JP2012094281A - リチウム空気二次電池用空気極触媒、リチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法、リチウム空気二次電池 - Google Patents

リチウム空気二次電池用空気極触媒、リチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法、リチウム空気二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム空気二次電池の空気極触媒として用いた際に、高い放電開始電圧及び放電容量を実現しうると共に、不可逆容量を低減可能なリチウム空気二次電池用空気極触媒、該空気極触媒の製造方法及び該空気極触媒を備えるリチウム空気二次電池を提供する。
【解決手段】RuO粒子が、カーボン上に担持されており、前記RuO粒子が、Ru原子‐O原子間距離が1.5〜2.0Åであり、隣接するRu原子間距離が2.6〜3.2Åであり、Ru原子に配位するO原子数が2.0〜4.0であり、且つ、隣接するRu原子数が1.2〜2.0である、層状結晶構造を有すると共に、2〜5nmの粒径を有することを特徴とする、リチウム空気二次電池用空気極触媒、リチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法並びにリチウム空気二次電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム空気二次電池の不可逆容量を低減可能なリチウム空気二次電池用空気極触媒、該リチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法、及び、該リチウム空気二次電池用空気極触媒を備えるリチウム空気二次電池に関する。
リチウム空気二次電池に代表される金属空気二次電池は、金属単体又は金属化合物を負極活物質に、酸素を正極活物質に利用して充放電を行う電池である。金属空気電池は、負極、空気極(正極)、及びこれら負極と空気極との間に介在する電解質を基本構造とする。正極活物質である酸素は空気から得られるため、電池内に正極活物質を封入する必要がないことから、金属空気二次電池は、固体の正極活物質を封入する二次電池よりも大きな容量を実現することが可能である。
リチウム空気二次電池において、放電の際、負極では下記式(1)の反応が進行する。
Li → Li + e (1)
式(1)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、空気極に到達する。そして、式(1)で生じるリチウムイオン(Li)は、負極と空気極との間に介在する電解質内を負極側から空気極側へ移動し、空気極に到達する。
一方、従来のリチウム空気二次電池において、放電の際、空気極では、下記式(2)〜(3)の反応が進行すると考えられている。
+ 2e + 2Li → Li (2)
+ 4e + 4Li → 2LiO (3)
式(2)〜(3)で生じたリチウム酸化物は、空気極に蓄積される。
充電の際には、負極において上記式(1)の逆反応、空気極において上記式(2)〜(3)の逆反応がそれぞれ進行し、負極において金属リチウムが再生するため、繰り返し充放電が可能である。
金属空気電池は、従来の固体正極活物質を封入する二次電池よりも容量を大きくできるが、不可逆容量の低減や放電容量の増加といった解決すべき課題もある。不可逆容量は、充電容量と放電容量との容量差であり、二次電池において高エネルギー密度を実現するためには、最小化することが極めて重要である。不可逆容量の原因の一つとして、充電の際に、空気極において、上記式(2)〜(3)の逆反応であるリチウム酸化物の分解反応が充分に進行しないことが挙げられる。
金属空気電池の空気極は、通常、導電材と、酸素の酸化還元反応を促進する触媒と、これらを固定するための結着材とが含有される。金属空気電池の性能は、空気極の構造によって、すなわち、空気極を構成する材料間の接合性や、各材料のナノ構造等によって、大きく影響を受ける。そこで、従来、空気極の構造を最適化すべく、様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、高容量特性を有する電気化学素子用電極を提供すべく、特定の方法で製造された酸化ルテニウム‐ケッチェンブラック複合体を含有する電気化学素子用電極が開示されている。具体的には、特許文献1において、酸化ルテニウム‐ケッチェンブラック複合体は、反応器内で、塩化ルテニウムとケッチェンブラックを混合した段階で遠心処理を行うことによりこれらの反応物にずり応力と遠心力を加え、その後に触媒を加え、さらに遠心処理を行うことにより製造されている。
また、特許文献2には、所定の反応器内で、塩化ルテニウムと層状構造を有する炭素を混合した段階で遠心処理を行うことによりこれらの反応物にずり応力と遠心力を加え、その後に触媒を加え、さらに遠心処理を行うことにより得られた酸化ルテニウム‐層状カーボン複合体を含有する電気化学素子用電極が開示されている。
また、特許文献3には、炭素を主成分とするマトリックスにルテニウム元素を構成元素として含む粒径5〜100nmの微粒子が分散されてなり且つ導電性を有する粒子分散複合物が開示されている。
特開2008−252002号公報 特開2008−244355号公報 特開2005−233851号公報
本発明者が鋭意検討した結果、従来の金属空気二次電池において、不可逆容量が大きいのは、(A)触媒と担体との接合が不十分であるために、空気極の電子伝導が担体を主体に行われること、(B)触媒活性サイトの数が少ないこと、が原因の一部であることが見出された。
例えば、特許文献1に記載の方法によれば、ケッチェンブラックに酸化ルテニウム微粒子を高分散状態で担持させた複合体を製造しうるが、触媒活性サイトの数を充分に増加させることができない。その結果、特許文献1に記載の方法で製造された複合体をリチウム空気二次電池の空気極触媒として用いた場合、放電時に生成したリチウム酸化物が、充電時に分解されず、電池の不可逆容量が大きくなるおそれがある。
また、上記式(2)の反応は、一電子還元反応の場合、下記(2−1)、(2−2)、及び(2−3)の素過程から構成されている。
+ e → O ・− (2−1)
・− + Li → LiO (2−2)
2LiO → Li + O (2−3)
このように、従来のリチウム空気二次電池において、放電時の空気極反応は、ラジカルが反応中間体として存在するため、電解液中の溶媒等が分解し、該分解生成物が空気極や負極の表面に堆積するおそれがある。また、反応経路が複雑であるため、予期せぬ副生成物が生成するおそれがある。さらには、上記式(2)の酸素の1電子還元反応を経て得られる放電電圧は2.7Vと低い。
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、リチウム空気二次電池の空気極触媒として用いた際に、高い放電開始電圧及び放電容量を実現しうると共に、不可逆容量を低減可能なリチウム空気二次電池用空気極触媒、該空気極触媒の製造方法及び該空気極触媒を備えるリチウム空気二次電池を提供することである。
本発明のリチウム空気二次電池用空気極触媒(以下、単に本発明の空気極触媒ということがある)は、
RuO粒子が、カーボン上に担持されており、
前記RuO粒子が、
Ru原子‐O原子間距離が1.5〜2.0Åであり、隣接するRu原子間距離が2.6〜3.2Åであり、Ru原子に配位するO原子数が2.0〜4.0であり、且つ、隣接するRu原子数が1.2〜2.0である、層状結晶構造を有すると共に、2〜5nmの粒径を有することを特徴とする。
本発明の空気極触媒を用いることによって、充電時に、リチウム酸化物の分解反応が促進されるため、不可逆容量を低減することが可能である。また、本発明の空気極触媒を用いることによって、放電時の空気極において、従来の空気極触媒と比較して放電電圧が高い反応が進行するため、放電電圧及び放電容量を向上させることができる。
本発明のリチウム空気二次電池用空気極触媒において、不可逆容量の低減効果がより高くなることから、前記RuO粒子の粒径は2nmであることが好ましい。
本発明のリチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法は、
RuO前駆体とカーボンとを含むRuO前駆体‐カーボン混合溶液を、超音波処理する超音波工程と、
前記超音波処理を行った前記RuO前駆体及び前記カーボンを含むRuO前駆体−カーボン混合物に対して、強アルカリを添加し、前記カーボン表面にRuO粒子を担持させる担持工程と、
を備えることを特徴とする。
本発明の空気極触媒の製造方法によれば、RuO粒子の結晶構造を精密に制御し、上記層状結晶構造を有するRuO粒子を調製することができる。また、本発明の空気極触媒の製造方法によれば、RuO粒子とカーボンとの接合性に優れた空気極触媒を調製することができる。
本発明の空気極触媒の製造方法は、前記担持工程において、前記強アルカリの添加後の反応物を60〜80℃の水で洗浄することが好ましい。RuO前駆体に由来する陰イオン等の残留成分、特に塩化物イオンを効果的に除去することができ、RuO粒子の層状結晶構造をより精密に制御することが可能となるからである。
本発明の空気極触媒の製造方法は、前記超音波工程後であって前記担持工程前に、前記RuO前駆体‐カーボン混合溶液を固液分離処理し、得られた固形分を水洗浄するRuO前駆体‐カーボン洗浄工程を備えることが好ましい。カーボンの表面に付着している賦活剤等の付着成分を除去することによって、RuO粒子の層状結晶構造をより精密に制御することが可能となるからである。
前記担持工程において、前記RuO前駆体−カーボン混合物と前記強アルカリとの混合物を超音波処理することが好ましい。RuO前駆体のカウンターイオンの中和を効率良く行うことができるからである。
本発明のリチウム空気二次電池は、空気極、負極、及び前記空気極と前記負極との間に介在する電解質を備えるリチウム空気二次電池であって、
前記空気極が、上記本発明のリチウム空気二次電池用空気極触媒、或いは、上記本発明の製造方法により製造されたリチウム空気二次電池用空気極触媒を含むことを特徴とする。
上記したような本発明により提供される空気極触媒を備える、本発明のリチウム空気二次電池は、高い放電開始電圧及び放電容量を発現すると共に、不可逆容量を低減可能である。
本発明により提供される空気極触媒は、リチウム空気二次電池の空気極触媒として用いた際に、高い放電開始電圧及び放電容量を達成可能であると共に、不可逆容量を低減することが可能である。従って、本発明によれば、優れた二次電池特性を有するリチウム空気二次電池を提供することができる。
本発明の空気極触媒の放電前後の状態を示す模式図である。 本発明の空気極触媒の調製方法例を示すフロー図である。 実施例の空気極触媒のTEM写真である。 実施例及び比較例のリチウム空気二次電池の断面模式図である。 実施例及び比較例のリチウム空気二次電池の放電曲線である。 実施例及び比較例のリチウム空気二次電池の充電曲線である。 実施例及び比較例の放電開始電圧を示すグラフである。 実施例及び比較例の酸素供給時及びアルゴン供給時における放電容量及び充電容量を示すグラフである。 実施例及び比較例の酸素供給時とアルゴン供給時における放電容量の差及び充電容量の差を示すグラフである。 実施例1及び比較例2のRuO粒子の表面積と、酸素供給時とアルゴン供給時における放電容量の差及び充電容量の差との関係を示すグラフである。 実施例1で得られたRuO粒子のXAFS解析モデルである。
本発明のリチウム空気二次電池用空気極触媒(以下、単に本発明の空気極触媒ということがある)は、
RuO粒子が、カーボン上に担持されており、
前記RuO粒子が、
Ru原子‐O原子間距離が1.5〜2.0Åであり、隣接するRu原子間距離が2.6〜3.2Åであり、Ru原子に配位するO原子数が2.0〜4.0であり、且つ、隣接するRu原子数が1.2〜2.0である、層状結晶構造を有すると共に、2〜5nmの粒径を有することを特徴とする。
本発明者は、本発明の空気極触媒を用いることによって、放電時、ラジカルを介さない下記式(4)の反応が進行することを見出した。
+ 2e + 2Li → Li (4)
式(4)の2電子還元反応を経て得られる放電電圧は3.1Vであり、上述した従来の式(2−1)〜(2−3)を経て得られる放電電圧(2.7V)と比較して高く、放電容量を向上させることができる。また、ラジカルを介さず、また反応経路も単純であるため、電解液の分解等による予期せぬ副生成物の生成を抑制することができる。
さらに、本発明者は、鋭意検討の結果、上記したような特定の層状結晶構造及び特定の粒径を有するRuO粒子がカーボン表面に担持されてなる本発明の空気極触媒を用いることによって、リチウム空気二次電池の不可逆容量を低減可能であることを見出した。
以下、本発明の空気極触媒による不可逆容量の低減作用について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の空気極触媒を備えるリチウム空気二次電池の放電前(1A)及び放電後(1B)における、該空気極触媒の状態を示す模式図である。
図1に示すように、リチウム空気二次電池の放電前において、本発明の空気極触媒は、RuO粒子がカーボン(C)の表面に担持された構造を有している(図1の1A参照)。
リチウム空気二次電池の放電の際、空気極には、酸素(O)が供給されると共に、負極側からLiイオン(Li)と電子(e)が移動してくる。Liイオンは、空気極と負極との間に介在する電解質を経て空気極中のRuO粒子に到達する。電子は、外部回路を経て空気極へと到達し、さらにカーボン(C)を経由してRuO粒子に到達する。このとき、RuO粒子がカーボン上に担持されているために、カーボンからRuO粒子への電子伝達は効率的に行われる。
RuO粒子に到達したリチウムイオン、酸素、及び電子は、RuO粒子の触媒作用により、リチウム酸化物を生成する(O + 2Li + 2e → Li)。また、リチウムイオンは、層状結晶構造を有するRuO粒子の層内に挿入(インターカレート)される(Li +RuO → LiRuO)。
さらに、本発明者は、RuO粒子を構成する一部のRuOと、Liイオン(Li)とが、下記式(5)で表わされるコンバージョン反応を起こすことを見出した。
RuO + 4Li + 4e + O → Ru + 2Li (5)
RuOとLiイオンのコンバージョン反応によって生成した金属Ruは、RuO粒子中、相分離し、放電後のRuO粒子は、RuO相と金属Ru相とを含む多相構造を呈する(図1の1B参照)。
そして、リチウム空気二次電池の充電の際、このような多相構造を有するRuO粒子では、金属Ru相が、放電時に生成したリチウム過酸化物(Li)とコンバージョン反応し、リチウム過酸化物のLiイオンと酸素への分解反応が進行する(Ru + 2Li → RuO + 4Li + 4e + O)ことが見出された。すなわち、本発明の空気極触媒を用いることによって、充電時のリチウム過酸化物の分解反応が促進され、不可逆容量を低減することが可能である。
尚、上記放電時のコンバージョン反応により生成した金属Ruは、上記充電時のコンバージョン反応によって、全てがRuOに戻るわけではないが、金属Ruは、RuOと比較して、電子伝導性が高く且つ反応サイトの数が多いため、優れた触媒性能を発現し、放電時及び充電時における空気極触媒として優れた活性を有する。
本発明者の鋭意検討の結果、上記のようなRuOとLiイオンとのコンバージョン反応は、どんな性状のRuO粒子でも起こるわけではなく、上記特定の層状結晶構造及び上記特定の粒径を有するRuO粒子において進行可能であることが見出された。
以下、本発明の空気極触媒におけるRuO粒子の層状結晶構造及び粒径について説明する。
本発明において、RuO粒子は、2〜5nmの粒径を有する。ここで、粒径とは、平均粒径であり、常法により算出される。例えば、400,000倍又は1,000,000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)画像において、粒子の直径を何点か測定しその平均値を算出する。このようなTEM観察による平均粒径の算出を、複数のRuO粒子について行い、さらにその平均値を算出する。
RuO粒子において、Liイオンの拡散長さ(拡散距離)が2〜5nmであることから、RuO粒子の粒径を、Liイオンの拡散長さ以下の2〜5nmとすることによって、放電時及び充電時の上記コンバージョン反応の進行を促進することができる。上記コンバージョン反応の促進の観点から、RuO粒子の粒径は、2〜3nmであることが好ましく、特に2nmであることが好ましい。
また、2〜5nmという非常に微細なRuO粒子を高分散状態でカーボン担体上に担持させることで、充分な数の触媒活性サイトを確保することができるため、空気極における放電時及び充電時の反応を促進することができる。
本発明において、RuO粒子は、Ru原子‐O原子間距離が1.5〜2.0Åであり、隣接するRu原子間距離が2.6〜3.2Åであり、Ru原子に配位するO原子数が2.0〜4.0であり、且つ、隣接するRu原子数が1.2〜2.0である、層状結晶構造を有する。
RuO粒子の上記層状結晶構造は、常法により確認することができる。例えば、放射光によるXAFS(X線吸収微細構造)測定、電子線回折、微細構造解析等が挙げられる。XAFS測定においては、分光器にSi(111)、検出器にイオンチャンバーを使用し、透過法によりRu−K吸収端を測定することで上記結晶構造を確認することができる。XAFSの解析コードとしては、例えば、FEFF8(ワシントン大学製)を用いることができる。
本発明の空気極触媒は、上記したように、導電性担体であるカーボン上にRuO粒子が担持されているため、カーボンと触媒成分であるRuO粒子との接合性が高い。そのため、本発明の空気極触媒を用いることで、空気極における電子伝導性を向上させ、充放電反応を促進させることができる。また、空気極における電子伝導性が向上することにより、触媒活性サイトが増加し、充放電容量を向上させることもできる。
RuO粒子を担持するカーボンは、多孔質構造を有するものであってもよいし、多孔質構造を有しないものであってもよいが、多くの反応場を提供できることから、高比表面積を有するものが好ましい。高比表面積を有するカーボンとしては、例えば、メソポーラスカーボン、活性炭、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が挙げられる。
具体的には、カーボンは、10m/g以上、特に100m/g以上、さらに600m/g以上の比表面積を有することが好ましい。ここで、カーボンの比表面積は、例えば、BET法によって測定することができる。
本発明の空気極触媒において、RuO担持量[RuOの重量/空気極触媒全体の重量×100%]は特に限定されないが、触媒と酸素の反応効率の観点から、10〜20%、特に13〜16%、中でも14〜15%であることが好ましい。RuO担持量が上記範囲の下限値未満であると、充分な触媒活性が発現されないおそれがあり、RuO担持量が上記範囲の上限値を超えると、触媒が凝集するおそれがあるからである。
次に、本発明の空気極触媒の製造方法について説明する。上記にて説明した本発明の空気極触媒は、例えば、下記製造方法によって製造することができる。
本発明の空気極触媒の製造方法は、RuO前駆体とカーボンとを含むRuO前駆体‐カーボン混合溶液を、超音波処理する超音波工程と、
前記超音波処理を行った前記RuO前駆体及び前記カーボンを含むRuO前駆体−カーボン混合物に対して、強アルカリを添加し、前記カーボン表面にRuO粒子を担持させる担持工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の空気極触媒の製造方法は、強アルカリによる中和により、カーボン表面に水酸化ルテニウムを析出させる、いわゆる中和析出法を利用するものである。析出した水酸化ルテニウムは、酸化により二酸化ルテニウムを生成する。カーボン表面で二酸化ルテニウムを生成させるため、本発明により提供される空気極触媒においては、RuO粒子とカーボンとの電子伝達が効率的に行われる。

本発明の空気極触媒の製造方法は、RuO前駆体とカーボンとを含むRuO前駆体‐カーボン混合溶液を、超音波処理する点に特徴を有している。この超音波処理によって、RuO前駆体を、RuO粒子の担体となるカーボンの表面、例えば、孔内まで、くまなく浸透させ、吸着させることができる。その結果、カーボン表面にRuO粒子を高分散状態で担持させることが可能となる。また、Ru原子の配列を精密に制御し、上記層状結晶構造を有するRuO粒子を調製することができる。
以下、各工程について説明する。
(超音波工程)
超音波工程は、RuO前駆体とカーボンとを含むRuO前駆体‐カーボン混合溶液を、超音波処理する工程である。RuO前駆体‐カーボン混合溶液は、少なくともRuO前駆体と、カーボンと、溶媒とを含むものである。
RuO前駆体としては、Ru元素を含み、強アルカリと反応して水酸化ルテニウムを生成させるものであれば特に限定されない。例えば、塩化ルテニウム、ルテニウムクロロ錯体、これら水和物等が挙げられる。
カーボンとしては、上記空気極触媒において説明したカーボンと同様である。
溶媒としては、RuO前駆体を溶解可能であればよく、例えば、水、エタノール、アセトン、これら混合物等を用いることができる。
RuO前駆体‐カーボン混合溶液は、RuO前駆体、カーボン及び溶媒を混合して調製できるが、予めRuO前駆体を溶媒に溶解したRuO前駆体溶液を調製し、該溶液とカーボンとを混合することで調製することが好ましい。
RuO前駆体‐カーボン混合溶液における、RuO前駆体とカーボンの仕込み量を調整することによって、得られる空気極触媒のRuO担持量を調整することができる。
(RuO前駆体‐カーボン洗浄工程)
超音波処理を行ったRuO前駆体‐カーボン混合溶液は、そのまま、担持工程に供してもよいが、担持工程の前に、固液分離処理により固形分を分離させ、得られた固形分を水洗浄するRuO前駆体‐カーボン洗浄工程を備えることが好ましい。
このようなRuO前駆体‐カーボン洗浄工程を経ることによって、カーボンの細孔内等、カーボン表面に付着した付着成分を除去することができ、RuO粒子の層状結晶構造をより精密に制御することが可能となるからである。活性炭等のカーボン材料の表面には、賦活剤等に由来するNaやK等が付着している場合がある。これら元素の存在は、RuO粒子の上記層状結晶構造の形成を阻害する可能性がある。
水洗浄の方法は、上記したような付着物を除去可能であれば特に限定されず、洗浄に使用する水量は適宜決定すればよく、また、洗浄方法も常法を採用することができる。
固液分離処理は特に限定されず、ろ過、遠心分離等、一般的な方法を採用することができる。
(担持工程)
担持工程は、超音波処理を行ったRuO前駆体−カーボン混合物に対して、強アルカリを添加し、カーボン表面にRuO粒子を担持させる担持工程である。
ここで、超音波処理を行ったRuO前駆体−カーボン混合物としては、(1)上記超音波処理後のRuO前駆体−カーボン溶液、(2)上記超音波処理後、RuO前駆体−カーボン溶液を固液分離処理することによって得られた固形分、及び、(3)該固形分を水洗浄して得られた固形分が含まれる。
強アルカリとしては、カーボン表面で、RuO前駆体を中和し、水酸化ルテニウムを生成させることができれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。これら強アルカリ水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常、0.5〜1.5mol/Lの範囲であることが好ましい。
RuO前駆体−カーボン混合物と強アルカリとの混合物は、超音波処理することが好ましい。RuO前駆体のカウンターイオンの中和を効率良く行い、水酸化ルテニウムの生成を促すことができるからである。典型的には、RuO前駆体−カーボン混合物に超音波を照射しながら、強アルカリを滴下することが好ましい。
強アルカリによる中和の後、さらに、弱アルカリを添加することで、Ru原子のさらなる精密な配列が期待できる。弱アルカリとしては、アンモニウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液等のアンモニウム塩水溶液等が挙げられる。
アルカリ添加後の反応物を、適宜、洗浄、乾燥を行うことで、カーボン上の水酸化ルテニウムが酸化され、二酸化ルテニウムが生成する。
上記反応物の洗浄方法は、特に限定されないが、RuO前駆体に由来する陰イオン等の残留成分、特に塩化物イオンを効果的に除去することができ、RuO粒子の層状結晶構造をより精密に制御するできることから、50〜90℃、特に60〜80℃の比較的高温の水で行うことが好ましい。また、50〜90℃の水での洗浄は、複数回、例えば、5〜10回行うことが好ましい。
一般的な洗浄は、室温(20〜25℃程度)の水で行われるが、このような温度の水を用いた洗浄では、塩化物イオンを充分に除去することができない。従って、RuO前駆体として、塩化ルテニウム等の塩素含有化合物を用いた場合には、上記のような比較的高温の水による洗浄を行うことが好ましい。一方、RuO前駆体として、アンモニウム塩、硝酸塩等を用いた場合は、室温の水で洗浄しても、続く乾燥工程で残留成分を除去することが可能な場合もある。
乾燥は、通常、酸素存在下(例えば大気中)、100〜140℃で行うことができ、好ましくは110〜130℃である。
次に、本発明のリチウム空気二次電池について説明する。
本発明のリチウム空気二次電池は、空気極、負極、及び空気極と負極との間に介在する電解質を備えるリチウム空気二次電池であって、空気極が、本発明の空気極触媒、或いは、本発明の空気極触媒の製造方法により製造された空気極触媒を含むことを特徴とするものである。
以下、本発明のリチウム空気二次電池の構成要素について説明する。
(空気極)
空気極は、少なくとも上記空気極触媒を含有する。空気極は、典型的には、空気極触媒を含有する空気極層を備え、通常、空気極の集電を行う空気極集電体も備える。さらに、必要に応じて当該空気極集電体に接続された空気極リードを備えていてもよい。
(空気極層)
空気極層は、少なくとも上記RuO粒子がカーボンに担持された、本発明の空気極触媒を含有する。さらに、必要に応じて結着剤を含有していてもよい。
本発明の空気極触媒については、既述したため、ここでの説明は省略する。
空気極層における本発明の空気極触媒の含有量は、空気極触媒におけるRuOとカーボンとの割合によるが、空気極層全体の質量を100質量%とした場合に、RuOの含有割合が5質量%〜50質量%となる量であることが好ましく、RuOの含有割合が10質量%〜45質量%となる量であることがより好ましい。RuOの含有割合が5質量%未満であると、充分な触媒機能が発揮されないおそれがあり、RuOの含有割合が50質量%を超えると、相対的に導電性材料であるカーボンの含有割合が減る結果、反応場が減少し、電池容量の低下が生じるおそれがあるからである。
空気極層は、空気極触媒として本発明の空気極触媒のみを含有していてもよいし、他の触媒と組み合わせて含有していてもよい。他の触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム及び白金等の白金族;コバルト、マンガン又は鉄等の遷移金属を含むペロブスカイト型酸化物;ルテニウム、イリジウム又はパラジウム等の貴金属酸化物を含む無機化合物;ポルフィリン骨格又はフタロシアニン骨格を有する金属配位有機化合物;二酸化マンガン(MnO)及び酸化セリウム(CeO)等の無機セラミックス;これらの材料を混合した複合材料等が挙げられる。
また、空気極層は、本発明の空気極触媒を構成するカーボン以外の他の導電性材料を含有していてもよい。他の導電性材料としては、上記空気極触媒を構成するカーボンとして例示したカーボンと同様である。
空気極層は、空気極触媒を固定化する結着剤を含有することが好ましい。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、スチレン・ブタジエンゴム(SBRゴム)等のゴム系樹脂等を挙げることができる。空気極層における結着剤の含有割合は、特に限定されるものではないが、空気極層全体の質量を100質量%とした場合に、50質量%以下であることが好ましく、25質量%〜35質量%であることがより好ましい。
空気極層の厚さは、リチウム空気二次電池の用途等により異なるものであるが、例えば2μm〜500μmの範囲内、特に5μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
(空気極集電体)
空気極集電体は、空気極層の集電を行うものである。空気極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。空気極集電体の形状としては、例えば箔状、板状及び繊維状の他、不織布及びメッシュ(グリッド)等の多孔質状などを挙げることができる。中でも、酸素の供給性能が高く、且つ、集電効率に優れるという観点から、多孔質状の集電体が好ましい。
多孔質状の集電体を使用する場合、通常、空気極層の内部に集電体が配置される。この場合、多孔質状の空気極集電体により集電された電荷を集電する別の空気極集電体(例えば箔状の集電体)をさらに備えていてもよい。
尚、後述する電池ケースが空気極集電体の機能を兼ね備えていてもよい。
空気極集電体の厚さは、例えば10μm〜1000μmの範囲内、中でも20μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。
空気極層と空気極集電体とを備える空気極の製造方法は、特に限定されず、例えば、少なくとも本発明の空気極触媒、及び必要に応じて結着剤を混合した空気極合材ペーストを、空気極集電体の表面に塗布、乾燥させることで、空気極層と空気極集電体とが積層した空気極を作製することができる。或いは、空気極合材ペーストを塗布、乾燥して得られた空気極層を、空気極集電体と重ね合わせ、適宜、加圧や加熱等を行うことで、空気極層と空気極集電体とが積層した空気極を作製することもできる。
空気極合材ペーストの溶媒としては、揮発性を有していれば特に限定されず、適宜選択することができる。具体的には、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。空気極材混合物の乾燥が容易になることから、沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。
空気極材混合物を塗布する方法は特に限定されず、ドクターブレード、スプレー法等の一般的な方法を用いることができる。
(負極)
負極は、リチウムイオンを放出・取り込み可能な負極活物質を含有する負極層を備える。通常は、負極層に加えて、負極層の集電を行う負極集電体を備える。さらに必要に応じて負極集電体に接続された負極リードを備えていてもよい。
(負極層)
負極層は、リチウムイオンを放出・取り込み可能な負極活物質を含有する。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム元素を含有する合金材料、リチウム化合物等が挙げられる。また、グラファイト等の炭素材料も負極活物質として用いることができる。
リチウム元素を含有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。また、リチウム化合物としては、例えばリチウムチタン酸化物等の酸化物、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等の窒化物等を挙げることができる。
負極層は、負極活物質のみを含有するものであってもよく、負極活物質の他に導電性材料および結着剤の少なくとも一方を含有するものであってもよい。例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極層とすることができる。一方、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質および結着剤を含有する負極層とすることができる。なお、導電性材料および結着剤については、上述した「空気極」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(負極集電体)
負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、板状およびメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。本発明においては、後述する電池ケースが負極集電体の機能を兼ね備えていてもよい。
負極の製造方法は特に限定されない。例えば、箔状の負極活物質と負極集電体とを重ね合わせて加圧する方法が挙げられる。また、別の方法として、負極活物質と結着材とを含有する負極材混合物を調製し、該混合物を負極集電体上に塗布、乾燥する方法を挙げることができる。
(電解質)
電解質は、空気極と負極との間、具体的には、空気極層及び負極層の間に保持され、空気極層及び負極層との間でリチウムイオンを交換する働きを有する。
電解質としては、リチウムイオンを伝導することができれば、特に限定されず、非水系電解質、水系電解質、固体電解質等を用いることができる。
非水系電解質としては、非水系電解液及び非水ゲル電解質を用いることができる。
非水系電解液は、リチウム塩及び非水溶媒を含有する。
リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO及びLiAsF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(SOCF[略称 Li−TFSI]、LiN(SO及びLiC(SOCF等の有機リチウム塩等を挙げることができる。
非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及びこれらの混合物等を挙げることができる。また、テトラエチルアンモニウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド等のアンモニウム塩に代表されるような、イオン性液体等の低揮発性液体を非水溶媒として用いることもできる。溶存した酸素を効率良く反応に用いることができるという観点から、非水溶媒は、酸素溶解性が高い溶媒であることが好ましい。
非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5mol/L〜3mol/Lの範囲内である。
非水ゲル電解質は、通常、非水系電解液にポリマーを添加してゲル化したものであり、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加し、ゲル化することにより得ることができる。
水系電解液としては、水にリチウム塩を含有させたものが挙げられる。リチウム塩としては、例えばLiOH、LiCl、LiNO、CHCOLi等を挙げることができる。
上記水系電解質及び非水系電解質中には、さらに固体電解質を混合して用いることができる。固体電解質としては、例えば、Li−La−Ti−O系固体電解質等を用いることができる。
(セパレータ)
空気極−電解質−負極の順番で配置されている積層体を、繰り返し何層も重ねる構造を取る場合には、安全性の観点から、異なる積層体に属する空気極および負極の間に、セパレータを有することが好ましい。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜;および樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
上記セパレータに使用できるこれらの材料は、上述した電解質を含浸させることにより、電解質の支持材として使用することもできる。
(電池ケース)
リチウム空気二次電池は、通常、空気極、負極、電解質等を収納する電池ケースを有する。電池ケースの形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。電池ケースは、大気開放型であってもよく、密閉型であってもよい。大気開放型の電池ケースは、少なくとも空気極層が十分に大気と接触可能な構造を有する。一方、密閉型の電池ケースには、気体(空気)の導入管および排気管を設けることが好ましい。この場合、電池ケースに導入する気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
[実施例1]
(空気極触媒の製造)
図2に示すフローにより、空気極触媒を製造した。すなわち、まず、塩化ルテニウム水和物(RuCl・HO)4.5gと、水100mLとを混合し、RuCl・HO溶液(RuCl・HO濃度0.2mol/L)を調製した。次に、RuCl・HO溶液に活性炭(商品名ケッチェンブラック、KB international社製)3gを添加し、超音波処理を4時間行った後、ろ過(東洋濾紙社製、濾紙No.5C)して得られた固形分を水(400mL)で洗浄した。
続いて、上記固形分(RuCl・HO/活性炭)に、NaOH(1mol/L)100mLを添加し、超音波処理を0.5時間行った。その後、70℃の水(300mL)での洗浄を7回行い、大気中、120℃で12時間乾燥させ、活性炭上にRuOを担持させた空気極触媒(以下、RuO/Cと称する)を得た。
得られたRuO/Cについて、誘導プラズマ発光分析を行ったところ、RuOの担持量[RuO/(RuO+活性炭)]が14.5wt%であることが確認された。
また、得られたRuO/Cについて、TEM観察を行った。結果を図3に示す。約2nmのRuO粒子が、凝集することなく高分散状態で、活性炭上に担持されていることが確認できた。
また、得られたRuO/Cについて、RuO粒子の表面積を測定したところ、461mであった。尚、RuO粒子の表面積は、誘導プラズマ発光分析と透過電子顕微鏡により測定した。
さらに、得られたRuO/Cについて、XAFS測定方法を行った。具体的には、FEFF8(ワシントン大学製)の解析コードを用い、分光器にSi(111)、検出器にイオンチャンバーを使用し、透過法によりRu−K吸収端を測定した。得られたRuO/CのRuO粒子は、Ru原子‐O原子間距離が1.990Åであり、隣接するRu原子間距離が3.110Åであり、Ru原子に配位するO原子数が3.5であり、且つ、隣接するRu原子数が1.5である、層状結晶構造を有することが確認された。図11にXAFS解析モデルを示す。
(リチウム空気二次電池セルの作製)
上記にて得られたRuO/Cと、PVDF(商品名KYNAR(登録商標)、ARKEMA社製)と、を混練し、カーボンペーパー上に塗布して乾燥させることにより空気極を作製した。
作製した空気極を用いて、図4に示すリチウム空気二次電池セルを作製した。図4は、リチウム空気電池セルの断面模式図である。なお、図4中の白丸は気密性を保つためのパッキンを示し、二重波線は図の省略を意味している。
空気極1は、電解質層2を挟んで、リチウム金属箔(極東金属社製、厚み200μm、φ15mm)からなる負極活物質層3と対峙させた。電解質層2としては、ポリプロピレン不織布(旭化成株式会社製、商品番号:JH1004N)に電解液を含浸させたものを用いた。電解液としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム−ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミン(略称;PP13−TFSA)に、LiN(SOCF(略称;Li−TFSA)を溶解させたものを用いた(Li−TFSA濃度;0.32mol/kg)。
空気極1、電解質層2及び負極活物質層3は、ステンレス製筐体4及びテフロン(登録商標)製筐体5(F型セル:北斗電工株式会社製)に収納されている。なお、ステンレス製筐体4と電解質層2との間は、ニッケル層6によって仕切られている。さらに、負極活物質層3側には負極リード7を、空気極1側には空気極リード8を、それぞれ設置した。空気極1と負極活物質層3との距離は2cmとした。
セル全体をガス置換コック付ガラスデシケータ(図示せず)内に載置した。空気極1には、酸素タンク(図示せず)から酸素又はアルゴンタンク(図示せず)からアルゴンが供給可能である。
(充放電評価)
上記にて作製したリチウム空気二次電池セルについて、以下の条件下、充放電評価を行った。
充放電試験機:ナガノ社製充放電試験装置(商品番号:BTS2004H)
電流密度:0.05mA/cm
放電終止電圧:2.0V
充電終止電圧:3.8V
測定温度:60℃
空気極供給ガス:酸素ガス(1atm)又はアルゴンガス(1atm)
結果を図5〜図10に示す。
尚、図5の[5A]は1サイクル目の放電曲線(0〜350mAh/g)であり、図5の[5B]は[5A]に示す1サイクル目の放電曲線を部分的に拡大(0〜30mAh/g)したものである。図6の[6A]は1サイクル目の充電曲線(0〜350mAh/g)であり、図6の[6B]は[6A]に示す1サイクル目の充電曲線を部分的に拡大(0〜30mAh/g)したものである。
図7〜図10は、図5及び図6に示す放電曲線及び充電曲線から導き出される実施例及び比較例の諸特性である。図7は放電開始電圧(放電電圧が変曲する電圧)であり、図8は酸素ガス供給時の放電容量(放電終止時の比容量)及び充電容量(充電終止時の比容量)である。図9は、酸素ガス供給時の放電容量とアルゴンガス供給時の放電容量との差、並びに、酸素ガス供給時の充電容量とアルゴンガス供給時の充電容量との差、を示す。図10は、図9における実施例1と比較例1の結果を抜粋し、拡大して示したものである。図10の横軸はRuO粒子の比表面積である。
[比較例1]
実施例1において、カーボン粒子(商品名ケッチェンブラック、KB international社製)1.1gと、PVDF(商品名KYNAR(登録商標)、ARKEMA社製)1.5gと、RuO(東京化成社製、φ1,000nm、表面積0.92m)1.9gとを混練し、カーボンペーパー上に塗布して乾燥させることにより空気極を作製したこと以外は、同様にしてリチウム空気二次電池セルを作製し、充放電評価を行った。結果を図5〜図10に示す。
[比較例2]
比較例1において、RuOの代わりに、V(Aldrich社製、φ=1,000nm)を用いて空気極を作製したこと以外は、同様にしてリチウム空気二次電池セルを作製し、充放電評価を行った。結果を図5〜図9に示す。
[比較例3]
比較例1において、Vを用いずに空気極を作製したこと以外は、同様にしてリチウム空気二次電池セルを作製し、充放電評価を行った。結果を図5、及び図7〜図9に示す。
[充放電評価結果]
図5及び図6に示すように、実施例1及び比較例1、2のリチウム空気二次電池は、酸素ガス供給時及びアルゴンガス供給時のいずれにおいても、二次電池特性を発現した。すなわち、実施例1のRuO/C、比較例1のRuO及び比較例2のVは、それぞれ、Liイオンの挿入能及び脱離能を有すると共に、リチウムイオンと酸素からリチウム酸化物を生成する反応に対する触媒活性及びリチウム酸化物を分解しリチウムイオンを生成する反応に対する触媒活性を有することがわかる。また、比較例2の放電曲線においては、2つの放電電圧平担部が観察され、第1の平担部(3.1〜3.4V)ではVへのリチウムイオンの挿入反応が起こっていると考えられる。第1の平担部の後、電圧は、第2の平担部(2.3〜2.4V)まで急激に低下する。第2の平担部では、詳細な反応機構はまだ明らかではないが、Vの還元体の形成が起こっていると推測される。
図7に示すように、空気極に触媒成分を含む実施例1(RuO/C)、比較例1(RuO)及び比較例2(V)の放電開始電圧は、空気極に触媒成分を含まない比較例3の放電開始電圧と比べて、高くなった。
また、図8に示すように、比較例2は、充放電容量が大きいものの、酸素供給時における放電容量と電圧容量との差が大きく、不可逆容量が大きいことがわかる。これに対して、実施例1及び比較例1は、酸素ガス供給時及びアルゴンガス供給時において、充放電容量は小さいものの、充放電容量の差が小さく、不可逆容量が小さい。
図9は、酸素ガス供給時とアルゴンガス供給時との放電容量の差、及び、酸素ガス供給時とアルゴンガス供給時との充電容量の差、すなわち、脱離しないLiイオンを差し引いて分解されないリチウム酸化物に起因する不可逆容量を示すものである。図9より、比較例2は、充電時におけるリチウム酸化物の分解反応性が低いことに起因して、不可逆容量が大きいことがわかる。比較例1は、比較例2に比べてリチウム酸化物に起因する不可逆容量は小さいものの、実施例1と比べると放電容量と充電容量の差が大きく、充電時のリチウム酸化物の分解が進みにくいことがわかる。実施例1と比較例1との不可逆容量の差は、図10からも明らかである。図10に示すように、実施例1と比較例1とでは、RuO粒子の粒径に起因して、実施例1の方が触媒の表面積が大きいことも、不可逆容量の差に影響していると思われる。
1…空気極
2…電解質層
3…負極
4…ステンレス製筐体
5…テフロン(登録商標)製筐体
6…ニッケル層
7…負極リード
8…空気極リード

Claims (7)

  1. RuO粒子が、カーボン上に担持されており、
    前記RuO粒子が、
    Ru原子‐O原子間距離が1.5〜2.0Åであり、隣接するRu原子間距離が2.6〜3.2Åであり、Ru原子に配位するO原子数が2.0〜4.0であり、且つ、隣接するRu原子数が1.2〜2.0である、層状結晶構造を有すると共に、2〜5nmの粒径を有することを特徴とする、リチウム空気二次電池用空気極触媒。
  2. 前記RuO粒子の粒径が2nmである、請求項1に記載のリチウム空気二次電池用空気極触媒。
  3. RuO前駆体とカーボンとを含むRuO前駆体‐カーボン混合溶液を、超音波処理する超音波工程と、
    前記超音波処理を行った前記RuO前駆体及び前記カーボンを含むRuO前駆体−カーボン混合物に対して、強アルカリを添加し、前記カーボン表面にRuO粒子を担持させる担持工程と、
    を備えることを特徴とする、リチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法。
  4. 前記担持工程において、前記強アルカリ添加後の反応物を、60〜80℃の水で洗浄する、請求項3に記載のリチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法。
  5. 前記超音波工程後であって前記担持工程前に、前記RuO前駆体‐カーボン混合溶液を固液分離処理し、得られた固形分を水洗浄するRuO前駆体‐カーボン洗浄工程を備える、請求項3又は4に記載のリチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法。
  6. 前記担持工程において、前記RuO前駆体−カーボン混合物と前記強アルカリとの混合物を超音波処理する、請求項3乃至5のいずれかに記載のリチウム空気二次電池用空気極触媒の製造方法。
  7. 空気極、負極、及び前記空気極と前記負極との間に介在する電解質を備えるリチウム空気二次電池であって、
    前記空気極が、請求項1又は2に記載のリチウム空気二次電池用空気極触媒、或いは、請求項3乃至6のいずれかに記載の製造方法により製造されたリチウム空気二次電池用空気極触媒を含むことを特徴とする、リチウム空気二次電池。
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