルアルコール、日本化学工業(株)製) 80重量部
・ハイドランAP−20(ポリウレタンエマルジョン、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%) 100重量部
・溶媒(水/イソプロピルアルコール=3/1) 36重量部
比較例3
水系溶液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に水系分散塗布液を調製して、熱転写受像シート8を作製した。
水系溶液3の組成
・トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸Na塩(分散剤、固形分100%)5重量部
・アデカプルロニックF−108(分散剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ADEKA(株)製、固形分100%) 5重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製、固形分10%) 100重量部
・純水 600重量部
比較例4
水系溶液の組成を下記のとおりとし、水系溶液を受容層用塗布液として用いた以外は実施例1と同様に、熱転写受像シート9を作製した。
水系溶液4の組成
・ビニブラン900(塩化ビニル系エマルジョン、日信化学工業(株)製、固形分40%) 250重量部
・KF−615A(水系シリコーン系離型剤(ポリエーテル変性シリコーン)、信越化学工業(株)製、固形分100%) 10重量部
熱転写受像シートの評価
上記で作製した熱転写受像シート1〜9について、(1)離型性評価、(2)耐湿・耐熱にじみ評価、(3)ざらつき評価、および(4)画像濃度評価を行った。
(1)離型性評価
上記で作製した熱転写受像シートに、35℃80%の環境下であらかじめヘッド温度が40℃となるまで暖めた昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS(株)製、型式:MEGAPIXELIII)を用いて、作製した熱転写受像シートに黒ベタ画像を印画し、その際に剥離音が聞こえるかどうかを官能評価した。
評価基準
○:剥離音が聞こえなかった、あるいは機械音にまぎれる程度であった。
△:剥離音が聞こえた。
×:印画できず、リボンと受像紙の貼りつきが発生した。
(2)耐湿・耐熱にじみ評価
上記で作製した熱転写受像シートに、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)を用いて、RGB値が15×n(n=0〜17)の18階調グラデーション画像を印画し、印画物を60℃Freeおよび40℃90%環境に一週間保存したものの、画像にじみを目視にて官能評価した。
評価基準
○:にじんでいなかった。
△:ややにじんでいた。
×:にじんでいた。
(3)ざらつき評価
上記で作製した熱転写受像シートに、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)にて、作製した熱転写受像シートに、RGB値が15×n(n=0〜17)の18階調グラデーション画像を印画し、印画物に白抜けやムラがないかを目視にて官能評価した。
評価基準
○:問題なし
△:わずかに白抜けやムラが発生していた。
×:白抜けやムラが発生していた。
(4)画像濃度評価
上記で作製した熱転写受像シートに、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)と、インクリボン(メガピクセルIII用、アルテックエーディーエス(株)純正品)とを使用して、RGB値が15×n(n=0〜17)の18階調グラデーション画像を印画し、光学濃度計(グレタグマクベス社製spectrolino)(Ansi−A、D65))による光学反射濃度が最大となる値を測定し、ブラックのOD値(光学的濃度)を示した。
上記の各評価の結果を表1に示す。本発明の製造方法により製造された実施例1〜5の熱転写受像シートは、比較例1、3、および4の熱転写受像シートと比較して、離型性、耐湿・耐熱性、および印画物の画像濃度の各性能を改善できたことがわかる。また、実施例1〜5の熱転写受像シートは、中間層(バリア層)を設けた比較例2と比較して、コストを低減しながら、離型性、耐湿・耐熱性、および印画物の画像濃度の各性能を同等以上にすることができた。
Figure 2012135904
10 熱転写受像シート
11 基材
12 断熱層
13 受容層

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材上に、断熱層と、受容層とをこの順に有してなる、熱転写受像シートの製造方法であって、
    中空粒子を含んでなる水系塗布液を用いて、前記基材上に断熱層を形成する工程と、
    溶剤系ポリ塩化ビニル系樹脂および溶剤系離型剤を含んでなる溶剤系溶液を、ゼラチンを実質的に含まない水系溶液中に乳化させた水系分散塗布液を用いて、前記断熱層上に受容層を形成する工程と
    を含んでなる、熱転写受像シートの製造方法。
  2. 前記受容層を形成する水系分散塗布液が、分散剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の熱転写受像シートの製造方法。
  3. 前記溶剤系離型剤が、溶剤系シリコーンまたはフッ素系界面活性剤である、請求項1または2に記載の熱転写受像シートの製造方法。
  4. 前記断熱層および前記受容層を同時重層塗布により形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱転写受像シートの製造方法。
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