JP2012099404A - 異方導電性フィルム及び接続構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐チップ割れ及び耐チップ剥離性に優れると共に、接続信頼性に優れる高信頼性の異方導電性フィルム、及びそれを用いた接続構造体の提供。
【解決手段】少なくとも2つの層を含む異方導電性フィルムであって、硬化後の最小層間破壊強度が2〜9MPaであることを特徴とする異方導電性フィルム。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも2つの層を含む異方導電性フィルムであって、硬化後の最小層間破壊強度が2〜9MPaであることを特徴とする異方導電性フィルム。
【選択図】なし
Description
本発明は、回路基板同士又はICチップと回路基板の接続に用いられる異方導電性フィルム及び接続構造体に関する。
異方導電性フィルムは、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたフィルム、換言すれば、液晶ディスプレイとICチップ若しくはTCP(Tape Carrier Package)との接続、FPC(Flexible Printed Circuit)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板との接続を簡便に行うために使用される接続部材であり、例えば、ノート型パソコン又は携帯電話の液晶ディスプレイと制御ICとの接続用として広範に用いられ、最近では、ICチップを直接ディスプレイ回路又はプリント基板に搭載するフリップチップ実装にも用いられている(特許文献1、2及び3参照)。
近年、携帯電話等の携帯機器の小型化又は液晶ディスプレイの狭額縁化が益々進行している。また搭載チップの薄型化及び基材の薄型化も進行している。一方で、高機能化、高画質化も進行しており、搭載チップの端子数は増加し、搭載チップ長は長くなる傾向にある。そのため、特に携帯機器等では、チップ搭載部に力が加わった場合、又はチップ搭載部に衝撃が加わった場合等にチップ割れ又は剥離といった故障が発生し易いという問題があった。
接続信頼性を高いレベルで維持しつつ、チップ割れ及び剥離を抑制することが求められている。従来技術としては、異方導電性フィルム中にゴム粒子等の低応力粒子を配合し、応力緩和する方法(特許文献4、5及び6)、及び弾性率を制御する方法(特許文献7)が公知である。しかしながら、応力を緩和する従来技術では、接続信頼性とチップ割れ及びチップ剥離の抑制とを両立することが困難であった。
本発明の課題は、耐チップ割れ及び耐チップ剥離性に優れると共に、接続信頼性に優れる高信頼性の異方導電性フィルム、及びそれを用いた接続構造体を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも2つの層を含む異方導電性フィルムとして、硬化後の最小層間破壊強度が特定の範囲内にある異方導電性フィルムを用いることで、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の通りである。
[1] 少なくとも2つの層を含む異方導電性フィルムであって、硬化後の最小層間破壊強度が2〜9MPaであることを特徴とする異方導電性フィルム。
[2] 無アルカリガラス、窒化ケイ素、酸化インジウムスズ(ITO)及び酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種を含む被着体に対する密着強度が、10〜35MPaである、[1]に記載の異方導電性フィルム。
[3] 前記2つの層のいずれか一方に対する密着強度が回路基板に対する密着強度より低い層を、前記2つの層の間に含む、[1]又は[2]に記載の異方導電性フィルム。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の異方導電性フィルムにより接続する工程を含む接続構造体の製造方法。
[5] [4]に記載の方法により得られる接続構造体。
本発明の異方導電性フィルムは、回路基板の接続において、耐チップ割れ及び耐チップ剥離性に優れると共に、接続信頼性に優れるという効果を奏する。
以下、本発明について具体的に説明する。
<異方導電性フィルム>
本発明の異方導電性フィルムは、少なくとも2つの層を含む。また、本明細書では、用語「異方導電性フィルム」は、異方導電性接着フィルムと呼ぶこともある。また、本発明の異方導電性フィルムは、導電性粒子及び絶縁性接着剤を含むことが好ましい。
<異方導電性フィルム>
本発明の異方導電性フィルムは、少なくとも2つの層を含む。また、本明細書では、用語「異方導電性フィルム」は、異方導電性接着フィルムと呼ぶこともある。また、本発明の異方導電性フィルムは、導電性粒子及び絶縁性接着剤を含むことが好ましい。
本発明の異方導電性フィルムは、硬化後の少なくとも2つの層の間の剥離強度(以下、「最小層間剥離強度」という)が2〜9MPaであることを特徴とする。本発明の異方導電性フィルムの硬化後の最小層間剥離強度は、好ましくは3〜8MPaであり、より好ましくは4〜7MPaである。最小層間剥離強度が2〜9MPaの範囲にある場合には、機械的強度の及びチップ破壊抑制の観点から好ましい。
本発明の異方導電性フィルムは、無アルカリガラス、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸化インジウムスズ(ITO)から選ばれる少なくとも1種を含む被着体に対する密着強度が、好ましくは10〜35MPaであり、より好ましくは12〜30MPaであり、特に好ましくは15〜25MPaである。該密着強度が10〜35MPaに範囲にある場合、異方導電性フィルムが十分な機械的強度を得ることができるので、密着界面からの剥離に由来する接続性低下が抑制されることができる。該密着強度は、上記最小層間破壊強度の1.1〜15倍の範囲にあることが好ましく、1.5倍〜10倍の範囲がより好ましく、2倍〜5倍の範囲が更に好ましい。密着強度が上記最小層間破壊強度の1.1倍〜15倍の範囲にあれば、チップ割れ及びチップ剥離を抑制できるので好ましい。
上記の密着強度及び最小層間破壊強度の測定方法としては、公知の方法を用いることができる。特に、該異方導電性フィルムを用いて接続したチップのせん断剥離強度測定を用いることが好適である。密着強度及び最小層間破壊強度の測定では、まず、無アルカリガラス等の基板とチップを異方導電性フィルムを用いて接続する。この際、異方導電性フィルムの硬化率が85%以上となるように接続が行なわれることが好ましい。異方導電性フィルムの硬化率は示差走査熱量(DSC)法、赤外線放射(IR)法等を用いて測定することができる。接続温度は、160℃〜200℃の範囲にあることが好ましく、170℃〜190℃の範囲にあることがより好ましい。
接続時間は、硬化率が85%以上にあるように設定することができるが、5〜10秒の範囲にあることが好ましい。
接続荷重は、チップを接続する場合、チップ中の接続バンプの総面積に対して、30〜100MPaの範囲が好ましく、40〜90MPaの範囲がより好ましく、50〜80MPaの範囲が更に好ましい。接続荷重が30〜100MPaの範囲にあれば、十分な押し込み量が確保されるともに、接続時の基板割れが防止されるので好ましい。
密着強度測定に用いるチップは、厚みが200μm〜350μmの範囲にあることが好ましく、220μm〜300μmの範囲にあることがより好ましく、250μm〜280μmの範囲にあることが更に好ましい。チップ厚が200〜350μmの範囲にある場合、その膜厚はせん断剥離強度測定に十分であり、さらに接続時の熱伝度が効率的になる。チップの形状は長方形であることが好ましい。チップの短辺の長さは0.5〜2mmの範囲にあることが好ましく、0.6〜1.0の範囲にあることがより好ましい。チップの長辺の長さは15〜25mmの範囲にあることが好ましく、17〜20mmの範囲にあることがより好ましい。チップの長辺/短辺のアスペクト比は15〜35であることが好ましく、20〜30であることがより好ましい。アスペクト比の15〜35の範囲は、せん断剥離強度の精度の観点から好ましい。
チップのせん断剥離強度測定は、チップ長辺の1.2倍以上の長さ及びチップ厚み以上の突起を有するL字型のステンレス器具を、チップ圧着基板上に固定された圧着チップに被せ、該チップの長辺方向に一直線に引っ張る。このときの破壊強度をフォースゲージ等で読み取ることが好ましい。引っ張り速度は10mm/分〜15mm/分の間にあることが好ましい。該破壊強度の値及びチップ面積より、せん断剥離強度を算出することが出来る。
上記の最小層間破壊強度を測定する場合、せん断強度測定後の試料の剥離面では、層界面剥離が起きる。すなわち、チップ面側にも、基板面側にも異方導電性フィルムが残っている。この場合には、基板面又はチップ面の界面剥離面積は総接続面積の10%以下であることが好ましい。
上記の密着強度の測定方法としては、異方導電性フィルムの最表面の層単独でチップのせん断強度を測定する方法、又はせん断剥離強度測定後の試料の異方導電性フィルム部分に十分な密着強度を確保できる接着剤を用いて試験用チップを固定し、再度、基板面から剥離する強度を測定する方法が挙げられる。
本発明の異方導電性フィルムの膜厚は、15〜35μmであることが好ましく、18〜30μmが好ましく、20〜25μmが更に好ましい。膜厚が15μm以上であれば、フィルムの接着性が良好であり、35μm以下であれば、接続構造体が、絶縁性接着剤の流動による導電性粒子の流れ出しの影響を受け難くなる。
本発明の異方導電性フィルムに含まれる少なくとも2つの層については、各層の厚みが0.1〜25μmの範囲にあることが好ましい。異方導電性フィルムを構成する層のうち少なくとも1つの層は、厚みが5〜20μmの範囲にあることが好ましく、8〜15μmの範囲にあることがより好ましい。
本発明の異方導電性フィルムに含まれる層としては、絶縁性接着剤中に導電性粒子が分散されている異方導電性層、セパレーター層、被着体に対して異なる密着強度を有する複数の層、オーバーコート層、ラミネート層などが挙げられる。また、本発明の異方導電性フィルムには、導電性粒子を含まない層又はフィルムを積層することもできる。
本発明の異方導電性フィルムは、少なくとも2つの層を含み、好ましくは複数の層を含む。また、本発明の異方導電性フィルムは、最小層間剥離強度を制御するために、前記2つの層の間に、前記2つの層のいずれかに対する密着強度が回路基板に対する密着強度より低い層(以下、「低密着強度層」と呼ぶこともある)を含むことが好ましい。低密着強度層の膜厚は、0.1〜2μmの範囲にあることが好ましく、0.1〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。この膜厚が0.1〜2μmの範囲にあれば、破壊位置及び破壊強度を制御できる。該低密着強度層は、破壊強度が回路基板に対する密着強度より低い層でよい。低密着強度層としては、熱可塑性樹脂単独、又は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物から成る絶縁性樹脂、熱可塑性樹脂、並びに熱硬化性樹脂及び硬化剤から成る絶縁性樹脂を用いることが出来る。
該低密着層が、熱可塑性樹脂単独から成る絶縁性樹脂の場合、1種以上の熱可塑性樹脂の混合物を用いることも好適である。熱可塑性樹脂の軟化点は120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。1種以上の熱可塑性樹脂の混合物から成る絶縁性樹脂を用いる場合、混合物中の最も軟化点の高い熱可塑性樹脂の軟化点が120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の軟化点が120℃以下である場合、破壊強度の変動が小さく、好ましい。
該低密着層が熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物から成る絶縁性樹脂の場合、混合物の全質量に対する熱可塑性樹脂の含有率(質量%)は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90%以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有率(質量%)が50%以上の場合、破壊面が安定しており好ましい。
該低密着層が熱可塑性樹脂、並びに熱硬化性樹脂及び硬化剤から成る絶縁性樹脂を用いる場合、絶縁性樹脂の全質量に対する熱可塑性樹脂の含有率(質量%)が、前記低密着層以外の層中の熱可塑性樹脂の含有率(質量%)の1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。絶縁性樹脂の全質量に対する熱可塑性樹脂の含有率(質量%)が、低密着層以外の層中の熱可塑性樹脂の含有率の1.1倍以上である場合、密着強度が安定するため好ましい。
本発明の異方導電性フィルムは、少なくとも2つの層から成るので、各層をそれぞれ形成した後にラミネート等により積層することにより調製されることができる。最小破壊強度を制御し、かつ破壊位置を制御する方法としては、前述の低密着強度層を形成する方法に加えて、ラミネート時の温度及び荷重を制御する方法が挙げられる。その方法では、ラミネート時の温度は、15℃〜40℃の範囲にあることが好ましく、20℃〜30℃の範囲にあることがより好ましい。ラミネート後の界面の観点から、ラミネート時の温度は15℃〜40℃の範囲にあることが好ましい。
本発明の異方導電性フィルムに含まれる層の少なくとも1つは、導電性粒子を含むことが好ましい。導電性粒子としては、金属粒子、炭素から成る粒子、高分子核体に金属薄膜を被覆した粒子等が挙げられる。金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、インジウム、パラジウム等の単体、及び2種以上のこれらの金属が層状、又は傾斜状に組み合わされている粒子等が例示される。
<異方導電性フィルムに含まれる層の材料>
高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子としては、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)等のポリマーから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成される高分子核体、及びこれらのポリマーにシリカ等の無機粒子を配合した高分子核体に、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、インジウム、パラジウム等から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成されるめっき等により金属被覆した粒子が例示される。
高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子としては、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)等のポリマーから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成される高分子核体、及びこれらのポリマーにシリカ等の無機粒子を配合した高分子核体に、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、インジウム、パラジウム等から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成されるめっき等により金属被覆した粒子が例示される。
金属薄膜の膜厚は、0.005μm以上1μm以下の範囲にあることが、接続抵抗及び、凝集防止の点から好ましい。なお、上記膜厚は、オージェ分光分析法等で確認可能である。金属薄膜は均一な厚みで被覆されていることが、接続安定性の観点から好ましい。これらの高分子核体に金属薄膜を被覆した導電性粒子の表面を更に絶縁性物質で被覆した粒子も使用できる。
絶縁性物質で覆う方法は、公知の方法、例えば、微粒子を付着させ、粒子同士を衝突させることにより表面被覆する方法、スプレードライ法で樹脂被覆する方法等を用いることができる。絶縁性物質としては、接続温度以下で軟化する熱可塑性物質であることが好ましい。
導電性粒子の平均粒径は、0.5μm以上10μm以下の範囲にあることが、導電性と絶縁性の両立及び導電性粒子の凝集防止の観点から好ましい。上記平均粒径は、より好ましくは1μm以上7μm以下、更に好ましくは、1.5μm以上6μm以下、より更に好ましくは、2μm以上5.5μm以下、特に好ましくは、2.5μ以上5μm以下である。上記範囲の平均粒径の導電性粒子を用いることにより、回路部材の電極高さの変動及び接続時の平行度の変動を制御すると同時に、隣接電極間の粒子滞留による絶縁性の低下を抑制することが出来る。
導電性粒子の粒径の標準偏差は、小さいほど好ましく、平均粒径の50%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは、5%以下である。導電性粒子の平均粒径は、コールターカウンター、レーザー式粒度分布計等を用いて測定することができ、導電性粒子体積の球相当直径の数平均値として得られる。
異方導電性フィルム中の導電性粒子の含有量は、異方導電性フィルム全体を100質量%として、0.1質量%以上30質量%以下である。該含有量は、好ましくは、0.12質量%以上25質量%以下、更に好ましくは、0.15質量%以上20質量%以下、より更に好ましくは、0.2質量%以上15質量%以下、特に好ましくは、0.25質量%以上10質量%以下である。導電性粒子の含有量が0.1質量%以上30質量%以下の領域では、対向する電極間の導電性と隣接する電極間の絶縁性が両立しやすい。
また、異方導電性接着剤で接着する一対の回路基板の電極高さの総和よりも異方導電性フィルムの膜厚が大きいことが好ましい。
本発明の異方導電性フィルムに含まれる層の少なくとも1つは、高い接続信頼性及び絶縁信頼性が得るために、エポキシ系絶縁性接着剤を含むことが好ましい。エポキシ系絶縁性接着剤を用いた場合、用語「架橋性官能基」とはエポキシ基を意味する。以下、エポキシ系絶縁性接着剤について説明する。
エポキシ系絶縁性接着剤は、フィルム形成性ポリマー(A)、エポキシ樹脂(B)及びエポキシ樹脂用潜在性硬化剤(C)を含むことが好ましい。
フィルム形成性ポリマー(A)は、絶縁性接着剤が室温でフィルム状の形状を維持するためにエポキシ系絶縁性接着剤中に加えられる。フィルム形成性ポリマー(A)としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カルボキシル基、ヒドロシキシル基、ビニル基、アミノ基などの官能基を有するエラストマー類等が例示される。
フィルム形成性ポリマー(A)としては、接続信頼性に優れるフェノキシ樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAビスフェノールF混合型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAビスフェノールS混合型フェノキシ樹脂、フルオレン環含有フェノキシ樹脂、カプロラクトン変性ビスフェノールA型フェノキシ樹脂等が例示される。
フィルム形成性ポリマー(A)の重量平均分子量は、20,000以上100,000以下であることが好ましい。本発明の異方導電性フィルムに含まれる層の少なくとも1つが、エポキシ系絶縁性接着剤以外の絶縁性接着剤を含むとしても、エポキシ系絶縁性接着剤に含まれるフィルム形成性ポリマー(A)を含むことが好ましい。
エポキシ系絶縁性接着剤中のフィルム形成性ポリマー(A)の配合量は、エポキシ系絶縁性接着剤の全質量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上50質量%以下である。
エポキシ系絶縁性接着剤に用いられるエポキシ樹脂(B)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環族エポキサイド等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂(B)は、ハロゲン化若しくは水素添加されているか、又はウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等の変性されたエポキシ樹脂でもよい。上記で列挙した複数のエポキシ樹脂を併用してもよい。
接着力の強さからグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂(B)の少なくとも一部にナフタレン型エポキシ樹脂を用いることが、耐水性の高い硬化物を得るために好ましい。
エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、好ましくは100以上500以下、より好ましくは120以上400以下、更に好ましくは140以上300以下である。エポキシ当量を100以上とすることで安全性の高い異方導電性フィルムが得られるので好ましい。一方、エポキシ当量を500以下とすることで架橋密度の高い硬化物が得られ、それにより高い接続信頼性が得られるので好ましい。尚、エポキシ当量が500を超えるエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の一部に使用してもよく、その場合には、エポキシ樹脂全体としてのエポキシ当量が100以上500以下であることが好ましい。
エポキシ樹脂(B)の配合量は、フィルム形成性ポリマー(A)100質量部に対して5質量部以上300質量部以下が好ましい。エポキシ樹脂(B)の配合量は、より好ましくは、10質量部以上250質量部以下、更に好ましくは15質量部以上200質量部以下である。エポキシ樹脂(B)の配合量を5質量部以上とすることで、得られる異方導電性フィルムの硬化物中に架橋構造が導入され、安定な接続信頼性が得られる。一方、300質量部以下とすることで、得られる異方導電性フィルムの貼付け(本明細書では、接続するために基板上に搭載することをいう)ができない不具合を抑制することができるだけでなく、得られる異方導電性フィルムをリール状に巻いた場合にブロッキングを起こして、フィルムの引き出しが困難になるという問題を抑制できるので好ましい。
エポキシ系絶縁性接着剤に用いられる潜在性硬化剤(C)は、ホウ素化合物、ヒドラジド、3級アミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、無機酸、カルボン酸無水物、チオール、イソシアネート、ホウ素錯塩、アルミニウムキレートとシラン化合物との複合体、及びそれらの誘導体等の硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤は、マイクロカプセル型の潜在性硬化剤であることが好ましい。マイクロカプセル型硬化剤は、前記硬化剤の表面を樹脂皮膜等で安定化したものである。接続作業時の温度又は圧力で樹脂皮膜が破壊されると、硬化剤がマイクロカプセル外に拡散し、エポキシ樹脂と反応する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤は、アダクト型硬化剤から成るコアをカプセル膜で被覆することにより形成される。マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、アミンアダクト、イミダゾールアダクト等のアダクト型硬化剤をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤が、安定性と硬化性のバランスに優れるので好ましい。
潜在性硬化剤(C)の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは2〜100質量部以下、より好ましくは5質量部以上80質量部以下、更に好ましくは10質量部以上60質量部以下である。潜在性硬化剤(C)の配合量を2質量部以上とすることで、得られる異方導電性フィルムの硬化物中に架橋構造が導入され、安定な接続信頼性が得られる。一方、潜在性硬化剤(C)の配合量を100質量部以下とすることで、得られる異方導電性フィルムの硬化物の耐水性が向上し、高い接続信頼性と絶縁信頼性が得られる。
本発明に用いられるエポキシ系絶縁性接着剤は、更に、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、絶縁粒子、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、イオントラップ剤等が挙げられる。絶縁粒子又は充填剤等の固形の成分である場合、これらの最大径は導電粒子の平均粒径未満であることが好ましい。カップリング剤としては、ケチミン基、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有シランカップリング剤が、接着性の向上の点から好ましい。
その他の成分の配合量は、エポキシ系絶縁性接着剤の含有量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
エポキシ系絶縁性接着剤の各成分を混合する場合、必要に応じ、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
<異方導電性フィルムの製造方法>
本発明の異方導電性フィルムは、導電性粒子及び絶縁性接着剤を溶剤中で予め混合して塗工液を作製し、塗工液をセパレーター上にアプリケーター塗装等により塗工して、オーブン中で溶剤を揮発させることにより製造されることができる。導電性粒子を絶縁性接着剤層に配列転写する場合は、絶縁性接着剤を溶剤中で混合して塗工液を作製し、塗工液をセパレーター上にアプリケータ−塗装等により塗工して、オーブン中で溶剤を揮発させることにより得られた接着フィルムに、予め配列した導電性粒子を熱ラミネートして転写することができる。
本発明の異方導電性フィルムは、導電性粒子及び絶縁性接着剤を溶剤中で予め混合して塗工液を作製し、塗工液をセパレーター上にアプリケーター塗装等により塗工して、オーブン中で溶剤を揮発させることにより製造されることができる。導電性粒子を絶縁性接着剤層に配列転写する場合は、絶縁性接着剤を溶剤中で混合して塗工液を作製し、塗工液をセパレーター上にアプリケータ−塗装等により塗工して、オーブン中で溶剤を揮発させることにより得られた接着フィルムに、予め配列した導電性粒子を熱ラミネートして転写することができる。
各層をラミネートする場合は、熱ロールを用いてラミネートする方法等が例示される。熱ロールを用いてラミネートする場合、その温度は、40℃以上120℃以下が好ましく、より好ましくは45℃以上100℃以下、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。塗工により導電性粒子及び絶縁性接着剤を順次塗り重ねる場合、積層体の乾燥温度は、好ましくは40℃以上120℃以下であり、より好ましくは45℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。最小層間破壊強度を制御するために十分なラミネート条件は、既述の通りである。
異方導電性フィルムに用いられるセパレーターとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、PET、PEN、ナイロン、塩化ビニル、ポリビニルアルコールのフィルムが例示される。好ましい保護フィルム用の樹脂としては、ポリプロピレン、PETが挙げられる。該セパレーターは、フッ素処理、ケイ素(Si)処理、アルキド処理等の表面処理を施されていることが好ましい。セパレーターの膜厚は、20μm以上100μm以下が好ましい。
本発明の異方導電性フィルムは、必要に応じ、所望の幅にスリットされ、リール状に巻き取られる。
本発明の異方導電性フィルムは、液晶ディスプレイとICチップ、ICチップとFPC、ICチップとプリント配線基板との接続に、又はそれら以外の回路接続用途に、好適に使用されることができる。
本発明の異方導電性フィルムを用いてチップを接続する場合には、チップの接続バンプ高さは8μm〜15μmの範囲にあることが好ましく、10μm〜12μmの範囲にあることがより好ましい。
<異方導電性フィルムを用いた接続方法及び接続構造体>
本発明の接続構造体は、本発明の異方導電性フィルムを用いて、部材同士を接続することにより得られる。異方導電性フィルムを用いる接続方法は、ITO配線又は金属配線等によって回路と電極を形成したガラス基板等の回路基板と、回路基板の電極と対を成す位置に電極を形成したICチップ等の回路部材とを準備し、回路基板上の回路部材を配置する位置に、本発明の異方導電性接着フィルムを貼り付け、次に、回路基板と回路部材をそれぞれの電極が対を成すように位置を合わせた後、熱圧着することにより接続する工程を含む。
本発明の接続構造体は、本発明の異方導電性フィルムを用いて、部材同士を接続することにより得られる。異方導電性フィルムを用いる接続方法は、ITO配線又は金属配線等によって回路と電極を形成したガラス基板等の回路基板と、回路基板の電極と対を成す位置に電極を形成したICチップ等の回路部材とを準備し、回路基板上の回路部材を配置する位置に、本発明の異方導電性接着フィルムを貼り付け、次に、回路基板と回路部材をそれぞれの電極が対を成すように位置を合わせた後、熱圧着することにより接続する工程を含む。
異方導電性接着フィルムの貼付け時に、セパレーターを剥離するために、加熱及び加圧することができる。加熱、加圧の条件は、例えば、40℃以上90℃以下の温度、0.1MPa以上1MPa以下の圧力で0.5秒以上3秒以下の間加熱及び加圧することが好ましい。
接続における熱圧着は、150℃以上210℃以下(より好ましくは155℃以上200℃以下、さらに好ましくは160℃以上195℃以下)の温度範囲で、回路部材面積に対して、0.1MPa以上50MPa以下(より好ましくは0.5MPa以上40MPa以下)の圧力範囲で、3秒以上15秒以下(より好ましくは4秒以上12秒以下)の時間で、加熱及び加圧することが好ましい。
上記の熱圧着する工程では、加圧ツールを加熱して、所定の温度まで加熱する方法を用いることが出来る。好ましくは、40℃以上120℃以下の温度で熱圧着ステージを加熱することが好ましい。熱圧着ステージの加熱温度は、さらに好ましくは、50℃以上100℃以下、特に好ましくは、60℃以上90℃以下である。熱圧着ステージの加熱温度が、40℃以上であれば、硬化率アップの効果が得られ、120℃以下であれば、硬化反応の制御可能である。
前記の温度、圧力及び時間の範囲で部材同士を接続することにより、高い接続信頼性が得られると共に、耐熱性の低い基板の接続を有利に行ない、基板の反りを抑制し、かつ工程時間を短縮することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
<評価用チップ>
縦横が0.6mm×18.78mmのシリコン片(厚み280μm)全面に酸化膜を形成後、外辺部から20μm内側に横74.5μm、縦120μmのアルミ薄膜(1000Å)をそれぞれが0.1μm間隔になるように長辺側に230個形成する。それらアルミ薄膜上に15μm間隔になるように横25μm、縦100μmの金バンプ(厚み12μmをそれぞれ2個ずつ形成するために、それぞれの金バンプ配置箇所の外周部から7.5μm内側に横10μm、縦85μmの開口部を残す。その開口部以外の部分に酸化ケイ素の保護膜を常法により前記開口部以外の全面に形成する。その後、前記金バンプを形成して試験チップとする。
<評価用チップ>
縦横が0.6mm×18.78mmのシリコン片(厚み280μm)全面に酸化膜を形成後、外辺部から20μm内側に横74.5μm、縦120μmのアルミ薄膜(1000Å)をそれぞれが0.1μm間隔になるように長辺側に230個形成する。それらアルミ薄膜上に15μm間隔になるように横25μm、縦100μmの金バンプ(厚み12μmをそれぞれ2個ずつ形成するために、それぞれの金バンプ配置箇所の外周部から7.5μm内側に横10μm、縦85μmの開口部を残す。その開口部以外の部分に酸化ケイ素の保護膜を常法により前記開口部以外の全面に形成する。その後、前記金バンプを形成して試験チップとする。
<接続信頼性評価>
無アルカリガラス基板(厚み0.4mm)上に前記アルミ薄膜上の金バンプが隣接するアルミ薄膜上の金バンプと対になる位置関係で接続されるようにインジウム錫酸化物(1400Å)の接続パッド(横66μm、縦120μm)を形成する。20個の金バンプが接続される毎に前記接続パッドにインジウム錫酸化物の引き出し配線を形成し、各引き出し配線上にアルミチタン薄膜(3000Å)を形成し、接続評価基板とする。前記接続評価基板上に、前記接続パッドがすべて覆われるように、幅1.5mm、長さ25mmの異方導電性フィルムを仮貼りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃及び0.3MPaの条件下で2秒間加圧した後、セパレーターフィルムを剥離する。その剥離面上に、前記接続パッドと前記金バンプの位置を合わせるように試験チップを載せ、加熱圧着する。圧着後、前記引き出し配線間(金バンプ2個のデイジーチェーン)の抵抗値を測定し、接続抵抗値とする。
無アルカリガラス基板(厚み0.4mm)上に前記アルミ薄膜上の金バンプが隣接するアルミ薄膜上の金バンプと対になる位置関係で接続されるようにインジウム錫酸化物(1400Å)の接続パッド(横66μm、縦120μm)を形成する。20個の金バンプが接続される毎に前記接続パッドにインジウム錫酸化物の引き出し配線を形成し、各引き出し配線上にアルミチタン薄膜(3000Å)を形成し、接続評価基板とする。前記接続評価基板上に、前記接続パッドがすべて覆われるように、幅1.5mm、長さ25mmの異方導電性フィルムを仮貼りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃及び0.3MPaの条件下で2秒間加圧した後、セパレーターフィルムを剥離する。その剥離面上に、前記接続パッドと前記金バンプの位置を合わせるように試験チップを載せ、加熱圧着する。圧着後、前記引き出し配線間(金バンプ2個のデイジーチェーン)の抵抗値を測定し、接続抵抗値とする。
更に、前記接続抵抗測定基板に対してサイクル試験(−40℃で30分、続いて80℃で30分を1サイクルとして)500サイクルを実施し、再度、前記と同様に抵抗測定を実施し、その平均値を求めた。放置前後の平均値の抵抗上昇量が、30Ω未満であれば◎、30Ω以上40Ω未満であれば○、50Ω以上70Ω未満であれば△、70Ω以上であれば×と評価した。
<せん断剥離強度測定>
無アルカリガラス(厚み0.4mm、幅15mm、長さ40mm)の中央部に幅1.5mm、長さ25mmの異方導電性フィルムを仮貼りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃及び0.3MPaの条件下で2秒間加圧した後、セパレーターフィルムを剥離する。その剥離面上に前記試験チップを載せ、190℃及び50MPaの条件下で5秒間加熱圧着する。その後、前記試験チップの外周部にはみ出した異方導電性フィルムを取り除き、せん断剥離評価基板とする。
無アルカリガラス(厚み0.4mm、幅15mm、長さ40mm)の中央部に幅1.5mm、長さ25mmの異方導電性フィルムを仮貼りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃及び0.3MPaの条件下で2秒間加圧した後、セパレーターフィルムを剥離する。その剥離面上に前記試験チップを載せ、190℃及び50MPaの条件下で5秒間加熱圧着する。その後、前記試験チップの外周部にはみ出した異方導電性フィルムを取り除き、せん断剥離評価基板とする。
幅30mm、厚み15mm、長さ70mmのブロックに幅方向に幅1mm、高さ1mmの突起を設けたL字型のステンレス製治具をデジタルフォースゲージ(IMADA製、DPS−50型)に取り付け、せん断強度測定装置とする。
プッシュプルスタンド(IMADA製、SH−2013F型)のステージ上にせん断剥離強度評価基板を固定し、前記ステンレス器具の突起部分がチップの長辺に沿うように、ステンレス治具を被せ、12mm/分の速度で一直線に引っ張り、剥離したときの強度を測定する。10サンプルについて測定し、平均値をせん断隔離強度とする。
<チップ強度測定>
チップ外周部からはみ出した異方導電性フィルムを取り除かないこと以外は、せん断剥離評価基板作製と同様にしてチップ強度測定基板とする。前記チップ強度測定基板の両端部を固定し、無アルカリガラス側からチップ中央部を20μm押し込んだ状態で固定し、10分間保持する。その後、チップ割れ、チップ剥離の発生有無を目視確認する。同様にして10サンプルについて測定し、チップ剥離の発生回数が0回であるものを○、チップ剥離が発生したものを×とする。
チップ外周部からはみ出した異方導電性フィルムを取り除かないこと以外は、せん断剥離評価基板作製と同様にしてチップ強度測定基板とする。前記チップ強度測定基板の両端部を固定し、無アルカリガラス側からチップ中央部を20μm押し込んだ状態で固定し、10分間保持する。その後、チップ割れ、チップ剥離の発生有無を目視確認する。同様にして10サンプルについて測定し、チップ剥離の発生回数が0回であるものを○、チップ剥離が発生したものを×とする。
[実施例1](マイクロカプセル型硬化剤及び液状エポキシ樹脂との混合物の製造)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量175g/当量、全塩素量30ppm以下エポキシ樹脂B−1と称す)100質量部と2−メチルイミダゾール47質量部とを、n−ブタノール74質量部とトルエン74質量部の混合溶剤中において80℃で6時間反応させた。その後、減圧下200℃で未反応の2−メチルイミダゾールが10ppm未満になるまで蒸留を行い、溶剤と共に留去し、エポキシ樹脂B−1と2-メチルイミダゾールとの反応性生物であるアミンアダクトを得た。得られたアミンアダクトを約25℃で粉砕して、平均粒径が2.5mmの粉体状のアミンアダクトとした。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量175g/当量、全塩素量30ppm以下エポキシ樹脂B−1と称す)100質量部と2−メチルイミダゾール47質量部とを、n−ブタノール74質量部とトルエン74質量部の混合溶剤中において80℃で6時間反応させた。その後、減圧下200℃で未反応の2−メチルイミダゾールが10ppm未満になるまで蒸留を行い、溶剤と共に留去し、エポキシ樹脂B−1と2-メチルイミダゾールとの反応性生物であるアミンアダクトを得た。得られたアミンアダクトを約25℃で粉砕して、平均粒径が2.5mmの粉体状のアミンアダクトとした。
210質量部のエポキシ樹脂B-1(エポキシ樹脂成分として)に、上記の粉体状アミンアダクト100質量部、水(活性水素化合物成分として)1.5質量部、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(イソシアネート濃度31%、平均官能基数2.5〜2.6)(イソシアネート化合物成分として)5質量部を加えて、40℃で攪拌しながら3時間反応を続け、FT−IR測定を行い、イソシアネート基の特性吸収が消失していることを確認した。更に、マイクロカプセル型硬化剤C−1を得た。
更に、マイクロカプセル型硬化剤C−1とエポキシ樹脂とを質量比で1対2の比率で混合し、マイクロカプセル型硬化剤と液状エポキシ樹脂との混合物M−1を得た。この混合物M−1をDSC測定した結果10℃/分での昇温では、ピーク温度が127℃及び173℃である2本の発熱ピークが現れ、50℃/分での昇温では、ピーク温度が151℃の1本のみの発熱ピークが現れた。
平均粒径3.1μmのアクリル系樹脂をコアとし、そのコアの表層に厚み0.11μmのニッケル層をめっきで形成して導電性粒子P−1を得た。導電性粒子P−1は、長軸に対する短軸の比が0.97であり、粒径の標準偏差0.15μmであった。次に、40質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43000)、10質量部のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂B−1、50質量部の、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物M−1、1質量部のシランカップリング剤(3−グリシドキシプロパントリメトキシシラン)、200質量部の酢酸エチル、5質量部の導電性粒子P−1を混合し、バインダーワニスAを得た。このバインダーワニスAを離型処理した膜厚50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布し、80℃で10分間加熱し、溶剤を乾燥除去し、膜厚10μmの接着フィルムAを得た。
90質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量70000)、10質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂B−1、200質量部のメチルエチルケトンを混合し、バインダーワニスBを得た。このバインダーワニスBを、シリコーン処理された膜厚50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布し、80℃で10分間加熱し、溶剤を乾燥除去し、膜厚0.3μmの接着フィルムBを得た。
フィルムに導電性粒子をP−1を含めないこと、及びシリコーン処理された膜厚50μmのPETフィルム製セパレーターを使用したこと以外は、前記接着フィルムAの作製方法と同様にして、膜厚10μmの接着フィルムCを得た。
前記接着フィルムC上に接着フィルムBを載せ、60℃及び0.6MPaの条件下でラミネートし、接着フィルムBのセパレーターを剥離した。その後接着フィルムB面に接着フィルムCを載せ、60℃及び0.6MPaの条件下でラミネートし、接着フィルムCのセパレーターを剥離して異方導電性フィルムDを得た。
異方導電性フィルムDを用いて190℃、50MPa及び5秒の接続条件下で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は20.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は27.3Ωであり、◎であった。
前記せん断強度測定した結果、最小層間破壊強度は、4.7MPaであった。チップ強度を測定した結果、チップ割れ、チップ剥離共に発生しなかった。
膜厚を20μmとする以外は接着フィルムAを作製する方法と同様にして、接着フィルムEを得た。この接着フィルムEについてせん断強度測定した結果、密着強度は、20MPaであった。
[実施例2]
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と3−シクロヘキサンオキシドー1−メタノールのエステルから成る脂環式エポキシ樹脂20質量部、15質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂B−1、65質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43000)、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロパントリメトキシシラン)1質量部、酢酸エチル100質量部を混合し、溶液Aとした。
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と3−シクロヘキサンオキシドー1−メタノールのエステルから成る脂環式エポキシ樹脂20質量部、15質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂B−1、65質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43000)、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロパントリメトキシシラン)1質量部、酢酸エチル100質量部を混合し、溶液Aとした。
4−ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル−α−ナフチルメチル-メチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート100質量部、及びN,N’−ジエチルチオ尿素3部を配合し、γ―ブチロラクトンに溶解して固形分50%溶液を得た。固形質量分比で前記溶液A100、4−ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル−α−ナフチルメチル-メチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びN,N‘−ジエチルチオ尿素の合計が3、さらに導電性粒子P−1が10となるように、それらの成分を混合し、バインダーワニスFを得た。このバインダーワニスFを、離型処理した膜厚50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布、40℃で20分間加熱し、溶剤を乾燥除去し、膜厚10μmの接着フィルムGを得た。
20質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂B−1、及び60質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43000)を用いたこと、導電性粒子P−1を除いたこと、並びにシリコーン処理された膜厚50μmのPETフィルム製セパレーターを使用したこと以外は、前記接着フィルムGの作製方法と同様にして、膜厚10μmの接着フィルムHを得た。前記接着フィルムG上に接着フィルムHを載せ、30℃及び0.7MPaの条件下でラミネートし、接着フィルムHのセパレーターを剥離し、異方導電性フィルムIを得た。
異方導電性フィルムIを用いて170℃、50MPa及び5秒の接続条件下で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は23.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は29.1Ωであり、評価は◎であった。前記せん断強度測定した結果、最小層間破壊強度は、8.1MPaであった。チップ強度測定した結果、チップ割れ、チップ剥離共に発生しなかった。
膜厚を20μmとする以外は接着フィルムGを作製する方法と同様にして、接着フィルムJを得た。この接着フィルムJについてせん断強度測定した結果、密着強度は、23MPaであった。膜厚を20μmとする以外は接着フィルムHを作製する方法と同様にして、接着フィルムKを得た。この接着フィルムKについてせん断強度測定した結果、密着強度は、25MPaであった。
[比較例1]
実施例1の接着フィルムEの作製方法と全く同様にして異方導電性フィルムLを得た。異方導電性フィルムLを用いて190℃、50MPa及び5秒の接続条件下で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は28.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は49.3Ωであり、評価は◎であった。チップ強度測定した結果、チップ割れが3サンプルについて発生し、評価は×であった。
実施例1の接着フィルムEの作製方法と全く同様にして異方導電性フィルムLを得た。異方導電性フィルムLを用いて190℃、50MPa及び5秒の接続条件下で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は28.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は49.3Ωであり、評価は◎であった。チップ強度測定した結果、チップ割れが3サンプルについて発生し、評価は×であった。
[比較例2]
実施例2の接着フィルムHの作製方法と全く同様にして異方導電性フィルムMを得た。異方導電性フィルムMを用いて170℃、50MPa及び5秒の接続条件下で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は23.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は33.3Ωであり、評価は◎であった。チップ強度測定した結果、チップ割れが2サンプルについて発生し、評価は×であった。
実施例2の接着フィルムHの作製方法と全く同様にして異方導電性フィルムMを得た。異方導電性フィルムMを用いて170℃、50MPa及び5秒の接続条件下で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は23.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は33.3Ωであり、評価は◎であった。チップ強度測定した結果、チップ割れが2サンプルについて発生し、評価は×であった。
[比較例3]
40質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43,000)、5質量部のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂B−1、20質量部の、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物M−1、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部−エチルアクリレート30質量部−グリシジルメタアクリレート3質量部の共重合体、分子量83万)25質量部、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロパントリメトキシシラン)1質量部、酢酸エチル200質量部、及び5質量部の導電性粒子P−1を混合し、バインダーワニスNを得た。このバインダーワニスNを、離型処理した膜厚50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布し、80℃で10分間加熱し、溶剤を乾燥除去し、膜厚20μmの接着フィルムOを得た。
40質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43,000)、5質量部のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂B−1、20質量部の、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物M−1、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部−エチルアクリレート30質量部−グリシジルメタアクリレート3質量部の共重合体、分子量83万)25質量部、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロパントリメトキシシラン)1質量部、酢酸エチル200質量部、及び5質量部の導電性粒子P−1を混合し、バインダーワニスNを得た。このバインダーワニスNを、離型処理した膜厚50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布し、80℃で10分間加熱し、溶剤を乾燥除去し、膜厚20μmの接着フィルムOを得た。
異方導電性フィルムOを用いて190℃、50MPa及び5秒の接続条件下で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は48.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は99.3Ωであり、評価は△であった。チップ強度測定した結果、チップ剥がれが1サンプルについて発生し、評価は×であった。
[比較例4]
40質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43000)、10質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂B−1、50質量部の、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成イーマテリアルズ社製、商品名、ノバキュアHX−3941)、1質量部のシランカップリング剤(3−グリシドキシプロパントリメトキシシラン)、200質量部の酢酸エチル、5質量部の導電性粒子P−1を混合してバインダーワニスPを得た。バインダーワニスPを、離型処理した膜厚50μmのPETフィルムセパレーター上にブレードコーターを用いて塗布し、70℃で10分間乾燥し、溶剤を除去し、膜厚10μmの接着フィルムQを得た。
40質量部のビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量43000)、10質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂B−1、50質量部の、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成イーマテリアルズ社製、商品名、ノバキュアHX−3941)、1質量部のシランカップリング剤(3−グリシドキシプロパントリメトキシシラン)、200質量部の酢酸エチル、5質量部の導電性粒子P−1を混合してバインダーワニスPを得た。バインダーワニスPを、離型処理した膜厚50μmのPETフィルムセパレーター上にブレードコーターを用いて塗布し、70℃で10分間乾燥し、溶剤を除去し、膜厚10μmの接着フィルムQを得た。
前記接着フィルムQに導電性粒子P−1を含めないこと、及び、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂を50質量部とし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂B−1を20質量部とすること、及び、シリコーン処理された膜厚50μmのPETフィルム製セパレーターを使用したこと以外は、前記接着フィルムQの作製方法と同様にして、膜厚10μmの接着フィルムRを得た。
前記接着フィルムQ上に接着フィルムRを載せ、70℃、0.6MPaの条件下でラミネートし、接着フィルムRのセパレータを剥離して、異方導電性フィルムSを得た。
異方導電性フィルムSを用いて、190℃、50MPa及び5秒の接続条件で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は27.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は33.1Ωであり、評価は◎であった。前記せん断強度測定した結果、19.5MPaであった。基板面の界面剥離面積は総接続面積の63%であり、層間破壊は起こらなかった。
チップ強度を測定した結果、チップ割れが3サンプルについて発生し、評価は×であった。
異方導電性フィルムSを用いて、190℃、50MPa及び5秒の接続条件で前記接続信頼性評価サンプルを作製した。初期接続抵抗は27.5Ωであった。信頼性試験後の抵抗値は33.1Ωであり、評価は◎であった。前記せん断強度測定した結果、19.5MPaであった。基板面の界面剥離面積は総接続面積の63%であり、層間破壊は起こらなかった。
チップ強度を測定した結果、チップ割れが3サンプルについて発生し、評価は×であった。
本発明の異方導電性フィルムは、接続信頼性及び機械的接続信頼性に優れた接続を可能とし、特に高温高湿度環境での信頼性が要求される携帯機器、車載機器等のディスプレイとフレキシブル配線板又は半導体チップとの接続に好適に利用できる。
Claims (5)
- 少なくとも2つの層を含む異方導電性フィルムであって、硬化後の最小層間破壊強度が2〜9MPaであることを特徴とする異方導電性フィルム。
- 無アルカリガラス、窒化ケイ素、酸化インジウムスズ(ITO)及び酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種を含む被着体に対する密着強度が、10〜35MPaである、請求項1に記載の異方導電性フィルム。
- 前記2つの層のいずれか一方に対する密着強度が回路基板に対する密着強度より低い層を、前記2つの層の間に含む、請求項1又は2に記載の異方導電性フィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方導電性フィルムにより接続する工程を含む接続構造体の製造方法。
- 請求項4に記載の方法により得られる接続構造体。
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