JP2012091427A - 耐摩耗性と潤滑性に優れた硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリュー。 - Google Patents

耐摩耗性と潤滑性に優れた硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリュー。 Download PDF

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Abstract

【課題】硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリューにおいて、硬質被覆層が耐摩耗性と潤滑性に優れ、かつ、硬質被覆層の界面剥離の発生が低減されたスクリューを提供する。
【解決手段】硬質被覆層12を蒸着形成した射出成形機のスクリュー11において、該硬質被覆層12は、TiN膜,AlTiN膜,AlCrN膜,AlTiSiN膜、AlCrSiN膜等の硬質膜層13と、CrN膜,VN膜,TiVN膜等の潤滑膜層14とからなり、潤滑膜層14は、スクリューの軸方向の硬質被覆層12断面において、軸方向に断続的に不連続に延伸形成され、かつ、層厚方向に多層に形成され、また、スクリューの軸方向に直交する硬質被覆層12断面においては、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的に不連続な円弧状に形成され、かつ、層厚方向に多層に形成された層構造を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、射出成形機のスクリューに関し、特に、界面剥離を防止するとともに、スクリューの耐久性の向上を図るため、スクリューの表面に耐摩耗性と潤滑性に優れた硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリューに関する。
従来、インラインスクリュー式の射出成形機のスクリューは、スクリュー表面にセラミックスコーティングを施すことによって、スクリューの耐久性向上を図っている。
例えば、特許文献1に示されるように、スクリュー表面に、CrNからなる下層とTiNからなる上層を被覆形成することにより、耐食性、密着性、耐摩耗性を高め、これによって、スクリューの耐久性を向上させる技術が提案されているが、この場合には、下層と上層間での界面剥離が生じやすいという問題点があった。
そこで、界面剥離の問題を解消し、スクリューの耐久性をさらに向上させる技術として、例えば、特許文献2に示されるように、スクリュー表面に、CrN膜からなる下層と、中間層と、TiN膜からなる上層を形成するとともに、該中間層を、下層に近いほどCrNの含有量が多く、一方、上層に近いほどTiNの含有量が多いCrNとTiNの複合傾斜層として形成することが提案されている。
特開平10−58600号公報 特開2005−144992号公報
上記従来の射出成形機のスクリュー、即ち、CrNとTiNとからなる硬質被覆層を蒸着形成した特許文献1に示すスクリュー、あるいは、CrNとTiNとの複合傾斜層からなる中間層をさらに介在形成した特許文献2に示すスクリューにおいては、ある程度の耐摩耗性が確保、耐久性の向上は図られるものの、界面剥離の発生を十分に防止することはできず、そのため、スクリューの耐久性については依然として満足できるものではなかった。
そこで、硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリューにおいて、耐摩耗性を維持しつつ、同時に、界面剥離の発生の抑制し、耐久性のより一層の向上を図ることが望まれている。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリューにおいて、耐摩耗性を維持すると同時に、界面剥離の発生が抑制され、もって、より一段と耐久性の優れた射出成形機のスクリューを得ることを目的として、硬質被覆層の層構造等について鋭意研究したところ、次のような知見を得たのである。
特許文献1、2に示されるTiN、CrNからなる硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリューにおいては、TiN、CrNは硬質膜であって、確かに耐摩耗性に優れるものの、このような硬質膜における界面剥離発生の要因の一つは、樹脂に対する硬質膜の潤滑性が不十分であることに起因することを本発明者らは見出した。
そこで、本発明者らは、スクリュー表面に形成する硬質被覆層を、耐摩耗性に優れる硬質膜(例えば、TiN膜、AlTiN膜、AlCrN膜、AlTiSiN膜、AlCrSiN膜等)と、潤滑性に優れる潤滑膜(CrN膜、VN膜、TiVN膜)とで構成したところ、単に硬質膜層と潤滑膜層とを交互積層構造にしたのみでは、硬質被覆層の潤滑性は向上するものの、硬質膜と潤滑膜との密着強度が十分でないため、依然として界面剥離の発生を防止することはできないことを確認した。
そこで、硬質膜と潤滑膜との密着強度を向上させるための層構造についてさらに検討を進めたところ、硬質膜層間に潤滑膜層を形成するにあたり、硬質膜層を、スクリューの軸方向に断続的に不連続に延伸形成し、かつ、層厚方向に多層に形成し、また、スクリューの軸方向に直交する硬質被覆層断面においては、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的に不連続な円弧状となるように形成し、かつ、層厚方向に多層に形成した場合には、硬質被覆層として硬質膜層と潤滑膜層とが蒸着形成された射出成形機のスクリューは、すぐれた耐摩耗性と潤滑性を発揮すると同時に、硬質膜と潤滑膜との密着強度も改善されるため、界面剥離の発生頻度が大きく低減され、その結果、スクリューの耐久性が大幅に向上することを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリューにおいて、該硬質被覆層は、硬質膜層と、該硬質膜層間に介在形成された潤滑膜層とからなり、さらに、該潤滑膜層は、スクリューの軸方向の硬質被覆層断面において、硬質膜層の中に軸方向に断続的に不連続に延伸形成され、かつ、層厚方向に多層に形成された層構造を有し、また、スクリューの軸方向に直交する硬質被覆層断面においては、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的に不連続な円弧状に形成され、かつ、層厚方向に多層に形成された層構造を有することを特徴とする射出成形機のスクリュー。
(2) 上記硬質被覆層は1〜6μmの平均層厚を有し、上記潤滑膜層は、平均層厚が10〜50nmで、軸方向平均長さが50〜150mmであることを特徴とする前記(1)に記載の射出成形機のスクリュー。
(3) 上記硬質膜が、TiN膜、AlTiN膜、AlCrN膜、AlTiSiN膜およびAlCrSiN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上であること特徴とする前記(1)または(2)に記載の射出成形機のスクリュー。
(4) 上記潤滑膜が、CrN膜、VN膜およびTiVN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上であること特徴とする前記(1)乃至(3)の何れかに記載の射出成形機のスクリュー。」
を特徴とするものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
膜材質:
本発明では、硬質被覆層を構成する硬質膜および潤滑膜のそれぞれは、当業者に既に良く知られている材質の膜で形成すればよく、例えば、硬質膜としては、TiN膜、AlTiN膜、AlCrN膜、AlTiSiN膜およびAlCrSiN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上、また、潤滑膜としては、CrN膜、VN膜およびTiVN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上で形成すればよい。
硬質膜はいずれも優れた耐摩耗性を備えるが、これに加えて、TiN膜ではすぐれた高温強度を、AlTiN膜では、すぐれた高温強度、高温硬さ、耐熱性を、AlCrN膜では、すぐれた高温強度、高温硬さ、耐熱性、耐高温酸化性を、AlTiSiN膜では、すぐれた高温強度、高温硬さ、耐熱性を、AlCrSiN膜では、すぐれた高温強度、高温硬さ、耐熱性、耐高温酸化性、耐熱塑性変形性を相併せ持つ。
また、潤滑膜はいずれも優れた潤滑性を備えるが、これに加えて、CrN膜ではすぐれた耐溶着性、耐高温酸化性を、VN膜ではすぐれた耐溶着性を、TiVN膜ではすぐれた高温硬さ、耐溶着性を相併せ持つ。
層構造:
図2に、硬質膜と潤滑膜からなる硬質被覆層を蒸着形成した本発明のスクリューの一部断面拡大図の概略斜視図を示す。
図2において、スクリュー11の周囲には、例えば、アークイオンプテーティングにより平均層厚1〜6μmの硬質被覆層12が蒸着形成され、そして、硬質被覆層12は、硬質膜層13と潤滑膜層14とからなっている。
潤滑膜層14は、硬質被覆層12の層厚方向に多層に形成され、その一層平均層厚は10〜50nmである。
また、潤滑膜層14は、スクリューの軸方向の硬質被覆層断面で見た場合、硬質膜層の中に軸方向に断続的に不連続に延伸形成され、かつ、断続的・不連続に延伸形成された潤滑膜層14の軸方向平均長さは50〜150mmとされている。
さらに、潤滑膜層14は、スクリューの軸方向に直交する硬質被覆層断面で見た場合、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的に不連続な円弧状に形成されている。
本発明では、硬質膜と潤滑膜からなる硬質被覆層の層構造を、上記図2に示される構造とすることによって、硬質被覆層の耐摩耗性を確保しつつ潤滑性をも確保し、しかも、界面剥離の発生を抑制することが可能となった。
つまり、硬質膜と潤滑膜を、通常のアークイオンプレーティングにより蒸着形成した場合には、硬質膜中に形成される潤滑膜は、スクリューの軸方向に連続する面として形成され、硬質膜と潤滑膜間の密着強度は不十分となるが、本発明では、潤滑膜がスクリューの軸方向に断続的・不連続な断片状に形成されていることによって、潤滑膜層が硬質膜中に包み込まれた状態で形成され、さらに、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的かつ不連続な円弧状に形成されていることによって、やはり、潤滑膜層が硬質膜中に包み込まれた状態で形成され、その結果、密着強度の弱い硬質膜と潤滑膜とに接触界面を減少させたことによって、硬質被覆層全体としての界面剥離の発生を低減することができるのである。
潤滑膜のサイズ:
スクリューの軸方向に断続的・不連続な断片状に形成された一片の潤滑膜の長さが50mm未満であると、潤滑効果が少なく、一方、その長さが150mmを超えると潤滑膜の占める相対的な面積(体積)割合が増加し界面剥離を発生しやすくなるので、スクリューの軸方向の断続的・不連続な断片状潤滑膜の一片当たり平均長さは50〜150mmとすることが望ましい。なお、スクリューの軸方向の断片状潤滑膜の形成間隔は、硬質被覆層中に占める潤滑膜の割合を高めすぎないという観点から、100〜300mmとすることが望ましい。
また、潤滑膜の膜厚については、平均膜厚が10nm未満では潤滑効果が少なく、一方、平均膜厚が50nmを超えると硬質被覆層全体としての高温強度、高温硬さが低下し耐摩耗性が低下することから、潤滑膜の平均膜厚は10〜50nmとすることが望ましい。
スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的かつ不連続な円弧状に形成されている潤滑膜のサイズについても、潤滑効果を期待すると同時に潤滑膜の占有割合を高めすぎないという観点から、その円弧の角度が30〜90°の範囲内となるように形成することが望ましい。
硬質被覆層の形成:
本発明の硬質膜と潤滑膜からなる硬質被覆層の層構造は、例えば、硬質膜形成用のターゲットと、潤滑膜形成用のターゲットとを備えたアークイオンプレーティング(以下、AIPという)装置において、膜形成のための放電のオン−オフを断続的に行うことによって、形成することができる。
図3に、本発明の硬質被覆層を形成するためのAIP装置の概略図を示す。
図3において、AIP装置は、硬質膜形成用のターゲット(蒸発源)22、潤滑膜形成用のターゲット(蒸発源)23、ターゲット22、23にそのマイナス側を接続したアーク電源24、25、ターゲット22、23の近傍に配設されアーク電源のプラス側と接続したアノード電極26、27、スクリュー21にバイアス電圧を印加するバイアス電源29、潤滑膜形成用のターゲット(蒸発源)23とスクリュー21の間には特殊な層構造を形成するためのスリット30を備え、スクリュー21を回転テーブル28上に載置し、スクリュー21を回転させつつ、硬質膜形成用のターゲット(蒸発源)22、潤滑膜形成用のターゲット(蒸発源)23のアーク放電を断続的に行うことによって、硬質膜と潤滑膜の特殊な層構造からなる本発明の硬質被覆層を形成する。
例えば、
(a)スクリューをアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図3に示されるAIP装置内の回転テーブル上の中心に装着し、前記回転テーブルを挟んで相対向する両側にカソード電極(蒸発源)を配置し、その一方にはカソード電極(蒸発源)として硬質膜形成用Al−Ti−Si合金を配置し、また、その他方にはカソード電極(蒸発源)として潤滑膜形成用Ti−V合金を配置し、さらに、上記両カソード電極の中間位置には、カソード電極(蒸発源)としてボンバード洗浄用金属Tiを配置したAIP装置を用い、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を400℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−800Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記ボンバード洗浄用金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面を前記金属Tiによってボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記硬質膜形成用Al−Ti−Si合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に硬質膜を形成させながら、
(d)引き続いてカソード電極(蒸発源)である潤滑膜形成用Ti−V合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を断続的に発生させて、前記工具基体の表面に潤滑膜であるTiVN層を蒸着形成することにより、本発明の硬質被覆層の層構造を形成することができる。
本発明によれば、射出成形機のスクリューの硬質被覆層を、硬質膜層と、該硬質膜層間に介在形成された潤滑膜層とから構成し、さらに、潤滑膜層は、スクリューの軸方向にわたって、硬質膜層の中に軸方向に断続的に不連続に延伸形成し、かつ、層厚方向に多層に形成するとともに、スクリューの軸方向に直交する硬質被覆層断面においては、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的に不連続な円弧状に形成し、かつ、層厚方向に多層に形成することにより、硬質被覆層は、耐摩耗性と潤滑性を兼ね備え、しかも、界面剥離の発生が抑制されることから、耐久性のすぐれた射出成型機のスクリューを提供することができる。
射出成形機のスクリューの概略説明図を示す。 本発明のスクリューの一部断面拡大図の概略斜視図を示す。 硬質被覆層を蒸着形成するアークイオンプレーティング(AIP)装置の概略説明図を示し、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明が適用されるインラインスクリュー式の射出成形機における、一般的なスクリューの構成を示す図である。図1において、1はねじ7が形成されたスクリュー、2はスクリュー基部、3はスクリュー供給部、4はスクリュー圧縮部、5はスクリュー計量部、6はスクリューヘッドである。
本発明では、上記したスクリュー1の、少なくとも、スクリュー供給部3、スクリュー圧縮部4、スクリュー計量部5およびねじ7に、例えば、アークイオンプレーティング(AIP)装置により、硬質膜層と潤滑膜層とからなる硬質被覆層を蒸着形成する。
図2に、硬質膜と潤滑膜からなる硬質被覆層を蒸着形成した本発明のスクリューの一部拡大の断面概略斜視図を示す。
図2において、スクリュー11の周囲には、アークイオンプテーティングにより、硬質被覆層12が蒸着形成されるが、硬質被覆層12は、例えば、TiN膜、AlTiN膜、AlCrN膜、AlTiSiN膜およびAlCrSiN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上からなる硬質膜層13と、例えば、CrN膜、VN膜およびTiVN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上からなる潤滑膜層14とからなっている。
そして、潤滑膜層14は、硬質被覆層12の層厚方向に多層に形成されており、その一層平均層厚は10〜50nmとなっている。
また、潤滑膜層14は、スクリューの軸方向の硬質被覆層断面で見た場合、硬質膜層の中に軸方向に断続的に不連続に延伸形成され、かつ、断続的・不連続に延伸形成された潤滑膜層14の軸方向平均長さは50〜150mmとなっている。
さらに、潤滑膜層14は、スクリューの軸方向に直交する硬質被覆層断面で見た場合、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的に不連続な円弧状に形成されている。
図3は、スクリューに硬質被覆層を蒸着形成するAIP装置の概略説明図である。図3において、22は硬質膜形成用のターゲット(蒸発源)、23は潤滑膜形成用のターゲット(蒸発源)、24、25はターゲット22、23にそのマイナス側を接続したアーク電源、26、27はターゲット22、23の近傍に配設されアーク電源のプラス側と接続したアノード電極(陽極)、21は硬質被覆層を形成するスクリュー、28は回転テーブル、29はスクリューにバイアス電圧を印加するバイアス電源である。
図3において、21は、例えばSKD11からなるスクリュー、22は、例えば、TiN膜、AlTiN膜、AlCrN膜、AlTiSiN膜、AlCrSiN膜からなる硬質膜形成用ターゲット(なお、複数種類の硬質膜を形成する場合には、複数種類の硬質膜形成用ターゲットが必要となる)、23は、例えば、CrN膜、VN膜、TiVN膜からなる潤滑膜形成用ターゲット(なお、複数種類の潤滑膜を形成する場合には、複数種類の潤滑膜形成用ターゲットが必要となる)であり、本発明の硬質膜層と潤滑膜層からなる硬質被覆層を形成する場合には、例えば、以下の手順にしたがい蒸着を行う。
スクリュー基体をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図3に示されるAIP装置内の回転テーブル上の中心に装着し、前記回転テーブルを挟んで相対向する両側にカソード電極(蒸発源)を配置し、その一方にはカソード電極(蒸発源)として硬質膜形成用Al−Ti−Si合金を配置し、また、その他方にはカソード電極(蒸発源)として潤滑膜形成用Ti−V合金を配置し、さらに、上記両カソード電極の中間位置には、カソード電極(蒸発源)としてボンバード洗浄用金属Tiを配置したAIP装置を用い、
まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を400℃に加熱した後、前記回転テーブル上を1rpmの速度で回転する工具基体に−800Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記ボンバード洗浄用金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もってスクリュー基体表面を前記金属Tiによってボンバード洗浄し、
ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記スクリュー基体に印加するバイアス電圧を−100Vに下げて、かつカソード電極の前記硬質膜形成用Al−Ti−Si合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記スクリュー基体の表面に硬質膜を形成させながら、
引き続いてカソード電極(蒸発源)である潤滑膜形成用Ti−V合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を10秒間隔で断続的に発生させて、前記スクリュー基体の表面に潤滑膜であるTiVN層を蒸着形成する。
上記蒸着操作によって、3μmの平均層厚の硬質被覆層であって、硬質被覆層中の潤滑膜層の平均層厚が30nm、軸方向平均長さが100mm、軸方向平均間隔が100mm、また、スクリューの軸方向に直交する断面における円周方向の潤滑膜層の平均円弧角度が50°であるAlTiSiN硬質膜層とTiVN潤滑膜層とからなる本発明に係る射出成形機のスクリューを形成することができる。
SKD11を用いて、図1に示す形状のスクリュー(有効長さ640mm,直径32mm,ねじ高さ(供給部)5.8mm,ねじ高さ(計量部)2.0mm,ねじピッチ32mm)を作製し、図3に示すAIP装置により、表1に示す種類の硬質膜、潤滑膜を蒸着形成し、同じく表1に示す潤滑膜の平均層厚、軸方向平均長さ、軸方向平均間隔、平均円弧角度の硬質膜層を形成することにより本発明の射出成形機のスクリュー1〜10(本発明1〜10という)を作製した。
比較のために、本発明と同じ形状のスクリューに対し、表2に示す種類の硬質膜、潤滑膜を蒸着形成し、同じく表2に示す潤滑膜の平均層厚、軸方向平均長さ、軸方向平均間隔、平均円弧角度の硬質膜層を形成することにより比較例の射出成形機のスクリュー1〜10(比較例1〜10という)を作製した。
上記本発明1〜10および比較例1〜10を用いて、ポリプロピレン樹脂100重量%に対して、ガラス繊維を40重量%添加した成形材料による射出成形を、シリンダ温度250℃、射出圧力80MPa、スクリュー回転数60rpm、金型温度40℃という条件で実施した。
上記射出成形を5000ショット行った後、硬質被覆層の界面剥離の状況を観察した。観察結果をそれぞれ表1、表2に示す。
Figure 2012091427
Figure 2012091427
表1、表2から明らかなように、比較例のスクリューでは、射出成形を行った後のスクリュー表面の硬質被覆層には界面剥離が多発し、耐久性が劣るものであった。
これに対して、本発明のスクリューでは、硬質被覆層の耐摩耗性、潤滑性が優れるばかりか、界面剥離の発生はなく、長期の使用にわたってすぐれた特性を発揮する射出成型機のスクリューを提供することができる。
本発明のスクリューの硬質被覆層は、その層構造により、界面剥離の発生を抑制できるばかりか、耐摩耗性、潤滑性に優れることから、切削工具、耐摩耗部材等に適用した場合にもすぐれた特性を発揮し、産業上極めて有益である。
1 スクリュー
2 スクリュー基部
3 スクリュー供給部
4 スクリュー圧縮部
5 スクリュー計量部
6 スクリューヘッド
7 ねじ
11 スクリュー
12 硬質被覆層
13 硬質膜層
14 潤滑膜層
21 スクリュー
22 硬質膜形成用のターゲット(蒸発源)
23 潤滑膜形成用のターゲット(蒸発源)
24 アーク電源
25 アーク電源
26 アノード電極(陽極)
27 アノード電極(陽極)
28 回転テーブル
29 バイアス電源
30 スリット

Claims (4)

  1. 硬質被覆層を蒸着形成した射出成形機のスクリューにおいて、該硬質被覆層は、硬質膜層と、該硬質膜層間に介在形成された潤滑膜層とからなり、さらに、該潤滑膜層は、スクリューの軸方向の硬質被覆層断面において、硬質膜層の中に軸方向に断続的に不連続に延伸形成され、かつ、層厚方向に多層に形成された層構造を有し、また、スクリューの軸方向に直交する硬質被覆層断面においては、スクリューの軸を中心とする円周方向に沿って断続的に不連続な円弧状に形成され、かつ、層厚方向に多層に形成された層構造を有することを特徴とする射出成形機のスクリュー。
  2. 上記硬質被覆層は1〜6μmの平均層厚を有し、上記潤滑膜層は、平均層厚が10〜50nmで、軸方向平均長さが50〜150mmであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のスクリュー。
  3. 上記硬質膜が、TiN膜、AlTiN膜、AlCrN膜、AlTiSiN膜およびAlCrSiN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上であること特徴とする請求項1または2に記載の射出成形機のスクリュー。
  4. 上記潤滑膜が、CrN膜、VN膜およびTiVN膜のうちから選ばれる何れか1種または2種以上であること特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の射出成形機のスクリュー。
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CN113549876A (zh) * 2021-07-22 2021-10-26 中国科学院力学研究所 一种铝合金压铸基体的阻隔涂层

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