以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る接続構造体の製造方法では、熱硬化性成分と複数のはんだ粒子とを含む導電ペーストと、複数の第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、複数の第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材とを用いる。
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材の表面上に、上記導電ペーストを配置する工程と、上記導電ペーストの上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、上記第2の接続対象部材を、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように配置する工程と、上記はんだ粒子の融点以上かつ上記熱硬化性成分の硬化温度以上に上記導電ペーストを加熱することで、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、上記導電ペーストにより形成し、かつ、上記第1の電極と上記第2の電極とを、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える。
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記熱硬化性成分と複数の上記はんだ粒子とともに、複数のフィラーを含む導電ペーストを用いる。
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記の構成が採用されているので、得られる接続構造体では、電極間を電気的に接続している接続部中の複数のはんだ部において、はんだ量の均一性を高めることができる。これは、電極間の接続時に、電極間にはんだ粒子が移動する初期段階において、はんだ粒子の移動をフィラーが適度に妨げるためであると考えられる。
例えば、フィラーを含まない導電材料を用いる場合には、横方向に隣接する電極の間に位置しているはんだ粒子が、一方の電極側のみに選択的に移動して、両側の電極に効率的に移動しにくい傾向がある。横方向に隣接する電極の間に位置しているはんだ粒子が、一方の電極側への移動が開始して、その移動速度が速いと、移動するはんだ粒子に伴って他のはんだ粒子も引き寄せられて一方側の電極側に移動しやすい。このため、一部のはんだ部に、はんだが多く凝集してはんだ量が多くなり、一部のはんだ部に、はんだがさほど集まらずにはんだ量が少なくなることがある。これに対して、複数のフィラーを含む導電ペーストを用いることによって、はんだ粒子の初期の移動速度を適度に遅くすることができ、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性を高めることができる。
また、電極幅に対して、電極長さの比が大きい場合、長さ方向に対して均一にはんだを凝集させることができる。これは、第1の接続対象部材の電極と、第2の接続対象部材の電極との間に、ペーストが濡れ拡がる段階では、はんだ粒子の初期の移動速度が好適に遅くなり、はんだ粒子の凝集が抑制され、第1の接続対象部材の第1の電極と、第2の接続対象部材の第2の電極との間に、はんだ粒子が均一に配分され、その後、所定の温度に到達した段階で、はんだ粒子が溶融し、電極間に凝集することによる。
さらに、本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記の構成が採用されているので、複数のはんだ粒子が各電極間に多く集まり、複数のはんだ粒子を電極(ライン)上に効率的に配置することができる。また、複数のはんだ粒子の一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだ粒子の量をかなり少なくすることができる。従って、電極間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
また、複数のはんだ粒子を電極上に効率的に配置し、かつ電極が形成されていない領域に配置されるはんだ粒子の量をかなり少なくするためには、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いる必要があることを、本発明者は見出した。導電フィルムを用いた場合には、複数のはんだ粒子が各電極間に多く集まり難いが、本発明では、導電ペーストを用いているために、複数のはんだ粒子が各電極間に多く集まる。これは、加熱時の比較的早い段階で、はんだ粒子の移動が開始するためである。
上記第1の電極及び上記第2の電極が、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されていることが好ましい。この場合には、従来の導電材料では、電極が所定の位置に配置されているので、はんだの凝集及び偏在が生じやすい。例えば、1つの電極の対向部分と、他の電極の対向部分とで、はんだ量が異なりやすい。これに対して、本発明に係る接続構造体の製造方法を採用することで、上記第1の電極及び上記第2の電極が、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されていても、電極間を電気的に接続している接続部中の複数のはんだ部において、はんだ量の均一性を効果的に高めることができる。
本発明では、複数のはんだ粒子を電極間に効率的に集める他の方法を更に採用してもよい。複数のはんだ粒子を電極間に効率的に集める方法としては、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材との間の導電ペーストに、熱を付与した際、熱により導電ペーストの粘度が低下することで、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材との間の導電ペーストの対流を発生させる方法等が挙げられる。この方法において、接続対象部材の表面の電極とそれ以外の表面部材との熱容量の差異により対流を発生させる方法、接続対象部材の水分を、熱により水蒸気として対流を発生させる方法、並びに第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との温度差により対流を発生させる方法等が挙げられる。これにより、導電ペースト中のはんだ粒子を、電極の表面に効率的に移動させることができる。
本発明では、電極の表面に選択的にはんだ粒子を凝集させる方法を更に採用してもよい。電極の表面に選択的にはんだ粒子を凝集させる方法としては、溶融したはんだ粒子の濡れ性がよい電極材質と、濡れ性の悪いその他の表面材質とにより形成された接続対象部材を選択し、電極の表面に到達した溶融したはんだ粒子を選択的に電極に付着させ、その溶融したはんだ粒子に対し、別のはんだ粒子を溶融させて付着させる方法、熱伝導性がよい電極材質と、熱伝導性が悪いその他の表面材質とにより形成された接続対象部材を選択し、熱を付与した際に、電極の温度を他の表面部材に対し高くすることで、選択的に電極上ではんだを溶融させる方法、金属により形成された電極上に存在するマイナスの電荷に対して、プラスの電荷を持つように処理されたはんだ粒子を用いて、電極に選択的にはんだ粒子を凝集させる方法、並びに、親水性の金属表面を有する電極に対して、導電ペースト中のはんだ粒子以外の樹脂を疎水性とすることで、電極に選択的にはんだ粒子を凝集させる方法等が挙げられる。
電極間でのはんだ部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは70μm以下、特に好ましくは60μm以下、最も好ましくは50μm以下である。電極の表面上のはんだ濡れ面積(電極の露出した面積100%中のはんだが接している面積)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、好ましくは100%以下である。
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程において、加圧を行わず、上記導電ペーストには、上記第2の接続対象部材の重量が加わるか、又は、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程の内の少なくとも一方において、加圧を行い、かつ、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程の双方において、加圧の圧力が1MPa未満であることが好ましい。1MPa以上の加圧の圧力を加えないことで、はんだ粒子の凝集がかなり促進される。接続対象部材の反りを抑える観点からは、本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程の内の少なくとも一方において、加圧を行い、かつ、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程の双方において、加圧の圧力が1MPa未満であってもよい。加圧を行う場合に、上記第2の接続対象部材を配置する工程のみにおいて、加圧を行ってもよく、上記接続部を形成する工程のみにおいて、加圧を行ってもよく、上記第2の接続対象部材を配置する工程と上記接続部を形成する工程との双方において、加圧を行ってもよい。加圧の圧力が1MPa未満には、加圧していない場合が含まれる。加圧を行う場合に、加圧の圧力は、好ましくは0.9MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下である。加圧の圧力が0.8MPa以下である場合に、加圧の圧力が0.8MPaを超える場合と比べて、はんだ粒子の凝集がより一層顕著に促進される。
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程において、加圧を行わず、上記導電ペーストには、上記第2の接続対象部材の重量が加わることが好ましく、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程において、上記導電ペーストには、上記第2の接続対象部材の重量の力を超える加圧圧力は加わらないことが好ましい。これらの場合には、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性をより一層高めることができる。さらに、はんだ部の厚みをより一層効果的に厚くすることができ、複数のはんだ粒子が電極間に多く集まりやすくなり、複数のはんだ粒子を電極(ライン)上により一層効率的に配置することができる。また、複数のはんだ粒子の一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだ粒子の量をより一層少なくすることができる。従って、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続をより一層防ぐことができ、絶縁信頼性をより一層高めることができる。
さらに、上記第2の接続対象部材を配置する工程及び上記接続部を形成する工程において、加圧を行わず、上記導電ペーストに、上記第2の接続対象部材の重量が加われば、接続部が形成される前に電極が形成されていない領域(スペース)に配置されていたはんだ粒子が第1の電極と第2の電極との間により一層集まりやすくなり、複数のはんだ粒子を電極(ライン)上により一層効率的に配置することができることも、本発明者は見出した。本発明では、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いるという構成と、加圧を行わず、上記導電ペーストには、上記第2の接続対象部材の重量が加わるようにするという構成とを組み合わせて採用することには、本発明の効果をより一層高いレベルで得るために大きな意味がある。
なお、WO2008/023452A1では、はんだ粉を電極表面に押し流して効率よく移動させる観点からは、接着時に所定の圧力で加圧するとよいことが記載されており、加圧圧力は、はんだ領域をさらに確実に形成する観点では、例えば、0MPa以上、好ましくは1MPa以上とすることが記載されており、更に、接着テープに意図的に加える圧力が0MPaであっても、接着テープ上に配置された部材の自重により、接着テープに所定の圧力が加わってもよいことが記載されている。WO2008/023452A1では、接着テープに意図的に加える圧力が0MPaであってもよいことは記載されているが、0MPaを超える圧力を付与した場合と0MPaとした場合との効果の差異については、何ら記載されていない。また、WO2008/023452A1では、電極間に位置しているはんだ部(はんだ領域)の厚みと、接着テープに含まれる複数のはんだ粉の平均粒子径との関係については何ら着目されていない。また、WO2008/023452A1では、フィルム状ではなく、ペースト状の導電ペーストを用いることの重要性についても何ら認識されていない。
また、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いれば、導電ペーストの塗布量によって、接続部及びはんだ部の厚みを調整することが容易になる。一方で、導電フィルムでは、接続部の厚みを変更したり、調整したりするためには、異なる厚みの導電フィルムを用意したり、所定の厚みの導電フィルムを用意したりしなければならないという問題がある。また、導電フィルムでは、はんだの溶融温度で、導電フィルムの溶融粘度を十分に下げることができず、はんだ粒子の凝集が阻害されるという問題がある。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
先ず、図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られる接続構造体を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4とを備える。接続部4は、熱硬化性成分と、複数のはんだ粒子と、フィラー5とを含む導電ペーストにより形成されており、導電ペーストの硬化物である。この導電ペーストは、上記熱硬化性成分と上記はんだ粒子とともに、上記フィラー5を含む。
接続部4は、複数のはんだ粒子が集まり互いに接合したはんだ部4Aと、熱硬化性成分が熱硬化された硬化物部4Bとを有する。
第1の接続対象部材2は表面(上面)に、複数の第1の電極2aを有する。第2の接続対象部材3は表面(下面)に、複数の第2の電極3aを有する。第1の電極2aと第2の電極3aとが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。なお、接続部4において、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだは存在しない。はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだ部4Aと離れたはんだは存在しない。なお、少量であれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)に、はんだが存在していてもよい。
図1に示すように、接続構造体1では、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に、複数のはんだ粒子が集まり、複数のはんだ粒子が溶融した後、はんだ粒子の溶融物が電極の表面を濡れ拡がった後に固化して、はんだ部4Aが形成されている。本実施形態では、接続構造体1において第1の電極2aと第2の電極3aとの間に位置しているはんだ部4Aの厚みは、上記導電ペーストに含まれる複数の上記はんだ粒子の平均粒子径よりも大きい。このため、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接続面積が大きくなる。すなわち、はんだ粒子を用いることにより、導電性の外表面がニッケル、金又は銅等の金属である導電性粒子を用いた場合と比較して、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接触面積が大きくなる。このことによっても、接続構造体1における導通信頼性及び接続信頼性が高くなる。なお、導電ペーストは、フラックスを含んでいてもよい。導電ペーストにフラックスが含まれる場合に、フラックスは、一般に、加熱により次第に失活する。
本発明では、複数のはんだ部4Aにおいて、はんだ量の均一性を高めることができる。例えば、図1には、2つのはんだ部4Aが示されているが、この2つのはんだ部4Aにおけるはんだ量の均一性を高めることができる。仮に、はんだ粒子を含み、かつフィラーを含まない導電材料を用いる場合には、図4に示すような接続構造体101が得られやすい。すなわち、図4に示すように、第1の接続対象部材102と第2の接続対象部材103とを導電材料により形成された接続部104により接続し、複数の第1の電極102aと複数の第2の電極103aとを上記はんだ粒子に由来するはんだ部104Aにより電気的に接続した場合に、接続部104中の複数のはんだ部104Aにおけるはんだ量がかわりやすい。なお、はんだ部104Aの周囲には、硬化物部104Bが位置している。
なお、図1に示す接続構造体1では、はんだ部4Aの全てが、第1,第2の電極2a,3a間の対向している領域に位置している。図3に示す変形例の接続構造体1Xは、接続部4Xのみが、図1に示す接続構造体1と異なる。接続部4Xは、はんだ部4XAと硬化物部4XBとを有する。接続構造体1Xのように、はんだ部4XAの多くが、第1,第2の電極2a,3aの対向している領域に位置しており、はんだ部4XAの一部が第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出していてもよい。第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出しているはんだ部4XAは、はんだ部4XAの一部であり、はんだ部4XAから離れたはんだではない。なお、本実施形態では、はんだ部から離れたはんだの量を少なくすることができるが、はんだ部から離れたはんだが硬化物部中に存在していてもよい。
はんだ粒子の使用量を少なくすれば、接続構造体1を得ることが容易になる。はんだ粒子の使用量を多くすれば、接続構造体1Xを得ることが容易になる。はんだ粒子の使用量が多いと、接続構造体において第1の電極と第2の電極との間に位置しているはんだ部の厚みを、上記導電ペーストに含まれる複数の上記はんだ粒子の平均粒子径よりも大きくすることが容易である。
次に、本発明の一実施形態に係る導電ペーストを用いて、接続構造体1を製造する方法の一例を説明する。
先ず、第1の電極2aを表面(上面)に有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、図2(a)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上に、熱硬化性成分11Bと、複数のはんだ粒子11Aとを含む導電ペースト11を配置する(第1の工程)。第1の接続対象部材2の第1の電極2aが設けられた表面上に、導電ペースト11を配置する。導電ペースト11の配置の後に、はんだ粒子11Aは、第1の電極2a(ライン)上と、第1の電極2aが形成されていない領域(スペース)上との双方に配置されている。
導電ペースト11の配置方法としては、特に限定されないが、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷、及びインクジェット装置による吐出等が挙げられる。
また、第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材3を用意する。次に、図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上の導電ペースト11において、導電ペースト11の第1の接続対象部材2側とは反対側の表面上に、第2の接続対象部材3を配置する(第2の工程)。導電ペースト11の表面上に、第2の電極3a側から、第2の接続対象部材3を配置する。このとき、第1の電極2aと第2の電極3aとを対向させる。
次に、はんだ粒子11Aの融点以上及び熱硬化性成分11Bの硬化温度以上に導電ペースト11を加熱する(第3の工程)。すなわち、はんだ粒子11Aの融点及び熱硬化性成分11Bの硬化温度の内のより低い温度以上に、導電ペースト11を加熱する。この加熱時には、電極が形成されていない領域に存在していたはんだ粒子11Aは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まる(自己凝集効果)。また、このとき、フィラー5がはんだ粒子11Aの移動を適度に妨げる。この結果、第1の電極2aと第2の電極3aとの間のそれぞれに向けて移動するはんだ粒子11Aの数が効果的に均一になる。また、本実施形態では、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いているために、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に効果的に集まる。また、はんだ粒子11Aは溶融し、互いに接合する。また、熱硬化性成分11Bは熱硬化する。この結果、図2(c)に示すように、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4を、導電ペースト11により形成する。導電ペースト11により接続部4が形成され、複数のはんだ粒子11Aが接合することによってはんだ部4Aが形成され、熱硬化性成分11Bが熱硬化することによって硬化物部4Bが形成される。はんだ粒子11Aが十分に移動すれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に位置していないはんだ粒子11Aの移動が開始してから、第1の電極2aと第2の電極3aとの間にはんだ粒子11Aの移動が完了するまでに、温度を一定に保持しなくてもよい。
図2(c)にて、フィラー5が、熱により溶融するフィラーである場合、熱硬化後、フィラー5が硬化物部4B部分に残存しなくてもよい。フィラーによるはんだ粒子の凝集抑制効果は、ペーストが電極間に濡れ拡がり、全電極付近に均一に配分される段階にて効果的であり、所望の効果が発現した後は、フィラーは、溶融等により無くなってもよい。
本実施形態では、上記第2の工程及び上記第3の工程において、加圧を行っていない。本実施形態では、導電ペースト11には、第2の接続対象部材3の重量が加わる。また、本実施形態では、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いている。このため、接続部4の形成時に、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に効果的に集まる。結果として、第1の電極2aと第2の電極3aとの間のはんだ部4Aの厚みが厚くなりやすい。なお、上記第2の工程及び上記第3の工程の内の少なくとも一方において、加圧を行えば、はんだ粒子が第1の電極と第2の電極との間に集まろうとする作用が阻害される傾向が高くなる。このことは、本発明者によって見出された。
また、本実施形態では、加圧を行っていないため、導電ペーストを塗布した第1の接続対象部材に、第2の接続対象部材を重ね合わせた際に、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極のアライメントがずれた状態で、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とが重ね合わされた場合でも、そのずれを補正して、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材との電極を接続させることができる(セルフアライメント効果)。これは、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極との間に自己凝集した溶融したはんだが、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極との間のはんだと導電ペーストのその他の成分とが接する面積が最小となる方がエネルギー的に安定になるため、その最小の面積となる接続構造であるアライメントのあった接続構造にする力が働くためである。この際、導電ペーストが硬化していないこと、及び、その温度、時間にて、導電ペーストのはんだ粒子以外の成分の粘度が十分低いことが望ましい。
はんだの融点温度での導電ペーストの粘度は、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、更に好ましくは1Pa・s以下、好ましくは0.1Pa以上、より好ましくは0.2Pa・s以上である。所定の粘度以下であれば、はんだ粒子を効率的に凝集させることができ、所定の粘度以上であれば、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電ペーストのはみだしを抑制し、並びに、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性をより一層高めることができる。
このようにして、図1に示す接続構造体1が得られる。なお、上記第2の工程と上記第3の工程とは連続して行われてもよい。また、上記第2の工程を行った後に、得られる第1の接続対象部材2と導電ペースト11と第2の接続対象部材3との積層体を、加熱部材に移動させて、上記第3の工程を行ってもよい。上記加熱を行うために、加熱部材上に上記積層体を配置してもよく、加熱された空間内に上記積層体を配置してもよい。
上記第3の工程における加熱温度は、はんだ粒子の融点以上及び熱硬化性成分の硬化温度以上であれば特に限定されない。上記加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、好ましくは450℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
第3の工程の前に、溶融前のはんだ粒子の凝集を均一化するために、加熱工程を設けてよい。上記加熱工程における加熱温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下の温度条件にて、好ましくは5秒以上、好ましくは120秒以下保持する。この加熱工程によって、熱硬化性成分が熱により低粘度化し、溶融前のはんだ粒子が、凝集することで網目構造を形成し、第3の工程ではんだ粒子が溶融して凝集する際、取り残されるはんだ粒子を少なくすることができる。
第3の工程において、好ましくははんだの融点(℃)以上、より好ましくははんだの融点(℃)+5℃以上、好ましくははんだの融点(℃)+20℃以下、より好ましくははんだの融点(℃)+10℃以下の温度にて、好ましくは10秒以上、好ましくは120秒以下保持したのち、熱硬化性成分の硬化温度にあげてもよい。これにより、熱硬化性成分が硬化する前の、熱硬化性成分の粘度が低い状態にて、はんだ粒子の凝集を完了させることができ、より一層均一なはんだ粒子の凝集を行うことができる。
第3の工程における昇温速度は、30℃からはんだ粒子の融点までの昇温に関して、好ましくは50℃/秒以下、より好ましくは20℃/秒以下、更に好ましくは10℃/秒以下、好ましくは1℃/秒以上、より好ましくは5℃/秒以上である。昇温速度が上記下限以上であると、はんだ粒子の凝集がより一層均一になる。昇温速度が上記上限以下であると、熱硬化性成分の硬化の進行による過度の粘度上昇が抑えられ、はんだ粒子の凝集が阻害されにくくなる。
なお、上記第3の工程の後に、位置の修正や製造のやり直しを目的として、第1の接続対象部材又は第2の接続対象部材を、接続部から剥離することができる。この剥離を行うための加熱温度は、好ましくははんだ粒子の融点以上、より好ましくははんだ粒子の融点(℃)+10℃以上である。この剥離を行うための加熱温度は、はんだ粒子の融点(℃)+100℃以下であってもよい。
上記第3の工程における加熱方法としては、はんだ粒子の融点以上及び熱硬化性成分の硬化温度以上に、接続構造体全体を、リフロー炉を用いて又はオーブンを用いて加熱する方法や、接続構造体の接続部のみを局所的に加熱する方法が挙げられる。
局所的に加熱する方法に用いる器具としては、ホットプレート、熱風を付与するヒートガン、はんだゴテ、及び赤外線ヒーター等が挙げられる。
また、ホットプレートにて局所的に加熱する際、接続部直下は、熱伝導性の高い金属にて、その他の加熱することが好ましくない個所は、フッ素樹脂等の熱伝導性の低い材質にて、ホットプレート上面を形成することが好ましい。
導通信頼性をより一層高める観点からは、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上)に、接続部中のはんだ部が配置されている接続構造体を得ることが好ましい。
上記第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記第1,第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。上記第2の接続対象部材が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板は、柔軟性が高く、比較的軽量であるという性質を有する。このような接続対象部材の接続に導電フィルムを用いた場合には、はんだ粒子が電極上に集まりにくい傾向がある。これに対して、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いたとしても、はんだ粒子を電極上に効率的に集めることで、電極間の導通信頼性を充分に高めることができる。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いる場合に、半導体チップなどの他の接続対象部材を用いた場合と比べて、加圧を行わないことによる電極間の導通信頼性の向上効果がより一層効果的に得られる。
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
はんだ粒子を電極上により一層効率的に配置するために、上記導電ペーストの25℃での粘度ηは好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは20Pa・s以上、更に好ましくは50Pa・s以上、好ましくは800Pa・s以下、より好ましくは600Pa・s以下、更に好ましくは500Pa・s以下である。
上記粘度は、配合成分の種類及び配合量に適宜調整可能である。また、フィラーの使用により、粘度を比較的高くすることができる。
上記粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業社製)等を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定可能である。
25℃以上、上記はんだ粒子(はんだ)の融点(℃)以下の温度領域での、上記導電ペーストの粘度の最低値(最低溶融粘度の値)は、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.2Pa・s以上、好ましくは10Pa・s以下、より好ましくは1Pa・s以下である。上記粘度の最低値が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子を電極上により一層効率的に配置することができる。
上記粘度の最低値は、STRESSTECH(EOLOGICA社製)等を用いて、歪制御1rad、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、測定温度範囲25〜200℃(但し、はんだ粒子の融点が200℃を超える場合には温度上限をはんだ粒子の融点とする)の条件の条件で測定可能である。測定結果から、はんだ粒子の融点(℃)以下の温度領域での粘度の最低値が評価される。
複数のはんだ部において、はんだ量の均一性を高める観点からは、上記第1の電極の電極幅及び上記第2の電極の電極幅は、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは250μm以下である。上記電極幅は、L/Sにおけるライン(L)の幅である。複数のはんだ部において、はんだ量の均一性を高める観点からは、上記第1の電極の電極間幅及び上記第2の電極の電極間幅は、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは250μm以下である。上記電極間幅は、L/Sにおけるスペース(S)の幅である。
特に電極幅及び電極間幅が小さい場合に、フィラーを含まない導電材料を用いると、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性を高めることは困難である。特に、電極幅及び電極間幅が200μm以下である場合に、フィラーを含まない導電材料を用いると、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性を高めることは困難である。これに対して、フィラーを含む導電材料を用いることによって、電極幅及び電極間幅が200μm以下であっても、はんだ量の均一性を高めることが可能になる。また、電極幅及び電極間幅がより一層小さいほど、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。例えば、電極幅及び電極間幅が100μm以下、85μm以下、70μm以下の順で小さくなるほど、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。
上記第1の電極及び上記第2の電極が、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されていることが好ましい。電極が、エリアアレイ、ペリフェラルにて面にて配置されている場合にて、本発明の効果が一層効果的に発揮される。エリアアレイとは、接続対象部材の電極が配置されている面にて、格子状に電極が配置されている構造のことである。ペリフェラルとは、接続対象部材の外周部に電極が配置されている構造のことである。電極が櫛型に並んでいる構造の場合は、櫛に垂直な方向に沿ってはんだ粒子が凝集すればよいのに対して、上記構造では電極が配置されている面において、全面にて均一にはんだ粒子が凝集する必要があるため、従来の方法では、はんだ量が不均一になりやすいのに対して、本発明の方法では、本発明の効果が一層効果的に発揮される。
電極のサイズは、好ましくは直径10μm以上、より好ましくは直径20μm以上、好ましくは直径1000μm以下、より好ましくは直径750μm以下である。電極間の最小距離(電極の端部間最小距離)は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは750μm以下である。
エリアアレイの配置において、必ずしも全面に等間隔で電極が配置されている必要はなく、一部に電極が形成されていなくてもよい。この場合、各電極に対して、周辺に存在するはんだ粒子の量が異なることとなる。また、ペリフェラの配置においては、接続対象部材の中心部に電極が配置されていない、又は少ないことがあり、同様に、各電極に対して、周辺に存在するはんだ粒子の量が異なることとなる。このような場合においても、はんだ凝集性が均一となるため、、従来の方法では、はんだ量が不均一になりやすいのに対して、本発明の方法では、本発明の効果が一層効果的に発揮される。
上記接続対象部材は、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、受動部品、カメラやセンサー等のモジュール、ガラスエポキシ基板等の有機基板、フレキシブルプリント基板、セラミック等の無機基板が挙げられる。特に、少なくとも一方がフレキシブルプリント基板である場合に、本発明の効果が一層効果的に発揮される。これは、一方の接続対象部材と他方の接続対象部材に対向して配置されている電極間距離のばらつきが発生しやすいためである。また、本発明の効果が効果的に発現することから、上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の少なくとも一方が、半導体チップ又は半導体パッケージであることも好ましい。
上記導電ペーストは、熱硬化性成分と複数のはんだ粒子と複数のフィラーとを含む。上記熱硬化性成分は、加熱により硬化可能な硬化性化合物(熱硬化性化合物)と、熱硬化剤とを含むことが好ましい。はんだ粒子の表面及び電極の表面の酸化膜を効果的に除去し、接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記導電ペーストはフラックスを含むことが好ましい。
以下、本発明の他の詳細を説明する。
(はんだ粒子)
上記はんだ粒子は、はんだを導電性の外表面に有する。上記はんだ粒子は、中心部分及び導電性の外表面とのいずれもがはんだにより形成されている。
電極上にはんだ粒子を効率的に集める観点からは、上記はんだ粒子の表面のゼータ電位がプラスであることが好ましい。但し、本発明では、上記はんだ粒子の表面のゼータ電位がプラスでなくてもよい。
ゼータ電位は以下のようにして測定される。
ゼータ電位の測定方法:
はんだ粒子0.05gを、メタノール10gに入れ、超音波処理等をすることで、均一に分散させて、分散液を得る。この分散液を用いて、かつBeckman Coulter社製「Delsamax PRO」を用いて、電気泳動測定法にて、ゼータ電位を測定することができる。
はんだ粒子のゼータ電位は好ましくは0mVを超え、好ましくは1mV以下、より好ましくは0.7mV以下、更に好ましくは0.5mV以下である。ゼータ電位が上記上限以下であると、使用前の導電ペースト中にて、はんだ粒子が凝集しにくくなる。ゼータ電位が0mV以上であると、実装時に電極上にはんだ粒子が効率的に凝集する。
表面のゼータ電位をプラスにすることが容易であることから、上記はんだ粒子は、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の表面上に配置されたアニオンポリマーとを有することが好ましい。上記はんだ粒子は、はんだ粒子本体をアニオンポリマー又はアニオンポリマーとなる化合物で表面処理することにより得られることが好ましい。上記アニオンポリマー及び上記アニオンポリマーとなる化合物はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
はんだ粒子本体をアニオンポリマーで表面処理する方法としては、アニオンポリマーとして、例えば(メタ)アクリル酸を共重合した(メタ)アクリルポリマー、ジカルボン酸とジオールとから合成されかつ両末端にカルボキシル基を有するポリエステルポリマー、ジカルボン酸の分子間脱水縮合反応により得られかつ両末端にカルボキシル基を有するポリマー、ジカルボン酸とジアミンから合成されかつ両末端にカルボキシル基を有するポリエステルポリマー、並びにカルボキシル基を有する変性ポバール(日本合成化学社製「ゴーセネックスT」)等を用いて、アニオンポリマーのカルボキシル基と、はんだ粒子本体の表面の水酸基とを反応させる方法が挙げられる。
上記アニオンポリマーのアニオン部分としては、上記カルボキシル基が挙げられ、それ以外には、トシル基(p−H3CC6H4S(=O)2−)、スルホン酸イオン基(−SO3−)及びリン酸イオン基(−PO4 −)等が挙げられる。
また、他の方法としては、はんだ粒子本体の表面の水酸基と反応する官能基を有し、さらに、付加、縮合反応により重合可能な官能基を有する化合物を用いて、この化合物をはんだ粒子本体の表面上にてポリマー化する方法が挙げられる。はんだ粒子本体の表面の水酸基と反応する官能基としては、カルボキシル基及びイソシアネート基等が挙げられ、付加、縮合反応により重合する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
上記アニオンポリマーの重量平均分子量は好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下である。
上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子本体の表面上にアニオンポリマーを配置することが容易であり、はんだ粒子の表面のゼータ電位をプラスにすることが容易であり、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
はんだ粒子本体をアニオンポリマーとなる化合物で表面処理することにより得られたポリマーの重量平均分子量は、はんだ粒子中のはんだを溶解し、ポリマーの分解を起こさない希塩酸等により、はんだ粒子を除去した後、残存しているポリマーの重量平均分子量を測定することで求めることができる。
上記はんだは、融点が450℃以下である低融点金属であることが好ましい。上記はんだ粒子は、融点が450℃以下である低融点金属粒子であることが好ましい。上記低融点金属粒子は、低融点金属を含む粒子である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記はんだ粒子は錫を含む。上記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記はんだ粒子における錫の含有量が上記下限以上であると、はんだ部と電極との接続信頼性がより一層高くなる。
なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
上記はんだ粒子を用いることで、はんだが溶融して電極に接合し、はんだ部が電極間を導通させる。例えば、はんだ部と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、はんだ粒子の使用により、はんだ部と電極との接合強度が高くなる結果、はんだ部と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性及び接続信頼性が効果的に高くなる。
上記はんだ粒子を構成する金属(低融点金属)は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
上記はんだ粒子は、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだ粒子の組成としては、例えば亜鉛、金、銀、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、上記はんだ粒子は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むか、又は錫とビスマスとを含むことが好ましい。
上記はんだ部と電極との接合強度をより一層高めるために、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。また、はんだ部と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。はんだ部と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、はんだ粒子100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
上記はんだ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm未満、より一層好ましくは75μm以下、より一層好ましくは40μm以下、より一層好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記はんだ粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子を電極上により一層効率的に配置することができる。上記はんだ粒子の平均粒子径は、3μm以上、30μm以下であることが特に好ましい。
上記はんだ粒子の「平均粒子径」は、分布の中央値に対応する粒子径(メジアン径)を意味する。上記はんだ粒子の「平均粒子径」は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製「LA−920」)を用いて、測定できる。
上記はんだ粒子の粒子径の変動係数は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。上記粒子径の変動係数が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。但し、上記はんだ粒子の粒子径の変動係数は、5%未満であってもよい。
上記変動係数(CV値)は下記式で表される。
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:はんだ粒子の粒子径の標準偏差
Dn:はんだ粒子の粒子径の平均値
上記はんだ粒子の形状は特に限定されない。上記はんだ粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状などの球形状以外の形状であってもよい。
上記導電ペースト100重量%中、上記はんだ粒子の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上、最も好ましくは30重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。上記はんだ粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだ粒子を多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記はんだ粒子の含有量は多い方が好ましい。
特に、上記導電ペースト100重量%中、上記はんだ粒子の含有量は好ましくは1重量%以上、好ましくは80重量%以下である。この場合には、電極上にはんだ粒子が効率的に集まる。
(加熱により硬化可能な化合物:熱硬化性成分)
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。なかでも、導電ペーストの硬化性及び粘度をより一層良好にし、接続信頼性をより一層高める観点から、エポキシ化合物が好ましい。
上記エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物が挙げられる。中でも、レゾルシノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ベンゾフェノン型エポキシ化合物等の結晶性エポキシ化合物が好ましい。常温(23℃)で固体であり、かつ溶融温度がはんだの融点以下であるエポキシ化合物が好ましい。溶融温度は好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、好ましくは40℃以上である。上記の好ましいエポキシ化合物を用いることで、接続対象部材を貼り合わせた段階では、粘度が高く、搬送等の衝撃が、加速度が付与された際に、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材との位置ずれを抑制することができ、なおかつ、硬化時の熱により、導電ペーストの粘度を大きく低下させることができ、はんだ粒子の凝集を効率よく進行させることができる。
上記導電ペースト100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、更に好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性成分の含有量は多い方が好ましい。
(熱硬化剤:熱硬化性成分)
上記熱硬化剤は、上記熱硬化性化合物を熱硬化させる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤などのチオール硬化剤、酸無水物、熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なかでも、導電ペーストを低温でより一層速やかに硬化可能であるので、イミダゾール硬化剤、チオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、加熱により硬化可能な硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性が高くなるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性チオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記チオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱カチオン開始剤としては、ヨードニウム系カチオン硬化剤、オキソニウム系カチオン硬化剤及びスルホニウム系カチオン硬化剤等が挙げられる。上記ヨードニウム系カチオン硬化剤としては、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系カチオン硬化剤としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上記スルホニウム系カチオン硬化剤としては、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
上記熱ラジカル発生剤としては、特に限定されず、アゾ化合物及び有機過酸化物等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、アゾビスイゾブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド及びメチルエチルケトンペルオキシド等が挙げられる。
上記熱硬化剤の反応開始温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下である。上記熱硬化剤の反応開始温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子が電極上により一層効率的に配置される。上記熱硬化剤の反応開始温度は80℃以上、140℃以下であることが特に好ましい。
はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記熱硬化剤の反応開始温度は、上記はんだ粒子におけるはんだの融点よりも、高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことが更に好ましい。
上記熱硬化剤の反応開始温度は、DSCでの発熱ピークの立ち上がり開始の温度を意味する。
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、導電ペーストを充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
(フィラー)
上記導電ペーストに含まれるフィラーは、はんだ粒子と異なる。上記フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラー等が挙げられる。なお、無機フィラーが有機化合物により表面処理されたフィラーは、無機フィラーに含まれることとする。上記フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機フィラーの材料としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
無機フィラーの好ましい表面処理としては、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤で処理する方法が挙げられる。
シリカナノフィラーを用いる場合、フィラーの平均粒子径は、1次粒子の平均粒径ではなく、1次凝集体の粒径のことを言う。
複数のはんだ部において、はんだ量の均一性をより一層高める観点からは、上記フィラーは、熱可塑性樹脂により形成された粒子、未硬化の熱硬化性樹脂により形成された粒子、硬化剤により形成された粒子、マイクロカプセル型フィラー、ゴム粒子又は架橋樹脂粒子であることが好ましい。上記フィラーは、熱可塑性樹脂により形成された粒子、未硬化の熱硬化性樹脂により形成された粒子、硬化剤により形成された粒子、マイクロカプセル型フィラーであってもよい。特に、未硬化の熱硬化性樹脂により形成された粒子又はマイクロカプセル型フィラーであることが好ましい。上記ゴム粒子としては、アクリルゴム粒子、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子及びシリコーンゴム粒子等が挙げられる。上記架橋粒子としては、ジビニルベンゼンやスチレン等の架橋樹脂粒子が挙げられる。
未硬化の熱硬化性樹脂により形成された粒子は、23℃で固体であるエポキシ樹脂又は23℃で固体である(メタ)アクリル樹脂を、粉砕したり、溶媒中で析出させたりすることにより得ることができる。
マイクロカプセル型フィラーとしては、硬化剤を粒子化したコア(粒子状の硬化剤であるコア)と、該コアを被覆しているシェルとを有する硬化剤等が挙げられる。マイクロカプセル型フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。コアは、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤、又はそれらのアダクト化合物であることが好ましい。アダクト化合物は、エポキシ化合物とアミン硬化剤とのアダクト化合物、エポキシ化合物とイミダゾール硬化剤とのアダクト化合物であることが好ましい。マイクロカプセル型フィラーを2種以上併用する場合は、エポキシ化合物とアミン硬化剤とのアダクト化合物、及びエポキシ化合物とイミダゾール硬化剤とのアダクト化合物の組み合わせが好ましい。
シェルとしては、上記アダクト化合物の粒子と、イソシアネート化合物とを反応させることにより得られるシェルが好適である。
マイクロカプセル型フィラーの軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。また、はんだ粒子の融点より、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下で、低い方が好ましい。
軟化点は、環球式自動軟化点試験機(メイテック社製「ASP−MG」)を用い、グリセリン浴中、5℃/分の昇温速度にて測定することができる。
マイクロカプセル型フィラーと熱硬化性化合物との反応温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。また、上記反応温度は、はんだ粒子の融点より、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下で、低い方が好ましい。
示差走査熱量測定装置(TAインスツルメント社製「Q2000」)を用いて、熱硬化性成分およびマイクロカプセル型フィラーの混合物を10℃/分の昇温速度で加熱して、発熱ピーク温度を測定することで、反応温度を求めることができる。
上記所定の温度範囲のマイクロカプセル型フィラーを用いると、マイクロカプセル型フィラーの軟化点に温度が達するまでは、マイクロカプセル型フィラーによりはんだ粒子の自己凝集が好適に抑制され状態で、導電ペーストが熱により濡れ拡がる。その後、マイクロカプセル型フィラーの軟化点、又はマイクロカプセル型フィラーと熱硬化性化合物との反応温度に達した段階で、マイクロカプセル型フィラーが、熱硬化性化合物と均一化しフィラーの形状を維持しなくなるため、電極に対するはんだ粒子の自己凝集効果に対する抑制効果が無くなり、はんだ粒子が電極に凝集する。
上記所定の温度の下限以上であれば、導電ペーストが濡れ拡がる際の自己凝集抑制効果がより一層高まり、局所的なはんだの自己凝集が生じ難くなり、ショート等の問題が発生しにくくなる。上記所定の温度の上限以下であれば、自己凝集が起きる前に熱硬化性樹脂が硬化し難くなり、横方向に隣接する電極間にはんだ粒子が残存し難くなり、導通性が十分確保される。
上記フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上、好ましくは15μm以下、より好ましくは6μm以下、更に好ましくは3μm以下である。上記フィラーの平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性をより一層高めることができる。
上記フィラーの「平均粒子径」は、分布の中央値に対応する粒子径(メジアン径)を意味する。上記フィラーの「平均粒子径」は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製「LA−920」)を用いて、測定できる。
フィラーの平均粒子径のはんだ粒子の平均粒子径に対する比(フィラーの平均粒子径/はんだ粒子の平均粒子径)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下である。上記比(フィラーの平均粒子径/はんだ粒子の平均粒子径)が上記下限以上及び上記上限以下であると、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性をより一層高めることができる。
上記導電ペースト100重量%中、上記フィラーの含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。上記はんだ粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだ粒子を多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記フィラーの含有量は少ない方が好ましい。
上記導電ペースト100重量中の上記フィラーの含有量の上記導電ペースト100重量中の上記はんだ粒子の含有量に対する比(フィラーの含有量/はんだ粒子の含有量)は好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。上記比(フィラーの含有量/はんだ粒子の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、複数のはんだ部において、はんだ量の均一性をより一層高めることができる。
(フラックス)
上記導電ペーストは、フラックスを含むことが好ましい。フラックスの使用により、はんだを電極上により一層効果的に配置することができる。該フラックスは特に限定されない。フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを使用できる。上記フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸及び松脂等が挙げられる。上記フラックスは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸及びグルタル酸等が挙げられる。上記松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸、松脂であることが好ましい。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸であってもよく、松脂であってもよい。カルボキシル基を2個以上有する有機酸、松脂の使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。フラックスは、ロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。この好ましいフラックスの使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
上記フラックスの活性温度(融点)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、より一層好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下、更に一層好ましくは140℃以下である。上記フラックスの活性温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、はんだ粒子が電極上により一層効率的に配置される。上記フラックスの活性温度は80℃以上、190℃以下であることが好ましい。上記フラックスの活性温度は80℃以上、140℃以下であることが特に好ましい。
融点が80℃以上、190℃以下である上記フラックスとしては、コハク酸(融点186℃)、グルタル酸(融点96℃)、アジピン酸(融点152℃)、ピメリン酸(融点104℃)、スベリン酸(融点142℃)等のジカルボン酸、安息香酸(融点122℃)、リンゴ酸(融点130℃)等が挙げられる。
また、上記フラックスの沸点は200℃以下であることが好ましい。
はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの融点は、上記はんだ粒子におけるはんだの融点よりも、高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことが更に好ましい。
はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの融点は、上記熱硬化剤の反応開始温度よりも、高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことが更に好ましい。
上記フラックスは、導電ペースト中に分散されていてもよく、はんだ粒子の表面上に付着していてもよい。
フラックスの融点が、はんだの融点より高いことにより、電極部分にはんだ粒子を効率的に凝集させることができる。これは、接合時に加熱した場合、接続対象部材上に形成された電極と、電極周辺の接続対象部材の部分とを比較すると、電極部分の熱伝導率が電極周辺の接続対象部材部分の熱伝導率よりも高いことにより、電極部分の昇温が速いことに起因する。はんだ粒子の融点を超えた段階では、はんだ粒子の内部は溶解するが、表面に形成された酸化被膜は、フラックスの融点(活性温度)に達していないので、除去されない。この状態で、電極部分の温度が先に、フラックスの融点(活性温度)に達するため、優先的に電極上に来たはんだ粒子の表面の酸化被膜が除去され、はんだ粒子が電極の表面上に濡れ拡がることができる。これにより、電極上に効率的にはんだ粒子を凝集させることができる。
上記フラックスは、加熱によりカチオンを放出するフラックスであることが好ましい。加熱によりカチオンを放出するフラックスの使用により、はんだ粒子を電極上により一層効率的に配置することができる。
上記加熱によりカチオンを放出するフラックスとしては、上記熱カチオン開始剤が挙げられる。
上記導電ペースト100重量%中、上記フラックスの含有量は好ましくは0.5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。上記導電ペーストは、フラックスを含んでいなくてもよい。フラックスの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ及び電極の表面に酸化被膜がより一層形成され難くなり、さらに、はんだ及び電極の表面に形成された酸化被膜をより一層効果的に除去できる。
(他の成分)
上記導電ペーストは、必要に応じて、例えば、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
ポリマーA:
ビスフェノールFと1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂との反応物(ポリマーA)の合成:
ビスフェノールF(4,4’−メチレンビスフェノールと2,4’−メチレンビスフェノールと2,2’−メチレンビスフェノールとを重量比で2:3:1で含む)100重量部、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル130重量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製「EPICLON EXA−830CRP」)5重量部、及びレゾルシノール型エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製「EX−201」)10重量部を、3つ口フラスコに入れ、窒素フロー下にて、100℃で溶解させた。その後、水酸基とエポキシ基の付加反応触媒であるトリフェニルブチルホスホニウムブロミド0.15重量部を添加し、窒素フロー下にて、140℃で4時間、付加重合反応させることにより、反応物(ポリマーA)を得た。
NMRにより、付加重合反応が進行したことを確認して、反応物(ポリマーA)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に由来する水酸基と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びレゾルシノール型エポキシ化合物のエポキシ基とが結合した構造単位を主鎖に有し、かつエポキシ基を両末端に有することを確認した。
GPCにより得られた反応物(ポリマーA)の重量平均分子量は28000、数平均分子量は8000であった。
ポリマーB:両末端エポキシ基剛直骨格フェノキシ樹脂、三菱化学社製「YX6900BH45」、重量平均分子量16000
熱硬化性化合物1:レゾルシノール型エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製「EX−201」
熱硬化性化合物2:エポキシ化合物、DIC社製「EXA−4850−150」、分子量900、エポキシ当量450g/eq
熱硬化剤1:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピネート)、SC有機化学社製「TMMP」
潜在性エポキシ熱硬化剤1:T&K TOKA社製「フジキュア7000」
フラックス1:アジピン酸、和光純薬工業社製、融点(活性温度)152℃
はんだ粒子1〜5の作製方法:
アニオンポリマー1を有するはんだ粒子:はんだ粒子本体200gと、アジピン酸40gと、アセトン70gとを3つ口フラスコに秤量し、次にはんだ粒子本体の表面の水酸基とアジピン酸のカルボキシル基との脱水縮合触媒であるジブチル錫オキサイド0.3gを添加し、60℃で4時間反応させた。その後、はんだ粒子をろ過することで回収した。
回収したはんだ粒子と、アジピン酸50gと、トルエン200gと、パラトルエンスルホン酸0.3gとを3つ口フラスコに秤量し、真空引き、及び還流を行いながら、120℃で、3時間反応させた。この際、ディーンスターク抽出装置を用いて、脱水縮合により生成した水を除去しながら反応させた。
その後、ろ過によりはんだ粒子を回収し、ヘキサンにて洗浄し、乾燥した。その後、得られたはんだ粒子をボールミルで解砕した後、所定のCV値となるように篩にかけた。
(ゼータ電位測定)
また、得られたはんだ粒子を、アニオンポリマー1を有するはんだ粒子0.05gを、メタノール10gに入れ、超音波処理をすることで、均一に分散させて、分散液を得た。この分散液を用いて、かつBeckman Coulter社製「Delsamax PRO」を用いて、電気泳動測定法にて、ゼータ電位を測定した。
(アニオンポリマーの重量平均分子量)
はんだ粒子の表面のアニオンポリマー1の重量平均分子量は、0.1Nの塩酸を用い、はんだを溶解した後、ポリマーを濾過により回収し、GPCにより求めた。
(はんだ粒子のCV値)
CV値を、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA−920」)にて、測定した。
はんだ粒子1(SnBiはんだ粒子、融点139℃、三井金属社製「ST−3」を選別したはんだ粒子本体を用い、表面処理を行ったアニオンポリマー1を有するはんだ粒子、平均粒子径4μm、CV値7%、表面のゼータ電位:+0.65mV、ポリマー分子量Mw=6500)
はんだ粒子2(SnBiはんだ粒子、融点139℃、三井金属社製「DS10」を選別したはんだ粒子本体を用い、表面処理を行ったアニオンポリマー1を有するはんだ粒子、平均粒子径13μm、CV値20%、表面のゼータ電位:+0.48mV、ポリマー分子量Mw=7000)
はんだ粒子3(SnBiはんだ粒子、融点139℃、三井金属社製「10−25」を選別したはんだ粒子本体を用い、表面処理を行ったアニオンポリマー1を有するはんだ粒子、平均粒子径25μm、CV値15%、表面のゼータ電位:+0.4mV、ポリマー分子量Mw=8000)
はんだ粒子4(SnBiはんだ粒子、融点139℃、はんだ粒子本体を用い、表面処理を行ったアニオンポリマー1を有するはんだ粒子、平均粒子径11μm、CV値7%、表面のゼータ電位:+0.65mV、ポリマー分子量Mw=6500)
はんだ粒子5(SnBiはんだ粒子、融点139℃、はんだ粒子本体を用い、表面処理を行ったアニオンポリマー1を有するはんだ粒子、平均粒子径41μm、CV値7%、表面のゼータ電位:+0.65mV、ポリマー分子量Mw=6500)
フィラー1(マイクロカプセル型フィラー、旭化成イーマテリアルズ社製「ノバキュア HX−3921HP」、平均粒子径5μm、マイクロカプセル型フィラー含有量35重量%、軟化点80℃、熱硬化性化合物との反応温度120℃)
フィラー2(マイクロカプセル型フィラー、旭化成イーマテリアルズ社製「ノバキュア HX−3922HP」、平均粒子径2μm、マイクロカプセル型フィラー含有量35重量%、軟化点80℃、熱硬化性化合物との反応温度120℃)
フィラー3(エポキシ樹脂により形成されたエポキシ粒子、三菱化学社製「1004」 軟化点97℃、平均粒子径8μm)
フィラー4(シリカフィラー、トクヤマ社製「エクセリカ SE−5」、平均粒子径6μm)
(フィラーの軟化点)
環球式自動軟化点試験機(メイテック社製「ASP−MG」)を用いて、グリセリン浴中、5℃/分の昇温速度にて、フィラーの軟化点を測定した。
フィラー1,2に関しては、エポキシ樹脂とマイクロカプセル型フィラーとから構成されているため、MEKにて希釈し、遠心分離器によりフィラー成分のみを抽出した。その後、真空乾燥機にて、室温にて乾燥し、上記軟化点を測定した。
(フィラーと熱硬化性化合物との反応温度)
示差走査熱量測定装置(TAインスツルメント社製「Q2000」)を用いて、表1,2の配合成分の内、熱硬化性成分及びマイクロカプセル型フィラーのみを含む混合物を、10℃/分の昇温速度で加熱して、発熱ピーク温度を測定することで求めた。
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「YP−50S」)
導電性粒子1:樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み3μmのはんだ層(錫:ビスマス=42重量%:58重量%)が形成されている導電性粒子
導電性粒子1の作製方法:
平均粒子径10μmのジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−210」)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面上に厚さ0.1μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。更に、錫及びビスマスを含有する電解めっき液を用いて、電解めっきし、厚さ3μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み3μmのはんだ層(錫:ビスマス=42重量%:58重量%)が形成されている導電性粒子1を作製した。
(実施例1〜12及び比較例3)
(1)異方性導電ペーストの作製
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量で配合して、異方性導電ペーストを得た。
(2)第1の接続構造体(L/S=50μm/50μm)の作製
L/Sが50μm/50μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極厚み12μm)を上面に有するガラスエポキシ基板(FR−4基板)(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが50μm/50μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極厚み12μm)を下面に有するフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
ガラスエポキシ基板とフレキシブルプリント基板との重ね合わせ面積は、1.5cm×3mmとし、接続した電極数は75対とした。
上記ガラスエポキシ基板の上面に、作製直後の異方性導電ペーストを、ガラスエポキシ基板の電極上で厚さ100μmとなるように、メタルマスクを用い、スクリーン印刷にて塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層の上面に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。このとき、加圧を行わなかった。異方性導電ペースト層には、上記フレキシブルプリント基板の重量は加わる。その後、異方性導電ペースト層の温度が190℃となるように加熱しながら、はんだを溶融させ、かつ異方性導電ペースト層を190℃で10秒で硬化させ、第1の接続構造体を得た。
(3)第2の接続構造体(L/S=75μm/75μm)の作製
L/Sが75μm/75μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極厚み12μm)を上面に有するガラスエポキシ基板(FR−4基板)(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが75μm/75μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極厚み12μm)を下面に有するフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
L/Sが異なる上記ガラスエポキシ基板及びフレキシブルプリント基板を用いたこと以外は第1の接続構造体の作製と同様にして、第2の接続構造体を得た。
(4)第3の接続構造体(L/S=100μm/100μm)の作製
L/Sが100μm/100μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極厚み12μm)を上面に有するガラスエポキシ基板(FR−4基板)(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが100μm/100μm、電極長さ3mmの銅電極パターン(銅電極厚み12μm)を下面に有するフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
L/Sが異なる上記ガラスエポキシ基板及びフレキシブルプリント基板を用いたこと以外は第1の接続構造体の作製と同様にして、第3の接続構造体を得た。
(5)第4の接続構造体(エリアアレイ)の作製
第1の接続対象部材として、半導体チップ本体(サイズ5×5mm、厚み0.4mm)の表面に、400μmピッチで250μmの銅電極が、エリアアレイにて配置されており、最表面にパッシベーション膜(ポリイミド、厚み5μm、電極部の開口径200μm)が形成されている半導体チップを準備した。銅電極の数は、半導体チップ1個当たり、10個×10個の合計100個である。
第2の接続対象部材として、ガラスエポキシ基板本体(サイズ20×20mm、厚み1.2mm、材質FR−4)の表面に、第1の接続対象部材の電極に対して、同じパターンとなるように、銅電極が配置されており、銅電極が配置されていない領域にソルダーレジスト膜が形成されているガラスエポキシ基板を準備した。銅電極の表面とソルダーレジスト膜の表面との段差は、15μmであり、ソルダーレジスト膜は銅電極よりも突出している。
上記ガラスエポキシ基板の上面に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ100μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層の上面に半導体チップを電極同士が対向するように積層した。異方性導電ペースト層には、上記半導体チップの重量は加わる。その状態から、異方性導電ペースト層の温度が、昇温開始から5秒後に139℃(はんだの融点)となるように加熱した。その後、10秒間139℃にて保持し、さらに、昇温開始から15秒後に、異方性導電ペースト層の温度が160℃となるように加熱し、異方性導電ペーストを硬化させ、接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
(6)第5の接続構造体(ペリフェラル)の作製
第1の接続対象部材として、半導体チップ本体(サイズ5×5mm、厚み0.4mm)の表面に、400μmピッチで250μmの銅電極が、チップ外周部に配置(ペリフェラル)されており、最表面にパッシベーション膜(ポリイミド、厚み5μm、電極部の開口径200μm)が形成されている半導体チップを準備した。銅電極の数は、半導体チップ1個当たり、10個×4辺の合計36個である。
第2の接続対象部材として、ガラスエポキシ基板本体(サイズ20×20mm、厚み1.2mm、材質FR−4)の表面に、第1の接続対象部材の電極に対して、同じパターンとなるように、銅電極が配置されており、銅電極が配置されていない領域にソルダーレジスト膜が形成されている銅電極の表面とソルダーレジスト膜の表面との段差は、15μmであり、ソルダーレジスト膜は銅電極よりも突出している。
上記ガラスエポキシ基板の上面のペリフェラル部分に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ100μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層の上面にフレキシブルプリント基板を電極同士が対向するように積層した。異方性導電ペースト層には、上記半導体チップの重量は加わる。その状態から、異方性導電ペースト層の温度が、昇温開始から5秒後に139℃(はんだの融点)となるように加熱した。その後、10秒間139℃にて保持し、さらに、昇温開始から15秒後に、異方性導電ペースト層の温度が160℃となるように加熱し、異方性導電ペーストを硬化させ、接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
(比較例1)
(1)異方性導電ペーストの作製
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量で配合して、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと、加熱時に1MPaの圧力を加えたこと以外は実施例1と同様にして、第1,第2,第3,第4,第5の接続構造体を得た。
(比較例2)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「YP−50S」)10重量部をメチルエチルケトン(MEK)に固形分が50重量%となるように溶解させて、溶解液を得た。下記の表1に示すフェノキシ樹脂を除く成分を下記の表1に示す配合量と、上記溶解液の全量とを配合して、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌した後、バーコーターを用いて乾燥後の厚みが30μmになるよう離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工した。室温で真空乾燥することで、MEKを除去することにより、異方性導電フィルムを得た。
異方性導電フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、第1,第2,第3の接続構造体を得た。比較例2では、第4,第5の接続構造体は作製しなかった。
(評価)
(1)粘度
異方性導電ペーストの25℃での粘度ηを、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定した。
また、STRESSTECH(EOLOGICA社製)を用いて、25℃からはんだ粒子の融点又は導電性粒子の表面のはんだの融点までの温度領域での、異方性導電ペーストの最低溶融粘度を測定した。最低溶融粘度を以下の基準で判定した。
[最低溶融粘度の判定基準]
A:0.2Pa・s以上、10Pa・s以下
B:Aの基準に相当しない
(2)はんだ部の厚み
得られた接続構造体を断面観察することにより、上下の電極の間に位置しているはんだ部の厚みを評価した。
(3)電極上の複数のはんだ部におけるはんだ量の均一性
得られた第1,第2,第3,第4,第5の接続構造体の断面(図1に示す方向の断面)において、5箇所のはんだ部におけるはんだ量(はんだの断面積)を評価した。5箇所のはんだ部におけるはんだ量(はんだの断面積)のばらつきから、はんだ量の均一性を下記の基準で判定した。5箇所の場所は3mm長さの電極に対して、中心部分、中心より両側にそれぞれ0.5mm離れた位置、中心より両側にそれぞれ1mm離れた位置とした。
[電極上の複数のはんだ部におけるはんだ量の均一性]
○○:5箇所のはんだ部において、はんだ量の最大値が、はんだ量の最小値の1.1倍未満
○:5箇所のはんだ部において、はんだ量の最大値が、はんだ量の最小値の1.1倍以上、1.2倍未満
△:5箇所のはんだ部において、はんだ量の最大値が、はんだ量の最小値の1.2倍以上、1.5倍未満
×:5箇所のはんだ部において、はんだ量の最大値が、はんだ量の最小値の1.5倍以上
(4)電極上のはんだの配置精度1
得られた第1,第2,第3の接続構造体の断面(図1に示す方向の断面)において、はんだの全面積100%中、電極間に配置されたはんだ部から離れて硬化物中に残存しているはんだの面積(%)を評価した。なお、5つの断面における面積の平均を算出した。電極上のはんだの配置精度1を下記の基準で判定した。
[電極上のはんだの配置精度1の判定基準]
○○:断面に現われているはんだの全面積100%中、電極間に配置されたはんだ部から離れて硬化物中に残存しているはんだ(はんだ粒子)の面積が0%以上、1%以下
○:断面に現われているはんだの全面積100%中、電極間に配置されたはんだ部から離れて硬化物中に残存しているはんだ(はんだ粒子)の面積が1%を超え、10%以下
△:断面に現われているはんだの全面積100%中、電極間に配置されたはんだ部から離れて硬化物中に残存しているはんだ(はんだ粒子)の面積が10%を超え、30%以下
×:断面に現われているはんだの全面積100%中、電極間に配置されたはんだ部から離れて硬化物中に残存しているはんだ(はんだ粒子)の面積が30%を超える
(4’)電極上のはんだの配置精度2
得られた第4,第5の接続構造体において、導電材料により形成された接続部に含まれるはんだの全個数100重量%中、電極上に配置されているはんだの体積の割合(%)を評価した。体積の算出は、3次元X線CT装置(Nordson社製)を用いて行った。
電極上のはんだの配置精度2を下記の基準で判断した。
[電極上のはんだの配置精度2の判定基準]
○○:割合Xが90%以上
○:割合Xが80%以上、90%未満
△:割合Xが60%以上、80%未満
×:割合Xが60%未満
(5)上下の電極間の導通信頼性1
得られた第1,第2,第3,第4,第5の接続構造体(n=15個)において、上下の電極間の1接続箇所当たりの接続抵抗をそれぞれ、4端子法により、測定した。接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性1を下記の基準で判定した。
[導通信頼性1の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が50mΩ以下
○:接続抵抗の平均値が50mΩを超え、70mΩ以下
△:接続抵抗の平均値が70mΩを超え、100mΩ以下
×:接続抵抗の平均値が100mΩを超える
(5’)上下の電極間の導通信頼性2
得られた第4,第5の接続構造体(n=15個)において、上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性2を下記の基準で判定した。
[導通信頼性2の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が0.1Ω以下
○:接続抵抗の平均値が0.1Ωを超え、0.3Ω以下
△:接続抵抗の平均値が0.3Ωを超え、1.0Ω以下
×:接続抵抗の平均値が1.0Ωを超える
(6)隣接する電極間の絶縁信頼性
得られた第1,第2,第3の接続構造体(n=15個)において、85℃、湿度85%の雰囲気中に100時間放置した後、隣接する電極間に、5Vを印加し、抵抗値を25箇所で測定した。絶縁信頼性を下記の基準で判定した。
[絶縁信頼性の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が107Ω以上
○:接続抵抗の平均値が106Ω以上、107Ω未満
△:接続抵抗の平均値が105Ω以上、106Ω未満
×:接続抵抗の平均値が105Ω未満
結果を下記の表1,2に示す。
フレキシブルプリント基板にかえて、樹脂フィルム、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板を用いた場合でも、同様の傾向が見られた。また、実施例で得られた第1,第2,第3の接続構造体ではいずれも、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、接続部中のはんだ部が配置されていた。また、実施例で得られた接続構造体ではいずれも、電極の表面上のはんだ濡れ面積(電極の露出した面積100%中のはんだが接している面積)は、50%以上であった。