JP2012111983A - 金属表面処理剤及びこれを用いた金属表面処理方法 - Google Patents

金属表面処理剤及びこれを用いた金属表面処理方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】(A)下記一般式(1)
Figure 2012111983

(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物、
(B)水及び/又は有機溶媒
を含むことを特徴とする金属表面処理剤。
【効果】本発明の金属表面処理剤は、水溶性が高く、被処理物である金属及び他の金属(イオン)成分と該ピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物シリル基により、基材及び必要に応じて上層に設ける有機・無機樹脂被膜層との加工密着性に優れるため接着強度が高く、従って得られる塗装金属の防錆耐食性が高次元で発現するもので、過酷な耐食性試験にも耐え、過酷な環境に耐えることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属、特に冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレス鋼材、更にこれらの鋼材にめっき加工した鋼材等の塗装鋼材用などとして好適な金属表面処理剤及びこれを用いた金属表面処理方法に関する。
従来から金属の表面処理剤として、クロメートやリン酸クロメート等のクロム系表面処理剤が使用されており、現在でも広く使用されている。しかしながら、最近の環境規制の動向を伺うに、クロムの有する毒性、特に発がん性のために、将来的には使用が制限される可能性がある。そこで、クロムを含まずにクロメート処理剤と同等の密着性、耐食性を有する金属表面処理剤の開発が望まれていた。
特開平11−29724号公報(特許文献1)では、水性樹脂にチオカルボニル基含有化合物とリン酸イオン、更に水分散性シリカを含有するノンクロムの防錆処理剤が提案されている。しかし、この系は耐食性に優れるが、加工性及び基板との密着性が十分ではない。特開平8−73775号公報(特許文献2)では、2種類のシランカップリング剤を含む酸性表面処理剤が開示されているが、この系は、金属表面を処理した後に高い耐食性と加工性が要求される場合には耐食性が不足している。
これらに関連して、特開2001−316845号公報(特許文献3)では、シランカップリング剤、水分散性シリカ、ジルコニウム又はチタニウムイオンを必須成分とするノンクロメート金属表面処理剤を開示しており、耐食性と加工性を改善しているが、基材への塗工性、並びに上層被膜との密着強度等の点では不十分である。
特開平10−60315号公報(特許文献4)では、水系エマルションと反応する特定官能基を有するシランカップリング剤を含有する鋼構造物用表面処理剤が開示されているが、この場合、要求されている耐食性は湿潤試験のような比較的マイルドな試験に対してのみであり、過酷な耐食性試験に耐えるような金属表面処理剤と比べると、耐食性が不足している。
特開2000−297093号公報(特許文献5)には、イミダゾール基含有有機ケイ素化合物を金属等の表面処理剤に用いることが記載されているが、耐食性や深絞り性等において十分満足なものではなかった。
特開2007−297648号公報(特許文献6)では、水系エマルションと3価遷移金属イオンにβ−ジケトン2分子と水2分子とが配位した化合物、シランカップリング剤を含有する防錆用表面処理剤が開示されており、3価遷移金属錯体が乾燥により難溶性化合物となることで防錆能、塗膜密着能を発現させるという点において特徴的であるものの、要求されている耐食性は過酷な環境に耐えるようなものではなく、改良すべき余地が十二分に有るものであった。
以上のことから、水溶性があり、薄膜で耐食性、加工密着性、塗工性、接着強度等の諸性質を高次元で発現するような金属表面処理剤の開発が望まれていた。
特開平11−29724号公報 特開平8−73775号公報 特開2001−316845号公報 特開平10−60315号公報 特開2000−297093号公報 特開2007−297648号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属、特に金属被覆鋼材用の金属表面処理剤として最適であり、クロムを含まず、塗料等の上層被膜層をコーティングの前処理として、水溶性、加工性、密着性、耐食性が優れた金属表面処理剤及びこれを用いた金属表面処理方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、水溶性が高く、耐食性発現に有効な配位性官能基及びシロキサン結合により被塗物の金属表面と結合するような反応性シリル基を有する有機ケイ素化合物を防錆剤等の金属表面処理剤に用いることで、クロムを含まず、水溶性、耐食性、加工密着性、塗工性、接着強度に優れた金属表面処理剤が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記に示す金属表面処理剤及びこれを用いた金属表面処理方法を提供する。
請求項1:
(A)下記一般式(1)
Figure 2012111983
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物、
(B)水及び/又は有機溶媒
を含むことを特徴とする金属表面処理剤。
請求項2:
更に、下記一般式(2)
3 xSi(OR44-x (2)
(式中、R3はエーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合又はシロキサン結合を含んでもよい炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R4は炭素数1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基である。xは0〜3の整数である。)
で示されるオルガノキシシラン又はその部分加水分解縮合物を含む請求項1記載の金属表面処理剤。
請求項3:
更に、有機チタン酸エステル類を含む請求項1又は2記載の金属表面処理剤。
請求項4:
更に、水分散性シリカ又は有機溶媒分散性シリカを含む請求項1乃至3のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
請求項5:
更に、Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選択されるいずれか1種以上の金属の化合物を含む請求項1乃至4のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
請求項6:
更に、チオカルボニル基含有化合物を含む請求項1乃至5のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
請求項7:
更に、水溶性もしくは水分散性樹脂を含む請求項1乃至6のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
請求項8:
更に、リン酸イオン形成化合物を含む請求項1乃至7のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
請求項9:
前記金属が、鋼材である請求項1乃至8のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
請求項10:
請求項1乃至9のいずれか1項記載の金属表面処理剤を金属表面に塗布した後、この金属表面を乾燥することを特徴とする金属表面処理方法。
本発明の金属表面処理剤は、水溶性が高く、被処理物である金属及び他の金属(イオン)成分と該ピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物シリル基により、基材及び必要に応じて上層に設ける有機・無機樹脂被膜層との加工密着性に優れるため接着強度が高く、従って得られる塗装金属の防錆耐食性が高次元で発現するもので、過酷な耐食性試験にも耐え、過酷な環境に耐えることができる。
合成例1で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。 合成例1で得られた化合物のIRスペクトルである。 合成例2で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。 合成例2で得られた化合物のIRスペクトルである。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の金属表面処理剤は、水溶性が高く配位性官能基であるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)を必須成分とし、これを水、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合溶媒に溶解してなるものである。
本発明のピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
Figure 2012111983
上記一般式(1)において、R1及びR2は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基等の置換又は非置換の1価炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル等の分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基等のアルケニル基が例示される。また、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子などで置換されていてもよい。なお、nは0〜2の整数である。
一般式(1)で示される化合物としては、具体的には、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−メトキシ−2−メチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−エトキシ−2−メチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジエチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−メトキシ−2−エチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−エトキシ−2−エチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン等が挙げられる。
本発明の金属表面処理剤は、上記ピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を水及び/又は有機溶媒に溶解してなる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられ、その中でも、水溶性や揮発性の点でメタノールやエタノールが特に好ましい。
なお、上記式(1)で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物は、本発明の金属表面処理剤中に0.01〜200g/L、特に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、含有量が少なすぎると本発明の効果が不十分となる場合があり、多すぎると塗料の液安定性が低下する場合がある。
本発明の金属表面処理剤は、耐食性、耐指紋性、塗装密着性に優れた被膜形成の点で更に下記一般式(2)で表されるオルガノキシシラン又はその部分加水分解縮合物を含むことが好ましい。
3 xSi(OR44-x (2)
上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜20、特に1〜15の非置換又は置換1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル等の分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基等のアラルキル基などが例示され、特にメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。また、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、シロキサン結合を含んでもよく、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がエポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキルアミノ基、アルキルアミノ基、イソシアナート基、ポリエーテル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン置換アルキル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロポリエーテル基等で置換されていてもよい。
4は炭素数1〜8、特に1〜6の非置換又は置換1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル等の分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基等のアラルキル基などが例示され、特にメチル基、エチル基が好ましい。また、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子などで置換されていてもよい。なお、xは0〜3の整数であり、特に0〜2が好ましい。
上記一般式(2)で表されるオルガノキシシラン又はその部分加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
上記有機ケイ素化合物を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、生産性が低下する場合がある。
本発明の金属表面処理剤は、有機ケイ素化合物、オルガノキシシラン等の被膜形成性向上(硬化性)の点で更に有機チタン酸エステル類を含むことが好ましい。この有機チタン酸エステル類は、市販されているものを用いてもよく、構造等は特に限定されない。具体的には、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、及びこれらの重合物が挙げられ、チタンアセチルチタネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチルグリシナート、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート等のチタンキレート化合物を使用することもでき、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
上記有機チタン酸エステル類を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、逆に金属表面処理剤の浴安定性が低下する場合がある。
本発明の金属表面処理剤は、耐食性向上の点で更に水分散性シリカ又は有機溶媒分散性シリカを含むことが好ましい。この水分散性シリカ又は有機溶媒分散性シリカとしては、特に限定されないが、ナトリウム等の不純物が少なく、弱アルカリ系である球状シリカ、鎖状シリカ、アルミニウム修飾シリカが好ましい。球状シリカとしては、「スノーテックスN」、「スノーテックスUP」(いずれも日産化学工業社製)等のコロイダルシリカや、「アエロジル」(日本アエロジル社製)等のヒュームドシリカを挙げることができ、鎖状シリカとしては「スノーテックスPS」(日産化学工業社製)等のシリカゲル、更にアルミニウム修飾シリカとしては、「アデライトAT−20A」(旭電化工業社製)等の市販のシリカゲルを用いることができる。
なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物が例示できる。
上記水又は有機溶媒分散性シリカを配合する場合は、金属表面処理剤中に固形分で0.05〜100g/L、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。水又は有機溶媒分散性のシリカの含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性向上効果が見られず、逆に金属表面処理剤の浴安定性が低下する場合がある。
本発明の金属表面処理剤は、耐食性及び加工性向上の点で、更にZr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選ばれるいずれか1種以上の金属の化合物を含むことが好ましい。具体的には、上記金属の炭酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フッ化物、フルオロ酸もしくはその塩、オキソ酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
ジルコニウム(Zr)化合物の例としては、炭酸ジルコニルアンモニウム、ジルコンフッ化水素酸、ジルコンフッ化アンモニウム、ジルコンフッ化カリウム、ジルコンフッ化ナトリウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド1−ブタノール溶液、ジルコニウムn−プロポキシド等が挙げられる。また、チタン(Ti)化合物の例としては、チタンフッ化水素酸、チタンフッ化アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、チタンイソプロポキシド、チタン酸イソプロピル、チタンエトキシド、チタン−2−エチル−1−ヘキサノラート、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラn−ブチル、チタンフッ化カリウム、チタンフッ化ナトリウム等が挙げられる。また、バナジウム(V)化合物の例としては、五酸化バナジウム(V)、三酸化バナジウム(III)、二酸化バナジウム(IV)、水酸化バナジウム(II)、水酸化バナジウム(III)、硫酸バナジウム(II)、硫酸バナジウム(III)、オキシ硫酸バナジウム(IV)、フッ化バナジウム(III)、フッ化バナジウム(IV)、フッ化バナジウム(V)、オキシ三塩化バナジウムVOCl3、三塩化バナジウムVCl3、ヘキサフルオロバナジウム酸(III)もしくはその塩(カリウム塩、アンモニウム塩等)、メタバナジン酸(V)もしくはその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、バナジルアセチルアセトネート(IV)VO(OC(=CH2)CH2COCH32、バナジウムアセチルアセトネート(III)V(OC(=CH2)CH2COCH33、リンバ等モリブデン酸H15-X[PV12-XMoO40]・nH2O(6<X<12,n<30)などが挙げられる。また、タングステン(W)化合物の例としては、酸化タングステン(IV)、酸化タングステン(V)、酸化タングステン(VI)、フッ化タングステン(IV)、フッ化タングステン(VI)、タングステン酸(VI)H2WO4もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)、メタタングステン酸(VI)H6[H21240]もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)、パラタングステン酸(VI)H10[H101246]もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)などが挙げられる。また、モリブデン(Mo)化合物の例としては、リンバ等モリブデン酸H15-X[PV12-XMoO40]・nH2O(6<X<12,n<30)、酸化モリブデン、モリブデン酸H2MoO4、モリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブドリン酸化合物(例えば、モリブドリン酸アンモニウム(NH43[PO4Mo1236]・3H2O、モリブドリン酸ナトリウムNa3[PO4Mo1236]・nH2O等)などが挙げられる。また、アルミニウム(Al)化合物の例としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、スズ(Sn)化合物の例としては、酸化スズ(IV)、スズ酸ナトリウムNa2SnO3、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、硝酸スズ(II)、硝酸スズ(IV)、ヘキサフルオロスズ酸アンモニウム(NH42SnF6等が挙げられる。また、ニオブ(Nb)化合物の例としては、五酸化ニオブ(Nb25)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、フッ化ニオブ(NbF5)、ヘキサフルオロニオブ酸アンモニウム(NH4)NbF6等が挙げられる。また、ハフニウム(Hf)化合物、イットリウム(Y)化合物、ホルミウム(Ho)化合物、ビスマス(Bi)化合物、ランタン(La)化合物の例としては、酸化ハフニウム、ヘキサフルオロハフニウム水素酸、酸化イットリウム、イットリウムアセチルアセトネート、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化ランタン等が挙げられる。また、セリウム(Ce)化合物の例としては、酸化セリウム、酢酸セリウムCe(CH3CO23、硝酸セリウム(III)もしくは(IV)、硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウム、塩化セリウム等が挙げられる。また、亜鉛(Zn)化合物の例としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等が挙げられる。上記化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記化合物を配合する場合は、金属表面処理剤中に、金属イオンの量として、それぞれ0.01〜50g/L、特に0.05〜5g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。上記化合物の含有量がそれぞれ0.01g/L未満であると耐食性が不十分となる場合があり、50g/Lを超えると加工密着性能の向上効果が見られず、逆に浴安定性が低下する場合がある。
本発明の金属表面処理剤は、耐食性向上の点で更にチオカルボニル基含有化合物を含むことが好ましい。具体的には、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、ジプロピルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、2,2−ジトリルチオ尿素、チオアセトアミド、ソディウムジメチルジチオカルバメート、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジンクジメチルジチオカルバメート、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、エチレンチオ尿素、ジメチルキサントゲンスルフィド、ジチオオキサミド、ポリジチオカルバミン酸又はその塩等のチオカルボニル基を少なくとも1つ含有する化合物が例示できる。上記化合物は単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
上記チオカルボニル基含有化合物を配合する場合は、本発明の金属表面処理剤中に0.01〜100g/L、特に0.1〜10g/Lの濃度で含有されることが好ましい。上記化合物の含有量が0.01g/L未満になると耐食性が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、不経済となる場合がある。
本発明の金属表面処理剤は、耐アルカリ性、耐溶剤性向上の点で、更に水溶性もしくは水分散性樹脂を含むことが好ましい。具体的には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレンアクリル共重合体、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、カチオン性又はノニオン性樹脂の方が溶液安定性の点で好ましい。これらの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいし、更に共重合して使用してもよい。具体的には、例えばアクリル樹脂としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を主成分とした共重合体で、モノマーとしてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が例示でき、それらの誘導体やその他のアクリル系モノマーとの共重合体も使用可能である。特に、共重合体におけるアクリル酸及び/又はメタクリル酸モノマー割合が、70質量%以上であることが好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型又はその他のグリシジルエーテル化合物とアミン化合物、特にエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、フェニレンジアミン等の多官能アミン化合物との反応物、更に該エポキシ樹脂の側鎖にポリエチレングリコール等を付加した樹脂が例示される。ウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールと脂肪族、芳香族ポリイソシアネートとの縮合物が例示される。
また、上記水溶性もしくは水分散性樹脂を用いる時には、その造膜性を向上させ、より均一で平滑な塗膜を形成するために、アルコール、ケトン、エーテル、セロソルブ系の有機溶剤を用いてもよい。更に、界面活性剤、レベリング剤、濡れ性向上剤、消泡剤を用いてもよい。
水溶性もしくは水分散性樹脂の分子量は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量で1万以上であることが好ましい。より好ましくは30〜200万である。1万未満では本発明の効果、特に塗膜の深絞り性向上効果が十分に発揮されない場合がある。また、200万を超えると粘度が高くなり取り扱い作業の効率が低下する場合がある。
上記水溶性もしくは水分散性樹脂を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.1〜100g/L、特に5〜80g/Lの濃度で含有されることが好ましい。樹脂の濃度が0.1g/L未満では折り曲げ密着性と深絞り性を向上させる効果が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると、折り曲げ密着性と深絞り性の向上効果が飽和し、不経済となる場合がある。
本発明の金属表面処理剤は、耐食性向上の点で、更にリン酸イオン形成化合物を含むことが好ましい。リン酸イオン形成化合物を添加することにより、更に耐食性を向上させることができる。このリン酸イオン形成化合物の添加は、水中においてリン酸イオンを形成する化合物を添加することにより行うことができる。このような化合物としては、リン酸、Na3PO4、Na2HPO4、NaH2PO4等のリン酸塩類、縮合リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、二リン酸等の縮合したリン酸又はそれらの塩類が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
上記リン酸イオン形成化合物を配合する場合の添加量は、金属表面処理剤中に0.01〜100g/Lの濃度であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10g/Lの濃度である。添加量が0.01g/L未満であると耐食性の改善効果が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると亜鉛系めっき鋼材に過剰なエッチングを起こし性能低下を引き起こしたり、その他成分として水性樹脂を含む場合にはゲル化を引き起こしたりする場合がある。
また、本発明の金属表面処理剤は、更に金属表面処理剤として公知の添加剤を配合してもよい。例えば、タンニン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩等が例示される。
本発明の金属表面処理剤は、金属、特に冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレス鋼材等の鋼材(鋼板を含む)、更にこれらの鋼材にめっき加工した電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫合金系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材、ニッケル系めっき鋼材等の金属鋼材の表面処理剤として使用される。中でも金属被覆鋼材(めっき鋼材)に用いた場合に、顕著な効果を示す。
本発明の金属表面処理方法は、上記金属表面処理剤を金属表面に塗布し、この金属表面を乾燥する方法や、予め被塗物である金属を加熱し、その後上記金属表面処理剤を塗布し、余熱を利用して乾燥させる方法であってもよい。
上記乾燥条件はいずれの場合も、室温(23℃)〜250℃で2秒〜1時間、好ましくは40〜180℃で5秒〜20分とすることができる。250℃を超えると密着性や耐食性等の性能劣化が生じる可能性がある。
上記金属表面処理方法において、上記本発明の金属表面処理剤の塗布量は、乾燥後の被膜質量が0.1mg/m2以上であることが好ましい。被膜質量が0.1mg/m2未満では防錆性が不足する場合がある。一方、付着量が多すぎると塗装用前処理剤としては不経済な場合があり、より好ましくは0.5〜500mg/m2であり、更に好ましくは1〜250mg/m2である。
上記金属表面処理方法において、金属表面処理剤の塗布方法は特に限定されず、一般に使用されているロールコート、シャワーコート、スプレー、浸漬、刷毛塗り等によって塗布することができる。また、処理される対象となる金属は、上記の鋼材が好ましく、特に各種金属被覆鋼材の表面処理に最適である。
なお、上記金属表面処理方法により、表面処理された金属は更に上層被膜層を塗布することができる。上記被膜層の塗布方法としては、必要に応じてノンクロメートプライマー塗布乾燥後、更にトップコートを塗布する塗装システムや、耐指紋性や潤滑性等の機能を持った機能コーティング等を挙げることができる。この場合、金属はプレコート鋼材に限らず、ポストコート鋼材にも適用することができる。
ここで、上記ノンクロメートプライマーとしては、プライマーの配合中にクロメート系防錆顔料を使用しないプライマーが挙げられる。このようなプライマーとしては、バナジン酸系防錆顔料とリン酸系防錆顔料とを用いたプライマー(V/P顔料プライマー)又はカルシウムシリケート系防錆顔料を用いたプライマーが好ましい。
上記プライマーの塗布膜厚は、乾燥膜厚で1〜20μmであることが好ましい。1μm未満では耐食性が不足する場合があり、20μmを超えると加工密着性が低下する場合がある。
上記ノンクロメートプライマーの焼き付け乾燥条件は、例えば金属表面温度で150〜250℃、時間を10秒〜5分とすることができる。
上記トップコートとしては特に限定されず、通常の塗装用トップコート全てを用いることができる。また、機能コーティングとしては特に限定されず、現在クロメート系前処理被膜の上に施されているコーティング等、全て使用可能である。上記ノンクロメートプライマー及びトップコートや機能コーティングの塗布方法は特に限定されず、一般に使用されるロールコート、シャワーコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を利用することができる。
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において部は質量部を示し、IRは赤外分光法の略である。
[合成例1]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、メチルピペラジン30g(0.30モル)を仕込み、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン71g(0.30モル)を85〜95℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌して、透明な反応液を得た。得られた反応液を蒸留することで、沸点140〜142℃/0.4kPaの透明留分を39g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶剤)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図1には1H−NMRスペクトルのチャート、図2にはIRスペクトルのチャートを示す。
質量スペクトル
m/z 304,273,234,139,113
以上の結果より、得られた化合物は2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンであることが確認された。
[合成例2]2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンの合成
合成例1において、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりにγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いて反応液を得た。得られた反応液を蒸留することで、沸点145〜147℃/0.2kPaの透明留分を40g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶剤)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図3には1H−NMRスペクトルのチャート、図4にはIRスペクトルのチャートを示す。
質量スペクトル
m/z 332,287,262,139,113
以上の結果より、得られた化合物は2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンであることが確認された。
[実施例1]
メタノール990g、水10gの混合溶媒に合成例1で得た化合物を不揮発分として10g添加し、室温で5分間撹拌することで金属表面処理剤を得た。得られた金属表面処理剤を脱脂乾燥した市販の溶融亜鉛めっき鋼板(日本テストパネル社製;70×150×0.4mm)にバーコーターNo.20で乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、金属表面温度105℃で10分間乾燥させた。その後V/P顔料含有のノンクロメートプライマーをバーコーターNo.16で乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、金属表面温度215℃で5分間乾燥した。更にトップコートとしてフレキコート1060(ポリエステル系上塗り塗料;日本ペイント社製)をバーコーターNo.36で乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、金属表面温度を230℃で乾燥させて試験板を得た。得られた試験板の折り曲げ密着性、深絞り性、耐食性を下記の評価方法に従って評価し、その結果を表2に示す。
[実施例2]
合成例1で得られた化合物を合成例2で得られた化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、実施例1と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表2に示す。
[実施例3〜10]
合成例1で得られた化合物、シラン系化合物の種類と濃度、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオン、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂並びにリン酸イオン形成化合物の濃度をそれぞれ表1に記載したように配合した以外は、実施例1と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、実施例1と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表2に示す。
[比較例1,2]
合成例で得られた化合物を用いずに、シラン系化合物の種類と濃度、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオン、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂並びにリン酸イオン形成化合物の濃度をそれぞれ表1に記載したように配合した以外は、実施例1と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、実施例1と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表2に示す。
[比較例3]
金属表面処理剤に代えて、市販の塗布型クロメート処理剤(樹脂含有タイプ)をクロム付着量が20mg/m2となるように塗布、乾燥したこと、及びクロム含有プライマー(ストロンチウムクロメート顔料含有プライマー)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験板を作製及び評価し、得られた結果を表2に示す。
なお、下記表1において、シラン系化合物、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオンを形成する化合物、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂、リン酸イオンを形成する化合物として、以下の市販品を使用した。
[オルガノキシシラン又はその部分加水分解縮合物]
A:3−アミノプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業社製
B:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業社製
[有機チタン酸エステル類]
チタンテトライソプロポキシド
[水分散性シリカ]
メタノールシリカゾル(日産化学工業社製)
[金属化合物]
ジルコノゾールAC−7(炭酸ジルコニルアンモニウム;第一稀元素社製)
[チオカルボニル基含有化合物]
チオ尿素
[水溶性樹脂]
ポリアクリル酸(重量平均分子量100万)
[リン酸イオン形成化合物]
リン酸
[評価方法]
上記実施例1〜10及び比較例1〜3における折り曲げ密着性、深絞り性、耐食性の評価は以下の方法、評価基準に基づいて行った。
折り曲げ密着性
20℃の環境下、コニカルマンドレル試験機を用いて試験板を2mmφのスペーサーを挟んで180°折り曲げ加工し、折り曲げ加工部を3回テープ剥離して、剥離度合いを20倍ルーペで観察し、下記の基準で評価した。
A:クラックなし
B:加工部前面にクラック
C:剥離面積が加工部の20%未満
D:剥離面積が加工部の20%以上〜80%未満
E:剥離面積が加工部の80%以上
深絞り性
20℃の環境下で絞り比:2.3、シワ抑え圧:2t、ポンチR:5mm、ダイス肩R:5mm、無塗油、の条件で円筒絞り試験を行った。その後、クロスカット部から塗膜の剥離幅を測定し、下記の基準で評価した。
A:ふくれ幅が1mm未満
B:ふくれ幅が1mm以上〜2mm未満
C:ふくれ幅が2mm以上〜3mm未満
D:ふくれ幅が3mm以上〜5mm未満
E:ふくれ幅が5mm以上
耐食性
(カット部)
試験板にクロスカットを入れ、JIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を500時間行った後、カット部片側のふくれ幅を測定し、下記の基準で評価した。
A:ふくれ幅が0mm
B:ふくれ幅が0mmを超え〜1mm未満
C:ふくれ幅が1mm以上〜3mm未満
D:ふくれ幅が3mm以上〜5mm未満
E:ふくれ幅が5mm以上
(端面)
試験板をJIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を500時間行った後、上バリ端面からのふくれ幅をカット部と同一基準で評価した。
Figure 2012111983
Figure 2012111983
以上の実施例及び比較例の結果は、本発明の金属表面処理剤を用いて形成される被膜が良好な防錆能及び基材密着性を与えることを実証するものである。

Claims (10)

  1. (A)下記一般式(1)
    Figure 2012111983
    (式中、R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
    で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物、
    (B)水及び/又は有機溶媒
    を含むことを特徴とする金属表面処理剤。
  2. 更に、下記一般式(2)
    3 xSi(OR44-x (2)
    (式中、R3はエーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合又はシロキサン結合を含んでもよい炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R4は炭素数1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基である。xは0〜3の整数である。)
    で示されるオルガノキシシラン又はその部分加水分解縮合物を含む請求項1記載の金属表面処理剤。
  3. 更に、有機チタン酸エステル類を含む請求項1又は2記載の金属表面処理剤。
  4. 更に、水分散性シリカ又は有機溶媒分散性シリカを含む請求項1乃至3のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
  5. 更に、Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選択されるいずれか1種以上の金属の化合物を含む請求項1乃至4のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
  6. 更に、チオカルボニル基含有化合物を含む請求項1乃至5のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
  7. 更に、水溶性もしくは水分散性樹脂を含む請求項1乃至6のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
  8. 更に、リン酸イオン形成化合物を含む請求項1乃至7のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
  9. 前記金属が、鋼材である請求項1乃至8のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項記載の金属表面処理剤を金属表面に塗布した後、この金属表面を乾燥することを特徴とする金属表面処理方法。
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