JP2012119125A - 薄膜超電導線材用金属基材とその製造方法および薄膜超電導線材 - Google Patents

薄膜超電導線材用金属基材とその製造方法および薄膜超電導線材 Download PDF

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Abstract

【課題】反りの発生が抑制されて、酸化物超電導層を成膜する際に、膜厚ムラの発生がなく、Icのバラツキが抑制され、また、ハンドリングなどに問題が生じない薄膜超電導線材用金属基材とその製造方法、および薄膜超電導線材を提供する。
【解決手段】金属基板の両面に中間層が形成されており、幅方向における最大変形高さDの、幅Lに対する比率D/Lが、0.02以下である薄膜超電導線材用金属基材。金属基板の両面に、同時に中間層を形成して製造する薄膜超電導線材用金属基材の製造方法。金属基板を、互いに平行に配置された2つのターゲットの間に、ターゲットと90度回転した位置に配置して、オフアクシススパッタ法を用いて、金属基板の両面に中間層を成膜する薄膜超電導線材用金属基材の製造方法。薄膜超電導線材用金属基材の、片面または両面のセラミックス層の上に、酸化物超電導層が形成されている薄膜超電導線材。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜超電導線材用金属基材とその製造方法および前記薄膜超電導線材用金属基材を用いて作製された薄膜超電導線材に関する。
高温超電導体の発見以来、ケーブル、コイル、マグネットなどの電力機器への応用を目指した薄膜超電導線材の開発が精力的に行われている。このような薄膜超電導線材は、一般に、リール to リール方式により、長尺のテープ状金属基板の表面に、配向性のセラミックス層を中間層として形成して金属基材とし、さらに、中間層の上に、酸化物超電導層、安定化層を順次積層することにより得られている(特許文献1、2)。
上記において、中間層である配向性のセラミックス層を形成するために用いられる材料はCeOやYSZ等のセラミックスであり、金属基板と比べて熱膨張係数が遙かに小さく、金属基板との密着性や結晶性を考慮して、スパッタ装置などを用いて、高温で成膜処理することにより金属基板上へ中間層として形成される。
中間層が形成された金属基板、即ち金属基材は、その後、室温まで冷却されるが、この際、前記した熱膨張係数の相違により、金属基板と中間層との間で熱収縮差を生じるため、図5に示すように、中間層を上にした場合逆U字状に反りを生じる。なお、図5において、10は金属基板、20は中間層であり、Aは反りによる変形高さを示している。
この反りが生じた中間層は、酸化物超電導層を成膜する際に、膜厚ムラを生じさせる原因ともなり、薄膜超電導線材において臨界電流値Icのバラツキを大きくさせる恐れがある。
また、このような反りがあると、長手方向に曲げることが困難となるため、薄膜超電導線材を製造する際のハンドリングなどに問題が生じる。
特開2007−80780号公報 特開2007−311234号公報
そこで、本発明は、反りの発生が抑制されて、酸化物超電導層を成膜する際に、膜厚ムラの発生がなく、Icのバラツキが抑制され、また、ハンドリングなどに問題が生じない薄膜超電導線材用金属基材とその製造方法、および高いIcの薄膜超電導線材を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の課題の解決につき鋭意検討の結果、以下の各請求項に示す発明により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、請求項毎に説明する。
請求項1に記載の発明は、
金属基板の両面に、中間層が形成されており、
幅方向における最大変形高さDの、幅Lに対する比率D/Lが、0.02以下
であることを特徴とする薄膜超電導線材用金属基材である。
本請求項の発明においては、金属基板の両面に、中間層を形成しているため、室温まで冷却する際、各面に形成された中間層と金属基板との間で生じる熱収縮差がバランスよく相殺されて、金属基材の反りの発生を抑制することができる。
そして、本発明者の検討によれば、幅方向における最大変形高さDの、幅Lに対する比率D/Lで定義される反りの程度(反り率)を0.02以下に制御した場合、このような反りの発生が抑制された金属基材の上には、膜厚ムラの発生が抑制された酸化物超電導層を成膜することができ、Icのバラツキの発生が抑制された薄膜超電導線材を提供することができることが分かった。そして、反りが抑制されているため、ハンドリングなどに問題が生じない。
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法であって、
金属基板の両面に、同時に中間層を形成して、薄膜超電導線材用金属基材を製造することを特徴とする薄膜超電導線材用金属基材の製造方法である。
中間層の形成は、片面ずつ行うこともできるが、中間層の形成を金属基板の両面で同時に行うことにより、片面ずつ中間層の形成を行った場合のような金属基材の熱履歴が残らないため、金属基材の反りの発生をより一層抑制することができる。
また、中間層を同時に形成する方法の場合、同一の材料を用いて、同一の装置、同一の雰囲気条件の下で一連の処理として行うことができるため、効率的な処理が可能となる。
請求項3に記載の発明は、
金属基板を、互いに平行に配置された2つのターゲットの間に、前記ターゲットと90度回転した位置に配置して、オフアクシススパッタ法を用いて、前記金属基板の両面に中間層を成膜することを特徴とする請求項2に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法である。
本請求項の発明は、金属基板における中間層の形成を両面で同時に行うために好ましい製造方法を規定している。
オフアクシススパッタ法は、成膜が行われる基板とターゲットを互いに90度回転させた位置に配置して、基板上に成膜を行うスパッタ法であり、成膜に際して、ターゲットから飛び出た高エネルギーイオンや電子、即ち、スパッタ粒子の成長面衝撃によるダメージを低減することができるため、膜質(結晶性など)の低下を効果的に抑制することができる。
そして、本請求項の発明においては、金属基板を挟んで2つのターゲットを配置している。これにより、双方のターゲットからスパッタ粒子が金属基板に飛来するため、1つのターゲットの場合のように、ターゲットから遠ざかるにつれて膜厚が薄くなるようなことがなく、金属基板の表裏全面に亘って同じ膜厚の中間層を形成することができる。
請求項4に記載の発明は、
前記オフアクシススパッタ法における金属基板への加熱手段が、ターゲットから飛来するスパッタ粒子の進行を妨げない位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法である。
ターゲットから金属基板へ飛来するスパッタ粒子の進行が妨げられると、成膜厚さにバラツキが生じる恐れがある。
このため、金属基板を加熱するに際しては、ランプヒータなどの加熱手段を金属基板に近づけて配置せず、ターゲットから飛来するスパッタ粒子の進行を妨げない位置に配置することが好ましい。
請求項5に記載の発明は、
前記金属基板が、両面対称構造の金属基板であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法である。
両面対称構造の金属基板の両面に中間層を形成することにより、より確実に金属基材の反りの発生を抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、
請求項1に記載の薄膜超電導線材用金属基材の片面または両面の中間層の上に、酸化物超電導層が形成されていることを特徴とする薄膜超電導線材である。
両面に中間層が形成された金属基材は、反りの発生が充分に抑制されているため、膜厚ムラの発生が抑制された酸化物超電導層が形成され、Icのバラツキの発生が抑制された薄膜超電導線材を提供することができる。特に、両面に酸化物超電導層が形成されている場合は、高いIcを有する薄膜超電導線材を提供することができる。
本発明により、金属基材の反りの発生が抑制されて、酸化物超電導層を成膜する際に、膜厚ムラの発生がなく、Icのバラツキが抑制され、また、ハンドリングなどに問題が生じない薄膜超電導線材用金属基材とその製造方法、および高いIcの薄膜超電導線材を提供することができる。
本発明の実施の形態の薄膜超電導線材を模式的に示す断面図である。 本発明の実施の形態の薄膜超電導線材用の金属基板を模式的に示す断面図である。 本発明の実施の形態のオフアクシススパッタ装置を用いて、中間層を成膜する方法を説明する図である。 本発明の実施の形態の薄膜超電導線材の製造工程を示す図である。 薄膜超電導線材用金属基材が反った状態を示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
1.薄膜超電導線材の構造
図1は、本発明の実施の形態の薄膜超電導線材を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明を実施の形態における薄膜超電導線材2は、金属基板10の表裏両面のそれぞれに、配向性のセラミックス層からなる中間層20を積層して形成される薄膜超電導線材用金属基材1を備え、各中間層20には酸化物超電導層30が積層され、さらに各酸化物超電導層30には安定化層40が積層されている。
(1)薄膜超電導線材用金属基材
(a)金属基板
図2は、本発明の実施の形態の薄膜超電導線材用の金属基板を模式的に示す断面図である。金属基板10としては、厚さが20〜200μmであって、幅が3cm以上、例えば幅5cmのテープ状の金属基板が好ましく用いられる。具体的には、例えば、図2に示すように、金属基板のコア材となるSUS板11(熱膨張係数:16.0〜20×10−6)と、SUS板11の表裏両面にそれぞれ積層されるCu層12と、各Cu層12に積層されるNi層13とを備えており、各Cu層12は同じ厚さで同じ熱膨張係数になるように設定され、各Ni層13についても同じ厚さで同じ熱膨張係数になるように設定されている。
(b)中間層
中間層20としては、図1に示すように厚さが0.1〜2μmであって、第1のCeO層21(熱膨張係数:10.5〜14×10−6)、YSZ層22(熱膨張係数:10.3×10−6)および第2のCeO層23の3層構造になっている。なお、中間層20は、かかる構造には限定はされず、例えば、2軸配向させたCeO単層からなる中間層であっても良い。
(2)酸化物超電導層
酸化物超電導層30は、厚さが0.1〜5μmであって、REBaCu(RE:希土類元素、x:6〜7.5)からなる層であり、例えばYBCO(YBaCu)(面内方向の熱膨張係数:a7.4×10−6、b9.6×10−6)等が挙げられる。
(3)安定化層
安定化層40は、厚さが0.1〜100μmであって、AgまたはCuからなる層が好ましく用いられる。
2.成膜装置
本実施の形態に用いられる成膜装置は、オフアクシススパッタ装置であって、金属基板の両面に成膜を行う装置である。図3は、オフアクシススパッタ装置を用いて、中間層を成膜する方法を説明する図である。図3に示すように、成膜装置5は、上部ターゲット6および下部ターゲット7を備えており、金属基板10を、ターゲット6、7間の中央に配置し、かつ、ターゲット6、7と90度回転した位置に配置し、金属基板10を中心とした左右対称位置には、加熱手段8および集熱ミラー9がそれぞれ配置されている。なお、金属基板10は、図3の紙面の表から裏側に進行する。
加熱手段8は、ターゲット6、7から飛来するスパッタ粒子の進行を妨げない位置に設けられている。加熱手段8としては、例えば、ランプヒータ方式や誘導加熱方式が用いられる。
3.薄膜超電導線材の製造方法
図4は、本発明の実施の形態の薄膜超電導線材の製造工程を示す図である。次に、図1および図2を参照しながら、薄膜超電導線材の製造方法を説明する。
(1)金属基板準備工程
まず、金属基板準備工程において、長尺のテープ状のSUS板11の上にCu層12を形成し、その上にNi層13を形成した金属基板10を準備する。このとき、金属基板10に反りがないことを確認する。
(2)中間層形成工程
次に、中間層形成工程において、成膜装置5によるオフアクシススパッタ法により金属基板10の両面に、同じ膜厚で同じ熱膨張係数を有する中間層20を形成する。これにより、反りのない薄膜超電導線材用金属基材1が形成される。
(3)酸化物超電導層形成工程
次に、酸化物超電導層形成工程において、MOD法やPLD法などの公知の方法を用いて、中間層20の上に酸化物超電導層30を形成する。このとき、金属基材1の両面に酸化物超電導層30を形成することが好ましい。
(4)安定化層形成工程
次に、PLD法等の公知の方法を用いて、酸化物超電導層30の上にAgやCu等からなる安定化層40を形成する。
安定化層形成後、所定の幅にスリット加工を施すことにより、薄膜超電導線材2を形成する。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
(1)薄膜超電導線材用金属基材の作製
(実施例1〜3)
イ.金属基板の準備および中間層(配向性のセラミックス層)の形成
幅3cm×厚さ100μmで長さが1mの長尺のテープ状のSUS316L(ステンレス鋼)11の両面に、厚さ20μmのCu層を積層し、Cu層に上にめっき法により厚さ2μmのNi層を積層することにより、作製した。
次に、前記した成膜装置5によるオフアクシススパッタにより、金属基板10を700℃に加熱し、金属基板10の表裏両面のそれぞれに、第1層として第1のCeO層21、第2層としてYSZ層22、第3層として第2のCeO層23を、表1に示す各厚さで、順次形成して、3層構造の中間層20を形成し、実施例1〜3の薄膜超電導線材用金属基材1を作製した。
(比較例1〜3)
金属基板10の片面のみに中間層20を形成したこと以外は、実施例1〜3と同様にして中間層20が形成された比較例1〜3の薄膜超電導線材用金属基材1を作製した。
(比較例4)
中間層として、表1に示す材質および厚さの第1層〜第3層を、片面ずつ、順次形成したこと以外は、実施例1〜3と同様にして、金属基板10の両面に3層構造の中間層20が形成された比較例4の薄膜超電導線材用金属基材1を作製した。
(2)反りの測定評価
上記の実施例と比較例の薄膜超電導線材用金属基材の反りの測定評価を行った。
イ.測定方法
薄膜超電導線材用金属基材1の反りの測定方法は、金属基板10の表面の最大高低差を最大変形高さDとして、基材の幅Lに対する比率D/Lを反り率として定義し、反り率を求めた。
ロ.測定結果
測定結果を表1に示す。
表1に示すように、表裏両面で同時に中間層を形成した実施例1〜3の場合、反り率はいずれも0.02以下であった。これに対して、片面に中間層を形成した比較例1〜3、および表裏両面の片面ずつ中間層を形成した比較例4の場合、反り率はいずれも0.02を超えていた。
(3)超電導特性の測定
次に、実施例および比較例の中間層20が形成された金属基板10の中間層20上に、PLD法により厚さが2μmのYBCOからなる酸化物超電導層30を形成し、さらに、酸化物超電導層30の上に厚さ8μmのAg製の安定化層を形成し、幅3cm、長さ1mの薄膜超電導線材2を作製して超電導線材の臨界電流値Icを測定した。
イ.測定方法
77K、自己磁場下において実施例および比較例の超電導線材の臨界電流値Icを測定した。
ロ.測定結果
測定結果を表1に示す。
表1に示すように、各実施例におけるIcは、各比較例におけるIcと比べ、はるかに大きなIcとなっており、中間層を両面に形成し、反りを充分に小さくした(0.02以下)ことによるIcへの影響が確認できた。
Figure 2012119125
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1 薄膜超電導線材用金属基材
2 薄膜超電導線材
5 成膜装置
6 上部ターゲット
7 下部ターゲット
8 加熱手段
9 集熱ミラー
10 金属基板
11 SUS板
12 Cu層
13 Ni層
20 中間層
21 第1のCeO
22 YSZ層
23 第2のCeO
30 酸化物超電導層
40 安定化層

Claims (6)

  1. 金属基板の両面に、中間層が形成されており、
    幅方向における最大変形高さDの、幅Lに対する比率D/Lが、0.02以下
    であることを特徴とする薄膜超電導線材用金属基材。
  2. 請求項1に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法であって、
    金属基板の両面に、同時に中間層を形成して、薄膜超電導線材用金属基材を製造することを特徴とする薄膜超電導線材用金属基材の製造方法。
  3. 金属基板を、互いに平行に配置された2つのターゲットの間に、前記ターゲットと90度回転した位置に配置して、オフアクシススパッタ法を用いて、前記金属基板の両面に中間層を成膜することを特徴とする請求項2に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法。
  4. 前記オフアクシススパッタ法における金属基板への加熱手段が、ターゲットから飛来するスパッタ粒子の進行を妨げない位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法。
  5. 前記金属基板が、両面対称構造の金属基板であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄膜超電導線材用金属基材の製造方法。
  6. 請求項1に記載の薄膜超電導線材用金属基材の片面または両面の中間層の上に、酸化物超電導層が形成されていることを特徴とする薄膜超電導線材。
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