以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成方法及び三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を例示するものであって、本発明は三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成方法及び三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本発明の実施例において使用される三次元造形装置とこれに接続される操作、制御、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232xやRS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的、あるいは磁気的、光学的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。なお本明細書において三次元造形装置とは、三次元造形装置本体のみならず、これにコンピュータ、外部記憶装置等の周辺機器を組み合わせた三次元造形システムも含む意味で使用する。
また、本明細書において三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形プログラムは、三次元造形を行うシステムそのもの、ならびに画像生成に関連する入出力、表示、演算、通信その他の処理をハードウエア的に行う装置や方法に限定するものではない。ソフトウエア的に処理を実現する装置や方法も本発明の範囲内に包含する。例えば汎用の回路やコンピュータにソフトウエアやプログラム、プラグイン、オブジェクト、ライブラリ、アプレット、コンパイラ、モジュール、特定のプログラム上で動作するマクロ等を組み込んで画像生成そのものあるいはこれに関連する処理を可能とした装置やシステムも、本発明の三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体に該当する。また本明細書においてコンピュータには、汎用あるいは専用の電子計算機の他、ワークステーション、端末、携帯型電子機器、PDCやCDMA、W−CDMA、FOMA(登録商標)、GSM、IMT2000や第4世代等の携帯電話、PHS、PDA、ページャ、スマートフォンその他の電子デバイスも包含する。さらに本明細書においてプログラムとは、単体で使用されるものに限られず、特定のコンピュータプログラムやソフトウエア、サービス等の一部として機能する態様や、必要時に呼び出されて機能する態様、OS等の環境においてサービスとして提供される態様、環境に常駐して動作する態様、バックグラウンドで動作する態様やその他の支援プログラムという位置付けで使用することもできる。
(実施例1)
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。ただ、本発明は三次元造形装置をインクジェット方式に特定するものでなく、他の方式、例えば粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等の積層造形法を用いた三次元造形装置に対しても利用できる。この三次元造形システム100は、造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることにより造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。
コンピュータPCは、三次元形状の造形物、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材にて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。
(スライス)
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が未硬化の状態にて、少なくとも往路又は復路にてその未硬化の造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
また、造形物が張り出した、いわゆるオーバーハング形状の場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形データに対応した造形物の生成を行う。
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20を一方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
この制御手段10は、一回の往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を未硬化の状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
(造形材)
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。図4に、球状のモデル材MAの周囲を直方体状のサポート材SAで覆うようにして造形された造形物の斜視図を、図5にこの断面図を、それぞれ示す。
(硬化手段24)
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材も紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
またモデル材として、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
サポート材SAは、除去可能な材料として、水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
サポート材は、最終的に除去されるため、除去しやすいような特性が求められる。例えば水溶性のサポート材は、造形物が造形された後、水槽に投入することでサポート材を溶融させて除去することができる。一方で、サポート材の可溶性を高めるほど、サポート材の強度が低下し、湿度が高いと潮解し、型崩れしたり垂れる等が起こりやすくなる。サポート材の剛性が不十分になると、モデル材を支持する能力が低下し、サポート材の上面にモデル材を造形することが難しくなり、モデル材の精度が低下するおそれもある。その一方でサポート材の剛性を高めると、最終造形物からサポート材を除去する際に、水に溶出し難くなり、除去に時間がかかる。このようにサポート材には相反する特性が求められる結果、最適な特性を備えるサポート材を得ることが従来は困難であった。
そこで本実施例のように、サポート材として例えば、水溶性の材料を用いる場合は、サポート材SAの外殻としてサポート殻SSを形成することにより、造形装置におけるモデルの造形中にサポート材が直接空気に触れることを極力抑制でき、その結果サポート材が空気中の水分を吸収することが抑制できることにより、造形時における、サポート材の変形やサポート材の変形によるモデル材の変形を防止できる。さらに、サポート殻SSの形成により、内部のサポート材が空気中の水分を吸収することを抑制できるため、サポート材の水溶性としての性能を高めることができ、その結果、サポート材除去時に水等の溶液中に浸した場合のサポート材の溶出速度を高めることができる。この構成であれば、十分な剛性を備えつつ、除去の際には最外殻のサポート材SAを破ることで溶出を早め、サポート材の除去を短時間で行える利点が得られる。図4、図5の例では、直方体状の表面に被覆されたサポート殻SSを破断して、内部のサポート材SAを除去する。
(サポート材SAの詳細)
サポート材SAには非硬化性成分が含まれる。特に、可溶性を高めることで、水槽中に投入して短時間でサポート材を溶出させ、除去できる。サポート材の可溶性は、水溶性に限らず、特定の溶媒に対する可溶性としてもよい。一方でこのようなサポート材は液状又はゲル状となるため、手で触るとべとつきやぬめりがあり、汚れやすくなる。そこで、上述の通りサポート材の表面にサポート殻SSを設けて保護している。
(サポート殻SS)
サポート材SAの外表面に設けられるサポート殻SSは、サポート材SAよりも剛性の高いモデル材MAで構成されている。このようにしてサポート材SAの表面の剛性を高め、サポート材SAの流出を阻止できる。本実施例ではサポート殻SSをモデル材吐出用ノズル21から吐出されるモデル材MAにより構成しているため、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21をサポート殻SSの吐出ノズルとして共用化でき、モデル材MAの造形時にサポート材SAのサポート殻SSも合わせて造形できるので、コスト面、スピード面でも有利となる。具体的には、少なくともモデル材MAとサポート材SAにて三次元の造形データを生成する時点において、その造形データにおいて、サポート材にて造形データの外表面が形成される位置に対して、自動的にその外表面に位置するサポート材を、モデル材に変更するか、又はサポート材のその外表面を覆うようにモデル材から形成される薄膜の層を形成するようにデータを生成する。そして、この生成されたデータに対応する各スライスの形成時にサポート材SAの外表面でサポート殻SSが形成される位置に、モデル材MAを吐出して硬化させ、サポート材SAの外表面が薄いモデル材MAで覆われるように、制御手段10が造形材吐出手段を制御する。これにより、サポート材SAの表面に薄いモデル材MAを形成することで、サポート殻SSを容易に形成できる利点が得られる。なお、このモデル材にて形成される薄膜の厚みは、除去のし易さと強度の確保のバランスという観点から考えると、その厚みは0.1mm〜5mm程度が好ましいと考える。さらに、本実施例ではサポート殻SSをモデル材吐出用ノズル21から吐出されるモデル材MAにより構成したが、サポート殻として適切な特性を有する材料であれば、モデル材MAとは異なる材料を吐出するノズルを別途設けてサポート殻を構成するようにしてもよい。この際、このサポート殻用の材料の特性としては、除去のし易さと強度の確保をより高い次元でバランスさせるという観点から、モデル材MAよりも硬度があり、且つ靭性が低い材料であることが好ましい。
(サポート殻SSの剥離構造)
一方で、サポート材SAにサポート殻SSを設ける構成では、サポート殻SSの剛性が高い程、造形材からサポート殻SSを剥離し難くなる。そこで、サポート殻SSを剥離しやすくする構造を付加することが好ましい。具体的には、サポート材SAの表面をすべてサポート殻SSで覆うのでなく、部分的にサポート材SAを露出させた露出部を設ける。このようにすることで、造形物の造形後に露出部でサポート殻SSを破断し易くなる。またサポート材SAを可溶性とした場合は、造形物の造形後に液中に含浸して露出部からサポート材SAを溶出させることができ、サポート殻SSを破断させることなく造形物から剥離でき、サポート材SAの除去作業を省力化できる利点が得られる。または、サポート殻SSを成形しなければならない連続する外表面の外周部のみを、サポート殻SSが形成される他の外表面に比較して、厚みのある形状とすることにより、サポート殻SSが成形される連続する外表面を一体的に剥ぎ取りやすくすることも可能である。
(ヘッド部20)
図6に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23を設けており、これらのノズル列23は、図7の平面図に示すように半ノズル分ずらして配置することで、分解能を向上させている。またオフセット状態に配置された各ノズル列23は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とで、それぞれ同一ライン上に一致するように配置することで、モデル材とサポート材の分解能を一致させている。
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が一体的に設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
図6の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)ではこれを硬化手段24で硬化させている。
(ローラ部25)
ヘッド部20はさらに、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を未硬化の状態で押圧し、造形材の余剰分を除去することにより、造形材表面を平滑化するためのローラ部25を設けている。このようなローラ部25の動作の様子を、図8の模式図に基づいて説明する。この例では、吐出されたモデル材MAの表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図8において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度、回転速度を10回転/s程度としている。
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えば、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
図1、図6に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に未硬化の造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
(三次元造形装置用の設定データ作成装置)
次に、このような三次元造形装置に造形物のデータを指示する設定データ作成装置について、図9のブロック図に基づいて説明する。この図に示す三次元造形装置用の設定データ作成装置1は、CADデータ等の三次元データを取得するための入力手段61と、取得された三次元データを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換した三次元データにて規定される造形物を示すオブジェクトを三次元的に表示するための表示手段62と、造形パラメータを設定するためのパラメータ設定手段63と、設定された造形パラメータに従ってオブジェクトの最適な姿勢と配置位置を演算する演算手段64と、演算手段64で演算された最適姿勢及び最適位置をユーザが微調整したり、あるいは所望の位置、姿勢を手動で調整するための調整手段65と、決定された姿勢及び位置に従って三次元造形装置を駆動する設定データを、三次元造形装置が読み込めるデータ形式に変換して、三次元造形装置側に出力するための出力手段66とを備える。
また上述の通り、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に対して、三次元状の造形物の設定データを送出する設定データ作成装置を説明するが、この設定データ作成装置は、利用する三次元造形装置をインクジェット方式に特定するものでなく、他の方式、例えば粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等の積層造形法を用いた三次元造形装置に対しても利用できる。
インクジェット法は、上述の通り、液化した材料を噴射した後、少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光、例えば紫外光(UV)を照射したり、冷却する等によって層を硬化させて形成する。この方法によれば、インクジェットプリンタの原理を応用できることから、高精細化が容易となる利点が得られる。
樹脂積層方式の三次元造形装置は、上述の通り最終的な造形物となるモデル材MAと、モデル材MAの張り出し(オーバーハング)部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAの2種類の造形材を、XY方向に走査しながら造形プレート40上に吐出し、高さ方向に積層していくことにより、造形を行う。造形材であるモデル材MAとサポート材SAは、紫外光を照射することにより硬化する特性を有する樹脂で構成されている。造形材を硬化させる硬化手段24として、紫外光を照射する紫外光ランプを、モデル材MAとサポート材SAを吐出するノズルと共に、XY方向に走査し、ノズルから吐出されたモデル材MA及びサポート材SAに紫外光を照射して硬化させる。
この設定データ作成装置は、専用のハードウエアで構成する他、汎用又は専用のコンピュータで実行される設定データ作成プログラムによっても実現される。ここでは市販のパーソナルコンピュータに設定データ作成プログラムをインストールして設定データ作成装置とする例を、図10〜図14のユーザインターフェース画面に基づいて説明する。図10は、設定データ作成プログラムの起動後の画面イメージである。この図においては、左側に表示手段62を構成するためのオブジェクトの表示欄68を設け、一方右側には調整手段65やパラメータ設定手段63を構成する、各種操作を行うための操作欄70を、それぞれ配置している。
(表示欄68)
表示欄68においては、仮想的に造形プレート40上にオブジェクトを配置した状態を表示させることができる。造形プレート40上には、三次元造形を行う造形領域MRが箱状に表示されている。造形領域MRは造形プレート40上において造形可能な領域であり、この範囲内にオブジェクトを配置して、実際の三次元造形を行うための設定データを作成する。オブジェクトは三次元的に表示されており、視点を任意の位置に変更できる。また表示欄68の右上には、簡便に視点を切り替えるための視点変更アイコン69が設けられている。視点変更アイコン69は造形プレート40を情報から見た平面図を示しており、周囲には8個のカメラ状アイコンが設けられている。つまり、XY平面における任意の中心、実施例では造形プレートの仮想の中心点を指向した360度の視野の中で45度間隔に設けられた、これらのカメラ状アイコンの中の一つをクリックすると、選択されたカメラ位置から造形プレートの仮想の中心点に指向した、平面図に対する該当する方向からの視点に変更できる。また二次元表示に切り替えることも可能である。もちろん、特定のカメラ位置を選択した後、又は直接カメラの選択を行わずに、画面上に表示されるカーソルをドラッグして視野方向の微調整又は調整をユーザが行うこともできる。
(操作欄70)
操作欄70には、コンピュータに接続されたマウスやキーボードの入力デバイスで各種操作を行うためのボタン類が配置される。なおオブジェクトの移動等を行う調整手段65の一形態として、操作欄70による操作の他、上述した表示欄68においてマウス操作等によりオブジェクトの移動等を行う操作も、調整手段に含まれる。
(オブジェクト一覧71)
操作欄70の上段には、オブジェクトの一覧を表示するオブジェクト一覧71が設けられる。この欄には、現在表示欄68で表示されているオブジェクトがすべて表示され、オブジェクトの名称や表面仕上げの有無等の情報が表示される。また複数のオブジェクトを選択する等の操作もここで行える。
(オブジェクト生成欄72)
また中段には、オブジェクトを生成するためのオブジェクト生成欄72が設けられ、オブジェクトの入力や削除等の操作を行うためのボタン類が配置される。このボタン類は入力手段61を構成し、具体的には、左から、オブジェクトのデータ入力を行う「読み込み」ボタン73、オブジェクトのコピーを行う「コピー」ボタン74、選択したオブジェクトの削除を行う「削除」ボタン75が設けられる。
(手動操作欄76)
さらにオブジェクト生成欄72の下には、選択されたオブジェクトに関する情報の表示や詳細設定を行う手動操作欄76が設けられる。ここでは、オブジェクトの位置や回転角度、サイズや拡大/縮小倍率等を調整できる。調整は、数値を直接入力したり、増減ボタンで増減させたり、あるいはマウス等で連続的に変化させる等の操作によって行える。また拡大/縮小時に縦横等のサイズの比率を保持したり、あるいは表面仕上げを選択する等の操作も行える。
(自動操作欄78)
さらに手動操作欄76の下段には、自動設定を行うための自動操作欄78が設けられる。ここでは、オブジェクトの最適姿勢を自動演算する最適姿勢決定機能を実行するための「最適姿勢」ボタン80、オブジェクトの最適位置を自動演算する最適位置決定機能を実行するための「最適配置」ボタン81、及び造形時間を演算するための「見積」ボタン82が設けられている。「見積」ボタン83を押下すると、現在の設定に従って予測される造形時間が演算され、予測造形時間表示欄に表示される。また「最適姿勢」ボタン80の下部には、造形パラメータを指定するためのパラメータ設定手段63として、造形時間最小か、造形材の使用量最小のいずれかを選択するためのラジオボタン63Aが設けられている。なお、上述したように、パラメータ設定手段63として、造形時間最小か、造形材の使用量最小のいずれかを選択する機能に加えて、またはこれに代えて、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。また、言うまでもなく、ユーザがパラメータ設定手段63として、造形時間最小か、造形材の使用量最小のいずれかを選択し、「見積」ボタン83を押下すると、現在の設定に従って予測される造形時間が演算される。
(出力手段66)
さらに操作欄70の右下には、出力手段66として、三次元造形を実行するための「プリント」ボタン84が配置される。「プリント」ボタン84を押下すると、出力手段66から三次元造形装置に例えば、変換されたSTLデータの各スライスデータである設定データが一括又は各スライスデータ単位で出力され、三次元造形装置に対してプリント命令が指示されて、三次元造形が開始される。
(入力手段61)
入力手段61は、造形物の形状を予め3次元CAD等で作成した三次元データを取り込むための手段である。三次元データとしては、規格化された汎用又は専用のデータフォーマットに従って作成されたものが利用でき、例えばSTL、STEP、IGES、Parasolid、ACIS、HSF、NGRAIN、OBJ、DXF、VRML、XVL、HTML等が利用できる。図10の例では、入力手段61の例としてオブジェクト生成欄72の「読み込み」ボタン73を押下すると、図11に示す「ファイルを開く」ダイヤログ画面85が開く。この画面から、ユーザは三次元データとして所望のSTLファイルを選択する。また画面右には、現在選択中の三次元データの内容がプレビュー表示され、ユーザによるデータファイルの選択作業を容易にしている。
入力手段61で三次元データが選択されると、選択された三次元データで規定されるオブジェクトが、例えば、STLデータに変換後、図10の表示欄68に表示される。この様子を図12に示す。図12の画面から、ユーザは調整手段65を用いてオブジェクトOB1を選択し、任意の位置に移動させたり、あるいは傾斜や回転等、任意の姿勢に変更できる。図13に、オブジェクトOB1を回転、傾斜させて移動させた例を示す。なお、本明細書においてオブジェクトの移動には回転、傾斜を含む意味で使用する。
図12、図13の例ではオブジェクトOB1を1個のみ表示させているが、複数の三次元データを入力手段61から取り込み、任意の位置に配置することができる。また、入力された一のオブジェクトをコピーすることで、複数のオブジェクトを造形プレート40上に配置することもできる。さらに、任意のオブジェクトを削除することも可能である。これらの操作は、上述したオブジェクト生成欄72にて、「コピー」ボタン74、「削除」ボタン75を操作して行う。
ユーザは任意、又は上述した造形パラメータを指定するためのパラメータ設定手段63として、造形時間最小か、造形材の使用量最小のいずれかを選択し、「最適姿勢」ボタン80を押下することで、調整手段65でオブジェクトOB1の位置と姿勢を決定した後、操作欄70の「プリント」ボタン84を押下すると、出力手段66から三次元造形装置に設定データが出力される。具体的には、図14に示すようなプリントデータ作成ダイヤログ86が表示され、三次元プリンタである三次元造形装置が読み込める形式の設定データが生成されて、三次元造形装置に転送される。以上のようにして、ユーザは設定データ作成装置を用いて設定データを作成し、三次元造形装置に対して造形を命令できる。
(パラメータ設定手段63)
一方で、図9に示す設定データ作成装置はパラメータ設定手段63と演算手段64を備えている。パラメータ設定手段63で設定された一般最適化条件に従って、演算手段64がオブジェクトの最適姿勢と最適位置を演算する。
(造形パラメータ)
三次元造形に際しては、必要なモデル材MAの量は、オブジェクトの姿勢や位置によらず不変であるものの、これを支持するサポート材SAの量は、モデル材MAの姿勢や配置状態に応じて変化する。よって使用するサポート材の量が少ない程、高価なサポート材の消費量を抑えて効率よく造形できるといえる。
一方で、三次元造形装置においては一般に造形時間が比較的長いという問題がある。例えばインクジェット方式の三次元造形装置においては、造形材としてモデル材MAとサポート材SAを使用し、造形プレート40上にヘッド部20を往復させながらこれらの造形材を吐出して一層分のスライスを成形する。このスライスを下層から順次積層して所望の高さの造形物を得る構成のため、造形物の高さが高くなる程スライス数が多くなり、その分だけ造形時間がかかる。このため、造形プレート40上に配置される造形物の高さを低くすることが重要となる。
(パラメータ設定手段63)
以上のように、造形時間の最小と造形材の使用量の最小の、いずれを優先するかで、オブジェクトの最適な姿勢や位置は変化する。いいかえると、これらは三次元造形の条件を規定する造形パラメータということができる。よってユーザは、造形パラメータのいずれを優先して三次元造形を行うか、その優先度をパラメータ設定手段63で指定する。このためパラメータ設定手段63は、複数の造形パラメータの内、いずれを優先して最小化するような三次元造形を行うかを設定するために用いる。
(サポート材接触面積)
また造形パラメータは、上述した造形時間と造形材(インクジェット方式ではサポート材SA)の使用量に限られず、他の指標を含めることができる。例えばサポート材とモデル材とが接触する面積も造形パラメータとして規定できる。特にインクジェット方式の場合、モデル材の表面の内、サポート材が接触している面は、表面が粗くなると共に、造形時未硬化の状態でモデル材とサポート材が接する境界面において、モデル材とサポート材が混じり合う結果、硬化後のモデル材の表面が白濁し、サポート材が接合しない面に比べ透明感、質感が悪くなり、艶消しのマット面となる。一方、モデル材の表面の内でサポート材の接触していない面は、艶や光沢のあるグロッシーな面となる。表面仕上げとしては、光沢のある方が見栄えがよいため、可能な限り光沢面すなわちグロッシー面を多くした、いいかえるとマット面を少なくすることが求められる場合がある。よって、このようなサポート材のモデル材表面に対する接触面積、すなわちマット面を最小とすることも、三次元造形の条件設定に際しては考慮されるべき、造形パラメータとして利用できる。
パラメータ設定手段63の一例は、上述した図10の操作欄70において設けられたラジオボタン63Aである。図10の例では、造形パラメータとして、造形時間最小、樹脂量最小のいずれかを指定できる。
またパラメータ設定手段63の他の例を、図15に示す。この図に示す造形パラメータ設定ダイヤログ63Bでは、造形パラメータとして、造形時間、造形材の使用量、サポート材接触面積の優先順位を規定できる。この例では、全ての造形パラメータである時間最小、樹脂量最小、マット面最小の全てに対して、造形の最適姿勢及び位置を決定する際の優先順位を数値等でユーザに指定させる。その際、優先順位付けに不要と判断するパラメータには、数値を入力しないことで、造形の最適姿勢及び位置を決定する演算から外すことができる。
(演算手段64)
また演算手段64は、このパラメータ設定手段63で設定された造形パラメータの優先度に基づいて、オブジェクトの姿勢と位置が最適となるよう演算する。ここで演算手段64は、複数のオブジェクトが存在する場合は、各オブジェクトに対して最適姿勢及び最適位置を演算できる。
(最適姿勢決定機能)
以下、演算手段64がオブジェクトの姿勢を一般最適化条件に従って調整する最適姿勢決定機能の手順の詳細を、図16に基づいて説明する。ここでは最適姿勢を、最適化の対象となるオブジェクトの、X、Y、Z軸における回転角度で決定する。具体的には、オブジェクトを、X、Y、Z軸に対して回転させ、一般最適化条件で規定された条件に合致した回転角度を決定する。この最適姿勢決定機能は、複数のオブジェクトに対して個別に姿勢決定を行うことができる。この結果、姿勢が変更されたオブジェクトが他のオブジェクトと干渉する場合も考えられる。この場合は、ユーザが調整手段65を用いて手動でオブジェクトの位置、姿勢等を調整する。
(造形時間最小)
まず、造形パラメータとして造形時間最小を選択(図15において時間最小を優先するよう選択)した場合の、最適姿勢決定方法について説明する。三次元造形装置で造形に要する造形時間は、およそ以下のように計算できる。
造形時間=(1スライスの造形時間)×(積層数)
よって、1スライスの造形時間か、積層数を低減できれば、造形時間を短縮できる。この内、1スライスの造形時間は、スライス面積によって多少の影響は受けるものの、積層数と比べると、造形時間に影響する度合いは圧倒的に少ない。よって積層数を減らすことが造形時間の短縮化に大きく作用するといえる。積層数は、オブジェクトのZ方向の高さによって決定されるので、Z方向高さをできるだけ低くすることで、積層数を減らし、造形時間を短縮できる。
最適姿勢の決定する具体的な手順の一例を、図16に基づいて説明する。ここでは、造形プレート40上に配置されたオブジェクトについて、以下の3ステップからZ方向高さが最小となる姿勢を決定する。
まず、X軸周りにオブジェクトを回転させ、高さが極小となる回転角度を求める。ここでは、オブジェクトを一定幅ずつX軸周りに回転させながら、オブジェクトの高さ(図16のYZ平面、及びXZ平面における高さ)を取得する。次にY軸周りに一定幅だけ回転させる。ここでY軸に角度φだけ回転させた後、X軸に角度θ回転させたときの高さは、行列演算から次式で求められる。
Z’=−cos(θ)*sin(φ)*x+sin(θ)*y+cos(θ)*cos(φ)*z
言い換えると、オブジェクトをX又はY方向のいずれか一方の軸周りに回転させて、各回転角度におけるオブジェクトの高さを取得し、高さが極小となる回転角度を決定した後、この決定された一方の軸周りの回転角度を維持した状態で、今度は他方の軸周りにオブジェクトを回転させて、同様にして高さが極小となる回転角度を決定する。これにより、X軸及びY軸周りにオブジェクトを回転させた場合における、オブジェクトの高さが極小となる姿勢を決定することができる。
または、同様な結果を得るために、OpenGL等によって、仮想的なウィンドウに描画して求めてもよい。このようにして、特徴的な点に対して上記の演算を行い、Z’の最大を求め、X軸周りに角度θ、Y軸周りに角度φ回転したときの造形物の高さを得る。このθとφを変えながら、最小のZとなる組み合わせを求める。
次に、上記のステップで求めた姿勢のオブジェクトについて、Z軸周りに回転しながら、XYの外接矩形が最小になり、かつX≧Yとなる姿勢を決定する。このステップを行うことで、高さは変化しないものの、造形時間を短くできる。
つまり、ヘッド20に設けられるモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22の各々設けられる複数のオリフィスの長さ(本実施例で言えばY方向)の幅より、造形物のY方向の幅が小さくなる姿勢を求めることができれば、造形物の造形の際、ヘッド部20の往復動作は、例えば、X方向とY方向の原点からX方向に往復動作するだけでよい。
これに対して、仮に、造形物のY方向の幅がモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22の各々設けられる複数のオリフィスの長さ(本実施例で言えばY方向)の幅より大きい、姿勢と位置を取ると、ヘッド部20の往復動作は、例えば、X方向とY方向の原点からX方向に往復動作に加え、Y方向にヘッド部20をシフトした後、X方向への往復動作を繰り返す必要があり、その結果造形時間が長くなることを意味している。
このため、上述したX軸及びY軸周りにオブジェクトを回転させた場合における、オブジェクトの高さが極小となる姿勢を決定した後は、その造形物の姿勢を、Z軸周りに回転させることにより、上述したY方向へのヘッド20のシフトの回数を極力減らす姿勢を決定することが重要となる。
また、この造形時間最小の姿勢は、上述したようにX軸、Y軸及びZ軸周りにオブジェクトを回転されるだけで求めることができるが、ヘッド部20が、造形プレート40の造形可能範囲に対して設定されている、XY平面の駆動原点からの移動量を考えると、その最適な位置は、この駆動原点又は原点に近接する位置に自動配置することが好ましい。
以上のような順序でX、Y、Zの回転角度を決定する。なお、各軸周りの回転角度幅は、演算手段64の処理能力や求められる精度等に応じて決定される。また、ユーザが回転角度幅を指定可能な構成としてもよい。例えば、図15等の造形パラメータ設定ダイヤログ等において、回転角度幅を数値で指定したり、あるいは所定の選択肢(例えば22.5°、 30°、45°、90°の4種類)から選択させるダイヤログを設け、ユーザに選択させることもできる。
(樹脂量最小)
次に、造形パラメータとして造形材の最小量を選択(図15において樹脂量最小を優先するよう選択)した場合の、最適姿勢決定方法について、図17〜図18に基づいて説明する。図17(a)に示すようなキノコ状のオブジェクトを例にして考えると、キノコ状の傘部分を構成するモデル材MAを下方から支持するために、サポート材SAが必要となる。このオブジェクトは、図17(b)に示すように、スライスを複数積層して構成される。各スライスは、スライスのZ位置から上方を見上げたときの射影面積となる。そして各スライスには、モデル材MAとサポート材SAが含まれる。よって、オブジェクト射影は次式で表される。
オブジェクト射影=モデル材部分+サポート材部分
ここでオブジェクトを造形するのに必要なモデル材MAの樹脂使用量は、オブジェクトの姿勢によらず不変である。一方、オブジェクトの姿勢を変えたとき、モデル材MAの射影の面積を加算した値が変化するが、モデル材MAは一定であり、サポート材SAの体積が変化する。よって、サポート材SAを最小にする姿勢を求めればよい。以上から、サポート材に用いているオブジェクトの射影の総和が最小になる姿勢がサポート材の樹脂量最小といえる。
また、図18に示すように、オブジェクトの真上に視点を配し、視点からの距離をDepth値とすると、Depth値を足し合わせると、バウンディングボックス(衝突判定領域)から引くべき空間の体積が求められる。
サポート材を最小とする最適姿勢の決定方法は、基本的には上述した造形時間を最小にする決定方法と同様の手順で行える。なお、造形時間最小では高さと面積の最小値を求めているのに対し、樹脂量最小では上述した各スライスデータの射影面積の和の最小値を求める点が異なる。
つまり、オブジェクトをX又はY方向のいずれか一方の軸周りに回転させて、各回転角度におけるオブジェクトの各スライスデータの射影面積の和を求め、その射影面積の和が最小となる回転角度を決定した後、この決定された一方の軸周りの回転角度を維持した状態で、今度は他方の軸周りにオブジェクトを回転させて、同様にしてその射影面積の和が最小となる回転角度を決定する。これにより、X軸及びY軸周りにオブジェクトを回転させた場合における、オブジェクトの造形の際の樹脂量が極小となる姿勢を決定することができる。この樹脂量最小の姿勢は、上述したようにX軸及びY軸周りにオブジェクトを回転されるだけで求めることができるが、ヘッド部20が、造形プレート40の造形可能範囲に対して設定されている、XY平面の駆動原点からの移動量を考えると、その最適な位置は、この駆動原点又は原点に近接する位置に自動配置することが好ましい。
(マット面最小)
さらに、造形パラメータとしてサポート材接触面積の最小を選択(図15においてマット面最小を優先するよう選択)した場合の、最適姿勢決定方法について、図19〜図21に基づいて説明する。なお、その前提として、評価されるオブジェクトの各姿勢は、上述した樹脂量最小の際の姿勢決定と同様に、X軸又はY軸の一方の軸周りにオブジェクトを回転させ、最もマット面が最小となる姿勢を決定し、その後、他方の軸周りにオブジェクトを回転させることにより、最終的なマット面の最小となる姿勢を決定する。
図19〜図21を用いて説明する内容は、上記軸周りの回転の各姿勢において、その姿勢におけるマット面の面積を求める考え方である。図19、図20、図21は、XY平面における任意の層であるn層、n+1層、n+2層において、それぞれの画素に、モデル材M又はサポート材Sが吐出されるか、又は空白であるかを示している。ここでも、樹脂量最小と同様に、オブジェクトの断面図を作成しながら、サポート材の領域Sから、サポート材以外の領域(S’=モデル材+空白)に変化する量を足し合わせると、マット面の最小となる。XY平面におけるマット面は、図19、図20、図21に示すように、SとMが隣接している点の数から求めることができる。言い換えれば、各スライスデータにおいて、モデル材MAとサポート材SAが接する面積を求め、全てのスライスデータでの値を合計することにより、全てのスライスデータに対するマット面の面積を求めることができる。
一方、このマット面は、各スライスデータ単位に限らず、一つのスライスデータとその下方又は上方に隣接位置する他のスライスデータとの間にも存在するため、上述した各スライスデータでのマット面の面積に加え、このZ方向、つまり高さ方向に存在するマット面を求める必要がある。
例えば、図19、図20、図21に示す例の場合は、n層目からn+1層目、及びn+1層からn+2層に移行する際に、画素の値がS、M、空白に変化した点を網掛けで示している。これは、サポート材の領域を1、それ以外の領域を0で表した二値画像(BMP)の、XORで1が立っているビットの数と一致する。また、Mの周囲の画素にSがある場合も、MとSが接触している点、すなわちマット面となるので、これも算出対象とする。この際、上記の各スライスデータによって求められたマット面と二重で計上しないように演算上配慮する。このようにして、サポート材の領域を二値画像に変換することで、比較的容易にマット面を計算できる。言い換えれば、上述した各スライスデータより求められるマット面の面積と、高さ方向に隣接するスライスデータ間で求められるマット面の面積との合計によってマット面の面積を求めることができる。
(カスタマイズ最適化機能)
以上は、パラメータ設定手段63で指定された造形パラメータの優先度に基づいて演算部が最適姿勢を求める一般最適化機能について説明した。このような造形時間最小や樹脂量最小のアルゴリズムによって、自動的に最適な姿勢を求めることができるものの、オブジェクトの用途や目的によっては、ユーザがさらなるこだわりを持って姿勢や配置を規定したい場合がある。この場合、上記の一般最適化機能では自動的に姿勢が決定されるため、必ずしもユーザの意向とは一致しないことが起こり得る。例えば、オブジェクトの特定の部位をマット面としたいような場合が考えられる。そこで本実施の形態では、姿勢や位置の汎用的な最適化のみならず、ユーザ指向でカスタマイズされた最適化も実行可能としている。具体的には、ユーザが任意のオブジェクトに対して個別条件を指定可能としており、この個別条件を優先しながら、最適姿勢や最適配置を行う。これにより、汎用的な最適化と、ユーザ指向でカスタマイズされた最適化の2つを実行可能として、より柔軟性の高い、ユーザの望む形での造形を行うことが可能となる。
(手動による最適姿勢)
ユーザが最適姿勢を手動で指定するには、表示手段62で表示されたオブジェクトに対して、調整手段65を用いて、図12や図22に示す画面からオブジェクトの姿勢を調整する。上述の通り、調整手段65としては、表示欄68におけるマウス等のポインティングデバイスを使用したドラッグや、図22の操作欄70における回転角度の指定等が利用できる。これにより、ユーザが手動でオブジェクトの姿勢や位置を規定したり、自動演算された最適姿勢や最適位置に対して、ユーザが所望の微調整を加えることができ、より自由度の高い三次元造形の設定が可能となる。
(サポート材仮想表示機能)
さらに、表示部においてオブジェクトを表示する際、モデル材のみならずサポート材も重ねて表示させることができる。図22〜図23の例では、オブジェクトOB2のモデル材に対してサポート材を非表示とする図22の状態から、サポート材を表示させると、図23に示すようにサポート材SAの部分がハイライトされて表示される。サポート材SAは、黄色や蛍光色等に着色して表示させることで、他の部分との区別が視覚的に容易となる。これにより、サポート材SAの付着する領域が確認でき、またモデル材とサポート材の接触面、すなわち仕上がりが艶消しのマット面となる部位を容易に判別できる。また、図23の例では、サポート材SAを半透明で表示させることで、サポート材と接する部分の造形が隠れることなく視認でき、便利となる。このようなサポート材の領域は、例えば画像処理における影を計算するシャドウイングロジック等を応用して実現できる。またオブジェクトを回転させると、サポート材が付着する位置の表示も変更され、変更後の状態がリアルタイムで反映されるようにすることが好ましい。このようにリアルタイムに更新して変更後の状態を確認できるようにすることで、ユーザはサポート材の付き方を調整を容易にでき、さらに便利となる。またサポート材仮想表示機能はON/OFF可能である。図22に示すように、サポート材を非表示とすれば、モデル材のみの表示に切り替えることができるが、この表示形式の場合は、モデル材の表面で、サポート材と接触する面と、サポート材と非接触な面に対する色を異ならせることにより、マット面をより判り易く表示することができる。
(グロッシー面指定機能)
一方で、オブジェクトの特定箇所を艶有りのグロッシー面としたいような場合も考えられる。この場合は、当該部位にサポート材を接触させなれければよく、上述したサポート材仮想表示機能のON、OFFを適宜使い分けることによってマット面かグロッシー面かを容易に確認できる。
さらに、どうしても特定の面をグロッシー面にしたい場合も考えられる。これは、樹脂量や造形時間では算出できないユーザの事情によるため、自動演算では実現が困難となる。そこで、オブジェクトをユーザが手動で回転操作を行い、その部位がサポート材SAによる支持が不要な、例えば上面となるように姿勢を変更することで、該当部分をグロッシー領域に変更することができる。モデル材の上面成形にはサポート材が不要となるので、グロッシー面を確実に確保できる。このような姿勢変更を容易に行えるようにするため、グロッシー面指定機能を備えている。具体的には、図24に示すようにオブジェクトOB3上で任意の部位(図24においてGFで示す指定領域)をユーザがマウス等のポインティングデバイスで指定した後、プログラムのツールバーから「選択面を上にする」ボタン88を選択すると、図25に示すように指定された部位が上面となるようにオブジェクトOB3が自動的に回転される。ここでは、オブジェクトを構成している三角形の法線ベクトルがZ方向と一致するように、オブジェクトの姿勢を変更している。これによりユーザは簡単に特定の部位を真上に向くように変更して、グロッシー面を指定できる。なお図24、図25の例では、オブジェクトの底面にある穴の部分にサポート材が付かないように回転させた例を示している。また図25の例では、サポート材の領域をフレーム状に表示させている。さらにサポート材の底面を、造形プレート40上で色を変えて表示させており、サポート材の大きさ等をよりユーザに判り易くできる。
さらに、演算部はこのようなユーザのカスタマイズした条件を加味した上で、自動演算を行うように構成しても良い。例えば、特定の面がグロッシーとなることを必須条件とした上で、その条件内で造形時間や樹脂量を低減するような配置を演算するよう構成してもよい。
なお上述した全てのパラメータに基づく最適姿勢の決定は、例えば画面上に複数のオブジェクトが表示されている場合、各々のオブジェクト単位で、その選択されたパラメータに基づく最適姿勢が求められるようになっている。これは、各オブジェクトが別々のSTLファイルから読み出されていることを認識することにより、可能となっている。
(個別設定機能)
上述の通り、以上の最適姿勢決定機能は、複数のオブジェクトに対して個別に姿勢を設定することができる。また、同一形状のオブジェクトを、造形プレート40上に複数配置する場合は、決定された姿勢の情報をコピーして利用することもできる。さらに、同一形状のオブジェクトであっても、個別に姿勢を設定することも可能であることはいうまでもない。例えば図26の例では、同一形状のオブジェクトOB4〜OB7を造形プレート40上に4つ並べる例を示している。各オブジェクトは、異なる観点から姿勢を決定しており、この例では左から順に、ユーザが選択面を上に指定して斜め面が上面となるように配置したオブジェクトOB4、造形時間最小で姿勢を決定したオブジェクトOB5、サポート材が底面穴に付かないようユーザが調整したオブジェクトOB6、樹脂量最小で姿勢を決定したオブジェクトOB7、となっている。このように、それぞれ別の観点から姿勢を決定したものを、同時に三次元造形することが可能である。
また別の例として、図27、図28に示すように、歯車を有する2つの異なるオブジェクトOB8、OB9を同時に三次元造形する場合を考えると、本来的にはギアの噛み合う面にはサポート材を付着させたくないため、この観点からは図27のような配置が好ましいといえる。この状態は、二つのオブジェクトOB8、OB9に対して、上述した「樹脂量最小」の造形パラメータを選択し、求めた姿勢である。その結果、ギアの噛合する面を、造形プレート40のXY平面に対して、直交するZ方向に伸びる面となるように姿勢を位置決めすると共に、オブジェクトOB8、OB9が、XY平面上において、Z方向で重なり合わない位置に配置される。
この配置であれば樹脂量が最小となると共に、ギアの噛み合う面にはサポート材を付着させることもない。ただし、筒状のオブジェクトOB8が直立姿勢となり、Z方向に高くなるため造形時間が極めて長くなる。このような最適配置方法では、複数のオブジェクトが存在する場合でも一括した設定しかできず、樹脂量最小というユーザの要望は満たすものの、極端に造形時間が長くなってしまうことが生じる。これに対し本実施の形態によれば、上記一括最適設定機能に加え、複数のオブジェクトに対して個別に最適姿勢を設定できるので、歯車状の小さなオブジェクトOB9に対して、筒状のオブジェクトOB8とは独立した設定が行える。図28の例では、筒状のオブジェクトOB8を横に倒すことで造形時間を短縮しつつ、歯車状のオブジェクトOB9は、図27と同じく平置き姿勢とすることで、ギア歯合面にサポート材を極力付着させず、この造形材に好ましい配置とできる。このように、このように、複数のオブジェクトを同時に三次元造形する際においても、個別設定を可能とすることで、各オブジェクトに応じた柔軟な設定が可能となり、ユーザの要求により沿った形で三次元造形が実現できる。
より詳細には、例えば、図27にて説明した一括設定にてオブジェクトの最適姿勢を決定し、その後、その姿勢を確認した上で、画面上にて姿勢を変更したいオブジェクトをカーソルにて選択し、造形パラメータを選択し、「最適姿勢ボタン」を再度押下することにより、図28に示すオブジェクトの最適姿勢を得ることができる。また、言うまでもなく、二つのオブジェクトOB8、OB9を最初から個別に選択し、最適姿勢となる造形パラメータを選択し、「最適姿勢ボタン」を押下することにより、図28に示すオブジェクトの姿勢を得ることも可能である。
(最適位置決定方法)
以上は、オブジェクトを回転させて姿勢を最適にする最適姿勢決定方法について説明した。このようにして最適姿勢が決定されると、次にオブジェクトを造形プレート40上のどの位置に配置するかを決定する。特に複数のオブジェクトを同時に造形する際には、配置位置の設定も重要となる。以下、最適位置決定方法について説明する。
ここでは、先にオブジェクトの姿勢を決定した上で、配置を行う。このため、オブジェクトの高さとマット面については、既に決定している。このため、最適位置決定方法においては、造形パラメータとして造形時間が考慮される。すなわち、造形時間が最小となる順番に、造形プレート40上のオブジェクトを並べ替え、特定の領域に配置する。
上述の通り、三次元造形装置のヘッド部20は造形プレート40上をX軸方向に走査しながら造形材である樹脂の吐出を行う。図29の平面図に示すように、ヘッド部20の走査2往復分を1セットとし、これによって形成される造形物の1単位がフィールドFDとなる。形成されるフィールドFDのX方向のサイズは、走査幅によって造形プレート40のサイズ以下であれば、比較自由に設定できる。その一方で、Y方向のサイズについては、図30に示すように造形に用いるヘッド部20の幅、すなわちノズル数(オリフィスの数)によって規定され、一度に一定幅以上の造形を行うことはできない。このため、Y方向の長さが、ヘッド部20の造形幅より長い造形物を造形する際には、複数フィールドFDに分割して造形を行う必要がある。そしてフィールド数が多くなるほど、造形に必要な時間も長くなる。このように造形のフィールド数は、単一オブジェクトのY方向の大きさのみならず、複数オブジェクトのY方向の大きさと配置で決定される。例えば、図31に示す配置例では、2つのオブジェクトOB10、OB11はそれぞれ、単体では1フィールドで造形できるサイズであるものの、オブジェクトOB11がフィールド間を跨ぐように配置されているため、2フィールドの造形が必要となってしまっている。これに対して、図32に示す配置例では、2つのオブジェクトOB12、OB13が、いずれも1フィールド内に収まるように配置されているため、1フィールドでの造形が可能となり、図31の配置例に比べて造形時間を1/2に短縮できる。
以下、具体的な最適位置決定方法の手順を、図33〜図39に基づいて説明する。ここでは、図33のような大きさの異なる5つのオブジェクトOB14〜OB18を、造形プレート40上に最適に配置する例を考える。ここで各オブジェクトは、三次元造形装置のヘッド部20の1フィールドに収まる大きさであるとする。まず、各オブジェクトについて、高さ情報を取得する。次に、高さが最も高いオブジェクト(図33の例ではオブジェクトOB14)を、造形プレート40上の造形領域MRの原点に配置する。この結果、図34のような平面図、及び図35のような斜視図となる。次いで、高さが2番目に高いオブジェクト以外のオブジェクト中から、X方向の長さが最も短いもの(図33の例ではオブジェクトOB16)を、一番目のオブジェクトのX方向における隣に配置する(図36の平面図及び図37の斜視図)。最後に、残りのオブジェクトを高さ順に配置する(図38の平面図及び図39の斜視図)。このようにして、複数のオブジェクトを造形プレート40上に自動配置できる。
以上の例は、各オブジェクトが1フィールドで造形可能な大きさの場合について説明した。次に、複数フィールドに跨がって造形される、すなわち1フィールドの幅を超えるオブジェクトを含む場合の最適配置方法について、図40〜図48に基づいて説明する。まず、図40に示すオブジェクトOB19〜OB24の内、高さが最も高いオブジェクト(図40においてオブジェクトOB19)を、造形プレート40上の造形領域MRの原点に配置する(図41の平面図及び図42の斜視図)。次に、高さが2番目に高いオブジェクト以外のオブジェクト中から、X方向の長さが最も短いもの(図40においてオブジェクトOB22)を、一番目のオブジェクトOB19のX方向において隣に配置する(図43の平面図及び図44の斜視図)。次いで、残りのオブジェクトを高さ順に配置していく(図45の平面図及び図46の斜視図)。最後に、X方向に配置できなかったオブジェクトが存在すれば(ここではオブジェクトOB24)、Y方向の原点寄りに配置する(図47の平面図及び図48の斜視図)。
その他、特殊な例として、オブジェクトが1つのみの場合は、図49に示すように造形プレート40上の造形領域MRの原点に配置する(オブジェクトOB25)。またオブジェクトが2つのみ(オブジェクトOB26〜OB27)の場合は、図50に示すように高さの高いオブジェクト(オブジェクトOB26)を原点に、その隣に他方のオブジェクト(オブジェクトOB27)を配置する。さらに、図51に示すように(オブジェクトOB28〜OB30)、上述した手順において、仮に高さが2番目に高いオブジェクト以外のオブジェクトの中から選んだ、X方向の長さが最も短いオブジェクト(オブジェクトOB30)が、既に配置したオブジェクトの隣に配置できない場合は、Y方向に配置する。
このようにして、最適姿勢決定方法に続き、最適位置決定方法を実行することで、造形プレート40上に一以上のオブジェクトを、所望の条件に沿って適切に配置できる。
(オブジェクト移動手段)
さらに設定データ作成プログラムは、表示手段62上で選択したオブジェクトを、特定の方向に移動させると共に、この移動方向上に他のオブジェクトが存在する場合は、このオブジェクトと干渉しない最小のクリアランスを確保した位置で自動停止させる自動停止機能を備えたオブジェクト移動手段を有している。これによって、複数のオブジェクト同士を簡単に所定のクリアランスを残して近接させるクリアランス最小移動を実現できるので、従来のような手作業でオブジェクトをぎりぎりまで接近させる作業を不要にでき、極めて簡単にオブジェクトの配置を実行できる。
このようなオブジェクト移動手段の例を、図52のユーザインターフェース画面で示す。この図において、任意のオブジェクトを選択した状態で、ツールバーに設けられたオブジェクト移動ボタン90を押下すると、オブジェクトに重なるように移動アイコン91が表示される。移動アイコン91は、XY平面、YZ平面、XZ平面にそれぞれ平行なリングを重ね、さらに各リングの外周上には等間隔に4箇所に、矢印状のアイコンを設けている。矢印アイコンは、この移動アイコン91を表示しているオブジェクトの移動方向である前後、左右、上下方向に向けられた姿勢で、リング上に設けられている。なおリングは、オブジェクトの回転にも利用できる。すなわち、リングで規定された平面に沿ってオブジェクトを回転できる。なお、他の実施例としては、このような三次元的なリングと矢印上のアイコンを用いず、移動させたいオブジェクトをカーソルをあてて、ドラッグし、移動したい方向へ初期移動させることにより、後はそのカーソルが移動した方向にオブジェクトを自動的に移動させることも可能である。
なお本明細書においてアイコンとは、ディスプレイの画面上で表示されるオブジェクトを意味している。造形物を示すオブジェクトと区別するためにアイコンと称呼しているに過ぎず、いわゆるデスクトップ上で表示されるアイコンには限られない。
この矢印アイコンを押下することで、クリアランス最小移動機能が実行され、矢印アイコンの矢印で示す方向にオブジェクトを移動させることができる。オブジェクトは、移動できない位置で自動的に停止される。移動できない位置の一つは、造形プレート40上において造形可能な領域として規定された造形領域MRの外縁を超えてはみ出すような位置、すなわち物理的に設定不可能な位置である。他の移動できない位置とは、オブジェクトの移動方向に他のオブジェクトが存在する場合であり、この場合、既に移動方向の特定の位置に配置されている他のオブジェクトに対して、移動方向に所定のクリアランスを設けて、移動物体は自動的に停止する。
図52の例では、オブジェクトOB31の、X方向の原点側に向いた矢印アイコンを押下すると、図53に示すように、X方向の原点に向かって進み、オブジェクトOB32に接触する手前で、クリアランスを残して自動停止される。さらに、この状態でY方向の原点側に向いた矢印アイコンを押下することで、図54の平面図に示すように、Y方向においてもオブジェクトをぎりぎりの位置まで近接させることができる。このような図52の状態から図53、図54に移動させる操作は、2つの矢印アイコンをそれぞれ押下するという僅か2動作で足り、必要最小限のクリアランスを設けた位置にオブジェクト同士を近接させることができる。
この場合の原理を詳細に説明すると、まず図52の状態から、図53の状態にオブジェクトOB31を移動させる場合、移動対象であるオブジェクトOB31の移動方向に位置する部位(図に示すコの字状の両端部の部位)と、これら両端部をつなぐ部位の各々に対して、既に図左側に配置されているオブジェクトOB32のコの字状の両端部をつなぐ部位と、その両端部の部位との各クリアランスの少なくとも一方が、所定のクリアランスに達するまで、オブジェクトOB31は移動し、所定のクリアランスに一方が達した時点で、その移動を停止するようになっている。
更に、図53から図54の状態にオブジェクトOB31を移動させる場合も同様に、移動方向に既に配置されているオブジェクトOB32のコの字状の一方の腕部(図の上方向に位置する部位)である平面上の壁部に対して、オブジェクトOB31の同様なコの字状の一方の腕部(図の上方向に位置する部位)との間が所定のクリアランスに達するまで、オブジェクトOB31は移動し、所定のクリアランスに一方が達した時点で、その移動を停止するようになっている。
つまり、移動対象物であるオブジェクトが特定され、更に移動方向が決定された場合、その移動方向に、移動するオブジェクトにおける移動方向に臨む部位を認識すると共に、一方、その移動方向で且つ、移動物体の移動幅に存在する干渉物となる対象物を特定すると共に、その特定された対象物の移動方向に望む部位を認識し、移動する物体の移動方向に臨む部位と干渉物となる対象物の移動方向に望む部位の間における移動方向での全ての対応点間のクリアランスを認識し、一つの対応点間の距離が予め設定されているクリアランスに達した時点で移動する物体の移動を停止させるようになっている。なお、この距離やクリアランスは、移動する物体及び干渉対象となる物体の、造形プレート40内に仮想的に設定される三次元の座標空間における座標点によって求められる。
さらに、水平方向のみならず、垂直方向においてもオブジェクト移動機能を利用できる。図55は、図52、図53と同様の振る舞いを、Z方向に適用した例を示しており、オブジェクトOB33を、オブジェクトOB34に対して垂直方向に近接させている。なお、図55の例では、垂直方向のクリアランスを、水平方向のクリアランスよりも大きく設定している。垂直方向では必ずサポート材が介在されるため、サポート材の付き方を考慮して造形物に悪影響を与えないように余裕をもって設定しているためである。また垂直方向のクリアランスは、より大きく設定することも可能である。つまり、水平方向のクリアランスと垂直方向のクリアランスを個別に設定することができる。また、言うまでもないが、オブジェクトOB33とオブジェクトOB34との間の詳細なクリアランス制御は、図52から図54を用いて説明した水平方向におけるクリアランス制御を、垂直方向に適用しただけであるので、制御の詳細は省略する。
図56に示す例では、オブジェクトOB35を、オブジェクトOB36に対して垂直方向に接近させる際、オブジェクトOB36の開口上端までで停止されるようにしている。このようにクリアランスを大きく取ることによって、より安定的に三次元造形を行える。図56の実施例は、上述した図52から図55の実施例の詳細なクリアランス制御とはことなり、オブジェクトを三次元的に外接直方体で囲むデータを生成し、そのデータに対して、二つのオブジェクトの間のクリアランス制御を行っているものである。
以上のように、オブジェクト移動手段により極めて簡単にオブジェクトを直感的に最適位置まで移動させることができる。特に、オブジェクトの造形が可能な最小のクリアランスを残した位置にオブジェクトを配置できるので、従来のようなオブジェクト同士の重なりを考慮した微妙な位置の設定が不要となり、オブジェクトを極めて操作し易くできる。また最小距離でオブジェクトを配置できることは、造形時間の短縮化にも繋がる。すなわち、オブジェクトである造形物同士がなるべく近くに存在したほうが、三次元造形装置のヘッド部20の移動時間が短くなるため、造形時間を短くできる。さらに、複数のオブジェクトを詰めて配置することで、限られた大きさの造形プレート40の有効活用でき、一度に複数の造形物を得ることができる。特に三次元造形装置は造形時間が一般に長いため、効率よく造形することは極めて重要となる。
(造形条件設定手段)
また、オブジェクト毎に造形に関する条件を設定可能な造形条件設定手段を設けてもよい。造形条件設定手段は、例えば図52の画面において、表示欄68においてオブジェクトを選択し、このオブジェクトに対して操作欄70から造形条件を設定する。造形条件設定手段の一例として、オブジェクトの特定の部位をグロッシー面とするようにオブジェクトの姿勢を変更する変更手段が挙げられる。変更手段の一形態としては、操作欄70の手動操作欄76に設けられた「表面仕上げ」欄77が挙げられ、この欄から表面仕上げを「マット」や「グロッシー」等に選択する。ここで指定された造形条件に従って、設定データ作成プログラムは、オブジェクトの姿勢を変更する。例えば、強制的にこの面が上向きとなるようにオブジェクトを回転させ、グロッシー面を保証する。また、後述するように仮にこのオブジェクトの上面に他のオブジェクトが配置されて、グロッシー面が実現できなくなった際には、警告を発することができる。
(複数オブジェクトの同時移動)
上記の例では、オブジェクト移動手段を用いてオブジェクトを個別に移動させる例を説明した。ただ、これに限らず複数のオブジェクトに対して、移動及び自動停止機能を実行することもできる。例えば図57に示すように、複数のオブジェクトOB37〜OB40が存在する状態で、複数のオブジェクト(例えばオブジェクトOB39〜OB40)を選択し、クリアランス最小移動機能を実行すると、図58のように、各オブジェクトが最小クリアランスを維持した状態に移動される。オブジェクトの複数選択は、例えば図57の例では、操作欄70において一覧表示されるオブジェクトに対して、所望のオブジェクトに相当するチェックボックスをチェックする。あるいは、表示欄68において所望のオブジェクト群を囲むようにマウスで範囲選択したり、キーボードでCtrlキーを押しながらマウスで複数のオブジェクトを選択する等、既知の方法で選択することもできる。この状態で、移動アイコン91を操作すると、選択された各オブジェクトが造形プレート40上の造形領域MRの原点に向かって移動され、所定のクリアランスを残して自動停止される。この例では、各オブジェクトと原点との距離を計算して、最も原点に近いオブジェクト(図57の例ではオブジェクトOB39)から順に、原点に向かって移動させていく。
より詳細には、複数のオブジェクト(例えばオブジェクトOB39〜OB40)が、図左上方向に水平移動を開始すると、各々のオブジェクトOB39、OB40単位で、上述した個別のオブジェクトの移動制御と同様な制御が行われる。つまり、移動開始は複数同時に開示されるが、クリアランス制御は、上記個別のオブジェクトの移動制御と同様である。この結果、オブジェクトOB39は、既に配置されているオブジェクトOB37に最初に接近し、最小クリアランスを確保して停止する一方、オブジェクトOB40は、更にオブジェクト38に向けて移動し、最小クリアランスを確保して停止する結果、図58に示す状態が提供される。
なお、上記複数のオブジェクト移動では、移動開始は一体であっても、制御は、上述した個別制御と同様な制御を各々のオブジェクトに対して適用したが、別の方法として、移動させるために選択した複数のオブジェクトを、一つの塊のオブジェクトと見做し、この見做し一つのオブジェクトに対して、上記個別制御を適用させることも可能である。
さらに、このような複数オブジェクトの同時移動は水平方向のみならず、垂直方向においても機能させることができる。例えば、図59に示す例では、複数のオブジェクトOB41〜OB44が存在する状態で、オブジェクトOB41〜OB42を選択した状態で、移動アイコン91を操作し、図60に示すようにこれらのオブジェクトOB41〜OB42を下方のオブジェクトOB43〜OB43に向かって、最小クリアランスを残しつつ近接配置させる例を示している。このように、オブジェクト移動手段は垂直方向、水平方向のいずれに対しても機能させることができる。
(クリアランス)
ここで所定のクリアランスとは、サポート材を用いる場合は、例えばサポート材を除去可能なクリアランスを指す。サポート材の粘度や除去方法にも依存する。例えばサポート材の粘度が低く、水没させて溶出させる場合は、水が浸入可能な大きさにクリアランスを小さく設定できる。逆にサポート材の粘度が高く、又は手作業で除去するような場合は、クリアランスを大きく設定する。また、サポート材の表面にこれを被覆するサポート殻を設ける場合は、このサポート殻の厚さを考慮した値に設定される。また、サポート材をニッパー等の工具を用いて除去する場合は、このような工具が入る程度の隙間に設定される。あるいは、サポート材をろう材で構成する場合は、熱でろう材を溶融して、この溶融されたサポート材が流出できる程度の大きさに設定される。一方でサポート材が存在しない場合は、モデル材MAの成形が可能な距離で足りる。このように、クリアランスは、使用するサポート材の材質や除去方法等によって最適値に設定される。また、同様に、ユーザが所望のクリアランスを入力し、設定することもできる。
クリアランスは、全てのオブジェクトで一定とせず、オブジェクト毎に異なるクリアランスを設定可能としてもよい。例えば、オブジェクトの表面形状が複雑な場合は、サポート材の除去し易さを考慮して、若干大きめにクリアランスを設定できる。このような個別指定は、設定手段により行われる。
さらにクリアランスは、好ましくは高さ方向と水平方向で異ならせる。特にインクジェット方式の場合は、水平方向に関しては、比較的近接させた配置が可能であるものの、高さ方向においては、オブジェクト同士の間にサポート材が介在されるため、上方のオブジェクトの自重でサポート材が押圧されても十分な剛性や保持力を確保できる程度のサポート材が必要となるため、十分なサポート材を介在させられるように、クリアランスを大きく取ることが好ましい。
このようにオブジェクト移動手段は、選択したオブジェクトを特定の方向に移動させるとき、他のオブジェクトと干渉しない位置に自動停止させることができる。また干渉しないだけでなく、クリアランスを確保した位置に自動停止するクリアランス最小移動機能を実現することで、最小クリアランスを容易に確保でき、ユーザによる位置調整作業を大幅に省力化できる。
(警告手段)
さらに、オブジェクトの配置を監視し、異常な配置の場合に警告を発する警告手段を設けることもできる。警告手段は、オブジェクト移動手段や調整手段65により、オブジェクトを造形領域MRにおいて移動させる際、移動方向に位置する他のオブジェクトに対し、造形条件設定手段で設定された造形条件を満たさなくなる場合に、警告を行う。例えば、警告手段は、下方向にオブジェクトを移動させた場合、下方向に位置するオブジェクトの造形条件を満たさなくなる場合に警告を行うことができる。特に下方向に位置するオブジェクトに、造形条件として上面をグロッシー面にするよう設定している場合に、このオブジェクトの上面に別のオブジェクトを配置すると、グロッシー面にできなくなる。よって、ユーザに対して警告手段で告知することにより、このような配置を避けるよう促し、ユーザの意図しない設定の回避を図ることができる。
インクジェット方式においては、オブジェクトの上面がグロッシー面となるため、仕上げ面が綺麗になるグロッシー面を活用したい需要があると考えられることから、逆にこのようなグロッシー面を損なう結果となる、オブジェクトの上面に他のオブジェクトを配置する、換言するとオブジェクトの上面にサポート材が付着するような配置をユーザが望むことは少ないと考えられる。このような観点から、オブジェクトを移動させる際に、オブジェクト同士が重なり合うような配置、換言すると一方のオブジェクトの上面にサポート材が吐出されるような配置を避けるように、ユーザに警告するものである。
例えば図55や図56の状態で、「プリント」ボタン84を押下して造形を開始しようとすると、図61のような警告ダイヤログ92が表示される。この警告ダイヤログ92は、オブジェクトがZ方向に重なりあったことで、グロッシー面に指定した面が、サポート材の影響によりグロッシー面とならないことを警告している。また、警告手段はこのような警告メッセージの他、警告音やアラーム、あるいはそのような設定自体を禁止する等、ユーザに対して注意を促す他の方法によっても実現できる。
また警告手段は、上記以外にも、例えばオブジェクトを移動させる際に、他のオブジェクトと干渉したことを検出して、干渉する旨を警告するよう構成してもよい。例えば干渉するとオブジェクト全体、又は干渉する部位を赤色で表示させたり、あるいは「オブジェクトが干渉しています」等の警告メッセージを表示させたり、音声や警告音を発する等、ユーザに対して注意を促す種々の形態が利用できる。これによりユーザは干渉を認識でき、適切な配置に設定し直すことが促されるので、誤った配置となることが回避される。