JP2012102287A - ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、こうした製品は必ずしも2次加工として塗装やフィルム貼付を行うわけでなく、添加剤で着色した原料樹脂を成形してそのまま製品として用いることも多々ある。
すなわち、従来の技術によっては、優れた耐候性と剛性を併せ持ったガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂は提供されていなかった。
維強化ポリカーボネート樹脂組成物が優れた耐候性と剛性を有することを見出し、本発明の完成に至った。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
すなわち、前記ジヒドロキシ化合物は、二つのヒドロキシル基と、更に前記式(1)の部位を少なくとも含むものをいう。
これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
尚、シクロヘキサンジメタノールの中でも工業的に入手が容易である、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノール−A)等を、少量共重合させたりこれを含むポリカーボネート樹脂等をブレンドさせたりすることが挙げられ、耐熱性や成形加工性を効率よく改善できることが期待できるが、こうした芳香族化合物を用いると、一般に耐候性に不具合が生じる傾向があるため、その使用量
を最低限とするか、追加成分として紫外線吸収剤を相当量添加するなどの工夫が必要となる。
このようにして得られた、本発明で用いる構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、通常1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.30dL/g以上であることによって、成形品に十分な機械的強度を付与することができ、1.20dL/g以下であることによって、成形する際の流動性が十分であるため、生産性や成形性を低下させることがなく好ましい。
還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
この場合、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を構成する全樹脂100質量%に対する紫外線吸収剤の添加量は0.001質量%以上、10質量%以下の範囲であることが好ましい。また、0.005質量%以上、8質量%以下の割合で使用することがより好ましく、0.01質量%以上、5質量%以下の割合で配合することが特に好ましい。0.001質量%以上であれば紫外線吸収の性能を十分に発現することができ、また10質量%以下であれば、樹脂の着色を抑制できたり、原料コストの低減を図ることができたりする。更に、かかる範囲で紫外線吸収剤の量を調節することにより、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂成形体表面への紫外線吸収剤のブリードアウトや、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂成形体の剛性低下を生じることなく、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体の耐候性を向上することができる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂に必要に応じて添加する紫外線吸収剤は、各種市販のものを使用できるが、従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加用に専ら用いられるものを好適に用いることができる。一例としては例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)などのベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用すると、成形品表面のガスによる曇りが減少し改善される。
より具体的には、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −5−クロ
ロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビ
ス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2
−イル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が使用され、これらのうちでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フ
ェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いるガラス繊維としては、ソーダライム、ボロシリケート、アルミナシリケート、石英等のガラス素材を応用した、チョップド繊維、連続ロービング繊維等の従来公知のガラス繊維、あるいはこれらの改質品が好適に使用できる。これらの中でも、強度や耐熱性に優れている点を鑑みて、アルカリ含有率が10%以下のものが好ましく、特には3%以下のものがより好ましく、無アルカリガラスと呼ばれるものが特に好ましい。
また、当該ガラス繊維を数百本束ねたマルチフィラメントをエポキシ系、ウレタン系、アクリル系、シラン系等の集束剤で表面処理してあるものが、混練機への供給安定性や、前記ポリカーボネート樹脂との接着性向上の観点から好ましい。
またチョップド繊維または連続ロービング繊維の平均繊維径は3〜30μmの範囲であることが好ましい。平均繊維径が3μm以上であれば本発明の樹脂組成物に効率よく剛性を付与することができ、30μm以下であれば過分に凹凸の激しい外観になったりウェルド会合部での密着不良や盛り上がり等の不具合が生じたりすることが少ない。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物中のガラス繊維の平均繊維長や平
均繊維径は、該樹脂組成物の燃焼残渣か可溶溶媒で樹脂成分を溶かし出した溶出残渣を、水などの展開媒上で広げたりした後に光学顕微鏡で観察し、画像解析装置等を用いて測定することができる。
前記ガラス繊維の含有量が1質量%以上であることによって、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物及びガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂成形体に優れた剛性を付与することができる。また、含有量が50質量%以下であることによって、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物が流動性や成形性に優れ、また本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂成形体の外観が良好となる。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物には、さらにその他の成分として、本発明で用いるポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂や、耐熱安定剤、耐光安定剤、着色剤の各種添加剤等を、耐候性や剛性等の本発明の特徴を損なわない範囲で添加してもよい。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、前記ポリカーボネート樹脂を溶融可塑化させてガラス繊維と混合することで得られ、特にその製法に制限はない。例えば途中開口部または途中フィード部を設けた2軸押出機へ前記ポリカーボネート樹脂を供給して溶融可塑化し、溶融状態の前記ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を供給して溶融混練し、ストランドを引いてペレット化する。他の例は同様の押出機で前記ポリカーボネート樹脂を溶融可塑化し、クロスヘッドダイ等の溶融樹脂含浸槽を設けた押出機先端へ連続ロービング繊維を供給して溶融樹脂を含浸させ、繊維長約10mmにカットして長繊維ペレットとする。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを押出成形や射出成形することにより、所望の形状に成形し、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂成形体を得ることができる。
各種成形機のシリンダ設定温度は、本発明の樹脂組成物を製造する際と同等の、前述の温度範囲を採用することが好ましい。また射出成形する場合の金型温度はできるだけ高いほうが充填率向上や転写率向上の観点から好ましく、通常50℃以上、好ましくは60〜80℃程度が推奨される。或いは急速加熱冷却成形により、充填時は80〜100℃程度、冷却離型時は30〜50℃程度になるようサイクル設定してもよい。
ラス繊維強化ポリカーボネート成形体内部のガラス繊維の平均繊維長を長く保持することができ、具体的には平均繊維長を約1〜2mm程度まで保持することができる。また、温度設定以外にも、可塑化スクリュの圧縮比を小さくしたり可塑化速度を遅くしたり、押出成形時の導管径を太くしたり、口金リップ間隔を広めにしたり、射出成形時のスクリュ内チェックリングのクリアランスを広くしたり、金型内のランナーを広くしたりL字部を少なくしたり、ゲートの絞りを広くしたり等の従来から知られる工夫をすることでも、ガラス繊維の平均繊維長を長く保持することができる。
こうすることで本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂成形体のソリや変形を最小限にすることができ、剛性、耐衝撃性、寸法精度等の異方性を小さくすることができる。
本発明においては、JIS K7350に準拠したサンシャインウェザーメータによる耐候性試験において、500時間経過後の外観を目視観察して、耐候性を評価した。
本発明においては、JIS K7139に準拠して作製した多目的ダンベル試験片について、JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率の値を用いて、剛性を評価した。
ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を構成する樹脂成分としては、以下の材料を用いた。
(a−1)ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用い、イソソルビドに由来する構造単位:1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70:30(モル%)となるように溶融重合法により得た、還元粘度0.51dl/gのポリカーボネート樹脂。
(a−2)ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いた、芳香族ポリカーボネート樹脂である、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「ユーピロンS3000」。
(b−1)平均繊維長3mmのチョップドガラス繊維として、旭ファイバーグラス社製、商品名「CS03MA409」。
途中開口部を有する2軸押出機を用い、(a−1)は樹脂温度を230℃、(a−2)は樹脂温度を290℃として溶融可塑化させ、該開口部から(b−1)を、表1に記載の各実施例・比較例の含有比率となるようにフィーダで連続供給して樹脂成分と溶融混練し
、ストランドを引いてペレット化した。
得られたペレットを120℃で5時間熱風乾燥した後、型締力980kNの射出成形機を用いて、JIS K7139に準拠して多目的ダンベル試験片を成形した。成形時の加熱筒の樹脂温度はペレット製造時と同様とし、金型温度は80℃とした。なお、参考例として、(a−1)のみ、及び(a−2)のみからも試験片を作製した。
(1)剛性(曲げ弾性率)
作製した試験片の両端を切り落とし、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った。表1に曲げ弾性率の値を示した。
作製した試験片をJIS K7350に準拠してサンシャインウェザーメータによる耐候性試験を行い、500時間経過後の外観を目視観察し、以下の基準で判定した。
○:黄変劣化や変形が無い。
△:僅かに黄変劣化か変形が見られる。
×:著しい黄変劣化か変形が見られる。
さらに、表2の計算例からは、ポリカーボネート樹脂(a−1)を使用した場合の方が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a−2)を使用した場合に比べて、少ないガラス繊維配合量で効率よく剛性を付与することができることがわかる。
一方、従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した場合は、前述の利点が得られない上、著しく黄変劣化が進行し、黒色等で原料着色を行っても色相変化が明らかに観察され、屋外等で長期間使用することは困難である。
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