JP2012087002A - 製鋼スラグおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スラグの内部まで十分に炭酸化処理され、安定化処理後に破砕処理を行う土工用途や海洋用途へ使用可能な製鋼スラグを提供する。
【解決手段】密閉容器に収容された溶融状態の製鋼スラグの内部に、二酸化炭素を含む気体を、二酸化炭素の吹き込み量が製鋼スラグ1トン当たり0.07トン以上となるようにして、吹き込み、その後に製鋼スラグを860℃以下の温度に冷却することによって、遊離CaOの含有量が1.5%以下であるとともに、炭酸塩の形態で存在するCO2の含有量が6.3%以上である製鋼スラグを製造する。
【選択図】図2

Description

本発明は、製鋼スラグおよびその製造方法に関し、具体的には、炭酸化処理により安定化された製鋼スラグおよびその製造方法に関する。
製鋼スラグは、鉄鋼の製鋼工程において副生するスラグであり、例えば、転炉製錬時に生成する転炉スラグ、脱硫や脱燐などの溶銑予備処理時に生成する溶銑予備処理スラグ、さらにはステンレス鋼生成時に生成するステンレススラグなどが代表的である。
これらの製鋼スラグは、遊離CaOを多量に含有するために膨張性を有すること、さらには、Ca2+を主としたアルカリ成分の溶出によって溶出pHが大きいことといった特徴を有する。なお、本明細書では、アルカリ成分とは、アルカリ金属成分とアルカリ土類金属成分を総称した呼称として用いる。
製鋼スラグを、廃棄処分するのではなく、例えば、土工用途や海洋での藻場形成等の用途に再利用する場合には、製鋼スラグが上記の特徴を有することから、製鋼スラグの利用場所や利用方法を配慮する必要があり、結果的に製鋼スラグの用途が制限されることが多い。これらの不都合な特徴を解消して製鋼スラグの用途を拡大するためには、製鋼スラグに多量に含有される遊離CaOを安定化する必要がある。
JIS A 5015(道路用鉄鋼スラグ)に規定される膨張比1.5%以下を実現するとともに、海洋用途で使用する際に白濁が生じない溶出pH9.5以下を達成するためには、製鋼スラグの遊離CaO含有量を1.5%以下(本明細書では特に断りがない限り「%」は「質量%」を意味する。)に低減する必要があることが、経験的に知られている。
製鋼スラグの遊離CaOを低減するためには、下記(1)式により示される水和反応や、下記(2)式により示される炭酸化反応によって、CaOをより安定な化合物に転換しなければならない。
CaO+HO=Ca(OH) ・・・・・・・(1)
CaO+CO=CaCO ・・・・・・・(2)
特許文献1には、フッ素を含有する製鋼スラグ100重量部に、セメントおよびセメント原料の少なくとも一方からなるとともに粒度が0.05〜5mmであるセメント物質5〜30重量部、および硫酸根を含む粉末1〜10重量部を添加混合した後、水の存在下で加温するか、あるいは蒸気養生下で行う蒸気エージング処理により反応させて、遊離CaOの水和を促進し製鋼スラグを安定化する技術(以下、「従来技術1」という)が開示されている。
従来技術1によれば、確かに、製鋼スラグの遊離CaOによる膨張性の安定化と、製鋼スラグからのフッ素溶出量の長期間の低減とを達成することが可能になるものの、アルカリ成分の溶出は抑制できない。
特許文献2には、水分を含んだスラグ等の粉粒状の未炭酸化Ca含有原料の充填層、または、この未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体の内部を減圧した後に、この充填層または炭酸固化体に炭酸ガスを吹き込んで、炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることによって、スラグ等の未炭酸化Ca含有原料の表面を炭酸化する技術(以下、「従来技術2」という)が開示されている。
しかし、従来技術2は、破砕処理したスラグに対して冷間処理を行うものであるために反応の進行が遅く処理時間が長いとともに、工程数が多く、かつ専用の処理設備を必要とするために処理コストが嵩むという問題がある。さらに、従来技術2は、表面に高強度の炭酸固化体を作成することが目的であるため、未炭酸化Ca含有原料の表面のみに炭酸化反応を発生させることができればそれで充分である。しかし、製鋼スラグを例えば土工用途や海洋用途に供する場合に行われる破砕処理を経ると、遊離CaOを含有する未反応部分が露出するため、破砕処理された製鋼スラグの遊離CaOを安定化することはできない。このため、従来技術2は、ブロック状の成形体を破砕処理することなくそのまま利用する用途にしか適用できないので、製鋼スラグの用途を、例えば土工用途や覆砂材などの海洋用途にまで拡大することはできない。
特許文献3には、凝固した高温のスラグを密閉容器内に充填し、充填スラグ層の上方から散水すると同時にCOガスを密閉容器内に導入し、COガス分圧を0.2〜0.8に調整した3気圧以上のHO−CO混合ガスを密閉容器内に充満させることによって、スラグの遊離CaOの水和反応および炭酸化反応を促進する技術(以下、「従来技術3」という)が開示され、また、特許文献4には、特許文献3により開示された発明において、充填スラグ層の上方から散水する前に、スラグ充填後の密閉容器内圧力を450torr以下に減圧する技術(以下、「従来技術4」という)が開示されている。
すなわち、従来技術3、4は、凝固した高温のスラグをCO−HO混合ガス中で散水冷却することによって、遊離CaOの水和反応および炭酸化反応を促進する技術である。
しかし、従来技術3、4では、スラグは高温ではあるものの凝固しているため、反応面積が小さく、スラグの表面以外の部分は反応しない。また、水和反応により安定化された部分はアルカリ成分の溶出を抑制できない。
特許文献5には、溶融状態のスラグに、炭酸ガスもしくは炭酸ガスを含むガス、または炭酸ガスと水蒸気、または炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを含む水溶液を含有するものをガス流として吹き付けて、スラグを粒状化するとともに冷却固化させて風砕スラグとする技術(以下、「従来技術5」という)が開示されている。
従来技術5は、スラグの表面にCaCO等の炭酸化物の皮膜を形成することによって、カルシウム等の溶出反応を抑制し、水和反応を生じ難くして固結を抑制するものである。しかし、従来技術5は、風砕スラグを製造するため、処理後のスラグの粒度は不可避的に小さくなり、例えばコンクリート用細骨材等の用途にしか適用することができないので、製鋼スラグの用途を、例えば土工用途や海洋用途にまで拡大することはできない。
さらに、特許文献6には、製鋼スラグに、珪酸(SiO)含有改質剤、炭素含有還元剤および鉄スクラップを混合し、この混合物を、酸素ガス含有気体を供給しながら還元性雰囲気に維持しながら再溶融することによって、製鋼スラグ中の遊離CaOを珪酸含有剤と反応させて減少させるとともに、酸化燐や酸化鉄、酸化マンガン等の有価金属酸化物を炭素質還元剤で還元して溶鉄に移行させることにより製鋼スラグ中の含有量を減少させる改質処理を行って、製鋼スラグを再生資源として有効利用するための技術(以下、「従来技術6」という)が開示されている。
特開2001−316143号公報 特開2004−189593号公報 特開平6−158124号公報 特開平6−184610号公報 特開2004−238234号公報 特開平6−115984号公報
従来技術6を実施するには、添加剤として、(a)例えば、砂利、高炉スラグさらには脱珪後予備処理スラグといった珪酸含有改質剤、(b)例えば、コークスや石炭といった炭素含有還元剤を用い、これらの添加剤を投入した後に再溶融し、さらに均一に混合する必要がある。このため、従来技術6は、不可避的に処理コストの上昇を伴う。
このように、製鋼スラグを炭酸化処理する従来の技術では、炭酸化の反応表面積を十分に確保することができず、製鋼スラグの表面部分のみしか安定化することができず、製鋼スラグの内部まで十分に炭酸化処理することができなかった。また、従来の技術には、処理コストの増加を伴うものが多かった。
したがって、従来の技術では、製鋼スラグの用途を、例えば土工用途や海洋用途にまで拡大することはできなかった。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、溶融状態の製鋼スラグの内部に、二酸化炭素(CO)を含む気体(ガス)を吹き込み、その後にこの製鋼スラグを860℃以下の温度に冷却することによって、炭酸化の反応表面積を大きく確保することができ、これにより、低コストで製鋼スラグの内部まで効率的に炭酸化処理できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
本発明は、遊離CaOの含有量が1.5質量%以下であるとともに、炭酸塩の形態で存在するCOの含有量が6.3質量%以上であることを特徴とする製鋼スラグである。
この本発明では、製鋼スラグは、溶融状態の製鋼スラグの内部に、二酸化炭素を含む気体を吹き込むことによって安定化処理された製鋼スラグであることが望ましい。
これらの本発明では、製鋼スラグは溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグであることが例示される。
別の観点からは、本発明は、密閉容器に収容された溶融状態の製鋼スラグの内部に、二酸化炭素を含む気体を、この二酸化炭素の吹き込み量が製鋼スラグ1トン当たり0.07トン以上となるようにして、吹き込み、その後にこの製鋼スラグを860℃以下の温度に冷却することを特徴とする製鋼スラグの製造方法である。
本発明により製鋼スラグの遊離CaOを、低コストで炭酸化して安定化することができる。このため、製鋼スラグを、安定化処理後に破砕処理を行われる、例えば、土工用途や海洋用途へも適用することができるようになり、製鋼スラグの再利用の用途を拡大することが可能になる。
図1(a)は、密閉容器に収容された溶融状態の製鋼スラグにランスからCOを含む気体を吹き付ける状況を模式的に示す説明図であり、図1(b)は、密閉容器に収容された溶融状態の製鋼スラグにランスからCOを含む気体を吹き込む状況を模式的に示す説明図である。 図2は、炭酸化処理後のスラグ中のCO含有量と遊離CaO含有量の関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、密閉容器1に収容された溶融状態の製鋼スラグ2にランス3からCOを含む気体を吹き付ける状況を模式的に示す説明図であり、図1(b)は、密閉容器1に収容された溶融状態の製鋼スラグ2にランス3からCOを含む気体を吹き込む状況を模式的に示す説明図である。
図1(a)および図1(b)における密閉容器1としては、溶融状態の製鋼スラグ2を密閉状態で収容することができる容器であればよく、例えば、
耐火物製のスラグ鍋と蓋を用いることが例示される。
図1(a)は、製鋼スラグ2の上方に配置されたランス3から製鋼スラグ2への気体吹き付けのみを行い、製鋼スラグ2の内部への気体の吹き込みは行わない場合である。
この場合には、密閉容器1に収容された製鋼スラグ2の上表面2aが気体との界面であると同時に反応表面積を構成する。このため、気体と製鋼スラグ2との反応表面積を十分に確保することができず、製鋼スラグ2の内部まで十分に炭酸化処理することができない。
これに対し、図1(b)は、製鋼スラグ2に浸漬されたランス3からCOを含む気体を製鋼スラグ2に吹き込む場合である。
この場合、製鋼スラグ2に吹き込まれた気体は、製鋼スラグ2の内部においては、閉気孔4、または、製鋼スラグ2の上表面2aまで連通した開気孔5として存在するが、いずれの気孔4、5も、図1(a)に示す気体吹き付けに比較して、製鋼スラグ2との反応表面積を大きく確保することができる。
このため、本発明により、溶融状態の製鋼スラグの内部に、COを含む気体を吹き込むことによって、炭酸化の反応表面積を増加することができる。
次に、溶融状態の製鋼スラグへのCOの吹き込み量を説明する。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、溶融状態の製鋼スラグの内部にCOを含む気体を吹き込む場合において、処理前の製鋼スラグ量に対するCOの吹き込み量を、0.07ton/slag−ton以上とすれば、製鋼スラグ中に安定化するCO含有量が6.3%以上となり、製鋼スラグ中の遊離CaO含有量を1.5%以下に低減できることを知見した。
ここで、「製鋼スラグ中に安定化するCO含有量」とは、炭酸塩の形態で存在するCOの含有量である。このCO含有量は、処理後の製鋼スラグを1100℃以上に再加熱し、発生したCOガスをガス分析で定量し、この定量値から算出される。
次に、製鋼スラグ中に炭酸塩の形態で安定化するCO含有量が6.3%以上であれば、製鋼スラグ中の遊離CaO含有量を1.5%以下にまで低減できる理由を説明する。
本発明者らは、実験により、製鋼スラグ中のCaOが炭酸化反応する温度が約860℃以下であることを知見した。この温度では、製鋼スラグは固体状態である。すなわち、溶融状態において炭酸化反応するのであれば、溶融状態に温度保持してCOを吹き込んでも、それだけでは、CaOの炭酸化反応は進行しない。一方、860℃以下において固体状態のスラグにCaOを接触させても、上述したように、炭酸化の反応界面積の上昇は望めない。
製鋼スラグの性状は、発生プロセスおよび発生後の処理方法によって様々であるが、大気下における水冷や空冷など通常の冷却時には、遊離CaOの含有量は最大10%程度となる。
図2は、本発明者らの実験により得られた、処理後の製鋼スラグ中のCO含有量(処理後スラグ中のCO含有量)と、処理後の製鋼スラグ中の遊離CaO含有量(処理後スラグ中の遊離CaO含有量)との関係を示すグラフである。
図2に示すグラフから、炭酸化処理によって製鋼スラグ中の遊離CaO含有量を1.5%以下とするためには、処理後の製鋼スラグ中のCO含有量を6.3%以上にする必要があることが分かる。
なお、処理後の製鋼スラグ中のCO含有量は、上述するように1100℃への加熱により発生したCOガス量に基づいて算出される値であり、製鋼スラグの内部では炭酸塩として存在すると考えられる。遊離CaOが優先的に炭酸化するが、CO含有量が7.85%超となる場合は、遊離CaOは0%となり、MgOも炭酸化する。
しかしながら、製鋼スラグは、その性状によらず860℃では既に大半が凝固状態であり、密閉容器内でCOを含むガス中に長時間暴露しても、製鋼スラグの内部まで炭酸化反応が進行せず、表面のみの反応となる。XRD解析の結果は、CaCOのピークを若干ではあるが検出しており、その結果、処理後の製鋼スラグ中のCO含有量が非常に小さく、十分に遊離CaOを低減できないことがわかった。
そこで、溶融状態の製鋼スラグに密閉容器内でCOを含むガスを吹き込んだところ、凝固過程で気孔が生成され表面積が増加し、さらにスラグ温度が860℃以下になった時、既にCOを含むガスが十分に存在した状態となっており、炭酸化し易いことがわかった。
すなわち、閉気孔内に閉じ込められたCOを含むガス、および開気孔内を通過するCOを含むガスと、凝固過程で析出してきた遊離石灰との炭酸化反応が進行する。XRD解析の結果では、CaCO、CaMg(CO、MgCa(CO、Ca10(POCOが検出された。
製鋼スラグの内部まで十分に炭酸化できないと、具体的にはCO含有量が6.3%以下に低下するまで製鋼スラグが炭酸化されないと、製鋼スラグに含まれる遊離CaO含有量を1.5%以下に低減することができない。
本発明が対象とすることができる製鋼スラグは、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、二次精錬スラグ等であり、特段の限定はないが、通常処理をした場合に析出する遊離CaO含有量が10%以下であることが望ましい。ただし、組成によって融点が異なるため、処理前の製鋼スラグの温度を、溶融状態となる温度とする必要がある。
処理前の製鋼スラグの温度は、効果に対する影響が小さく、特に問わないが、製鋼スラグの内部へのCOを含む気体の吹き込みを効率的に行なうためには、製鋼スラグが溶融状態であることが求められるため、処理前の製鋼スラグの温度は、その製鋼スラグの組成によって選定すべきである。必要な場合は、例えば電気炉を利用して製鋼スラグを再溶融するようにしてもよい。
COを含む気体の吹き込みにより、製鋼スラグの凝固過程において気孔が生成され、表面積が増加し、さらに製鋼スラグの温度が860℃以下に低下すると、既にCOを含むガスが十分に存在した状態となっているので、閉気孔内に閉じ込められたCOを含むガス、および開気孔内を通過するCOを含むガスと凝固過程で析出してきた遊離石灰との炭酸化反応が発生し易いやすい。
図1(a)に示すように、製鋼スラグへの気体吹き付けのみを行い、製鋼スラグの内部への気体の吹き込みは行わない場合、溶融状態の製鋼スラグの表面でしか炭酸化反応は発生せず、製鋼スラグの内部まで炭酸化反応が進行しないために、炭酸化反応が十分に行われない。
炭酸化反応の処理時間は、特に限定を要するものではないが、処理時間が短過ぎるとCOを含む気体の吹き込み流量が増加し、吹き溢れの問題が発生し、一方、処理時間が長過ぎると効率的に処理できないため、処理時間は10分間以上60分間以下とすることが望ましい。
処理前の製鋼スラグ1トンに対するCOの吹き込み量が0.07トン以上であれば、吹き込む気体中のCO分圧は問わないが、CO分圧が小さいと結果として気体の吹き込み流量が大きくなるため、吹き込む気体中のCO分圧は、吹き溢れを考慮して選定することが望ましい。例えば、吹き込む気体中のCO分圧は0.1以上であることが例示される。
処理前の製鋼スラグ1トンに対するCOの吹き込み量が0.07トン未満であると、炭酸化反応に最低限必要なCO量を供給できないため、処理後の製鋼スラグのCO含有量を6.3%以上にすることができない。また、処理前の製鋼スラグ1トンに対するCOの吹き込み量が0.07トンであれば、吹き込む気体として純COガスを使用した場合にあっても、吹き込みおよび密閉容器内への充填には十分な吹き込み量となる。
本発明では、処理前の製鋼スラグ1トンに対するCOの吹き込み量を0.07トン以上としているが、吹き込み量を大きくすると、結果として吹き込み流量も大きくなるため、実用上は吹き溢れが発生しない程度の吹き込み量とすることが望ましい。吹き溢れの有無は、対象とする製鋼スラグの種類(粘度、融点など)、処理前の製鋼スラグの温度、吹き込み方式、吹き込み量、および処理時間などを総合的に評価して適宜決定すればよい。例えば、製鋼スラグが溶銑予備処理スラグ(塩基度:1.5〜3.5)である場合には、処理前の製鋼スラグの温度:1100〜1400℃、吹き込み方式:ランス方式、吹き込み量:0.15〜0.50トン、処理時間:20〜30分であることが例示される。
以下に列記する実施方法および評価方法により製鋼スラグを製造した。この製造条件を表1にまとめて示す。
Figure 2012087002
(i)実施方法
表1における本発明例1〜7では、密閉容器に収容された、処理前スラグ温度が1350℃または1200℃の溶融状態の溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグの内部に、密閉容器の内部に挿入されたランス、または密閉容器の底部に設けられた吹き込み口を介して、COを含む気体を、溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグ1トンに対する二酸化炭素の吹き込み量が0.42または0.10ton/slag−tonとなるようにして吹き込み、その後(処理時間30または10分間)に溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグを860℃以下の温度に冷却した。
表1における比較例1〜4では、密閉容器に収容された、処理前スラグ温度が1350℃の溶融状態の溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグの上表面2aに、密閉容器の内部に挿入されたランスを介して、COを含む気体を、溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグ1トンに対する二酸化炭素の吹き付け量が0.42または0.80ton/slag−tonとなるようにして吹き付け、その後(処理時間30または120分間)に溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグを860℃以下の温度に冷却した。
また、表1における比較例5では、密閉容器に収容された、処理前スラグ温度が1350℃の溶融状態の溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグの内部に、密閉容器の底部に設けられた吹き込み口を介して、COを含む気体を、溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグ1トンに対する二酸化炭素の吹き込み量が0.05ton/slag−tonとなるようにして吹き込み、その後(処理時間30分間)に溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグを860℃以下の温度に冷却した。
さらに、表1における比較例6では、密閉容器に収容された、処理前スラグ温度が850℃の溶銑予備処理スラグに、密閉容器の底部に設けられた吹き込み口を介して、COを含む気体を、溶銑予備処理スラグ1トンに対する二酸化炭素の吹き込み量が0.42ton/slag−tonとなるようにして吹き込み、その後(処理時間30分間)に溶銑予備処理スラグを860℃以下の温度に冷却した。
(ii)評価方法
処理後の溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグを1100℃以上に再加熱し、発生したCOガスをガス分析で定量し、この定量値から、処理後の製鋼スラグ中のCO含有量を算出した。
さらに、エチレングリコール抽出法により、遊離CaO含有量を分析した。
結果を表1にあわせて示す。
[本発明例1〜7]
本発明にしたがって、COを含む気体を溶融状態の溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグに吹き込むことによって、処理後の溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグの遊離CaO含有量を1.5%以下に低減できることが確認された。また、推定される処理後スラグ中のCO含有量6.3%以上を達成できた。
処理後スラグ中のCO含有量が6.3%以上となるように溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグの内部まで十分に炭酸化すれば、溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグの遊離CaO含有量は1.5%以下となっており、十分に安定化したものとなることがわかった。
また、本発明例1〜4と本発明例5、6とを比較することから理解されるように、底吹方式が最も効果が高い傾向であったが、3種類のCOを含むガスの吹き込み方式のいずれにおいても効果が確認できた。
また、表1から、製鋼スラグの種類や、処理前の製鋼スラグの温度の影響は小さいこともわかる。
また、表1から、CO吹き込み量が0.1ton/slag−tonであればCO含有量6.3%以上を達成できることが分かる。
さらに、表1から、処理時間を30分から10分に短縮してもCO含有量6.3%以上を達成できることがわかる。
[比較例]
比較例1〜4に示すように、CO吹き込みを行わない場合には、処理後スラグ中のCO含有量が6.3%未満であり、遊離CaO含有量も1.5%以上であった。
また、比較例1〜4に示すように、CO吹き込みを行わない場合には、CO吹き込み量や処理時間を増加しても、反応表面積が一定であるため、処理後スラグ中のCO含有量も増加しないことがわかる。
また、比較例6に示すように、処理前スラグ温度が850℃であると、CO吹き込みを行うことができないので、CO吹き込みを行わない比較例〜4と同等の結果であり、表面でしか炭酸化反応が生じないことがわかる。
さらに、比較例5に示すように、CO吹き込み量が0.05ton/slag−tonである場合、CO吹き込みを行っても処理後スラグ中のCO含有量は6.3%未満であった。
1 密閉容器
2 製鋼スラグ
3 ランス
2a 上表面
4 閉気孔
5 開気孔

Claims (4)

  1. 遊離CaOの含有量が1.5質量%以下であるとともに、炭酸塩の形態で存在するCOの含有量が6.3質量%以上であることを特徴とする製鋼スラグ。
  2. 前記製鋼スラグは、溶融状態の製鋼スラグの内部に、二酸化炭素を含む気体を吹き込むことによって安定化処理された製鋼スラグである請求項1に記載された製鋼スラグ。
  3. 前記製鋼スラグは溶銑予備処理スラグまたは転炉スラグである請求項1または請求項2に記載された製鋼スラグ。
  4. 密閉容器に収容された溶融状態の製鋼スラグの内部に、二酸化炭素を含む気体を、該二酸化炭素の吹き込み量が前記製鋼スラグ1トン当たり0.07トン以上となるようにして、吹き込み、その後に該製鋼スラグを860℃以下の温度に冷却することを特徴とする製鋼スラグの製造方法。
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