JP2012107314A - 熱疲労特性と高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】mass%で、C:0.015%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.5%以下、Al:0.30%超1.0%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Cr:12〜23%、Ni:0.5%以下、N:0.015〜0.040%、Nb:10(C+N)〜0.60%、V:0.15〜0.60%、Ti:0.01%以下、Zr:0.01%以下、Ta:0.01%以下、Mo:0.1%以下、W:0.1%以下を含有し、かつ0.003≦V×N≦0.015、Si≧Alを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱疲労特性と高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
【選択図】なし
Description
さらに、特許文献10、11についてはV、Nが適量添加されていないため優れた熱疲労特性は得られない。
最初に、熱疲労特性に及ぼすN含有量の影響を検討した。
0.005〜0.010%C−0.75〜0.85%Si−0.15〜0.30%Mn−0.35〜0.45%Al−14〜15%Cr−0.35〜0.45%Nb−0.25〜0.35%Vの成分系をベースとして、N含有量を0.007〜0.046%の範囲で種々変化させた鋼を、実験室的に溶製して鋼塊とし、この鋼塊を鍛造し、熱処理して鋼材とし、この鋼材から熱疲労試験片を作製した。そして、拘束率0.8で200/850℃の加熱・冷却を繰り返し、熱疲労寿命を評価した。熱疲労寿命は、200℃において検出された荷重が初期の荷重の80%を下回ったサイクル数とした。なお、比較として、SUS444(18%Cr−2%Mo−0.5%Nb鋼)についても同様に評価した。
0.005〜0.010%C−0.75〜0.85%Si−0.15〜0.30%Mn−0.35〜0.45%Al−14〜15%Cr−0.35〜0.45%Nb−0.015〜0.025%Nの成分系をベースとして、V含有量を0.08〜0.77%の範囲で種々変化させた鋼を、実験室的に溶製して鋼塊とし、この鋼塊を鍛造し、熱処理して鋼材とし、この鋼材から熱疲労試験片を作製した。同様に、拘束率0.8で200/850℃の加熱・冷却を繰り返し、熱疲労寿命を評価した。
図1、2に示した実験結果に加え、同様な組成をベースとしてV、N量を変化させ、同様にして鋼塊を作製した後、鍛造し、熱処理して鋼材とし、この鋼材から熱疲労試験片を作製し、同様に、拘束率0.8で200/850℃の加熱・冷却を繰り返し、熱疲労寿命を評価した。
0.005〜0.010%C−0.75〜0.85%Si−0.15〜0.30%Mn−0.35〜0.45%Al−14〜15%Cr−0.35〜0.45%Nb−0.25〜0.35%V−0.015〜0.025%Nの成分系をベースとして、Zr、Ti、Taの含有量を、それぞれ0.003〜0.023%、0.004〜0.014%、0.004〜0.014%の範囲で変化させた鋼を、実験室的に溶製して鋼塊とし、この鋼塊を鍛造し、熱処理して鋼材とし、この鋼材から熱疲労試験片を作製した。同様に、拘束率0.8で200/850℃の加熱・冷却を繰り返し、熱疲労寿命を評価した。
0.005〜0.010%C−0.75〜0.85%Si−0.35〜0.45%Al−14〜15%Cr−0.35〜0.45%Nb−0.25〜0.35%V−0.015〜0.025%Nの成分系をベースとして、Mn量を0.09〜0.98%の範囲で変化させた組成の鋼板から試験片を作製し、この試験片の表面を#320のエメリー紙で研磨後、大気中1000℃で200時間の連続酸化試験を行った。耐酸化性は、酸化増量により評価した。なお、比較として、SUS444(18%Cr−2%Mo−0.5%Nb鋼)についても同様に評価した。
0.005〜0.010%C−0.15〜0.30%Mn−14〜15%Cr−0.35〜0.45%Nb−0.25〜0.35%V−0.015〜0.025%Nの成分系をベースとして、Si、Alの含有量を種々に変化させた鋼を実験室的に溶製して研究鋼塊とし、この鋼塊を、熱間圧延し、熱延板焼鈍し、冷間圧延し、仕上げ焼鈍して、板厚2mmの冷延焼鈍板とした。次いで、上記冷延焼鈍板から図6に示した形状、寸法の疲労試験片を作製し、下記の高温疲労試験に供した。なお、比較として、SUS444についても、同様の試験を行った。
800℃において、上記試験片に1300Hzで鋼板表面に85MPaの曲げ応力(両振り)を付与するシェンク式疲労試験を行い、破断までの振動回数(疲労寿命)を測定し、高温疲労特性を評価した。
まず、本発明の成分組成について説明する。
Cは、鋼の強度を増加させる元素であるが、0.015%を超えて含有すると、靭性および成形性の低下が顕著となる。よって、本発明では、C含有量を0.015%以下とする。なお、成形性の観点からは、C含有量は低いほど好ましく、0.010%以下とするのが望ましい。
Siは、耐酸化性を向上させる元素であり、脱酸材としても用いられる。また、Siは、後述するように、Alとともに高温疲労特性向上に有効な元素である。しかし、1.0%を超えて含有させると加工性が低下する。このため、Si含有量を1.0%以下とする。
一方、自動車排気系部材は実際には水蒸気を含んだガス中で使用されるため、耐水蒸気酸化特性も重要となる。Siは耐水蒸気酸化特性向上に有効な元素であり、0.4%以上含有することでその効果が得られる。Siによって耐水蒸気酸化性が改善される理由は十分に解明されているわけではないが、Si含有量を0.4%以上とすることにより、鋼板表面に緻密なSi酸化物層が連続的に生成し、外部からのガス成分の侵入が抑制されるためと考えられる。したがって、耐水蒸気酸化特性が必要とされる場合にはSi含有量を0.4〜1.0%とすることが好ましい。より厳しい水蒸気含有雰囲気下での耐酸化性が求められる場合には、Si含有量を0.5%以上とすることが好ましい。
Mnは、脱酸剤として作用するが、過剰に含有すると高温でγ相が生成しやすくなり、耐熱性を低下させるだけでなく、耐酸化性も低下させる。このため、Mn含有量を0.5%以下とする。好ましくは、0.35%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。
Pは、靭性を低下させる元素であり、できるだけ低減するのが望ましい。このため、P含有量を0.040%以下とする。好ましくは、0.030%以下である。
Sは、伸びおよびr値を低下させ、成形性を劣化させるとともに、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を低下させる元素でもあり、できるだけ低減するのが望ましい。このため、S含有量を0.010%以下とする。
Crは、耐酸化性を向上させる元素であり、本発明では重要な元素である。しかし、その含有量が12%未満では、十分な耐酸化性が得られない。一方、Crは、室温において固溶強化により鋼を硬質化・低延性化し、23%を超えて含有するとこれらが顕著となって加工性が劣化する。このため、Cr含有量を12〜23%の範囲とする。
V、Nは本発明で重要な元素である。V、Nを含有することにより600〜800℃でこれらがVNとして微細に析出し、鋼材を高強度化することで熱疲労特性を向上させる。その効果はN含有量が0.015%以上およびV含有量が0.15%以上で認められる。しかし過剰に含有することにより鋼の靱性および成形性を劣化させるだけでなく、VNが粗大化し熱疲労寿命を低下させてしまう。このため、Nの含有量を0.015〜0.040%の範囲、Vの含有量をV:0.15〜0.60%の範囲とする。また、V、Nがそれぞれ上記の範囲内であってもV×Nが0.003〜0.015を満たさなければ所望の熱疲労寿命が得られない。このため、V×Nを0.003〜0.015とした。
Nbは、C、Nを固定し、耐鋭敏化特性、成形性、溶接部の耐粒界腐食性を高める作用を有するとともに、高温強度を上昇させて熱疲労特性を向上させる有益な元素である。しかし、その含有量が10(C+N)よりも少ないとC、Nの固定が不十分となり、鋼材の鋭敏化が認められるようになる。鋭敏化が発生すると溶接部における耐食性、耐酸化性が著しく低下するため、Nbを10(C+N)以上添加することが必要となる。Nb量によっては母材部でも同様の現象が発生することがある。一方、その含有量が0.60%を超えると、Laves相が析出しやすくなり、脆化するのみならず、本発明で重要なVNの析出が抑制され、熱疲労特性が低下してしまう。このため、Nb含有量を10(C+N)〜0.60%の範囲とする。好ましくは、0.55%以下であり、さらに好ましくは0.50%以下である。
Moは、高価な元素であり、本発明の目的からも積極的には添加しない。溶解原料であるスクラップ等からの混入量は高々0.1%であるため、Mo含有量を0.1%以下とする。
Wは、Moと同様に高価な元素であり、本発明の目的からも積極的には添加しない。溶解原料であるスクラップ等からの混入量は高々0.1%であるため、W含有量を0.1%以下とする。
Ti、Zr、Taは、C、Nを固定して、耐食性、成形性、溶接部の粒界腐食性を向上させる作用を有するが、本発明で重要なVNの析出を抑制し、たとえ本発明で規定するV、N量を満たしていても、これらが0.01%を超えて含有されると熱疲労特性を低下させてしまう。このため、Ti、Zr、Taの含有量をいずれも0.01%以下とする。
Alは、耐酸化性および耐高温塩害腐食性の向上に有効であるのみならず、固溶強化元素として働いて高温疲労特性を向上させる効果を有する元素であり、本発明において重要な元素である。しかし、その含有量が0.30%以下では、高温疲労特性を向上させる効果が不十分となる。一方、Al含有量が1.0%超えでは、鋼が硬質化し、加工性が著しく低下する。このため、Al含有量を0.3%超1.0%以下とする。より好ましくは0.35〜0.80%であり、さらに好ましくは0.35〜0.50%である。
上述のように、Alは固溶強化元素として働き、高温疲労特性を向上させるが、高温で窒化物や酸化物を形成しやすいため、固溶強化元素として効果を発揮させるためにはSiとともに含有させる必要がある。そして、Si含有量をAl含有量以上とすることで、Siを優先的に酸化させ、鋼板表面に緻密な酸化被膜を形成する。そのため窒素や酸素の金属内部への侵入が抑制され、Alは固溶状態を保つことができる。逆にSi含有量がAl含有量よりも少ない場合は、Alが優先的に酸化物や窒化物を形成するため、固溶強化元素としての効果は得られず、高温疲労特性を向上させることはできない。このため、本発明ではSi≧Alを満たすことが必要となる。
Niは、靱性を向上させる元素であるが、高価であるばかりか、強力なγ相形成元素であり高温でγ相が生成し耐酸化性を低下させる。このため、Ni含有量を0.5%以下とする。
Bは、加工性、特に二次加工性を向上させる有効な元素である。このような効果は0.0004%以上で有効に発揮されるが、0.0020%を超えて含有すると、BNを生成し、加工性が低下する。このため、Bを含有させる場合には、その含有量を0.0004〜0.0020%の範囲とする。
Coは、靭性の向上に有効な元素である。このような効果は0.05%以上で発揮されるが、Coは高価な元素であり、また、その含有量が0.1%を超えても上記効果は飽和する。このため、Coを含有させる場合は、その含有量を0.02〜0.1%とする。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、一般的なフェライト系ステンレス鋼の製造方法により製造することができ、その製造条件は特に限定されるものではない。例えば、本発明範囲内の組成の溶鋼を、転炉、電気炉等の溶製炉を利用し、あるいはさらに取鍋精錬、真空精錬等の精錬を利用した溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法で鋼片としたのち、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗の各工程を順次経て冷延焼鈍板とするのが好ましい。また、冷間圧延は、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延としてもよい。冷間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗の工程は繰り返し行ってもよい。なお、場合によっては、熱延板焼鈍は省略してもよい。さらに、鋼板表面の光沢性が要求される場合にはスキンパス等を施しても加工性の良好な鋼板として製造できる。
Claims (3)
- mass%で、C:0.015%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.5%以下、Al:0.30%超1.0%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Cr:12〜23%、Ni:0.5%以下、N:0.015〜0.040%、Nb:10(C+N)〜0.60%、V:0.15〜0.60%、Ti:0.01%以下、Zr:0.01%以下、Ta:0.01%以下、Mo:0.1%以下、W:0.1%以下を含有し、かつ0.003≦V×N≦0.015、Si≧Alを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱疲労特性と高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
- 上記の成分組成に加えてさらに、mass%で、B:0.0004〜0.0020%、Co:0.05〜0.1%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱疲労特性と高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
- Siを0.4〜1.0%の範囲で含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱疲労特性と高温疲労特性と耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
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