以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明を適用するエンジン1の冷却系(エンジン内水停止冷却系)について図1を参照して説明する。
この例の冷却系は、電動ウォータポンプ(電動WP)2、ラジエータ3、サーモスタット4、ヒータ5、排気熱回収器6、EGRクーラ7、切替弁10、及び、これら機器に冷却水を循環する冷却水通路200などを備えている。
冷却水通路200は、冷却水(例えばLLC:Long Life Coolant)を、エンジン1、ラジエータ3及びサーモスタット4を経由して循環させるエンジン冷却水通路201と、冷却水を、EGRクーラ7、排気熱回収器6、ヒータ5及びサーモスタット4を経由して循環させるヒータ通路202とを備えている。そして、この例では、これらエンジン冷却水通路201とヒータ通路202との冷却水循環に、1台の電動ウォータポンプ2を併用している。
エンジン1は、コンベンショナル車両やハイブリッド車両などに搭載されるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であって、シリンダブロック及びシリンダヘッドにウォータジャケット(図示せず)が設けられている。エンジン1には、冷却水出口(シリンダヘッドのウォータジャケット出口)1bの水温を検出するエンジン水温センサ21が配置されている。また、エンジン1の吸気通路には、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ23、及び、エンジン1への吸入空気量を検出するエアフロメータ24が配置されている。さらに、エンジン1には、出力軸であるクランクシャフトの回転数(エンジン回転数)を検出するエンジン回転数センサ25が配置されている。これらエンジン水温センサ21、吸気温センサ23、エアフロメータ24、及び、エンジン回転数センサ25の各出力信号はECU(Electronic Control Unit)300に入力される。
電動ウォータポンプ2は、電動モータの回転数を制御することにより吐出流量(吐出圧)を可変に設定することが可能なウォータポンプであって、吐出口がエンジン1の冷却水入口(ウォータジャケットの入口)1aに連通するように配設されている。電動ウォータポンプ2の作動はECU300によって制御される。なお、電動ウォータポンプ2は、エンジン1の始動に伴って駆動され、エンジン1の運転状態等に応じて吐出流量が制御される。
サーモスタット4は、例えば感温部のサーモワックスの膨張・収縮によって作動する弁装置であって、冷却水温が比較的低い場合は、ラジエータ3と電動ウォータポンプ2との間の冷却水通路を遮断してラジエータ3(エンジン冷却水通路201)に冷却水を流さないようになっている。一方、エンジン1の暖機完了後、すなわち冷却水温度が比較的高い場合には、その冷却水温に応じてサーモスタット4が作動(開弁)してラジエータ3に冷却水の一部が流れることにより、冷却水が回収した熱がラジエータ3から大気に放出される。なお、この例において、サーモスタット4は、上記感温部の周辺水温(≒ワックス温度)が、後述する切替弁10の開弁温度(例えば70℃)よりも高い水温(例えば82℃以上)になったときに開弁するように設定されている。
ヒータ通路202は、エンジン1をバイパスするバイパス通路である。ヒータ通路202には、冷却水流れの上流側から、EGRクーラ7、排気熱回収器6、及び、ヒータ5が直列に接続されており、電動ウォータポンプ2から吐出した冷却水が、[EGRクーラ7→排気熱回収器6→ヒータ5→サーモスタット4→電動ウォータポンプ2]の順で循環する。ヒータ通路202には、EGRクーラ7と排気熱回収器6との間にヒータ接続通路202aが接続されている。このヒータ接続通路202aは切替弁10を介してエンジン1の冷却水出口(シリンダヘッドのウォータジャケット出口)1bに接続されている。切替弁(制御弁)10はヒータ接続通路202aを開閉する。切替弁10の詳細については後述する。
ヒータ5は、冷却水の熱を利用して車室内を暖房するための熱交換器であって、エアコンディショナの送風ダクトに臨んで配置されている。つまり、車室内の暖房時(ヒータon時)には送風ダクト内を流れる空調風をヒータ5(ヒータコア)に通過させて温風として車室内に供給する一方、それ以外(例えば冷房時)のとき(ヒータoff時)には空調風がヒータ5をバイパスするようになっている。ヒータ5には、ヒータ入口水温センサ22が配置されている。このヒータ入口水温センサ22の出力信号はECU300に入力される。なお、ヒータ5の入口水温は、ヒータ通路202(バイパス通路)を流れる冷却水の温度と同等であるので、上記ヒータ入口水温センサ22がバイパス水温センサに相当する。
排気熱回収器6は、エンジン1の排気通路に配置され、排気ガスの熱を冷却水によって回収するための熱交換器であって、その回収した熱はエンジン暖機や車室内暖房などに利用される。EGRクーラ7は、エンジン1の排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路に配置され、このEGR通路を通過(還流)するEGRガスを冷却するための熱交換器である。
−切替弁−
次に、上記冷却系に用いる切替弁10について図2を参照して説明する。
この例の切替弁10は、ハウジング11、弁体12、圧縮コイルばね13、及び、感温部14などを備えている。
ハウジング11には、図1に示すエンジン1の冷却水出口(シリンダヘッドのウォータジャケット出口)1bに接続される冷却水入口11a、ラジエータ3に接続されるラジエータ接続口11b、及び、ヒータ接続口11cが設けられている。このヒータ接続口11cは、図1に示すヒータ接続通路202aを介してヒータ通路202に接続される。
ハウジング11の内部には、バルブシート(弁座)111とばね座112とが互いに対向する状態で設けられている。これらバブルシート111とばね座112との間の空間(弁体12の上流側の空間)が水導入部11dとなっている。この水導入部11dに上記冷却水入口11aが連通しており、その水導入部11dを介してラジエータ接続口11bが冷却水入11aに連通している。また、弁体12の下流側の空間が水導出部11eとなっており、この水導出部11eに上記ヒータ接続口11cが連通している。
弁体12は、上記ハウジング11の内部で上記バルブシート111とばね座112との間に、そのバルブシート111に対し接離可能に配設されている。この弁体12と後述する感温部14のケース141とは一体化されている。また、弁体12とばね座112との間には圧縮コイルばね13が挟み込まれており、その圧縮コイルばね13の弾性力によって弁体12がバブルシート111に向けて付勢されている。
感温部(感温アクチュエータ)14はケース141及びロッド142を備えている。ロッド142は、弁体12の開閉方向に沿って延びる棒状の部材であって、ケース141に摺動自在に配設されている。ロッド142は弁体12を貫通しており、このロッド142に対し弁体12が開閉方向に摺動可能となっている。また、ロッド142の先端部はハウジング11の壁体11f(冷却水入口11aとは反対側の壁体)を貫通しており、その先端部がロッド保持部材16によって保持されている。
感温部14のケース141内には、感温部14の周辺水温(以下、切替弁周辺水温ともいう)の変化(ワックス温度変化)によって膨張・収縮するサーモワックス143が充填されており、このサーモワックス143の膨張・収縮によりロッド142のケース141に対する突出量が変化するようになっている。なお、サーモワックス143はゴム等からなるシール材144内に収容されている。
そして、以上の構造の切替弁10において、切替弁周辺水温(≒ワックス温度)Tvwが所定値(この例では70℃)よりも低いときには、ケース141からのロッド142の突出量が小さい(ケース141内へのロッド142の没入量が大きい)状態となり、弁体12がバルブシート111に圧縮コイルばね13の弾性力によって着座(閉弁)する(図2(A))。このような閉弁状態から、切替弁周辺水温Tvwが上記所定値以上(70℃以上)になると、感温部14のサーモワックス143が膨張する。このサーモワックス143の膨張により、ケース141からのロッド142の突き出し量が大きくなって、感温部14の全体つまり弁体12が圧縮コイルばね13の弾性力に抗してバブルシート111から離れる向きに移動して弁体12がバブルシート111から離座(開弁)する(図2(B))。
このように、この例の切替弁10は、切替弁周辺水温Tvwが所定値(70℃)よりも低いときには閉弁状態となり、図1に示すエンジン1の冷却水出口1b(エンジン冷却水通路201)とヒータ通路202とが遮断される(エンジン冷却水通路とバイパス通路との冷却水の循環が制限される)。一方、切替弁周辺水温Tvwが所定値以上(70℃以上)であるときには開弁状態となり、図1に示すエンジン1の冷却水出口1b(エンジン冷却水通路201)とヒータ通路202とが連通する。なお、冷却水入口11aとラジエータ接続口11bとは連通しているが、図1に示すサーモスタット4が閉弁状態であるときには、冷却水入口11aに流入した冷却水はラジエータ接続口11bには流れない。
ここで、この例の切替弁10においては、感温部14の内部に電気ヒータ15が埋め込まれており、この電気ヒータ15への通電により発生する熱によってサーモワックス143を溶かすことにより、切替弁10を強制的に開弁状態にすることもできる。このヒータ通電による切替弁10の開弁は、後述する水温センサ異常判定処理(2回目のヒータ入口水温センサ22の正常判定の際)などにおいて行われる。なお、切替弁10の電気ヒータ15は切替弁コントローラ(図示せず)によって作動される。切替弁コントローラはECU300からの開弁要求に応じて切替弁10の電気ヒータ15への通電を行う。
−冷却系の動作説明−
図1に示すエンジン1の冷却系の冷却水通路を循環する冷却水の流れについて図3及び図4を参照して説明する。
まず、冷間中は、切替弁10の感温部14の周辺水温Tvwが低い(70℃未満)ので切替弁10が閉弁状態となり、エンジン1内(ウォータジャケット内)の冷却水の流通が停止される(エンジン内水停止)。これによりエンジン1が早期に暖機される。また、切替弁10が閉弁状態のときには、図3(A)に示すように、電動ウォータポンプ2の作動によりヒータ通路202内に冷却水が循環し、冷却水が[電動ウォータポンプ2→EGRクーラ7→排気熱回収器6→ヒータ5→サーモスタット4→電動ウォータポンプ2]の順で流れる。このような早期暖機中に、暖房の要求があるときには、排気熱回収器6にて回収した熱にてヒータ5に必要な熱量を賄うようにすればよい。
次に、エンジン1が半暖機状態になり、切替弁10の感温部14の周辺水温Tvwが所定以上(70℃以上)になると切替弁10が開弁する。切替弁10が開弁すると、図3(B)に示すように、上記ヒータ通路202内の冷却水循環に加えて、冷却水が、[電動ウォータポンプ2→エンジン1の冷却水入口1a→エンジン1内(ウォータジャケット内)→エンジン1の冷却水出口1b→切替弁10→ヒータ接続通路202a]の順で流れてエンジン1が冷却される。また、切替弁10が開弁状態になると、エンジン冷却水通路201内(エンジン1内)の冷却水とヒータ通路(バイパス通路)202内の冷却水とが混合される。
そして、エンジン1が完全暖機状態になると、図4に示すように、サーモスタット4が作動(開弁)してラジエータ3に冷却水の一部が流れるようになり、冷却水が回収した熱がラジエータ3から大気に放出される。
−ECU−
次に、ECU300について説明する。ECU300は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備えている。ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMはエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
ECU300には、上記エンジン水温センサ21、吸気温センサ23、エアフロメータ24、エンジン回転数センサ25を含むエンジン1の運転状態を検出する各種センサが接続されている。また、ECU300にはヒータ入口水温センサ22及びイグニッションスイッチ(図示せず)等が接続されている。
また、ECU300は、図5に示すように、thw1カウンタ301、thw2カウンタ302、高水温継続カウンタ311、及び、低水温継続カウンタ312を備えている。高水温継続カウンタ311及び低水温継続カウンタ312は、それぞれ、時間を計時するカウンタである。なお、thw1カウンタ301及びthw2カウンタ302については後述する。
そして、ECU300は、エンジン運転状態を検出する各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブの開度制御、燃料噴射量制御(インジェクタの開閉制御)などを含むエンジン1の各種制御を実行する。また、ECU300は、下記の「切替弁閉故障判定処理」を実行する。
−切替弁閉故障判定処理−
[判定処理例1]
切替弁10の閉故障判定処理の一例について図6〜図8のフローチャートを参照して説明する。この図6〜図8の処理ルーチンはECU300において実行される。
図6〜図8の処理ルーチンの実行中において、ECU300は、エンジン水温センサ21、ヒータ入口水温センサ22、吸気温センサ23及びエアフロメータ24の各出力信号に基づいて、エンジン水温thw1、ヒータ入口水温thw2、吸気温tha、及び、吸入空気量gaを逐次認識(例えば、数msec〜数十msecの周期で認識)している。
図6〜図8に示す処理ルーチンはイグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で開始される。この処理ルーチンが開始されると、まずは、図6のステップST101において、エンジン水温センサ21の1回目の正常判定が実施済みであるか否かを判定する。
そのエンジン水温センサ21の正常判定については、エンジン水温thw1と吸気温thaとのラショナリティ(rationality:合理性)判定によって行う。具体的には、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1と、吸気温センサ23にて検出される吸気温thaのとの温度差(thw1−tha)を算出し、その温度差が所定の範囲内であるか否かを判定する。この例では、[−20℃≦thw1−tha≦20℃]である場合は、「エンジン水温センサ:判定1回目で正常判定済み」と判定してステップST102に進む。一方、[|thw1−tha|>20℃]である場合は、「エンジン水温センサ:判定1回目では未正常判定」であると判定して図8のステップST300に移行する。なお、「ラショナリティ判定」とは、複数のセンサ値(温度検出値)が同等になるべき状況のときに、それら複数のセンサ値(温度検出値)が同等になっているか否かを確認するロジックである。
ステップST102では、ヒータ入口水温センサ22の1回目の正常判定が実施済みであるか否かを判定する。
具体的には、エアフロメータ24の出力信号に基づいてエンジン始動時からの吸入空気量gaの積算値(Σga)を算出し、その吸入空気量積算値Σgaが規定値γ2[g]以上になったときのヒータ入口水温センサ22の出力信号に基づいて、ヒータ入口水温thw2(検出値)の偏差(エンジン始動時のヒータ入口水温検出値との偏差(thw2偏差))を算出する。そして、そのthw2偏差が所定の判定値(例えば5℃)以上であるか否かを判定(スタック判定)し、thw2偏差が上記判定値以上である場合は、「ヒータ入口水温センサ:判定1回目で正常判定済み」と判定してステップST103に進む。thw2偏差が上記判定値(例えば5℃)未満である場合は、「ヒータ入口水温センサ:判定1回目では未正常判定」であると判定して図7のステップST201に進む。
上記吸入空気量積算値(Σga)に対して設定する規定値γ2[g]については、排気熱回収器6やEGRクーラ7等によって排気熱がヒータ通路202を循環する冷却水に伝わる熱量によりヒータ通路202内の冷却水が上昇する過程において、エンジン始動時からのヒータ入口水温センサ22(正常状態)の検出値変動量(偏差)が上記所定の判定値(例えば5℃)以上に上昇するのに必要な吸入空気量の積算値(Σga)を、実験・シミュレーション等によって取得しておき、その結果を基に規定値γ2[g]を適合する。
上記ステップST102の判定結果が肯定判定(YES)である場合は、ステップST103において、燃費(燃料消費率)を考慮した切替弁10の開弁制御を行う。具体的には、上記切替弁コントローラに開弁要求を行って切替弁10の電気ヒータ15への通電を行い、切替弁10が実際に開弁してエンジン水温thw1が低下したら再度閉弁(ヒータ通電停止)するという制御を間欠的に行う。
この切替弁開弁制御の実行中において、正常なエンジン水温センサ21にて検出される水温検出値thw1と、正常なヒータ入口水温センサ22にて検出される水温検出値thw2との温度差[|thw1−thw2|]を算出し、その温度差[|thw1−thw2|]が規定値α1(例えばα1=20℃)以下であるか否かを判定する(ステップST104)。その判定結果が肯定判定(YES)である場合(|thw1−thw2|≦α1]である場合)は「切替弁正常」であると判定する(ステップST106)。
一方、ステップST104の判定結果が否定判定(NO)である場合、つまり、上記温度差[|thw1−thw2|]が規定値α1よりも大きい場合は、ステップST105において「水混合」から一定時間が経過したか否かを判定する。そして、その「水混合」から一定時間が経過するまでの間において、上記温度差[|thw1−thw2|]が規定値α1以下にならなかった場合は「切替弁閉故障」であると判定する(ステップST107)。なお、ステップST105において「水混合」の判定は、後述する「水混合判定時間」を考慮して行う。
このように、エンジン水温センサ21及びヒータ入口水温センサ22が共に正常である場合には、それらエンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2とを用いて切替弁10の正常または閉故障を判定することができる。その理由について説明する。
まず、エンジン始動後で切替弁10が閉弁状態(エンジン内水停止状態)である場合、実際のエンジン水温はエンジン暖機に伴って大きく上昇していくのに対し、実際のヒータ入口水温の温度上昇の度合いは低い(例えば、排気熱回収器6による加熱による温度上昇程度である)ので、これら実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とは乖離する。
次に、切替弁10が正常であり、開弁要求に応じて切替弁10が開弁すると、エンジン1内の冷却水とヒータ通路202内の冷却水との混合により、実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とは互いに近づいていく。そして、エンジン冷却水通路201内(エンジン1内)の冷却水とヒータ通路202内の冷却水が十分に混合された状態になると、実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とは略同等な温度になり、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1と、ヒータ入口水温センサ22にて検出されるヒータ入口水温thw2とが近い値(もしくは同等な値)となる。
これに対し、切替弁10が閉故障している場合(エンジン内水停止の場合)、エンジン1内の冷却水とヒータ通路202内の冷却水とが混合されないので、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1と、ヒータ入口水温センサ22にて検出されるヒータ入口水温thw2とが大きく乖離する(thw1>thw2)。
このような点に着目して、この例では、上述したように、切替弁10の開弁要求後のエンジン水温thw1(検出値)とヒータ入口水温thw2(検出値)との温度差が規定値以下(|thw1−thw2|≦α1(α1=20℃))である場合は「切替弁正常」であると判定し、それら2つの検出値thw1とthw2との温度差が規定値よりも大きい場合(|thw1−thw2|>α1)には「切替弁閉故障」であると判定する。
なお、図6の切替弁判定処理では、切替弁10の開弁動作を間欠的に行っているので、切替弁故障判定の実施によるエンジン1の暖機性能の低下を抑制することができ、燃費の悪化を改善することができる。
<エンジン水温センサ:判定1回目で正常判定済み、ヒータ入口センサ:判定1回目で未正常判定の場合>
次に、上記ステップST101の判定結果が肯定判定(YES)であり、上記ステップST102の判定結果が否定判定(NO)である場合、つまり、エンジン水温センサ21については「判定1回目で正常判定済み」であるが、ヒータ入口水温センサ22については「判定1回目では未正常判定」である場合は図7の切替弁判定処理を実行する。
この図7の切替弁判定処理では、エンジン1の燃焼室から冷却水に伝わる熱量(冷却損失)が同一であっても、エンジン内水停止中(切替弁10閉弁中)とエンジン内水循環中(切替弁10開弁中)とでは熱容量が異なるので水温の上昇速度が異なるという点、つまり、水停止中はエンジン1内の冷却水(熱容量小)のみが暖められるのに対し、水循環中はエンジン1内の冷却水及びヒータ通路202内の冷却水(熱容量大)が暖められるので、水循環中の場合に対し、水停止中の方が水温上昇速度が速くなるという点に着目して、切替弁10の正常/閉故障を判定する。その具体的な処理の例について以下に説明する。
まず、この図7の切替弁判定処理では、thw1カウンタ301、高水温継続カウンタ311、及び、低水温継続カウン312を用いる。
thw1カウンタ301は、エンジン水温センサ21の水温検出値thw1の単位時間当たりの変化量(変化率:勾配)[℃/sec]を積算するためのカウンタである。
上記水温検出値thw1の変化率(以下、thw1カウンタ変化率ともいう)は、切替弁10が閉故障しているとき(エンジン内水停止中)のエンジン水温thw1(検出値)の変化率(勾配)よりも小さい値であり、かつ、切替弁10が実際に開弁しているとき(水混合状態)のエンジン水温thw1の変化率(勾配)よりも大きな値であって、例えば切替弁10としてクライテリアサーモ(閉弁状態となっても微量の漏れがある切替弁)を使用しているときのエンジン水温(実際)の上昇を考慮(切替弁での漏れ量を考慮)し、走行時の吸入空気量(エンジン燃焼室からエンジン1内の冷却水に伝わる熱量)によって上昇するエンジン水温検出値thw1の変化率[℃/sec]を、実験・シミュレーション等によって適合した値を用いる。
なお、上記thw1カウンタ変化率については、上記吸入空気量に加えて、フューエルカット時間(F/C時間)などの他のエンジン条件を考慮して適合してもよい。また、thw1カウンタ変化率は、一定値(固定値)であってもよいし、吸入空気量等に応じてマップ等を参照して可変に設定するようにしてもよい。
次に、図7の判定処理について各処理ブロックごとに説明する。
まず、ステップST201において「水混合」したか否かを判定する。具体的には、上記切替弁コントローラに開弁要求を行って、切替弁10の電気ヒータ15への通電を開始し、この電気ヒータ15への通電開始時点からの経過時間が、後述する「水混合判定時間」に達した時点で「水混合」したと判定してステップST202に進む。また、「水混合」を判定した時点でのエンジン水温(検出値)thw1intを取得する。
ステップST202では、「水混合」を判定した時点からthw1カウンタ301の積算、つまり、上記thw1カウンタ変化率[℃/sec]の積算[thw1カウンタ値=thw1カウンタ値+thw1カウンタ変化率]を開始する。なお、thw1カウンタ301の初期値は「0」である。
次に、ステップST203において、高水温継続カウンタ311及び低水温継続カウン312をともにON(作動)にして水混合時を起点とする計時を開始する。なお、高水温継続カウンタ311は、図9に示す切替弁閉故障時のエンジン水温thw1側(高水温側)の時間を計時するカウンタであり、低水温継続カウン312は、図9に示す切替弁正常時のエンジン水温thw1側(低水温側)の時間を計時するカウンタである。
ステップST204では、現在のエンジン水温thw1(検出値)と、上記「水混合」した時点で取得したエンジン水温(検出値)thw1intとの差(thw1(現在)−thw1int:水混合判定後のエンジン水温検出値)を算出し、その温度差が所定の規定値α2(例えばα2=5℃)未満であるか否かを判定する。その判定結果が肯定判定(YES)である場合(thw1(現在)−thw1int<α2である場合)はステップST205に進んで、高水温継続カウンタ311のカウント値(計時値)を「0」にする。ステップST204の判定結果が否定判定(NO)である場合(thw1(現在)−thw1int≧α2である場合)はステップST206に進んで、低水温継続カウン312のカウント値(計時値)を「0」にする。
次に、ステップST207において、thw1カウンタ301の積算値(thw1カウンタ変化率[℃/sec]の積算値[℃])が上記規定値α2(例えばα2=5℃)未満であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)である場合(thw1カウンタ値<α2である場合)はステップST209に進む。ステップST207の判定結果が否定判定(NO)である場合、つまり、thw1カウンタ301の積算値が上記規定値α2以上である場合(thw1カウンタ値≧α2である場合)は、ステップST208において高水温継続カウンタ311のカウント値(計時値)を「0」にしてステップST209に進む。
ステップST209では、上記高水温継続カウンタ311のカウント値(水混合時からの計時値)が5sec以上であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)となった時点、つまり、[thw1(現在)−thw1int≧α2]の状態が5秒以上連続したときに「切替弁閉故障」であると判定する(ステップST212)。
ステップST209の判定結果が否定判定(NO)である場合(「高水温継続カウンタでの計時継続中(カウント値<5sec)の場合」と、「高水温継続カウンタ=0の場合」とを含む)は、ステップST210において上記低水温継続カウン312のカウント値(計時値)が5sec以上であるか否かを判定する。
ステップST210の判定結果が否定判定(NO)である場合(「低水温継続カウンタでの計時継続中(カウント値<5sec)の場合」と、「低水温継続カウンタ=0の場合」とを含む)は上記ステップST202に戻る。そして、ステップST210が肯定判定(YES)となった時点、つまり、[thw1カウンタ値≧α2]の状態が5秒以上連続したときに「切替弁正常」であると判定する(ステップST211)。
なお、「[thw1カウンタ値≧α2]の状態が5秒以上連続したとき」という条件、及び、「[thw1(現在)−thw1int≧α2]の状態が5秒以上連続したとき」という条件を設定しているのは、エンジン水温センサ21のセンサ値の振れ等による誤判定を防止するためである。
次に、図9を参照して、図7の切替弁判定処理について具体的に説明する。
まず、開弁要求後に「水混合」を判定した時点(電気ヒータ15への通電開始から水混合判定時間が経過した時点)で、thw1カウンタ301の積算(thw1カウンタ変化率の積算)が開始され(ステップST202)、そのthw1カウンタ301の積算値(thw1カウンタ値[℃])が上昇していく(図9の破線参照)。
次に、水混合時点のエンジン水温thw1int(検出値)を用いて、水混合判定後のエンジン水温検出値[thw1−thw1int]を順次算出していく。ここで、切替弁10が正常であり、切替弁10が実際に開弁している場合、図9に示すように、エンジン水温検出値[thw1−thw1int:実線(低温側)]の上昇速度(変化率)は、thw1カウンタ301の積算値(thw1カウンタ値:破線(低温側))の上昇速度(変化率)よりも小さくなる。つまり、エンジン水温検出値[thw1−thw1int]よりも先にthw1カウンタ301の積算値(thw1カウンタ値)が規定値α2(5℃)以上になる。
これに対し、切替弁10が閉故障している場合、エンジン1内の冷却水が流通しないので、図9に示すように、エンジン水温検出値[thw1−thw1int:実線(高温側)]の上昇速度(変化率)は、thw1カウンタ301の積算値(thw1カウンタ値:破線(高温側))の上昇速度よりも大きくなる。つまり、切替弁10が閉故障している場合は、thw1カウンタ301の積算値(thw1カウンタ値)よりも先にエンジン水温検出値[thw1−thw1int]が規定値α2(5℃)以上になる。
このような点に着目して、図7の切替弁判定処理では、水混合判定後のエンジン水温検出値[thw1−thw1int]が規定値α2(5℃)未満である状況のときに(ステップST204が肯定判定(YES)であるときに)、thw1カウンタ301の積算値[℃]が規定値α2(5℃)以上となった場合(ステップST207が否定判定(NO)となった場合)に、その状態(thw1カウンタ値≧α2)が5秒以上連続したときに切替弁10が正常であると判定している。一方、水混合判定後のthw1カウンタ301の積算値[℃]が規定値α2(5℃)未満である状況のときに(ステップST207が肯定判定(YES)であるときに)、水混合判定後のエンジン水温検出値[thw1−thw1int]が規定値α2(5℃)以上となった場合(ステップST204が否定判定(NO)となった場合)に、その状態(thw1−thw1int≧α2)が5秒以上連続したときに「切替弁閉故障」であると判定する。
<エンジン水温センサ:判定1回目で未正常判定の場合>
上記ステップST101の判定結果が否定判定(NO)である場合(エンジン水温センサ21:判定1回目で未正常判定の場合)は、図8の切替弁判定処理を実行する。
まず、この図8の切替弁判定処理に用いるthw2カウンタ302について説明する。
thw2カウンタ302は、ヒータ入口水温センサ22の水温検出値thw2の単位時間当たりの変化量(変化率:勾配)[℃/sec]を積算するためのカウンタである。この水温検出値thw2の変化率(以下、thw2カウンタ変化率ともいう)については、例えば、切替弁10の閉弁時において、走行時の吸入空気量(排気熱回収器6等にてヒータ通路202内の冷却水に伝わる熱量)によって上昇するヒータ入口水温検出値thw2の変化率[℃/sec]を実験・シミュレーション等によって適合した値を用いる。
なお、上記thw2カウンタ変化率については、上記吸入空気量に加えて、フューエルカット時間(F/C時間)などの他のエンジン条件を考慮して適合してもよい。また、thw2カウンタ変化率は、一定値(固定値)であってもよいし、吸入空気量等に応じてマップ等を参照して可変に設定するようにしてもよい。
次に、図8の判定処理について各処理ブロックごとに説明する。
まず、ステップST300において、ヒータ入口水温センサ22の1回目の正常判定が実施済みであるか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合はステップST401に進む。ステップST300の判定結果が肯定判定(YES)である場合はステップST301に進む。なお、このステップST300の判定処理は、上述した図6のステップST102と同じ処理であるので、その詳細な説明は省略する。
ステップST301では「水混合」したか否かを判定する。具体的には、上述した図7のステップST201の処理と同様に、上記切替弁コントローラに開弁要求を行って、切替弁10の電気ヒータ15への通電を開始し、この電気ヒータ15への通電開始時点からの経過時間が、後述する「水混合判定時間」に達した時点で「水混合」したと判定してステップST302に進む。また、「水混合」を判定した時点から、thw2カウンタ302の積算、つまり、上記したthw2カウンタ変化率[℃/sec]の積算[thw2カウンタ値=thw2カウンタ値+thw2カウンタ変化率]を開始する。なお、thw2カウンタ302の初期値は「0」である。
ステップST302では、水混合後のヒータ入口水温thw2(検出値)と、thw2カウンタ302の積算値[℃]との温度差(thw2−thw2カウンタ値)を算出し、その温度差が規定値α3(例えばα3=5℃)以上であるか否かを判定する。その判定結果が肯定判定(YES)である場合(thw2−thw2カウンタ値≧α3である場合)は「切替弁正常」であると判定する(ステップST303)。ステップST302の判定結果が否定判定である場合(thw2−thw2カウンタ値<α3である場合)は「切替弁閉弁故障」であると判定する(ステップST304)。
次に、図10を参照して、ステップST301〜ステップST304の切替弁判定処理について具体的に説明する。
まず、開弁要求後に「水混合」を判定した時点(電気ヒータへの通電開始から水混合判定時間が経過した時点)で、thw2カウンタ302の積算(thw2カウンタ変化率の積算)が開始され、そのthw2カウンタ302の積算値(thw2カウンタ値)が上昇していく(図10の破線参照)。このとき、切替弁10が正常であり、切替弁10が実際に開弁している場合は、エンジン1内の高温水がヒータ通路202内に流入するので、ヒータ通路202内の冷却水の水温は上昇していく。これに伴ってヒータ入口水温センサ22(正常判定済み)にて検出されるヒータ入口水温thw2も上昇していくので、図10に示すように、ヒータ入口水温thw2(検出値)とthw2カウンタ302の積算値(thw2カウンタ値)とが大きく乖離する。
これに対し、切替弁10が閉故障している場合は、エンジン1内で冷却水が停止している状態が継続されるので、ヒータ通路202内の冷却水の上昇量は排気熱回収器6などによって回収される熱に相当する程度であり、切替弁10が正常である場合(エンジン1の高温水が混合した場合)の上昇量と比較して小さくなる。つまり、切替弁10が閉故障している場合、ヒータ入口水温thw2(検出値)は、図10の破線で示すthw2カウンタ302の積算値(thw2カウンタ値)に近い値(もしくは同等な値)となる。
このような点に着目して、ステップST301〜ステップST304の切替弁判定処理では、上述したように、水混合後のヒータ入口水温thw2(検出値)と、thw2カウンタ302の積算値[℃]との温度差(thw2−thw2カウンタ値)が規定値α3(5℃)以上であるときには「切替弁正常」であると判定し、その温度差(thw2−thw2カウンタ値)が規定値α3未満である場合は「切替弁閉故障」であると判定する。
<エンジン水温センサ:判定1回目で未正常判定、ヒータ入口センサ:判定1回目で未正常判定の場合>
上記ステップST300の判定結果が否定判定(NO)である場合、つまりエンジン水温センサ21及びヒータ入口水温センサ22の両方の判定が「判定1回目では未正常判定」である場合は、図8のステップST401において「水混合」したか否かを判定する。具体的には、上述した図7のステップST201の処理と同様に、上記切替弁コントローラに開弁要求を行って切替弁10の電気ヒータ15への通電を開始し、この電気ヒータ15への通電開始時点からの経過時間が、後述する「水混合判定時間」に達した時点で、「水混合」したと判定してステップST402に進む。
ステップST402では、エンジン水温thw1(検出値)とヒータ入口水温thw2(検出値)の温度差(|thw1−thw2|)を算出し、その温度差が規定値α4(例えばα4=20℃)以下であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合(|thw1−thw2|>α4]である場合)は、エンジン水温センサ21の異常もしくは切替弁10の閉故障が疑われるので、切替弁10の正常/閉故障の判定は行わない(ステップST404:未判定)。
ステップST402の判定結果が肯定判定(YES)である場合(|thw1−thw2|≦α4である場合)は「切替弁正常」であると判定する(ステップST403)。すなわち、エンジン冷却水通路201内(エンジン1内)の冷却水と、ヒータ通路202内の冷却水とが十分に混合され、実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とが略同等になったときに、実際のエンジン水温センサ21及びヒータ入口水温センサ22が共に正常である場合には、それら2つの水温センサ21,22にて検出されるエンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2とが近い値(もしくは同等な値)となるので、それら水温の温度差(|thw1−thw2|)が規定値α4以下であれば、エンジン水温センサ21及びヒータ入口水温センサ22は正常であり、切替弁10についても正常であると判定することができる。
このように、エンジン水温センサ21及びヒータ入口水温センサ22の両方の水温センサの正常/異常を確定できない未正常判定の状態であっても、それら2つの水温センサ21,22と切替弁10とを同時に正常判定することが可能になる場合もある。
<判定処理例1の作用効果>
この例の切替弁判定処理によれば、エンジン水温センサ21が正常判定されており、ヒータ入口水温センサ22については正常であるか異常であるかを判定できない未正常判定である場合、その正常なエンジン水温センサ21を用いて切替弁10の正常/閉故障を判定している。また、ヒータ入口水温センサ22が正常判定されており、エンジン水温センサ21については正常/異常を確定できない未正常判定である場合、その正常なヒータ入口水温センサ22を用いて切替弁10の正常/閉故障を判定しているので、それらエンジン水温センサ21及びヒータ入口水温センサ22のいずれか一方の水温センサの正常/異常を確定できない状況であっても、その未正常判定の水温センサの正常判定を行う前に、正常判定済みの水温センサを用いて切替弁の閉故障を判定することができる。このように正常/異常を確定できていない水温センサを用いずに、正常判定済みの水温センサを用いることにより、水温センサ異常と切替弁閉故障とを区別することが可能になり、切替弁10の閉故障を正確に判定することができる。
なお、以上の例では、イグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で図6〜図8の処理ルーチンを開始するようにしているが、エンジン1が搭載される車両がハイブリッド車両である場合、エンジン始動要求があったときに、図6〜図8の処理ルーチンを開始するようにしてもよい。
<水混合判定時間>
次に、上記した「水混合」の判定処理に用いる「水混合判定時間」について説明する。
「水混合判定時間」は、電気ヒータ15への通電開始から切替弁10が実際に開弁するまでの時間と、その切替弁10が開弁した後にエンジン冷却水通路201内(エンジン1内)の冷却水とヒータ通路202内の冷却水とが十分に混合(ヒータ通路202の冷却水の水温が十分に上昇)するまでの時間とから適合する。具体的には、切替弁10の電気ヒータ15への通電開始から切替弁10の開弁までに最も時間のかかる条件(例えばアイドル運転時でかつ低温環境下であるという条件)に基づいて、切替弁10の開弁に要する時間time1を実験・シミュレーション等によって適合する。また、エンジン冷却水通路201内(エンジン1内)の冷却水とヒータ通路202内の冷却水とが十分に混合するのに必要な時間time2については、切替弁10が開弁した後のエンジン1内の冷却水流量に反比例するので、この点を考慮して実験・シミュレーション等により適合する。そして、このようにして適合した[開弁に要する時間time1」と[冷却水の混合に必要な時間time2]とを加算した値[time1+time2]を、上記した「水混合」の判定に用いる「水混合判定時間」とする。
なお、上記「切替弁10の開弁に要する時間time1」については、切替弁10の感温部14の周辺水温Tvwを推定し、その切替弁周辺水温Tvwの推定値から切替弁10の開弁を判定するようにしてもよい。具体的には、正常なエンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1を用いて、マップや計算式に基づいて切替弁周辺水温Tvwを推定し、その切替弁周辺水温Tvwの推定値が切替弁10の開弁温度(70℃)に達した時点で「切替弁10が開弁した」と判定する。そして、この開弁判定時点から、上記した設定時間time2が経過した時点で「水混合」したと判定する。
このように、切替弁周辺水温Tvwの推定値から切替弁10の開弁を判定することで、電気ヒータ15への通電開始からの経過時間で切替弁10の開弁を判定する場合と比較して、「水混合」を短時間で判定することができる。
すなわち、上記電気ヒータ通電時間を用いた場合、実際には切替弁10が開弁していないのに「開弁した」と誤判定することを防止するために、切替弁10の開弁までに最も時間のかかる条件(例えばアイドル運転時でかつ低温環境下であるという条件)に基づいて水混合判定時間を適合する必要があり、このような適合ではマージンが大きすぎるため「水混合」判定までの時間がどうしても長くなってしまう。これに対し、切替弁周辺水温(≒ワックス温度)Tvwの推定値が切替弁10の開弁温度(70℃)になったときに開弁したと判定することで、切替弁10の実際の開弁に応じて開弁判定を行うことができる。これによって、上記したマージンを見込む必要がなくなるので、「水混合」の判定までの時間を短くすることが可能になる。
また、切替弁周辺水温Tvwの推定値から切替弁10の開弁を判定する場合、冷却損失Qwを用いて、後述する(1)式に基づいてエンジン水温thw1を推定し、そのthw1の推定値を用いて切替弁周辺水温Tvwを推定するようにしてもよい。なお、冷却損失Qwは、後述するように、エンジン回転数Ne及び負荷率klに基づいてマップを参照して算出する。
[判定処理例2]
次に、エンジン水温センサ21が正常である場合の、切替弁10の閉故障判定処理の一例について図11のフローチャートを参照して説明する。この図11の処理ルーチンはECU300において実行される。この例の切替弁閉故障判定処理では高水温継続カウンタ311及び低水温継続カウンタ312を用いる。
図11に示す処理ルーチンはイグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で開始される。この処理ルーチンが開始されると、まずは、ステップST501において「水混合」したか否かを判定する。具体的には、上述した図7のステップST201の処理と同様に、上記切替弁コントローラに開弁要求を行って切替弁10の電気ヒータ15への通電を開始し、この電気ヒータ15への通電開始時点からの経過時間が後述する「水混合判定時間」に達した時点で「水混合」したと判定してステップST502に進む。
ステップST502では、エンジン水温センサ21によって検出されるエンジン水温thw1が、図12に示す規定値Limthw1以上であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合([thw1<Limthw1]である場合)は、高水温継続カウンタ311のカウンタ値を「0」にし、低水温継続カウン312をON(作動)にして計時を開始する(ステップST503)。次に、ステップST504において、低水温継続カウン312のカウント値(計時値)が5sec以上であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)となった時点、つまり、[thw1<Limthw1]の状態が5秒以上連続したときに「切替弁正常」であると判定する(ステップST505)。
一方、上記ステップST502の判定結果が肯定判定(YES)である場合([thw1≧Limthw1]である場合)は、低水温継続カウンタ312のカウンタ値を「0」にし、高水温継続カウン311をON(作動)にして計時を開始する(ステップST513)。次に、ステップST514において、高水温継続カウン311のカウント値(計時値)が5sec以上であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)となった時点、つまり[thw1≧Limthw1]の状態が5秒以上連続したときに「切替弁閉故障」であると判定する(ステップST515)。
なお、「[thw1<Limthw1]の状態が5秒以上連続したとき」という条件、及び、「[thw1≧Limthw1]の状態が5秒以上連続したとき]という条件を設定しているのは、エンジン水温センサ21のセンサ値の振れ等による誤判定を防止するためである。
次に、図12を参照して、この例の切替弁判定処理について具体的に説明する。
まず、切替弁10が正常である場合、切替弁10が開弁した時点から、実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とが近づいていく。これに伴ってエンジン水温センサ21(正常)にて検出されるエンジン水温thw1が低下していく(図12の破線参照)。ただし、切替弁10が正常であっても、開弁後にエンジン水温thw1(検出値)はオーバーシュートする。これは、切替弁10の閉弁中に、エンジン水温thw1(エンジン出口水温(シリンダヘッド出口水温))よりも高温状態になっていたシリンダヘッド内の冷却水がエンジン水温センサ21を通過することによって生じる。
一方、切替弁10が閉故障している場合、開弁要求(電気ヒータへの通電)を行ってもエンジン1内の冷却水が流通しないので、実際のエンジン水温が上昇していき、これに伴ってエンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1も上昇していく(図12の実線参照)。このように、切替弁10が正常である場合と、閉故障の場合とではエンジン水温thw1(検出値)の挙動が大きく異なる。つまり、切替弁10が正常である場合のエンジン水温検出値thw1は、切替弁10が閉故障している場合と比較して低くなる
このような点に着目して、この例では、上述したように、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1に基づいて、水混合後のエンジン水温thw1が規定値Limthw1よりも小さい場合には「切替弁正常」であると判定し、水混合後のエンジン水温thw1が規定値Limthw1以上である場合は「切替弁閉故障」であると判定する。
ここで、上記規定値Limthw1については、高温環境下で高負荷走行時において図12に示すオーバーシュートが生じたときのエンジン水温thw1(検出値)の最大値(正常な切替弁10にて最も高温になり得る値)を計測しておき、そのエンジン水温thw1の最大値よりも高い値を適合(thw1最大値+マージン)すればよい。
なお、この例では、イグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で図11の処理ルーチンを開始するようにしているが、エンジン1が搭載される車両がハイブリッド車両である場合、エンジン始動要求があったときに、図11の処理ルーチンを開始するようにしてもよい。
[判定処理例3]
次に、エンジン水温センサ21が正常である場合の、切替弁10の閉故障判定処理の別の例について図13のフローチャートを参照して説明する。この図13の処理ルーチンはECU300において実行される。
図13に示す処理ルーチンはイグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で開始される。この処理ルーチンが開始されると、まずは、ステップST601において、下記の要領で冷却損失Qw及びエンジン水温thw1の推定値(以下、「thw1推定値」という場合もある)を算出する。このthw1推定値の算出処理は所定時間(例えば数msec〜数十msec)ごとに繰り返して実行される。
(i)エンジン回転数センサ25の出力信号から算出されるエンジン回転数Ne及び負荷率klに基づいて、予め実験・シミュレーション等によって適合されたマップを参照してエンジン1内の冷却損失Qwを算出する。なお、負荷率klは、例えば、最大機関負荷に対する現在の負荷割合を示す値として、エンジン回転数Ne及び吸気圧に基づきマップ等を参照して算出することができる。
(ii)上記(i)で算出した冷却損失Qwを用いて、下記の(1)式つまりエンジン水温thw1のラプラス変換式に基づいてエンジン水温thw1の推定値を算出する。
ここで、この例において、エンジン水温thw1の推定値は、エンジン内水停止状態を前提として推定しているので、切替弁10が閉弁中の実エンジン水温と同等となる。
なお、上記(1)式のパラメータ[C、λ、L、A]は、エンジン1内水停止中における、シリンダヘッドのウォータジャケット内の最高温度部分周辺の水の塊を想定して適合した値が設定される。
次に、ステップST602においてエンジン水温センサ21が異常であるか否かを判定する。具体的には、エアフロメータ24の出力信号に基づいてエンジン始動時からの吸入空気量gaの積算値(Σga)を算出し、その吸入空気量積算値Σgaが規定値γ1[g]以上なったときのエンジン水温センサ21の出力信号に基づいて、エンジン水温thw1(検出値)の偏差(エンジン始動時のエンジン水温検出値との偏差(thw1偏差))を算出する。そして、そのthw1偏差が所定の判定値(例えば5℃)以上であるか否かを判定(スタック判定)し、thw1偏差が判定値未満である場合は、エンジン水温センサ21が異常であると判定する。この場合、切替弁10の正常/閉故障の判定は行わない(ステップST613:未判定)。一方、thw1偏差が上記判定値(例えば5℃)以上である場合は、エンジン水温センサ21は正常であると判定してステップST603に進む。
なお、上記ステップST602において吸入空気量積算値(Σga)に対して設定する規定値γ1[g]については、切替弁10が閉弁状態(エンジン内水停止中)にエンジン1の燃焼室からエンジン内の冷却水に伝わる熱量によりエンジン1内の冷却水が上昇する過程において、エンジン始動時からのエンジン水温センサ21(正常状態)の検出値変動量(偏差)が上記所定の判定値(例えば5℃)以上に上昇するのに必要な吸入空気量の積算値(Σga)を、実験・シミュレーション等によって取得しておき、その結果を基に規定値γ1[g]を適合する。
ステップST603では開弁要求前であるか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合(開弁要求があった場合)はステップST606に進む。ステップST603の判定結果が肯定判定(YES)である場合はステップST604に進む。
ステップST604では、上記エンジン水温thw1の推定値と、エンジン水温センサ21にて検出される実エンジン水温thw1(検出値)との差を算出し、その温度差(|thw1推定値−実thw1|)が規定値β1(例えばβ1=5℃)以上であるか否かを判定する。その判定結果が肯定判定(YES)である場合は、切替弁10の正常/閉故障の判定は行わない(ステップST613:未判定)。
ステップST604の判定結果が否定判定(NO)である場合、つまり、上記温度差(|thw1推定値−実thw1|)が規定値β1未満である場合は、切替弁判定の前提条件が成立したと判定(ステップST605)してステップST603に戻り、切替弁10の開弁要求があるまで待機する(ステップST603が肯定判定(YES)となるまで待機する)。
次に、切替弁10の開弁要求があると水混合を行う。具体的には、上述した図7のステップST201の処理と同様に、切替弁10の電気ヒータ15への通電を開始し、この電気ヒータ15への通電開始時点からの経過時間が上記「水混合判定時間」以上になったとき(ステップST606が判定結果が肯定判定(水混合後)となったとき)にステップST607に進む。
ステップST607では、上記エンジン水温thw1の推定値と、エンジン水温センサ21にて検出される実エンジン水温thw1(検出値)との差(|thw1推定値−実thw1|)を算出し、その温度差が規定値β1(例えばβ1=5℃)以上であるか否かを判定する。その判定結果が肯定判定(YES)である場合(|thw1推定値−実thw1|≧β1である場合)は「切替弁正常」であると判定する。ステップST607の判定結果が否定判定(NO)である場合つまり、上記温度差(|thw1推定値−実thw1|)が規定値β1未満である場合は「切替弁閉故障」であると判定する。
次に、図14を参照して、この例の切替弁判定処理について具体的に説明する。
まず、切替弁10が正常である場合、エンジン水温センサ21にて検出される実エンジン水温thw1は、図14の破線で示すように、切替弁10が開弁した時点の直後に上記した理由によりオーバーシュートするものの、時間経過とともに低下していく。つまり、切替弁10が正常である場合、切替弁10が開弁した時点から、水混合により実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とが近づいていき、これに伴ってエンジン水温センサ21(正常)にて検出されるエンジン水温thw1が低下していく。
これに対し、切替弁10が閉弁状態(エンジン内水停止状態)を条件に推定したエンジン水温推定値(thw1推定値)は、図14の実線で示すように、切替弁10が実際に開弁しても、時間の経過とともに上昇していくので、切替弁正常時の実エンジン水温検出値thw1とエンジン水温推定値(thw1推定値(≒切替弁閉故障時の検出値thw1))とは大きく乖離する。
このような点に着目して、この例では、上述したように、エンジン水温センサ21にて検出される実エンジン水温thw1とthw1推定値との差(|thw1推定値−実thw1|)が規定値β1以上である場合は「切替弁正常」であると判定し、その水温差(|thw1推定値−実thw1|)が規定値β1未満である場合には「切替弁閉故障」であると判定する。
なお、図13の切替弁判定処理の[判定タイミング]と[thw1推定値と実thw1との差]との関係、及び、切替弁判定結果を下記の表1に示す。
ここで、図13の切替弁判定処理において、エンジン水温センサ21の正常判定を、エンジン水温thw1と吸気温thaとのラショナリティ判定(上記図6のステップST101で説明した判定処理)によって行うようにしてもよい。
この場合、ラショナリティ判定の1回目で「エンジン水温センサ正常」となったときに、開弁要求前(切替弁閉弁中)にthw1推定値と実thw1との温度差(|thw1推定値−実thw1|)が上記規定値β1未満である場合には切替弁判定の前提条件が成立したと判定し、図13に示すステップST606以降の処理を実行して、切替弁10の正常/閉故障を判定する。一方、上記ラショナリティ判定の1回目でエンジン水温センサ21について正常判定されず、かつ、開弁要求前(切替弁閉弁中)にthw1推定値と実thw1との温度差(|thw1推定値−実thw1|)が上記規定値β1以上となる場合は、エンジン水温センサ21の異常もしくは切替弁10の閉故障が疑われるため、切替弁10の正常/閉故障の判定は行わない。
なお、この例では、イグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で図13の処理ルーチンを開始するようにしているが、エンジン1が搭載される車両がハイブリッド車両である場合、エンジン始動要求があったときに、図13の処理ルーチンを開始するようにしてもよい。
−他の実施形態−
以上の例では、冷却水の循環に電動ウォータポンプを用いているが、本発明はこれに限られることなく、機械式ウォータポンプを冷却水循環に用いてもよい。
以上の例では、熱交換器としてヒータ、排気熱回収器及びEGRクーラが組み込まれた冷却系に本発明を適用した例を示したが、これら排気熱回収器、EGRクーラに加えて、ATF(Automatic Transmission fluid)ウォーマ、ATFクーラなどの熱交換器が組み込まれた冷却系にも本発明を適用できる。