JP2012091979A - セラミック接合体およびこれを用いた支持体 - Google Patents

セラミック接合体およびこれを用いた支持体 Download PDF

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Abstract

【課題】 腐食性の高い流体が流れる流路を備える部材において、長期間にわたって使用することのできるセラミック接合体およびこれを用いた支持体を提供する。
【解決手段】 基体2と、基体2に接合層6を介して接合された蓋3とを備えたセラミック接合体1であって、基体2と蓋3とで形成される空間が流体の流路5とされ、流体の流れる方向に流路5を断面視したとき、深さの深い領域5aの両側に浅い領域5bを有しているセラミック接合体1である。流路5に、腐食性の高い流体を流したとしても、基体2と蓋3との接合層6は劣化しにくく、流体の漏洩が生じることが少ないので、腐食性の高い流体が流れる流路5を備える部材として長期間にわたって使用することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、腐食性の高いガスや液体等の流体が流れる流路を備えるセラミック接合体およびこれを用いた支持体に関する。
従来、腐食性の高いガスや液体等の流体が流れる流路を備える部材には、耐食性に優れたセラミックスが用いられている。しかし、セラミックスは、優れた耐食性とともに、優れた機械的特性を有しており、セラミックスからなる一つの基材中に流体が流れる流路を加工により形成することは容易でなかった。また、セラミックスは、高温での焼結を必要とする難焼結材であることから、セラミックスからなる一つの基材中に流体が流れる流路を加工により形成できたとしても、クラック等の不具合を生じることなく、上述した部材となる焼結体を得ることも容易でなかった。そのため、このような部材は、セラミックスからなる基体および蓋を用いて、基体と溝とを接合層を介して接合することによって形成される空間を流体の流路としたセラミック接合体が用いられている。
図4は、従来のセラミック接合体を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のX−X’線での断面図である。
図4に示すように、従来のセラミック接合体20は、流路25となる溝が形成された第1のセラミックス基材22と、中央に流体の出入口24を有する第2のセラミックス基材23とが、互いの接合面に樹脂系やガラス系等の接合剤を塗布して熱処理することによって、接合層26で接合されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2002−47071号公報
しかしながら、特許文献1に記載された構造のセラミック接合体は、流路25に腐食性の高い流体を流すと、接合層26の一部が流路に露出しているため、腐食性の高い流体との接触や摩擦により、接合層26が劣化し、それが進むとやがて接合層26の劣化部分から流体が漏洩するという問題があった。そのため、腐食性の流体の漏洩することが少なく、長期間にわたって使用することのできるセラミック接合体が求められている。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、腐食性の高い流体が流れる流路を備える部材において、長期間にわたって使用することのできるセラミック接合体およびこれを用いた支持体を提供することを目的とする。
本発明のセラミック接合体は、基体と、該基体に接合層を介して接合された蓋とを備えたセラミック接合体であって、前記基体と前記蓋とで形成される空間が流体の流路とされ、前記流体の流れる方向に前記流路を断面視したとき、深さの深い領域の両側に浅い領域を有していることを特徴とするものである。
また、本発明のセラミック接合体は、上記構成において、前記基体に前記流体が流れる溝を備えるとともに、該溝の両側に凹部を備えており、前記蓋の両端に、前記基体の前記
凹部と嵌合される凸部を備えていることを特徴とするものである。
また、本発明のセラミック接合体は、上記構成において、前記溝の壁面と前記蓋の両端に設けられた前記凸部の側面とが接合面であることを特徴とするものである。
また、本発明のセラミック接合体は、上記いずれかの構成において、前記基体と前記蓋とが同材質のセラミックスからなることを特徴とするものである。
また、本発明の支持体は、上記いずれかの構成のセラミック接合体を載置物の支持に用いたことを特徴とするものである。
本発明のセラミック接合体によれば、基体と、該基体に接合層を介して接合された蓋とを備えたセラミック接合体であって、前記基体と前記蓋とで形成される空間が流体の流路とされ、前記流体の流れる方向に前記流路を断面視したとき、深さの深い領域の両側に浅い領域を有していることにより、深さの深い領域よりもその両側の浅い領域を流れる流体の流速を低下させることができるので、流速の低下により流体と接合層とが接するときの摩擦を少なくすることができるため、接合層の劣化を抑制することができる。
また、本発明のセラミック接合体によれば、前記基体に前記流体が流れる溝を備えるとともに、該溝の両側に凹部を備えており、前記蓋の両端に、前記基体の前記凹部と嵌合される凸部を備えているときには、浅い領域を流れる流体の流速を低下させることができるとともに、凸部と凹部とが嵌め合わされていることによって流体の浸入を抑制しているので、接合層の劣化による流体の漏洩のおそれをより少なくすることができる。
また、本発明のセラミック接合体によれば、前記溝の壁面と前記蓋の両端に設けられた前記凸部の側面とが接合面であるときには、溝の壁面と蓋の両端に設けられた凸部の側面との間に接合剤が充填されていることから、凹部の深さに相当する接合層が流体の漏洩の障壁となるので、流体の漏洩のさらに少ないセラミック部材とすることができる。
また、本発明のセラミック接合体によれば、前記基体と前記蓋とが同材質のセラミックスからなるときには、流路を流れる流体の温度によって、熱膨張率の違いで寸法差が生じることが少なく、材質の異なるセラミックスで構成された接合体と比較して、接合層が劣化しにくいので、基体と蓋との接合力が低下したり、流体が漏洩したりするおそれを少なくすることができる。
また、本発明の支持体によれば、本発明のセラミック接合体を載置物の支持に用いたことにより、腐食性の高い流体を流路に流したとしても流体が漏洩することが少なく、載置物の重量に十分に耐える強度を有しているので、長期間にわたって安定して載置物を支持する支持体として好適に用いることができる。
本実施形態のセラミック接合体の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線での断面図である。 本実施形態のセラミック接合体の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B’線での断面図である。 本実施形態のセラミック接合体のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線での断面図である。 従来のセラミック接合体を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のX−X’線での断面図である。
以下、本実施形態のセラミック接合体について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態のセラミック接合体の一例を示す、(a)が平面図であり、(b)がA−A’線での断面図である。
図1に示すように、本実施形態のセラミック接合体1は、基体2と、基体2に接合層6を介して接合された蓋3とを備え、基体2と蓋3とで形成される空間が流体の流路5となり、基体2および蓋3には、流路5に通ずる流体の出入口4が設けられている。そして、本実施形態のセラミック接合体1は、図1(b)に示すように、流体の流れる方向に流路5を断面視したとき、深さの深い領域5aの両側に浅い領域5bを有していることを特徴としている。
なお、図1においては、基体2および蓋3のいずれにも溝を設けて、これらを接合層6を介して接合することによって形成される空間を流路5としたが、本実施形態においては、基体2と蓋3とで形成される空間が流体の流路5となり、流体の流れる方向に流路5を断面視したとき、深さの深い領域5aの両側に浅い領域5bを有していればよいので、基体2または溝3のいずれかに溝が設けられているものでもよい。
このような構造のセラミック接合体1は、深さの異なる領域を有し、深さの深い領域5aの両側に浅い領域5bを有していることにより、出入口4から流路5に腐食性の高いガスや液体等の流体を流したときに、深さの深い領域5aよりもその両側の浅い領域5bを流れる流体の流速を低下させることができ、流速の低下により流体と接合層6とが接するときの摩擦を少なくすることができるため、接合層6の劣化を抑制することができる。そのため、長期間にわたって流体の漏洩の少ないセラミック接合体1とできる。
ここで、深さの深い領域5aおよび浅い領域5bの深さとしては、浅い領域5bの深さ/深い領域5aの深さの比が、1/10以上1/2以下であることが好ましい。このように、深さの比が1/10以上1/2以下であれば、浅い領域5bを流れる流体の流速を低下させて、流体と接合層6とが接することによる摩擦を少なくすることができるので、接合層6の劣化を抑制することができる。また、流体の流れる方向に流路5を断面視したときの浅い領域5bの幅については、深い領域5aの幅の1/2以上の幅とするのが好ましい。
また、本実施形態のセラミック接合体1の流路5に流すことのできる流体としては、腐食性の高いガスや液体等の流体に限るものではない。例えば、高温に加熱された流体として、水,油,シリコン油などの液体や水蒸気、また、冷却された流体として、水,アセトン,液体窒素,ブライン(不凍液),ガルデン(登録商標)などの液体やアンモニア,フロン,二酸化炭素などの気体が使用可能である。さらには、製造工程における種々の装置から排出される、加熱または冷却されたガスや流体を流路5に流し、廃熱利用を行なうことも可能である。
図2は、本実施形態のセラミック接合体の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B’線での断面図である。
図2に示すように、本実施形態のセラミック接合体1は、基体2に流体が流れる溝を備えるとともに、溝の両側に凹部9を備えており、蓋3の両端に、基体2の凹部9と嵌合される凸部8を備えていることが好適である。なお、図2に示す構造のセラミック接合体1において、浅い領域5bを有さず、一つの領域のみの流路であれば、流体の流速が抑えられていないことから、凸部8と凹部9とが嵌合された隙間には流体が浸入しやすく、接合
層6を劣化させて、流体が漏洩してしまう。
これに対し、基体2に流体が流れる溝を備えるとともに、溝の両側に凹部9を備えており、蓋3の両端に、基体2の凹部9と嵌合される凸部8を備えるときには、流体の流れる方向に流路5を断面視したとき、深さの深い領域5aの両側に浅い領域5bを有していることによって、浅い領域5bを流れる流体の流速を低下させることができるとともに、凸部8と凹部9とが嵌合されていることによって、流体の浸入を抑制することができるので、接合層6の劣化による流体の漏洩のおそれをより少なくすることができる。そのため、図1に示す例のセラミック接合体1よりも長期間にわたって使用することのできるセラミック接合体1となる。
また、このように凸部8と凹部9とが嵌合された構造とすることにより、位置決めが容易となり、図1に示す例のセラミック接合体1よりも、接合面積を少なくすることができるので、使用する接合剤の量を減らすことができる。
図3は、本実施形態のセラミック接合体1のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線での断面図である。
図3に示すように、本実施形態のセラミック接合体1は、溝の壁面10と蓋3の両端に設けられた凸部8の側面とが接合面である構造とすることにより、図2に示す例のセラミック接合体1と同様に、浅い領域5bを流れる流体の流速を低下させることができるとともに、凸部8と凹部9とが嵌合されていることによって流体の浸入を抑制しているので、接合層6の劣化による流体の漏洩のおそれを少なくすることができる。
また、上記構造とすることにより、溝の壁面10と蓋3の両端に設けられた凸部8の側面との間には接合剤が充填されて、凹部9の深さに相当する接合層6が流体の漏洩の障壁となるので、図2に示す構造のセラミック接合体1よりも、流体の漏洩のより少ないセラミック接合体1とすることができる。さらに、図3に示すように、凹部9の深さと凸部8の高さとを揃えて嵌合することにより、図2に示す例のセラミック接合体1よりも、蓋3が接合されてなる基体2の表面(図3(a)の図示面)を容易に平坦にすることができる。
また、本実施形態のセラミック接合体1は、アルミナ,ジルコニアなどの酸化物セラミックスや、窒化珪素,炭化珪素などの非酸化物セラミックスを適用することが可能であるが、基体2と蓋3とが同材質のセラミックスからなることが好ましい。これにより、流路5を流す流体の温度によって、熱膨張率の違いで寸法差が生じることが少なく、材質の異なるセラミックスで構成された接合体と比較して、接合層6が劣化しにくいので、基体2と蓋3との接合力が低下したり、流体が漏洩したりするおそれを少なくすることができる。
特に、本実施形態のセラミック接合体1は、基体2と蓋3とが高純度のアルミナ質焼結体からなることが好ましい。具体的には、純度が95%以上の高純度のアルミナ質焼結体を用いることにより、腐食性の高い流体に対する耐食性を向上させることが可能となる。
次に、本実施形態のセラミック接合体1の製造方法について説明する。
まず、基体2および蓋3の成形体を得る工程について説明する。純度が90%以上であり平均粒径が1μm程度のセラミック原料を用意し、これに焼結助剤,バインダ,溶媒および分散剤等を所定量添加して混合したスラリーを噴霧乾燥造粒法(スプレードライ法)により造粒し、2次原料とする。
このときに用いるセラミック原料としては、アルミナ,ジルコニアなどの酸化物セラミックスや、窒化珪素,炭化珪素などの非酸化物セラミックスを適用することが可能であるが、腐食性の高い流体が流路5を流れる場合には、純度が95%以上であり、平均粒径が1μm以下の高純度のアルミナセラミック原料を用いることが好適であり、これにより、耐食性に優れたセラミック接合体1とすることができる。
次に、噴霧乾燥して造粒した2次原料を所定形状のゴム型内へ投入し、静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により成形し、その後、成形体をゴム型から取り外し、所定形状の基体2および蓋3となるように成形体に切削加工を施す。
ここで、例えば基体2が溝を有する構造の場合において、基体2となる成形体については、一方の主面(上面)に流路5となる溝を形成する。なお、図1に示す構造であれば、基体2となる成形体には、深い領域5aとなる溝を形成し、図2および図3に示す構造であれば、基体2となる成形体には、深い領域5aおよび浅い領域5bとなる溝とともに凹部9を形成する。
また、蓋3となる成形体については、図1に示す構造であれば、基体2との接合面側に深い領域5aの一部と浅い領域5bとなる溝を形成する。図2および図3に示す構造であれば、流体の流れる方向に沿って蓋3の両脇に凸部を形成する。
また、基体2となる成形体および蓋3となる成形体の少なくとも2箇所に、流路5に通ずる流体の出入口4を形成する。ここで、流体の出入口4は、用途や目的に合わせて、基体2および蓋3にそれぞれ設けても、基体2のみに設けても、蓋3のみに設けてもよい。
例えば、流体の入口および出口を基体2側とするのであれば、少なくとも2箇所の出入口4を基体2となる成形体のみに設ければよく、流体の入口および出口を蓋3側とするのであれば、少なくとも2箇所の出入口4を蓋3となる成形体のみに設ければよい。また、流体の入口側と出口側とが基体2と蓋3との異なる側にあるのであれば、基体2となる成形体および蓋3となる成形体のそれぞれに出入口4を設ければよい。そして、基体2および蓋3となる成形体を大気雰囲気中において1500℃以上1700℃以下の温度で焼成することにより、全体の気孔率が1%以下であり、十分に緻密化された基体2と蓋3とを得ることができる。
次に、基体2と蓋3とを接合する工程について説明する。接合に用いる接合剤としては、エポキシなどの樹脂系接着剤、ガラス,無機接着剤を用いることができる。以下にエポキシ樹脂系接着剤を用いた例について説明する。図1に示す構造の基体2と蓋3とを接合する場合には、基体2または蓋3のいずれかの接合面に接着剤を塗布した後、基体2と蓋3との接合面を重ね合わせて、50℃以上に加熱して乾燥させることによって、図1に示す構造のセラミック接合体1を得ることができる。
また、図2に示す構造の基体2と蓋3とを接合する場合には、基体2に設けた凹部9に接着剤を適量流し込み、基体2の凹部9に蓋3の凸部8を嵌め合わせて、50℃以上に加熱して乾燥させることによって、図2に示す構造のセラミック接合体1を得ることができる。
また、図3に示す構造の基体2と蓋3とを接合する場合には、基体2の凹部9に蓋3の凸部8を嵌め合わせた後、接着剤を溝の壁面10と凸部8の側面の間に流し込み、その後50℃以上の温度で加熱して乾燥させることによって、図3に示す構造のセラミック接合体1を得ることができる。
そして、基体2および蓋3で構成される本実施形態のセラミック接合体1を板状とすることにより、載置物の支持に用いる支持体に好適なものとすることができる。この支持体によれば、基体2または蓋3の主面を上面として載置物を支持し、内部の流路5を加熱または冷却された流体が流れることにより、本実施形態のセラミック接合体1である支持体を介して載置物を安定して加熱または冷却することができる。
本実施形態のセラミック接合体1の実施例について以下に示す。
図1に示す構造のセラミック接合体1を作製し、流路5に長期間にわたって80〜120℃
に加熱された流体を流し、流体の漏洩がないかどうか確認する試験を実施した。
まず、セラミック原料として、純度が99%であり、平均粒径が1μmのアルミナを用意し、これに焼結助剤,バインダ,溶媒および分散剤を所定量添加して混合したスラリーを、噴霧乾燥造粒法(スプレードライ法)により造粒し、2次原料を得た。次に、この2次原料を所定形状のゴム型内へ投入し、静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により成形し、その後、成形体をゴム型から取り外した。
そして、ゴム型から取り外した成形体に、図1に示す基体2の外形状となるように切削加工を施すとともに、接合によって形成される流路5において、深い領域5aとなる溝を一方の主面(上面)に形成した。また、図1に示す蓋3の外形状となるように切削加工を施すとともに、基体2との接合面側に深い領域5aの一部と浅い領域5bとなる溝を形成した。
また、フライス盤あるいは万能研削盤を用いて、基体2となる成形体の一方の主面に形成した溝において、接合によって形成される流路5の一端となる位置から他方の主面までを貫く流体の出入口4を1箇所形成した。また、蓋3となる成形体に形成した溝において、接合によって形成される流路5の他端となる位置に流体の出入口4を1箇所形成した。その後、基体2および蓋3となる成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気中において1600℃の温度で焼成し、全体の気孔率が1%以下である基体2および蓋3の焼結体を得た。
次に、基体2と蓋3との接合を実施した。接合剤として市販のエポキシ樹脂系の接着剤を準備し、これを基体2の接合面に1mm以下の厚さで塗布した後、基体2と蓋3とを重ね合わせて、熱風乾燥機内で50℃以上の温度で5時間以上加熱して乾燥させることによって、基体2と蓋3とを接合して図1に示す構造のセラミック接合体1を得た。
また、蓋3の基体2との接合面側に深い領域5aの一部となる部分のみとなる溝を形成したこと以外は、上述した材料および製造方法により、基体2と蓋3とが接合されることによって、流路5が本実施形態における深い領域5aのみからなる比較例のセラミック接合体を得た。
そして、図1に示す構造のセラミック接合体1および比較例のセラミック接合体の流体の出入口4に、流体を流すための配管を接続し、他の装置で使用された温度80〜120℃で10%以下の酸を含む蒸気を、流路5内へ加圧して流す試験を実施した。
その結果、比較例のセラミック接合体は、図1に示す構造のセラミック接合体1よりも先に流体の漏洩が確認された。ここで試験を終了し、図1に示す構造のセラミック接合体1および比較例のセラミック接合体をそれぞれ切断して確認したところ、比較例のセラミック接合体は、接合層の一部が劣化し剥がれた状態であり、その部分から流体が漏洩していたことが分かった。これに対し、図1に示す構造のセラミック接合体1は、流路に露出
している接合層に若干の劣化が見られた程度であった。
図2および図3に示す構造のセラミック接合体1を作製した。
まず、実施例1と同様の方法で成形まで行ない、ゴム型から取り外した成形体に、図2および図3に示す基体2の外形状となるように切削加工を施した。また、接合によって形成される流路5において、深い領域5aおよび浅い領域5bとなる溝とともに凹部9を形成した。また、図2および図3に示す蓋3の外形状となるように切削加工を施すとともに、流体の流れる方向に沿って蓋3の両脇に凸部8を形成した。
また、出入口4については、実施例1と同様の位置となるように、基体2と蓋3とにそれぞれ形成した。その後、基体2および蓋3となる成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気中において1600℃の温度で焼成し、全体の気孔率が1%以下である基体2および蓋3の焼結体を得た。
そして、図2に示す構造の基体2と蓋3とを接合した。基体2に設けた凹部9に接着剤を適量流し込み、基体2の凹部9に蓋3の凸部8を嵌め合わせて、50℃以上に加熱して乾燥させることによって、図2に示す構造のセラミック接合体1を得た。
また、図3に示す構造の基体2と蓋3とを接合した。基体2の凹部9に蓋3の凸部8を嵌め合わせた後、接着剤を溝の壁面10と凸部8の側面の間に流し込み、その後50℃以上の温度で加熱して乾燥させることによって、図3に示す構造のセラミック接合体1を得た。
そして、図2および図3に示す構造のセラミック接合体1を用いて、それぞれのセラミック接合体1の流体の出入口4に、流体を流すための配管を接続し、実施例1と同様に、温度80〜120℃で10%以下の酸を含む蒸気を、流路5内へ加圧して流す試験を実施した。
その結果、図2および3に示す構造のセラミック接合体1は、実施例1で流体の漏洩が確認された比較例のセラミック接合体の試験期間の3倍を超える期間においても、図2および図3に示す構造のセラミック接合体1については、流体の漏洩は確認されなかった。これにより、流体の流れる方向に流路5を断面視したとき、深さの深い領域5aの両側に浅い領域5bを有していることによって、浅い領域5bを流れる流体の流速を低下させることができるとともに、凸部8と凹部9とが嵌合されていることによって、流体の浸入を抑制することができるので、接合層6の劣化による流体の漏洩のおそれをより少なくできることが確認できた。また、この結果より、図2および図3に示す構造のセラミック接合体1は、腐食性の高い流体を流すことのできる流路5を備え、載置物を支持することのできる支持体として好適に使用できることがわかった。
次に、図1に示す構造のセラミック接合体1について、基体2をアルミナで形成し、蓋3をアルミナ,炭化珪素およびジルコニアの3種類の材質を用いて製造して、基体2と蓋3を接合し、流路5に一定時間流体を流し、室温まで冷却する熱サイクルをかける耐久試験を実施した。
まず、基体2とアルミナ製の蓋3とについては、実施例1と同様の方法で作製した。
また、ジルコニア製の蓋3については、Y添加量を3mol%とし、共沈法により作製された平均粒径が0.1μmの市販のジルコニア1次原料を購入し、これにバインダ
,溶媒および分散剤を所定量添加して混合したスラリーを噴霧乾燥造粒法(スプレードラ
イ法)により造粒し、2次原料を得た。次に、この2次原料を所定形状のゴム型へ投入し、静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により成形し、その後、成形体をゴム型から取り外した。そして、成形後の切削加工については、実施例1と同様の方法で行ない、その後、焼成炉に入れて、大気雰囲気中において1400℃の温度で焼成し、純度95%以上のジルコニア質焼結体からなる蓋3を得た。
また、炭化珪素製の蓋3については、平均粒径が0.5〜10μm,純度が99〜99.8%以上
の炭化珪素1次原料に、焼結助剤,バインダ,溶媒および分散剤を所定量添加して混合したスラリーを、噴霧乾燥造粒法(スプレードライ法)により造粒し、2次原料を得た。次に、この2次原料を所定形状のゴム型へ投入し、静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により成形し、その後、成形体をゴム型から取り外した。そして、成形後の切削加工については、実施例1と同様の方法で行ない、その後、焼成炉に入れて、非酸化雰囲気中において2100℃の温度で焼成し、純度99%以上の炭化珪素質焼結体からなる蓋3を得た。
その後、アルミナ,ジルコニアおよび炭化珪素からなる蓋3と、アルミナからなる基体2とを実施例1と同様の製造方法を用いて接合し、蓋3の材質のみ異なる3種類の図1に示す構造のセラミック接合体1を得た。
そして、得られた各セラミック接合体1について、実施例1と同様の流体を流路5に10分間流し、その後室温まで空冷する熱サイクルをかける耐久試験を実施したところ、ジルコニアからなる蓋3を用いたもの、炭化珪素からなる蓋3を用いたものの順で流体の漏洩が確認された。
そして、炭化珪素からなる蓋3を用いたセラミック接合体1に流体の漏洩が確認された後に、実施例3で用いたすべてのセラミック接合体1について、切断して確認したところ、ジルコニアからなる蓋3を用いたもの、炭化珪素からなる蓋3を用いたものについては、いずれも流路5に露出している接合層6に亀裂が見られた。特に、ジルコニア製の蓋3を用いたものは、接合層6に大きな亀裂が見られた。これに対し、基体2と蓋3とが同じ材質であるアルミナからなるセラミック接合体1は、亀裂は見られず、亀裂の大きさに違いがあることから、基体2と蓋3との材質が異なることによる熱膨張差が亀裂の発生に起因していると考えられ、セラミック構造体1を構成する基体2と蓋3とは同材質からなることが好適であることが確認された。
1:セラミック接合体
2:基体
3:蓋
4:出入口
5:流路
5a:深さの深い領域
5b:深さの浅い領域
6:接合層
8:凸部
9:凹部
10:溝の壁面

Claims (5)

  1. 基体と、該基体に接合層を介して接合された蓋とを備えたセラミック接合体であって、前記基体と前記蓋とで形成される空間が流体の流路とされ、前記流体の流れる方向に前記流路を断面視したとき、深さの深い領域の両側に浅い領域を有していることを特徴とするセラミック接合体。
  2. 前記基体に前記流体が流れる溝を備えるとともに、該溝の両側に凹部を備えており、前記蓋の両端に、前記基体の前記凹部と嵌合される凸部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のセラミック接合体。
  3. 前記溝の壁面と前記蓋の両端に設けられた前記凸部の側面とが接合面であることを特徴とする請求項2に記載のセラミック接合体。
  4. 前記基体と前記蓋とが同材質のセラミックスからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のセラミック接合体。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のセラミック接合体を載置物の支持に用いたことを特徴とする支持体。
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