JP2012091366A - 成型用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】鏡面処理でも良好な外観を有し、加飾性に優れた成型用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有し、前記易接着層はポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂と少なくとも1種類の粒子を含み、該粒子の粒度分布(d75/d25)が1.1〜1.5、平均粒径dが0.04〜1.2μm、該粒子の平均粒径dと易接着層の厚みtとの比(d/t)が1以上100以下である成型用ポリエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、成型用ポリエステルフィルムに関する。特に、鏡面処理でも良好な外観を有し、加飾性に優れた成型用ポリエステルフィルムに関する。
表装部材などの成型体の製造にはいろいろな材料が使用されている。例えば、モールやピラーといった自動車部品などの成型体の外装表面にはメッキや樹脂材料を被覆して用いられる。ところで、自動車の外装部品や内装部品の製造において、表面処理を施した後に塗装やめっきを行う方法が一般的に採用されていたが、最近では、塗装代替やめっき代替として加飾フィルムを成型体表装に施す方法が提案されている(特許文献1)。
このような成形用の樹脂シート材料としては、従来、ポリ塩化ビニルフィルムが用いられてきたが、フィルムの燃焼時の有毒ガスの発生、可塑剤のブリードアウトなど、環境適性の点で問題がある。そこで、環境適性に優れる材料として、ポリエステル、ポリカーボネート、またはアクリル系樹脂よりなる未延伸のシートが、広い分野において使用されてきている。例えば、特許文献2のように、成型性に優れた特性を有する成型用ポリエステルフィルムが提案されている。
一方、ポリエステルフィルムの接着性を改良する方法として、これまで種々の提案がされている。例えば、特許文献3では、共重合ポリエステルを、特許文献4では、共重合ポリエステルと水溶性ポリウレタン樹脂を易接着層として利用する方法が検討されている。これら特許文献3、4で提案された成型用ポリエステルフィルムは良好な接着性に有し、蒸着や印刷などにより好適に加飾を施すことができるため、各種成型用途として用いられている。
特開2007−297569号公報 特開2008−30475号公報 特開2005−290354号公報 特開2010−131767号公報
ポリエステルからなるメッキ代替加飾フィルムには加飾層などの各種機能層との密着性を奏するためにフィルム表面に易接着層が設けられる。メッキ代替加飾フィルムは比較的薄手のフィルムが用いられることが多く、フィルムをロール状に巻き取る際にしわやスジが生じやすい。そこで、フィルム表面、特に易接着層に粒子を添加し、表面に凹凸構造を付与することで、生産工程や加工工程に必要な滑り性が付与されている。
一方、金属メッキの代替として、金属蒸着などにより鏡面様の金属光沢処理を施した場合、高級感のある外観を出すためには表面が平滑であることが望ましい。しかしながら、フィルム表面に凹凸を有することで、面感が損なわれる場合があった。特に、比較的薄手のフィルムをロール状に巻き取ったフィルムを用いると、フィルムそのものでは視認できないような微細な凹凸構造であっても、金属光沢処理を施すことで微細な凹凸構造に起因した反射光の散乱により、鏡面に写される写像に歪みが生じることがあった。
さらに、メッキ代替加飾フィルムと一体成型された成型体は、自動車用、家電、携帯電話、または建材用部材として屋外、屋内で用いられるようになっている。このような使用環境下で、成型体は高温や多湿に長期間曝されることが予想される。そのために、成型後、湿熱環境下においても蒸着層や印刷層などの加飾層とは良好な接着性を維持することが好ましい。
本発明の目的は、前記課題を解決することにある。すなわち、蒸着層や印刷層などの加飾層とは良好な接着性を有し、かつメッキ代替用途として用いた場合に鏡面状の良好な外観を奏する成型用ポリエステルフィルムを提供することにある。また好ましくは、上記に加えて湿熱環境下においても接着性に優れる成型用ポリエステルフィルムを提供することにある。
上記の課題を解決することができる、本発明の成型用ポリエステルフィルムは以下の構成からなる。
第1の発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有し、前記易接着層はポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂と少なくとも1種類の粒子を含み、該粒子の粒度分布(d75/d25)が1.1〜1.5、平均粒径が0.04〜1.2μm、該粒子の平均粒径dと易接着層の厚みtとの比(d/t)が1以上100以下である成型用ポリエステルフィルムである。
第二の発明は、前記ポリエステルフィルムが共重合ポリエステル、あるいは共重合ポリエステルとホモポリエステルからなる前記成型用ポリエステルフィルムである。
第三の発明は、前記ポリエステル樹脂が、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体がグラフトされたポリエステル系グラフト共重合体である前記成型用ポリエステルフィルムである。
第四の発明は、前記ポリウレタン樹脂がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂である前記成型用ポリエステルフィルムである。
第五の発明は、前記易接着層に前記粒子を0.01〜3質量%含有し、前記フィルムのヘイズが2.0%以下、静摩擦係数が0.9以下、動摩擦係数が0.8以下、空気抜け指数が200秒以下である前記成型用ポリエステルフィルムである。
第六の発明は、フィルムの厚みが15〜80μm以下である前記成型用ポリエステルフィルムである。
第七の発明は、前記フィルム表面におけるウェーブスキャン装置を用いて測定した波長0.1mm〜0.3mm領域の反射強度(Wa)が4.0以下である前記成型用ポリエステルフィルムである。
第八の発明は、前記成型用ポリエステルフィルムの一方の面に金属蒸着層をもうけたのち基材と一体成型すること特徴とするメッキ代替加工方法である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、特定の樹脂構成と特定の粒子構成を有する易接着層が積層されている。よって、良好な接着性と、面感に優れた鏡面状の加飾層を形成するに適している。そのため、自動車用の内装や外装の加飾材、家電メンブレンスイッチ、携帯電話用基材、建材用部材などの加飾用成型部材において、成型基材と同時一体成型することでメッキ代替処理方法において好適に用いることができる。
また、本発明は、湿熱下でも良好な接着性を有し、屋外用途としても好適に用いることができる。
フィルムの空気抜け速さを測定する装置の断面を示す説明図である。
(易接着層)
本発明の易接着層はポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂と少なくとも1種類の特定の粒子を含むことを特徴とする。これにより、印刷や蒸着などの加飾層と好適な接着性を奏するとともに、金属蒸着した際に鏡面状の好適な面感を奏することができる。
以下、本発明の易接着層の各構成について詳細に述べる。
(ポリエステル樹脂)
易接着層にポリエステル樹脂を含有する。ポリエステル樹脂は基材フィルム及び印刷層との密着性を向上させるために必要である。ポリエステル樹脂を含まないと微小な易接着層の剥がれが発生しやすくなり、結果として密着性が低下する。
易接着層中に含まれるポリエステル樹脂は、基材ポリエステルフィルムと易接着層の接着性を付与させるため、易接着層の固形分全体に対して、5〜90質量%の範囲で配合することが好ましく、より好ましくは30〜80質量%である。
ポリエステル樹脂としては、接着性の点から、共重合成分を導入しガラス転移温度を低下させた共重合ポリエステルが好ましい。共重合ポリエステルは、塗工性の点から水溶性もしくは水分散性を有することが好ましい。このような共重合ポリエステルとしては、スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合した共重合ポリエステル(以下、スルホン酸基含有共重合ポリエステルという)を用いるのが好ましい。
ここでスルホン酸基含有共重合ポリエステルとは、ジカルボン酸成分又はグリコール成分の一部にスルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合したポリエステルをいい、なかでも、スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有した芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分に対して2〜10モル%の割合で用いて調整した共重合ポリエステルが好ましい。
このようなジカルボン酸の例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が好適である。この場合、他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等が挙げられる。
なお、表面硬度を高くし、良好な耐ブロッキング性を維持するためには、全酸性分中の96〜90モル%をテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とすることが好ましく、これらの芳香族ジカルボン酸の4〜10モル%を前記のスルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有させることがさらに好ましい。
スルホン酸基含有共重合ポリエステルを製造するためのグリコール成分としては、エチレングリコールが主として用いられ、この他に、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を共重合成分として用いると、ポリスチレンスルホン酸塩との相溶性が向上するという点で好ましい。
(ポリエステル系グラフト共重合体)
易接着層に用いるポリエステル樹脂としてはポリエステル系グラフト共重合体も好適である。ポリエステル系グラフト共重合体は、高度な自己架橋構造を形成することができるため耐湿熱性に良好な効果を奏する。ポリエステル系グラフト共重合体は、易接着層の耐湿熱性の点から、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体がグラフトされたものを用いることが好ましい。以下、好適なポリエステル系グラフト共重合体について説明する。
「グラフト化」とは、幹ポリマー主鎖に、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することである。本発明では、疎水性共重合性ポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤を使用して少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体を反応せしめることによりグラフト重合を行うことが好ましい。グラフト化反応終了後の反応生成物は、所望の疎水性共重合性ポリエステルと重合性不飽和単量体とのグラフト共重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性共重合性ポリエステル樹脂及び疎水性共重合性ポリエステルにグラフト化しなかった上記不飽和単量体の重合体をも含有している。本発明に用いられるポリエステル系グラフト共重合体とは、上記したポリエステル系グラフト共重合体ばかりではなく、これに未反応の疎水性共重合性ポリエステル、グラフト化しなかった不飽和単量体の重合体等も含む反応混合物もいう。
疎水性共重合性ポリエステル樹脂に重合性不飽和単量体をグラフト重合させて得られるポリエステル系グラフト共重合体の酸価は、600eq/10g以上であることが好ましい。より好ましくは、1200eq/10g以上である。グラフト共重合体の酸価が600eq/10g以上である場合は、基材フィルムとの接着性が良好である。
また、グラフト共重合体を得るための、疎水性共重合性ポリエステル樹脂と重合性不飽和単量体との質量比率は、ポリエステル/重合性不飽和単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、更に望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。疎水性共重合性ポリエステル樹脂の質量比率が40質量%未満であると、得られた易接着層のガラス転移点(Tig)が高くなり、成形時の追従性が低下し、耐湿熱環境下での接着性が低下する場合がある。一方、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の質量比率が95質量%より大きいときは、ブロッキングが起こりやすくなる。
グラフト共重合体は、有機溶媒の溶液または分散液、あるいは水系溶媒の溶液または分散液の形態になる。特に水系溶媒の分散液、つまり水分散樹脂の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。このような水分散樹脂は、通常、有機溶媒中で、前記疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の親水性の重合性不飽和単量体をグラフト重合し、次いで、水添加、有機溶媒留去により得ることができる。
グラフト共重合体のガラス転移点(Tig)は、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。ガラス転移点(Tig)が70℃以下であると、加飾後の成形加工時の追従性がよく、耐湿熱環境下においても優れた接着性が得られやすい。
(疎水性共重合性ポリエステル樹脂)
本発明において、疎水性共重合性ポリエステル樹脂とは、本来それ自身で水に分散または溶解しない本質的に水不溶性であるものである。水に分散するまたは溶解するポリエステル樹脂を、グラフト重合に使用すると、耐湿熱環境下での接着性が悪くなる場合がある。この疎水性共重合性ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分の組成は、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が40モル%を越えた場合は接着性が低下する場合がある。
また、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に対する重合性不飽和単量体の効率的なグラフト化が行われにくくなり、逆に10モル%を越える場合は、グラフト化反応により粘度が上昇し、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸2〜7モル%である。
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の親水基含有ジカルボン酸は、本発明の目的である耐ブロッキング性が低下するので、用いない方が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等を挙げることができる。重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の例としては、α、β−不飽和ジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。このうち好ましいのは、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸である。
一方、グリコール成分は、炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6〜12の脂環族グリコールおよび/またはエーテル結合含有グリコール等が挙げられる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等を挙げることができる。炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。
疎水性共重合性ポリエステル樹脂中には、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合することができるが、3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が使用される。一方、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0〜5モル%、望ましくは0〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を越えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。また、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均で5000〜50000の範囲が好ましい。分子量が5000未満の場合は印刷層の接着性の低下する場合があり、逆に50000を越えると重合時のゲル化等の問題が起きる場合がある。
(ポリエステル系グラフト共重合体のグラフト部位)
疎水性共重合性ポリエステル樹脂にグラフトさせる重合性不飽和単量体とは、親水性のラジカル重合性単量体をいい、親水基を有するか、後で親水基に変化できる基をもつラジカル重合可能な単量体である。親水基として、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基等を挙げることができる。一方、親水基に変化できる基として、酸無水物基、グリシジル基、クロル基等を挙げることができる。これらの基の中でも水分散性、グラフト共重合体の酸価を上げる点から、カルボキシル基が好ましい。したがって、重合性不飽和単量体として二重結合を有する酸無水物を少なくとも1種含むことが望ましい。
重合性不飽和単量体としては、例えば、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸のモノエステルまたはジエステル;マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸のモノエステルまたはジエステル;イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル;フェニルマレイミド等のマレイミド等;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等である。また重合性不飽和単量体の一つであるアクリル重合性単量体は、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等):2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのヒドロキシ含有アクリル単量体:アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドのアミド基含有アクリル単量体:N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル単量体:グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのエポキシ基含有アクリル単量体:アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等のカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体が挙げられる。しかし、アクリル重合性単量体は、本発明の表面エネルギー水素結合力成分項(γsh)を低下させる効果が少ないので本発明で用いるのはあまり好ましくない。上記重合性不飽和単量体は、1種もしくは2種以上を用いて共重合させることができるが、二重結合を有する酸無水物を少なくとも1種含むことが望ましい。上記単量体の中でも、二重結合を有する酸無水物としてはマレイン酸無水物を用いることが好ましい。マレイン酸無水物と組み合わせる他の重合性不飽和単量体としては、スチレンが好ましい。また、これら酸無水物のエステルを含んでも良い。
(重合開始剤およびその他添加剤)
本発明で用い得るグラフト重合開始剤としては、当業者には公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用い得る。有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、重合性不飽和単量体に対して少なくとも0.2質量%、好ましくは0.5質量%以上である。重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール等を必要に応じて用い得る。この場合、重合性不飽和単量体に対して0〜5質量%の範囲で添加されるのが望ましい。
この他、共重合ポリエステルの共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分、グリコール成分を含んでも良い。さらに、得られる塗膜の表面硬度を向上させるために、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多カルボキシル基含有モノマーを5モル%以下の割合で上記ポリエステルの共重合成分として用いることも可能である。これらの多カルボキシル基含有モノマーが5モル%を越える場合には、得られるスルホン酸基含有共重合ポリエステルが熱的に不安定となり、ゲル化しやすく好ましくない。
(ポリウレタン)
本発明において、ポリウレタンは易接着層の柔軟性を付与し、優れた成形性のために添加される。ポリウレタン樹脂には大きくポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に分類される。接着性の点からはこれらいずれも適用可能であるが、中でも、耐ブロッキング性や耐湿熱性の点からポリカーボネート系ポリウレタンを用いることが好ましい。ポリエステル系ポリウレタン樹脂は湿熱環境下で加水分解しやすく、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂は吸湿性が高いため易接着層の膜強度が低下しやすく接着性が不足する場合がある。一方、ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、ハードセグメントとしてポリカーボネート構造を有するため、優れた耐湿熱性を有するため好適である。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネートジオールと脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートと、必要に応じて鎖延長剤を添加した重合物を用いることができる。なお、これらウレタンの構成成分は、核磁気共鳴分析などにより特定することが可能である。
ポリカーボネートジオールは、下記一般式で示されるものである。
HO−[−R−O−COO−]−R−OH
(Rは脂肪族系、または脂環族系置換基)
ポリカーボネートジオールは、例えばアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物とジオール類及び/またはポリエーテルポリオール類を反応させて得られる。
アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等があげられる。
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、フェニル−ナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジエチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピル−ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等が挙げられる。
これらカーボネート類に対する共反応物質として、まずジオール類の例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−ペンタンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール等が挙げられる。
また、ポリエーテルポリオール類の例としては、例えばテトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレングリコール、ジオール類のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。ここで用いるジオール類の例として、たとえばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類またはオクタンジオール類例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、トリメチロールプロパン、グリセリン等をあげることができ、アルキレンオキサイドの例として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等が挙げられ、これらは2種以上混合して使用することも可能である。
上述のジオール類及びポリエーテルポリオール類は1種単独でも、あるいはこれらを2種以上混合して使用しても差し支えない。これらはいずれも公知の方法で前述のアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物と反応してポリカーボネートジオールを形成することができる。
本発明において、ウレタンの構成成分であるポリオールの組成モル比は、ウレタンの全ポリイソシアネート成分を100モル%とした場合、3〜100モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることがより好ましく、6〜20モル%であることがさらに好ましい。特にポリカーボネートポリオールの場合は、前記組成モル比が低いと耐湿熱性の効果が得られない場合がある。また、前記組成モル比が高い場合は、密着性が低下する場合がある。
本発明のウレタンの構成成分であるポリイソシアネートとしては、例えば、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
本発明の易接着層は、水系の塗布液を用い後述のインラインコート法により設けることが好ましい。そのため、本発明のウレタン樹脂は水溶性であることが望ましい。なお、前記の「水溶性」とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解することを意味する。
ウレタン樹脂に水溶性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することができる。スルホン酸(塩)基は強酸性であり、その吸湿性能により耐湿性を維持するのが困難な場合があるので、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが好適である。
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類、N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
水溶性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3〜60モル%であることが好ましく、10〜40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%未満の場合は、水分散性が困難になる場合がある。
本発明ではポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tig)を特定の範囲に制御することが好ましい。すなわち、本発明のポリウレタンのガラス転移点(Tig)は、下限40℃、好ましくは50℃、上限100℃、好ましくは90℃、である。該ポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tig)が40℃未満の場合、耐ブロッキング性が低下する場合がある。逆に100℃を超えると易接着層の柔軟性、接着性が低下する場合がある。ポリウレタンのガラス転移点(Tig)を上記範囲に制御するためには、下記のポリオール成分、もしくはポリウレタンの分子量を適宜選択、調整することにより行うことができる。
本発明において、易接着層の柔軟性と接着性をより高度に両立させるためには、前記共重合ポリエステルと前記ポリウレタンの配合割合が共重合ポリエステル/ポリウレタン(質量比)=80/20〜30/70であることが好ましい。前記配合割合は75/25〜40/60であることがさらに好ましい。共重合ポリエステル/ポリウレタン(質量比)=100/0〜90/10では易接着層の柔軟性が低下し、20/80〜0/100では耐ブロッキング性および接着性が低下する場合がある。
本発明の易接着層は、ポリエステルからなる基材フィルムに対して好適な密着性を示すポリエステルと、加飾層に対して相溶性が高いポリウレタンとを主成分とするため、優れた初期密着性を示す。さらに、耐湿熱性を向上させるためには、ポリエステルとしては高度な自己架橋性を形成することができるポリエステル系グラフト共重合体を用い、かつ、ポリウレタンとしては加水分解されにくいポリカーボネート系ポリウレタンを用いることが好適である。ポリエステル系グラフト共重合体とポリカーボネート系ポリウレタンとの組合せが耐湿熱性の付与に特に好適であることについては、本発明者は以下のように考えている。すなわち、本発明のポリエステル系グラフト共重合体は側鎖として酸無水物を構成成分として有する。一方、本発明のポリウレタンはカーボネート基を有する。これら側鎖とカーボネート基が水素結合様の相互作用を示し、易接着層としての耐久性がより高度に発揮されると考えられる。
本発明の易接着層のガラス転移点(Tig)の下限は30℃、好ましくは35℃、上限は55℃、好ましくは50℃である。易接着層のガラス転移点(Tig)が35℃未満では十分な耐湿熱性が得られない場合があり、さらに耐ブロッキング性も低下する場合がある。易接着層のガラス転移点(Tig)が55℃を越えると易接着層の柔軟性が低下する場合がある。耐湿熱性と成型性の両立を好適に図るためには、易接着層のガラス転移点(Tig)をこのようにの範囲に設定することが好ましい。ポリエステル成分、及びポリウレタン成分がそれぞれ前記範囲内のガラス転移点(Tig)であっても、架橋剤と共に、製膜工程で、架橋構造を有する易接着層を積層した場合、ガラス転移点(Tig)は38℃を越える場合がある。また、架橋構造を有していてもガラス転移点(Tig)を維持するためには、適度な架橋剤の配合量、ポリウレタンの配合量とポリエステル系グラフト共重合体配合量及び、疎水性共重合性ポリエステル樹脂と重合性不飽和単量体との質量比率を前述の範囲にすることが好ましい。なお、上記ガラス転移点とは製膜工程で易接着層として積層された状態、すなわち、ポリエステル系グラフト共重合体と、ポリカーボネート系ポリウレタンが架橋剤で架橋された状態でのJIS−K7121に準拠した方法で測定した補外ガラス転移開始温度(Tig)を意味する。
(粒子)
本発明の易接着層には少なくとも粒度分布(d75/d25)が1.1〜1.5、平均粒径が0.04〜1.2μmである粒子を含むことを特徴とする。
フィルムの表面が平滑であると、フィルムをロール状に巻き取った際にフィルム間に巻き込んだ空気が抜け切れず、巻き込んだ空気部に由来するフィルムにシワが生じやすくなる。このような欠点を有するフィルムをメッキ代替としては使用した場合に外観欠点となり、好適な鏡面外観を得ることができない。係る外観欠点は、フィルムの厚みが100μm以下、さらには80μm以下の薄手フィルムのようにフィルムの腰感が低い場合に発生しやすくなる。そこで、本発明の易接着層には平均粒径0.04〜1.2μmの粒子を含有させる。粒子の平均粒径はより好ましくは0.05〜1.0μm、さらに好ましくは0.06〜0.90μmである。平均粒径の下限が上記以上であると、易接着層表面に有効な突起が形成され、空気抜け性の向上により外観欠点のないフィルムを好適に得ることができる。また、粒子の平均粒径が上記上限以下であると、フィルム表面が平滑な面感を得ることができる。粒子の平均粒径は、フィルム易接着層表面の走査型顕微鏡観察像や、フィルム易接着層切片の電子顕微像から計測しることができるし、コールターカウンター法により求めることもできる。なかでも、フィルム易接着層表面の走査型顕微鏡観察像から易接着層表面に露出している粒子の粒子径を計測することで好適に求めることができる。
易接着層の厚みをt(μm)、前記粒子の平均粒径をd(μm)とした場合、これらの比である(d/t)は1〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは5〜20である。(d/t)が上記下限以上の場合は易接着層表面に空気抜けに有効な表面突起が形成されやすい。また、(d/t)が上記上限以下の場合は粒子の粉落ち(易接着層からの粒子の脱落)が生じにくく、加工に際して安定な摩擦係数が得られやすい。
上記の関係から、本発明の易接着層の厚みは、具体的に好ましくは0.02〜0.50μm、より好ましくは0.03〜0.10μm、さらに好ましくは0.04〜0.08μmである。
本発明の易接着層は上記構成を有するため、良好な空気抜け性を有する。具体的には、後述の方法により測定される空気抜け指数が350秒以下であることが好ましく、より好ましくは200秒未満であり、さらに好ましくは50秒未満である。空気抜け指数が上記上限以下であるため、本発明のフィルムを製膜工程においてロールに巻き取った場合にも空気抜けが良好であり、フィルムロールとして保管した場合でもシワが生じにくい。一方、空気抜け指数の下限としては30秒以上が好ましく、35秒以上がより好ましい。空気抜け指数が上記下限以上であると、粒子突起の粉落ちがより好適に抑制される。
本発明のフィルムは蒸着加飾面を裏面にした場合での良好な外観性を奏することが望ましい。そのため、易接着層中の前記粒子の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.05〜2.5質量%、さらに好ましくは0.10〜2.0質量%である。粒子含有量が上記下限以上である場合はフィルムロールとして巻取る際の空気抜け性を良好に保持しうる。また、粒子含有量が上記上限以下の場合は粒子突起の粉落ちがより好適に抑制され、また好適な透明性が得られやすくなる。
易接着層中の粒子濃度が上記範囲であるため、本発明のフィルムは高い透明性を有する。具体的には、本発明のフィルムのヘイズは好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.5%以下であり、よりさらに好ましくは1.2%以下、さらにより好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.8%以下である。本発明のフィルムは上記のように良好な透明性を有するため、例えば、フィルム裏面に蒸着層を設けて基材と一体成型しても鏡面状の良好な表面外観を得ることができる。なお、フィルムの透明性を上記範囲にするためには、易接着層にのみ粒子を含有し、基材となるポリエステルフィルム中には実質的に粒子を含有しない構成とすることが好ましい。なお、「基材フィルム中には実質的に粒子を含有しない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量を意味する。これは意識的に粒子を基材フィルムに添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
フィルム表面に金属光沢を有する蒸着層を設け、非常に高度な鏡面化を施した場合、フィルム状態では視認できなかった微細な表面凹凸形状であっても、反射光による散乱により、鏡面に写される写像に歪みが生じ、外観欠点として視認されるようになってきた。写像の歪みは製膜直後のフィルムを鏡面処理した場合は認められないものの、ロール状に巻き取ったフィルムを用いた場合に顕著に認められた。このような写像の歪みの発生機序について鋭意検討したところ、空気抜け性を付与するために添加した前記粒子の粒子形状の不均一性が要因となることを見出した。すなわち、粒子形状が不均一な場合は、フィルム表面の微細な凹凸に局所的な偏在が生じ、フィルムロールとして多層にフィルムを積層した場合、係る凹凸形状の偏在が集積し、オレンジピールと呼ばれる微細なフィルム表面凹凸構造が生じるということが分かった。こうして形成されるフィルム表面の微細な凹凸構造は、マットなどと表現される凹凸構造よりは微細であり、かつ三次元表面粗さ(SRa)などで表現される表面突起構造よりは大きい構造を有するものであった。つまり、フィルムそのものとしては視認しえないものでありながら、鏡面処理を施した際に視認しうる程度の微細な表面凹凸形状であった。このような粒子による凹凸形状の偏在の集積はフィルムの厚みが100μm以下、さらには80μm以下の薄手フィルムのようにフィルムの腰感が低い場合に発生しやすい傾向が認められた。
上記課題を解決し、良好な鏡面外観を奏するためには、本発明の易接着層に含まれる前記粒子の粒度分布(d75/d25)は1.1〜1.5とすることが重要である。前記粒子の粒度分布(d75/d25)は好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。前記粒子の粒度分布が上記上限以下の場合、フィルム表面凹凸の偏在が少なくなり、薄手のフィルムをロール状にまいたものであっても、オレンジピールが生じにくい。また、前記粒子の粒度分布は1に近似することが好ましいが、工業的生産性の点から1.1が下限である。粒子の粒度分布を上記範囲に制御する手段は特に問わないが、例えばフィルターなどの濾過や粒子落下速度、送風装置、静電装置などを利用して粗大粒子などを取り除いたり、粒子凝集が生じにくい粒子種を選定したり、狭小な粒度分布が得られやすい有機粒子を採用したりすることができる。有機粒子は調整時に添加する界面活性剤の濃度を調整することで好適に粒度分布を制御することができる。特に、乳化重合により得られた架橋有機粒子は狭小な粒度分布が得られやすく好適である。粒度分布は、フィルム易接着層表面の走査型顕微鏡観察像や、フィルム易接着層切片の電子顕微像から計測しることができるし、コールターカウンター法により求めることもできる。なかでも、フィルム易接着層表面の走査型顕微鏡観察像から易接着層表面に露出している粒子の粒子径を計測することで好適に求めることができる。
本発明の易接着層は上記構成を有するため、薄手のフィルムをロール状に巻き取った場合であってもオレンジピールが生じにくく、鏡面処理により鮮明な写像を得ることができる。写像歪みは、金属光沢表面の凹凸構造により光の反射が異なることによって、人間の視覚で認められる。写像歪みの要因となるフィルム表面の凹凸構造は光学的に波長の明暗パターンを測定するマイクロウェーブスキャン(Gardner社製)により評価することができる。このウェーブスキャンは、レーザーの点光源がフィルム表面に対する垂線から60°傾いた角度でレーザー光線を照射し、検出器が前記垂線に対して反対の同角度の反射光を測定する。この装置は、レーザーの点光源をフィルム表面の上に移動させてスキャンすることで、反射光の明暗を決められた間隔で一点ずつ測定し、フィルム表面の光学的プロファイルを検出できる。検出された光学プロファイルは、周波数フィルターを通してスペクトル解析して、表面のストラクチャーを解析することができる。この装置の特性スペクトルは次の通りである。du:波長0.1mm以下、Wa:波長0.1〜0.3mm、Wb:波長0.3〜1mm、Wc:波長1〜3mm、Wd:波長3〜10mm、We:波長10〜30mm、SW:波長0.3〜1.2mm、LW:波長1.2〜12mm。これらのなかでも波長0.1〜0.3mm領域の反射強度(Wa)は、本発明の微細な表面凹凸構造に起因したプロファイルとして活用しうることがわかった。
本発明のフィルム表面をウェーブスキャン装置で測定した場合の波長0.1〜0.3mm領域の反射強度(Wa)は好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下である。前記反射強度が、上記上限以下である場合は、フィルム表面は平滑でメッキ代替として用いた際に良好な鏡面外観を呈することができる。
本発明において易接着層中に含有させる前記粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレーなど或いはこれらの混合物であり、更に、他の一般的無機粒子、例えばリン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムその他と併用、等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。中でも、粒度分布の狭小な粒子が得られやすい、スチレン系、アクリル系等の有機ポリマー系粒子が好ましい。
本発明では、少なくとも1種の粒子が上記要件を満足することが好ましい。また、上記粒子に加えて耐ブロッキング性や耐スクラッチ性などの目的に、平均粒径の異なる複数の無機粒子を組み合わせて使用するのも好ましい態様のひとつである。その際に用いる他の粒子は前記粒子よりも平均粒径が小さいことが望ましく、さらには易接着層の厚みよりも小さいことがより望ましい。このような比較的小さい他の粒子を添加することにより易接着層表面の固さを付与し、耐ブロッキング性を向上させることができる。
このような平均粒径が小さい粒子(以下、この粒子を粒子Bともいい、前述の粒子を粒子Aとして両者を区別することがある)の平均粒径は20〜150nmが好ましく、30〜100nmがより好ましく、40〜80nmがよりさらに好ましい。粒子Bの平均粒径をdB、易接着層の厚みをtとすると、これらの比(dB/t)は1.5〜0.1が好ましく、1.2〜0.3がより好ましい。粒子Bとして、粒子Aよりも小さく、さらに易接着層の厚みと同等である小さい粒子を用いることで、フィルム面感を損なうことなく、耐ブロッキング性を向上させることができる。粒子Bを添加する場合は、易接着層中の固形分濃度として30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がよりさらに好ましい。粒子Bの添加濃度を上記上限以下とすることでフィルムの透明性を保持することができる。なお、粒子Bの平均粒子径についても、前記粒子Aのようにフィルム易接着層表面の走査型顕微鏡観察像から易接着層表面に露出している粒子の粒子径を計測することで好適に求めることができる。
また、本発明の易接着層は上記構成を有するため、良好な耐ブロッキング性を有する。具体的には、後述の方法により測定される易接着層面の静摩擦係数は好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。また、動摩擦係数は好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下である。静摩擦係数及び/もしくは動摩擦係数が上記上限以下であるため、本発明のフィルムは各種成型加工において好適な取扱い性を有す。
(架橋剤)
耐ブロッキングの点から本発明の易接着層には架橋剤を含むことが好ましい。これにより、易接着層に適度な架橋構造が形成されるため、架橋剤の添加は耐湿熱性の付与に好適である。架橋剤の配合割合は、ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましく、8〜25質量部であることがさらに好ましい。上記架橋剤の配合割合がポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対して5質量部未満では耐ブロッキング性が低下したり、接着性が低下することがあるので好ましくない。逆に、40質量部を超えると成型性に追従するための柔軟性が低下する場合がある。
上記架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類などのホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物などを用いる。
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンなどを挙げることができる。
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用い得る。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体がある。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
架橋剤の中でも、本発明に用いる架橋剤としては、ブロックイソシアネート系架橋剤が好ましい。ブロックイソシアネート系架橋剤を添加することにより高度に接着性、耐ブロッキング性を両立させることが可能となる。
ブロックイソシアネート系架橋剤は上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調製し得る。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダなどを挙げることができる。
本発明の塗液中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加しても良い。
(基材ポリエステルフィルム)
基材となるポリエステルフィルムは、主としてポリエステル樹脂よりなる。基材フィルムを構成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体が好適であり。特に成型性の点から共重合ポリエステル、あるいは共重合ポリエステルとホモポリエステルからなるポリエステルフィルムが好ましい。
メッキ代替フィルムとして成型基材と一体成型する場合はフィルム厚みは薄い方が好ましい。本発明のフィルムの厚みは好ましくは15〜80μmであり、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは60μm以下、よりさらに好ましくは50μm以下である。また、フィルムとしての強度の点からフィルム厚みの下限は15μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上である。本発明の易接着層は上記態様を有するので、薄手のフィルムであってもメッキ代替用途として好適な外観を呈する。
(共重合ポリエステル)
共重合ポリエステルとしては、(a)芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステル、あるいは(b)テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルが好適である。また、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、さらにグリコール成分として1,3−プロパンジオール単位または1,4−ブタンジオール単位を含むことが成型性を向上させる点から好ましい。本発明に用いられる共重合ポリエステルは、上記(a)の場合は、全グリコール成分に占めるエチレングリコールの割合が20モル%〜95モル%になるように共重合成分を添加することが好ましい。なお、前記の全グリコール成分に占めるエチレングリコールの割合の下限としては好ましくは30モル%、より好ましくは40モル%であり、上限としては好ましくは90モル%、より好ましくは80モル%、さらに好ましくは70モル%である。また、本発明に用いられる共重合ポリエステルは、上記(b)の場合は、全芳香族ジカルボン酸成分に占めるテレフタル酸の割合が50モル%〜95モル%になるように共重合成分を添加することが好ましい。なお、前記の全芳香族ジカルボン酸成分に占めるテレフタル酸の割合の下限としては好ましくは60モル%、より好ましくは70モル%であり、上限としては好ましくは90モル%である。
フィルム原料としては、共重合ポリエステル単独、1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルのブレンド、またはホモポリエステルと共重合ポリエステルの組合せのいずれの方法も可能である。これらの中でも、ブレンド法が融点の低下を抑制する点から好適である。
前記の共重合ポリエステルとして、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体が好適であり、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらの中でも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として使用することは、前記の特性を付与するために好適であり、さらに、透明性や耐熱性にも優れ、接着性改質層との接着性を向上させる点からも好ましい。
また、前記の共重合ポリエステルとして、テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを用いる場合、エチレングリコールの量は全グリコール成分に対し70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。エチレングリコール以外のグリコール成分としては、前記の分岐状脂肪族グリコールや脂環族グリコール、またはジエチレングリコールが好適である。
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記共重合ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、成型性、接着性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が0.50dl/g未満では、成型性が低下する傾向がある。また、メルトラインに異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
(フィルム原料とするポリエステル系樹脂)
本発明では、フィルム原料として、1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルを用い、これらをブレンドしてフィルムを製膜することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の柔軟性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現することができる。また、高融点のホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)のみを用いた場合に対し、高い透明性を維持しながら柔軟性と実用上問題のない融点(耐熱性)を実現することができる。
また、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明のポリエステル系樹脂フィルムロールの原料として使用することは、成型性の点からもさらに好ましい。
本発明では、共重合ポリエステル単独、若しくは1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルをブレンドしたポリエステル系樹脂をフィルム原料とする。本発明に用いるポリエステル系樹脂は、共重合成分を5〜50質量%含むことが好ましい。
前記のポリエステル系樹脂の融点は、耐熱性及び成型性の点から、180〜250℃であることが好ましい。使用するポリマーの種類や組成、さらに製膜条件を前記融点の範囲内に制御することにより、成型性と仕上がり性とのバランスが取れ、高品位の成型品を経済的に生産することができる。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。該融点は、示差走査熱量分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、昇温速度20℃/分で測定して求めた。融点の下限値は、190℃がよりに好ましく、200℃がさらに好ましく、210℃以上が特に好ましい。融点が180℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型品の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。
前記融点の上限値は、耐熱性の点からは高いほうが良いが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、融点が250℃を超えるフィルムでは、成型性が悪化する傾向がある。また、透明性も悪化する傾向がある。さらに、高度な成型性や透明性を得るためには、融点の上限を250℃に制御することが好ましい。
本発明のポリエステル系樹脂フィルムは、二軸延伸フィルムであることが重要である。本発明においては、二軸延伸による分子配向により、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や寸法安定性が改善される。すなわち、未延伸シートの成型性の良さを維持しつつ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や耐熱性を改善することができる。
また、本発明の好ましい実施態様として、良好な透明性と安定な作業性(特に表面摩擦特性)を得るためには、多層構成を有するフィルムであって表面層にのみ微粒子を含有するポリエステル層を用いることもできる。このような基材フィルムとしては、中心層(b層)の両面に不活性粒子を含有する表面層(a層)が共押出法により積層されてなる多層構成(a/b/a)を有するポリエステルフィルムを用いることが好ましい。表裏の表面層を構成する層は、同種であっても、異種であっても良いが、基材フィルムの平面性を保持する為には、表裏の表面層のポリエステル樹脂は同構成とすることが望ましい。
(製造方法)
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、逐次二軸延伸もしくは同時二軸延伸により得られた二軸配向積層ポリエステルが望ましい。以下、最も好んで用いられる逐次二軸延伸方法について説明する。
まず、原料のペレットを十分に真空乾燥する。次に押出機を用いて融点以上の温度で溶融し、ダイスから共押出し法によりポリエステルシートを層状に押出し、回転式冷却ロールに密着固化させて未延伸ポリエステルフィルムを得る。回転式冷却ロールへ密着させる方法として、公知の静電密着法、エアーナイフ法、エアーチャンバー法等を用いることができる。また、必要に応じて、回転式冷却ロールの反対面から空気を吹付けて冷却してもかまわない。未延伸ポリエステルフィルムをロール方式の縦延伸機に導き、80〜125℃に加熱した後、ロールの周速差により縦方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸延伸フィルムを得る。縦延伸は一段階で実施しても、多段階に分けて実施してもかまわない。
その後、一軸延伸ポリエステルフィルムをグリップ方式の横延伸機に導き、80〜180℃に加熱した後、横方向に2.5〜5.0倍延伸し、次いで、200〜240℃で熱固定処理した後、必要に応じて縦方向および/または横方向に1〜10%緩和処理し、次いで、フィルムワインダーで巻き取って二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
易接着層の塗布する段階としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗
布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能であるが中でも、基材ポリエステルフィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる、インラインコート法が本発明の効果をより顕著に発現させることができるので好ましい方法である
易接着層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる
(成型体)
本発明の成型用ポリエステルフィルムはメッキ代替として好適に用いることができる。本発明の成型用ポリエステルフィルムのいずれかの面に金属調の加飾層を施す。金属調の加飾層は、金属、合金、金属酸化物や、これらに必要に応じてシリコンなどを添加したものを蒸発材料として物理的蒸着により形成することができる。物理的蒸着法は、真空にした容器の中で蒸発材料を何らかの方法で気化させ、気化した蒸発材料を近傍に置いた下地上に堆積させて薄膜を形成する方法である。蒸発材料の気化方法の違いで、蒸発系とスパッタリング系とに分けられる。蒸発系としては、EB蒸着、イオンプレーティング、パルスレーザー蒸着等が挙げられ、スパッタリング系としては、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリング等が挙げられる。
蒸着材料としては、スズ、インジウム、アルミニウム、亜鉛、金、銀、銅、チタン、ニッケル、又はこれらの何れかを元にした合金、の何れか若しくは複数であることが考えられる。具体的にどれを選択するかは、所望の金属光沢の種類に応じて選択されればよい。なかでも、インジウムは伸展性に優れるので、本発明の成型可能なメッキ代替フィルムには好適である。
金属蒸着層の厚みは5nm以上80nm以下であることが好ましい。5nm以上であると好適な金属光沢が得られやすく、80nm以下とすると成型時の割れを好適に抑制しうる。
物理的蒸着以外にもミラーインキなどの塗布もしくは印刷による設けても良い。加飾を施す面は易接着層面であっても、非易接着層面であってもかまわない。加飾を施したフィルムを基材と重ねて一体成型させることでメッキに変わる面感を奏することができる。
基材としては、成型性を有するシート、フィルムを用いることができる。基材の構成材料は特に限定されないが、高分子樹脂が好適に用いられる。高分子樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂などのアクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、又はフッ素樹脂などが用いることができる。基材と成型用ポリエステルフィルムとは直接積層してもよいが、粘着層やヒートシール層などを介して積層してもよい。
得られた積層体を一体成型する方法は特に限定されないが、真空成型、圧空成型、金型成型などにより一体成型することができる。
得られた成型体は、たとえば、自動車用の内装や外装の加飾材、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ステレオ、携帯機器などの家電製品、化粧用コンパクト鏡などの鏡製品、自動車等の車両、船舶、航空機、建造物、遊具(スキー用ゴーグル等)、アミューズメント装置、その他各種機械装置類などに使用される銘板(表示板及びパネルを含む)として好適である。特に、高温湿熱下での用いられる用途(浴槽、洗面台、台所、サニタリーなどの水回り用品、建材、外装、太陽光パネル等の屋外用品、自動車内装、屋根裏などにさらに好適である。
次に本発明の実施例および比較例を示す。まず本発明に用いる測定・評価方法を以下に示す。
(1)ガラス転移点(Tig)
易接着層のガラス転移点(Tig)の測定は易接着フィルムから易接着層のみを削りとり、試料とした。
測定はJIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、DSC曲線からガラス転移開始温度(Tig)を求めた。
測定条件
(a)測定温度範囲:0〜200℃
(b)昇温速度:20℃/min
(c)窒素ガスフロー有り
(2)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(3)ヘイズ
JIS−K7105に準拠し、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製)を用いて評価した。
(4)易接着層の厚み
フィルム断面をフィルム面に対し直角にミクロトームで切断し、透過型電子顕微鏡(TEM)でフィルムの断面写真を撮り、その写真上で樹脂成分の厚みを計測する。同様の計測を場所を変えて10回行い、その計測値の平均を樹脂成分の厚み(μm)とした。
(5)外観性1(ウェーブスキャン法)
得られた約100m長さのフィルムについてフィルムロール状に巻き取り、室温で約12時間静置した後、フィルムを切り出し、易接着層面と反対面に黒色シート(GAボードFSブラック26)を敷き、フィルムの易接着層面をウェーブスキャン(BYK Gardner社製)を用いて測定した。表示される波長0.1−0.3mm領域の反射強度Waの値で評価した。波長0.1−0.3mm領域の反射強度Waは表面粗度の振幅の指標であり、フィルム表面のオレンジビールのような微細な凹凸形状による振幅を評価することができる。この値が小さいほど表面の平滑性が高いことを示す。
(6)外観性2(目視評価)
得られた約100m長さのフィルムについてフィルムロール状に巻き取り、室温で約12時間静置した後、フィルムに約100Å厚みの金属(In)蒸着を施し、表面の蛍光灯の像を写し込ませ、蛍光灯の写像状態を目視観察し、次の5段階で評価した。
1 :写像の歪みが全く観察されない
2 : 不鮮明な写像の歪みが若干観察されるものの使用に耐えうる
3 : 不鮮明な写像の歪みの発生がかなり見られるものの使用に耐えうる
4 : はっきりとした写像の歪みが全面に見られ使用に耐えない
(7)粒子Aの粒度分布
粒度分布値粒径は日立製作所製のS3500走査型電子顕微鏡(倍率800倍)による写真法で易接着層表面に露出する粒子を測定し、等価球に換算した。粒度分布は約500個の粒子の粒径を測定し、小粒子側から体積を積算した。総体積に対し、積算割合が25%時の粒径をd25とし、積算割合が75%時の粒径をd75としてその比(d75/d25)の値で粒度分布のシャープさを示した。この値が1に近いほどシャープである。なお、粒子Bが共存する場合は、粒子径が大きい粒子集団を母集団として上記方法により計測した。
(8)粒子の平均粒径
粒子の平均粒径は上記の粒度分布と同様の方法で求め、総体積に対し、積算割合が50%時の粒径d50として表した。なお、粒子Bが共存する場合は、粒子径が大きい粒子集団を母集団と粒子径が小さい母集団に分け、粒子径が大きい粒子の粒子径を粒子A、小さいほうの粒子径を粒子Bとして上記方法により計測した。
(9)摩擦評価(μs・μd)
得られたフィルムから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ4.4kgの金属製直方体底面に易接着層面が内側になるように固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
次いで、同じ基材フィルムから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り出し、平らな金属板に易接着面を上にして長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引張りスピード200mm/分、23℃、65RH条件下で静摩擦係数(μs)および動摩擦係数(μd)を測定した。測定には東洋BALDWIN社製、RTM−100を用い、静摩擦係数(μs)および動摩擦係数(μd)はJIS−7125に準拠して算出した。
(10)空気抜け指数
図1に示すように、台盤1の上にフィルム4を反易接着層面を上にして載せる。次いで、フィルム押え2をフィルム4の上から載せ、固定することによって張力を与えながらフィルム4を固定する。次いで、フィルム押え2の上に、フィルム5を易接着層面を下にして載せる。次いでフィルム5の上にフィルム押え8を載せ、更にネジ3を用いてフィルム押え8,2および台盤1を固定する。次に、フィルム押え2に設けられた空洞2aと真空ポンプ6とを、フィルム押え2に設けられた細孔2cおよびパイプ7を介して接続する。そして、真空ポンプ6を駆動すると、フィルム5には、空洞2aに吸い付けられることによって張力が加わる。また、同時にフィルム4とフィルム5の重なり合った面もフィルム押え2に円周状に設けられた細孔2dを介して減圧され、フィルム4とフィルム5はその重なり合った面において、外周部から密着し始める。密着する様子は、重なり合った面の上部から干渉縞を観察することによって容易に知ることができる。そして、フィルム4とフィルム5の重合面の外周部に干渉縞が生じてから重なり合った面の前面に干渉縞が拡がり、その動きが止まるまでの時間(秒)を測定し、この時間(秒)をもって空気抜け指数とする。なお、測定は2枚のフィルムを取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を空気抜け指数として算出する。空気抜け指数の値が小さいほど、つまり時間(秒)が短いほどフィルムの巻き特性は良好となる。
下記の基準で巻き性を評価した。
◎:空気抜け指数50秒未満
○:空気抜け指数50秒以上200秒以下
△:空気抜け指数200秒以上350秒以下
×:空気抜け指数350秒以上
(11)接着性
UV硬化型インキ(株式会社セイコーアドバンス製、UVA710 ブラック)をフィルム表面(易接着層が設けられている場合は、易接着層表面)にテトロン・スクリーン(#300メッシュ)によって印刷した後に、500mJ/cmでUV露光した。
硬化した印刷層に対し、カッターナイフにより2mm角100マスのクロスカット面を入れ、その上にセロテープ(ニチバン株式会社製、CT−24)を気泡が入らないように貼りつけ、さらにその上をこすって十分に密着させる。その後、上記インキ面のセロテープ(登録商標)が密着されていない前後の両端部を手で押さえ、90°方向に急速に剥離した。
剥離後のインキ面を観察し、100個のマス目におけるインキ残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を以下の4段階の基準で接着性を評価し、◎及び○を合格とした。なお、本発明でいう易接着性とは、上記評価を行った際にインキ残留率が90%以上を有するものと定義する。
◎:残留率100%(全く剥離しない)
○:残留率90%以上100%未満(実用上問題なく使用できる)
△:残留率70%以上90%未満(接着性が若干弱く、実用上問題が発生する
可能性有り)
×:残留率70%未満(接着性不良)
(12)湿熱後の接着性
酸化型重合インキ(十条化工株式会社製、黒)と希釈溶剤(十条加工株式会社製、テトロン)をインキ:希釈溶剤=4:1で希釈し、フィルム表面(易接着層が設けられている場合は、易接着層表面)にテトロン・スクリーン(#250メッシュ)によって印刷した後、65℃のギアオーブンで15分間乾燥させた。
次に、このインキを印刷したフィルムを80℃のお湯に2分間入れる。取り出して水気を拭き取った後、3時間以上風乾させる。続いて印刷面上にカッターナイフにより2mm目100マスのクロスカット面を入れ、その上にセロテープ(ニチバン株式会社製、CT−24)を気泡が入らないように貼り付け、更にその上をこすって十分に密着させる。その後、上記インキ面のセロテープ(登録商標)が密着されていない前後の両端部を手で押さえ、90°方向にクロスカット面を急速に剥離した。
剥離後のインキ面を観察し、100個のマス目におけるインキ残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を以下の4段階の基準で接着性を評価し、◎及び○を合格とした。なお、本発明でいう易接着性とは、上記評価を行った際にインキ残留率が90%以上を有するものと定義する。
◎:残留率100%(全く剥離しない)
○:残留率90%以上100%未満(実用上問題なく使用できる)
△:残留率70%以上90%未満(接着性が若干弱く、実用上問題が発生する
可能性有り)
×:残留率70%未満(接着性に問題有り)
(13)成型性
(6)で得られた金属蒸着層を有するフィルムの反蒸着層にポリウレタン樹脂(タケネートA−975、三井化学社)を塗布して接着層を設けた。金属蒸着面を厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製セパレートフィルムで保護し、反蒸着面側を厚さ100μmのアクリルフィルムと積層し、100〜140℃に加熱した熱板で4秒間接触加熱後、金型温度30〜70℃、保圧時間5秒にてプレス成型を行った。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが20mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。得られた成型品を下記基準により評価した。
◎:角立ちがよく、シワや写像歪みの外観欠点がなく、金属調の高光沢感を奏する。
○:シワが一部で認められるものの、写像歪みがなく、金属調の高光沢感を奏する。
△:シワやオ写像歪みが一部で認められる。
×:シワもしくは写像歪みが全面に認められるあるいは、成型品に破れが認められる。
実施例1
(疎水性重合ポリエステル樹脂の調製)
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレス製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート218重量部、ジメチルイソフタレート194重量部、エチレングリコール488重量部、ネオペンチルグリコール200重量部およびテトラ−N−ブチルチタン0.5重量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸13重量部およびセバシン酸51重量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温しエステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、疎水性共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた疎水性共重合ポリエステルは、淡黄色透明であった。
(水分散したポリエステル系グラフト共重合体の調製)
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、疎水性共重合ポリエステル75質量部、メチルエチルケトン56質量部およびイソプロピルアルコール19質量部
を入れ、65℃で加熱、撹拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15質量部をポリエステル溶液に添加した。次いで、スチレン10質量部およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5質量部を12質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノールを5質量部添加した。次いで、イオン交換水300質量部とトリエチルアミン15質量部を反応溶液に加え、1時間半撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散したポリエステル系グラフト共重合体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は、淡黄色透明で、ガラス転移点は40℃であった。この樹脂をポリエステル系グラフト共重合体(a1)とした。
(ポリカーボネート系ウレタン樹脂の合成)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、ポリイソシアネートとして、1,3−シクロヘキサンビス(メチルイソシアネート)73.0質量部と、数平均分子量2000のポリヘキサンジオールカーボネート112.7質量部と、ネオペンチルグリコール11.7質量部と、ジメチロールプロピオン酸12.6質量部と、有機溶媒として、アセトニトリル60質量部、N−メチルピロリドン30質量部とを仕込み、窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調整して、反応触媒としてオクチル酸第1錫を0.06質量部加え、7時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35%の水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂の水溶液(b1)を調製した。ガラス転移点(Tig)は86℃であった。
(塗布液Aの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%、粒子として平均粒径0.04μmのポリメタクリル酸メチル粒子を全樹脂に対し1.0質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
(フィルム原料の製造)
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A)と、固有粘度が0.69dl/gポリエチレンテレフタレートのチップ(B)をそれぞれ乾燥させた。さらに、チップ(A)とチップ(B)を25:75の質量比となるように混合した。
(積層フィルムの製造)
次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。
続いて、得られた一軸延伸フィルムに上記に示す水系塗布液Aをロールコート法でフィルムの片面に塗布し、130℃で3秒間乾燥し水分を除去した。
その後、連続的に端部をクリップで把持しながらテンターに導き、100℃の設定で加熱して3.8倍に横延伸し、幅固定しながら230℃で5秒間の熱処理を施し、更に205℃で幅方向に5%緩和させることにより、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。
得られた成型用ポリエステルフィルムの評価結果を表1に示す。
(塗布液Bの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%、粒子として平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.0質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例2
実施例1において、塗布液Aを塗布液Bに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Cの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.13μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例3
実施例1において塗布液Aを塗布液Cに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Dの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して0.02質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例4
実施例1において、塗布液Aを塗布液Dに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Eの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して0.05質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例5
実施例1において、塗布液Aを塗布液Eに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Fの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が0.56質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例6
実施例1において、塗布液Aを塗布液Fに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.01μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Gの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が1.12質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例7
実施例1において、塗布液Aを塗布液Gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.02μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Hの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例8
実施例1において、塗布液Aを塗布液Hに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05mの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Iの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が5.04質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例9
実施例1において、塗布液Aを塗布液Iに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.09μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Jの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が5.60質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例10
実施例1において、塗布液Aを塗布液Jに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.10μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Kの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して3.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例11
実施例1において、塗布液Aを塗布液Kに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Lの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して5.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例12
実施例1において、塗布液Aを塗布液Kに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Mの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.47μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例13
実施例1において、塗布液Aを塗布液Mに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例14
実施例1において、塗布液Aを塗布液Mに代えたこと以外は実施例1と同様にして、製膜後のフィルム厚みが75μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例15
実施例1において、塗布液Aを塗布液Mに代えたこと以外は実施例1と同様にして、製膜後のフィルム厚みが20μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Nの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径1.12μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.7質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例16
実施例1において、塗布液Aを塗布液Nに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Oの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径1.86μmのベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
比較例1
実施例1において、塗布液Aを塗布液Oに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Pの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.9μmのメラミン・ホルムアルデヒド架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
比較例2
実施例1において、塗布液Aを塗布液Pに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Qの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径1.58μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
比較例3
実施例1において、塗布液Aを塗布液Qに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Rの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例17
実施例1において、塗布液Aを塗布液Rに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Sの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=40/60であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例18
実施例1において、塗布液Aを塗布液Sに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Tの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物40質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例19
実施例1において、塗布液Aを塗布液Tに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Uの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物8質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例20
実施例1において、塗布液Aを塗布液Uに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Vの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ガラス転移点が35℃(カタログ値)のポリウレタン樹脂(三井化学社製:商品名 タケラックW511)の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例21
実施例1において、塗布液Aを塗布液Vに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Wの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、ガラス転移点が90℃(カタログ値)のエーテル系ポリウレタン樹脂(三井化学社製:商品名 タケラックW6020)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例22
実施例1において、塗布液Aを塗布液Wに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例23
塗布液Hの作製においてブロックイソシアネート化合物の代わりにメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)を固形分中16.7質量%になるよう変更した塗布液(X)を用いた以外は実施例8と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.05nmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層フィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例24
フィルム原料として固有粘度0.69dl/gのポリエチレンテレフタレートのチップ(B)のみを用いた以外は実施例4と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.05nmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層フィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Yの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=0/100であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
比較例4
実施例1において、塗布液Aを塗布液Yに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、良好な接着性と、面感に優れた鏡面状の加飾層を形成するに適している。そのため、自動車用の内装や外装の加飾材、家電メンブレンスイッチ、携帯電話用基材、建材用部材などの加飾用成型部材において、成型基材と同時一体成型することでメッキ代替処理方法において好適である。
1.台盤
2, 8.フィルム押さえ
2a.溝孔
2c.孔
2d.細孔
3.ネジ
4, 5.フィルム
6.真空ポンプ
7.パイプ
X.フィルム重なり部

Claims (8)

  1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有し、
    前記易接着層はポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂と少なくとも1種類の粒子を含み、
    該粒子の粒度分布(d75/d25)が1.1〜1.5、平均粒径dが0.04〜1.2μm、
    該粒子の平均粒径dと易接着層の厚みtとの比(d/t)が1以上100以下である成型用ポリエステルフィルム。
  2. 前記ポリエステルフィルムが共重合ポリエステル、あるいは共重合ポリエステルとホモポリエステルからなる請求項1記載の成型用ポリエステルフィルム。
  3. 前記ポリエステル樹脂が、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体がグラフトされたポリエステル系グラフト共重合体である請求項1または2に記載の成型用ポリエステルフィルム。
  4. 前記ポリウレタン樹脂がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  5. 前記易接着層に前記粒子を0.01〜3質量%含有し、
    前記フィルムのヘイズが2.0%以下、静摩擦係数が0.9以下、動摩擦係数が0.8以下、空気抜け指数が200秒以下である請求項1〜4のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  6. フィルムの厚みが15〜80μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  7. 前記フィルム表面におけるウェーブスキャン装置を用いて測定した波長0.1mm〜0.3mm領域の反射強度(Wa)が4.0以下である請求項1〜6のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルムの一方の面に金属蒸着層を設けたのち、基材と一体成型すること特徴とするメッキ代替加工方法。
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