JP2012116683A - アルミニウムろう付品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軟質のアルミニウムと他の材料とのろう付品の製造に際し、冷熱サイクルに対して接合界面の応力が緩和されて割れにくいろう付品を簡単な工程で製造する。
【解決手段】Al純度が99.9質量%以上のアルミニウム基材(10)の少なくとも一つの面の表面に、コールドスプレーによって平均粒径25μm以下のSi粒子(11)を衝突させてSi付着量が3〜10g/mのSi層(12)を形成し、さらに、物理蒸着によりMg付着量が0.3g/m以上のMg皮膜(13)を形成することによりろう付用材料(15)を作製し、前記ろう付用材料(15)と他の材料(16)とを組み付けて真空ろう付する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、軟質の純アルミニウムが他の材料にろう付されたアルミニウムろう付品の製造方法に関する。
アルミニウムとセラミックとのろう付品の一つに半導体を搭載する基板がある(特許文献1、2参照)。
特許文献1は、セラミック基板に回路層として純度99.99%以上のアルミニウムをろう付したパワーモジュール用基板に関する文献であり、セラミック基板とアルミニウムとをAl−7.5%Si合金からなり厚さ25〜30μmのろう材箔を介在させてろう付接合する方法が開示されている。この方法で製造された基板は、回路層がセラミック基板との接合界面から200μm以内の領域でSi含有量が0.7〜1.2wt%となり、接合界面のSi含有量を規定することにより回路層形成時のエッチング性を改善したものである。
特許文献2は、アルミニウム製ヒートシンクにろう付するパワーモジュール用基板に関する文献であり、セラミック基板における回路層の反対面、即ちヒートシンクにろう付する面に、Al純度が99.5〜99.9wt%の第1アルミニウム層とAl純度が99.99以上の第2アルミニウム層とを積層したクラッド材の第1アルミニウム層側をろう付したものである。ろう付は、セラミック基板とクラッド材との間にAl−Si系ろう材箔を挟んで加熱することにより行われる。前記基板は、セラミック基板と直接的にろう付される層として相対的に純度の低い第1アルミニウム層を配置することによって、使用時に加熱と冷却の熱サイクルによって接合界面に発生する応力を緩和するようにしたものである。即ち、セラミック基板とヒートシンクとの間に純度の低いアルミニウム層を介在させ、アルミニウム層を熱サイクルによる剥離や割れを防止するための緩衝材として機能させるものである。
また、特許文献3においては、ろう材層付きアルミニウム部材の製造方法として、アルミニウム部材の表面にコールドスプレーによりSi粒子を付着させる方法が提案されている。
特開2008−306106号公報 特開2009−65144号公報 特開2010−132986号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載されたろう付方法ではろう材箔をセラミック基板とアルミニウム層との間に挟む際の位置決めやろう材箔の固定に手間がかかるという問題点がある。かかる問題点を解消するためには、アルミニウム母材とろう材とが一体化したブレージングシートが望ましいが、純アルミニウムは軟質でありAl−Si系合金ろう材とのクラッド圧延時の変形抵抗差が大きいために、クラッド率が均一なブレージングシートの作製は極めて困難である。例えば、JIS A4005、A3003、99.9%アルミニウムの室温におけるおおよその耐力は、60MPa(4005)、40MPa(3003)、25MPa(99.9%Al)であり、A4005/A3003のブレージングシートは両者の耐力差が小さいので均一な厚さに作製可能であるが、A4005/99.9%Alのブレージングシートは耐力差が大きいために、熱間クラッド圧延時に99.9%アルミニウムが軟質アルミニウム特有の波状不均一変形を起こして均一なクラッド率に製作することが極めて困難である。
さらに、フラックスを使用しない真空ろう付では、ろう付面の中央部のろう付性が悪いという問題点もあった。
本発明は上述の技術背景に鑑み、軟質のアルミニウムと他の材料とのろう付品の製造に際し、冷熱サイクルに対して接合界面の応力が緩和されて割れにくいろう付品を簡単な工程で製造できるアルミニウムろう付品の製造方法を提供するものである。
即ち、本発明は下記の[1]〜[5]に記載の構成を有する。
[1]Al純度が99.9質量%以上のアルミニウム基材の少なくとも一つの面の表面に、コールドスプレーによって平均粒径25μm以下のSi粒子を衝突させてSi付着量が3〜10g/mのSi層を形成し、さらに、物理蒸着によりMg付着量が0.3g/m以上のMg皮膜を形成することによりろう付用材料を作製し、
前記ろう付用材料と他の材料とを組み付けて真空ろう付することを特徴とするアルミニウムろう付品の製造方法。
[2]前記他の材料はセラミックである前項1に記載のアルミニウムろう付品の製造方法。
[3]前記ろう付用材料と他の材料とを重ねて面接合する前項1または2に記載のアルミニウムろう付品の製造方法。
[4]前記アルミニウム基材の両面に前記Si層およびMg皮膜を形成し、アルミニウム基材の両面に他の材料をろう付する前項1〜3のいずれかに記載のアルミニウムろう付品の製造方法。
[5]前項1〜4のいずれかの方法で製造されたことを特徴とするアルミニウムろう付品。
上記[1]に記載の発明は、Al純度が99.9質量%以上の純アルミニウムからなるアルミニウム基材にSi層およびMg皮膜を形成し、これらをろう材層としてアルミニウム基材と一体化したろう付用材料を製作した後、ろう付用材料と他の材料とを組み付けて真空中で加熱し、SiとAlの合金化させてろう付する。
Si層は平均粒径が25μm以下のSi粒子をコールドスプレーによってアルミニウム基板に付着させて形成したものであるからSi粒子を薄く均一に付着させることができる。Si付着量は3〜10g/mであるからろう付部が硬くなることがなく、軟質材であるアルミニウム基材との耐力差が大きくならない。従って、ろう付品においては冷熱サイクルにおいて接合界面に発生する応力が抑制され、本発明によって割れにくいろう付品を製造できる。
また、Mg皮膜のMgのゲッター効果によってアルミニウム基材の表面が活性化されるので、良好なろう付を達成できる。Mgは真空ろう付時に蒸発してしまいろう付部には拡散しないので、Mgがろう付部を硬化させることがなく、軟質材であるアルミニウム基材との耐力差が拡大することもない。前記Mg皮膜は物理蒸着によって形成するので薄く均一なMg皮膜を形成することができ、Mg付着量は0.3g/m以上であるから、十分なゲッター効果が得られる。
前記ろう付用材料の作製に際し、Si層をコールドスプレーによって形成し、Mg皮膜を物理蒸着によって形成するので、アルミニウム基材やろう付部の形状、ろう付面積に関係なくろう材層を形成することができ、アルミニウム基材の表面の所望の位置にろう材層を形成することができる。
また、ろう材層はアルミニウム基材と一体化したろう付用材料として取り扱われるので、ブレージングシートと同様に、ろう付時に他の材料との組み付けが容易であり、ろう付品を効率良く製造できる。
上記[2]に記載の発明によれば、純アルミニウムに対して難ろう付材料であるセラミックとのろう付品を製造することができる。
上記[3]に記載の発明によれば、Mgのゲッター効果によりろう付面の中央部まで良好にろう付できることを利用して、広い面積でろう付される面接合されたろう付品を製造できる。
上記[4]に記載の発明によれば、アルミニウム基材の両面に他の材料がろう付されたろう付品を製造できる。
上記[5]に記載の発明によれば、Al純度が99.9質量%以上のアルミニウム基材と他の材料とがろう付されたろう付品において、冷熱サイクルに対して割れにくいものとすることができる。
本発明にかかるろう付品の製造方法の工程を示す断面図である。 本発明によって製造される他のろう付品の断面図である。 本発明によって製造される他のろう付品の断面図である。
本発明においては、軟質の純アルミニウムを他の材料にろう付するために、予備工程としてアルミニウム基材の表面にSi層およびMg皮膜を順次形成してこれらをろう材層とするろう付用材料を作製し、このろう付用材料を他の材料にろう付する。
前記アルミニウム基材はAl純度が99.9質量%以上の純アルミニウムからなる。かかる高純度アルミニウムはAl−Si合金ろう材との耐力差が大きく、クラッド圧延によるブレージングシートの製作が極めて困難であるから、本発明の適用意義が大きい。アルミニウム基材の寸法や厚さは限定されないが、コールドスプレー時にアルミニウム基材を破れないように固定する必要があり、かつ平均粒径が25μm以下のSi粒子を食い込ませるように付着させるので、厚みは100μm以上が好ましい。
一方、アルミニウム基材とろう付する他の材料は限定されず、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム等のセラミック、アルミニウムまたはアルミニウム合金、その他の金属を例示できる。これらのなかでも、アルミニウムに対する難ろう付材料であるセラミックは本発明を適用する意義が大きい。
図1は本発明のアルミニウムろう付品の製造方法の工程を示している。以下に、図1を参照しつつ、本発明のアルミニウムろう付品の製造方法について詳述する。
(1)アルミニウム基材(10)の表面にコールドスプレーによりSi粒子(11)を付着させてSi層(12)を形成する。
(2)Si層(12)上に物理蒸着によりMgを付着させてMg皮膜(13)を形成する。
上記の(1)(2)の工程により、アルミニウム基材(10)の表面にSi層(12)およびMg皮膜(13)が積層され、Si層(12)およびMg皮膜(13)をろう材層(14)として、アルミニウム基材(10)とろう材層(14)が一体化したろう付用材料(15)が作製される。
(3)ろう付用材料(15)のろう材層(14)側、即ちMg皮膜(13)上に他の材料(16)を組み付けて真空ろう付する。真空ろう付においては、Mg皮膜(13)のMgのゲッター効果によってアルミニウム基材(10)の表面が活性化されるとともに、Si粒子(11)と基材(10)のAlとが合金化してろう材として機能し、アルミニウム基材(10)と他の材料(16)とがろう付されてろう付品(17)が作製される。
〔Si層〕
上記(1)の工程でSi層(12)を形成するコールドスプレーは、ノズルから加速用ガスとともに粒子を高速で噴出させて基材に衝突させ、粒子を溶融またはガス化させることなく基材に付着させる技術である。図1に示すように、衝突したSi粒子(11)はアルミニウム基材(10)に食い込むようにして付着する。また、アルミニウム基材(10)とノズルとを相対的に移動させることによってアルミニウム基材(10)の所望の位置にSi粒子(11)を付着させることができ、Si付着量はSi粒子(11)の粒径、Si粒子(11)の噴出量、Si粒子(11)衝突速度、ノズルとの相対移動速度等によって制御することができる。
Si粒子(11)同士は性状的に相互に付着しにくいため、コールドスプレーしたアルミニウム基材(10)表面にはSi粒子(11)が一層分しか付着しない。従って、形成されるSi層(12)の厚さが薄く均一になることに加え、その厚さを使用するSi粒子(11)の粒径によって精度良く設定することができる。従って、粒径の小さいSi粒子(11)を使用することによってSi層(12)を極薄化することも可能となり、本発明が規定するSi付着量のSi層(12)を形成することができる。形成したSi層(12)はアルミニウム基材(10)のAlと合金化してAl−Si合金ろう材となり、アルミニウム基材(10)と他の材料(16)とをろう付接合する。Si粒子はAl−Si合金粒子よりもコールドスプレー時の酸化が少ないので、Si粒子によるろう材層はAl−Si合金粒子を付着させて形成したろう材層よりもろう付性が良い。
前記Si層(12)におけるSi付着量は3〜10g/mであるから、ろう付部が硬くなることがなく、軟質材であるアルミニウム基材との耐力差が大きくならないので、冷熱サイクルにおいて接合界面に発生する応力が抑制されるので、割れにくいろう付品を製造できる。Si付着量3g/m未満ではフィレット量が不足してろう付不良となる。一方10g/mを超えるとろう付部が硬くなって強度が増してアルミニウム基材(10)との耐力差が大きくなり、その結果ろう付品が冷熱サイクルにおいて割れやすくなる。好ましいSi付着量は4〜8g/mである。
コールドスプレーに用いるSi粒子(11)は平均粒径が25μm以下のものを用いる。平均粒径が25μmを超える大きい粒子をコールドスプレーすると、形成されるSi層(12)が厚くなり、Si付着量を上述した適正範囲に制御することが困難になる。平均粒径の下限値は規定されないが、超微粒子はコスト高になるのでコスト面で1μm以上が好ましい。特に好ましいSi粒子(11)の平均粒径は5〜20μmである。
また、Si粒子(11)には不純物としてFeやCaが含まれることが多いため、良好なろう付け性を確保する上で、使用するSi粒子(11)の純度は97質量%以上であるのが好ましく、中でも99質量%以上であるのが特に好ましい。
アルミニウム基材(10)の表面に対するSi粒子(11)の衝突速度は、200m/秒以上に設定することが好ましい。この衝突速度が200m/秒未満では、アルミニウム基材(10)の表面に対するSi粒子(11)の食込みが弱くなり、ろう付の際にSiとAlの共晶反応を生じにくくなってろう付性が低下するおそれがある。
Si粒子(11)の加速用ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスの他、空気も使用できる。そして、この加速用ガスの温度は500℃以下に設定し、500℃以下に加熱したSi粒子(11)をアルミニウム基板(10)に衝突させることが好ましい。この温度が500℃を超えるとアルミニウム基材(10)を酸化させてしまう懸念がある。また、前記温度が低すぎては充分な粒子速度が得られ難くなることから、前記加速用ガスの温度は200〜500℃の範囲に設定するのが好ましい。
コールドスプレーに用いるノズルのアルミニウム基材(10)表面に対する相対的移動速度は、1〜150m/分の範囲とするのが好ましい。1m/分以上とすることで製造効率が良くなるし、150m/分以下とすることでSi粒子(10)を充分に付着させることができる。
〔Mg皮膜〕
上記(2)の工程において、Si層(12)上に形成するMg皮膜(13)は真空ろう付においてMgのゲッター効果を得るために形成される。Mg皮膜(13)におけるMg付着量は0.3g/m以上とする。0.3g/m未満ではゲッター効果によるろう付性向上効果が少ない。Mg付着量の上限値は規定されないが、1g/mを超えても効果が飽和するので1g/mを超える多量付着はコストアップによる不利益となる。好ましいMg付着量は0.4〜0.8g/mである。かかる少量のMgを薄く均一に付着させる方法として、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着を用いる。これらの物理蒸着によればSi層(12)上に薄く均一なMg皮膜(13)を形成できる。
付着させたMgは真空ろう付時に蒸発する。このため、Mgがろう付部中に拡散してろう付部を硬化させることはなく、軟質材であるアルミニウム基材(10)との耐力差が拡大することもない。
〔ろう付品〕
前記ろう付用材料(15)の作製に際し、Si層(12)をコールドスプレーによって形成し、Mg皮膜(13)を物理蒸着によって形成するので、アルミニウム基材(10)やろう付部の形状、ろう付面積に関係なくろう材層(14)を形成することができ、アルミニウム基材(10)の表面の所望の位置にろう材層(14)を形成することができる。従って、クラッド圧延によるブレージングシートでは作製不可能な形状のろう付品でも製造可能である。また、アルミニウム基材(10)のどの面にもろう材層(14)を形成することが可能であるから、アルミニウム基材の表面の一部分にろう材層を形成すること、アルミニウム基材(10)の複数の面にろう材層を形成すること、アルミニウム基材の複数箇所に異なる材料をろう付することもできる。例えば、アルミニウム基材の両面にろう材層を形成し、両面に他の材料をろう付することができる。また、両面にろう材層を形成したろう付用材料を、2つの他の材料をろう付するための媒介材として利用することもできる。
また、Mgのゲッター効果によりろう付面の中央部まで良好にろう付できることから、本発明は広い面積のろう付を行う場合にも適している。例えば、ろう付用材料の厚み方向に他の材料を重ねてこれらを面接合するろう付や重ね継ぎ手の製造に適している。さらに、複数のろう付用材料を用いて多層構造のろう付品を作製することもできる。
さらに、ろう材層はアルミニウム基材と一体化したろう付用材料として取り扱われるので、ブレージングシートと同様に、ろう付時に他の材料との組み付けが容易であり、ろう付品を効率良く製造できる。
図2および図3は、本発明の製造方法で製造されるろう付品(20)(30)の他の例である。
図2のろう付品(20)は、アルミニウム基板(10)の片面にSi層およびMg皮膜を順次形成したろう材層(14)を有するろう付用材料(15)を2枚使用し、窒化アルミニウム板(21)の両面にろう付用材料(15)をろう付したものである。
図3のろう付品(30)は、半導体チップ搭載用基板(31)にアルミニウム製熱交換器の外側板(32)をろう付したものである。前記ろう付品(30)は、アルミニウム基板(10)の片面にSi層およびMg皮膜を順次形成したろう材層(14)を有する片面ろう付用材料(15)と、アルミニウム基板(10)の両面にSi層およびMg皮膜を順次形成して両面にろう材層(14)を有する両面ろう付用材料(18)を作製しておき、セラミック絶縁板(21)の一方の面に前記片面ろう付用材料(15)を配置するとともに、他方の面に両面ろう付用材料(18)を介してアルミニウム製熱交換器の外側板(32)を配置して仮組みし、この仮組物を真空ろう付けして3箇所のろう付を同時に行ったものである。前記片面ろう付用材料(15)のアルミニウム基材(10)は導電部でありセラミック絶縁板(21)とともに半導体チップ搭載用基板(31)を構成し、この基板(31)が両面ろう付用材料(18)を介してアルミニウム放熱板(またはアルミニウム製熱交換器の外側板)(32)にろう付されている。
なお、本発明において、アルミニウム基材は図示例のような板材に限定されず、棒状材、ブロック材等任意形状の基材を用いることができる。また、ろう材層(Si層、Mg皮膜)の形成方法はコールドスプレーおよび物理蒸着であり、これらの方法によれば曲面や凹凸部にもろう材層を形成することが可能であるから、ろう付面は平面に限定されず、曲面同士のろう付や凹部と凸部のろう付等も可能である。
図1に参照されるろう付用材料(15)を異なる製造条件で作製し、窒化アルミニウム板(16)とのろう付品(17)を作製した。表1のNo.1〜16のろう付品のうち、「発明」と記載したものは本発明の条件でろう材層(14)を形成したものであり、「比較」と記載したものは本発明から逸脱する条件でろう材層(14)を形成したものである。
アルミニウム基板(10)は全てのろう付品で共通であり、Al純度が99.9質量%の純アルミニウムからなる、150mm×80mm×厚さ1.0mmの平板を用いた。
前記アルミニウム基板(10)をアセトンで脱脂洗浄し、一方の面の全域にSi粒子(11)をコールドスプレーで付着させてSi層(12)を形成した。コールドスプレーは、加速用ガスとして窒素ガスを用い、表1に示す平均粒径のSi粒子(11)を280℃で400m/秒に加速して基板(10)に衝突させた。また、Si付着量は表1に示すとおりであり、Si粒子(11)の噴出量およびノズルの移動速度によって調節した。次に、真空蒸着により、Si層(12)上にMg皮膜(13)を形成し表1に示す量のMgを付着させた。これにより、Si層(12)およびMg皮膜(13)をろう材層(14)とするろう付用材料(15)を作製した。
前記ろう付アルミニウム材料(15)と同寸の窒化アルミニウム板(16)とを重ね、1.33×10−2Pa(10−5Torr)の真空中で605℃×20分加熱してろう付した。
Figure 2012116683
No.1〜16のろう付品について、ろう付性を調べ、さらに冷熱試験を行った。
(ろう付性)
ろう付品のろう付部を超音波探傷し、アルミニウム基板(10)と窒化アルミニウム板(16)の接合状態を調べた。ろう付部(面)の周縁部から中心部に至るまで全領域が良好に接合されていたものを「○」、周縁部は接合されていたが中心部がろう付不良であったものを「△」、周縁部を含む全領域で接合できなかったものを「×」と評価した。
(冷熱試験)
ろう付性が「○」と評価されたろう付品について、−40℃と125℃の反復を1000サイクル行う冷熱試験を行った。冷熱試験後のろう付品を観察し、ろう付界面に割れが発生しなかったものを「○」、割れが発生したものを「×」と評価した。
表1より、本発明の方法で製造したろう付品は難ろう付材料であるセラミックに対しても純アルミニウムを良好にろう付され、かつ冷熱サイクルにおいても割れが生じないことを確認した。
本発明は軟質材である純アルミニウムと他の材料とのろう付品の製造方法であり、セラミック板にアルミニウム回路をろう付するセラミック基板の製造や、このセラミック基板のアルミニウム熱交換器へのろう付に好適に利用できる。
10…アルミニウム基材
11…Si粒子
12…Si層
13…Mg皮膜
14…ろう材層
15…ろう付用材料
16…他の材料
17、20、30…ろう付品
21…窒化アルミニウム板(セラミック絶縁板、他の材料)
32…アルミニウム放熱板(熱交換器の外側板、他の材料)

Claims (5)

  1. Al純度が99.9質量%以上のアルミニウム基材の少なくとも一つの面の表面に、コールドスプレーによって平均粒径25μm以下のSi粒子を衝突させてSi付着量が3〜10g/mのSi層を形成し、さらに、物理蒸着によりMg付着量が0.3g/m以上のMg皮膜を形成することによりろう付用材料を作製し、
    前記ろう付用材料と他の材料とを組み付けて真空ろう付することを特徴とするアルミニウムろう付品の製造方法。
  2. 前記他の材料はセラミックである請求項1に記載のアルミニウムろう付品の製造方法。
  3. 前記ろう付用材料と他の材料とを重ねて面接合する請求項1または2に記載のアルミニウムろう付品の製造方法。
  4. 前記アルミニウム基材の両面に前記Si層およびMg皮膜を形成し、アルミニウム基材の両面に他の材料をろう付する請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウムろう付品の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの方法で製造されたことを特徴とするアルミニウムろう付品。
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