JP2012079731A - 気相成長装置および基板温度測定方法 - Google Patents

気相成長装置および基板温度測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基板の温度をより正確に測定可能な気相成長装置を提供する。
【解決手段】基板1に対して気相成長処理を行なう気相成長装置100は、所定の測定位置30を挟んで相互に対向するように配置された放射温度計2および構成部材4を備え、放射温度計2は、基板1が測定位置30に位置している状態において、構成部材4から基板1を透過して放射温度計2に到達する第1赤外線エネルギーを検出し、基板1が測定位置30に位置していない状態において、構成部材4から放射温度計2に直接到達する第2赤外線エネルギーを検出し、第1赤外線エネルギーおよび第2赤外線エネルギーに基づいて基板1の温度を算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、気相成長装置および基板温度測定方法に関し、特に、放射温度計を備えた気相成長装置および放射温度計を使用して気相成長装置内の基板の温度を測定する基板温度測定方法に関する。
下記の特許文献1〜3参照は、放射温度計を使用して被測定物の表面温度を測定する装置および方法を開示している。下記の特許文献4は、気相成長装置内の基板の温度を測定する基板温度測定方法を開示している。
放射温度計は、被測定物の表面から放射される赤外線エネルギーを検出することによって、被測定物の温度を測定する。放射温度計を使用して被測定物の温度を測定する場合、放射温度計が被測定物の表面からの赤外線エネルギーの放射率を直接測定することは困難である。放射温度計は、被測定物の表面からの赤外線エネルギーの反射率を測定し、キルヒホッフの式を用いて被測定物の表面からの赤外線エネルギーの放射率を得ている。
放射温度計の測定波長(放射温度計が測定の対象とする被測定光の波長)と被測定物の材質との組合せによっては、放射温度計は、被測定物の裏面側から表面側に向かって被測定物を透過した光も検出する。たとえば、放射温度計の測定波長が950nmであり、被測定物がサファイア基板である場合、被測定物体の裏面側から表面側に向かって進む被測定光(赤外線エネルギー)は約70〜90%の透過率でサファイア基板を透過する。
この場合、放射温度計は、基板の表面からの赤外線エネルギーと、裏面側のバックグランド環境からの赤外線エネルギーとの合計値に基づいて基板の温度を算出する。当該合計値によっては、基板の温度が正確に算出されることは困難となる。これに対して、下記の特許文献5は、基板の裏面側にエネルギー遮蔽部を設けることによって、基板の温度を正確に測定することができると述べている。
特開平4−43928号公報 特開平5−209792号公報 特開平9−166494号公報 特開2010−100914号公報 特開2006−105789号公報
特許文献5における基板温度測定方法を使用したとしても、気相成長装置内で基板に化合物半導体を形成する際(または形成の前後)は、基板の温度を正確に測定することは困難となる。たとえば、基板上にGaNを成膜する際は、基板の温度は約900〜1100℃に設定される。基板の裏面側に設けられるエネルギー遮蔽部として選択される部材は、約900〜1100℃以上の融点を有し、且つ温度が約900〜1100℃の状態で約0.01の赤外線エネルギーの放射率を有している必要がある。このような条件を満足する部材を得ることは困難である。
このような条件を満足する部材が得られたとしても、当該部材が基板の裏面側にエネルギー遮蔽部として配設されることによって、ヒーター等による基板の温度調節が妨げられたり、ヒーター等による基板の温度調節のために必要なエネルギー使用量が増大したりするという課題も誘発される。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、基板の温度をより正確に測定可能な気相成長装置および基板温度測定方法を提供することを目的とする。
本発明に基づく気相成長装置は、基板に対して気相成長処理を行なう気相成長装置であって、所定の測定位置を挟んで相互に対向するように配置された放射温度計および構成部材を備え、上記放射温度計は、上記基板が上記測定位置に位置している状態において、上記構成部材から上記基板を透過して上記放射温度計に到達する第1赤外線エネルギーを検出し、上記基板が上記測定位置に位置していない状態において、上記構成部材から上記放射温度計に直接到達する第2赤外線エネルギーを検出し、上記第1赤外線エネルギーおよび上記第2赤外線エネルギーに基づいて上記基板の温度を算出する。
好ましくは、上記構成部材は、上記基板を加熱するヒーター部を含み、上記放射温度計が算出した上記基板の温度に基づいて、上記基板の温度が所望の値となるように上記ヒーター部を制御する制御部をさらに備える。
好ましくは、上記構成部材は、上記基板を保持した状態で回転可能な基板保持部材を含み、上記基板保持部材の回転によって、上記基板が上記測定位置に位置していない状態と上記基板が上記測定位置に位置している状態とが切り替えられる。
本発明に基づく基板温度測定方法は、気相成長処理を行なう気相成長装置内に配置された基板の温度を測定する基板温度測定方法であって、上記気相成長装置内には、所定の測定位置を挟んで相互に対向するように放射温度計および構成部材が配置されており、上記測定位置に上記基板が配置されている状態で、上記構成部材から上記基板を透過して上記放射温度計に到達する第1赤外線エネルギーを上記放射温度計が検出する工程と、上記測定位置に上記基板が配置されていない状態で、上記構成部材から上記放射温度計に直接到達する第2赤外線エネルギーを上記放射温度計が検出する工程と、上記第1赤外線エネルギーおよび上記第2赤外線エネルギーに基づいて上記基板の温度を上記放射温度計が算出する工程と、を備える。
好ましくは、上記構成部材は、上記基板を加熱するヒーター部を含み、上記放射温度計が算出した上記基板の温度に基づいて、上記基板の温度が所望の値となるように上記ヒーター部が制御される工程をさらに備える。
本発明によれば、基板の温度をより正確に測定可能な気相成長装置および基板温度測定方法を得ることができる。
実施の形態に係る気相成長装置を模式的に示す断面図である。 図1中のII−II線における矢視平面図である。 実施の形態に係る放射温度計の構成を示す図である。 実施の形態に係る気相成長装置による基板温度測定方法(放射温度計の動作フロー)を示す図である。 実施の形態に係る気相成長装置において、基板が測定位置に位置している状態を模式的に示す断面図である。 実施の形態に係る気相成長装置において、基板が測定位置に位置していない状態を模式的に示す断面図である。 実施の形態に基づく性能試験結果を示す図である。
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
(気相成長装置100)
図1は、実施の形態に係る気相成長装置100を模式的に示す断面図である。図2は、図1中のII−II線における矢視平面図である。
図1を参照して、気相成長装置100は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を使用して、基板1に対して気相成長処理を行なうことができる。気相成長処理によって、基板1の表面はたとえば結晶性の良好なGaNの成膜処理が施される。気相成長装置100は、反応炉14、放射温度計2、ガス導入口11、プレート12、構成部材4、制御部6、支持台7、環状壁8、回転軸9、支持台10、およびガス排気部17を備える。
反応炉14は中空状であり、反応炉14の内部には成長室14Tが形成される。回転軸9は、成長室14T内に載置された支持台10の上に立設される。回転軸9は、アクチュエータ(図示せず)等から動力を受けることによって矢印AR方向に回動する。回転軸9の上端に、支持台7が取り付けられる。
構成部材4は、基板保持部材3およびヒーター5を含む。ヒーター5は支持台7上に設置される。ヒーター5は、たとえばカーボン製の部材から構成され、抵抗加熱または誘導加熱によって加熱される。ヒーター5がカーボン製の部材から構成されることによって、ヒーター5は900℃〜1100℃に加熱されることができる。
基板保持部材3は、ヒーター5と間隔を空けて対向するように所定の固定部材(図示せず)によって水平支持される。基板保持部材3は、たとえば石英製の部材から構成される。基板保持部材3が石英製の部材から構成されることによって、気相成長処理中における基板保持部材3の変形が抑制される。
基板保持部材3とヒーター5との間に、ヒーター5の温度を制御する制御部6が配設される。制御部6は、ヒーター5の温度を測定する温度計等を含んでいる。環状壁8は、基板保持部材3、ヒーター5、制御部6、支持台7、回転軸9、および支持台10を取り囲むように設けられる。
図2を参照して、基板保持部材3は平面視円形状に構成される。基板保持部材3の表面には、周方向に90°の間隔で並ぶ載置部3A〜3Dが凹設されている。載置部3A〜3Dによって、たとえばサファイア基板等からなる基板1は、基板保持部材3の上面側において保持されることができる。本実施の形態においては、載置部3B〜3Dの各々に基板1が1つずつ載置され、載置部3Aには基板1は載置されていない。
基板保持部材3は、回転軸9(図1参照)が回転することによって矢印AR方向に回転するように構成されている。基板保持部材3の回転によって、基板保持部材3上に保持された3つの基板1も同方向に回転する。図示上の便宜のため、載置部3B〜3Dの内周と各基板1の外周との間には間隙が設けられているが、実際には、載置部3B〜3Dによって各基板1を保持可能なように、当該間隙は図示上の寸法より狭く設定される。
図1を再び参照して、基板保持部材3と対向するようにプレート12が固定される。プレート12には開口部13が設けられる。基板保持部材3の回転によって、各基板1および載置部3A(図2参照)は、開口部13の下方を順次通過する。開口部13の下方に、開口部13と各基板1および載置部3Aとが対向する部分として、測定位置30(図2も参照)が規定されている。
開口部13の上方に放射温度計2が固定される。放射温度計2は、測定位置30を挟んで基板保持部材3(または基板1)に対向する。開口部13の下方(測定位置30)を順次通過する各基板1および載置部3A(基板保持部材3)から放射される赤外線エネルギーは、開口部13を通して放射温度計2に到達する(矢印E参照)。
放射温度計2は、開口部13の下方(測定位置30)を通過する各基板1から放射され開口部13を通して放射温度計2に到達した赤外線エネルギーと、開口部13の下方(測定位置30)を通過する載置部3A(基板保持部材3)から放射され開口部13を通して放射温度計2に到達した赤外線エネルギーとをそれぞれ検出することができる。
ガス導入口11は、反応炉14の外部と内部とを連通している。ガス導入口11の下端は、基板保持部材3の中央部に対向している。ガス導入口11を通して、たとえば、III族元素を含むIII族系ガスとV族元素を含むV族系ガスとの混合ガス(反応ガス)が成長室14T内に導入される。
III族元素は、Ga(ガリウム)、Al(アルミニウム)またはIn(インジウム)などである。III族元素を含むIII族系ガスとしては、トリメチルガリウム(TMG)またはトリメチルアルミニウム(TMA)などの有機金属ガスを1種類以上含む。V族元素は、N(窒素)、P(リン)またはAs(ヒ素)などである。V族元素を含むV族系ガスとしては、アンモニア(NH)、ホスフィン(PH)またはアルシン(AsH)などの水素化合物ガスを1種類以上含む。
本実施の形態においては、たとえば、流量5sccmのTMG(Trimehtylgallium)、流量5SLMのアンモニア、および流量10SLMの水素からなる混合ガスが、ガス導入口11から成長室14T内に導入される。ガス排気部17は、接続管16および排ガス処理装置15を含む。接続管16に設けられた圧力調整用バルブ(図示せず)によって、成長室14T内の圧力が100Torrに設定される。
混合ガスが成長室14T内に導入される際、制御部6は、ヒーター5の温度がたとえば900℃〜1100℃となるように、ヒーター5の駆動量を調節する。ヒーター5の温度が900℃〜1100℃に到達してから約10分程度その状態が維持され、基板1および基板保持部材3の温度が安定するまで(定常状態となるまで)待機される。
図2を再び参照して、基板1および基板保持部材3の温度が定常状態となった後、基板保持部材3は、回転軸9からの動力を受けて15rpm(15回転/分=1回転/4秒)の角速度で矢印AR方向に回転する。
基板1を載置していない載置部3Aは、基板保持部材3の回転によって、4秒毎に測定位置30に到達する。基板1を載置している各載置部3B〜3Dも同様に、基板保持部材3の回転によって、4秒毎に測定位置30に到達する。
載置部3Aが測定位置30に最初に到達したときを時間の原点(t=0)とすると、載置部3Aは、0、4、8、12、・・・(t3A=4n:nは0および自然数)秒後に測定位置30に到達する。載置部3Bにおける基板1は、1、5、9、・・・(t3B=1+4n)秒後に測定位置30に到達する。載置部3Cにおける基板1は、2、6、10、・・・(t3C=2+4n)秒後に測定位置30に到達する。載置部3Dにおける基板1は、3、7、11、・・・(t3D=3+4n)秒後に測定位置30に到達する。
本実施の形態においては、基板保持部材3の回転によって、基板1が測定位置30に位置している状態と、基板1が測定位置30に位置していない状態とが実現されている。
(気相成長装置における基板温度測定方法)
図3および図4を参照して、気相成長装置100における基板温度測定方法として、放射温度計2の構成および動作フローについて説明する。図3に示すように、放射温度計2は、検出部2A、判定部2B、記憶部2C、および演算部2Dを含んでいる。
図4に示すように、検出部2Aは、測定位置30(図2参照)に位置する物体から放射される赤外線を検出(受光)する。検出部2Aは、検出した赤外線エネルギーのエネルギー値を測定する(動作ST1)。
検出部2Aによって測定された赤外線エネルギー(のエネルギー値)は、判定部2Bに入力される。判定部2Bは、予め定められた閾値に基づいて、測定された赤外線エネルギーの種別を判定する(動作ST2)。具体的には、検出部2Aによって検出された赤外線エネルギーが、基板1が測定位置30に位置している状態で基板1から放射された赤外線エネルギー(以下、第1赤外線エネルギーともいう)であるか、または基板1が測定位置30に位置していない状態で基板保持部材3(載置部3A)から放射された赤外線エネルギー(以下、第2赤外線エネルギーともいう)であるかが、判定部2Bによって判定される。
判定部2Bは、予め定められた閾値に限られず、上述の時間t3A,t3B,t3C,t3dに基づいて、測定された赤外線エネルギーの種別を判定してもよい。載置部3Aが測定位置30に最初に到達したときを時間から時間t3B,t3C,t3dが経過したときは、基板1が測定位置30に位置している。この場合、検出部2Aによって検出される赤外線エネルギーは、第1赤外線エネルギーとして判定される。載置部3Aが測定位置30に最初に到達したときを時間から時間t3Aが経過したときは、基板保持部材3(載置部3A)が測定位置30に位置している。この場合、検出部2Aによって検出される赤外線エネルギーは、第2赤外線エネルギーとして判定される。
赤外線エネルギーの種別が第1赤外線エネルギーであると判定された場合、そのエネルギー値は、演算部2Dに入力される(動作ST3A)。赤外線エネルギーの種別が第2赤外線エネルギーであると判定された場合、そのエネルギー値は、記憶部2Cに入力される(動作ST3B)。
演算部2Dは、第1赤外線エネルギーのエネルギー値が得られた後、記憶部2Cから第2赤外線エネルギーのエネルギー値の情報を取得する。演算部2Dは、第1および第2赤外線エネルギーのエネルギー値に基づいて、基板1の温度を算出するための演算を行なう(動作ST3C)(詳細は次述する)。その結果は、制御部6(図1および図3参照)等に出力される(動作ST4)。制御部6は、演算部2Dから取得した基板1の温度情報に基づいて、ヒーター5の温度を制御するように構成されてもよい(動作ST5)。
(放射温度計2における演算)
図5および図6を参照して、放射温度計2における演算について詳細に説明する。図5は、気相成長装置100において、基板1が測定位置30に位置している状態(t=t3B,t3C,t3d)を模式的に示す断面図である。図6は、気相成長装置100において、基板1が測定位置30に位置していない状態(t=t3A)を模式的に示す断面図である。図示上の便宜のため、図5および図6には、図1におけるプレート12および開口部13等を記載していない。
図5に示すように、サファイア基板等から構成される基板1は、基板保持部材3上において、ヒーター5によってたとえば約1000℃に加熱される。この状態で、基板1は測定位置30に到達する(図5に示す状態)。基板1の上方には、基板1に対向するように放射温度計2が固定されている。放射温度計2の測定波長は950nmに設定されている。
放射温度計2は、各赤外線エネルギーE1,E3,E5を検出する。赤外線エネルギーE1は、基板1の表面から放射され、放射温度計2に直接到達する波長950nmの赤外線エネルギーの値である。赤外線エネルギーE3は、基板保持部材3の表面から放射され、基板1を透過することによって放射温度計2に到達する波長950nmの赤外線エネルギーの値である。赤外線エネルギーE5は、ヒーター5の表面から放射され、基板保持部材3および基板1をそれぞれ透過することによって放射温度計2に到達する波長950nmの赤外線エネルギーの値である。
放射温度計2は、各赤外線エネルギーE1,E3,E5の各値を個別に検出することはできない。これらの各赤外線エネルギーE1,E3,E5の各値は合計され、総赤外線エネルギーE10(上述の第1赤外線エネルギーに対応)として放射温度計2に検出される。
ここで、基板1は、ヒーター5によって加熱されて昇温している。基板保持部材3も、ヒーター5によって加熱されて昇温している。基板1の温度よりも基板保持部材3の温度の方が高く、基板保持部材3の温度よりもヒーター5の温度の方が高い。各赤外線エネルギーE1,E3,E5の間には、赤外線エネルギーE1<赤外線エネルギーE3<赤外線エネルギーE5の関係が成立している。
上述のとおり、本実施の形態におけるヒーター5の材質には反射率の高いカーボンが含まれる。基板保持部材3の材質に石英が含まれる場合、波長950nmの赤外線エネルギーの基板保持部材3に対する透過率は90%以上となる。基板1の材質にたとえばサファイア基板が含まれる場合、波長950nmの赤外線エネルギーの基板1に対する透過率は約80%となる。総赤外線エネルギーE10は、基板保持部材3からの赤外線エネルギーE3およびヒーター5からの赤外線エネルギーE5の影響を大きく受けている。総赤外線エネルギーE10をそのまま演算したとしても、基板1の温度は正確には算出されない。本実施の形態においては、放射温度計2によって以下の演算処理が行なわれる。
波長950nmの赤外線エネルギーの基板1に対する透過率を透過率T1とする。波長950nmの赤外線エネルギーの基板保持部材3に対する透過率を透過率T3とする。総赤外線エネルギーE10の値は次の式1によって表される。
E10=(E5×T3×T1)+(E3×T1)+E1 ・・・(式1)
式1を変形すると、次の式1Aが得られる。
E10=T1×(E5×T3+E3)+E1 ・・・(式1A)
図6を参照して、基板1(図示せず)が測定位置30に位置していない状態においては、放射温度計2は、各赤外線エネルギーE3,E5のみを検出する。上述のとおり、赤外線エネルギーE3は、基板保持部材3の表面から放射され、基板1を透過することによって放射温度計2に到達する波長950nmの赤外線エネルギーの値である。赤外線エネルギーE5は、ヒーター5の表面から放射され、基板保持部材3および基板1をそれぞれ透過することによって放射温度計2に到達する波長950nmの赤外線エネルギーの値である。
これらの各赤外線エネルギーE3,E5の各値は合計され、総赤外線エネルギーE20(第2赤外線エネルギー)として放射温度計2に検出される。総赤外線エネルギーE20の値は次の式2によって表される。
E20=(E5×T3)+E3 ・・・(式2)
式2を上記の式1Aに代入すると、次の式3が得られる。
E10=T1×E20+E1 ・・・(式3)
式3を変形すると、次の式4が得られる。
E1=E10−T1×E20 ・・・(式4)
式4の総赤外線エネルギーE10は、基板1が測定位置30に位置している状態(図5に示す状態)において、放射温度計2が検出した値として得られることができる。式4の総赤外線エネルギーE20は、基板1が測定位置30に位置していない状態(図6に示す状態)において、放射温度計2が検出した値として得られることができる。式4の透過率T1(波長950nmの赤外線エネルギーの基板1に対する透過率)は、予め基板1の材質に基づいて得られることができる。
式4によれば、上述の総赤外線エネルギーE10,E20および透過率T1に基づいて、赤外線エネルギーE1(基板1の表面から放射され、放射温度計2に直接到達する波長950nmの赤外線エネルギーの値)が算出されることができる。算出された赤外線エネルギーE1は、シュテファン=ボルツマンの法則およびプランクの法則に基づいて、基板1の温度に換算される。当該換算によって、基板1の温度は正確に算出されることができる。
基板1が測定位置30に位置している状態(t=t3B,t3C,t3d)において、上述の総赤外線エネルギーE10が算出される。t=t3B,t3C,t3d時におけるそれぞれの総赤外線エネルギーE10の値が平均されてもよい。基板1が測定位置30に位置していない状態(t=t3A)において、上述の総赤外線エネルギーE20が算出される。基板保持部材3(図2参照)の回転によって、総赤外線エネルギーE10,E20が連続的に取得され、基板1の温度も連続的に(リアルタイムで)算出されることができる。
図4を再び参照して、上述のとおり、基板1の温度が連続的に算出されている状態で、ヒーター5の温度が制御されるとよい(動作ST5)。当該温度制御によって、所定の反応ガスが成長室14T(図1参照)内に導入され基板1に対して気相成長処理が行なわれている際(またはその前後)に、基板1の温度は所望の値に設定されることができる。基板1に対して、均一な成膜処理などが施されることが可能となる。
基板1の温度測定は、メンテナンス中に行なわれることが好ましいが、気相成長処理が行なわれている最中に実施されてもよく、気相成長処理が行なわれる前後の待機中に実施されてもよい。
図1を再び参照して、基板1に対する処理を終えた後、反応ガスは、接続管16を通して成長室14Tから排出される。反応ガスは、排ガス処理装置15によって無害化され、排出ライン18を通して外部に排出される。
(実施の形態の他の形態)
上述の実施の形態においては、構成部材4が基板保持部材3およびヒーター5を含んでおり、基板保持部材3とヒーター5とから放射される赤外線エネルギーに基づいて基板1の温度が算出される態様に基づいて説明した。構成部材4としては、基板保持部材3およびヒーター5に限られず、基板1の下方に配置されるものであって放射温度計2に到達する赤外線エネルギーを放射するものであれば、基板保持部材3のみであってもよく、他の部材(たとえば、ヒーター5から放射される熱を均一にする均熱板など)を含んでいてもよい。
上述の実施の形態においては、基板保持部材3の回転によって(図2参照)、基板1が測定位置30に位置している状態と、基板1が測定位置30に位置していない状態とが実現されている。これらの各状態は、成長室14T内において他の手段によって実現されてもよい。
上述の実施の形態においては、測定された基板1の温度情報は、ヒーター5の温度制御に活用されている。測定された基板1の温度情報は、ヒーター5の温度制御の他にも、反応ガスの導入量の制御や、成長室14T内の圧力の制御等に活用されてもよい。
(実施例)
図7を参照して、上述の実施の形態に係る構成に基づいて、波長950nmの赤外線エネルギーに対する透過率が73.4%のサファイア基板を用いて、制御部6によるヒーター5の設定温度を900℃として性能試験を行なった。その結果、構成部材4(基板保持部材3およびヒーター5)からの総赤外線エネルギーE20に基づいて算出した基板1の温度は756℃であった。基板1からの総赤外線エネルギーE10に基づいて算出した基板1の温度は750℃であった。
上記の結果と上記の式4とに基づいて基板1の温度を算出したところ648℃であった。同様の試験を複数回行なったところ、測定誤差は±1%(約0.7℃)以内であった。この結果から、本発明に基づく気相成長装置および基板温度測定方法によれば、基板1の温度が正確に測定されていることがわかる。なお、上記の測定誤差は、サファイア基板の透過率のばらつきに起因しているものと推察される。
以上、本発明に基づいた実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 基板、2 放射温度計、2A 検出部、2B 判定部、2C 記憶部、2D 演算部、3 基板保持部材、3A〜3D 載置部、4 構成部材、5 ヒーター、6 制御部、7,10 支持台、8 環状壁、9 回転軸、11 ガス導入口、12 プレート、13 開口部、14 反応炉、14T 成長室、15 排ガス処理装置、16 接続管、17 ガス排気部、18 排出ライン、30 測定位置、100 気相成長装置、AR,E 矢印、E1,E3,E5 赤外線エネルギー、E10,E20 総赤外線エネルギー、ST1,ST2,ST3A,ST3B,ST3C,ST4,ST5 動作。

Claims (5)

  1. 基板に対して気相成長処理を行なう気相成長装置であって、
    所定の測定位置を挟んで相互に対向するように配置された放射温度計および構成部材を備え、
    前記放射温度計は、
    前記基板が前記測定位置に位置している状態において、前記構成部材から前記基板を透過して前記放射温度計に到達する第1赤外線エネルギーを検出し、
    前記基板が前記測定位置に位置していない状態において、前記構成部材から前記放射温度計に直接到達する第2赤外線エネルギーを検出し、
    前記第1赤外線エネルギーおよび前記第2赤外線エネルギーに基づいて前記基板の温度を算出する、
    気相成長装置。
  2. 前記構成部材は、前記基板を加熱するヒーター部を含み、
    前記放射温度計が算出した前記基板の温度に基づいて、前記基板の温度が所望の値となるように前記ヒーター部を制御する制御部をさらに備える、
    請求項1に記載の気相成長装置。
  3. 前記構成部材は、前記基板を保持した状態で回転可能な基板保持部材を含み、
    前記基板保持部材の回転によって、前記基板が前記測定位置に位置していない状態と前記基板が前記測定位置に位置している状態とが切り替えられる、
    請求項1または2に記載の気相成長装置。
  4. 気相成長処理を行なう気相成長装置内に配置された基板の温度を測定する基板温度測定方法であって、
    前記気相成長装置内には、所定の測定位置を挟んで相互に対向するように放射温度計および構成部材が配置されており、
    前記測定位置に前記基板が配置されている状態で、前記構成部材から前記基板を透過して前記放射温度計に到達する第1赤外線エネルギーを前記放射温度計が検出する工程と、
    前記測定位置に前記基板が配置されていない状態で、前記構成部材から前記放射温度計に直接到達する第2赤外線エネルギーを前記放射温度計が検出する工程と、
    前記第1赤外線エネルギーおよび前記第2赤外線エネルギーに基づいて前記基板の温度を前記放射温度計が算出する工程と、を備える、
    基板温度測定方法。
  5. 前記構成部材は、前記基板を加熱するヒーター部を含み、
    前記放射温度計が算出した前記基板の温度に基づいて、前記基板の温度が所望の値となるように前記ヒーター部が制御される工程をさらに備える、
    請求項4に記載の基板温度測定方法。
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