JP2012087017A - 土構造体を構築する構築方法、および土構造体 - Google Patents

土構造体を構築する構築方法、および土構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】建築構造を構成する土構造体の構築に際して、環境への配慮と強度や耐久性の確保を両立することの可能な技術を提供する。
【解決手段】建築構造物の一部を構成する土構造体を構築する方法は、酸化マグネシウムと石灰系の少なくとも何れかを原料とすると共にセメントを含まない土固化材および水を添加した土を混練して得られる混合材料を用いて構築対象となる土構造体を構築する。
【選択図】図2

Description

本発明は、土構造体を構築する構築方法、および土構造体に関する。
従来、セメントは建築の分野で広く一般に用いられており、コンクリートやモルタル等の材料として使用されている。しかしながら、地球温暖化防止の観点から、セメント産業から排出される膨大な二酸化炭素(CO2)の排出量が懸念されている。
また、セメントは、所謂地盤改良の用途で用いられる軟弱土壌の固化材(硬化材)に一般に含まれている。このようなセメント系土壌固化材を用いて地盤改良を行う場合、六価クロムの溶出がしばしば問題となる。
従来、土を利用した構造物(以下、「土構造物」とする)の施工には、例えば煉瓦(レンガ)を用いた組積造や、版築と呼ばれる施工方法が知られている。煉瓦は、粘土や頁岩、泥等を型に入れ、窯で焼き固めて、あるいは圧縮して作られる建築材料である。また、版築は、古来より用いられてきた土の締め固め技術であり、我が国では主に土壁等を構築するために利用されてきた工法である。版築は一般に、土に、湿る程度の水と、石灰、にがり、藁等を添加して撹拌した材料を型枠内に投入し、蛸胴突等の突き棒で突き固め、所定の高さになるまで材料の投入と突き固めを繰り返すというものである。
これに関連して、例えば特許文献1には、土構造物の強度や耐久性を向上させる目的で、土に混ぜるセメントまたはセメント系固化材の量を規定する技術が提案されている。
特開2008−143764号公報
しかしながら、上記従来技術では、土構造物を構築するに当たり、セメント系固化材を使用した建築材料を用いており、環境への配慮という課題が残されている。一方、従来では、セメント(本明細書において、セメント系固化材を含む概念である)を使用しない建築材料で構築した土構造物は、一般に強度や耐久性が低く、現在、我が国ではほとんど普及しておらず、セメント系の建築材料が圧倒的に普及しているのが実情である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、建築構造を構成する土構造体の構築に際して、環境への配慮と強度や耐久性の確保を両立することの可能な技術を提供することにある。
本発明では、上述した課題を解決するために以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、建築構造物の一部を構成する土構造体を構築する構築方法であって、酸化マグネシウムと石灰系の少なくとも何れかを原料とすると共にセメントを含まない土固化材および水を添加した土を混練して得られる混合材料を用いて構築対象となる前記土構造体を構築する方法である。
本発明における土構造体とは建築構造物の一部を構成するものであり、例えば、上部建
物の支持、すなわち上部建物の荷重を地盤に伝えるための基礎部(基礎部材)、構造壁を構築するための組積ブロック材、版築によって構築される版築構造壁などを例示することができる。
本発明における土固化材はセメントを含まない非セメント系固化材であって、酸化マグネシウム、石灰系、或いはこれらの組み合わせを原料とするものである。このような土固化材を水と共に土(例えば、土壌、地盤等)に添加して混練することにより、土固化材は水、周囲に存在する空気(例えば、二酸化炭素)等と反応し、土と一体となって固化(硬化)する。つまり、固化材と水と土とが混練(撹拌を含む概念である)して得られる混合材料(以下、単に「混合材料」と記す場合には、少なくとも固化材と水が添加された土を混練することで得られた材料を指す)が混合、拡散されることで固化(硬化)するのである。
本発明に係る土構造体を構築する方法(土構造体の構築方法)では、このような混合材料を用いて構築対象となる土構造物を構築することで、その土構造体として要求される強度を発現するようになる。なお、土構造体に発現される強度は、混合材料における土固化材の含有比を調整することで、土構造体に要求される要求値を満たすことができる。
また、前記構築対象となる前記土構造体は上部建物を支持するための基礎部であっても良い。この場合、本発明に係る土構造体の構築方法は、前記基礎部を構築する部位における地盤に前記土固化材および水を添加する添加工程と、前記添加工程において前記土固化材および水が添加された前記地盤を混練する混練工程と、前記混練工程において混練された前記地盤を締め固めて前記基礎部を成形する締め固め工程と、を含むようにしても良い。
また、前記構築対象となる前記土構造体は構造壁を構築するための組積ブロック材であっても良い。この場合、本発明に係る土構造体の構築方法は、前記土固化材および水を土に添加する添加工程と、前記添加工程において前記土固化材および水が添加された前記土を混練する混練工程と、前記混練工程において混練することで得られた混合材料を型枠内に投入する投入工程と、前記投入工程において投入された前記混合材料の上面に押さえ部材を配置すると共に該押さえ部材を下方に押圧することにより該混合材料を前記組積ブロック材の形に成形する成形工程と、前記成形工程の後に前記型枠を取り外す脱型工程と、前記脱型工程において脱型された前記混合材料を乾燥させる乾燥工程と、を含むようにしても良い。
また、前記構築対象となる前記土構造体は版築によって構築される版築構造壁であっても良い。この場合、本発明に係る土構造体の構築方法は、前記土固化材および水を土に添加する添加工程と、前記添加工程において前記土固化材および水が添加された前記土を混練する混練工程と、前記混練工程において混練することで得られた混合材料を型枠内に投入する投入工程と、前記投入工程において投入された前記混合材料の上面を突き固める突き固め工程と、を含むようにしても良い。
本発明において上述した混合材料には、少なくとも上記の土固化材、水、土を含んで構成されていれば良く、その他の材料を必要に応じて加えても良い。例えば、混合材料には、土固化材、水、土の他に、砂、石などを含めることができる。また、混合材料に含まれる土固化材の反応性が高すぎると、施工性が悪化する場合がある。特に、夏季のように外気温が高くなる季節には反応速度が過剰に高まることで、土に土固化材を均一に混合するのが難しくなる。そこで、本発明に係る混合材料には、土固化材の反応速度を遅延させる固化遅延剤を必要に応じて含めるようにしても良い。また、本発明に係る混合材料には、土構造体にひび割れの発生を抑制するためのガラス繊維を含めるようにしても良い。これ
により、土構造体におけるひび割れ発生の抑制、およびひび割れ幅の低減に寄与することができる。
また、本発明は、上述までの構築方法によって構築された土構造体としても捉えることができる。すなわち、本発明は建築構造物の一部を構成する土構造体であって、酸化マグネシウムと石灰系の少なくとも何れかを原料とすると共にセメントを含まない土固化材および水を添加した土を混練して得られる混合材料を用いて構築された土構造体である。
本発明によれば、建築構造を構成する土構造体の構築に際して、環境への配慮と強度や耐久性の確保を両立することができる。
実施の形態に係る土構造体を説明するための図である。 図1に示した基礎部材を構築する構築方法を示す工程図である。 実施例1に係る基礎部材の構築状況を説明するための説明図である。 実施例2に係る組積ブロック材の概略斜視図である。 実施例2に係る組積ブロック材積み上げて構築される第一構造壁を示した立面図である。 実施例2に係る組積ブロック材積み上げて構築される第一構造壁を示した上面図である。 実施例2に係る組積ブロック材の配合例を示す図である。 実施例2に係る組積ブロック材同士を接合する目地材の配合例を示す図である。 図1に示した第一構造壁に用いる組積ブロック材を構築する構築方法を示す工程図である。 実施例2に係る組積ブロック材の構築状況を説明するための説明図である。 図1に示した第二構造壁に用いる組積ブロック材を構築する構築方法を示す工程図である。 実施例3に係る第二構造壁の構築状況を説明するための説明図である。
以下に図面を参照して、本発明に係る土構造体の構築方法を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、実施の形態に係る構築方法で構築する土構造体を説明するための図である。この図において、符号1は、平屋の木造建物(木造建築構造物)を表す。符号2は、上部建物(上部構造)の荷重を地盤に伝達するための基礎部材を表す。更に、符号3は第一構造壁を表し、符号4は第二構造壁を表す。ここで、第一構造壁3は、いわゆる組積ブロック材である。他方、第二構造壁4は、いわゆる版築工法によって構成される構造壁(版築構造壁)である。
図示の基礎部材2、第一構造壁3、第二構造壁4は、それぞれ木造建物1の一部を構成している。本実施形態では、これらの各部材を土構造体によって構築する。その際、本実施形態に係る土構造体は、六価クロムの溶出や、製造過程において膨大な量の二酸化炭素が排出される等の課題があるセメントを使用せずに、環境に配慮した材料を用いるようにした。
本実施形態に係る土構造体の構築方法は、酸化マグネシウム、石灰系、ゼラチン系の少なくとも何れかを原料として含むと共にセメントを含まない土固化材、および水を添加した土を混練して得られる混合材料を用いて構築対象となる土構造体を構築する。ここでいう土構造体は、建築構造物の一部を構成するものであり、かつ、建築構造物に作用する長期荷重(自重、積載荷重など)および短期荷重(地震荷重、風荷重など)を負担する構造要素(構造部材)としての機能を発揮する。
図1は、実施の形態に係る構築方法で構築する土構造体を説明するための図である。この図において、符号1は、平屋の木造建物(木造建築構造物)を表す。符号2は、上部建物(上部構造)の荷重を地盤に伝達することで当該上部建物を支持する基礎部材を表す。更に、符号3は第一構造壁を表し、符号4は第二構造壁を表す。ここで、第一構造壁3は、いわゆる組積ブロック材である。他方、第二構造壁4は、いわゆる版築工法によって構成される構造壁(版築構造壁)である。本実施形態では、建築構造物の一部を構成する基礎部材2、第一構造壁3、第二構造壁4が、本発明における土構造体に対応している。以下、これらの各土構造体を構築する方法の具体例を説明する。
<実施例1>
図2は、図1に示した基礎部材2を構築する構築方法を示す工程図である。また、図3は、基礎部材2の構築状況を説明するための説明図である。
本実施例において構築対象となる土構造体は、図1に示した基礎部材2(基礎部)である。ステップS101では、基礎部材2を構築する部位周辺における表土を、バックホウ10等の重機によって、所定の漉き取り深さまで漉き取りを行う(漉き取り工程)。ここでは、基礎部材2の底面位置まで均一に地盤の土壌を漉き取るようにした。図3の(A)は、漉き取り工程の状況を示している。
ステップS101における漉き取り工程が終了すると、次のステップS102では、漉き取りが行われた地盤表面に、所定量の酸化マグネシウム粉末からなる酸化マグネシウム固化材、および水を添加する(添加工程)。酸化マグネシウム固化材を土壌1m3に対す
る質量(kg/m3)で表すと、酸化マグネシウム固化材の添加量は例えば150kg/
3程度としても良い。また、施工箇所における土壌を試料として予め実験、試験などを
行っておき、基礎部材2に要求される強度やその他の条件に応じて配合設計を行い、その結果に準拠して酸化マグネシウム固化材、及び水の添加量を調整すると良い。
次のステップS103では、ステップS102の添加工程において酸化マグネシウム固化材および水が添加された土壌をバックホウ10によって混練(撹拌)する(混練工程)。図3の(B)は、混練工程の状況を示している。このように、土壌に対して酸化マグネシウム固化材を散布し、加水して混練すると、酸化マグネシウム固化材に含まれる酸化マグネシウム(MgO)の水和反応によって水酸化マグネシウムが生成される(MgO+H2O→Mg(OH)2)。そして、この水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が空気中や
雨水の二酸化炭素(CO2)を吸収することで炭酸マグネシウムとなり(Mg(OH)2+CO2→MgCO3+H2O)、材令(材齢)の経過と共に土と一体となって硬化すること
で、土の固化強度が増進する。
なお、酸化マグネシウム固化材を構成する酸化マグネシウム粉末は、海水に水酸化カルシウムなどのアルカリを加えて生成させた水酸化マグネシウム粒子を、高温(例えば650〜900℃程度)にて焼成することによって製造できる。
次のステップS104では、ステップS103の混練工程において混練した地盤の土壌
を、転圧機(転圧ローラやダンパーなど)を用いて転圧、締め固めを行う(締め固め工程)。図3の(C)は、締め固め工程の状況を示している。ステップS102〜ステップS104の添加工程、混練工程、締め固め工程を、一定の高さ毎に繰り返し行うことで、基礎部材2の外形が設定された出来形(幅、厚さ、基準高など)となるように成形される。
このようにして、本発明による土構造体の構築方法(施工方法)によれば、多量のCO2排出量と六価クロムの溶出が懸念されるセメントを含まず、自然の有機化合物である酸
化マグネシウムを土に混入して得られる環境安全性の優れた建築材料を用いることで、環境への配慮を行うことができる。また、それと同時に、構造要素としての十分な強度を発現可能な土構造体を構築することが可能である。つまり、本発明によれば、建築構造物の一部を構成する土構造体の構築に際して、環境への配慮と構造強度や耐久性の確保を両立するという課題を解決することができる。
更に、本実施例の構築方法によれば、基礎部材2を構築する際に、軟弱地盤の地盤改良も同時に行うことが可能となる。従来のように、地盤改良と基礎部材の構築を別途行う場合に比して、工期の短縮、コストの低減に寄与することができる。
<実施例2>
次に、本実施形態に係る第2の実施例を説明する。本実施例では、酸化マグネシウム固化材および水を土に混入して得られる混合材料を用いて、第一構造壁3に用いるブロック材5を構築する。本実施例では、土を固化する固化材として酸化マグネシウム粉末を原料とする酸化マグネシウム固化材を使用する。
図4は、組積ブロック材5の概略斜視図である。図5および図6は、組積ブロック材5を積み上げて構築される第一構造壁を示した立面図、上面図である。また、図7は、組積ブロック材5の配合例を示す図である。図8は、組積ブロック材5同士を接合する目地材の配合例を示す図である。図9は、図1に示した第一構造壁に用いる組積ブロック材5を構築する構築方法を示す工程図である。図10は、組積ブロック材5の構築状況を説明するための説明図である。
図6〜8に示すように組積ブロック材5は直方体形状を有する。図示のように、組積ブロック材5の上下面には、それぞれ4つのダボ係合凹部5aが形成されている。後述する工程図に従って構築された組積ブロック材5は、図7に示すように積み上げられることで第一構造壁3が構築される。その際、各組積ブロック材5の間に接合材として機能する目地材を充填することで、これらが堅固に接合される。特に、本実施例における組積ブロック材5は、上下に積層された際に互いのダボ係合凹部5a同士が対向するように構成されており、これらに充填した目地材が硬化することでダボ接合部が形成される。これにより、組積ブロック材5が積層されてなる第一構造壁3は、より大きな水平荷重(地震荷重や風荷重など)にも抵抗することができるようになっている。
なお、図6〜図8に示した組積ブロック材5の形状および各寸法、ダボ係合凹部5aの配置パターンや組積ブロック材5に配置される数などは例示的なものであり、これに限定されるものではなく、適宜の変更を加え得る。
図9を参照すると、まずステップS201では、図7に示す配合に適合するように、粘土、山砂、砕石、酸化マグネシウム固化材を用意する。各材料の質量は、組積ブロック材5を製造する量に応じて図9に従って調整される。そして、これら各材料のうち、まず粘土、山砂、砕石をミキサー(図示せず)に投入する。次いで、酸化マグネシウム固化材および適用の水を粘土等に対して添加する(添加工程)。本実施例における水の添加量は、組積ブロック材5を1個当たりにつき、3〜4.5リットル程度に設定しているが、これ
に限定されるものではない。
次いで、ステップS202では、ミキサー内における各材料を混練する(混練工程)。次のステップS203では、混練工程を経て得られた混合材料を、組積ブロック材5を成形するための型枠(容器)12内へと投入する(投入工程)。次いで、ステップS204では、型枠内12内に投入された混合材料の上面に押さえ板部材(例えば、撫で板)13を配置する。その後、押さえ板部材13を押圧することで型枠12内の混合材料を締め固め、この混合材料を組積ブロック材5の形に成形する(成形工程、図10(A)、(B)を参照)。
ところで、型枠12の底部と、押さえ板部材13には、ダボ係合凹部5aと同一形状の突起部(図示せず)が形成されている。この突起部は、成形工程においてダボ係合凹部5aを形成するためのものである。すなわち、型枠12内に上記混合材料を型枠12の底部と押さえ板部材13との間に挟んで押圧することで、ダボ係合凹部5aが形成される。
ステップS204における成形工程が終了すると、次のステップS205では、型枠12を取り外す(脱型工程)。図10の(C)は、脱型工程の状況を示している。ステップS205における脱型工程が終了すると、次のステップS206では、脱型された状態の混合材料(すなわち、組積ブロック材5)を、例えば施工現場に併設された乾燥設備(図示せず)で乾燥させる(乾燥工程)。ここでいう乾燥設備は、乾燥工程中の混合材料、すなわち組積ブロック材5が雨風に晒されることを防ぐことが可能な棚等、簡易的な設備であっても良い。そして、本実施例における乾燥工程では、混合材料を所定の材令となるまで自然乾燥させれば良く、煉瓦の製造工程で通常行われる焼成を行う必要は無い。図10の(D)は、乾燥工程の状況を示している。
ステップS206における乾燥工程が終了すると、次のステップS207では、混合材料を充分に乾燥させることで得られた組積ブロック材5を、接着剤としての目地材を塗布しながら、順次積み上げる(積み上げ工程)。なお、組積ブロック材5同士の接着剤として用いる目地材は、粘土、山砂、酸化マグネシウム、および水からなり、砕石が含まれないことを除いて組積ブロック材5の原料と共通とすることができる。また、水以外の各材料の質量比は、図8の配合例に示す通りである。また、水の添加量は、目地材40kg分につき、6〜9リットル程度としても良い。
本実施例においても、実施例1と同様に、セメントを含まず、有機化合物からなる環境に配慮した固化材を用いて、建物に作用する各種荷重に抵抗する抵抗要素として機能する第一構造壁3に用いるための組積ブロック材5を構築することができる。また、本実施例に係る組積ブロック材5の構築方法によれば、一般的に行われている材料の焼成を行う必要はないため、第一構造壁3に用いられる組積ブロック材5を施工現場で量産できるというメリットもある。
<実施例3>
次に、本実施形態に係る第3の実施例を説明する。本実施例では、酸化マグネシウム固化材および水を土に混入して得られる混合材料を用いて、第二構造壁4を版築工法によって構築する。本実施例においても、土を固化する固化材として酸化マグネシウム粉末を原料とする酸化マグネシウム固化材を使用する。本実施例においては第二構造壁4が本発明における版築構造壁に対応している。
図11は、図1に示した第二構造壁4を構築する構築方法を示す工程図である。図12は、第二構造壁4の構築状況を説明するための説明図である。図11に示す各工程について、図9と共通の工程については同じ参照符号を付すことで、その詳細な説明を割愛する
。第二構造壁4を版築により構築するための各工程を説明すると、まずステップS301において、型枠14を組み立てる(型枠組み立て工程、図12(A)を参照)。図12(A)に示すように、型枠14は、複数の板状部材14aを第二構造壁4の形状に組、その周囲を複数の鋼管14bによって固定している。なお、鋼管14bは、水平方向に配置される図示しない鋼管によって堅固に拘束されており、土を投入した際に型枠14が変形したり、崩れないようになっている。
ステップS301の型枠組み立て工程の後、図9のステップS201で説明した添加工程を実施する。本実施例において第二構造壁4を構築する建築材料は、実施例2で説明した組積ブロック材5を構築するための材料と共通であり、図7に示した配合例を好適に適用することができる。すなわち、ステップS201では、まずミキサーに粘土、山砂、砕石を投入し、次いで、酸化マグネシウム固化材および適用の水をこれらに添加する。また、水の添加量に関しても、組積ブロック材5を作製する場合と同程度の配合とすることができる。
ステップS202では、ミキサー内における各材料を混練する(混練工程)。ステップS202における混練工程が終了すると、次のステップS302では、上記各材料を混練して得られた混練材料を型枠14内に投入する(投入工程)。次いで、ステップS303では、型枠14内に投入された混練材料の上面を、図12の(C)に示すような突き固め棒15によって押圧することにより突き固める(突き固め工程)。本実施例では、ステップS302(投入工程)およびステップS303(突き固め工程)を繰り返し実施し、上方に向かって層状に継ぎ足されてゆくことで成形される。
そして、第二構造壁4が所定の高さに到達すると、ステップS304において、型枠14を第二構造壁4から取り外す脱型が行われる(脱型工程、図12(D)を参照)。
以上のように、本実施例に係る土構造体の構築方法においても、実施例1および2と同様、セメントを含まずに自然の有機化合物である酸化マグネシウムを土に混入して得られる環境配慮型の材料を用いて強度の優れた土構造体を構築することができるため、環境への配慮と構造強度や耐久性の確保を両立することが可能となる。
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記の実施形態には種々の変更を加え得る。上記実施例では、土を固化する固化材として酸化マグネシウム固化材を採用する場合を例に説明したが、酸化マグネシウム固化材の代わりに石灰系固化材、或いはこれらを混合した固化剤を採用して土構造体を構築しても、各実施例と同様の効果を奏する。また、本発明に係る固化材としてゼラチン系の固化材を採用しても良く、酸化マグネシウム固化材や石灰系固化材と同様に、建築構造物の一部を構成する土構造体を好適に構築することが可能である。
石灰系固化材は、例えば生石灰や消石灰を原料とするものなどがある。粘土に生石灰(CaO)および水を添加すると、生石灰が水と反応して、水酸化カルシウム(消石灰)が生成される(CaO+H2O→Ca(OH)2)。そして、この水酸化カルシウム(消石灰)は、空気中や雨水の二酸化炭素(CO2)を吸収することで炭酸カルシウムとなり(C
a(OH)2+CO2→CaCO2)、材令の経過と共に土と一体となって硬化することで
、土の固化強度が増進する。また、上記反応と並行して、土中に含まれるシリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)を主な組成とするポゾランが、水酸化カルシウム(消石灰)
と反応し、土の固化が促進される。
また、粘土に対して固化材および水を添加した際の反応性が高すぎると、施工性が悪化
する場合がある。特に、夏場のように外気温が高くなる季節には反応速度が過剰に高まることで、粘土に固化材を均一に混合するのが難しくなる場合がある。そのような場合には、固化材の反応速度を遅延させる固化遅延剤(例えば、無水クエン酸を原料とする固化遅延剤を挙げることができる)を、粘土に添加するようにしても良い。これにより、粘土の固化速度を調整することができ、常に施工性を良好に維持することができる。その他、土構造体にひび割れの発生を抑制するためのガラス繊維を含めるようにしても良い。これにより、構築する土構造体におけるひび割れ発生の抑制やひび割れ幅の低減を図るべく、粘土に繊維(例えば、ガラス繊維など)を混入させても好適である。
1・・・木造建物
2・・・基礎部材
3・・・第一構造壁
4・・・第二構造壁
5・・・組積ブロック材

Claims (5)

  1. 建築構造物の一部を構成する土構造体を構築する構築方法であって、
    酸化マグネシウムと石灰系の少なくとも何れかを原料とすると共にセメントを含まない土固化材および水を添加した土を混練して得られる混合材料を用いて構築対象となる前記土構造体を構築する構築方法。
  2. 前記構築対象となる前記土構造体は上部建物を支持するための基礎部であって、
    前記基礎部を構築する部位における地盤に前記土固化材および水を添加する添加工程と、
    前記添加工程において前記土固化材および水が添加された前記地盤を混練する混練工程と、
    前記混練工程において混練された前記地盤を締め固めて前記基礎部を成形する締め固め工程と、
    を含む、請求項1に記載の構築方法。
  3. 前記構築対象となる前記土構造体は構造壁に用いる組積ブロック材であって、
    前記土固化材および水を土に添加する添加工程と、
    前記添加工程において前記土固化材および水が添加された前記土を混練する混練工程と、
    前記混練工程において混練することで得られた混合材料を型枠内に投入する投入工程と、
    前記投入工程において投入された前記混合材料の上面に押さえ部材を配置すると共に該押さえ部材を下方に押圧することにより該混合材料を前記組積ブロック材の形に成形する成形工程と、
    前記成形工程の後に前記型枠を取り外す脱型工程と、
    前記脱型工程において脱型された前記混合材料を乾燥させる乾燥工程と、
    を含む、請求項1に記載の構築方法。
  4. 前記構築対象となる前記土構造体は版築によって構築される版築構造壁であって、
    前記土固化材および水を土に添加する添加工程と、
    前記添加工程において前記土固化材および水が添加された前記土を混練する混練工程と、
    前記混練工程において混練することで得られた混合材料を型枠内に投入する投入工程と、
    前記投入工程において投入された前記混合材料の上面を突き固める突き固め工程と、
    を含む、請求項1に記載の構築方法。
  5. 建築構造物の一部を構成する土構造体であって、酸化マグネシウム、石灰系の少なくとも何れかを原料とすると共にセメントを含まない土固化材および水を添加した土を混練して得られる混合材料を用いて構築された土構造体。
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