JP2012134465A - 光電変換素子材料、光電変換素子、太陽電池及び太陽電池モジュール - Google Patents

光電変換素子材料、光電変換素子、太陽電池及び太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換効率を向上させるために使用されうる光電変換素子材料、その光電変換素子材料を用いた光電変換素子、並びにその光電変換素子を用いた太陽電池及び太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるホスホール化合物を含有する光電変換素子材料。
Figure 2012134465

(式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、任意の置換基を示し、Xは16族元素から選ばれる原子を表し、環1は置換基を有してもよい縮合多環であり、該縮合多環を形成する少なくとも1つの環は芳香環である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、光電変換素子材料、この光電変換素子材料を用いた光電変換素子、太陽電池及び太陽電池モジュールに関する。
有機薄膜太陽電池は、電極間にベンゾポルフィリンやフタロシアニン、共役系ポリマー等の有機p型半導体と、ペリレンジイミドやフラーレン誘導体等の有機n型半導体からなる薄膜を挟んだ素子構造を有する。有機薄膜太陽電池の実用化検討はなされているが、現状では、光電変換効率は未だ4〜6%と低く、更なる効率向上が課題となっている。一方、有機薄膜太陽電池の光電変換効率向上を解決する手段として、例えば特許文献1では、電子輸送材料として、ベンゾホスホールオキシドを用いることが提案されている。
特開2010−129919号公報
しかしながら、本願発明者らの検討により、特許文献1に記載のホスホールオキシド化合物を太陽電池の電極バッファー材料等の光電変換素子材料として適用しても、特にp型半導体が高分子材料である場合に、依然として光電変換効率等の面で性能が不十分であることが判明した。
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたもので、光電変換効率を向上させるために使用されうる光電変換素子材料、その光電変換素子材料を用いた光電変換素子、並びにその光電変換素子を用いた太陽電池及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定のホスホール化合物を含有する材料が光電変換素子材料として有用であることが見出され、本発明を完成するに至った。
本発明の1つの態様によれば、下記一般式(1)で表されるホスホール化合物を含有する光電変換素子材料が提供される。
Figure 2012134465
(式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、任意の置換基を示し、Xは16族元素から選ばれる原子を表し、環1は置換基を有してもよい縮合多環であり、該縮合多環を形成する少なくとも1つの環は芳香環である。)
光電変換効率を向上させるために使用されうる光電変換素子材料、その光電変換素子材料を用いた光電変換素子、並びにその光電変換素子を用いた太陽電池及び太陽電池モジュールを提供することができる。
本発明に係る一実施形態としての光電変換素子の構成を模式的に示す断面図である。 本発明に係る一実施形態としての太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。 本発明に係る一実施形態としての太陽電池モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[1.本発明に係る光電変換素子材料]
本発明に係る光電変換素子材料は、下記一般式(1)で表されるホスホール化合物(以下、本発明に係るホスホール化合物と称する)を含有する。
Figure 2012134465
上式(1)において、環1は環状構造を表し、R、R、及びRは任意の置換基を表し、Xは16族元素から選ばれる原子を表す。これらについては後に詳しく説明する。式(1)に示されるように、本発明に係るホスホール化合物においては、ホスホール環の3,4位に環1が縮合している。
本発明に係る光電変換素子材料は、特に、光電変換素子におけるバッファー材料として好適に用いられうる。ここでバッファー材料とは、光電変換素子において、活性層と電極との間に設けられる層の材料のことを指す。とりわけ本発明に係る光電変換素子材料は、光電変換素子の活性層と、電子を捕集する電極(負極)との間で電子を輸送するバッファー層(電子取り出し層)として好適に用いられうる。この理由としては、本発明に係る光電変換素子材料が含有する上式(1)のホスホール化合物が、比較的強い分子間相互作用を有しうることが考えられる。また、本発明に係る光電変換素子材料が含有する上式(1)のホスホール化合物が比較的低いLUMOを有しうることも、理由として考えられる。
特許文献1にはホスホール環の2,3位にベンゼン環が縮環した構造を持つ化合物が開示されている。しかしながら、ホスホール環の2,3位に環が縮環した化合物は、対称性が低くなる。さらにホスホール環の4位及び5位に置換基が存在する場合、これらの置換基の間の立体反発のために、ホスホール化合物の平面性が低くなることが考えられる。ホスホール環の2位及び3位にアルキル基が結合している化合物も、やはり平面性は低くなることが考えられる。これらの理由により、ホスホール環の2,3位に環が縮環した化合物、及びホスホール環の2位及び3位にアルキル基が結合している化合物は結晶の安定性が低く、アモルファス性の高い材料となる。
一方で3,4位に環が縮合した本発明に係るホスホール化合物は高い対称性を有しうる。さらには、本発明に係るホスホール化合物の1位及び5位に置換基が存在しても立体反発が生じにくいため、本発明に係るホスホール化合物は平面性の高い構造をとりうるものと考えられる。これらの理由により、本発明に係る光電変換素子材料が含有するホスホール化合物は強い分子間相互作用を有しうる。このため、本発明に係る光電変換素子材料は、従来と比べ、活性層で生じた電荷を電極に移動する能力の向上が期待される。さらには、本発明に係る光電変換素子材料が含有するホスホール化合物は、活性層に用いられる半導体材料とも強固な分子間相互作用が生じることが期待されることから、この観点からも、活性層で生じた電荷を電極に移動する能力の向上が期待される。
また、ホスホール化合物は低いLUMOエネルギー準位を有するという特徴がある。さらにホスホール環に対して共役系を持つ環が縮合すると、LUMOエネルギー準位は一層低くなる。特許文献1にはホスホール環の2,3位にベンゼン環が縮環した構造を持つ化合物が開示されている。しかしながら、ホスホール環の3,4位に共役系を持つ環が縮合した化合物は、ホスホール環の2,3位に環が縮環した化合物よりも、LUMOエネルギー準位がさらに低くなることが期待される。これは、ホスホール環の3,4位に共役系を持つ環が縮合した化合物は、ホスホール環の2,3位に環が縮環した化合物よりもキノジメタン構造の寄与が大きくなるためである。本発明に係るホスホール化合物は、このような構造を有しうる。本明細書においては、以下の式(2)の構造をキノジメタン構造と呼ぶ。
Figure 2012134465
本発明に係る光電変換素子材料が含有するホスホール化合物は比較的低いLUMOを有しうるために、本発明に係る光電変換素子材料は電子受容性が高くなることが期待される。このように、本発明に係る光電変換素子材料は電流を流しやすく、光電変換素子のバッファー層材料として好適に用いられうる。
環1は任意の環状構造でありうる。特に、環1が縮合多環であり、この縮合多環を形成する少なくとも1つの環が芳香環であることが好ましい。環1とホスホール環とが縮合して形成される縮合環は、芳香族性を有することが好ましい。また、環1はさらに置換基を有してもよい。本明細書において、「置換基を有してもよい」とは、置換基を1以上有してもよいことを意味する。
環1は、例えば、ホスホール環の3,4位に2価の置換基が結合することにより構成されうる。この2価の置換基は芳香族基であることが好ましく、具体的には芳香族炭化水素基又は複素環基であることが好ましい。その中でも、芳香族炭化水素基であることが、π−πスタッキング作用が期待される点で、より好ましい。
ホスホール環の3,4位に結合する2価の置換基の具体的な例としては、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、トリフェニレンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基、アズレンジイル基、アセナフテンジイル基、フルオランテンジイル基、ナフタセンジイル基、ペリレンジイル基、ペンタセンジイル基、ビナフチル基、フェニルナフタレンジイル基、ジフェニルナフタレンジイル基、フェニルフェナントレンジイル基等の芳香族炭化水素基;ベンゾチアジアゾールジイル基、ベンゾチエフェンジイル基、ジベンゾフランジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基、フェニルカルバゾールジイル基、フェノキサチインジイル基、キサンテンジイル基、ベンゾフランジイル基、チアントレンジイル基、インドリジンジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基、アクリジンジイル基、フェナントリジンジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、インドリンジイル基等の複素環基;フェニルベンゾチオフェンジイル基が挙げられる。好ましくは、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、トリフェニレン基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基、アセナフテンジイル基、フルオランテンジイル基、ペリレンジイル基、トリフェニレンジイル基等の芳香族炭化水素基;キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、アクリジンジイル基、フェナントリジンジイル基、キノキサリンジイル基、ジベンゾフランジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基、フェニルカルバゾールジイル基、キサンテンジイル基、フェノキサジンジイル基等複素環基である。特に好ましくは、ナフタレン−1,8−ジイル基、及びフェナントレン−4,5−ジイル基である。後述するように、ナフタレン−1,8−ジイル基及びフェナントレン−4,5−ジイル基は、さらなる置換基を有していてもよいし、ナフタレン−1,8−ジイル基及びフェナントレン−4,5−ジイル基には、さらなる環が縮合していてもよい。
本発明に係るホスホール化合物においては、環1の縮合多環のうち、ホスホール環と直接縮合している環が、5員環又は6員環であることが好ましい。例えば、ホスホール環の3位及び4位の炭素を含む5員環又は6員環が、ホスホール環以外に存在することが好ましい。ホスホール環の3位及び4位の炭素を含むこの5員環又は6員環は、ホスホール環と共に共役構造を形成することがさらに好ましい。その中でも、5員環の方が、6員環よりも、ホスホール環と共に共役構造を形成しやすいことから、5員環の方が好ましい。
ホスホール環と直接縮合する5員環は、例えば、炭素からなり、二重結合を1つ含む環でありうる。ホスホール環と直接縮合する6員環は、例えば、炭素からなり、二重結合を1つ又は2つ含む環でありうる。ホスホール環と直接縮合する5員環又は6員環の骨格が炭素原子で構成されることにより、ホスホール化合物の安定性が向上しうる。溶解性を向上させる観点から、環1は2つ以上の炭化水素環が互いに縮合して得られる縮合多環を含んでいることが好ましく、2つ以上の炭化水素環が互いに縮合して得られる縮合多環がホスホール環に直接縮合していることがより好ましい。ここで炭化水素環とは、骨格が炭素原子で構成された環のことを指す。
式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、任意の置換基でありうる。R、Rはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族基であることが好ましく、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい複素環基であることが特に好ましい。ホスホール環に対して芳香族炭化水素基又は複素環基が結合している化合物は、ホスホール環に対してアルキル基が結合している化合物と比べて、π平面の広がりにより強い分子間相互作用が期待される。したがって、このようなホスホール化合物を含有する光電変換素子材料には、活性層で生じた電荷を電極に移動する能力の向上が期待される。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20のものが好ましい。芳香族炭化水素基は単環基に何ら限定されず、縮合多環式炭化水素基、又は環縮合炭化水素基であってもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基、クオーターフェニル基、ビフェニル基、等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基が好ましい。
複素環基としては、炭素数2〜20のものが好ましい。例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、クロマニル基、ピラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル、フェノキサチイニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、チアントレニル基、インドリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基およびキノキサリニル基等が挙げられる。このように、窒素原子を含む複素環基、酸素原子を含む複素環基、その他の原子を含む複素環基、のうちの何れでもよい。これらの中でも、ピリジル基、チエニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、ピペリジニル基、クロマニル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントリル基、フェナントロリニル基、キノキサリニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル、キサンテニル基およびフェノキサジニル基が好ましい。
は任意の置換基を表し、例えば、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基もしくは置換基を有してもよい複素環基でありうる。
アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基及び複素環基としては、R及びRの例として示したのと同様の芳香族炭化水素基及び複素環基を、Rとして有してもよい。
Xは16族元素から選ばれる原子を表し、特に酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を示す。Xは酸素原子又は硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることが特に好ましい。
環1、R、R及びRは、上述のように、さらに置換基を有してもよい。有しても良い置換基としては特に限定はないが、好ましくはハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、及び複素環基から選択される。これらの置換基同士、特に隣接する置換基同士が、連結してさらなる環を形成してもよい。以下に、環1、R、R及びRが有してもよい置換基の例を挙げる。
シリル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などの、置換基としてアルキル基及び/又はアリール基を有するシリル基が挙げられる。
アミノ基としては、アリール基で置換されたジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、カルバゾイル基等のアリールアミノ基が挙げられる。
ボリル基としては、アリール基で置換されたジメシチルボリル基などが挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはビニル基、スチリル基、ジフェニルビニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはメチルエチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基などの、直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。
芳香族炭化水素基及び複素環基としては、R及びRの例として示したのと同様の芳香族炭化水素基及び複素環基を、置換基として有することができる。芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、さらに好ましくは、フェニル基及びナフチル基である。複素環基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、さらに好ましくは、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、及びフェナントリル基である。
これらの置換基は更に置換基を有しても良い。更に有しても良い置換基としては、アリールアミノ基、アルキル基、パーフルオロアルキル基、ハライド基、カルボキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルボン酸基、芳香族炭化水素基、及び複素環基などが挙げられる。
好ましくは、炭素数12〜30のアリールアミノ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基、フルオライド基、炭素数1〜10のオキシカルボニル基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリールオキシ基、炭素数2〜16のカルボニル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の複素環基などが挙げられる。
更に有しても良い置換基のうち、炭素数12〜30のアリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、カルバゾイル基、フェニルカルバゾイル基などが挙げられる。炭素数1〜12のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
炭素数1〜10のオキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。炭素数6〜16のアリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基などが挙げられる。炭素数2〜16のカルボニル基の例としては、アセチル基、フェニルカルボニル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基及び複素環基としては、R及びRの例として示したのと同様の芳香族炭化水素基及び複素環基を、置換基に対するさらなる置換基として有してもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、アントリル基などが挙げられる。
また、対称性を向上させる観点から、R=Rであることも好ましい。
式(1)で示されるホスホール化合物の具体例を以下に示す。以下の具体例において、Xは酸素原子又は硫黄原子である。もっとも、本発明に係るホスホール化合物が以下の例に限定されるわけではない。
Figure 2012134465
Figure 2012134465
[1.1 本発明に係る光電変換素子材料が含有するホスホール化合物の物性]
本発明に係るホスホール化合物の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位は、特段制限はないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、−5.0eV以上が好ましく、−4.0eV以上がより好ましく、−3.9eV以上がさらに好ましい。一方、通常−1.0eV以下が好ましく、−1.1eV以下がより好ましく、−1.2eV以下がさらに好ましい。LUMOエネルギー準位がこの範囲にあることにより、本発明に係る光電変換素子材料の電子の輸送効率を上げることができる。
本発明に係るホスホール化合物のLUMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法が挙げられる。実際に測定する方法としては、例えば、紫外可視吸収スペクトル測定法およびサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。その中でも、サイクリックボルタモグラム測定法が好ましく、本明細書においてはサイクリックボルタモグラム測定法を採用する。
本発明に係る光電変換素子材料の還元電位の値は、特段制限はない。例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、−1.95V以上であることが好ましく、−1.90V以上であることがより好ましい。一方、通常−1.00V以下が好ましく、−1.10V以下がより好ましく、−1.20V以下がさらに好ましい。還元電位の値がこの範囲にあることにより、本発明に係る光電変換素子材料の電子の輸送効率を上げることができる。
光電変換素子材料の電子移動度は特に限定はないが、通常10−8cm/Vs以上である。好ましくは10−7cm/Vs以上、より好ましくは10−6cm/Vs以上である。電子移動度が低すぎると、電流が取り出しにくくなり、光電変換効率が低くなるといった問題点がある。
[1.2 本発明に係る光電変換素子材料が含有するホスホール化合物の製造方法]
一般式(1)で表される化合物の製造方法としては特に限定はない。一般式で表される化合物は、例えばChem.Eur.J.2009,15,10000―10004に記載の方法で合成することができる。
具体的な例として、本明細書において後に述べる化合物C1の代わりに所望の出発物質を用い、本明細書の実施例に示される方法に従って反応を行うことにより、上に具体例として挙げた種々のホスホール化合物を合成することができる。
[2.本発明に係る光電変換素子(100)]
本発明に係る光電変換素子は、1対の電極間に少なくとも活性層とバッファー層とを含む。また、本発明に係る光電変換素子のバッファー層には、本発明に係る光電変換素子材料を少なくとも含む。以下で、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を説明する。図1に、本発明に係る一実施形態である光電変換素子100を示す。図1は一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子を表すが、本発明に係る光電変換素子は図1の構造に限られるわけではない。図1の光電変換素子100は、電極120,160と、活性層140と、バッファー層150とを有する。さらに本実施形態に係る光電変換素子は、図1に示されるように、基板110と、バッファー層130とを有してもよい。図1においては、電極120は正極であり、電極160は負極である。もちろん、本発明に係る他の実施形態において、正極120と負極160とが逆であってもよく、この場合バッファー層130とバッファー層150とが逆であってもよい。以下、これらの各部について説明する。
<2.1 活性層(140)>
本実施形態に係る光電変換素子100の活性層140は、任意の有機半導体により形成できる。有機半導体は半導体特性により、p型又はn型に分けられる。p型半導体では、正孔が電気伝導に寄与する。また、n型半導体では、電子が電気伝導に寄与する。p型とn型との区別は、材料の電子状態、ドーピング状態、又はトラップ状態に依存する。以下に有機半導体の例を挙げるが、p型とn型とは必ずしも明確に分類できない場合がある。すなわち、p型特性及びn型特性の双方を示す半導体材料もある。
p型半導体の例として、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;ナフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン;セキシチオフェン等のオリゴチオフェンおよびこれら化合物を骨格として含む誘導体が挙げられる。さらに、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール等の高分子等を用いることもできる。
n型半導体の例として、フラーレン(C60、C70、C76等)化合物;オクタアザポルフィリン;上記p型半導体のパーフルオロ体;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;及び、これらの化合物を骨格として含む誘導体などが挙げられる。その中でも好ましくはフラーレン化合物であり、さらに好ましくはインデン類が付加されたフラーレン化合物である。インデン類が付加されたフラーレン化合物は、特段の制限はないが、例えば国際公開第2008/018931号に記載のものが挙げられる。
活性層140は、n型半導体及びp型半導体を含有する。少なくともp型半導体およびn型半導体が含有されていれば、活性層の具体的な構成は任意である。すなわち活性層140は、単層の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の積層膜によって構成されていてもよい。例えば、n型半導体とp型半導体とを別々の膜に含有させるようにしても良く、n型半導体とp型半導体とを同じ膜に含有させても良い。また、n型半導体及びp型半導体は、それぞれ、1種の半導体材料で構成されていてもよく、任意の2種以上の半導体材料を任意の比率で併用しても良い。本発明に係る光電変換素子において、p型半導体は高分子材料であることが好ましい。
具体例として、活性層140は、p型半導体とn型半導体とが層内で相分離した層(i層)を有するバルクヘテロ接合型であってもよい。また活性層140は、p型半導体を含む層(p層)とn型半導体を含む層(n層)との間の界面を有する積層型(ヘテロpn接合型)であってもよい。さらには、活性層140はショットキー型であってもよく、以上の種類の組み合わせであってもよい。これらの中でもバルクへテロ接合型、およびバルクへテロ接合型と積層型とを組み合わせた形式(p−i−n接合型)が、高い性能を示すことから好ましい。
活性層のp層、i層、n層各層の厚みに制限はないが、通常3nm以上、中でも10nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。層厚を厚くすることにより、膜の均一性が高まる傾向がある。また、層厚を薄くすることで透過率が向上し、直列抵抗が低下する傾向がある。
<2.2 電極(120,160)>
電極120,160は導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。電極120,160の材料の例を挙げると、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはこれらの合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料、などが挙げられる。なかでも、正孔を捕集する電極120には、Au、ITO等の高い仕事関数を有する材料が好ましい。一方、電子を捕集する電極160には、Alのような低い仕事関数を有する材料が好ましい。仕事関数を最適化することにより、光吸収により生じた正孔及び電子を良好に捕集することができる。
一対の電極120,160のうち、少なくとも受光面側の電極は、発電のために光透過性を有していることが好ましい。但し、発電層の面積に比べて電極の面積が小さいなど、電極が透明でなくても発電性能に著しく悪影響を与えない場合は必ずしも透明でなくてもよい。透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。また、この際、光の透過率の具体的範囲に制限は無いが、光学界面での部分反射によるロスを除いて80%以上であることが好ましい。透過率が高くすることにより、太陽電池素子の発電効率を高くすることができる。
なお、電極120,160のそれぞれは、1種の材料により構成されてもよく、任意の組み合わせ比率の任意の2種以上の材料で構成されてもよい。電極120,160の形成方法に制限はない。例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセスにより形成することができる。また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。
さらに、電極120,160の少なくとも一方が、2層以上の層からなる積層構造であってもよい。また、電極120,160の少なくとも一方は、表面処理により、電気特性やぬれ特性等の特性が改良されていてもよい。
<2.3 バッファー層(130,150)>
バッファー層130,150は、例えば、活性層140と電極120,160との界面に設けられる層である。バッファー層を設けることにより、電気特性等を改良することができる。バッファー層は、活性層と正孔を捕集する電極との間に設けられる正孔取り出し層と、活性層と電子を捕集する電極との間に設けられる電子取り出し層とに分類されうる。本実施形態においては電極120が正孔を捕集する電極であるから、バッファー層130が正孔取り出し層である。また、電極160が電子を捕集する電極であるから、バッファー層150が電子取り出し層である。上述の通り正孔を捕集する電極120と電子を捕集する電極160の配置は逆であってもよく、この場合正孔取り出し層130と電子取り出し層150も逆に配置される。
バッファー層130,150の材料としては、本発明に係る光電変換素子材料、すなわち本発明に係るホスホール化合物を含有する材料を用いることができる。その他のバッファー層130,150の材料の例としては、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、ホスフィンオキシド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、金属酸化物などが挙げられる。好ましくは、上述した光電変換素子材料、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、ホスフィンオキシド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、及び金属酸化物が挙げられる。バッファー層130,150は、1種類の材料によって構成されていてもよいし、任意の比率で組み合わせられた2種類以上の材料によって構成されていてもよい。
電子取り出し層150としては、本発明に係るホスホール化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、及び金属酸化物のうちの少なくとも1種を用いることが、変換効率の面で好ましい。
正孔取り出し層130としては、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、及び金属酸化物のうちの少なくとも1種を用いることが、変換効率の面で好ましい。
上述のホスフィンオキシド化合物及びホスフィンスルフィド化合物は、アリール基で置換されたホスフィンオキシド化合物及びアリール基で置換されたホスフィンスルフィド化合物でありうる。ホスフィンオキシド化合物及びホスフィンスルフィド化合物は、トリアリールホスフィンオキシド化合物、トリアリールホスフィンスルフィド化合物、ジアリールホスフィンオキシド構造を2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、又はジアリールホスフィンスルフィド構造を2つ以上有する芳香族炭化水素化合物であることが好ましい。上記のアリールホスフィンオキシド化合物又はアリールホスフィンスルフィド化合物のアリール基は、フッ素原子もしくはパーフルオロアルキル基で置換されていてもよい。上記のホスフィンオキシド化合物及びホスフィンスルフィド化合物で構成される材料は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属がドープされていてもよい。
上述の金属酸化物としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム(In)、酸化ニッケル(NiO)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)などが挙げられる。その中でも、電子取り出し層150には、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、又は酸化インジウムを用いることが好ましい。また、正孔取り出し層130には、酸化ニッケル(NiO)、酸化モリブデン(MoO)、又は酸化タングステン(WO)を用いることが好ましい。
PEDOT:PSSを用いる場合は、通常、強酸性の水分散液を塗布することによりバッファー層を形成する。したがって、酸化インジウム等の透明導電薄膜層が溶ける可能性がある。この場合、太陽電池が作動しないか、変換効率が時間と共に低下するか、又は水分に弱い有機半導体の劣化が促進される可能性がある。金属酸化物を用いることは、このような問題を引き起こさないため、より好ましい。
バッファー層130,150は、種々の方法で成膜することができる。本発明に係る光電変換素子材料をバッファー層材料として用いる場合、例えば蒸着法を用いてバッファー層を成膜することができる。特に、抵抗加熱型真空蒸着法を用いることが好ましい。バッファー層130,150の膜厚も任意である。特に、本発明に係る光電変換素子材料をバッファー層材料として用いる場合、1nm以上が好ましく、3nm以上であることがさらに好ましい。また、200nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。適切な膜厚とすることにより、膜の均一性を向上させることができるとともに、電子輸送性能を上げ、光電変換素子の性能を上げることができる。
<2.4 基板(110)>
本実施形態に係る光電変換素子100は、通常は支持体となる基板110を有する。すなわち、基板上100に、電極120,160と、活性層140と、バッファー層130,150とが形成される。基板110の材料(基板材料)は本実施形態の効果を著しく損なわない限り任意である。基板材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア、チタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂等の有機材料;紙、合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート或いはラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。ガラスとしてはソーダガラスや青板ガラスや無アルカリガラスなどが挙げられる。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。
基板の形状に制限はなく、例えば、板、フィルム、シート等の形状を用いることができる。基板の厚みに制限はない。ただし、通常5μm以上、中でも20μm以上、また、通常20mm以下、中でも10mm以下に形成することが好ましい。基板が薄すぎると光電変換素子の強度が不足する可能性があり、基板が厚すぎるとコストが高くなったり重量が重くなりすぎたりする可能性がある。又、基板がガラスの場合は、薄すぎると機械的強度が低下し、割れやすくなるため、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上がよい。また、厚すぎると重量が重くなるため、10mm以下が好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
[3. 本発明に係る太陽電池]
本発明に係る光電変換素子は、太陽電池、中でも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。
図2は本発明に係る一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示される薄膜太陽電池は、本発明に係る太陽電池の一例に過ぎない。本発明に係る太陽電池が、図2に示されるのとは異なる構成をとりうることは、当業者には明らかであろう。例えば、図2に示される構成要素の一部は存在しなくてもよいし、同種の働きを有する別の要素で置き換えられてもよい。また、さらなる構成要素が、図2に示される太陽電池に対して追加されてもよい。
図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備え、更に、耐候性保護フィルム1とバックシート10の縁部をシールするシール材11を備えている。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及びガスバリアフィルム9の少なくとも一方を用いなくてもよい。
<3.1 耐候性保護フィルム(1)>
耐候性保護フィルム1は天候変化から太陽電池素子6を保護するフィルムである。太陽電池素子6の構成部品のなかには、温度変化、湿度変化、自然光、風雨による侵食などにより劣化するものがある。そこで、耐候性保護フィルム1で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を天候変化などから保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性および機械強度などの、薄膜太陽電池14の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%が特に好ましい。光の透過率を高くすることにより、薄膜太陽電池14の発電効率を高めることができる。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい、また、通常350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に耐候性保護フィルム1が融解・劣化する可能性を低減できる。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコン系樹脂およびポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
中でもフッ素系樹脂が好ましく、その具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、通常200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。厚みを10μm以上とすることで機械的強度が高まる傾向にあり、200μm以下とすることで柔軟性が高まる傾向にある。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
<3.2 紫外線カットフィルム(2)>
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。
薄膜太陽電池14の構成部品のなかには紫外線により劣化するものがある。また、ガスバリアフィルム3,9などは種類によっては紫外線により劣化するものがある。そこで、紫外線カットフィルム2を薄膜太陽電池14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3,9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%以下が特に好ましい。紫外線の透過を抑えることにより、薄膜太陽電池14の劣化を防ぐことができる。
また、紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上が特に好ましい。透過率が高いことにより、より多くの太陽光を電気へと変換することができる。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、通常350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、300℃以下が特に好ましい。融点を100℃以上とすることにより、薄膜太陽電池14の使用時に紫外線カットフィルム2が融解するのを防ぐことができる。
また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系およびエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルムなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散または溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いても良い。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系およびシアノアクリレート系のものを用いることができる。中でもベンゾフェノン系およびベンゾトリアゾール系が好ましい。
この例としては、ベンゾフェノン系およびベンゾトリアゾール系の種々の芳香族系有機化合物などが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記したように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテンコート法などが挙げられる。また、これらの方法は1種を単独で行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行うこともできる。
塗布液に用いる溶剤は、紫外線吸収剤を均一に溶解または分散できるものであれば特に限定されない。例えば液状の樹脂を溶剤として用いることができ、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカ−ボネ−ト系およびポリスチレン系などの各種合成樹脂などが挙げられる。
また、例えば、ゼラチンおよびセルロース誘導体などの天然高分子、水並びに水とエタノール等のアルコール混合溶液なども溶剤として用いることができる。さらに、溶剤として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤を使用すれば、色素や樹脂を溶解または分散させることが可能となり、塗工性を向上させることが可能となる。なお、溶剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
塗布液にはさらに界面活性剤も含有させてもよい。界面活性剤の使用により、紫外線吸収色素の樹脂への分散性が向上する。これにより、紫外線吸収層において、微小な泡によるヌケ、異物などの付着による凹み、乾燥工程でのハジキなどの発生が抑制される。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤)を用いることができる。中でも、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、塗布液を基材フィルムに塗布した後の乾燥は、例えば、熱風乾燥および赤外線ヒーターによる乾燥など、公知の乾燥方法が採用できる。中でも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)などが挙げられる。
なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。また、通常200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。厚みを5μm以上とすることで紫外線の吸収が高まりかつ機械的強度が高まる傾向にあり、200μm以下とすることで可視光の透過率を増加させかつ柔軟性が増す傾向にある。
紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。
ただし、太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
<3.3 ガスバリアフィルム(3)>
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。
太陽電池素子6は湿気及び酸素に弱い傾向があり、特に、ZnO:Al等の透明電極や、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、ガスバリアフィルム3で太陽電池素子6を被覆することにより、太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子6の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、水分と反応することによる太陽電池素子6の劣化、特に活性層及び電極の劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
また、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、水分と反応することによる太陽電池素子6の劣化、特に活性層及び電極の劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、酸素と反応することによる太陽電池素子6の劣化、特に活性層及び電極の劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
また、例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、酸素と反応することによる太陽電池素子6の劣化、特に活性層及び電極の劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
従来はこのように高い防湿及び酸素遮断能力を有するガスバリアフィルム3の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなガスバリアフィルム3を適用することにより、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子等の優れた性質を活かした薄膜太陽電池14を実現することが容易となる。
また、ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上が好ましく、好ましくは70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上が中でも好ましく、85%以上がとりわけ好ましく、とりわけ好ましくは90%以上が特に好ましく、95%以上が中でも特に好ましく、97%以上が最も好ましい。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、通常350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。融点を100℃以上とすることで薄膜太陽電池14の使用時にガスバリアフィルム3が融解・劣化する可能性を低減できる。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
以下、ガスバリアフィルム3の構成について、例を挙げて説明する。
ガスバリアフィルム3の構成として好ましいものは2例が挙げられる。
一つ目の例は、プラスチックフィルム基材に無機バリア層を配置したフィルムである。
この際、無機バリア層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
二つ目の例は、プラスチックフィルム基材に、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層が形成されたフィルムである。この際、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層を1単位として、1単位のユニット層を、プラスチックフィルム基材上に形成してもよい(無機バリア層1層とポリマー層1層とを合わせて1単位のユニット層と呼ぶ)また、2単位以上のユニット層をプラスチックフィルム基材上に形成してもよく、例えば2〜5単位のユニット層を積層してもよい。
ユニット層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層及びポリマー層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
また、プラスチックフィルム基材上にユニット層を形成する場合、無機バリア層を形成してからその上にポリマー層を形成してもよいし、ポリマー層を形成してから無機バリア層を形成してもよい。
(プラスチックフィルム基材)
ガスバリアフィルム3に使用されるプラスチックフィルム基材は、上記の無機バリア層及びポリマー層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリアフィルム3の使用目的等から適宜選択することができる。
プラスチックフィルム基材の材料の例を挙げると、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂およびアクリロイル化合物が挙げられる。
また、スピロビインダンおよびスピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。ポリエステル樹脂の中でも、二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET)および同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は、熱的寸度安定性に優れるため、プラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。
なおプラスチックフィルム基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
プラスチックフィルム基材の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、好ましくは20μm以上がさらに好ましい。また、通常200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
プラスチックフィルム基材は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上が中でも好ましく、85%以上がとりわけ好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上がその中でも特に好ましく、97%以上が最も好ましい。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
プラスチックフィルム基材には、無機バリア層との密着性向上のため、アンカーコート剤の層(アンカーコート層)を形成してもよい。通常、アンカーコート層はアンカーコート剤を塗布して形成される。
アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂およびイソシアネート含有樹脂並びにこれらの共重合体などが挙げられる。
中でも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の1種類以上と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂およびイソシアネート基含有樹脂の1種類以上とを組み合わせたものが好ましい。なお、アンカーコート剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アンカーコート層の厚さは、通常0.005μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましく、通常5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。この範囲の上限値以下の厚さであれば滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力によるプラスチックフィルム基材からの剥離もほとんどない。また、この範囲の下限値以上の厚さであれば、均一な厚さを保つことができ好ましい。
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に、プラスチックフィルム基材に通常の化学処理、放電処理などの表面処理を施してもよい。
(無機バリア層)
無機バリア層は通常は金属酸化物、窒化物または酸化窒化物により形成される層である。なお、無機バリア層を形成する金属酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金属酸化物としては、例えば、Si、Al、Mg、In、Ni、Sn、Zn、Ti、Cu、CeおよびTa等の酸化物、窒化物並びに酸化窒化物などが挙げられる。中でも、高いバリア性と高透明性とを両立させるために、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を含むことが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性の観点から、酸化ケイ素を含むことが好ましい。
各々の金属原子と酸素原子との比率も任意であるが、無機バリア層の透明度を向上させ着色を防ぐためには、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少なくないことが好ましい。一方、無機バリア層の緻密性を向上させバリア性を高くするためには、酸素原子を少なくすることが好ましい。
この観点から、例えば金属酸化物としてSiOを用いる場合には前記xの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、例えば金属酸化物としてAlOを用いる場合には前記xの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
また、2種以上の金属酸化物より無機バリア層を構成する場合、金属酸化物としては酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素を含むことが好ましい。中でも無機バリア層が酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素からなる場合、無機バリア層中のアルミニウムとケイ素との比率は任意に設定することができる。しかしながら、高いバリア性と高い透明性とを両立するためには、Si/Alの比率は、通常1/9以上が好ましく、2/8以上がより好ましい。また、通常9/1以下が好ましく、2/8以下がより好ましい。
無機バリア層の厚みを厚くするとバリア性が高まる傾向にあるが、曲げた際にクラックを生じにくくし割れを防ぐためには、厚みを薄くすることが好ましい。そこで無機バリア層の適正な厚みとしては、通常5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。また、通常1000nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
無機バリア層の成膜方法に制限は無いが、一般的にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法およびプラズマCVD法などで行うことができる。例えばスパッタリング法では1種類または複数の金属ターゲットと酸素ガスを原料とし、プラズマを用いた反応性スパッタ方式で形成することができる。
(ポリマー層)
ポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができ、例えば真空チャンバー内で成膜できるものも用いることができる。なお、ポリマー層を構成するポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
前記ポリマー層を形成するためには、多種多様な化合物を用いることができる。ここでは例として、以下の(i)〜(vii)のようなモノマーを用いてポリマー層を形成する場合について説明する。なお、モノマーは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(i)例えば、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンが挙げられる。ヘキサメチルジシロキサンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを蒸気として導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、プラスチックフィルム基材上に堆積させることでポリマー層をポリシロキサン薄膜として形成できる。
(ii)例えば、ジパラキシリレン等のパラキシリレンが挙げられる。ジパラキシリレンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、まず高真空中でジパラキシリレンの蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。そして、そのラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導いて、プラスチックフィルム基材へ吸着させると同時にラジカル重合反応を進行させてポリパラキシリレンを堆積させることでポリマー層を形成できる。
(iii)例えば、二種のモノマーを交互に繰り返し付加重合させることができるモノマーが挙げられる。これにより得られるポリマーは重付加ポリマーである。重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)およびポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)などが挙げられる。
(iv)例えば、アクリレートモノマーが挙げられる。アクリレートモノマーには、単官能、2官能および多官能のアクリレートモノマーがあるが、いずれを用いてもよい。ただし、適切な蒸発速度、硬化度、硬化速度等を得るために、前記のアクリレートモノマーを2種以上組み合わせて併用することが好ましい。
また、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば、脂肪族アクリレートモノマー、脂環式アクリレートモノマー、エーテル系アクリレートモノマー、環状エーテル系アクリレートモノマー、芳香族系アクリレートモノマー、水酸基含有アクリレートモノマーおよびカルボキシ基含有アクリレートモノマー等があるが、いずれも用いることができる。
(v)例えば、エポキシ系およびオキセタン系等の、光カチオン硬化ポリマーが得られるモノマーが挙げられる。エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環式エポキシ系モノマー、2官能性モノマーおよび多官能性オリゴマーなどが挙げられる。また、オキセタン系モノマーとしては、例えば、単官能オキセタン、2官能オキセタンおよびシルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が挙げられる。
(vi)例えば、酢酸ビニルが挙げられる。モノマーとして酢酸ビニルを用いると、その重合体をケン化することでポリビニルアルコールが得られ、このポリビニルアルコールをポリマーとして使用できる。
(vii)例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸および無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。
これらは、エチレンとの共重合体を構成させ、該共重合体をポリマーとして使用できる。さらに、これらの混合物、グリシジルエーテル化合物を混合した混合物、およびエポキシ化合物との混合物もポリマーとして用いることができる。
前記のモノマーを重合してポリマーを生成させる際、モノマーの重合方法に制限は無い。ただし、通常は、モノマーを含む組成物を塗布または蒸着して成膜した後で重合を行うようにする。重合方法の例を挙げると、熱重合開始剤を用いたときはヒーター等による接触加熱;赤外線およびマイクロ波等の放射加熱;などにより重合を開始させる。また、光重合開始剤を用いたときは活性エネルギー線を照射して重合を開始させる。
活性エネルギー線を照射する場合には様々な光源を使用することができ、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステンーハロゲン輻射ランプおよび日光による照射光などを用いることができる。また、電子線照射や大気圧プラズマ処理を行うこともできる。
ポリマー層の形成方法は、例えば、塗布法および真空成膜法等が挙げられる。
塗布法でポリマー層を形成する場合、例えば、スピンコート、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコートおよびバーコート等の方法を用いることができる。また、ポリマー層形成用の塗布液をミスト状で塗布するようにしてもよい。この場合の液滴の平均粒径は適切な範囲に調整すればよく、例えば重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状でプラスチックフィルム基材上に成膜して形成する場合には、液滴の平均粒径は5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。液滴の平均粒径を小さくすることにより、均一なポリマー層を形成することができる。
他方、真空成膜法でポリマー層を形成する場合、例えば、蒸着およびプラズマCVD等の成膜方法が挙げられる。
ポリマー層の厚みについては特に限定はないが、通常10nm以上が好ましい。また、通常5000nm以下が好ましく、2000nm以下がより好ましく、1000nm以下が特に好ましい。
ポリマー層の厚みを10nm以上とすることで、厚みの均一性が得やすくなり無機バリア層の構造欠陥を効率よくポリマー層で埋めることができ、バリア性が向上する傾向にある。また、ポリマー層の厚みを5000nm以下とすることで、曲げ等の外力によりポリマー層自身がクラックを発生しにくくなるためバリア性が向上しうる。
中でも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOを真空蒸着したフィルムなどが挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。また、通常200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。厚みを5μm以上とすることでガスバリア性が高まる傾向にあり、200μm以下とすることで柔軟性が高まり、また可視光の透過率が向上する傾向にある。
ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面6a側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面6aとは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム3が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。
そして、ガスバリアフィルム3,9の縁部をシール材11でシールし、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で囲まれた空間内に太陽電池素子6を納めることにより、太陽電池素子6を湿気及び酸素から保護できるようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及びガスバリアフィルム9のうちの少なくとも1つを用いなくてもよい。
<3.4 ゲッター材フィルム(4)>
ゲッター材フィルム4は水分及び酸素のうちの少なくとも1つを吸収するフィルムである。太陽電池素子6の構成部品のなかには前記のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルム4で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を水分及び酸素のうちの少なくとも1つから保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
ここで、ゲッター材フィルム4は前記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上が好ましく、0.5mg/cm以上がより好ましく、1mg/cm以上がさらに好ましい。この数値が高いほど水分吸収能力が高く太陽電池素子6の劣化を抑制しうる。また、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。
また、ゲッター材フィルム4が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3,9等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉し、酸素による太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上が中でも好ましく、85%以上がとりわけ好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上がその中でも特に好ましく、97%以上が最も好ましい。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上でがさらに好ましい。また、通常350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時にゲッター材フィルム4が融解・劣化する可能性を低減できる。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び酸素のうちの少なくとも1つを吸収することができるものであれば任意である。その材料としては、例えば、水分を吸収する物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムおよび硫酸ニッケル等の硫酸塩、並びにアルミニウム金属錯体およびアルミニウムオキシドオクチレート等の有機金属化合物などが挙げられる。
具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、SrおよびBaなどが挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrOおよびBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOおよびアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウムおよび酸化鉄等が挙げられる。またFe、MnおよびZn並びにこれら金属の硫酸塩、塩化物塩および硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。また、通常200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面6a側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面6aとは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。
薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。
本実施形態ではゲッター材フィルム4が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4,8がそれぞれ太陽電池素子6とガスバリアフィルム3,9との間に位置するようになっている。
なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及びガスバリアフィルム9のうちの少なくとも1つを用いなくてもよい。
ゲッター材フィルム4は吸水剤又は乾燥剤の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば、吸水剤又は乾燥剤を分散したフィルムを粘着剤で添付する方法、吸水剤又は乾燥剤の溶液をスピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等で塗布する方法などを用いることができる。また真空蒸着法、スパッタリング法などの成膜法を使用してもよい。
吸水剤又は乾燥剤のためのフィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。
中でも、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂およびポリカーボネート系樹脂のフィルムが好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
<3.5 封止材(5)>
封止材5は、太陽電池素子6を補強するフィルムである。太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、薄膜太陽電池14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。
具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1またはバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが好ましい。
また、封止材5は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上が中でも好ましく、85%以上がとりわけ好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上がその中でも特に好ましく、97%以上が最も好ましい。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、通常350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に封止材5が融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上がさらに好ましい。また、通常700μm以下が好ましく、600μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。厚みを厚くすることで薄膜太陽電池14全体の強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
封止材5を構成する材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物をフィルムにしたもの(EVAフィルム)などを用いることができる。耐候性の向上のため、通常は、EVAフィルムには架橋剤を配合して架橋構造を構成させる。
この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。このような有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ジハイドロペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;3−ジ−t−ブチルペルオキシド等を用いることができる。封止材5として用いるためにより好適な耐候性、透明性、接着力、及び強度を得るためには、これらの有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、通常1重量部以上が好ましい。なお、架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
このEVA樹脂組成物には、接着力向上の目的で、シランカップリング剤を含有させてもよい。この目的に供されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。封止材5として用いるためにより好適な耐候性、透明性、接着力、及び強度を得るためには、これらのシランカップリング剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましく、通常0.1重量部以上が好ましい。
なお、シランカップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するために、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。この目的に供される架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤、およびアリルイソシアネート等の単官能の架橋助剤、等が挙げられる。
封止材5として用いるためにより好適な耐久性、耐候性、透明性、及び強度を得るためには、これらの架橋助剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。また、通常1重量部以上が好ましい。なお、架橋助剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的で、EVA樹脂組成物に、例えばハイドロキノン;ハイドロキノンモノメチルエーテル;p−ベンゾキノン;メチルハイドロキノンなどを含有させてもよい。封止材5として用いるためにより好適な安定性、耐候性、透明性、及び強度を得るためには、これらの配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下が好ましい。
しかし、EVA樹脂の架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、薄膜太陽電池14の生産速度および生産効率を低下させる原因となる場合がある。また、長期間使用の際には、EVA樹脂組成物の分解ガス(酢酸ガス)またはEVA樹脂自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子6に悪影響を与えて発電効率を低下させる場合がある。
そこで、封止材5としては、EVAフィルムの他に、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体のフィルムを用いることもできる。この共重合体としては、例えば、下記成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
・成分1:プロピレン系重合体が、通常0重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。また、通常70重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。
・成分2:軟質プロピレン系共重合体が、30重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましい。また、通常100重量部以下が好ましく、90重量部以下がより好ましい。
なお、成分1および成分2の合計量は100重量部である。上記のように、成分1および成分2が好ましい範囲にあると、封止材5のシートへの成形性が良好であるとともに、得られる封止材5の耐熱性、透明性および柔軟性が良好となり、薄膜太陽電池14に好適である。
上記の成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16g)が、通常0.0001g/10分以上であることが好ましい。また、通常1000g/10分以下が好ましく、900g/10分以下がより好ましく、800g/10分以下がさらに好ましい。メルトフローレートがこの範囲にあると、シートへの成形がより容易となる。
成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の融点は、通常100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。また通常140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。融点がこの範囲にあると、シートへの成形がより容易となる。
また成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。密度がこの範囲にあることにより、例えば機械的強度を含めた封止材5の物性を、より適したものにすることができる。
この封止材5においては、上記成分1および成分2に、プラスチックなどに対する接着促進剤としてカップリング剤を配合することが可能である。カップリング剤は、シラン系、チタネート系およびクロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシランおよびγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なお、カップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対する、上記シランカップリング剤の含有量は通常0.1重量部以上が好ましく、また、通常5重量部以下が好ましく、3重量部以下含むことがより好ましい。含有量をこの範囲とすることにより、封止材5として用いるためにより好適な耐候性、透明性、接着力、及び強度を得ることができる。
また、上記カップリング剤は、有機過酸化物を用いて、当該熱可塑性樹脂組成物にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、上記カップリング剤を0.1〜5重量部含むことが好ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物を用いても、ガラス、プラスチックに対して、シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。
有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物は、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、通常0.001重量部以上が好ましく、0.01重量部以上がより好ましい。また、通常5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましい。含有量をこの範囲とすることにより、封止材5として用いるためにより好適な耐候性、透明性、接着力、及び強度を得ることができる。
また、封止材5としてエチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体を用いることもできる。この共重合体としては、下記に示す成分Aおよび成分Bからなる封止材用樹脂組成物と基材とを積層してなる、ホットタック性が5〜25℃のラミネートフィルムが例示される。
・成分A:エチレン系樹脂。
・成分B:以下の(a)〜(d)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体。
(a)密度が0.86〜0.935g/cm
(b)メルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分。
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が100℃以下である。
(d)温度上昇溶離分別(TREF)による積分溶出量が、90℃のとき90%以上である。
成分Aと成分Bとの配合割合(成分A/成分B)は、重量比で、通常50/50以上が好ましく、55/45以上がより好ましく、60/40以上がさらに好ましい。また、通常99/1以下が好ましく、90/10以下がより好ましく、85/15以下がさらに好ましい。成分Bの配合量を多くすることで透明性やヒートシール性が高まる傾向にあり、成分Bの配合量を少なくすることでフィルムの作業性が高まる傾向にある。
成分Aと成分Bを配合して生成される封止材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常2g/10分以上が好ましく、3g/10分以上がより好ましく、通常50g/10分以下が好ましく、40g/10分以下がより好ましい。なおMFRの測定と評価は、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠する方法によって実施することができる。メルトフローレートがこの範囲にあることにより、樹脂組成物の成形をより容易にすることができる。
封止材用樹脂組成物の融点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、また、通常300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材用樹脂組成物の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、また、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。密度がこの範囲にあることにより、例えば耐熱性及び機械的強度を含めた封止材5の物性を、より適したものにすることができる。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた封止材5において、前記プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合と同様に、カップリング剤を用いることが可能である。
上述した封止材5は、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子6への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)および透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時および薄膜太陽電池100の製造時間が大きく短縮できるとともに、使用後の薄膜太陽電池14のリサイクルも容易となる。
なお、封止材5は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、封止材5は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
封止材5の厚みは、通常2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、通常500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた光線透過率が高まる傾向にある。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子6を挟み込むように設ける。太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
<3.6 太陽電池素子(6)>
太陽電池素子6としては、本発明に係る光電変換素子を用いることができる。
(太陽電池素子同士の接続)
太陽電池素子6は、薄膜太陽電池14の1個あたり1個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子6を設ける。具体的な太陽電池素子6の個数は任意に設定することができる。太陽電池素子6を複数設ける場合、太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられることが多い。複数の太陽電池素子を用いる場合、本発明に係る光電変換素子と、他の任意の光電変換素子を併用することもできる。
太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっている。この際、電圧を高めるため、通常は太陽電池素子は直列に接続される。もっとも、太陽電池素子の接続方法は任意であり、並列に接続されてもよい。
このように太陽電池素子6同士を接続する場合には、太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子6と太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池14の発電量を増加させるためである。
<3.7 封止材(7)>
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材5と同様のものを同様に用いることができる。
また、太陽電池素子6の受光面6a側にない構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要がない。したがって図2に示す薄膜太陽電池14において、封止材7としては可視光を透過させない材料を用いることもできる。
<3.8 ゲッター材フィルム(8)>
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子6の受光面6a側にない構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要がない。したがって図2に示す薄膜太陽電池14において、ゲッター材フィルム8としては可視光を透過させない材料を用いることもできる。また、ゲッター材フィルム8として、使用する水分吸収剤若しくは酸素吸収剤をゲッター材フィルム4よりも多く含有するフィルムを用いることも可能となる。このような吸収剤としては、水分吸収剤としてCaO、BaO、Zr−Al−BaOが挙げられる。また、酸素吸収剤として活性炭、モレキュラーシーブなどが挙げられる。
<3.9 ガスバリアフィルム(9)>
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム3と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子6の受光面6a側にない構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要がない。したがって図2に示す薄膜太陽電池14において、ガスバリアフィルム9としては可視光を透過させない材料を用いることもできる。
<3.10 バックシート(10)>
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。
また、太陽電池素子6の受光面6a側にない構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要がない。したがって図2に示す薄膜太陽電池14において、バックシート10としては可視光を透過させない材料を用いることもできる。例えば、バックシート10として、以下に説明するもの(i)〜(iv)を用いることが特に好ましい。
(i)バックシート10としては、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルム又はシートを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂並びにセルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のシートを使用することができる。
これらの樹脂のシートの中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂のシートを使用することが好ましい。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(ii)バックシート10としては、金属薄膜を用いることもできる。例えば、腐蝕防止処理を施したアルミニウム金属箔又はステンレス製薄膜などが挙げられる。なお、金属薄膜の材料として、1種の金属のみを用いてもよく、2種以上の金属を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(iii)バックシート10としては、例えばアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着した防水性の高いシートを用いても良い。フッ素系樹脂としては、例えば、一弗化エチレン(商品名:テドラー,デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとのコポリマー、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)およびフッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。なお、1種のフッ素系樹脂をバックシート10に用いてもよく、2種以上のフッ素系樹脂を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(iv)バックシート10としては、例えば、基材フィルムの片面あるは両面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、上記の無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したものを用いてもよい。なお、通常は、基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、ラミネート用接着剤で張り合わせることで積層する。無機酸化物の蒸着膜を設けることで、水分、酸素等の浸入を防止する防湿性に優れたバックシート10を実現することができる。
(基材フィルム)
基材フィルムとしては、基本的には、無機酸化物の蒸着膜等との密接着性に優れ、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性および耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムを使用することができる。
例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、並びにその他の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。
中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂のフィルムを使用することが好ましい。
上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)およびフッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂のフィルムを使用することがより好ましい。
更に、このフッ素系樹脂のフィルムの中でも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)、又はテトラフルオロエチレンとプロピレンとのコポリマーを含むフッ素系樹脂のフィルムが、強度等の観点から特に好ましい。なお、基材フィルムには1種のフッ素系樹脂を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、シクロペンタジエン及びその誘導体、シクロヘキサジエン及びその誘導体等の環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを使用することもより好ましい。
基材フィルムの膜厚としては、通常12μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、通常300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。膜厚を厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
(無機酸化物の蒸着膜)
無機酸化物の蒸着膜としては、金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば、任意のものを使用可能である。例えば、ケイ素(Si)又はアルミニウム(Al)の酸化物の蒸着膜を使用することができる。この際、酸化ケイ素としては例えばSiO(x=1.0〜2.0)を用いることができ、酸化アルミニウムとしては例えばAlO(x=0.5〜1.5)を用いることができる。
なお、蒸着膜には1種類の無機酸化物が蒸着されていてもよいし、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されていてもよい。
無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、通常50Å以上が好ましく、100Å以上がより好ましい。また、通常4000Å以下が好ましく、1000Å以下がより好ましい。膜厚を厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
蒸着膜の作製方法としては、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いることができる。具体的には例えば、有機ケイ素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとしてアルゴンガスおよびヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いることにより、基材フィルムの一方の面に酸化ケイ素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
(ポリプロピレン系樹脂フィルム)
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンと他のモノマー(例えばα−オレフィン等)との共重合体を使用することができる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック重合体を用いることもできる。
バックシート10として用いるためにより適した耐候性及び強度を得るためには、ポリプロピレン系樹脂の融点は通常164℃〜170℃が好ましく、比重は通常0.90〜0.91が好ましく、分子量は通常10万〜20万が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、その結晶性により性質が大きく支配されるが、アイソタクチックの高いポリマーは、引っ張り強さ、衝撃強度に優れ、耐熱性、耐屈曲疲労強度を良好であり、かつ、加工性は極めて良好なものである。
(接着剤)
基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、通常はラミネート用接着剤を用いる。これにより、基材フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとはラミネート用接着剤層を介して積層されることになる。
ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤およびシリコン系接着剤等が挙げられる。なお、1種の接着剤を用いてもよく、2種以上の接着剤を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型および分散型等のうちのいずれの形態でもよい。また、その形状は、フィルム・シート状、粉末状および固形状等のいずれの形態でもよい。さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、又は熱圧型等のうちのいずれの形態でもよい。
例えば、スピンコート法、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法およびその他等のコート法、並びに印刷法等の、任意の方法を用いて、上記の接着剤をフィルムにコーティングすることができる。バックシート10として用いるためにより適した強度及び接着力を得るためには、接着剤のコーティング量が、乾燥状態で0.1g/m〜10g/mであることが好ましい。
<3.11 シール材(11)>
シール材11は、上述した耐候性保護フィルム1、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3、ゲッター材フィルム4、封止材5、封止材7、ゲッター材フィルム8、ガスバリアフィルム9及びバックシート10の縁部をシールして、これらのフィルムで被覆された空間内に湿気及び酸素が浸入しないようにシールする部材である。
シール材11に要求される防湿能力の程度は、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることが好ましく、0.05g/m/day以下であることがより好ましい。水蒸気透過率を低くすることにより、太陽電池素子6を含む薄膜太陽電池14内の各部の劣化を抑えることができる。
従来はこのように高い防湿能力を有するシール材11の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなシール材11を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子の優れた性質を活かした薄膜太陽電池14の実現が容易となる。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、シール材11も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、シール材11の構成材料の融点は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、通常250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。融点を100℃以上とすることにより、薄膜太陽電池14の使用時にシール材11が融解するのを防ぐことができる。
シール材11を構成する材料としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂およびアクリル系樹脂等のポリマーが挙げられる。
なお、シール材11は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。
シール材11は、少なくともガスバリアフィルム3,9の縁部をシールできる位置に設ける。これにより、少なくともガスバリアフィルム3,9及びシール材11で囲まれた空間を密閉し、この空間内に湿気及び酸素が浸入しないようにすることができる。
このシール材11を形成する方法に制限は無いが、例えば、材料を耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に注入することにより形成できる。形成方法の具体例を挙げると、以下の方法が挙げられる。
即ち、例えば封止材5の硬化が進行する途中で、半硬化状態の薄膜太陽電池14を前記ラミネート装置から取り出し、太陽電池素子6の外周部であって耐候性保護フィルム1とバックシート10との間の部分に液状のポリマーを注入し、このポリマーを封止材5と共に硬化させればよい。
また、封止材5の硬化が終了した後にラミネート装置から取り出し、その後に注入したポリマーを単独で硬化させることにより、シール材11を形成してもよい。なお、前記のポリマーを架橋・硬化させるための温度範囲は通常130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。また、通常180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。この温度範囲でポリマーを硬化させることにより、太陽電池素子6を含む薄膜太陽電池14の各部の劣化を防ぎながら、ポリマーの十分な硬化を比較的短時間のうちに行うことができる。
<3.12 薄膜太陽電池の寸法>
本実施形態の薄膜太陽電池14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池14を形成することにより、薄膜太陽電池14を建材、自動車、インテリア等に容易に設置できるようになっている。薄膜太陽電池14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られる。また、薄膜太陽電池14は曲面にも設置可能であるため、更に多くの用途に使用しうる。本実施形態の薄膜太陽電池14は薄くて軽いため輸送や保管など流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
薄膜太陽電池14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、機械的強度を増す観点から、通常300μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましく、700μm以上がさらに好ましい。また、柔軟性を増す観点から、通常3000μm以下が好ましく、2000μm以下がより好ましく、1500μm以下がさらに好ましい。
<3.13 薄膜太陽電池の製造方法>
本実施形態の薄膜太陽電池14の製造方法に制限は無い。一例として、耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に、1個又は2個以上の太陽電池素子6を直列または並列接続したものを、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3,9、ゲッター材フィルム4,8及び封止材5,7と共に、一般的な真空ラミネート装置でラミネートすることで製造できる。
この際、ラミネートを十分なものとして密着性を増す観点から、加熱温度は通常130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。また、太陽電池素子6を含む薄膜太陽電池14の各部の劣化を防ぐ観点から、通常180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
また、ラミネートを十分なものとして密着性を増す観点から、加熱時間は通常10分以上が好ましく、20分以上がより好ましい。また、太陽電池素子6を含む薄膜太陽電池14の各部の劣化を防ぐ観点から、加熱時間は通常100分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。
圧力は通常0.001MPa以上が好ましく、0.01MPa以上がより好ましい。また、通常0.2MPa以下が好ましく、0.1MPa以下がより好ましい。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行うことができる。また、端部から封止材5,7がはみ出すこと、及び過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。
<3.14 薄膜太陽電池の用途>
本発明の太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。本発明の太陽電池、特には薄膜太陽電池はそのまま用いても、基材上に太陽電池を設置して太陽電池モジュールとして用いてもよい。例えば、図3に模式的に示すように、基材12上に薄膜太陽電池14を備えた太陽電池モジュール13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。具体例を挙げると、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けることにより、太陽電池モジュール13として太陽電池パネルを作製することができる。この太陽電池パネルは、建物の外壁等に設置することができる。
基材12は太陽電池素子6を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイアおよびチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリノルボルネン等の有機材料;紙および合成紙等の紙材料;ステンレス、チタンおよびアルミニウム等の金属;ステンレス、チタンおよびアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコートまたはラミネートしたもの等の複合材料;などが挙げられる。
なお、基材12としては、1種の材料を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、これら有機材料または紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させても良い。基材の形状はどのようなものでもよく、剛体であってもよいし、例えばシートのように柔軟性を有してもよい。
本発明に係る薄膜太陽電池を適用する分野の例としては、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池および玩具用太陽電池などが挙げられる。具体例として以下のようなものを挙げることができる。
(I.建築用途)
(I−1 ハウス屋根材)
基材として屋根用板材等を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池モジュールである太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルをハウスの屋根の上に設置すればよい。また、基材として瓦を直接用いることもできる。本発明に係る太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、瓦の曲線に密着させることができるので好適である。
(I−2 屋上)
ビルの屋上に薄膜太陽電池を取り付けることもできる。基材上に薄膜太陽電池を設けた太陽電池モジュールを用意し、これをビルの屋上に設置することもできる。この時基材とともに防水シートを併用し、防水性を付与することが好ましい。さらに、本発明に係る薄膜太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、平面ではない屋根、例えば折半屋根に密着させることもできる。この場合も防水シートを併用するのが好ましい。
(I−3 トップライト)
エントランスや吹き抜け部分に外装として本発明に係る薄膜太陽電池を用いることもできる。何らかのデザイン処理を施されたエントランス等は曲線が用いられている場合が多く、そのような場合において本発明に係る薄膜太陽電池の柔軟性が生かされる。またエントランス等にはシースルー部材が用いられる場合がある。このような場合、環境対策が重要視される時代において、有機太陽電池の緑色系の色合いによって意匠的な美観も得られるので好適である。
(I−4 壁)
基材として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池モジュールとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。また、カーテンウオールに設置することもできる。その他、スパンドレルおよび方立等への取り付けも可能である。
この場合、基材の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材の材料および寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。このような基材の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)などが挙げられる。
(I−5 窓)
本発明に係る薄膜太陽電池は、シースルーの窓に使用することもできる。環境対策が重要視される時代において、有機太陽電池の緑色系の色合いによって意匠的な美観も得られるので好適である。
(I−6 その他)
本発明に係る薄膜太陽電池は、建築の外装として、ひさし、ルーバー、手摺等にも使用できる。このような場合においても、本発明に係る薄膜太陽電池の柔軟性が、これらの用途にとって好適である。
(II 内装)
本発明に係る薄膜太陽電池はブラインドのスラットに取り付けることもできる。本発明に係る薄膜太陽電池は軽量であり、柔軟性に富むことから、このような用途で用いることが可能となる。また、有機太陽電池素子がシースルーであるという特性のために、本発明に係る薄膜太陽電池は内装用の窓としても使用することができる。
(III 野菜工場)
蛍光灯などの照明光を活用する植物工場の設置件数は増えているが、照明に掛かる電気代や光源の交換費用などによって栽培コストを引き下げにくいというのが現状である。そこで本発明に係る薄膜太陽電池を野菜工場に設置し、LEDまたは蛍光灯と組み合わせた照明システムを構築することができる。
このとき蛍光灯よりも寿命が長いLEDと本発明に係る太陽電池を組み合わせた照明システムを用いることで、照明に要するコストを現状に比べて30%程度減らせることができるので好適である。また、野菜等を一定温度で輸送するリーファー・コンテナ(reefer container)の屋根及び側壁などに本発明に係る太陽電池を用いることもできる。
(IV 道路資材・土木)
本発明に係る薄膜太陽電池は、駐車場の外壁、高速道路の遮音壁および浄水場の外壁等にも用いることができる。
(V 自動車)
本発明に係る薄膜太陽電池は、自動車のボンネット、ルーフ、トランクリッド、ドア、フロントフェンダー、リアフェンダー、ピラー、バンパーおよびバックミラーなどの表面に用いることができる。得られた電力は走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーのいずれにも供給することができる。太陽電池パネルにおける発電状況と、走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーにおける電力使用状況とを考慮して、電力供給源を薄膜太陽電池とするか、その他の電池または発電機とするか、これらの双方とするかを選択する制御手段を、さらに設置してもよい。こうして、得られた電力を適正かつ効率的に使用することができる。
本発明に係る薄膜太陽電池を自動車に用いる場合、基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料および寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。
このような基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)などが挙げられる。
<3.15 薄膜太陽電池の性能評価>
本発明に係る薄膜太陽電池は、以下のような性能を有することが好ましい。すなわち、下記に示す加速試験を行った際に、試験後の光電変換特性が十分に高いことが好ましい。
評価方法:加速試験は、環境試験機(例えば、エスペック社製SH−241)中の高温高湿環境に薄膜太陽電池を置くことにより行うことができる。高温高湿環境としては、40℃90%RHもしくは85℃85%RHを用いることができる。試験期間は、適宜選択することができるが、24時間以上は試験を行うことが好ましい。光電変換特性は、ソーラシュミレーターを用い、AM1.5G条件の光を照射強度100mW/cmで薄膜太陽電池に対して照射し、電流・電圧特性の測定を測定することにより調べることができる。かかる測定から得られる電流・電圧曲線から、エネルギー変換効率(PCE)、短絡電流、開放電圧、FF(フィルファクター)、直列抵抗、及びシャント抵抗などを求めることができる。
光電変換特性の加速試験前後を比較する式としては、例えば下式、
PCE変化率=(加速試験後のPCE)/(加速試験前のPCE)
に従って定義されるエネルギー変換効率(PCE)を用いることができる。
本発明に係る薄膜太陽電池のエネルギー変換効率(PCE)変化率は、0.86以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.88以上であり、より好ましくは0.90以上である。上のように定義されるPCE変化率の数値が大きいことは耐候性が高いことを意味するから、PCE変化率の数値を大きくすることにより、薄膜太陽電池の寿命を延ばすことができる。
本発明に係る薄膜太陽電池の好適な実施形態においては、荷重がかかった時にも、酸素/水分の捕捉剤を含む層と太陽電池素子の電極とが接触しない。このような構成をとることにより、太陽電池素子の劣化を防ぐことができる。酸素/水分の捕捉剤を含む層と太陽電池素子の電極とが接触するか否かは、ガスバリアフィルム側から捕捉剤を含む層を有機光電変換素子方向に押しつけることにより確認できる。
本発明に係る薄膜太陽電池は、その好適な実施形態において、良好な耐候性を実現する。この実施形態に係る薄膜太陽電池は、屋外暴露試験、耐候性試験機などにより耐候性試験を実施しても、性能を維持できる。上記のガスバリアフィルムとゲッター材フィルムとの少なくとも一方を有する、本発明に係る好適な実施形態に係る薄膜太陽電池は、電極の劣化を抑制することができるため、耐候性が高くなるものと考えられる。本発明に係る一実施形態に係る薄膜太陽電池は、耐候性保護シートを有することにより、より高い耐候性を実現しうる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1:ホスホール化合物の合成及び評価]
<ホスホール金錯体C2の合成>
Figure 2012134465
1,8−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]ナフタレン(化合物C1)(957 mg, 3.0 mmol)のジエチルエーテル溶液(90 mL)に−50℃でテトライソプロポキシチタン(1.75 mL, 6.0 mmol)とイソプロピルマグネシウムクロリド(2.0 M, 6.0 mL, 12 mmol)を加え、混合物を−30℃で2時間攪拌した。その後、反応溶液にジクロロ(フェニル)ホスフィン(0.80 mL, 6.0 mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した後、徐々に室温へ昇温し、途中でジクロロ(フェニル)ホスフィン(0.80 mL, 6.0 mmol)を追加してさらに20時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶かして短いシリカゲルカラムに通し、留出液にAuCl(SMe2)(900 mg, 3.1 mmol)を室温で加え、15分間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)にかけ、黄色のフラクションを濃縮し、ジクロロメタン/ヘキサンから再結晶することにより、化合物C2が薄黄色の固体(758 mg, 42 %)として得られた。
化合物C2:M.p. 165 ℃ (dec.); 1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz): δ0.35 (s, 18H), 7.43 (dt, 2H, J = 2.4 Hz, 7.8 Hz), 7.50-7.55 (m, 1H), 7.61-7.66 (m, 2H), 7.73 (dd, 2H, J = 7.3 Hz, 8.3 Hz), 7.92 (d, 2H, J = 6.8 Hz), 7.97 ppm (d, 2H, J = 8.3 Hz); HRMS (EI): Calcd for C26H29ClSi2PAu: 660.0899; Found: m/z 660.0915 (M+).
<ホスホール化合物C3の合成>
Figure 2012134465
化合物C2(440 mg, 0.67 mmol)のジクロロメタン溶液(16.5 mL)に室温でトリス(ジメチルアミノホスフィン)(0.33 mL, 1.8 mmol)を加え、混合物を室温で1分間攪拌した。その後、反応混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタン/メタノールから再結晶することにより、化合物C3が無色の固体(225 mg, 79 %)として得られた。
化合物C3:M.p. 186-188 ℃; 1H NMR (CD2Cl2, 300 MHz): δ0.23 (s, 18H), 7.24-7.28 (m, 2H), 7.32-7.37 (m, 3H), 7.62 (dd, 2H, J = 7.0 Hz, 8.4 Hz), 7.80 ppm (d, 4H, J = 7.3 Hz); HRMS (EI): Calcd for C26H29Si2P: 428.1545; Found: m/z 428.1550 (M+).
<ホスホール化合物C4の合成>
Figure 2012134465
化合物C3(308 mg, 0.72 mmol)のジクロロメタンCH2Cl2溶液 (10 mL)に室温でメタクロロ過安息香酸(max 77%, 187 mg, 0.83 mmol)を加え、混合物を室温で5分間攪拌した。その後、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で数回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去すると、化合物C4がほぼ定量的に得られた。化合物C4は結晶性がそれほどよくないため、再結晶は行わず、得られた化合物C4をそのまま次の反応で用いた。
化合物C4:1H NMR (CDCl3, 300MHz): δ0.29 (s, 18H), 7.36-7.40 (m, 2H), 7.44-7.49 (m, 1H), 7.68 (t, 2H, J = 7.7 Hz), 7.73-7.79 (m, 2H), 7.86 (d, 2H, J = 6.9 Hz), 7.91 ppm (d, 2H, J = 8.4Hz); HMRS (EI): Calcd for C26H29OSi2P: 444.1495; Found: m/z 444.1493 (M+).
<ホスホール化合物C5の合成>
Figure 2012134465
化合物C4(294 mg, 約0.66 mmol)のアセトニトリル溶液(25 mL)にN−ブロモスクシンイミド(1.21 g, 6.8 mol)を室温で加え、混合物を室温で1.5時間攪拌した後、濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で数回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン/ヘキサンから再結晶することにより、化合物C5が黄色の固体(365 mg, 87 %)として得られた。
化合物C5:M.p. 232-233℃; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ7.52 (dt, 2H, J = 3.3 Hz, 7.7 Hz), 7.64 (dt, 1H, J = 1.5 Hz, 7.3 Hz), 7.72 (dd, 2H, J = 7.3 Hz, 8.1 Hz), 7.85-7.93 (m, 2H), 7.97 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 8.18 ppm (d, 2H, J = 7.3 Hz); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ106.1 (d, J(P,C) = 107.5 Hz), 122.3, 124.8 (d, J(P,C) = 106.6 Hz), 128.3, 128.6, 129.2 (d, J(P,C) = 13.2 Hz), 130.9, 131.0, 131.5 (d, J(P,C) = 10.7 Hz), 133.5 (d, J(P,C) = 2.5 Hz), 144.2, 150.9 ppm (d, J (P,C) = 27.1 Hz); 31P NMR (CDCl3, 162 MHz): δ42.5 ppm; HRMS (EI): calcd for C20H11Br2OP: 455.8914; Found: m/z 455.8911 (M+); IR (KBr): νmax 1213 (P=O) cm-1.
<ホスホール化合物KUI−3の合成>
Figure 2012134465
化合物C5(550 mg, 1.20 mmol)のトルエン溶液(60 mL)にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(280 mg, 0.24 mmol)および4−トリブチルスタンニルビフェニル(1.54 mg, 3.47 mmol)を加え、110℃で21.5時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層をまとめて硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/アセトン=50/1)にかけ、オレンジ色の留出物を濃縮し、溶媒を留去した後、ジクロロメタン/ヘキサンから再結晶することにより、化合物KUI−3がオレンジ色の固体として得られた(400 mg, 55 %)。
化合物KUI−3:M.p. >300 ℃; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ7.33-7.41 (m, 4H; P-Ph + biphenyl), 7.42-7.48 (m, 5H; P-Ph + biphenyl), 7.57 (dd, J = 7.3, 8.1 Hz, 2H; naphthalene), 7.64 (t, J = 7.5 Hz, 8H; biphenyl), 7.84 (d, J = 7.7 Hz, 4H; biphenyl), 7.89 (d, J = 8.1 Hz, 2H; naphthalene), 7.89-7.95 (m, 2H; P-Ph), 8.06 ppm (d, J = 7.3 Hz, 2H; naphthalene); 31P NMR (CDCl3, 162 MHz): δ54.7 ppm; HRMS (EI): calcd for C44H29OP: 604.1956; Found: m/z 604.1957 (M+); IR (KBr): νmax 1194 (P=O) cm-1.
<ホスホール化合物KUI−4の合成>
Figure 2012134465
4−トリブチルスタンニルビフェニルの代わりに、2−トリブチルスタンニルベンゾチアゾールを用いたこと以外は、KUI−3の合成と同様の方法で、KUI−4を合成した。
化合物KUI−4:M.p. >300 ℃; 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.40-7.47 (m, 4H; m-Ph + benzothiazolyl), 7.53-7.60 (m, 3H; p-Ph + benzothiazolyl), 7.87 (pseudo t, J = 7.7 Hz, 2H; naphthalene), 7.92 (d, J = 8.1 Hz, 2H; benzothiazolyl), 8.04-8.10 (m, 2H; o-Ph), 8.11 (d, J = 8.1 Hz, 2H; naphthalene), 8.24 (d, J = 8.1 Hz, 2H; benzothiazolyl), 9.64 ppm (d, J = 7.0 Hz, 2H; naphthalene); 31P NMR (CDCl3, 162 MHz): δ 53.1 ppm; HRMS (EI): Calcd for C34H19N2OPS2: 566.0676. Found: m/z 566.0670 (M+); IR (KBr): νmax 1201 (P=O) cm-1.
<ホスホール化合物KUI−5の合成>
Figure 2012134465
4−トリブチルスタンニルビフェニルの代わりに、2−トリブチルスタンニルチアゾールを用いたこと以外は、KUI−3の合成と同様の方法で、KUI−5を合成した。
化合物KUI−5:M.p. 287 ℃; 1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz): δ 7.42 (ddd, J = 2.9, 7.3, 7.3 Hz, 2H; m-Ph), 7.50-7.53 (m, 1H; p-Ph), 7.51 (d, J = 2.9 Hz, 2H; thiazolyl), 7.82 (pseudo t, J = 7.8 Hz, 2H; naphthalene), 7.96 (dd, J = 7.3, 12.7 Hz, 2H; o-Ph), 8.09 (d, J = 8.3 Hz, 2H; naphthalene), 8.13 (d, J = 2.9 Hz, 2H; thiazolyl), 9.50 ppm (d, J = 7.3 Hz, 2H; naphthalene); 31P NMR (CDCl3, 162 MHz): δ 54.4 ppm.
<ホスホール化合物KUI−6の合成>
Figure 2012134465
4−トリブチルスタンニルビフェニルの代わりに、6−トリブチルスタンニル−2,2’−ビピリジンを用いたこと以外は、KUI−3の合成と同様の方法で、KUI−6を合成した。
化合物KUI−6:1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.33 (ddt, J = 1.0, 7.3, 7.3 Hz, 2H; bpy), 7.41-7.45 (m, 2H; m-Ph), 7.47-7.51 (m, 1H; p-Ph), 7.59 (t, J = 7.6 Hz, 2H; bpy), 7.75 (dt, J = 2.0, 7.7 Hz, 2H; bpy), 7.87 (pseudo t, J = 7.8 Hz, 2H; naphthalene), 7.97 (d, J = 7.8 Hz, 2H; bpy), 8.04 (d, J = 8.0 Hz, 2H; bpy), 8.03-8.08 (m, 2H; o-Ph), 8.25 (d, J = 8.3 Hz, 2H; naphthalene), 8.34 (d, J = 7.8 Hz, 2H; bpy), 8.72 (pseudo d, J = 4.4 Hz, 2H; bpy), 8.91 ppm (d, J = 7.3 Hz, 2H; naphthalene); 31P NMR (CDCl3, 162 MHz): δ 55.4 ppm.
<ホスホール化合物KUI−7の合成>
Figure 2012134465
ホスホール化合物KUI−3(120 mg, 0.20 mmol)のトルエン溶液(30 mL)にLawesson’s試薬(46.7 mg, 0.12 mmol)を室温で加え、110℃で2.5時間攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)にかけ、黄色の留出物を濃縮し、溶媒を留去した後、塩化メチレン/ヘキサンから再結晶することにより、ホスホール化合物KUI−7が黄色の固体として得られた(106 mg, 86 %)。
化合物KUI−7:M.p. >300 ℃; 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.36 (pseudo t, J = 7.3 Hz, 2H; biphenyl), 7.45 (pseudo t, J = 7.6 Hz, 4H; biphenyl), 7.41-7.52 (m, 3H; m-Ph + p-Ph), 7.55 (pseudo t, J = 7.8 Hz, 2H; naphthalene), 7.62 (dd, J = 1.5, 7.3 Hz, 4H; biphenyl), 7.63 (d, J = 7.8 Hz, 4H; biphenyl), 7.77 (d, J = 7.8 Hz, 4H; biphenyl), 7.88 (d, J = 8.3 Hz, 2H; naphthalene), 7.92 (d, J = 6.8 Hz, 2H; naphthalene), 8.00-8.08 ppm (m, 2H; o-Ph); 31P NMR (CDCl3, 162 MHz): δ 72.4 ppm; HRMS (EI): Calcd for C44H29PS: 620.1728. Found: m/z 620.1729 (M+).
<酸化還元電位の測定>
本発明に係るホスホール化合物(KUI−1〜7)の酸化還元電位を測定した。酸化還元電位は、各ホスホール化合物をジクロロメタン中に溶解し、支持電解質としてnBu4N/PF6を使用し、DPV(微分パルスボルタメトリー)により求めた。測定結果を以下の表に示す。
ホスホール化合物KUI−1及びKUI−2は、Chem.Eur.J.2009,15,10000―10004に記載の方法に従って合成した。また、比較例として、化合物KUI−alkyl及びDBPOBについても、酸化還元電位を測定した。化合物KUI−alkylは、Chem.Eur.J.2009,15,10000―10004に記載の方法に従って合成した。またDBPOBは、特開2010−129919号公報に記載の方法に従って合成した。
Figure 2012134465
Figure 2012134465
上記の表に示されるように、本発明に係る光電変換素子材料が含有するホスホール化合物は、還元電位が高い。すなわち、本発明に係る光電変換素子材料が含有するホスホール化合物はLUMOエネルギー準位が低く、電子を受け取りやすいものと考えられる。したがって本発明に係る光電変換素子材料は電流を流しやすく、電子輸送材料として好適であるものと考えられる。
[実施例2:光電変換素子の作製及び評価]
<実施例2−1>
電子供与性分子構造を有するレジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT、アルドリッチ社製)及び電子受容性分子構造を有するC70(Ind)(合成方法は後述する)を重量比1:0.95で、2.4重量%の濃度でo−ジクロロベンゼン(アルドリッチ社製)に溶解させた。得られた溶液を、40℃で窒素雰囲気中、4時間スターラーで攪拌混合した後に、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過し、活性層塗布液S1を作製した。
155nmの厚みでインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を堆積したガラス基板を界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、120℃で大気中5分間加熱乾燥した。最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
このガラス基板上に、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOSTM P VP AI4083」)をスピンコートした後、120℃で大気中10分間加熱乾燥した。更に窒素雰囲気下で上記基板を180℃で3分間加熱処理を施した。その膜厚は60nmであった。
次に、窒素雰囲気下で活性層塗布液S1をスピンコートで塗布することにより、200nmの厚みの活性層を形成させた。さらに、窒素雰囲気中150℃で10分間プレアニーリング処理を行った。
その後、バッファー層として6nmの膜厚のKUI−1を、更に、80nmの膜厚のアルミニウムを抵抗加熱型真空蒸着法により順次成膜させた後に、80℃で25分間ポストアニーリング処理を行い、5mm角のバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製した。
照射光源としてエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用い、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)により、作製した太陽電池の電流電圧特性を、4mm角のメタルマスクを付けて測定した。結果を表2に示す。
(C70(Ind)の合成方法)
活性層塗布液S1に含まれるC70(Ind)は、特許文献(国際公開第2008/018931号)を参考にして合成し、異性体混合物として取得した。GPC精製(クロロホルム)を行うことにより精製し、質量分析(APCI法、negative)により、目的物の質量と一致するm/z:1072[M]を検出した。
Figure 2012134465
<実施例2−2>
バッファー層としてKUI−1の代わりにKUI−2を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして太陽電池を作製し、作製した太陽電池の電流電圧特性を測定した。作製した太陽電池の電流電圧特性を表2に示す。
<実施例2−3>
バッファー層としてKUI−1の代わりにKUI−3を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして太陽電池を作製し、作製した太陽電池の電流電圧特性を測定した。作製した太陽電池の電流電圧特性を表2に示す。
<比較例2−4>
バッファー層としてKUI−1の代わりにDBPOBを用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして太陽電池を作製し、作製した太陽電池の電流電圧特性を測定した。作製した太陽電池の電流電圧特性を表2に示す。
<比較例2−5>
バッファー層を形成しなかったこと、及びポストアニーリング処理を行わなかったこと以外は、実施例2−1と同様にして太陽電池を作製し、作製した太陽電池の電流電圧特性を測定した。作製した太陽電池の電流電圧特性を表2に示す。
<比較例2−6>
活性層塗布液として、下記に作製方法を示す活性層塗布液S2を用いたことと、バッファー層としてKUI−1の代わりにBCP(東京化成製)を用いたこと、及びポストアニーリング処理を行わなかったこと以外は、実施例2−1と同様にして太陽電池を作製し、作製した太陽電池の電流電圧特性を測定した。作製した太陽電池の電流電圧特性を表2に示す。
(活性層塗布液S2の作製方法)
電子供与性分子構造を有するレジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT、アルドリッチ社製)及び電子受容性分子構造を有する1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C61)(PCBM、フロンティアカーボン社製)を重量比1:0.8で、2.1重量%の濃度でo−ジクロロベンゼン(アルドリッチ社製)に溶解させた。得られた溶液を、40℃で窒素雰囲気中、4時間スターラーで攪拌混合した後に、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過し、活性層塗布液S2を作製した。
Figure 2012134465
Figure 2012134465
上記の表に示されるように、実施例2−1〜2−3に係る、本発明に係る光電変換素子材料を用いた太陽電池は、これまでに知られている有機バッファー材料(例えばDBPOB,BCPなど)を用いた太陽電池よりも性能が高い。例えば、本発明に係る光電変換素子材料を用いた太陽電池は、高い開放電圧と高いFF(フィルファクター)とを両立することができ、高い変換効率を実現できる。以上より、本発明に係る光電変換材料は、バッファー材料として適しているものと言える。
100 光電変換素子
110 基板
120 電極
130 バッファー層
140 活性層
150 バッファー層
160 電極
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
11 シール材
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表されるホスホール化合物を含有する光電変換素子材料。
    Figure 2012134465
    (式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、任意の置換基を示し、Xは16族元素から選ばれる原子を表し、環1は置換基を有してもよい縮合多環であり、該縮合多環を形成する少なくとも1つの環は芳香環である。)
  2. 環1の縮合多環のうち、ホスホール環と直接縮合している環が、5員環又は6員環であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子材料。
  3. 環1の縮合多環のうち、ホスホール環と直接縮合している環が、5員環であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子材料。
  4. バッファー材料であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光電変換素子材料。
  5. 一対の電極間に少なくとも活性層とバッファー層とを有する光電変換素子であって、該バッファー層が請求項4に記載の光電変換素子材料を含有することを特徴とする光電変換素子。
  6. 前記活性層がn型半導体及びp型半導体を含有し、該p型半導体が高分子材料であることを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子。
  7. 請求項5又は6に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする太陽電池。
  8. 請求項7に記載の太陽電池を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
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