JP2012097479A - 免震装置の設置構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】積層ゴムの上下方向の変位を確実に許容し得て過大な引張荷重が作用することを防止し得る有効適切な設置構造を提供する。
【解決手段】積層ゴム1の上下のフランジプレート(上部フランジプレート、下部フランジプレート9)の一方もしくは双方を上下のベースプレート(上部ベースプレート、下部ベースプレート4)に対して密着させて上部基礎と下部基礎2との間に配置し、上下のベースプレートに密着させた上下のフランジプレートの一方もしくは双方の周囲に、フランジプレートの端面に対向配置されてベースプレートに固定されてフランジプレートの水平方向の相対変位を規制するブロック10を設け、ブロックとフランジプレートとの間にベースプレートの回転を許容するための必要最小限のクリアランス13を確保し、そのクリアランスの範囲内においてフランジプレートの水平方向の相対変位を許容する。
【選択図】図3

Description

本発明は免震構造建物に適用される免震装置としての積層ゴムの設置構造に関する。
周知のように、免震構造建物は下部構造に対して上部構造の全体を積層ゴム等の免震装置によって水平変位可能に免震支持するものであり、近年、広く普及しつつある。
通常の免震構造を超高層建物のようなアスペクト比の高い建物に適用する場合、地震時の転倒モーメントによる引き抜き荷重が積層ゴムに作用するが、積層ゴムの許容引張応力度は1MPa程度であるため充分な引き抜き耐力は期待できない。
そのため、たとえば特許文献1に示されるように、基礎に固定したベースプレートに対して積層ゴムのフランジプレート(上部あるいは下部の端部鋼板)を固定することなく単に密着させるのみとして、ベースプレートに固定した拘束部材によってフランジプレートの水平変位を拘束しつつ上下方向の変位を許容することにより、基礎に対する積層ゴムの浮き上がり(あるいは積層ゴムに対する上部構造の浮き上がり)を許容して、積層ゴムに過大な引き抜き荷重が作用することを防止するという構造が提案されている。
特開2008−25830号公報
しかし、特許文献1に示されるような積層ゴムの設置構造では、フランジプレートの水平変位を確実に拘束するために拘束部材をフランジプレートに対して押圧するようにしており、そのため積層ゴムが浮き上がる状況ではそこに大きな摩擦力が生じてフランジプレートの上下方向の変位が拘束されてしまい、必ずしも有効に機能しないことも想定される。また、押圧力を厳密に設定したり管理することも困難であるので地震時の挙動は明確ではないし、挙動解析のためのモデル化も複雑であり、構造的な信頼性も必ずしも充分ではない。
また、積層ゴムを設置する際には積層ゴムをベースプレート上に配置した後にその周囲から拘束部材を滑らせてフランジプレートに対して押し付けるようにし、その状態で拘束部材を多数の高力ボルトによってベースプレートに対して強固に締結する必要があり、その施工に面倒な手間を要する。特に、拘束部材を水平方向に滑らせる必要があることから拘束部材の水平変位を拘束するためのシアキーを設けることはできず、したがって拘束部材および積層ゴムの水平変位の拘束は専ら高力ボルトの軸力に頼らざるを得ないから、必然的に高力ボルトの所要本数が極めて多くなる。
さらに、拘束部材を多数の高力ボルトによりベースプレートに対して締結するためには、ベースプレートを基礎よりも大きくしておいてその周縁部を基礎の周囲に張り出させておく必要もあり、したがって基礎の形状や寸法自体が通常の積層ゴムを設置する場合と大きく異なるものとなってしまい、基礎のコンクリートの打設が困難である等、この点においても必ずしも広く適用できるものではない。
なお、拘束部材に水平方向のみならず上下方向のストッパーの機能を持たせることもあるが、その場合は拘束部材が大型化するし、拘束部材に対する複雑な加工も必要となるのでコスト高にもなり、好ましくない。
上記事情に鑑み、本発明は積層ゴムの上下方向の変位を確実に許容し得て積層ゴムに過大な引き抜き荷重が作用することを防止し得る有効適切な設置構造を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、上部構造を免震装置としての積層ゴムによって下部構造に対して水平方向に相対変位可能に免震支持する免震構造建物に適用する免震装置の設置構造であって、上部構造における上部基礎の底面と下部構造における下部基礎の上面のいずれか一方もしくは双方にベースプレートを設けて、前記免震装置としての積層ゴムの上下のフランジプレートのいずれか一方を前記ベースプレートを介してもしくは該ベースプレートを介さずに前記上部基礎または前記下部基礎に対して相対変位不能に固定するとともに、該上下のフランジプレートのいずれか他方を前記ベースプレートに対して密着させた状態で該積層ゴムを上部基礎と下部基礎との間に配置するか、もしくは、上部構造における上部基礎の底面と下部構造における下部基礎の上面の双方にそれぞれベースプレートを設けて、前記免震装置としての積層ゴムの上下のフランジプレートの双方をそれぞれ前記ベースプレートに対して密着させた状態で該積層ゴムを上部基礎と下部基礎との間に配置し、前記ベースプレートに対して密着させた上下のフランジプレートのいずれか一方もしくは双方の周囲に、該フランジプレートの端面に対向配置されて前記ベースプレートに固定されることにより、該ベースプレートに対する前記フランジプレートの水平方向の相対変位を規制するブロックを設け、該ブロックと前記フランジプレートの端面との間に、前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの上下方向の相対回転を許容するための必要最小限のクリアランスを確保することによって、前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの上下方向の相対変位を許容し、かつ前記クリアランスの範囲内において前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの水平方向の相対変位を許容してなることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の免震装置の設置構造であって、前記フランジプレートまたは前記ブロックに対して緩衝材を固定することにより、該緩衝材を前記フランジプレートと前記ブロックとの間に介装するとともに、該緩衝材と前記ブロックまたは前記フランジプレートとの間に前記クリアランスを確保してなることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の免震装置の設置構造であって、前記緩衝材は、少なくとも上下方向に弾性変形可能な積層ゴムからなることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の免震装置の設置構造であって、前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの上下方向の相対変位を予め設定した許容限度内に規制する係止機構を設けてなることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の免震装置の設置構造であって、前記係止機構は、前記フランジプレートを緩挿して前記ベースプレートに植設されたストッパーボルトからなることを特徴とする。
本発明によれば、ベースプレートに対するフランジプレートの上下方向の相対変位はブロックによっては拘束されることがなく、したがって地震時における積層ゴムの浮き上がりは支障なく許容されることはもとより、クリアランスを超える水平変位は自ずと拘束されるからそれ以降は積層ゴムが通常のように作動して通常どうりの免震効果を発揮し、したがって積層ゴム本来の免震機能を損なうことなくその浮き上がりを確実に保証し得て積層ゴムに過大な引張応力が生じることを防止することができる。
また、ブロックをフランジプレートに対して押圧する必要がないので、ブロックをベースプレートに対して固定するための構造を簡略化できるし、それらの間にシアキーを設けることも可能であるのでせん断力伝達機能を確保するうえでも有利である。
本発明の実施形態である積層ゴムの設置構造を示す側断面図である。 同、平断面図である。 同、部分拡大側断面図である。 同、地震時の挙動を模式的に示す図である。
本発明の一実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態は、図1〜図2に示すように、免震装置としての積層ゴム1を下部基礎2と上部基礎3との間に設置するものであって、通常のように下部基礎2の上面に下部ベースプレート4を固定するとともに上部基礎3の底面に上部ベースプレート5を固定し、それらの間に積層ゴム1を設置することを基本とするものである。
なお、図示例の積層ゴム1は平面視正方形状であるが円形であっても勿論良い。また図示例の積層ゴム1における符号6は鉛プラグであるが、これの要否は任意である。
本実施形態では、基本的には特許文献1に示される構造と同様に、積層ゴム1の上部フランジプレート7を上部ベースプレート5に対して高力ボルト8により締結して固定するが、積層ゴム1の下部フランジプレート9は下部ベースプレート4に対しては固定することなく単に下部ベースプレート4上に載置するに留めて、地震時には積層ゴム1の全体が上部構造とともに下部ベースプレート4上に浮き上がることを許容して過大な引張応力が生じることを防止するものである。
なお、本実施形態においては上部ベースプレート5は必ずしも設けることはなく、上部ベースプレート5を省略して高力ボルト8を上部基礎3に対して定着することにより、上部フランジプレート7を上部基礎3に対して直接的に固定することも可能である。
但し、特許文献1に示される構造では下部フランジプレート9の水平変位を完全に拘束するために下部フランジプレート9に対してブロックを押圧するようにしており、そのために積層ゴム1の浮き上がりを必ずしも保証できないことから、本実施形態では下部フランジプレート9の水平変位を適切に規制することによって、積層ゴム1本来の免震機能を損なうことなくその浮き上がりを確実に保証するようにしたものである。
すなわち、本実施形態では、正方形状とされている下部フランジプレート9の各辺の周囲に、その下部フランジプレート9の水平変位を規制するための矩形断面のブロック10が配置されて高力ボルト11により下部ベースプレート4に対して固定されているが、図3に示すようにそのブロック10と下部フランジプレート9との間には緩衝材12を介装するとともに若干のクリアランス13を確保しており、そのクリアランス13の範囲内で下部ベースプレート4に対する下部フランジプレート9の水平変位を許容するようにしている。
より具体的には、本実施形態では、上記クリアランス13を適切に確保するために、必要に応じてブロック10の端面に調整プレート14を取付ボルト15により固定し、その調整プレート14に対してステンレスプレート16を取付ネジ17により固定している。
また、上記の緩衝材12として、天然ゴム12aと鋼板12bとを積層して上下方向に柔軟にせん断変形可能な積層ゴムを用いるとともに、その表面に滑り材18を取り付け、この緩衝材12を取付ネジ19により下部フランジプレート9の端面に固定している。
そして、緩衝材12の表面の滑り材18とブロック10の表面のステンレスプレート16との間に上記のクリアランス13を確保するものとしている。
図4に示すように、上記のクリアランス13の寸法dは、下部フランジプレート9の寸法や形状を考慮して、地震時に生じることが想定される下部フランジプレート9の上下方向の回転(図4(b)参照)を拘束しない範囲で必要最小限とする。換言すれば、そのような回転が生じるまでは緩衝材12がブロック10に接触しない範囲で必要最小限となるように設定すれば良い。
勿論、そのような適切なクリアランス13の寸法dは、下部フランジプレート9と緩衝材12の寸法および想定される回転角等の条件が決定されれば幾何学的に簡易に求めることができる。
たとえば下部フランジプレート9の長さ(回転時の半径に相当する)が1250mm、厚さが70mmの場合にはクリアランス13の寸法dは0.9mm程度とすれば良い。
また、緩衝材12は水平方向(圧縮方向)に弾性変形するものであっても良く、その場合は当該弾性変形量を考慮しクリアランス13の寸法を幾何学的な計算値よりも小さくでき、適切な前記弾性変形量を確保することにより下部ベースプレート4と下部フランジプレート9の相対回転、相対変位を許容できる。
なお、上記のように設定したクリアランス13を厳密に確保するためには、下部フランジプレート9の位置や寸法に応じてブロック10の固定位置を下部フランジプレート9に対して離接する方向に微調整することによって行うことができるが、それに加えて、あるいはそれに代えて、ブロック10に取り付ける調整プレート14をスペーサーとしてその厚みを増減することが現実的である。
このように下部フランジプレート9とその周囲に固定されるブロック10との間に適切なクリアランス13を確保することにより、下部フランジプレート9の上下方向の相対変位はブロック10によっては拘束されることがなく、したがって地震時における積層ゴム1の浮き上がりは支障なく保証される。
すなわち、図4(a)に示す通常時の状態から下部フランジプレート9はそのまま直上に浮き上がることが可能であることはもとより、(b)に示すように下部フランジプレート9が上下方向に回転した際にも緩衝材12がブロック10に対して当接するまでは浮き上がりが許容される。また、(c)に示すように水平方向と上下方向の相対変位が同時に生じた場合には、緩衝材12があるために滑り材18がブロック10に対して密着して緩衝材12がブロック10に押圧された状態で上方に滑るか上下方向に変形し、いずれにしても下部フランジプレート9の浮き上がりは許容される。
勿論、緩衝材12がブロック10に当接してしまえば下部フランジプレート9のそれ以上の水平変位は自ずと拘束されるから、それ以降は積層ゴム1が通常のように作動して水平方向にせん断変形し、通常どうりの免震効果を発揮する。
なお、緩衝材12がブロック10に当接するまでは積層ゴム1が有効に作動しないことにはなるが、クリアランス13はごく小さいものであるし、下部フランジプレート9が水平変位する間は下部ベースプレート4との間の摩擦抵抗による滑り支承としても機能するから、免震効果に対する影響は実質的に無視し得る。
以上のように、本実施形態によれば、積層ゴム1の下部フランジプレート9の周囲に水平変位を規制するためのブロック10を固定してそれらの間に適切なクリアランス13を確保し、下部フランジプレート9の水平変位をクリアランス13の範囲で許容したうえでそれ以上の水平変位を拘束するように規制することにより、積層ゴム1本来の免震機構を損なうことなくその浮き上がりを確実に保証することができ、地震時の挙動は明確であるし挙動解析のためのモデル化も容易であり、積層ゴム1に対する引抜力対策として合理的であり有効であり、構造的な信頼性を充分に確保し得るものである。
また、ブロック10と下部フランジプレート9との間にクリアランス13を確保することから、特許文献1に示される構造のようにブロック10を下部フランジプレート9に対して押圧する必要はなく、したがってブロック10を下部ベースプレート4に対して固定するための構造を簡略化できるという利点がある。
すなわち、上述したように特許文献1に示される構造ではブロック10を下部フランジプレート9に対して押圧することからその固定位置を下部フランジプレート9の寸法や位置に応じて微調整する必要があり、そのためブロック10と下部ベースプレート4との間にシアキーを設けることはできず、その結果、ブロック10を固定するための高力ボルト11にせん断力伝達機能を持たせる必要があってその所要本数が多数になる。
それに対し、本実施形態ではブロック10を下部フランジプレート9に対して押圧する必要はないから、ブロック10の位置を予め厳密に設定してそこにシアキー20(図1および図2参照)を設けることができ、したがって高力ボルト11の所要本数を削減することが可能である。一例を挙げれば、従来においては20本の高力ボルト11が必要であったブロック10の場合、シアキー20を設けることでその所要本数を12本程度まで削減することが可能である。
同様の理由により、下部ベースプレート4を下部基礎2に固定する際にその下部ベースプレート4に対して予めブロック10を固定しておくこともできるし、従来のように下部ベースプレート4を下部基礎2よりも大きくしておく必要はなく、下部基礎2の形状や寸法も通常の積層ゴムを設置する場合と同等とすることができるから、この点においても施工性を改善できる利点がある。
以上で本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば以下に列挙するような様々な設計的変更や応用が可能である。
上記実施形態では、下部フランジプレート9に緩衝材12を取り付けてその緩衝材12とブロック10との間にクリアランス13を設けたが、緩衝材12は必ずしも設けることはなく、要は下部フランジプレート9の周囲にその浮き上がりを許容するためのクリアランス13を確保すれば良いのであって、その限りにおいて緩衝材12を省略して下部フランジプレート9の端面とブロック10との間に適切なクリアランス13を確保し、下部フランジプレート9が水平変位した際にはその端面をブロック10に対して直接的に当接させてそれ以上の水平変位を規制することでも良い。
また、緩衝材12を設ける場合においても、上記実施形態のようにその緩衝材12として積層ゴムを用いることに限らず、たとえば単なるソリッドなゴム材を用いる等、適宜の緩衝材が採用可能である。
さらに、上記実施形態では緩衝材12を下部フランジプレート9に対して固定したが、逆にブロック10に対して固定してその緩衝材12と下部フランジプレート9の端面との間にクリアランス13を確保するようにしても良い。
勿論、上記実施形態においてブロック10に取り付けた調整プレート14やステンレスプレート16、緩衝材12の表面に取り付けた滑り材18、その他細部の具体的な構成については、それら調整プレート14やステンレスプレート16、滑り材18の一部あるいは全てを省略することも含めて、適宜の変更が可能である。
但し、緩衝材12の表面(緩衝材12を省略する場合には下部フランジプレート9の端面)や、ブロック10の表面に取り付けたステンレスプレート16の表面(ステンレスプレート16を省略する場合には調整プレート14の表面、さらに調整プレート14を省略する場合にはブロック10の表面)は、それらが接触した状態においても浮き上がりを阻害しないように充分な平滑面としておくことが好ましい。
本発明においては下部フランジプレート9の水平変位を規制するためのブロック10の高さ寸法を地震時に想定される下部フランジプレート9の浮き上がり量よりも大きく設定しておけば、浮き上がりが生じた際にも下部フランジプレート9がブロック10を超えて水平変位を生じるようなことを防止できるから、下部フランジプレート9の浮き上がりを特に規制する必要はないが、必要であれば過大な浮き上がりが生じた際には下部フランジプレート9を係止して浮き上がりを許容限度内に規制するようにしても良く、そのための係止機構としてたとえば特許文献1に示されるようにブロック10の上部に適宜のストッパ部材を内側に突出させた状態で設けることも考えられる。
但し、その場合はブロック10が大型化するし、ブロック10に対する複雑な加工も必要となるので、それよりもブロック10としては必要最小限の断面の単なる矩形断面の棒状の部材としておいて、図1〜図3に示すようなストッパーボルト21を係止機構として設けて、それにより下部フランジプレート9を係止して過大な浮き上がりを規制することが好ましい。
すなわち、下部フランジプレート9の四隅部に形成したボルト孔22にストッパーボルト21を緩挿して下部ベースプレート4に植設することにより、過大な浮き上がりが生じた際には下部フランジプレート9がストッパーボルト21の頭部により係止されてそれ以上の浮き上がりが制限されるようにしておくと良い。
この場合、ストッパーボルト21を緩挿するボルト孔22の径を充分に大きくしてそれらの間のクリアランスを下部フランジプレート9とブロック10との間に確保する上記のクリアランス13よりも大きくしておくことにより、下部フランジプレート9が水平変位した際にもボルト孔22の内面がストッパーボルト21に接触することはなく、下部フランジプレート9の浮き上がりを阻害することはない。
また、必要に応じて下部フランジプレート9上に所望枚数のワッシャ23をスペーサとして装着することにより、制限するべき浮き上がり量を適正に設定することができる。
更に加えて、前記ワッシャ23をスプリングワッシャ、皿ばね又はゴム材料など浮き上がり方向の変形を許容する部材を用い、ストッパーボルト21に働く衝撃力を低減し、片当たりを防止することができる。
上記実施形態では、積層ゴム1の上部フランジプレート7を上部ベースプレート5を介して上部基礎3に対して固定したうえで、あるいは上部ベースプレート5を省略して上部フランジプレート7を上部基礎3に対して直接的に固定したうえで、積層ゴム1の下部フランジプレート9を下部ベースプレート4上に浮き上がり可能に載置してその水平変位をブロック10により規制するようにしたが、全体の天地を逆にしても良い。
すなわち、下部フランジプレート9を下部ベースプレート4を介して下部基礎2に対して固定したうえで、あるいは下部ベースプレート4を省略して下部フランジプレート9を下部基礎2に対して直接的に固定したうえで、上部フランジプレート7を上部ベースプレート5に対して単に密着せしめるとともに、その周囲にブロック10を配置して上部ベースプレート5に対して固定し、それらの間にクリアランス13を確保すれば、上部フランジプレート7に対する上部基礎3の浮き上がりが支障なく許容されるので、上記実施形態と同様に機能するものとなり同様の効果が得られる。
さらには、上記のように積層ゴム1の上部を上部基礎3に対して固定して下部基礎2に対する積層ゴム1の浮き上がりを許容するか、あるいは積層ゴム1の下部を下部基礎2に対して固定して積層ゴム1に対する上部基礎3の浮き上がりを許容することが現実的ではあるが、本発明では積層ゴムの上下をいずれも固定せずとも実質的に同様の効果が得られる。
すなわち、上部フランジプレート7および下部フランジプレート9の双方をいずれも上部基礎3および下部基礎2に対して固定することなく、上部フランジプレート7および下部フランジプレート9の双方をそれぞれ上部ベースプレート5および下部ベースプレート4に対して単に密着させた状態でそれらの間に積層ゴム1を配置し、上部フランジプレート7および下部フランジプレート9の双方の周囲にそれぞれクリアランス13を確保した状態でそれぞれブロック10を固定することによっても、積層ゴム1によって上部構造を支障なく免震支持しつつ積層ゴム1に対して引き抜き荷重が作用することを防止でき、必要であれば下部基礎2に対する上部基礎3の過大な浮き上がりを規制するために上記実施形態におけるストッパーボルト21のような適宜の係止機構を積層ゴム1の上下に対してそれぞれ設ければ良く、それにより上記実施形態と同様の効果が得られるから、本発明においてはそのように構成することを妨げるものではない。
さらになお、積層ゴム1が円形である場合には上下のフランジプレートも円形とされる場合もあるが、上記のように下部フランジプレート9(あるいは上部フランジプレート7)の水平変位をブロック10により規制するように構成する場合には、そのフランジプレートは正方形としてその各辺に対向配置するブロック10を単なる矩形断面の直棒状とすることが現実的である。しかし、フランジプレートが円形である場合には、ブロック10を環状としてフランジプレートの周囲にクリアランス13を確保して同軸状に固定することでも同様の効果が得られる。
1 積層ゴム(免震装置)
2 下部基礎
3 上部基礎
4 下部ベースプレート
5 上部ベースプレート
6 鉛プラグ
7 上部フランジプレート
8 高力ボルト
9 下部フランジプレート
10 ブロック
11 高力ボルト
12 緩衝材(積層ゴム)
12a 天然ゴム
12b 鋼板
13 クリアランス
14 調整プレート
15 取付ボルト
16 ステンレスプレート
17 取付ネジ
18 滑り材
19 取付ネジ
20 シアキー
21 ストッパーボルト(係止機構)
22 ボルト孔
23 ワッシャ

Claims (5)

  1. 上部構造を免震装置としての積層ゴムによって下部構造に対して水平方向に相対変位可能に免震支持する免震構造建物に適用する免震装置の設置構造であって、
    上部構造における上部基礎の底面と下部構造における下部基礎の上面のいずれか一方もしくは双方にベースプレートを設けて、前記免震装置としての積層ゴムの上下のフランジプレートのいずれか一方を前記ベースプレートを介してもしくは該ベースプレートを介さずに前記上部基礎または前記下部基礎に対して相対変位不能に固定するとともに、該上下のフランジプレートのいずれか他方を前記ベースプレートに対して密着させた状態で該積層ゴムを上部基礎と下部基礎との間に配置するか、
    もしくは、上部構造における上部基礎の底面と下部構造における下部基礎の上面の双方にそれぞれベースプレートを設けて、前記免震装置としての積層ゴムの上下のフランジプレートの双方をそれぞれ前記ベースプレートに対して密着させた状態で該積層ゴムを上部基礎と下部基礎との間に配置し、
    前記ベースプレートに対して密着させた上下のフランジプレートのいずれか一方もしくは双方の周囲に、該フランジプレートの端面に対向配置されて前記ベースプレートに固定されることにより、該ベースプレートに対する前記フランジプレートの水平方向の相対変位を規制するブロックを設け、
    該ブロックと前記フランジプレートの端面との間に、前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの上下方向の相対回転を許容するための必要最小限のクリアランスを確保することによって、前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの上下方向の相対変位を許容し、かつ前記クリアランスの範囲内において前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの水平方向の相対変位を許容してなることを特徴とする免震装置の設置構造。
  2. 請求項1記載の免震装置の設置構造であって、
    前記フランジプレートまたは前記ブロックに対して緩衝材を固定することにより、該緩衝材を前記フランジプレートと前記ブロックとの間に介装するとともに、該緩衝材と前記ブロックまたは前記フランジプレートとの間に前記クリアランスを確保してなることを特徴とする免震装置の設置構造。
  3. 請求項2記載の免震装置の設置構造であって、
    前記緩衝材は、少なくとも上下方向に弾性変形可能な積層ゴムからなることを特徴とする免震装置の設置構造。
  4. 請求項1、2または3記載の免震装置の設置構造であって、
    前記ベースプレートに対する前記フランジプレートの上下方向の相対変位を予め設定した許容限度内に規制する係止機構を設けてなることを特徴とする免震装置の設置構造。
  5. 請求項4記載の免震装置の設置構造であって、
    前記係止機構は、前記フランジプレートを緩挿して前記ベースプレートに植設されたストッパーボルトからなることを特徴とする免震装置の設置構造。
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