実施の形態1.
図1はパワーモジュールの回路構成図、図2は図1のパワーモジュールを用いて構成したハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成図、図3は図1のパワーモジュールを用いて構成したインターリーブ制御を行うためスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成図を、それぞれ示すものである。
図1において、パワーモジュール1aは、整流素子すなわちダイオード11〜14、スイッチング手段である半導体スイッチ素子21,22、電流検出手段である電流検出用シャント抵抗31を内蔵し、それらの素子および抵抗とパワーモジュール1aの内部配線にて接続された外部回路接続用の接続端子101〜108にて構成されている。ただし、接続端子101と103、接続端子102と104はパワーモジュール内部で接続されている。また、半導体スイッチ素子21,22は例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに代表されるバイポーラトランジスタである。
接続端子101にはダイオード11のカソード端子、接続端子102にはダイオード12のカソード端子がそれぞれ接続され、ダイオード11および12のアノード端子には電流検出用シャント抵抗31の一端が接続されている。接続端子105にはダイオード13のアノード端子および半導体スイッチ素子21のコレクタ端子が、接続端子106にはダイオード14のアノード端子および半導体スイッチ素子22のコレクタ端子が、接続端子107にはダイオード13および14のカソード端子がそれぞれ接続され、接続端子108には半導体スイッチ素子21および22のエミッタ端子ならびに電流検出用シャント抵抗31のダイオード11および12と接続していない側の一端が接続されている。これにより、パワーモジュール1aには、ダイオード11および12にて構成される第1のダイオード群の回路とダイオード13および14にて構成される第2のダイオード群の回路に分けられて設けられている。
パワーモジュール1aは、接続端子101〜108以外の部分を絶縁性の樹脂材料(図示せず)等により封止し、パワーモジュール内部の各半導体チップとパワーモジュール外部との絶縁性を確保して、仮にパワーモジュールに導電材が接触しても内部の各半導体チップが通電・短絡しないようにしている。パワーモジュール1aと外部回路とが接続する場合は接続端子101〜108を介して行われる。以下の実施の形態においても同様である。
次に、パワーモジュール1aを使用して構成される電力変換装置すなわち力率改善回路について説明する。
図2は、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成であって、パワーモジュール1aの接続端子103と105、接続端子104と106を接続し、接続端子101にはリアクトル3を介して図示しない商用の交流電源の一端に、その交流電源の他端を接続端子102には接続し構成される。接続端子107と108との間には整流された電圧が出力されることからコンデンサ4などを接続し、その出力を平滑し直流電圧に変換するとともに、その直流電圧を直流負荷または交流負荷を駆動するための電力変換回路を接続し使用する。なお、リアクトル3は接続端子101と交流電源との間の代わりに接続端子102と交流電源との間に接続してもよい。また、2つのリアクトルで構成されるコモンモードリアクトルの場合はコモンモードリアクトルの一方のリアクトルを接続端子101と交流電源の間に、もう一方のリアクトルを接続端子102と交流電源との間に接続して使用する。
このような接続により、パワーモジュール1aは、ダイオード13、14にて構成される第1の整流手段を正極側整流部、ダイオード11、12にて構成される第2の整流手段を負極側整流部として、正極側整流部と負極側整流部とをパワーモジュール1aの外部で接続し交流電源の出力を整流するハーフブリッジ型単相コンバータ回路の交流整流部を構成できる。
このようにして構成されたハーフブリッジ型単相コンバータ回路は、ダイオード11〜14が単相交流入力整流回路を構成し、半導体スイッチ素子21および22はそれぞれダイオード11および12に並列かつ逆極性の接続とし、電流検出用シャント抵抗31による電流検出結果をもとにハーフブリッジ型単相コンバータ回路の制御方式に基づいて半導体スイッチ素子21および22が制御され、交流電源の力率改善および整流後の直流電圧等の制御を行う。
図3は、スイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成であって、パワーモジュール1aの接続端子103とダイオードモジュール2の接続端子201、パワーモジュール1aの接続端子104とダイオードモジュール2の接続端子202をそれぞれ接続し、ダイオードモジュール2の接続端子203にはリアクトル3aおよび3bのそれぞれの一端を接続するとともに、リアクトル3aのもう一方の一端を接続端子105に、リアクトル3bのもう一方の一端を接続端子106に、それぞれ接続し構成される。なお、接続端子101、102には図示しない交流電源が接続される。また、ダイオードモジュール2はダイオード41,42を備え、ダイオード41,42のカソード端子が接続端子203に接続され、ダイオード41のアノード端子が接続端子201、ダイオード42のアノード端子が接続端子202に、それぞれ接続されたモジュールである。これにより、接続端子107と108との間には整流された電圧が出力されることからコンデンサ4などを接続し、その出力を平滑し直流電圧に変換するとともに、その直流電圧を直流負荷または交流負荷を駆動するための電力変換回路を接続し使用する。なお、ダイオードモジュール2の代わりに単体のダイオードを2個用いて回路を構成しても構わない。
このような接続により、パワーモジュール1aは、ダイオード11、12にて構成されるパワーモジュール1aの第2の整流手段を負極側整流部、ダイオードモジュール2を正極側整流部として、負極側整流部と正極側整流部とを接続して交流電源の出力を整流する直流チョッパ型単相コンバータ回路の交流整流部を構成できるとともに、ダイオード13、14にて構成されるパワーモジュール1aの第1の整流手段を半導体スイッチ素子21および22に直列に接続し、半導体スイッチ素子21および22のスイッチング時に協調動作しスイッチングを行い半導体スイッチ素子21および22側に逆流する電流を阻止する直流チョッパ型単相コンバータ回路の直流整流部として構成できる。
このようにして構成された直流チョッパ型単相コンバータ回路は、ダイオード11および12ならびにダイオードモジュール2のダイオード41および42が単相交流入力整流回路を構成し、半導体スイッチ素子21および22が交流電源の力率改善および整流後の直流電圧の制御を行うスイッチング回路、ダイオード13および14が半導体スイッチ素子21および22のスイッチング動作に協調しスイッチングを行うスイッチング用ダイオードとなる。よって、電流検出用シャント抵抗31による電流検出結果をもとにインターリーブ制御方式に基づいて半導体スイッチ素子21および22が制御され、交流電源の力率改善および整流後の直流電圧等の制御を行う。
なお、図1,図2および図3においては、半導体スイッチ素子21および22に、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに代表されるバイポーラトランジスタを使用するものとしているが、例えばMOSFETに代表される電界効果型トランジスタを使用するものとしてもよい。この場合、上述のコレクタ端子はソース端子、エミッタ端子はドレイン端子と読み替える。以下の実施の形態においても同様である。
このように、ダイオードモジュール2およびリアクトル3,3a,3bを外部回路として追加することで、パワーモジュール1aはハーフブリッジ型単相コンバータ回路およびスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の両方に適用することができる。
以上をまとめると、パワーモジュール1aは、パワーモジュール1a内に第1の整流手段と第2の整流手段とをそれぞれ独立して設けたので、第1の整流手段を正極側整流部、第2の整流手段を負極側整流部とし、正極側整流部と負極側整流部とを接続し交流整流部を形成することでハーフブリッジ型単相コンバータ回路を構成したり、第2の整流手段を負極側整流部とし、負極側整流部と外部のダイオードモジュールと接続し交流整流部を形成するとともに、第1の整流手段と半導体スイッチ素子とを接続し半導体スイッチ素子のスイッチング動作に協調しスイッチングを行い逆流電流の阻止を行う直流整流部とした直流チョッパ型単相コンバータ回路を構成したりできる。
すなわち、パワーモジュール1aの第1の整流手段は、交流整流部あるいは直流整流部として構成できる。
よって、パワーモジュール1aはハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成およびスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成のどちらにでも使用することができる。すなわち、異なる回路構成の単相型力率改善回路に同一のパワーモジュールを使用することができ、パワーモジュールを共通化できる。したがって、パワーモジュールの製造工程を変更することなく異なる回路構成の力率改善回路すなわち電力変換装置に使用できるパワーモジュールを製造することができ、パワーモジュールの製造費用を抑制することができる。
これにより、製造時点での異なる回路構成に対応させる製造の段取り替えなどの無駄な作業も減り、製造費用を抑制に貢献できる。また、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路向けに製造したパワーモジュールであっても、直流チョッパ型単相コンバータ回路を製作するために使用でき、また、直流チョッパ型単相コンバータ回路向けに製造したパワーモジュールであっても、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路を製作するために使用でき、製造の無駄を省くとともに、生産の効率を上げ、流通・保管等の無駄も省ける。
また、図2、3の回路構成では、パワーモジュール1aのダイオード11〜14の動作および必要な特性が異なるため、その特性に対応したダイオードを用いることが望ましい。
例えば、ダイオード11および12を逆回復時間の長いソフトリカバリダイオード(SRD)とし、ダイオード13および14を逆回復時間の短いファストリカバリダイオード(FRD)とすると、図2のハーフブリッジ型単相コンバータ回路でも、図3のスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路でもソフトリカバリダイオードおよびファストリカバリダイオードの特性を発揮させた回路構成とすることができる。
ダイオードは、アノードからカソードの順方向に電圧を印加して順電流を流す順バイアスの状態から、逆方向に電圧を印加して電流を阻止する逆バイアスの状態に急激に転換すると一時的にインピーダンスがゼロとなる逆回復期間が現れ、その期間では逆バイアスによって本来流すべきではない逆流電流が流れてダイオードで損失が発生するだけでなく、ダイオード内部のインダクタンス成分とキャパシタンス成分の共振によってダイオードに振動電流が流れる場合がある。すなわち、ダイオードのリカバリ損失となる。半導体スイッチ素子のスイッチング動作により高速かつ高い頻度でバイアスの転換が生じるダイオードに逆回復時間の長いダイオードを使用すると、逆流電流の流れる時間が長くなり損失が増大するだけでなく、ダイオードの内部インダクタンス成分およびキャパシタンス成分に大きなエネルギーが蓄積されるため振動電流も増大し、半導体スイッチ素子やダイオードに過電圧や熱負荷が加わり半導体素子破壊の原因となる。したがって、このようなダイオードには逆回復時間の短いファストリカバリダイオードを適用するのが一般的である。その一方で、一般的にファストリカバリダイオードはソフトリカバリダイオードよりも部品コストが増大するとされ、ファストリカバリダイオードを多用すると製造費用が増大する。
これに対して図2のハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成の動作について説明する。交流電源の交流電圧が正の半波、すなわち接続端子101にリアクトル3を介して正の電圧、接続端子102に負の電圧が印加されている場合、半導体スイッチ素子21がオンすると、リアクトル3を介して交流電源から接続端子101、半導体スイッチ素子21、電流検出用シャント抵抗31、ダイオード12を通り、接続端子102から交流電源に戻る経路の電流が流れ、リアクトル3にエネルギーが蓄積される。この状態で、半導体スイッチ素子21がオフすると、リアクトル3を介して交流電源から接続端子102、ダイオード13、コンデンサ4、電流検出用シャント抵抗31、ダイオード12を通り、接続端子102から交流電源に戻る経路の電流が流れ、リアクトル3に蓄積したエネルギーがコンデンサ4に充電される。
すなわち、ダイオード12は、半導体スイッチ素子21のオンオフに関わらず、交流電源を整流する整流用ダイオードとして機能する。一方、ダイオード13は、半導体スイッチ素子21がオフのとき交流電源からコンデンサ4の方向すなわちダイオード13のアノード端子からカソード端子向かって電圧が印加される順バイアス状態となりダイオード13は電流を流し、半導体スイッチ素子21がオンのときコンデンサ4から半導体スイッチ素子21の方向すなわちダイオード13のカソード端子からアノード端子に向かって電圧が印加される逆バイアス状態となりダイオード13は電流が流れることを阻止するスイッチング用ダイオードとして機能する。
同様に、交流電源の交流電圧が負の半波、すなわち接続端子101にリアクトル3を介して負の電圧、接続端子102に正の電圧が印加されている場合、半導体スイッチ素子22がオンすると、交流電源から接続端子102、半導体スイッチ素子22、電流検出用シャント抵抗31、ダイオード11を通り、接続端子101からリアクトル3を介して交流電源に戻る経路の電流が流れ、リアクトル3にエネルギーが蓄積される。この状態で、半導体スイッチ素子22がオフすると、交流電源から接続端子102、ダイオード14、コンデンサ4、電流検出用シャント抵抗31、ダイオード11を通り、接続端子101から交流電源に戻る経路の電流が流れ、リアクトル3に蓄積したエネルギーがコンデンサ4に充電される。
すなわち、ダイオード11は、ダイオード12同様、半導体スイッチ素子21のオンオフに関わらず、交流電源を整流する整流用ダイオードとして機能し、ダイオード14は、ダイオード13同様、半導体スイッチ素子21がオンオフのとき順バイアス状態と逆バイアス状態とを転換し、ダイオード14は電流を流したり、阻止したりするスイッチング用ダイオードとして機能する。
この半導体スイッチ素子21あるいは22をオンオフする動作を繰り返すことによって、リアクトル3へのエネルギー蓄積とリアクトル3からコンデンサ4への充電を繰り返し行いコンデンサの両端の電圧すなわちハーフブリッジ型単相コンバータ回路の出力電圧を、交流電圧を整流し平滑したときの電圧より昇圧させる。
なお、昇圧させる昇圧率は、半導体スイッチ素子21および22のオンオフする動作周期すなわちスイッチング周波数とリアクトル3のエネルギー蓄積能力すなわちリアクトル容量によって変わる。すなわち、同じ昇圧率ならばスイッチング周波数を高くするとリアクトル3の一回のスイッチング動作によるエネルギー蓄積能力が少なくて済むので、リアクトル容量は小さくて済む。当然、スイッチング周波数が低いとリアクトル容量は大きくする必要がある。一方、スイッチング周波数を高くすることによって、ダイオード13、14のバイアス転換も高速化しスイッチング動作における逆流電流も増加することになる。
なお、交流電源の交流電圧が正の半波のとき、半導体スイッチ素子22がオンオフしても電流経路には何も影響を与えず、交流電源の交流電圧が負の半波のとき、半導体スイッチ素子21がオンオフしても電流経路には影響を与えない。よって、半導体スイッチ素子21、22は交流電源の交流電圧が正の半波、負の半波に関わらず、両方ともオンオフ動作していても構わない。
また、半導体スイッチ素子21あるいは22がオンするとリアクトル3へのエネルギー蓄積のため入力電流は上昇し、半導体スイッチ素子21あるいは22がオフするとリアクトル3からコンデンサ4へのエネルギー充電のため入力電流は減少する。これを制御して、入力電流を交流電源の交流電圧と同位相の正弦波に制御することによって交流電源の力率を改善させる。すなわち、交流電源の力率を1に近づける。
なお、入力電流を正弦波に近づけるためには、半導体スイッチ素子21あるいは22がオンオフしたときの入力電流の上昇と下降の幅すなわちリップルを小さくする必要があるが、半導体スイッチ素子21および22のオンオフする動作周期すなわちスイッチング周波数を高くすることによって入力電流のリップルを小さくすることができる。一方、スイッチング周波数を高くすることによって、ダイオード13、14のバイアス転換も高速化しスイッチング動作における逆流電流も増加することになる。
また、同様に図3のスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成の動作について説明する。半導体スイッチ素子21がオンすると、交流電源から接続端子101、ダイオード41あるいは接続端子102、ダイオード42を介して、リアクトル3a、半導体スイッチ素子21、電流検出用シャント抵抗31を通り、ダイオード11、接続端子101あるいはダイオード12、接続端子102から交流電源に戻る経路にて電流が流れ、リアクトル3aにエネルギーが蓄積される。次に、半導体スイッチ素子21がオフすると、交流電源から接続端子101、ダイオード41あるいは接続端子102、ダイオード42を介して、リアクトル3a、ダイオード13、コンデンサ4、電流検出用シャント抵抗31を通り、ダイオード11、接続端子101あるいはダイオード12、接続端子102から交流電源に戻る経路にて電流が流れ、リアクトル3aに蓄積したエネルギーがコンデンサ4に充電される。
同様に、半導体スイッチ素子22がオンすると、交流電源から接続端子101、ダイオード41あるいは接続端子102、ダイオード42を介して、リアクトル3b、半導体スイッチ素子22、電流検出用シャント抵抗31を通り、ダイオード11、接続端子101あるいはダイオード12、接続端子102から交流電源に戻る経路にて電流が流れ、リアクトル3bにエネルギーが蓄積される。次に、半導体スイッチ素子22がオフすると、交流電源から接続端子101、ダイオード41あるいは接続端子102、ダイオード42を介して、リアクトル3b、ダイオード14、コンデンサ4、電流検出用シャント抵抗31を通り、ダイオード11、接続端子101あるいはダイオード12、接続端子102から交流電源に戻る経路にて電流が流れ、リアクトル3bに蓄積したエネルギーがコンデンサ4に充電される。
以上の動作から、ダイオード11、12、41、42は、半導体スイッチ素子21のオンオフに関わらず、交流電源を整流する整流用ダイオードとして機能する。一方、ダイオード13は、半導体スイッチ素子21がオフのとき交流電源からコンデンサ4の方向すなわちダイオード13のアノード端子からカソード端子向かって電圧が印加される順バイアス状態となりダイオード13は電流を流し、半導体スイッチ素子21がオンのときコンデンサ4から半導体スイッチ素子21の方向すなわちダイオード13のカソード端子からアノード端子向かって電圧が印加される逆バイアス状態となりダイオード13は電流が流れることを阻止するスイッチング用ダイオードとして機能する。また、ダイオード14も同様に、半導体スイッチ素子22がオンオフのとき順バイアス状態、逆バイアス状態と状態を転換し、ダイオード14は電流を流したり、阻止したりするスイッチング用ダイオードとして機能する。
また、直流チョッパ型単相コンバータ回路の出力電圧も単相ハーフブリッジ型コンバータ回路同様、半導体スイッチ素子21、22のオンオフ動作の繰り返しによって、交流電圧を整流し平滑したときの電圧より昇圧させる。その昇圧率も、スイッチング周波数とリアクトル容量によって決められ、同じ昇圧率ならばスイッチング周波数を高くするとリアクトル容量は小さくて済むが、ダイオード13、14のバイアス転換も高速化しスイッチング動作における逆流電流も増加することになる。
また、交流電源の力率を改善する方法も、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路同様、半導体スイッチ素子21、22のオンオフ動作により、交流電源からの入力電流を増減させ、交流電源の交流電圧と同位相の正弦波に制御することによって交流電源の力率を改善させる。よって、スイッチング周波数を高くすることにより入力電流のリップルを小さくすることができるが、ダイオード13、14のバイアス転換も高速化しスイッチング動作における逆流電流も増加することになる。
なお、スイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路では、半導体スイッチ素子21がオンオフする位相と半導体スイッチ素子22がオンオフする位相をずらしたスイッチング制御すなわちインターリーブ制御を行うこともできる。半導体スイッチ素子21がオンしたとき半導体スイッチ素子22がオフし、半導体スイッチ素子21がオフしたとき半導体スイッチ素子22がオンするというタイミング制御を行い、半導体スイッチ素子21、22に交互に電流を流すことによって、回路全体では半導体スイッチ素子1個に対して2倍の電流を流せるようにしている。なお、ここでは半導体スイッチ素子は2個であるので、電流は2倍であるが、3個で構成すると3倍、4個で構成すると4倍の電流を制御できるようになる。
なお、図3の構成にて、必ずしも、インターリーブ制御を行う必要は無く、半導体スイッチ素子21、22が同時にオンする制御であっても構わない。また、半導体スイッチ素子21をスイッチングさせ、半導体スイッチ素子22を休止させるような制御であっても構わない。また、スイッチングさせる半導体スイッチ素子と休止させる半導体スイッチ素子を逆にしたり、時間や半導体スイッチ素子の温度などにてスイッチングと休止とを入れ替えたりしても構わない。
また、図2のハーフブリッジ型単相コンバータ回路および図3のスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路では、半導体スイッチ素子21,22のオンオフ制御を一定周波数で行い、半導体スイッチ素子21あるいは22がオフとなりリアクトル3または3a,3bの電流がゼロになる前に半導体スイッチ素子21あるいは22をオンする電流連続モード型のスイッチング制御を行う。電流連続モード型のスイッチング制御を行うとダイオード13、14のバイアス転換のときのバイアス電圧の差も大きくなるので逆流電流も顕著に現れるようになる。これに対して、逆流電流を緩和するためリアクトル3または3a、3bを流れる電流がゼロとなると同時に半導体スイッチ素子21あるいは22をオンする電流臨界モード型のスイッチング制御を行うこともできる。
また、以上のような回路構成と制御により、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路では、交流電源の正の半波と負の半波で2つの半導体スイッチ素子に交互に通電されるため、半導体スイッチ素子1個に損失集中することなく、また、部品点数も少ないため回路構成がシンプルにできるなどの長所がある。よって、大電流・高電圧の入出力となる大電力回路を比較的容易に実現でき、また、他の方式に比べて損失・発熱を分散させるため効率が良い回路となる。しかし、半導体スイッチ素子の性能によってスイッチング周波数の上限が決められるため、高周波化は難しく、リアクタを小型化するなども難しい。よって、同程度の容量の回路方式と比べて大型化するため、小容量の回路では不向きであるという短所がある。
また、スイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路では、インターリーブ制御が行えるため、半導体スイッチ素子1個あたりのスイッチング周波数が低くても交互にスイッチングすることで見かけ上のスイッチング周波数は倍となり、リアクタなどが小さくできる。それに伴って、回路の小型化が容易であるという長所がある。しかし、半導体スイッチ素子2個を交互にスイッチングさせる制御やそれぞれのスイッチング回路に均等な配分の電流を流すバランスが取れた制御を行う必要があるなど、制御自身が複雑であり、部品点数が増えコストアップする。また、高周波化に伴うノイズ発生量を抑えられないのでノイズ耐力の低い機器があるような環境や回路自身を大電流・高電圧の入出力とする大容量化を行っていくには不向きであるという短所がある。
よって、回路はその長所と短所のため統合しにくく、各回路を適材適所にて使用するため、パワーモジュールはその用途に合わせて、何種類も製作していたが、図1のパワーモジュール1aによって、1種類のパワーモジュールにより、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路でも直流チョッパ型単相コンバータ回路でも構成ができるため、小容量から大容量までの用途の回路を構成できる。すなわち、回路設計者が、用途に応じてモジュールを選択していたが、どちらの回路でも自由な回路が設計できる。また、パワーモジュールの製作する側も、1種類のモジュールの製作・生産にて済むため、生産管理が容易である。
以上をまとめると、パワーモジュール1aの第1のダイオード群の回路であるダイオード11および12は、図2のハーフブリッジ型単相コンバータ回路の構成においても、図3のスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の構成においても、交流電源の電圧・電流を整流する単相交流入力整流回路の整流用ダイオードとして機能する。よって、ダイオード11および12は半導体スイッチ素子のスイッチング動作による高速のバイアス転換が生じることはなく、逆回復時間の長いソフトリカバリダイオードであっても逆流電流による損失や振動電流の増大は生じない。
一方、パワーモジュール1aの第2のダイオード群の回路であるダイオード13および14は、図2のハーフブリッジ型単相コンバータ回路の構成では単相交流入力整流回路の整流用ダイオードとしての機能のほか半導体スイッチ素子21および22のスイッチング用ダイオードすなわちリカバリダイオードとしても機能し、図3のスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の構成でも同様に半導体スイッチ素子21および22のリカバリダイオードとして機能する。半導体スイッチ素子21および22のターンオンの際には高速のバイアス転換が生じることから、ダイオード13および14の逆流電流によって発生する損失および振動電流の低減のためファストリカバリダイオードを使用するのが適当である。
よって、パワーモジュール1aの第1のダイオード群の回路であるダイオード11および12には部品コストが安いソフトリカバリダイオードを適用することで、パワーモジュール1a全体での製造費用を低減させ、パワーモジュール1aの第2のダイオード群の回路であるダイオード13および14には損失や振動電流を低減するファストリカバリダイオードを適用することで、パワーモジュール1aを適用する電力変換装置延いては電力変換装置を内蔵した電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、電力変換装置の放熱器および保護回路を小型・簡易化して電力変換装置あるいは電気機器の製造費用を低減することができる。
以上のように、パワーモジュール1aは第1のダイオード群の回路であるダイオード11および12にソフトリカバリダイオードを、第2のダイオード群の回路であるダイオード13および14にファストリカバリダイオードを適用したので、パワーモジュール1aを適用する電力変換装置延いては電力変換装置を内蔵した電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、パワーモジュール1aとこれを適用する電力変換装置あるいは電気機器の放熱器および保護回路を小型化・簡略化して製造費用を抑制することができる。
また、1種類のパワーモジュールにより、小容量から大容量までの用途の回路を構成でき、回路設計者は、用途に応じてモジュールを選択する必要なく自由な回路が設計できる。また、パワーモジュールの製作する側も、製造時点での異なる回路構成に対応させる製造の段取り替えなどの無駄な作業も減り、製造費用を抑制に貢献できる。また、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路向けに製造したパワーモジュールであっても、直流チョッパ型単相コンバータ回路を製作するために使用でき、また、直流チョッパ型単相コンバータ回路向けに製造したパワーモジュールであっても、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路を製作するために使用でき、製造の無駄を省くとともに、生産の効率を上げ、流通・保管等の無駄も省ける。1種類のモジュールの製作・生産にて済むため、生産管理が容易である。
なお、以上の制御を実現できる制御回路は、パワーモジュール1aに内蔵されていても、パワーモジュール1aの外に実装されていても構わない。
実施の形態2.
次に、モジュール内に図1とは別の回路構成を持つが、図2、3と同じ力率改善回路を構成できるパワーモジュールの例を説明する。
図4はパワーモジュールの回路構成図、図5は図4のパワーモジュールを用いて構成したハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成図、図6は図4のパワーモジュールを用いて構成したスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成図を、それぞれ示すものである。
図4において、パワーモジュール1bは、整流素子すなわちダイオード11〜14、スイッチング手段である半導体スイッチ素子21,22、電流検出手段である電流検出用シャント抵抗31を内蔵し、それらの素子および抵抗とパワーモジュール1aの内部配線にて接続された外部回路接続用の接続端子101〜106,108および117にて構成されている。なお、接続端子101と103、接続端子102と104はパワーモジュール内部で接続されている。
接続端子101にはダイオード11のカソード端子とダイオード13のアノード端子とが、接続端子102にはダイオード12のカソード端子とダイオード14のアノード端子とが、接続端子117にはダイオード13および14のカソード端子がそれぞれ接続され、ダイオード11および12のアノード端子には電流検出用シャント抵抗31の一端が接続されている。接続端子105には半導体スイッチ素子21のコレクタ端子が、接続端子106には半導体スイッチ素子22のコレクタ端子がそれぞれ接続され、接続端子108には半導体スイッチ素子21および22のエミッタ端子ならびに電流検出用シャント抵抗31のダイオード11および12と接続していない側の一端が接続されている。これにより、パワーモジュール1bには、ダイオード11〜14にて単相交流入力整流回路が構成されて設けられるとともに、半導体スイッチ素子21、22が単相交流入力整流回路と独立して設けられている。
パワーモジュール1bも、パワーモジュール1a同様、接続端子101〜106、108および117以外の部分を絶縁性の樹脂材料(図示せず)等により封止し、モジュール内部の各半導体チップとモジュール外部との絶縁性を確保して、仮にモジュールの外部に導電材が接触しても内部の各半導体チップが通電・短絡しないようにしている。よって、パワーモジュール1bと外部回路とが接続する場合は接続端子101〜106、108および117を介して行われる。以下の実施の形態においても同様である。
次に、パワーモジュール1bを使用して構成される電力変換装置すなわち力率改善回路について説明する。
図5は、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成であって、パワーモジュール1bの接続端子103と105、接続端子104と106を接続し、接続端子101にはリアクトル3を介して図示しない商用の交流電源の一端に、その交流電源の他端を接続端子102には接続し構成される。接続端子117と108との間には整流された電圧が出力されることからコンデンサ4などを接続し、その出力を平滑し直流電圧に変換するとともに、その直流電圧を直流負荷または交流負荷を駆動するための電力変換回路を接続し使用する。なお、図2同様、リアクトル3は接続端子101と交流電源との間の代わりに接続端子102と交流電源との間に接続してもよく、2つのリアクトルで構成されるコモンモードリアクトルの場合はコモンモードリアクトルの一方のリアクトルを接続端子101と交流電源の間に、もう一方のリアクトルを接続端子102と交流電源との間に接続して使用する。
このようにして構成されたハーフブリッジ型単相コンバータ回路は、ダイオード11〜14が単相交流入力整流回路となり、半導体スイッチ素子21および22はそれぞれダイオード11および12に並列かつ逆極性の接続となる。よって、電流検出用シャント抵抗31による電流検出結果をもとにハーフブリッジ型単相コンバータ回路の制御方式に基づいて半導体スイッチ素子21および22が制御され、交流電源の力率改善および整流後の直流電圧等の制御を行う。
図6は、スイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成であって、パワーモジュール1aの接続端子117とリアクトル3aの一端および3bの一端を同時に接続し、リアクトル3aのもう一方の一端をダイオードモジュール2の接続端子201に、リアクトル3bのもう一方の一端をダイオードモジュール2の接続端子202に、それぞれ接続し構成される。なお、接続端子101、102には図示しない交流電源が接続される。また、ダイオードモジュール2はダイオード41,42を備え、ダイオード41,42のカソード端子が接続端子203に接続され、ダイオード41のアノード端子が接続端子201、ダイオード42のアノード端子が接続端子202に、それぞれ接続されたモジュールである。これにより、接続端子203と108の間には整流された電圧が出力されることからコンデンサ4などを接続し、その出力を平滑し直流電圧に変換するとともに、その直流電圧を直流負荷または交流負荷を駆動するための電力変換回路を接続し使用する。なお、ダイオードモジュール2の代わりに単体のダイオードを2個用いて回路を構成しても構わない。
このようにして構成されたスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路は、ダイオード11〜14が単相交流入力整流回路を構成し、半導体スイッチ素子21および22が交流電源の力率改善および整流後の直流電圧の制御を行うスイッチング回路、ダイオードモジュール2のダイオード41および42が半導体スイッチ素子21および22のスイッチング用ダイオードとなる。よって、電流検出用シャント抵抗31による電流検出結果をもとにインターリーブ制御方式に基づいて半導体スイッチ素子21および22が制御され、交流電源の力率改善および整流後の直流電圧等の制御を行う。
なお、図1〜3同様、図4、図5および図6においても、半導体スイッチ素子21および22は、バイポーラトランジスタであっても、電界効果型トランジスタであっても構わない。電界効果型トランジスタの場合、コレクタ端子はソース端子、エミッタ端子はドレイン端子と読み替える。以下の実施の形態においても同様である。
このように、ダイオードモジュール2およびリアクトル3,3a,3bを外部回路として追加することで、パワーモジュール1bはハーフブリッジ型単相コンバータ回路およびスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の両方に適用することができる。
以上のように、パワーモジュール1bはハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成およびスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成のどちらにでも使用することができる。すなわち、異なる回路構成の単相型力率改善回路に同一のパワーモジュールを使用することができ、パワーモジュールを共通化できる。したがって、パワーモジュールの製造工程を変更することなく異なる回路構成の力率改善回路すなわち電力変換装置に使用できるパワーモジュールを製造することができ、パワーモジュールの製造費用を抑制することができる。
また、図5、6の回路構成でも、パワーモジュール2aのダイオード11〜14、ダイオードモジュール2はダイオード41、42の動作および必要な特性が異なるため、その特性に対応したダイオードを用いることが望ましい。
図5の単相ハーフブリッジ型コンバータ回路の場合、動作は図2と同じであることから、ダイオード11、12は単相交流入力整流回路の整流用ダイオードとして機能するため、逆回復時間の長いソフトリカバリダイオードであっても構わない。一方、ダイオード13、14は半導体スイッチ素子21および22のスイッチング用ダイオードとして機能するため損失および振動電流の低減のためファストリカバリダイオードを使用するのが適当である。
図6のスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の場合、動作は図3と同じであることから、ダイオード11〜14は単相交流入力整流回路の整流用ダイオードとして機能するため、逆回復時間の長いソフトリカバリダイオードであっても構わない。一方、ダイオード41、42は半導体スイッチ素子21および22のスイッチング用ダイオードとして機能するため損失および振動電流の低減のためファストリカバリダイオードを使用するのが適当である。
よって、パワーモジュール1bにソフトリカバリダイオードとファストリカバリダイオードとを適所に配置した場合、共通化はできないが、図5のハーフブリッジ型単相コンバータ回路の場合は、ダイオード13、14と半導体スイッチ素子21、22とをパワーモジュール1b内に内蔵配置することができるため、それぞれの半導体素子を最短で接続し、内部インダクタンス成分およびキャパシタンス成分を極力抑え、振動電流を増大させることを防ぐことができる。すなわち、モジュールから出されるノイズを抑制するとともに進入するノイズに強いパワーモジュールとすることができる。また、図6の直流チョッパ型単相コンバータ回路の場合は、ファストリカバリダイオードとする必要があるダイオード41、42をパワーモジュール1bと独立させることができるため、パワーモジュール1bを半導体スイッチ素子とソフトリカバリダイオードで構成し、生産工程で取り扱う半導体品種を単純化し、生産効率を向上させることができる。すなわち、安価なパワーモジュールが得られる。
以上のように、パワーモジュール1bはソフトリカバリダイオードとファストリカバリダイオードとを適所に配置することにより、パワーモジュール1bを適用する電力変換装置延いては電力変換装置を内蔵した電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、パワーモジュール1bとこれを適用する電力変換装置あるいは電気機器のノイズ低減あるいは製造費用を抑制することができる。
なお、以上の制御を実現できる制御回路は、パワーモジュール1bに内蔵されていても、パワーモジュール1bの外に実装されていても構わない。
実施の形態3.
次に、図1のパワーモジュールの直流出力に3相出力形の電圧形インバータ回路を構成する半導体素子を備えたパワーモジュールの例を説明する。
図7はパワーモジュールの回路構成図、図8は図7のパワーモジュールを用いて構成したハーフブリッジ型単相コンバータ回路の回路構成図、図9は図7のパワーモジュールを用いて構成したスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の回路構成図、図10は図7とは別の構成のパワーモジュールの回路構成図である。一般的には図8または図9のようにハーフブリッジ型単相コンバータ回路あるいは直流チョッパ型単相コンバータ回路の出力に電圧形インバータ回路を設けた回路では、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路あるいは直流チョッパ型単相コンバータ回路が交流電源を変換して直流としたものを再度電圧形インバータ回路にて交流電源の周波数・電圧とは異なる周波数・電圧の交流に変換して、電圧形インバータ回路の出力に接続された3相交流の誘導負荷すなわちモータを駆動する。
図7において、パワーモジュール1cは、ダイオード11〜14および61〜66、半導体スイッチ素子21、22および71〜76、電流検出用シャント抵抗31を内蔵し、それらの素子および抵抗とパワーモジュール1aの内部配線にて接続された外部回路接続用の接続端子101〜111にて構成されている。なお、接続端子101と103、接続端子102と104はパワーモジュール内部で接続されている。
パワーモジュール1cは、パワーモジュール1aの回路に、一般的な3相出力形の電圧形インバータ回路を追加して備えた回路構成である。すなわち、接続端子101にはダイオード11のカソード端子、接続端子102にはダイオード12のカソード端子がそれぞれ接続され、ダイオード11および12のアノード端子には電流検出用シャント抵抗31の一端が接続されている。接続端子105にはダイオード13のアノード端子および半導体スイッチ素子21のコレクタ端子が、接続端子106にはダイオード14のアノード端子および半導体スイッチ素子22のコレクタ端子が、接続端子107にはダイオード13および14のカソード端子がそれぞれ接続され、接続端子108には半導体スイッチ素子21および22のエミッタ端子ならびに電流検出用シャント抵抗31のダイオード11および12と接続していない側の一端が接続されている。
ダイオード61〜66および半導体スイッチ素子71〜76で構成する回路は一般的な3相出力形の電圧形インバータ回路であり、接続端子107にはダイオード61〜63のカソード端子および半導体スイッチ素子71〜73のコレクタ端子が、接続端子108にはダイオード64〜66のアノード端子および半導体スイッチ素子74〜76のエミッタ端子が接続されている。また、接続端子109にはダイオード61のアノード端子、ダイオード64のカソード端子、半導体スイッチ素子71のエミッタ端子、半導体スイッチ素子74のコレクタ端子が、接続端子110にはダイオード62のアノード端子、ダイオード65のカソード端子、半導体スイッチ素子72のエミッタ端子、半導体スイッチ素子75のコレクタ端子が、接続端子111にはダイオード63のアノード端子、ダイオード66のカソード端子、半導体スイッチ素子73のエミッタ端子、半導体スイッチ素子76のコレクタ端子が、それぞれ接続される。
図8は、パワーモジュール1cを用いた誘導負荷を駆動する回路例であり、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路の出力に電圧形インバータ回路を設けたものである。パワーモジュール1cの接続端子103と105、接続端子104と106とを接続し、接続端子101にはリアクトル3を介して図示しない交流電源の一端に、その交流電源の他端を接続端子102には接続し、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路の構成とする。これにより、接続端子107と108の間には整流された電圧が出力されることからコンデンサ4などを接続し、その出力を平滑し直流電圧に変換する。なお、リアクトル3は接続端子101と交流電源との間の代わりに接続端子102と交流電源との間に接続してもよく、コモンモードリアクトルの場合はコモンモードリアクトルの一方のリアクトルを接続端子101と交流電源の間に、もう一方のリアクトルを接続端子102と交流電源との間に接続して使用する。
このようにして構成されたハーフブリッジ型単相コンバータ回路は、ダイオード11〜14が単相交流入力整流回路を構成し、半導体スイッチ素子21および22はそれぞれダイオード11および12に並列かつ逆極性の接続となる。なお、ダイオード13、14は整流用ダイオードとしての機能のほか半導体スイッチ素子21および22のスイッチング用ダイオードとしての機能も担っている。よって、電流検出用シャント抵抗31による電流検出結果をもとにハーフブリッジ型単相コンバータ回路の制御方式に基づいて半導体スイッチ素子21および22が制御され、交流電源の力率改善および整流後の直流電圧等の制御を行うとともに、電圧形インバータを構成する半導体スイッチ素子71〜76を適宜制御することにより接続端子109〜111より任意の電圧および周波数の3相交流電圧を出力して3相交流の誘導負荷すなわちモータを駆動する。
図9は、パワーモジュール1cを用いた誘導負荷を駆動する別の回路例であり、直流チョッパ型単相コンバータ回路の出力に電圧形インバータ回路を設けたものである。ダイオード41、42を備えダイオード41、42のカソード端子が接続端子203に、ダイオード41のアノード端子が接続端子201に、ダイオード42のアノード端子が接続端子202に接続されたダイオードモジュール2を用いて、パワーモジュール1cの接続端子103と接続端子201、パワーモジュール1cの接続端子104と接続端子202を接続し、接続端子203にはリアクトル3aおよび3bのそれぞれの一端を接続するとともに、リアクトル3aのもう一方の一端を接続端子105に、リアクトル3bのもう一方の一端を接続端子106に、それぞれ接続し構成される。なお、接続端子101、102には図示しない交流電源が接続される。これにより、接続端子107と108の間には整流された電圧が出力されることからコンデンサ4などを接続し、その出力を平滑し直流電圧に変換する。なお、ダイオードモジュール2の代わりに単体のダイオードを2個用いて回路を構成しても構わない。
このようにして構成されたスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路は、ダイオード11および12ならびにダイオードモジュール2のダイオード41および42が単相交流入力整流回路を構成し、半導体スイッチ素子21および22が交流電源の力率改善および整流後の直流電圧の制御を行うスイッチング回路、ダイオード13および14が半導体スイッチ素子21および22のスイッチング用ダイオードとなる。よって、電流検出用シャント抵抗31による電流検出結果をもとにスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の制御方式に基づいて半導体スイッチ素子21および22が制御され、交流電源の力率改善および整流後の直流電圧等の制御を行うことができる。そして、電圧形インバータを構成する半導体スイッチ素子71〜76を適宜制御することにより接続端子109〜111より任意の電圧および周波数の3相交流電圧を出力して3相交流の誘導負荷すなわちモータを駆動する。
このように、ダイオードモジュール2およびリアクトル3,3a,3bを外部回路として追加することで、パワーモジュール1cはハーフブリッジ型単相コンバータ回路およびスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路のどちらでも構成することが可能である。加えて、3相交流の誘導負荷を駆動する電力変換回路をコンバータ回路と一体化したことから、パワーモジュールの実装面積を低減でき電気機器の小型化、製造費用の抑制を行うことができる。
図10のパワーモジュール1dは、パワーモジュール1cを別の回路構成としたものであり、パワーモジュール1bの回路に一般的な3相出力形の電圧形インバータ回路を追加して備えた回路構成である。したがって、パワーモジュール1dはパワーモジュール1cと同様に、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路あるいはスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路のどちらでも構成することが可能であり、かつ3相交流の誘導負荷を駆動する電力変換回路をコンバータ回路と一体化したことによる実装面積の低減により、電気機器の小型化、製造費用の抑制を実現できる。
なお、パワーモジュール1cおよび1dはともに3相交流の誘導負荷を駆動するための電力変換回路を備えているが、直流電圧より任意の出力電圧に変換する電力変換回路であればどのような回路構成であってもよい。
以上のように、パワーモジュール1cおよび1dはハーフブリッジ型もしくは直流チョッパ型単相コンバータ回路と、負荷を駆動する電力変換回路とを一体化したモジュール構成としたので、パワーモジュールの実装面積を低減することができ、電気機器の小型化や製造費用の抑制を実現できる。
実施の形態4.
パワーモジュールにソフトリカバリダイオードとファストリカバリダイオードとを適所に配置する構成で説明してきたが、スイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路においては、その制御方法によっては、すべてソフトリカバリダイオードであっても構わない。これについて、図11を用いて説明する。
図11は、パワーモジュール1bと、ダイオード41b,42bをソフトリカバリダイオードとしたダイオードモジュール2bと、リアクトル3a,3bの電流を検出する電流検出器51,52とを備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路である。半導体スイッチ素子21,22は電流検出器51,52が検出する電流によって制御器53aが電流臨界モード型のスイッチングを行うように制御する。
制御器53aは、半導体スイッチ素子21,22を個別に制御して、それぞれリアクトル3a,3bにエネルギーを蓄積するモードと蓄積したエネルギーでコンデンサ4を充電し昇圧させるモードとを制御する。すなわち、半導体スイッチ素子21がオンすることによってリアクトル3aにエネルギーが蓄積され、半導体スイッチ素子21がオフすることによってリアクトル3aに蓄積したエネルギーをコンデンサ4に充電される。同様に、半導体スイッチ素子22がオンすることによってリアクトル3bにエネルギーが蓄積され、半導体スイッチ素子22がオフすることによってリアクトル3bに蓄積したエネルギーがコンデンサ4に充電される。なお、制御器53aは、半導体スイッチ素子21がオンオフする位相と半導体スイッチ素子22がオンオフする位相をずらしたスイッチングを行うインターリーブ制御、例えば、半導体スイッチ素子21がオンしたとき半導体スイッチ素子22がオフし、半導体スイッチ素子21がオフしたとき半導体スイッチ素子22がオンするというタイミング制御を行うとともに、リアクトル3aを流れる電流がゼロであることを検出すると同時に半導体スイッチ素子21をターンオンし、リアクトル3bを流れる電流がゼロであることを検出すると同時に半導体スイッチ素子22をターンオンする電流臨界モード型のスイッチング制御を行っている。すなわち、インターリーブ制御を行うためスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路では、半導体スイッチ素子21,22のターンオン・ターンオフの位相・スイッチングタイミングをずらすとともに、リアクトル3a、3bに流れる電流がゼロとなったときターンオンするスイッチング動作を行う。
このような直流チョッパ型単相コンバータ回路では、リアクトル3aまたは3bを流れる電流がゼロであるときに半導体スイッチ素子21または22をターンオンとするためいわゆるゼロ電流スイッチング(ZCS)となり、ダイオード41bまたは42bの逆回復時間においても逆流電流が流れたり振動電流が発生したりすることはない。したがって、半導体スイッチ素子やダイオードに過電圧や熱負荷が加わり半導体素子が破壊に至る可能性は小さい。したがって、ダイオード41b,42bを逆回復時間の長いソフトリカバリダイオードとしたダイオードモジュール2bを適用しても電気機器の故障に至る可能性は小さく、この適用によって電気機器の部品コストを低減することができる。
なお、電流臨界モード型のスイッチング制御を行っていても、ダイオードモジュール2bのダイオード41b,42bはファストリカバリダイオードであっても構わない。
以上のように、半導体スイッチ素子21、22を電流臨界モード型のスイッチングを行うことにより、ダイオード41b,42bを部品コストの低いソフトリカバリダイオードを使用することができ、部品コストを低減したダイオードモジュール2bを提供することができる。また、ダイオードモジュール2bを使用することによって、直流チョッパ型単相コンバータ回路を用いた回路構成でも、電気機器の製造費用を抑制することができる。なお、ダイオードモジュール2bの代わりに単体のソフトリカバリダイオードを2個用いて回路を構成しても構わない。
なお、直流チョッパ型単相コンバータ回路に電流臨界モード型のスイッチングを使用する例について説明したが、スイッチングによって生じる電流のリップルが大きくなるので一般的ではないがハーフブリッジ型単相コンバータ回路に電流臨界モード型のスイッチングを行っても構わない。その場合は、図1のパワーモジュール1aのダイオード11〜14もしくは図4のパワーモジュール1bのダイオード11〜14はソフトリカバリダイオードにて構成することができる。
なお、制御器53aは、パワーモジュール1bに内蔵されていても構わない。
実施の形態5.
パワーモジュールにソフトリカバリダイオードとファストリカバリダイオードとを適所に配置する構成で説明してきたが、さらにワイドバンドギャップ型の半導体で構成されたダイオードを配置することによって、回路全体の損失を低減し、回路が発生するノイズを抑制することができる。これについて説明する。
図12のパワーモジュール1eは、パワーモジュール1aのダイオード13,14をワイドバンドギャップ型の半導体にて構成されたダイオード13a,14a、例えばSiCで構成されたショットキーバリアダイオードとし、半導体スイッチング素子のスイッチングによるダイオードの逆流電流を減らし半導体スイッチング素子の損失を低減したものである。
パワーモジュール1eの半導体スイッチ素子21,22は、ハーフブリッジ型単相コンバータ回路またはスイッチング回路を並列に備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路の制御回路により、一定のスイッチング周波数でターンオン、ターンオフの動作が行われる。半導体スイッチ素子21,22のターンオン動作の際には、半導体スイッチ素子21,22にターンオン損失が、ダイオード13a,14aにはリカバリ損失が発生し、半導体スイッチ素子21,22のターンオフ動作の際には半導体スイッチ素子21,22にターンオフ損失が発生する。
ワイドバンドギャップ型の半導体とは、産業向けおよび家庭電器向けの電気機器の電力変換回路およびコンバータ回路の半導体素子として広く適用されているシリコンの半導体と比較して大きなエネルギーバンド幅を持つ半導体の総称であり、パワー半導体に用いられるものとしては窒化ガリウムや炭化ケイ素がある。ワイドバンドギャップ型の半導体はシリコン半導体と比較して逆回復電荷の蓄積が極めて少ないという特性があるため、ワイドバンドギャップ型のダイオードを用いた場合は半導体スイッチ素子のターンオン動作の際の逆回復時間でも逆流電流や振動電流の発生もわずかであり、これに伴うリカバリ損失もわずかである。
したがって、パワーモジュール1eのダイオード13a,14aに発生するリカバリ損失は、パワーモジュール1aのダイオード13,14に発生するリカバリ損失と比べて極めて小さくなり、パワーモジュール1eで発生する損失が小さくなる。このことから、パワーモジュール1eを適用する電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、電気機器の放熱器および保護回路を小型・簡易化して電気機器の製造費用を低減することができる。
また、従来の力率改善回路では、放熱やノイズのため、20kHz程度のスイッチングよりできなかった。しかしながら、ダイオード13a,14aをワイドバンドギャップ型のダイオードとすることにより、パワーモジュール1eの損失が低減されるとともに放熱も改善され、また、パワーモジュール1eも小型化できることから配線のパワーモジュール1e内部の引き回し、パワーモジュール1eの各接続端子を介して接続された回路基板上の配線やリード線の引き回しも短くすることができ放出されるあるいは吸収されるノイズも低減できる。よって、従来どおりスイッチング周波数を20kHz程度で損失改善もできるが、スイッチング周波数を30〜40kHz程度として、従来と同等の損失、発熱となるが、スイッチング周波数を上げることによって、力率改善の能力向上や図2、図3のリアクトル3、3a、3bの小型化に貢献できる。
なお、パワーモジュール1cのダイオード13,14をワイドバンドギャップ型の半導体によるダイオード13a,14aとした構成のパワーモジュールであっても、またそのパワーモジュールの出力側を直流電圧より任意の出力電圧に変換する電力変換回路とした構成であっても、パワーモジュール1eと同様の効果を得られることは言うまでもない。
以上のように、この発明の実施の形態5によれば、ダイオード13a,14aをリカバリ損失の小さいワイドバンドギャップ型の半導体によるダイオードとしたパワーモジュール1eを適用したので、パワーモジュール1eを適用する電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、パワーモジュール1eとこれを適用する電気機器との製造費用をともに抑制することができる。
なお、パワーモジュール1eはパワーモジュール1cのダイオード13,14をワイドバンドギャップ型の半導体にしたが、パワーモジュール1cのダイオード11、12もワイドバンドギャップ型の半導体としても構わない。ダイオード11、12は、ワイドバンドギャップ型のダイオードがもつリカバリ損失低減効果は小さいが、ワイドバンドギャップ型のダイオードは内部抵抗も小さいので、ダイオード内部を通過する電流の損失も小さく、ダイオード11、12をワイドバンドギャップ型の半導体とすることによって、回路全体の損失も小さくすることができる。
実施の形態6.
また、同様に、パワーモジュール1bを用いた回路においても、別にワイドバンドギャップ型の半導体を用いて、力率改善回路を構成することにより、回路全体の損失を低減し、回路が発生するノイズを抑制することができる。これについて説明する。
図13は、パワーモジュール1bと、ダイオード41c,42cをワイドバンドギャップ型のダイオードとしたダイオードモジュール2cとを備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路である。半導体スイッチ素子21および22は、制御器53bが電流連続モード型のスイッチングを行うように制御する。
制御器53bは、半導体スイッチ素子21,22を個別に制御して、それぞれリアクトル3a,3bにエネルギーを蓄積するモードと蓄積エネルギーでコンデンサ4を充電し昇圧させるモードとを制御する。すなわち、半導体スイッチ素子21がオンすることによってリアクトル3aにエネルギーが蓄積され、半導体スイッチ素子21がオフすることによってリアクトル3aに蓄積したエネルギーをコンデンサ4に充電される。同様に、半導体スイッチ素子22がオンすることによってリアクトル3bにエネルギーが蓄積され、半導体スイッチ素子22がオフすることによってリアクトル3bに蓄積したエネルギーがコンデンサ4に充電される。なお、制御器53bは、半導体スイッチ素子21がオンオフする位相と半導体スイッチ素子22がオンオフする位相をずらしたスイッチングを行うインターリーブ制御、例えば、半導体スイッチ素子21がオンしたとき半導体スイッチ素子22がオフし、半導体スイッチ素子21がオフしたとき半導体スイッチ素子22がオンするというタイミング制御を行うとともに、半導体スイッチ素子21,22のターンオン、ターンオフを同一の一定周波数で行い、リアクトル3a,3bの電流がゼロになる前に半導体スイッチ素子21あるいは22はターンオンする電流連続モード型のスイッチング制御を行っている。したがって、半導体スイッチ素子21,22のターンオンの際には、半導体スイッチ素子21,22にはターンオン損失が、ダイオード41c,42cにはリカバリ損失が、それぞれ発生する。
しかしながら、ダイオード41c,42cをワイドバンドギャップ型のダイオードとしたダイオードモジュール2cを適用したことから、ダイオード41c,42cで発生するリカバリ損失はダイオードモジュール2のダイオード41,42で発生するリカバリ損失と比較して極めて小さくなる。このことから、パワーモジュール2cを適用する電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、電気機器の放熱器および保護回路を小型・簡易化して電気機器の製造費用を低減することができる。
なお、パワーモジュール1dとダイオードモジュール2cとで構成した回路であっても、またパワーモジュール1dの出力側を直流電圧より任意の出力電圧に変換する電力変換回路とした構成であっても、パワーモジュール1bとダイオードモジュール2cとで構成した回路と同様の効果を得られることは言うまでもない。
また、制御器53bは、パワーモジュール1bに内蔵されていても構わない。
以上のように、この発明の実施の形態7によれば、電流連続モード型の制御方式に基づく制御器を備えた直流チョッパ型単相コンバータ回路により構成される電気機器において、ダイオード41c,42cをリカバリ損失の小さいワイドバンドギャップ型の半導体によるダイオードとしたダイオードモジュール2cを適用したので、パワーモジュール2cを適用する電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、パワーモジュール2cとこれを適用する電気機器との製造費用をともに抑制することができる。
なお、パワーモジュール1b、1dのダイオード11〜14をワイドバンドギャップ型の半導体としても構わない。その場合は、ワイドバンドギャップ型のダイオードがもつリカバリ損失低減効果は小さいが、ワイドバンドギャップ型のダイオードの内部抵抗の減少によって損失も抑制されるので、回路全体の損失も小さくすることができる。
実施の形態7.
図14は、この発明の実施の形態7におけるパワーモジュールの回路構成図であり、パワーモジュール1fはパワーモジュール1eにおいて半導体スイッチ素子21,22をワイドバンドギャップ型の半導体による半導体スイッチ素子21a,22aとしたものである。
ワイドバンドギャップ型の半導体による半導体スイッチ素子においても、ダイオードと同等に電荷の蓄積が極めて少ないことから、ターンオン損失、ターンオフ損失もシリコン半導体による半導体スイッチ素子と比較して極めて小さくなる。したがって、パワーモジュール1fの半導体スイッチ素子21a,22aに発生するターンオン損失およびターンオフ損失は、パワーモジュール1eの半導体スイッチ素子21,22に発生するターンオン損失およびターンオフ損失と比べて極めて小さくなる。このことから、パワーモジュール1fを適用する電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、電気機器の放熱器および保護回路を小型・簡易化して電気機器の製造費用を低減することができる。
なお、パワーモジュール1a,1b,1c,1dのいずれかの半導体スイッチ素子21,22をワイドバンドギャップ型の半導体による半導体スイッチ素子21a,22aとした構成のパワーモジュールであっても、パワーモジュール1fと同様の効果を得られることは言うまでもない。
また、パワーモジュール1eにあるように、ダイオード13,14あるいはダイオード11〜14すべてをワイドバンドギャップ型の半導体とするとともに、半導体スイッチ素子21,22をワイドバンドギャップ型の半導体の半導体スイッチとしても構わないし、ダイオードモジュール2をワイドバンドギャップ型の半導体としたものと組み合わせても構わない。ダイオードだけをワイドバンドギャップ型の半導体としたものより、半導体スイッチをワイドバンドギャップ型の半導体とした分、回路の損失が減り力率改善回路全体の効率を上げることができる。
また、1c、1dの半導体スイッチ21、22、71〜76をワイドバンドギャップ型の半導体に、ダイオード11〜14、61〜66をワイドバンドギャップ型の半導体としても構わない。これによって、力率改善回路のみならず、モータ駆動部分も含めて効率が改善できる。
なお、損失を減らして効率を上げる説明をしてきたが、損失が従来と同等なところまでスイッチング周波数を上げ、力率改善などの性能を向上させるように使用しても構わない。従来では、半導体スイッチ21、22が20kHz程度のスイッチング周波数であることに対し、スイッチング周波数を30〜40kHz程度に上昇させて、入力電流のリップル分を抑制するとともに、リアクトルを小容量化すなわち小型化するなどとすることも可能である。
また、半導体スイッチ71〜76、ダイオード61〜66をワイドバンドギャップ型の半導体とすることによってモータを駆動するスイッチング周波数も高くできるので、回路全体の効率を改善できるとともに、従来実現できなかったモータ駆動の高周波化によりモータの性能改善とすることも可能である。
また、ワイドバンドギャップ型の半導体はシリコン半導体と比較して逆回復電荷の蓄積が極めて少ないという特性以外に、ワイドバンドギャップ型の半導体を構成する窒化ガリウムや炭化ケイ素はシリコン半導体を構成するシリコンに比べて約10倍の絶縁破壊電圧強度があり、半導体素子として耐電圧強度が上がる。ゆえに、パワーモジュール1a、1bのダイオード11〜14、半導体スイッチ21、22をワイドバンドギャップ型の半導体とすることにより、高耐圧化も容易となる。例えば、シリコン半導体では600V程度の耐圧しか実現できなかった構造・構成のモジュールでも、ワイドバンドギャップ型の半導体にて構成することにより、1200V程度の耐圧のモジュールも容易に実現可能となる。
また、パワーモジュール1c、1dでも同様に、ダイオード11〜14、61〜66、半導体スイッチ21、22、71〜76をワイドバンドギャップ型の半導体とすることによって、高耐圧化は容易であり、力率改善回路側だけではなく、モータ駆動回路側も高耐圧化できるため、モータをより高速回転域まで駆動できる。例えば、シリコン半導体で構成されたモジュールでは、モータに300V程度の交流電圧しか印加できなかったが、ワイドバンドギャップ型の半導体で構成されたモジュールでは、2倍以上の耐圧が実現できることから、モータにも600V程度の交流電圧を印加することができ、印加電圧に比例した回転数域を増加あるいはトルクを増大させることができるモータでは、回転数領域を高速回転域に拡大あるいはトルク出力領域を高出力領域に拡大させることもできる。また、モータが同出力、同出力トルクでよい場合は、印加電圧を高く設定できる分、モータに流れる電流も小さくでき、巻き線や各部品を接続する配線も細くすることもできる。
以上のように、この発明の実施の形態8によれば、半導体スイッチ素子21a,22をターンオン損失およびターンオフ損失の小さいワイドバンドギャップ型の半導体による半導体スイッチ素子としたパワーモジュール1fを適用したので、パワーモジュール1fを適用する電気機器のエネルギー消費量を低減するとともに、パワーモジュール1fとこれを適用する電気機器との製造費用をともに抑制することができる。
また、ワイドバンドギャップ型の半導体とすることによって損失を抑制するのではなく、スイッチング周波数を上げることによる力率改善やリアクトルの小型化などの性能改善とすることもできる。