JP2012088478A - 二成分現像剤の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】画像形成により感光体表面に発生する放電生成物と水分子の結合物の生成を抑えて、感光体表面の帯電性を長期にわたり安定維持させる樹脂コートキャリアを作製する二成分現像剤の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂コートキャリアを作製する際、ヒンダードフェノール構造とヒンダードアミン構造の少なくとも1つを有する化合物粒子を含有する樹脂を用いて磁性芯材粒子表面に樹脂コート層を形成する二成分現像剤の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁性芯材粒子表面に樹脂を被覆した樹脂コートキャリアと呼ばれるキャリアを作製する二成分現像剤の製造方法に関し、キャリアの樹脂コート層中に酸化防止剤粒子を含有させる二成分現像剤の製造方法に関する。
電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置に使用される現像剤には、トナーのみから構成される一成分現像剤と、キャリアと呼ばれる磁性粉体とトナーより構成される二成分現像剤がある。二成分現像剤による画像形成は、キャリアの存在により迅速なトナー帯電が行えることから、高速のプリント作成を行う上で有利な方式である。
二成分現像剤で使用されるキャリアは、前述した様にトナーを帯電するもので、トナー帯電に繰り返し使用されても長期にわたり安定した帯電付与性能を有することが求められる。キャリアは、芯材(コア)と呼ばれる磁性粒子より構成され、芯材をそのままキャリアに用いる形態の他、芯材表面を熱可塑性樹脂で被覆した構造の樹脂コートキャリアと呼ばれる形態がある。
樹脂コートキャリアは、芯材粒子表面が樹脂で被覆された構造を有することから良好な耐久性と安定した摩擦帯電性を有し、また、有機溶媒を使用せずに樹脂の被覆が行える技術も確率されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の製造方法は、回転羽根の回転による撹拌作用で樹脂粒子の芯材粒子表面への均一かつ強固な固着を実現しており、均一で十分な厚みの樹脂層を有し、良好な耐久性と安定した摩擦帯電付与性能を付与する樹脂コートキャリアの提供を可能にしている。
ところで、電子写真方式の画像形成方法では、感光体表面を一様帯電する帯電工程において、帯電を行う際に生ずる放電の作用でオゾンや窒素酸化物といった放電生成物と呼ばれるものを発生させることがあった。また、感光体表面に形成されたトナー画像を画像支持体等に転写させる転写工程でも、トナーの帯電量が多い場合には剥離時に生ずる放電の作用で放電生成物を発生させることがあった。
この様なオゾンや窒素酸化物等の放電生成物は、雰囲気中に存在する水分子と結合して、結合物を形成し、当該結合物が感光体表面に蓄積して電気抵抗を低下させ、画像ボケや画像流れ等の画像不良の発生や感光体表面の劣化の原因になった。とりわけ、空気中の水分濃度が高くなる高温高湿環境下での画像形成ではこの影響は大きなものになり、また、放電生成物が存在している環境は、所定画質の画像形成を安定的に行える様にする観点からも好ましいものではなかった。
放電生成物と水分子の結合物の発生を抑制する技術として、感光体にヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤を添加する方法や、トナー中に酸化防止剤を含有させて感光体表面へ供給する技術等が検討されていた(たとえば、特許文献1参照)。また、キャリアを構成する鉄粉粒子の酸化を防ぐために、樹脂層中に酸化防止剤を含有させる技術も検討されていた(たとえば、特許文献2参照)。この様に、ヒンダードフェノール系化合物に代表される酸化防止剤が、感光体表面におけるオゾンや窒素酸化物等の放電生成物と水分子の反応を回避し、良好な画像形成に寄与するものであることが知られていた。
特開2001−222134号公報 特開平7−209919号公報
しかしながら、放電生成物と水分子の結合を防ぐに十分な量の酸化防止剤を感光体表面に供給、存在させることは意外と難しいものであった。たとえば、前述した酸化防止剤を感光体に含有させる技術では、添加された酸化防止剤の作用で感光体表面の強度確保が困難になり、感光体表面が摩耗し易くなる傾向を有していた。また、トナーに酸化防止剤を含有させて感光体へ供給する技術では、微小なトナー粒子中に酸化防止剤を均一に分散させることが難しかった。また、トナー粒子中に添加されている全ての酸化防止剤を感光体表面における放電生成物と水分子の結合物形成防止に使用することができないものであった。この様に、トナー粒子中に酸化防止剤を含有させる方法も一定量の酸化防止剤を感光体表面へ安定供給することが困難であることが判明した。
これらの課題から、特許文献2の様にキャリアに酸化防止剤を添加し、トナーに比べて粒径の大きなキャリアであれば、結合物形成を阻害するのに十分な量の酸化防止剤を感光体表面へ供給できるものと考えられた。しかしながら、特許文献2は芯材粒子である鉄粉の酸化を防ぐために酸化防止剤をキャリア粒子内に長く留まらせることを意図したものであり、酸化防止剤を感光体へ移動する様に含有させるものではなかった。また、酸化防止剤という分子構造中から電子を失いやすい性質を有する化合物がキャリア表面に存在すると、安定したトナーの摩擦帯電の実施にも支障をきたすものと懸念された。
したがって、樹脂コート層中に酸化防止剤を含有するキャリアを作製する場合、トナーの摩擦帯電を邪魔せず、また、スムーズに感光体へ移動する様に酸化防止剤を含有させることが求められたが、この様な検討はこれまで行われてはいなかった。本発明は、樹脂層に含有させた酸化防止剤がトナーを介して感光体上へスムーズに供給され、感光体表面における放電生成物と水分子の結合物形成を防ぐ樹脂コートキャリアを実現する二成分現像剤の製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、トナーの摩擦帯電に支障を来たさない様に酸化防止剤を含有させた樹脂コートキャリアを実現する二成分現像剤の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記課題が以下に記載のいずれかの構成により解消されるものであることを見出した。すなわち、請求項1に記載の発明は、
『少なくとも、磁性芯材粒子及び樹脂粒子を乾式で混合して製造した樹脂コートキャリアとトナーからなる二成分現像剤の製造方法であって、
少なくとも、
前記磁性芯材粒子、前記樹脂粒子、及び、一般式(1)で表される構造及び一般式(2)で表される構造の少なくともいずれか1つを有する化合物粒子を撹拌して磁性芯材粒子表面に樹脂を付着させる工程と、
樹脂を付着した磁性芯材粒子に機械的衝撃力を加えて磁性芯材粒子表面に樹脂を固着させる工程を経て作製され、
一般式(1)で表される構造及び一般式(2)で表される構造の少なくともいずれか1つを有する化合物粒子は、体積基準メディアン径が30μm以上250μm以下であることを特徴とする二成分現像剤の製造方法。
Figure 2012088478
〔一般式(1)で表される構造中のRとRは水素原子または有機基を表し、RとRは同じであっても異なるものであってもよい。また、一般式(2)で表される構造中のR、R、Rは水素原子または有機基を表し、R、R、Rは同じであっても異なるものであってもよい。〕』というものである。
請求項2に記載の発明は、
『前記一般式(1)で表される構造が、下記構造であることを特徴とする請求項1に記載の二成分現像剤の製造方法。
Figure 2012088478
』というものである。
請求項3に記載の発明は、
『前記磁性芯材粒子と前記樹脂を撹拌して磁性芯材粒子表面に樹脂を付着させる工程は、前記化合物粒子を投入した状態の下で前記磁性芯材粒子と前記樹脂の撹拌を行うものであることを特徴とする請求項1または2に記載の二成分現像剤の製造方法。』というものである。
請求項4に記載の発明は、
『前記磁性芯材粒子と前記樹脂を撹拌して磁性芯材粒子表面に樹脂を付着させる工程は、前記化合物粒子の塊状物を投入した状態の下で前記磁性芯材粒子と前記樹脂の撹拌を行うものであることを特徴とする請求項3に記載の二成分現像剤の製造方法。』というものである。
本発明では、樹脂コート層中にヒンダードフェノール構造及びヒンダードアミン構造の少なくとも1つを有する化合物粒子を含有する樹脂コートキャリアを乾式法で製造することにより、画像ボケのない良好な画質のトナー画像形成が安定して行える様になった。これは、画像形成時のトナー摩擦帯電により樹脂コート層が摩耗して上記化合物粒子がキャリア表面に露出し、露出した化合物は粒子形状なので樹脂コート層より容易に離脱し、離脱した化合物粒子はトナーを介して感光体表面へ移動する。感光体表面へ移動した化合物粒子は、画像形成により生成される放電生成物と水分子の結合を抑制し、放電生成物と水分子の結合物の感光体表面への蓄積が回避される結果、感光体表面の帯電性が維持されて画像ボケの発生をなくしたものと考えられる。また、上記化合物粒子をキャリア粒子に含有させることにより、放電生成物と水分子の結合反応を確実に抑制する十分な量の上記化合物粒子が感光体表面へ安定供給されることも上記効果の発現に寄与していると考えられる。
樹脂コートキャリアの作製が可能なキャリア製造装置の一例を示す概略図である。
本発明は、磁性芯材粒子が樹脂で被覆されている樹脂コートキャリアを含有する二成分現像剤の製造方法に関する。
本発明で「樹脂コート層を構成する樹脂がヒンダードフェノール構造あるいはヒンダードアミン構造の少なくとも1つを有する化合物粒子を含有する」とは、当該化合物が樹脂相中で分散した状態で含有されていることを意味するものである。すなわち、当該化合物が樹脂に対して非相溶の性質を示す様に、当該化合物を樹脂コート層中へ含有させることを意味するものである。
上記化合物の相を樹脂相中に分散させた構造の樹脂コート層を形成する具体的方法としては、たとえば、磁性芯材粒子とともに樹脂粒子と当該化合物粒子をキャリア製造装置へ投入し、後述する手順で混合撹拌して形成する方法が挙げられる。また、樹脂を形成する重合性単量体に当該化合物を予め溶解させておき、当該重合性単量体を重合することで当該化合物を分散含有させた樹脂を形成し、当該樹脂を磁性芯材粒子とともに後述する手順で混合撹拌して形成する方法もある。
最初に、本発明に係る二成分現像剤の製造方法で作製される樹脂コートキャリア(以下、簡単にキャリアともいう)について説明する。本発明で作製される樹脂コートキャリアは、芯材(コア)と呼ばれる磁性粒子表面を熱可塑性樹脂で被覆した構造のもので、磁性粒子表面に樹脂の層を被覆した構造とすることにより、キャリアの耐久性や摩擦帯電性等の性能を向上させているものである。そして、本発明では樹脂コートキャリアを構成する樹脂層は、下記一般式(1)で表される構造及び下記一般式(2)で表される構造の少なくとも1つを分子構造中に有する化合物粒子を含有するものである。
Figure 2012088478
一般式(1)で表される構造は、ヒンダードフェノール構造と呼ばれるものである。本発明でいうヒンダードフェノール系化合物とは、フェノール化合物の水酸基に対しオルト位に1つ以上のt−ブチル基を有する化合物類及びその誘導体のことで、一般式(1)で表される基を有する化合物をいうものである。このとき、フェノール化合物の水酸基及びそのオルト位のt−ブチル基以外に有機基を有していてもよい。すなわち、一般式(1)で表される構造を構成する基RとRは、有機基あるいは水素原子を表すもので、RとRのいずれか一方がt−ブチル基であることが好ましい。
また、一般式(2)で表される構造は、ヒンダードアミン構造と呼ばれるもので、窒素原子を含有する複素環構造中の当該窒素原子と結合している炭素原子が2つのメチル基と結合した構造である。本発明では、このヒンダードアミン構造を有する化合物類及びその誘導体のことをヒンダードアミン系化合物という。なお、一般式(2)で表される構造を構成する基R、R、Rは、いずれも有機基あるいは水素原子を表すもので、R、R、Rは同じであっても異なるものであってもよい。そして、RとRのいずれか一方がt−ブチル基であることが好ましく、また、Rは水素原子が好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるヒンダードフェノール構造のうち、特に好ましいものは、下記構造で示される2つのt−ブチル基がオルト位に結合したものである。
Figure 2012088478
上記2つのt−ブチル基がオルト位に結合した構造を有する化合物は、後述する実施例にも示す様に、画像不良のない良好な画質をより安定的に形成することができるので好ましい。また、上記2つのt−ブチル基がオルト位に結合した構造は、一般式(1)で表される構造(オルト位にt−ブチル基が結合したフェノール化合物構造)のもう1つのオルト位にRとRのいずれかがt−ブチル基として結合し、パラ位にRとRのいずれかが結合したものであることを意味する。したがって、上記構造では省略してあるが、パラ位には、たとえば後述する例示化合物に示す様な有機基や、水素原子が結合している。
本発明では、樹脂コート層に一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する化合物粒子を含有する樹脂コートキャリアを用いて画像形成を行うことにより、画像ボケや画像流れ等の画像不良のない良好な仕上がりのトナー画像を安定して作成できる様になる。これは、一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する化合物が、感光体表面に形成される放電生成物よりも高い酸化性を有するので、放電生成物と空気中の水分子との結合物の形成を阻害するためと考えられる。すなわち、上記化合物の存在により、放電生成物と水分子の結合物が形成されないので、画像ボケや画像流れ等の原因となる当該結合物によるリークの発生が回避され、画像不良のない良好な仕上がりのトナー画像形成が安定して行えるものと考えられる。
また、一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する化合物が粒子の形態で感光体表面に供給されるので、感光体表面に窒素酸化物やオゾン等の放電生成物が存在しても化合物粒子の研磨作用でこれらは掻き落とされ、感光体表面への蓄積が回避されると推測される。さらに、上記化合物が酸化されて放電生成物と水分子の結合を防止する作用が低減した場合も、粒子形態を有することにより当該化合物は感光体表面から容易に除去され、酸化物が感光体表面に留まって画像形成を阻害することはないものと考えられる。この様に、本発明では、上記一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する化合物が粒子形態で使用されることにより、感光体表面での放電生成物等の除去が効果的に行われているものと考えられる。
さらに、本発明では、一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する化合物粒子を樹脂コートキャリアの樹脂層中に存在させているが、上記化合物がトナーの摩擦帯電を行うときにトナーへの電荷リークを発生させることがなく安定した摩擦帯電が行える。これは、上記化合物が樹脂コート層中に分散粒子の形態で添加されているので、トナーの摩擦帯電を行う樹脂コート層表面に存在しないため、円滑な摩擦帯電が行えるものと考えられる。また、摩擦帯電を繰り返すうちに樹脂コート層が摩耗して上記化合物が表面に露出してくるが、上記化合物が粒子形態なので、露出した上記化合物は樹脂コート層表面より脱離し、トナーを介して感光体表面へスムーズに移動する。この様に、上記構造を有する化合物は、キャリア粒子表面に残留しにくい粒子形態なので、露出した化合物粒子は速やかに移動してキャリア粒子表面でのトナーの摩擦帯電を邪魔せず、安定したトナー帯電環境が維持されるものと考えられる。
以下、一般式(1)で表されるフェノール化合物の水酸基に対してオルト位にt−ブチル基が1つ以上結合しているヒンダードフェノール系化合物の具体例を示すが、本発明で使用可能なヒンダードフェノール系化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2012088478
Figure 2012088478
Figure 2012088478
次に、前述の一般式(2)で表される「ヒンダードアミン構造」を有する「ヒンダードアミン系化合物」の具体例を以下に示すが、本発明で使用可能な「ヒンダードアミン系化合物」はこれらに限定されるものではない。
Figure 2012088478
Figure 2012088478
さらに、分子構造中に一般式(1)で示す構造と一般式(2)で示す構造の両方を有する化合物の具体例として「(3−1)〜(3−7)」を以下に示すが、本発明で使用可能な一般式(1)の構造と一般式(2)の構造の両方を有する化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2012088478
Figure 2012088478
また、上述したヒンダードフェノール系化合物やヒンダードアミン系化合物は、酸化防止剤として製品化されているものもあり、市販のヒンダードフェノール系化合物粒子としては以下のものがある。たとえば、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等がある。また、市販のヒンダードアミン系化合物粒子としては、たとえば、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」等がある。
一般式(1)で表されるヒンダードフェノール構造あるいは一般式(2)で表されるヒンダードアミン構造を有する上記化合物は、公知の方法により樹脂コート層中へ粒子の形態で分散含有させることができる。たとえば、乾式法で樹脂コートキャリアを製造する際、化合物粒子を投入した状態の下で磁性芯材粒子と樹脂を撹拌することにより、磁性芯材粒子表面に樹脂とともに上記化合物粒子も磁性芯材粒子に付着させることができる。すなわち、樹脂コートキャリアを乾式法で製造する際、上記一般式(1)、(2)で表される構造を有する化合物粒子の存在下で、磁性芯材粒子と樹脂の撹拌、混合することにより、上記化合物粒子を含有した樹脂コート層を磁性芯材粒子表面に形成することができる。
具体的には、後述する工程〔1〕〜〔3〕を経ることにより樹脂コート層中に上記一般式(1)、(2)で表される構造を有する化合物粒子を含有する樹脂コート層を有する樹脂コートキャリアを作製することができる。
そして、本発明では、本発明に係る樹脂コートキャリアを作製する際、上記一般式(1)、(2)で表される化合物粒子の塊状物(バルク)を投入した状態の下で磁性芯材粒子と樹脂を撹拌して磁性芯材粒子表面に樹脂を付着させるものである。この様に、本発明では、キャリア製造時に粒径の大きな酸化防止剤を存在させておき、撹拌により酸化防止剤を解砕しながら、樹脂コート層へ分散固定させる。具体的には、磁性芯材粒子と樹脂を撹拌して磁性芯材粒子表面へ樹脂を付着させるオーダードミクスチャと呼ばれる工程で、粒径が体積基準メディアン径で30μm以上250μm以下の化合物粒子の塊状物を投入しておき、この状態下で磁性芯材粒子と樹脂を撹拌するものである。
この方法によれば、投入された一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する化合物の塊状物は撹拌の作用で解砕され、解砕された上記化合物粒子が樹脂粒子とともに磁性芯材粒子表面に付着することになる。そして、解砕により新しい面の露出した化合物粒子が磁性芯材粒子表面に付着し、樹脂コート層中に取り込まれていく。この様にして樹脂コート層が形成されたキャリアは、摩擦帯電により樹脂コート層が摩耗するに伴いキャリア表面に化合物粒子が露出するとき、当該化合物粒子は高い活性が維持された状態で露出するものと考えられる。その結果、感光体表面には活性の高い上記化合物粒子が供給され、放電生成物と水の結合物の形成を抑え、良好な画質のプリント作製を安定して行うことができるものと考えられる。
なお、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系の化合物粒子塊状物の粒径は、前述した様に、体積基準メディアン径で30μm以上250μm以下であり、好ましくは30μm以上120μm以下であり、より好ましくは30μm90μmである。
化合物粒子塊状物の粒径を上記範囲に調製する方法は、たとえば、上記範囲よりも大きな粒径の化合物粒子塊状物を市販の機械式解砕装置「ジェットミル」((株))セイシン企業)で解砕処理後、市販の気流式分級装置で分級処理することにより調製可能である。また、前記化合物粒子塊状物の粒径は、たとえば、湿式分散機を備えた市販のレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)(SYMPATEC)社製」等により測定が可能で、この場合、当該粒径は体積基準メディアン径で得られる。
上記樹脂コートキャリアは、たとえば、芯材粒子と樹脂粒子を撹拌して芯材粒子表面に樹脂粒子を静電的に付着させる工程と、樹脂粒子が静電付着した芯材粒子にストレスを加えて芯材粒子表面に樹脂粒子を固着させる工程を経て作製することができる。具体的には、たとえば、図1に示すキャリア製造装置を用いて作製することが可能である。図1は、本発明に係る樹脂コートキャリアの製造方法を実施することが可能なキャリア製造装置の一例を示す概略図である。
図1に示すキャリア製造装置1は、本発明でいう混合槽に該当する容器本体10を有し、容器本体10の周面は、ほぼ3/4の高さまで本発明でいう加熱手段である調温用ジャケット17で覆われている。容器本体10の底部(容器底部ともいう)10aには、本発明でいう撹拌手段に該当する回転羽根18、作製した樹脂コートキャリアを取り出す取出口20を有し、取出口20には排出弁21が配置されている。容器本体10の上面には本体上蓋11が設けられ、本体上蓋11には投入弁13が設置された原料投入口12、フィルタ14、点検口15が設けられ、フィルタ14と容器上蓋11の間には排出弁24が配置され、フィルタ14の先に容器内排出口が設けられている。
樹脂コートキャリアを作製する際の原料である芯材粒子と樹脂粒子は、上記原料投入口12より容器本体10内部に供給される。なお、樹脂コートキャリア作製を実際に行う容器本体10内部をチャンバーといい、チャンバーの温度を測定する温度計16が容器本体10の周面に配置されている。
前述の回転羽根18は、駆動手段であるモータ22により回転し、芯材粒子と樹脂粒子を撹拌するもので、回転羽根18の中心部18dには互いに120°の角度間隔で撹拌羽根18a、18b及び18cが結合している。これら撹拌羽根は、底部10aの面に対して傾斜させて取り付けられており、撹拌羽根18a、18b及び18cを高速回転させると前述の芯材粒子や樹脂粒子といった原料は上方へ掻き上げられ、本体容器10の上部内壁に衝突して落下する。
撹拌手段である回転羽根18を回転させるモータ22は、コンピュータに代表される制御手段40に接続し、制御手段40は記憶されているプログラムにより磁界形成手段30及びモータ22の作動を制御する。
図1のキャリア製造装置1は、前述した回転羽根18の作動を制御することで、たとえば、芯材粒子表面への樹脂粒子の静電付着を行う操作と、静電付着した樹脂粒子を芯材粒子表面に強く固着させる操作を段階的に行うことができる。すなわち、図1のキャリア製造装置は、少なくとも、下記工程を経て樹脂コートキャリアを作製することができる。
〔1〕芯材粒子と樹脂粒子を室温下で撹拌、混合して、静電気の作用で芯材粒子表面に樹脂粒子を付着させる工程
〔2〕樹脂粒子のガラス転移温度以上にチャンバーを加熱しながら機械的衝撃力を加え、芯材粒子表面に樹脂粒子を延展、被覆させて樹脂コート層を形成する工程
〔3〕チャンバーを室温まで冷却する工程
上記〔1〕〜〔3〕の工程を少なくとも経ることにより、芯材粒子表面を樹脂でコートした構造の樹脂コートキャリアを作製することができる。また、上記〔1〕〜〔3〕の工程は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。このうち、上記〔1〕の工程は以下の様な手順で行われる。
上記〔1〕の芯材粒子表面に樹脂粒子を静電的に付着させる工程は、粉体技術分野で一般に「オーダードミクスチャ(Ordered Mixture;OM)」と呼ばれる方法で、静電引力等の作用により芯材粒子表面に樹脂粒子を付着させるものである。芯材粒子表面に樹脂粒子を付着させる工程では、供給された樹脂粒子同士が撹拌により擦れ合い、この擦れ合いにより樹脂粒子は摩擦帯電し、摩擦帯電した樹脂粒子は静電引力の作用で芯材粒子表面に付着し易くなるものと考えられる。
したがって、摩擦帯電した樹脂粒子近くに芯材粒子が存在すれば、樹脂粒子は芯材粒子表面に付着することになる。本発明では、磁力の作用により芯材粒子を混合槽上方に移動させることができるので、回転羽根の回転による撹拌作用で摩擦帯電していながら比重が小さいために上方に舞上がった樹脂粒子も芯材粒子表面への静電付着に寄与することができる。一方、従来技術の様に、摩擦帯電した樹脂粒子の近くに芯材粒子が存在しない状態では、樹脂粒子同士が付着して凝集物を形成し易くなるものと考えられる。
また、この工程では、回転羽根18の回転により撹拌を行うが、撹拌により樹脂粒子や芯材粒子が衝突して発生する摩擦熱の作用で容器本体10内部の温度が上昇しない程度に撹拌を行うことが好ましい。また、容器本体10の周面ほぼ3/4の高さまで覆っている調温用ジャケット17に冷水を通過させた状態で撹拌を行うこともチャンバーの温度を室温に維持する上で好ましい。
次に、上記〔2〕の磁界の作用を利用して芯材粒子表面に付着させた樹脂粒子を延展、被覆させて、芯材粒子表面に樹脂コート層を形成する工程について説明する。この工程は、芯材粒子表面に付着させた樹脂粒子に機械的衝撃力を付与して芯材粒子表面に樹脂を層状に被覆させるもので、メカノフュージョンと呼ばれる方法の1つである。図1のキャリア製造装置では、前述の方法により芯材粒子表面に樹脂粒子を付着させた後、樹脂粒子のガラス転移温度以上にチャンバーを加熱するとともに、回転羽根18を作動させて樹脂粒子を付着させた芯材粒子は撹拌され機械的衝撃力が付与される。
すなわち、回転羽根18の作動による撹拌で樹脂粒子を付着させた芯材粒子同士が衝突し、衝突により発生する摩擦熱の作用で容器本体10内部の温度を上昇させることができる。これに加えて、容器本体10の周面ほぼ3/4の高さまで覆っている調温用ジャケット17により加熱の調整が可能で、これらの作用で容器本体内部(チャンバー)は樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度環境になり、芯材粒子表面の樹脂粒子は衝撃を受けて変形、延展し易い状態におかれている。なお、調温用ジャケット17は、熱水を通過させることにより容器本体10内部の加熱促進が可能で、また、撹拌が強くなり発生する摩擦熱が大きくなる場合には冷水を通過させて容器本体10内部の温度上昇を抑制することも可能である。
回転羽根18がモータ22の駆動力により回転すると、容器底部10a付近の樹脂粒子を付着した芯材粒子は容器本体10上方に掻き上げられ、掻き上げられた芯材粒子は本体容器10の上部内壁に衝突する。芯材粒子表面の樹脂粒子は、衝突による衝撃で変形して芯材粒子表面に沿って延展していく。また、容器本体10上方に掻き上げられた芯材粒子は上部内壁に衝突後、重力の作用で落下して容器底部10aに衝突する。そして、容器底部10aに衝突したときにも樹脂粒子が延展し芯材粒子表面の被覆が進行する。
この様に、容器本体10内部(チャンバー)では、掻き上げによる上部内壁への衝突と落下による容器底部10aへの衝突が繰り返され、芯材粒子表面に付着した樹脂粒子の延展が継続され、芯材粒子表面への樹脂の被覆が行われる。
この工程では、容器本体内部の温度環境を樹脂粒子のガラス転移温度以上にしているが、具体的には、樹脂のガラス転移温度に対して5℃から20℃高い温度範囲とすることが好ましい。なお、容器本体10内部の温度は前述の温度計16により測定が可能である。
また、回転羽根18による機械的衝撃力の大きさは、芯材粒子と樹脂被覆層との間に良好な密着性を得る観点から、撹拌羽根18a、18b及び18cの周速が3m/秒から20m/秒となる強度が好ましく、6m/秒から10m/秒となる強度がより好ましい。すなわち、上記範囲の周速による撹拌で樹脂粒子を付着させた芯材粒子同士が衝突して適度な摩擦熱が得られる様になり、樹脂粒子の軟化と延展を促進させて芯材粒子と樹脂被覆層との間に良好な密着性を確保し易くなる。良好な密着性が確保されることにより、形成されたキャリアは、画像形成時に衝撃を受けても芯材粒子が破壊せず、芯材粒子の破壊に起因する芯材粒子破片の樹脂被覆層表面への付着によるキャリアの帯電付与性能低下を起こすおそれがない。また、上記範囲の周速で撹拌することにより、ブロッキングの発生や形成した樹脂コート層を破壊するおそれがない。また、樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度環境下で回転羽根18による機械的衝撃力を付与する時間は、特に限定されるものではないが、5分から40分が好ましい。
以上の様に、混合槽である容器本体10内部の温度環境及び撹拌手段である回転羽根18の作動条件を制御して、樹脂粒子を付着させた芯材粒子の撹拌を行って機械的衝撃力を付与することにより、芯材粒子表面に樹脂を延展、被覆させることができる。すなわち、上記工程では、少なくとも混合槽の内部を樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱するとともに撹拌手段を作動させ、樹脂粒子を芯材粒子表面に延展、被覆させて樹脂コート層を形成している。
次に、上記〔3〕の容器本体内部(チャンバー)を冷却する工程について説明する。樹脂粒子を付着させた芯材粒子は、前述した様に、樹脂粒子のガラス転移温度以上にした温度環境下で機械的衝撃力を受けることにより、樹脂が延展して被覆される。芯材粒子表面に樹脂コート層が形成された後、容器本体10内部(チャンバー)は室温まで冷却される。容器本体10内部の冷却は、たとえば、容器本体10の周面ほぼ3/4の高さまで覆っている調温用ジャケット17に冷却水の通過により実現することが可能である。また、調温用ジャケット17への冷水通過による冷却を行っているときに、撹拌羽根18を摩擦熱が発生しない程度にゆっくり回転させると冷却効果をより向上させることが可能である。
以上の方法で樹脂コート層が形成された芯材粒子は室温まで冷却され、作製された樹脂コートキャリアは、排出弁21を開放して製品取出口20より取り出される。
以上の様に、図1に示すキャリア製造装置1により、また、前述した手順により、芯材粒子表面に樹脂を被覆した構造の樹脂コートキャリアを作製することが可能である。そして、上記の方法により芯材粒子表面に形成される樹脂コート層の厚さは0.5μm以上であることが好ましく、0.5μm以上3.5μm以下とすることがより好ましい。
なお、樹脂コート層の厚さは、たとえば、以下の方法により求めることが可能である。
(1)集束イオンビーム試料作製装置「SMI2050」(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)を用いてキャリア粒子の中心を通る面でキャリア粒子を切断して測定試料を作製する。
(2)作製した測定試料を透過型電子顕微鏡「JEM−2010F」(日本電子(株)製)にて5000倍の視野で観察し、その視野における最大膜厚となる部分と最小膜厚となる部分の平均値を「樹脂コート層の厚さ」とする。
(3)なお、測定数は50個とし、写真1視野で足りない場合には、測定数50になるまで視野数を増加させるものとする。
本発明では、混合槽内部で磁性芯材粒子と樹脂粒子を室温環境下、前述の一般式(1)、(2)で表される構造を有する化合物粒子の存在下、撹拌を行い磁性芯材粒子表面に樹脂粒子を付着させる。次に、磁性芯材粒子表面に付着させた樹脂粒子を加熱環境下で延展することにより、一般式(1)、(2)で表される構造を有する化合物粒子を含有した樹脂コート層を形成している。この様に、磁性芯材粒子表面を被覆する樹脂は、たとえば、100nmから1000nm程度の粒子の形態でキャリア製造装置に供給され、芯材粒子表面の被覆に使用されるものが好ましい。
本発明で使用される樹脂粒子の作製方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、重合性単量体を水系媒体中で分散させて油滴状態にし、油滴状態に分散させた重合性単量体を重合反応することにより粒子形状の樹脂を作製する方法等がある。
具体的には、界面活性剤を臨界ミセル濃度以下に溶解させた水系媒体中に重合性単量体を添加し、機械的エネルギーを利用して重合性単量体を油滴分散させた分散液を調製する。そして、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して油滴内でラジカル重合による重合反応を行うことで樹脂粒子を作製することが可能である。なお、この重合反応の場合、重合性単量体の溶液中に油溶性のラジカル重合開始剤を添加してもよい。
前述の機械的エネルギーを付与して油滴分散を行う分散装置には、特に限定されるものではないが、たとえば、「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)の様な高速回転用のロータを有する撹拌装置がある。その他に、超音波分散機、機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン及び圧力式ホモジナイザ等がある。この様な分散処理により粒子径が100nmから1000nm程度の油滴が形成される。なお、油滴の粒径は、前述の100nmから1000nmが好ましく、150nmから1000nmがより好ましく、200nmから800nmがさらに好ましい。
上記の油滴分散処理を経て樹脂粒子を作製する方法は、たとえば、以下の工程を含むものである。すなわち、
(1)界面活性剤を含有する水系媒体中に重合性単量体を添加し、当該重合性単量体を機械的に分散させて重合性単量体の油滴分散液を調製する工程
(2)油滴状態に分散させた重合性単量体を重合して樹脂粒子を作製する工程
(3)樹脂粒子の分散液を冷却する工程
(4)冷却した樹脂粒子の分散液より樹脂粒子を固液分離するとともに洗浄処理を行い、樹脂粒子より界面活性剤等を除去する工程
(5)洗浄処理した樹脂粒子を乾燥する工程。
また、上記の油滴分散処理を経て作製される樹脂粒子のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、良好な製膜性を有し緻密な樹脂コート層を形成する観点から、たとえば、60℃から150℃の範囲が好ましい。さらに、樹脂粒子の重量平均分子量は、たとえば、50,000から1,000,000が好ましく、400,000から600,000がより好ましい。
樹脂粒子の形成に使用可能な重合性単量体は、特に限定されるものではなく、たとえば、ビニル系樹脂を形成するビニル系モノマーがその代表的なもので、他にポリエステル樹脂の形成が可能な多価カルボン酸化合物と多価アルコール化合物等がある。ビニル系モノマーには、たとえば、以下に示すスチレン系単量体、メタクリル酸系単量体、アクリル酸系単量体の他に、オレフィン系単量体やビニルエステル系単量体等がある。
以下、上記ビニル系モノマーの具体例を示すが、樹脂コート層を形成する樹脂の作製が可能なビニル系モノマーは以下のものに限定されるものではない。
(1)スチレン系単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等
(2)メタクリル酸系単量体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシル等
(3)アクリル酸系単量体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等
(4)その他ビニル系モノマー
(a)オレフィン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(b)ビニルエステル系単量体;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(c)ビニルエーテル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(d)ビニルケトン系単量体;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(e)N−ビニル化合物系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(f)その他ビニル化合物系単量体;ビニルナフタレン、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等
これらビニル系モノマーは単独あるいは組み合わせて使用することが可能である。
上記ビニル系単量体を用いて形成される樹脂の中でも、メタクリル酸シクロヘキシルを用いて形成した共重合体樹脂が好ましく、共重合体を構成するメタクリル酸シクロヘキシルのモノマー比率が40%以上のものが好ましい。また、トナーへの電荷付与性能の観点から、前述のメタクリル酸シクロヘキシルとともにメタクリル酸メチルを用いた共重合体樹脂がより好ましい。
次に、本発明で使用可能な芯材粒子は、磁場の存在によりその方向に強く磁化する物質(磁性体)で、たとえば、鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、マグネタイトやフェライト、これらを含む合金や化合物、これらを樹脂中に分散させたもの等がある。
フェライトは、式:MO・Feで示されるもので、また、マグネタイトは、式:MFeで示されるものである。式中のMは、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、リチウム(Li)等の2価あるいは1価の金属原子で、これらを単独または複数種類組み合わせて使用可能である。
これら磁性体の中でも、比重が鉄やニッケル等の金属より小さいマグネタイトやフェライトが好ましい。そして、フェライトの中でもMが銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトや、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のいずれかを含有する軽金属フェライトがより好ましい。さらには、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のいずれかを含有する軽金属フェライトが特に好ましい。軽金属フェライトは、廃棄物や環境に与える負荷が他のものに比べて少ないことに加えて、キャリア自体をより軽量化することが可能で画像形成時にトナーに与えるストレスを軽減させるメリットを有している。
また、強磁性金属を含有しないものの適度な熱処理により強磁性を示すマンガン−銅−アルミニウムやマンガン−銅−スズ等のホイスラー合金と呼ばれる合金、二酸化クロム等も芯材粒子として使用することが可能である。
さらに、バインダ樹脂中に磁性粉を分散させた樹脂分散型コアを使用することも可能であり、磁性粉としては、たとえば、粒径が0.1〜3.0μm程度の鉄、フェライト、マグネタイト等が用いられる。また、バインダ樹脂としては、たとえば、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂等が用いられる。
芯材粒子の径は、体積平均粒径で10〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましい。また、芯材粒子自体が有する磁化特性は、飽和磁化で2.5×10−5〜10.0×10−5Wb・m/kgが好ましい。なお、芯材粒子の体積平均粒径は、湿式分散器を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパテック社製)により体積基準の平均粒径として測定が可能である。また、飽和磁化は、「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電機株式会社製)により測定が可能である。
次に、本発明で作製される二成分現像剤に使用されるトナーについて説明する。前述した様に、高速対応の画像形成装置は迅速なプリント作成が求められており、たとえば、従来よりも低い温度でトナー画像の定着が可能になれば、定着装置の加熱時間の短縮化や定着装置内でのプリント物の搬送速度向上等を実現させることができる。この様な観点から、高速対応の画像形成装置に使用されるトナーは、従来よりも低い加熱温度で溶融し、溶融後も速やかに固化するいわゆる低温定着対応のものが好ましい。
低温定着対応のトナーは、低い加熱温度で溶融し迅速に固化する性能を付与させるために、ガラス転移温度を低めに設定する対応がとられているが、現像装置内の撹拌等の影響でトナー粒子同士が付着する等の課題を有していた。したがって、熱や衝撃力に対する耐久性をトナーに付与する観点から、ガラス転移温度をある程度高めに設定しておく必要があり、低温定着対応のトナーを設計することは意外と困難なものであった。
この様な背景の下、重合法等のトナー製造技術の進展により、低温定着に有利なガラス転移温度の低い樹脂領域を、高めのガラス転移温度を有する樹脂で被覆したコアシェル構造のトナーが開発された。このトナーは外周が熱や機械的衝撃力に対して耐久性を有する硬い樹脂で覆われているので、現像装置内で激しく撹拌されることがあっても、衝撃による破壊やトナー粒子同士の付着等の問題を解消するものである。そして、前述の特許文献5にも記載の様に、ガラス転移温度がたとえば20℃から45℃という従来よりも低いトナーの開発を可能にしている。この様にコアシェル構造のトナーは、低温定着性と衝撃への耐久性を両立しており、高速の画像形成に有利なものである。
本発明は、前述した様に、細孔の存在を活かせる様にして軽量化を実現したキャリアと二成分現像剤を作製するので、高速のプリント作成の様に現像装置内で撹拌が激しく行われても、キャリアからの機械的衝撃力は従来よりも低減されたものになっている。したがって、コアシェル構造のトナーを用いることにより、トナーとキャリアが強く撹拌される状況が続いても、トナー粒子の破損や外添剤の埋没は非常に発生しにくく、良好な帯電性能を長期にわたり発現する二成分現像剤の提供を可能にする。また、帯電不良を発生させにくい現像剤なので、帯電量不足によるトナーやキャリアの飛散が起こらず、この様な飛散物によるカブリの発生や機内汚染の問題も発生しない。
次に、本発明で作製される二成分現像剤に使用されるトナーの製造方法について説明する。本発明で使用されるトナーの製造方法は、公知のトナー製造方法を適用することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナー粒子を作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナー製造方法が挙げられる。
この中でも、重合法によるトナー製造方法は、大きさや形状を揃えて粒子形成を行えるので、微細なドット画像や細線画像の様な高画質画像形成用のトナーの作製に有利な方法といえる。重合法によるトナー製造方法は、たとえば、懸濁重合や乳化重合等の重合反応により樹脂粒子を形成する工程を経てトナー粒子を作製するものである。そして、重合法の中でも、重合反応によりたとえば100nm程度の樹脂粒子を作製し、この樹脂粒子を凝集、融着することによりトナー粒子を作製する会合工程を有する重合法のトナー製造方法が特に好ましい。この会合工程を設けることにより、たとえば、低温定着に寄与するガラス転移温度が低い樹脂粒子を凝集して粒子を作製し、次に、当該コア粒子表面にガラス転移温度が高い樹脂粒子を付着、凝集させることにより、コアシェル構造のトナーを作製することができる。
以下、トナーの製造方法の一例として、乳化会合法、すなわち、乳化重合により樹脂粒子を作製し、作製した樹脂粒子を凝集、融着する工程を経てトナー粒子を作製する方法について説明する。乳化会合法によるトナーの作製方法は、たとえば、以下の工程を経て行われる。
(1)樹脂粒子分散液の作製工程
(2)樹脂粒子の凝集・融着工程(会合工程)
(3)熟成工程
(4)冷却工程
(5)洗浄工程
(6)乾燥工程
(7)外添剤処理工程
以下、各工程について説明する。
(1)樹脂粒子分散液の作製工程
この工程は、トナー粒子を構成する結着樹脂を形成する工程である。具体的には、たとえば、水系媒体中に、少なくとも、前述したビニル系の重合性単量体を添加、分散させておき、この状態でビニル系の重合性単量体を乳化重合により重合反応して、大きさが100nm程度の樹脂微粒子を形成するものである。
この工程では、先ず、水系媒体中に前述したビニル系の重合性単量体を添加して、乳化分散処理を施すことにより、ビニル系の重合性単量体の油滴を分散させた水系媒体が形成される。そして、水系媒体中に分散された油滴中ではラジカル重合反応が行われて樹脂微粒子が形成される。
この工程では、重合反応に用いられるビニル系の重合性単量体の他にワックス等のトナー構成材料を水系媒体中に添加し、分散処理によりワックス等のトナー構成材料を溶解させた重合性単量体の油滴を形成して、これをラジカル重合反応させることも可能である。この様な油滴をラジカル重合反応することにより、ワックス等のトナー構成材料を含有する樹脂粒子を形成することが可能である。
ラジカル重合反応は、油滴中に重合開始剤が取り込まれ、熱や光の作用で重合開始剤よりラジカルが生成され、このラジカルによりビニル系の重合性単量体が重合反応を開始するもので、連鎖反応的に重合反応が進行して樹脂微粒子が形成されるものである。あるいは、水系媒体中に存在する重合開始剤より生成されたラジカルが油滴中に取り込まれてラジカル重合が開始して樹脂微粒子が形成される方法もある。
ラジカル重合を行うときの温度は、ビニル系の重合性単量体の種類やラジカルを生成する重合開始剤の種類にもよるが、通常50℃から100℃が好ましく、55℃から90℃がより好ましい。また、重合反応時間は、ビニル系の重合性単量体やラジカルの反応速度にもよるが2時間から12時間が好ましい。
この工程は、ビニル系の重合性単量体を水系媒体中に添加した後、水系媒体に機械的エネルギーを付与して分散処理を行って重合性単量体の油滴を形成する。機械的エネルギーを付与して重合性単量体の油滴を形成する分散装置は、特に限定されるものではなく、たとえば高速回転するロータを備えた市販の撹拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)(エム・テクニック(株)製)」等が代表的な分散装置として挙げられる。高速回転可能なロータを備えた前述の撹拌装置の他にも、超音波分散装置や機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザ等の装置がある。これらの分散装置により水系媒体中には100nm前後の油滴の分散粒子が形成されることになる。
ここで、「水系媒体」とは、水と水に溶解可能な有機溶剤から構成される液体のことで、少なくとも水を50質量%以上含有するものである。水系媒体を構成する「水に溶解可能な有機溶剤」には、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等がある。これらの中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の樹脂に対して安定性を示すアルコール系有機溶剤が好ましい。
トナー粒子を構成する樹脂粒子は、ある程度の分子量分布を有するものであることから、樹脂微粒子は分子量分布の異なる複数の相を形成する様に複数回に分けて重合反応を行うことが好ましい。この様に、複数回の重合反応を段階的に行って樹脂粒子を形成する方法を多段重合と呼んでいる。多段重合を行うことにより、形成された樹脂粒子に、たとえば、粒子中心より粒子表面に向かって勾配の様な分子量変化を付与することが可能である。また、最初に高分子量の樹脂粒子分散液を作製した後、この樹脂粒子分散液に重合性単量体と連鎖移動剤を新たに添加して、低分子量の領域を形成することも可能である。
樹脂粒子を作製する場合、製造における安定性や形成されるトナー粒子に十分な破砕強度を付与する等の観点から、二段重合法や三段重合法と呼ばれる多段重合法を採用することが好ましい。以下、多段重合法の代表的な形態である二段重合法について説明する。
〈二段重合法〉
二段重合法は、たとえば、高分子量の樹脂で構成される中心部と低分子量の樹脂で構成される外層を有する樹脂粒子の様に、2つの領域を有する樹脂粒子を製造する方法である。二段重合法は、第一段重合と第二段重合という2回の重合反応を行って樹脂粒子を形成するものである。
たとえば、分子量分布の異なる樹脂粒子を形成する場合、最初に高分子量の樹脂粒子を作製するための重合性単量体を用意し、これを水系媒体に添加後、水系媒体に機械的エネルギーを付与して重合性単量体の油滴を形成する。そして、重合性単量体の油滴を前述した様に重合(第一段重合)することにより、高分子量の樹脂粒子分散液を作製する。
次に、作製した樹脂粒子分散液中に、重合開始剤と低分子量樹脂を形成するための重合性単量体を添加し、高分子量の樹脂粒子の存在下で重合性単量体の重合(第二段重合)を行う。この様にして、高分子量の樹脂粒子表面に低分子量の樹脂相が被覆されて2層構造の樹脂粒子を形成することができる。
(2)樹脂粒子の凝集・融着工程(会合工程)
この工程は、前述の工程で形成した樹脂粒子を水系媒体中で凝集させて粒子を形成し、凝集により形成した粒子を加熱して融着させてトナー粒子を形成する工程で、会合工程とも呼ばれるものである。すなわち、ビニル系の重合性単量体を前述の乳化重合法で重合させて形成した樹脂粒子を凝集、融着することによりトナー粒子を作製する工程である。
この工程では、樹脂粒子を含有する水系媒体中に、塩化マグネシウム等に代表されるアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の凝集剤を添加して、前記樹脂粒子を凝集させる。次いで、水系媒体を前記樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱して凝集を進行させ、同時に凝集させた樹脂粒子同士を融着させる。そして、凝集の進行により凝集粒子の大きさが目標になったときに食塩等の塩を添加して凝集を停止させる。
(3)熟成工程
この工程は、前述の凝集・融着工程に引き続いて反応系を加熱処理することによりトナー粒子の形状を所望の平均円形度になるまで熟成する工程で形状制御工程とも呼ばれるものである。
(4)冷却工程
この工程は、前記トナー粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1℃/分から20℃/分の冷却速度で冷却する。冷却処理方法は、特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法等により処理が可能である。
(5)洗浄工程
この工程は、上記工程で所定温度まで冷却された前記トナー粒子分散液よりトナー粒子を固液分離する工程と、固液分離してウェットのトナーケーキと呼ばれる集合体にしたトナー粒子表面より界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去する洗浄工程を有する。
洗浄処理は、ろ液の電気伝導度がたとえば10μS/cm程度になるまで水洗浄する。固液分離方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用する減圧ろ過法、フィルタプレス等を使用するろ過法等があり、特に限定されるものではない。
(6)乾燥工程
この工程は、洗浄処理された前記トナー粒子を乾燥処理する工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤ、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
また、乾燥されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル、フードプロセッサ等の機械式の解砕装置を使用することができる。
以上の乾燥工程までの工程を経て、トナー粒子が形成される。
(7)外添剤処理工程
この工程は、乾燥処理を経て得られたトナー粒子に外添剤や滑剤を添加する工程である。前記乾燥工程を経て得られたトナー粒子は、そのまま画像形成に使用することも可能であるが、外添剤の添加によりトナーの帯電性や流動性、クリーニング性をより向上させることができる。これら外添剤には、公知の無機微粒子や有機微粒子、脂肪族金属塩を使用することができ、その添加量はトナー全体に対して0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤は種々のものを組み合わせて添加することができる。なお、外添剤を添加する際に使用する混合装置としては、たとえば、タービュラミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウタミキサ、V型混合機、コーヒーミル等の公知の機械式の混合装置がある。
以上の様に、乳化会合法によるトナー製造方法によれば、粒子の構造や粒径、形状を揃えながら、トナー粒子を作製することができる。
また、本発明で使用されるトナーは、結着樹脂や着色剤、ワックス、外添剤等のトナー構成材料を含有するものであるが、これらはいずれも公知のものを使用することが可能である。これら樹脂、着色剤、ワックス、外添剤等の具体例としては、たとえば、特開2009−25600号の「トナーを構成する材料」の項に記載のもの等が挙げられる。
本発明は、たとえば図1に示す装置を用いて、室温下、前述の一般式(1)、(2)で表される構造を有する化合物粒子の存在下で磁性芯材粒子表面に樹脂粒子を付着させる。そして、付着させた樹脂粒子を加熱環境下で延展させることにより、磁性芯材粒子表面に樹脂を被覆させ、一般式(1)、(2)で表される構造を有する化合物粒子を含有する樹脂コートキャリアを作製するものである。そして、上記樹脂コートキャリアの製造方法により作製された樹脂コートキャリアは、トナーと混合することにより、二成分現像剤として使用が可能である。
二成分現像剤の作製に使用可能なトナーは、特に限定されるものではなく、従来公知のトナーを使用することが可能である。すなわち、少なくとも樹脂と着色剤を含有し、公知の電子写真方式の画像形成に使用可能なものであり、公知のトナー製造方法を適用することにより作製が可能なものである。具体的には、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法により作製されるトナーが挙げられる。
この様なトナーの中でも、微細なドット画像の忠実な再現が求められるデジタル画像形成に使用される体積基準メディアン径(D50v径)が3μmから9μmの小径トナーを作製する場合は、その製造工程で粒径や形状の制御操作が行える重合法が好ましい。その中でも、乳化重合法や懸濁重合法により予め120nm前後の樹脂微粒子を形成しておき、この樹脂微粒子を凝集させる工程を経てトナー母体粒子を形成するいわゆる「乳化会合法」が好ましい。
また、二成分現像剤を構成するキャリアとトナーの混合比率は、特に限定されるものではなく、たとえば、従来の二成分現像剤の様にトナー濃度を1質量%から10質量%となる範囲にするものとすることができる。また、従来の二成分現像剤の他にも、たとえば、画像形成に消費された分のトナーといっしょに新しいキャリアも画像形成装置に補給して画像形成に使用する現像剤の品質を維持する「オートリファイニング現像方式」用補充現像剤を作製することも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.「キャリア1〜17」の作製
1−1.「キャリア1」の作製
(1)「樹脂粒子1」の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.4質量部をイオン交換水500質量部に溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を用意した。次に、
スチレン 20質量部
メタクリル酸メチル 80質量部
よりなる重合性単量体混合液を前記界面活性剤溶液中に添加して、「クレアミックス(エム・テクニック社製)」を用いて15000rpmで撹拌処理を行い、体積平均粒径200nmの単量体粒子(油滴)を分散させた乳化液を調整した。ここで、単量体粒子の体積平均粒径は動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定した。
次に、この乳化液に重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.4質量部をイオン交換水40質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃で3時間加熱、撹拌して重合反応を行い、重合反応後室温まで冷却した。この様にして、共重合比がスチレン/メタクリル酸メチル=2/8のスチレン/メタクリル酸メチル共重合体樹脂より構成される「樹脂粒子1」の分散液を作製した。「樹脂粒子1」の体積平均粒径を前述の動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ200nmであった。作製した「樹脂粒子1」の分散液は、固液分離、水洗処理を行った後、スプレードライヤで乾燥処理した。
(2)「樹脂コートキャリア1」の作製
図1に示すキャリア製造装置に、
体積平均粒径35μmのMn−Mgフェライト粒子 100質量部
「樹脂粒子1」 4質量部
化合物(1−8)粒子塊状物 0.64質量部
を投入した。なお、上記Mn−Mgフェライト粒子は飽和磁化が10.7×10−5Wb・m/kg、形状係数SF−1が130のものであった。なお、上記化合物(1−8)粒子塊状物は体積基準メディアン径が30μmのもので、公知の方法で前記体積基準メディアン径となる様に調整されたものである。
次に、チャンバーの温度を25℃に設定し、チャンバーの温度を上昇させないレベルの撹拌を行うため、回転羽根の回転数を200rpm(周速1m/sに相当)、回転羽根の作動時間を10分間に設定した。この設定条件の下で、上記化合物(1−8)の塊状物を解砕させながら、磁性芯材粒子である上記Mn−Mgフェライト粒子表面に「樹脂粒子1」と化合物(1−8)粒子を静電的に付着させるオーダードミクスチャの操作を行った。そして、樹脂粒子1と化合物(1−8)粒子を静電付着した上記磁性芯材粒子をチャンバー底部に移動させることにより、オーダードミクスチャの操作(静電付着操作)を完了させた。
次に、ジャケットに熱水を供給しながら、回転羽根の回転数を1000rpm(周速8m/sに相当)に設定して25分間作動させ、チャンバーの温度を120℃に上昇させた。次に、チャンバーの温度を120℃に維持させながら、引き続き、前記回転数で回転羽根を60分間作動させて撹拌を継続し、機械的衝撃力の作用で樹脂粒子1を軟化、延展させることにより、上記磁性芯材粒子表面に樹脂コート層を形成した。
その後、回転羽根の回転数を400rpm(周速約3m/s)にして、撹拌を行いながら冷却処理を行い、チャンバーの温度を25℃に戻した。以上の手順を経ることにより、樹脂コート層中に上記化合物(1−8)粒子を含有する「樹脂コートキャリア1」を作製した。「樹脂コートキャリア1」の樹脂コート層の厚さを前述の方法で測定したところ1.0μmであった。
1−2.「樹脂コートキャリア2〜13」の作製
(1)「樹脂コートキャリア2〜7」の作製
前記「樹脂コートキャリア1」を作製する際にキャリア製造装置へ投入する化合物(1−8)粒子を、下記表1に示す化合物の粒子に変更した他は同じ手順を採ることにより「樹脂コートキャリア2〜7」を作製した。また、「樹脂コートキャリア2〜7」を作製する際に使用した各化合物粒子は、表1に示す体積基準メディアン径を有する塊状物で当該体積基準メディアン径は公知の方法を用いて調整したものである。
(2)「樹脂コートキャリア8〜13」の作製
前記「樹脂コートキャリア1」を作製する際、体積基準メディアン径が60μm、90μm、120μmの化合物(1−8)粒子塊状物を用いた他は同じ手順を採ることにより「樹脂コートキャリア8〜10」を作製した。また、体積基準メディアン径が250μm、300μmの化合物(1−8)粒子塊状物を用いた他は同じ手順を採ることにより「樹脂コートキャリア11、12」を作製した。さらに、体積基準メディアン径が20μmの化合物(1−8)粒子塊状物を用いた他は同じ手順を採ることにより「樹脂コートキャリア13」を作製した。
1−3.「樹脂コートキャリア14〜18」の作製
(1)「樹脂コートキャリア14」の作製
前記「樹脂コートキャリア1」の作製で、前述の磁性芯材粒子と「樹脂粒子1」をキャリア製造装置に投入し、前述の化合物(1−8)粒子塊状物は投入しなかった。その他は同じ手順を採ることにより、「樹脂コートキャリア14」を作製した。
(2)「樹脂コートキャリア15、16」の作製
前記「樹脂コートキャリア1」の作製で、前述の化合物(1−8)粒子塊状物に代えて、市販のチオエーテル系酸化防止剤「スミライザーTPS(住友化学社製)」1.0質量部をキャリア製造装置へ投入した。その他は同じ手順で「樹脂コートキャリア15」を作製した。なお、「スミライザーTPS」は、下記構造のチオエーテル化合物を含有するものである。すなわち、
チオエーテル化合物構造式;S(CHCHCOOC1837
また、前記「樹脂コートキャリア1」の作製で、前述の化合物(1−8)粒子塊状物に代えて、市販のチオエーテル系酸化防止剤「スミライザーTP−D(住友化学社製)」1.0質量部をキャリア製造装置へ投入した。その他は同じ手順で「樹脂コートキャリア16」を作製した。なお、「スミライザーTP−D」は、下記構造のチオエーテル化合物を含有するものである。すなわち、
チオエーテル化合物構造式;(H2512SCHCHCOOCH
上記「樹脂コートキャリア15、16」の作製に使用した上記チオエーテル系酸化防止剤はフレーク形状を有するもので、これらを公知の方法で粉砕処理して、体積基準メディアン径30μm程度に調製してからキャリア製造装置へ添加した。
(4)「樹脂コートキャリア17、18」の作製
前記「樹脂コートキャリア1」の作製で、前述の化合物(1−8)粒子塊状物に代えて、市販のホスファイト系酸化防止剤「マークPEP−8(アデカ社製)」1.0質量部をキャリア製造装置へ投入した。その他は同じ手順で「樹脂コートキャリア17」を作製した。また、前記「樹脂コートキャリア1」の作製で、前述の化合物(1−8)粒子塊状物に代えて、市販のホスファイト系酸化防止剤「マークPEP−24(アデカ社製)」1.0質量部をキャリア製造装置へ投入した。その他は同じ手順で「樹脂コートキャリア18」を作製した。
なお、上記「樹脂コートキャリア17、18」の作製に使用した上記ホスファイト系酸化防止剤は粉末状のもので、これらを公知の方法によりさらに粉砕処理し、体積基準メディアン径30μm程度に調製してからキャリア製造装置へ添加した。
以上の手順により、「樹脂コートキャリア1〜18」を作製し、これら18種類の樹脂コートキャリアの作製に使用したヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系の化合物粒子等の構造、分類、塊状物の体積基準メディアン径を下記表1に示す。
Figure 2012088478
2.トナーの作製
下記の手順でコアシェル構造のトナーを作製した。
(コア用樹脂粒子の作製)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記化合物を投入、混合して混合液を作製した。
スチレン 111質量部
n−ブチルアクリレート 53質量部
メタクリル酸 12質量部
上記混合液に、
パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製) 94質量部
を添加した後、80℃に加温して溶解させ、重合性単量体溶液を調製した。
一方、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1340質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を80℃に加熱後、上記重合性単量体溶液を投入し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミクス(エム・テクニック社製)」により上記重合性単量体溶液を2時間混合分散させ、平均粒径245nmの乳化粒子(油滴)分散液を調製した。
次いで、上記分散液にイオン交換水1460質量部を添加した後、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた開始剤溶液とn−オクチルメルカプタン1.8質量部を添加し、温度を80℃にした。この系を80℃にて3時間にわたり加熱撹拌して重合反応(第1段重合)を行い、「樹脂粒子C」を作製した。
(2)第2段重合(外層の形成)
前記「樹脂粒子C」の分散液中に、過硫酸カリウム5.1質量部をイオン交換水197質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物を混合した単量体混合液を1時間かけて滴下した。単量体混合液は、
スチレン 282質量部
n−ブチルアクリレート 134質量部
メタクリル酸 31質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
を含有するもので、前記単量体混合液の滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌して重合反応(第2段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、「コア用樹脂粒子」を作製した。「コア用樹脂粒子」の重量平均分子量は21,300、質量平均粒径180nm、ガラス転移温度(Tg)39℃であった。
(シェル用樹脂粒子の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
この界面活性剤溶液に、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、下記化合物を混合した重合性単量体混合液を3時間かけて滴下した。なお、重合性単量体混合液は、
スチレン 528質量部
n−ブチルアクリレート 176質量部
メタクリル酸 120質量部
n−オクチルメルカプタン 22質量部
を含有するもので、前記重合性単量体混合液を滴下後、この系を80℃にして1時間にわたり加熱撹拌して重合反応を行い、「シェル用樹脂粒子」を作製した。「シェル用樹脂粒子」の重量平均分子量は12,000、質量平均粒径120nm、ガラス転移温度(Tg)53℃であった。
(着色剤分散液の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム10質量%水溶液900質量部を撹拌しながら、市販の着色剤(カーボンブラック;「リーガル330R(キャボット社製)」)100質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス(エム・テクニック社製)」を用いて分散処理することにより着色剤分散液を調製した。前記着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を市販の動的光散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックUPA150(マイクロトラック社製)」で測定したところ150μmであった。
(トナー粒子の作製)
(1)凝集、融着工程
温度センサ、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器内に、
コア用樹脂粒子 421質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤分散液 200質量部(固形分換算)
を投入して撹拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。この状態で「コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準メディアン径(D50)が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させた。さらに、熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、「コア部」を形成した。「コア部」の平均円形度を「FPIA2100(シスメックス社製)」で測定したところ0.930であった。
(2)シェルの形成
次いで、65℃において「シェル用樹脂粒子」50質量部(固形分換算)を添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した。添加後、70℃(シェル化温度)まで昇温させ、撹拌を1時間継続して「コア部」表面に「シェル用樹脂粒子」を融着させた後、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加してシェルの形成を停止させた。さらに、75℃で20分間熟成処理を行った後、8℃/分の速度で30℃まで冷却して、トナー粒子の分散液を作製した。
(洗浄、乾燥工程)
上記工程を経て作製したトナー粒子の分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、着色粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまでイオン交換水で洗浄した後「フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥処理を行って「着色粒子」を作製した。上記手順で作製したトナー粒子は、コアシェル構造を有するもので、体積基準メディアン径は6.0μm、ガラス転移温度が39.5℃であった。
(トナーの外添剤処理)
作製した「トナー粒子」100質量部に対し、数平均一次粒径が80nmの疎水性シリカ微粒子を3.5質量%、数平均一次粒径が10nmの疎水性チタニア微粒子を0.6質量%になる様に添加した。そして、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)を用いて周速35m/sで25秒間混合処理することによりトナーを作製した。なお、作製したトナーのガラス転移温度は外添剤処理前のトナー粒子と同じ39.5℃であった。
3.「現像剤1〜18」の作製
前述した「樹脂コートキャリア1〜18」と上記「トナー」を下記の様に配合して二成分の「現像剤1〜18」を作製した。現像剤の作製は、配合比をキャリア100質量部に対してトナー8質量部とし、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)環境下で、Vブレンダを用いてトナーとキャリアを混合することにより行った。Vブレンダの回転数を20rpm、撹拌時間を20分にして処理を行い、さらに、混合物を目開き125μmのメッシュで篩い分けて作製した。
4.評価実験
市販のデジタルカラー複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に、露光用光源に波長780nm、ドット径600dpiの半導体レーザを搭載した機器を用いて下記評価を行った。評価は、温度30℃、相対湿度80%RHの環境下で、前記「現像剤1〜18」1種類につき50万枚の連続プリントを行って、感光体上における放電生成物と水結合物の形成に伴う表面電位変動と画質変化について行った。プリント画像は、画素率が7%のもので1枚の画像支持体上に文字画像、人物顔写真画像、ベタ白画像、ベタ黒画像を、A4サイズの中性紙上に4等分に出力したものである。
感光体表面電位変動を評価するため、連続プリント実施前に上記デジタルカラー複合機のスコロトロン帯電極のグリット電圧を650Vに設定して連続プリントを行った。また、画質変化評価用の試料は、マクベス濃度計で相対反射濃度0.4のハーフトーン画像、マクベス濃度計で相対反射濃度1.3のベタ画像、6ドット細線の格子画像を、A3サイズの中性紙上へそれぞれ出力した3枚の評価用試料で開始時と終了時に作成した。
ここで、本発明の構成を満たす「現像剤1〜11」を用いて評価したものを「実施例1〜11」とし、本発明の構成を満たさない「現像剤12〜18」を用いて評価したものを「比較例1〜7」とする。
〈感光体表面電位変動〉
連続プリント開始時と終了時に上記デジタルカラー複合機の現像装置の位置に電位センサを設置して感光体の表面電位を測定し、連続プリント実施前後における感光体表面電位変動を評価した。連続プリント実施前後における表面電位変動が100V以内のものを合格とし、50V以内のものを特に優れているものとした。
〈画質変化〉
連続プリント開始時と終了時にそれぞれ作成した評価用試料に形成されたベタ画像、ハーフトーン画像、細線格子画像を以下の様に評価した。
(a)ベタ画像濃度変動
マクベス社製反射濃度計「RD−918」を用い、評価用試料作成用のA3サイズ中性紙白地部分の反射濃度を「0」として、評価用試料に形成されたベタ画像の相対反射濃度を測定した。測定は作成試料上より任意の12点を測定し、その平均値で評価した。連続プリント終了後もベタ画像濃度が1.0以上のものを合格とし、その中でも1.2以上が維持されたものを特に優れているものと評価した。
(b)ハーフトーン画像の画質評価
ハーフトーン画像を出力した評価用試料を目視観察し、濃度ムラ発生の有無を評価する尺度として、帯状の低濃度領域の発生の有無を評価した。帯状の低濃度領域が発生したものについては、マクベス社製反射濃度計「RD−918」で濃度測定を行い、低濃度領域と周辺領域の濃度差が0.10未満のものを合格(表中では若干と表示)とした。また、帯状の低濃度領域が発生しなかったものは特に優れているものと評価した。
(c)6ドット細線格子画像の画質評価
市販のルーペを用いて格子画像を形成する細線部を目視観察し、細線の欠損と線幅が細化がみられないものを合格とした。
以上の結果を表2に示す。
Figure 2012088478
表2に示す様に、本発明の構成を有する製造方法で作製された樹脂コートキャリアを用いた「実施例1〜11」は、大量のプリント作成を行っても形成される画像の解像度は変化せず、鮮明なトナー画像が安定して形成されるものであることが確認された。一方、本発明の構成を満たさない製造方法で作成された樹脂コートキャリアを用いた「比較例1〜7」では、「実施例1〜11」で得られた様な効果は得られなかった。
「実施例1〜11」で本発明の効果が得られる理由は、以下の様に考えられる。すなわち、「実施例1〜11」では、酸化防止剤として作用するヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系の化合物粒子がフレッシュな状態で感光体表面へ安定供給される。そして、画像形成(帯電)が繰り返し行われ感光体表面に放電生成物が多量に存在する状態になっても、フレッシュな酸化防止剤の存在により放電生成物と水分子の結合が防止されて、感光体表面の電位特性が安定維持される。
また、感光体表面に供給された酸化防止剤は、粒子の形態なので感光体表面に残留しにくく、酸化防止性能の低下した古い酸化防止剤はクリーニングにより順次除去されるので、酸化防止剤の存在により感光体表面へ影響を与えることはない。この様な環境が感光体表面に形成されるので、連続プリントを行っても画像不良のないトナー画像を安定して形成できるものと考えられる。
1 キャリア製造装置
10 容器本体(混合槽)(チャンバー)
10a 容器底部
11 容器上蓋
12 原料投入口
13 投入弁
14 フィルタ
17 調温用ジャケット(加熱手段)
18 回転羽根(撹拌手段)
21 排出弁
22 モータ(駆動手段)

Claims (4)

  1. 少なくとも、磁性芯材粒子及び樹脂粒子を乾式で混合して製造した樹脂コートキャリアとトナーからなる二成分現像剤の製造方法であって、
    少なくとも、
    前記磁性芯材粒子、前記樹脂粒子、及び、一般式(1)で表される構造及び一般式(2)で表される構造の少なくともいずれか1つを有する化合物粒子を撹拌して磁性芯材粒子表面に樹脂を付着させる工程と、
    樹脂を付着した磁性芯材粒子に機械的衝撃力を加えて磁性芯材粒子表面に樹脂を固着させる工程を経て作製され、
    一般式(1)で表される構造及び一般式(2)で表される構造の少なくともいずれか1つを有する化合物粒子は、体積基準メディアン径が30μm以上250μm以下であることを特徴とする二成分現像剤の製造方法。
    Figure 2012088478
    〔一般式(1)で表される構造中のRとRは水素原子または有機基を表し、RとRは同じであっても異なるものであってもよい。また、一般式(2)で表される構造中のR、R、Rは水素原子または有機基を表し、R、R、Rは同じであっても異なるものであってもよい。〕
  2. 前記一般式(1)で表される構造が、下記構造であることを特徴とする請求項1に記載の二成分現像剤の製造方法。
    Figure 2012088478
  3. 前記磁性芯材粒子と前記樹脂を撹拌して磁性芯材粒子表面に樹脂を付着させる工程は、前記化合物粒子を投入した状態の下で前記磁性芯材粒子と前記樹脂の撹拌を行うものであることを特徴とする請求項1または2に記載の二成分現像剤の製造方法。
  4. 前記磁性芯材粒子と前記樹脂を撹拌して磁性芯材粒子表面に樹脂を付着させる工程は、前記化合物粒子の塊状物を投入した状態の下で前記磁性芯材粒子と前記樹脂の撹拌を行うものであることを特徴とする請求項3に記載の二成分現像剤の製造方法。
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