以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明に従った成膜装置の実施の形態1を示す模式図である。図2は、図1に示した成膜装置のリアクタの模式図である。図1および図2を参照して、本発明による成膜装置を説明する。
図1および図2に示した成膜装置は、いわゆるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を実施する成膜装置であって、基板に対する成膜処理を行なうリアクタ3と、このリアクタ3へ成膜のための反応ガスを供給する反応ガス供給系統と、リアクタ3から成膜処理を実施した後の反応ガスなどを排出するための排気系統とからなる。反応ガス供給系統では、SiH4供給部7とNH3供給部5とH2/N2供給部6とがそれぞれマスフローコントローラ14を介して配管13に接続されている。配管13の一方端はリアクタ3に接続されている。また、上述したH2/N2供給部6、さらに原料シリンダ9〜12が配管15に接続されている。H2/N2供給部6はマスフローコントローラ14を介して配管15に接続されている。また、H2/N2供給部6は、原料シリンダ9〜12のそれぞれとマスフローコントローラ14を介して接続されている。原料シリンダ9はTMG(トリメチルガリウム)を供給するためのものである。また、原料シリンダ10はTMI(トリメチルインジウム)を供給するためのものである。また、原料シリンダ11はTMA(トリメチルアルミニウム)を供給するためのものである。また、原料シリンダ12はCp2Mg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)を供給するためのものである。
排気系統は、リアクタ3に配管により接続された排気部16を備える。排気部16としては、具体的に排気ポンプなどを用いることができる。
図2に示すように、リアクタ3は、反応ガスを流通させる流通路であるとともに、成膜処理を行なう処理室となるフローチャネル20と、フローチャネル20の底部において処理対象物である基板24を保持するためのサセプタと、このサセプタを介して基板24を加熱するためのヒータ25と、サセプタ23に設置された熱電対温度計27と、フローチャネル20の上壁に形成された凹部21内に配置されている放射温度計22と、放射温度計22、ヒータ25および熱電対温度計27と接続された制御部28とを備える。フローチャネル20の底壁には、開口部が形成されている。この開口部の内部には基板24を保持するためのサセプタ23が配置されている。サセプタ23の平面形状は円形状であり、その表面に基板24を保持するための凹部が形成されている。
また、サセプタ23において基板24が保持される表面とは反対側に位置する裏面側には、その中央部に筒状の回転軸26が配置されている。26の内周側には、サセプタ23を介して基板24の温度を測定するための熱電対温度計27が配置されている。サセプタ23は、回転軸26を中心として矢印36に示すように回転可能となっている。サセプタ23を回転させるため、図示しない駆動部材(たとえばモータなど)が回転軸26に接続される。また、サセプタ23の裏面側において、回転軸26と隣接する部分にはヒータ25が設置されている。このヒータ25により、サセプタ23を介して基板24が加熱される。
フローチャネル20の上壁であって、サセプタ23と対向する位置(より具体的にはサセプタ23上に保持される基板24と対向する位置、また別の観点から言えば、サセプタ23が回転軸26を中心として回転するときに基板24が移動する円周状の領域と対向する領域)には凹部21が形成されている。この凹部21の内部には放射温度計22が配置されている。放射温度計22と凹部21の側壁面との間には、シール材29が配置されている。このシール材29により放射温度計22はフローチャネル20の凹部21の側壁に接続固定されている。
なお、フローチャネル20の材質としては、石英、ステンレス鋼(SUS)、モリブデンなどの金属、あるいはその他基板24上における成膜処理に用いる雰囲気に対して耐食性を有する材質を用いることができる。また、成膜時の雰囲気ガスとフローチャネル20との反応を抑制するため、フローチャネル20の壁面を水などの冷却媒体で冷却してもよい。
次に、成膜装置1の動作を簡単に説明する。成膜装置1においては、リアクタ3においてヒータ25を制御することにより基板24の温度を所定の反応温度にまで上昇させる。また、フローチャネル20の内部の雰囲気圧力を所定の圧力に設定する。そして、反応ガス供給系から所定の反応ガス(ここではたとえば水素(H2)、TMGと水素との混合ガス、NH3と水素との混合ガスなど)を図2の矢印に示すようにフローチャネル20に流入させる。そして、これらの反応ガスを原料として基板24の表面上に所定の膜が形成される。その後、供給されたガスは矢印に示すようにフローチャネルから排出され、図1に示した排気部16に排出される。
本発明による成膜装置は、図2に示すように基板24の温度を測定するための温度測定部材として非接触の放射温度計22と、熱電対温度計27という2種類の温度計を備えている。本発明に従った成膜装置1では、これらの2種類の温度計を適宜使い分けることにより、温度制御の精度を向上させている。以下具体的に説明する。
図3は、図1および図2に示した成膜装置における成膜処理を説明するためのフローチャートである。図3を参照して、図1および図2に示した成膜装置における半導体装置の製造方法の一部である成膜方法を説明する。
図1および図2に示した成膜装置における成膜方法では、図3に示すようにまず基板準備工程(S100)を実施する。この工程(S100)においては、具体的にフローチャネル20内部のサセプタ23上に基板24を配置する。そして、当該サセプタ23をフローチャネル20内に配置した状態でフローチャネル20の内部が所定の圧力となるように、フローチャネル20の内部から雰囲気ガスを排気する。
次に、低温域昇温工程(S200)を実施する。この工程においては、具体的には図2に示した制御部28によってヒータ25を制御することにより、基板24の温度を上昇させる。このとき、サセプタ23は矢印36に示すように回転軸26を中心として回転運動させておいてもよいし、静止させておいてもよい。そして、この回転軸26の内部において、サセプタ23とは非接触の状態で保持されている熱電対温度計27から、温度の測定結果が制御部28に入力される。制御部28は、この熱電対温度計27からの測定結果に基づいてヒータ25を制御する。なお、ヒータ25としては、一般的な抵抗発熱線など任意の加熱部材を用いることができる。このようにして、基板24の温度を徐々に上昇させていく。
次に、基板温度が切換温度になったかどうかを判別する工程(S300)を実施する。この工程(S300)において、基板24の温度が切換温度(すなわち、温度の測定手段を低温用の熱電対温度計27から高温用の放射温度計22へと切換える基準温度)になったかどうかを制御部28において判断する。この工程(S300)においてNOと判断されれば上述した低温域昇温工程(S200)が継続される。一方、この工程(S300)においてYESと判断されれば、高温域昇温工程(S400)が実施される。
高温域昇温工程(S400)においては、基板24の温度測定手段が熱電対温度計27から放射温度計22へと切換えられる。そして、放射温度計22からの測定結果の出力に基づき、制御部28はヒータ25を制御する。このようにして、低温域(切換温度より低温の温度域)と高温域(切換温度より高温の温度域)とでそれぞれの温度域に適した温度測定部材を用いることにより、温度測定の精度を向上させることができる。
次に、高温域昇温工程(S400)により基板の温度が成膜処理を行なうための設定温度になった後、当該設定温度に基板24の温度を維持した状態で成膜処理を行なう成膜処理工程(S500)を実施する。この成膜処理工程(S500)においては、図2に示すようにフローチャネル20の内部に所定の反応ガスを流入させる。この結果、基板24の表面には所定の膜が形成される。
次に、基板24上に所定の膜厚の膜を形成することにより、成膜処理の終了条件が成立すると、反応ガスのフローチャネル20への流入を中止することにより、成膜処理工程(S500)が終了する。そして、高温域降温工程(S600)が実施される。この高温域降温工程(S600)においては、放射温度計22による温度の測定結果に基づいて基板24の温度変化を制御部28において監視する。
次に、基板温度が切換温度になったかどうかを判断する工程(S700)を実施する。この工程(S700)においてNOと判断されれば、上述した高温域降温工程(S600)が継続される。一方、この工程(S700)においてYESと判断されれば、基板24の温度を測定する測温部材を放射温度計22から熱電対温度計27へと切換える。そして、さらに基板24の温度を制御部28において監視しながら基板24を冷却する、低温域降温工程(S800)を実施する。
その後、基板24の温度が室温にまで低下した後、サセプタ23から基板24を取出す。このようにして、図1および図2に示した成膜装置における成膜処理を実施することができる。
次に、本発明による成膜装置の実施の形態1の変形例を以下説明する。図4は、図1および図2に示した本発明による成膜装置の実施の形態1の第1の変形例を説明するための模式図である。図4は、図2に対応し、成膜装置のリアクタを示している。図4を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態1の変形例を説明する。
図4に示したリアクタを有する成膜装置は、基本的には図1および図2に示した成膜装置と同様の構造を備えるが、リアクタ3における放射温度計22の配置が異なる。具体的には、図4に示したリアクタ3を有する成膜装置では、リアクタ3のフローチャネルの上壁において、サセプタ23の真上からずれた位置に斜め方向(サセプタ23の表面に面する方向)に凹部21が形成されている。つまり、この凹部21の延在方向がサセプタ23上に保持される基板24に向かうように、凹部21は形成される。そして、この斜めに形成された凹部21の内部に放射温度計22が配置される。放射温度計22の検出面も基板24に向かうように、放射温度計22の配置は決定されている。また、放射温度計22と凹部21の側壁との間を充填するようにシール材29が配置されている。そして、凹部21の内部には、図示しないパージガス供給部から窒素などのパージガスが供給されている。
このように放射温度計22の位置を、基板24の真上からずらすことにより、放射温度計22の周囲に窒素ガスなどのパージガスを流通させるような場合に、当該パージガスによる成膜処理に対する影響を低減することができる。また、図2に示したように基板24の真上に放射温度計22を設置するための凹部21を形成すると、この凹部21が形成されたことにより基板24上における雰囲気ガスの流速やガス分布などに影響が出る場合がある。また、この場合、凹部21を基板24の真上に形成することが、最終的には基板24の温度分布の揺らぎにも影響を与える可能性がある。
しかし、図4に示すように放射温度計22を設置するための凹部21を基板24の真上からずらした位置(基板24の真上以外の領域)に配置することによって、上述のような問題の発生する可能性をより低減することができる。この結果、基板24上に、膜質の安定した均一な膜を形成することができる。
図5は、図1および図2に示した本発明による成膜装置の実施の形態1の第2の変形例を説明するための模式図である。図5は図2に対応し、リアクタの構造を示す。図5を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態1の第2の変形例を説明する。
図5に示すように、本発明による成膜装置の実施の形態1の第2の変形例においては、リアクタ3が、チャンバ31と、このチャンバ31の内部に保持されるサセプタ23と、チャンバ31の上壁上に形成されたガス室33と、当該ガス室に原料ガスを供給するための配管32a、32bと、チャンバ31の内部の基板24と対向する部分にガス室33から反応ガスを供給するためのシャワープレート34と、サセプタ23を介して基板24を加熱するためのヒータ25と、サセプタ23に設置された熱電対温度計27と、チャンバ31の上壁に設置された放射温度計22と、放射温度計22、熱電対温度計27およびヒータ25と接続された制御部28とを備える。チャンバ31の内部には、基板24を保持するためのサセプタ23が配置されている。このサセプタ23の上部表面には基板24を保持するための凹部が形成されている。サセプタ23の平面形状は円形状である。また、サセプタ23の上壁と同一面を構成するようにチャンバ31の底壁面が配置されている。
サセプタ23の外周部の裏面(基板24を保持する上部表面とは反対側の裏面)にはサセプタ23を支持するとともにサセプタ23を回転させる際の回転軸となる支持回転部材35が配置されている。支持回転部材35は円筒形状である。サセプタ23の裏面には図2に示したリアクタ3の場合と同様にヒータ25が設置されている。また、サセプタ23の裏面の中央部には凹部が形成され、その凹部に先端部が挿入された状態で熱電対温度計27が設置されている。熱電対温度計27とサセプタ23とは非接触の状態となっている。これは、サセプタ23が矢印36に示すように回転する一方、熱電対温度計27はチャンバ31に対して固定されているため、当該回転時、熱電対温度計27とサセプタ23との接触部において熱電対温度計27やサセプタ23が損傷することを防止するためである。
チャンバ31の上壁においてサセプタ23と対向する部分にはシャワープレート34が配置されている。そして、このシャワープレート34上に反応ガスを一時止めておくバッファとしてのガス室33が形成されている。シャワープレート34には、ガス室33から反応ガスをチャンバ31内部に供給するための複数のガス供給孔37が形成されている。当該ガス室33に反応ガスを供給するため、ガス室33に配管32a、32bが複数箇所で接続されている。具体的には、配管32a、32bのそれぞれから複数箇所において枝分かれした配管が、ガス室33の上壁を貫通してガス室33の内部にまで到達している。配管32a、32bはたとえば図5に示すように原料ガスであるTMGと水素との混合ガスあるいはアンモニア(NH3)と水素との混合ガスを供給するものである。
サセプタ23上において基板24と対向する領域において、シャワープレート34の一部には、放射温度計22を設置するための凹部21が形成されている。凹部21の内部にその先端部が挿入された状態で放射温度計22が設置されている。放射温度計22と凹部21の側壁との間はシール材29によって接続固定されている。
図5からもわかるように、熱電対温度計27、放射温度計22、ヒータ25はそれぞれ制御部28に接続されている。制御部28は、放射温度計22または/および熱電対温度計27からの出力に基づいてヒータ25を制御することができる。ここで、チャンバ31の材料としては、ステンレス鋼(SUS)、モリブデンなどの金属、あるいは石英、その他成膜処理を行なう際の雰囲気ガスに対して耐食性を有する材質であれば任意のものを用いることができる。また、チャンバ31は、成膜時の雰囲気ガスとの反応を抑えるため水やその他の冷却媒体によって冷却されることが好ましい。
図5に示したリアクタ3においては配管32a、32bを介してガス室33に反応ガスが一旦供給され、このガス室33からシャワープレート34のガス供給孔37を介してチャンバ31の内部に反応ガスが供給される。ガス室33を介して反応ガスをチャンバ31の内部に供給するので、シャワープレート34のガス供給孔37からチャンバ31の内部に流入する反応ガスの流速や成分の均一性をより向上させることができる。そして、この状態で、基板24の表面に所定の膜を形成する成膜処理が行なわれる。その後、未反応の反応ガスなどは、図5の矢印に示すようにチャンバ31の内部から排気される。また、成膜処理の際には、矢印36に示すようにサセプタ23が回転する。
(実施の形態2)
図6は、本発明による成膜装置の実施の形態2を説明するための模式図である。図6を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態2を説明する。なお、図6は図2に対応し、成膜装置のリアクタ3を示している。
図6に示すリアクタ3を有する成膜装置は、基本的には図1および図2に示した成膜装置と同様の構造を備えるが、リアクタ3における放射温度計22が配置された部分の構造が異なる。具体的には、図6に示したリアクタ3においては、放射温度計22と対向するフローチャネル20の上壁には開口部41が形成されている。この開口部41を塞ぐように可動部材42が配置されている。なお、この開口部41の平面形状は任意の形状を採用できるが、たとえば開口部41の平面形状として円形状、四角形あるいは五角形などの多角形状とすることができる。また、可動部材42は、開口部41の内部に挿入可能な部分と、当該部分上に接続され、可動部材42を開口部41に挿入したときにフローチャネル20の上壁上において開口部41の外側へと延在するフランジ部とを有している。
この可動部材42は、駆動部43とシャフト44により接続されている。駆動部43は、シャフト44を移動させることにより、可動部材42を矢印45に示すように移動させることができる。この結果、可動部材42が移動することによって、開口部41から可動部材42が取出された状態になると、放射温度計22が基板24の表面温度を測定することが可能になる。また、可動部材42が開口部41に嵌め込まれた状態になると、可動部材42の下部表面とフローチャネル20の上壁の内周表面とはほぼ同一の面を構成するようになっているため、可動部材42によりフローチャネル内に流通する反応ガスの流れなどの成膜条件に悪影響を与える可能性を低減できる。また、このように放射温度計22をフローチャネル20の内部から可動部材42によって隔離することができるので、本発明の実施の形態1における成膜装置のように放射温度計22が絶えずフローチャネル20の内部の反応処理を行なう空間に露出した状態となっている場合より、放射温度計22の表面に不要な膜が形成されるといった問題の発生確率を低減できる。
また、可動部材42、放射温度計22、駆動部43を囲むように、フローチャネル20の上壁の上面には筒状の保持部材50が接続されている。保持部材50の材料としてはフローチャネル20の材料と同様の材料を用いることができる。保持部材50の上部開口部を塞ぐように、シール材29が配置されている。シール材29には開口部(図示せず)が形成され、放射温度計22が当該開口部に挿通されるように配置されている。そして、シール材29において保持部材50の内壁と対向する端面には溝51が形成されている。当該溝51の内部には気密性を高めるためのOリング52が配置されている。さらに、保持部材50の側壁を貫通するようにパージガスの供給配管53が設置されている。供給配管53は図示しないパージガスのタンクに流量制御装置を介して接続されている。パージガスとしては窒素やその他の不活性ガスを用いることができる。
放射温度計22とフローチャネル20の内部との隔離を可能にする機構としては、図6に示した構造の他に以下に説明するような変形例が考えられる。以下説明する。
図7は、図6に示した本発明による成膜装置の実施の形態2の第1の変形例を説明するための模式図である。図7を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態2の第1の変形例を説明する。なお、図7は図6に対応し、成膜装置のリアクタを示す模式図である。
図7に示すように、本発明による成膜装置の実施の形態2の第1の変形例においては、リアクタ3の構造は図6に示したリアクタ3の構造と基本的に同様であるが、可動部材42の移動方法が異なっている。具体的には、フローチャネル20の上壁に形成された開口部41に隣接するように、フローチャネル20の上壁の外周表面には可動部材42をスライドさせるための凹部48が形成されている。可動部材42は、矢印45に示すようにスライド可能となっている。可動部材42は、駆動部43とシャフト44を介して接続されている。この駆動部43がシャフト44を駆動させることにより、可動部材42は矢印45に示す方向に移動することができる。
このようにしても、図6に示したリアクタを有する成膜装置と同様に、放射温度計22をフローチャネル20の内部から隔離することができる。また、図6に示した成膜装置と同様に、可動部材42を間欠的に開閉することにより、放射温度計22がフローチャネル20の内部から隔離された状態から所定の時間だけ開口部41を開放して基板24の温度を放射温度計22によって測定可能な状態へ、さらに基板24の温度を放射温度計22によって測定した後再び放射温度計22をフローチャネル20の内部から隔離した状態へと装置の状態を変更することができる。
また、図7に示したリアクタの可動部材42の駆動部43の機構は、可動部材42を矢印45に示したように直線状に前進後退させるという比較的単純な動作を実現できればどのような機構を採用してもよい。そのため、可動部材42を移動させるための駆動部43の機構としては図6に示したリアクタの場合よりもより単純な機構を用いることができる。つまり、駆動部43の構造などを簡略化することができるので成膜装置の製造コストを低減できる。但し、図7に示した成膜装置では、図6に示した成膜装置とは異なり、可動部材42が閉状態となった場合であっても、可動部材42の下部表面とフローチャネル20の上壁の内面とは同一面上に位置することにはならない。すなわち、可動部材42が閉状態となった場合であってもフローチャネル20の上壁においては開口部41の部分に浅い凹部が形成された状態となっている。そのため図6に示したリアクタ3の場合よりもフローチャネル20内の反応ガスの流れなどに開口部41や可動部材42が影響を与える可能性が高い。なお、図6に示したリアクタ3によっては、このような問題は発生しないものと考えられる。
図8は、本発明による成膜装置の実施の形態2の第2の変形例を説明するための模式図である。図8を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態2の第2の変形例を説明する。なお、図8は図6に対応し、成膜装置を構成するリアクタの構成を示している。
図8に示すように、成膜装置のリアクタ3は基本的には図6に示したリアクタ3と同様の構造を備えるが、可動部材42の駆動部43の構造が異なっている。具体的には、図8に示したリアクタ3においては、可動部材42が駆動部43とシャフト44により接続されており、当該シャフト44が矢印46に示すように回転する。この結果、可動部材42がシャフト44との接続点を中心として矢印45に示すように回転運動する。このようにして可動部材42により開口部41の開状態および閉状態を切換えることができる。
このような構成とすれば、図7に示したリアクタの場合よりもさらに可動部材42の駆動部の構成を簡略化することができる。すなわち、たとえば駆動部43としてステッピングモータやあるいはシャフト44を回転運動するためのシリンダなど比較的簡単な装置構成を採用することができる。なお、図8に示したリアクタ3において、図7に示したリアクタ3と同様に開口部41に隣接して凹部を形成し、当該凹部の内部で可動部材42が回転してもよい。
図9は、本発明による成膜装置の実施の形態2の第3の変形例を説明するための模式図である。図9を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態2の第3の変形例を説明する。なお、図9は図6に対応し、成膜装置を構成するリアクタの構造を示している。
図9に示すように、本発明による成膜装置の実施の形態2の第3の変形例におけるリアクタ3は、基本的には図8に示したリアクタ3と同様の構造を備えるが、可動部材42と駆動部43との接続部の構造が異なっている。具体的には、図9に示したリアクタ3においては、駆動部43と可動部材42とが、2つのジョイント部47を介して接続された3本のシャフト44を介して接続されている。ジョイント部47はシャフト44の矢印46に示すような回転運動を下流側に接続された他のシャフト44へと伝達可能な構成であればどのようなジョイント構造を採用してもよい。このようにすれば、駆動部43を可動部材42の真上の領域に設置する必要がないため、駆動部43の配置や放射温度計22の配置に関する自由度を大きくすることができる。
次に、図6に示した本発明による成膜装置の実施の形態2における成膜処理工程を説明する。なお、以下説明する成膜処理工程は、基本的には図7〜図9に示した第1〜第3の変形例においても同様に適用可能である。
図10は、本発明による成膜装置の実施の形態2における成膜処理工程を説明するためのフローチャートである。なお、本発明による成膜装置の実施の形態2における成膜方法自体は、図3に示した本発明による成膜装置の実施の形態1における成膜方法と基本的に同様であるが、図3における成膜処理工程(S500)の内容が異なっている。以下ではこの成膜処理工程(S500)の具体的な内容について説明する。
図6に示した本発明による成膜装置の実施の形態2における成膜処理では、本発明による成膜装置の実施の形態1における成膜処理の場合と同様に、図3に示した基板準備工程(S100)、低温域昇温工程(S200)、基板温度が切換温度になったかどうかを判別する工程(S300)、そして当該工程(S300)においてYESと判断された後に実施される高温域昇温工程(S400)が順次実施される。なお、高温域昇温工程(S400)では、図6に示された可動部材42を開口部41上から後退させて、開口部41を開状態としている。この状態で、放射温度計22により基板24の温度を測定する。そして、その次に実施される成膜処理工程(S500)においては、図10に示すように、まず成膜処理の温度条件が成立したかどうかを判別する工程(S510)が実施される。この工程(S510)においてNOと判断されれば、当該温度条件が成立するまでこの工程(S510)が繰返される。そして、成膜処理の温度条件が成立したときには、工程(S510)においてYESと判断され、次の工程に進む。次の工程としては、可動部材を閉じる工程(S520)を実施する。この工程においては、高温域昇温工程(S400)において放射温度計22(図6参照)を用いて基板24の温度を測定しているため、可動部材42が後退した状態(開口部41を開状態とするべく開口部41を塞ぐ位置から後退した状態)となっていたものを、開口部41を塞ぐように可動部材42を移動させる。具体的には、制御部28によって駆動部43を制御することにより、可動部材42を開口部41上に(開口部41を塞ぐように)移動させる。この結果、たとえば図6に示すように可動部材42によって開口部41が塞がれた状態となる。
この後、成膜処理を実施する工程(S530)を実施する。具体的には、フローチャネル20の内部に所定の反応ガスを供給することによって、基板24の表面に所定の膜を形成する。
次に、成膜終了条件が成立したかどうかを判別する工程(S540)を実施する。この工程(S540)においては、たとえば処理開始時間からのトータルの成膜時間が基準値に到達したかどうかによって所定の厚みの膜の形成が終了したかどうかを判別する、あるいは基板24の表面を非接触の任意の方法で測定することにより、形成された膜厚を実測することによって、形成された膜の厚みが所定の膜厚となっていることを確認したことを条件に所定の厚みの膜の形成が終了した(成膜処理条件が成立した)と判断してもよい。そして、この工程(S540)においてNOと判断されている場合には、上述した成膜処理を実施する工程(S530)を継続する。一方、工程(S540)においてYESと判断された場合には、成膜処理を終了する工程(S550)を実施する。具体的には、フローチャネル20の内部に反応ガスを供給することを停止するといった操作を行なう。次に、可動部材を開ける工程(S560)を実施する。この結果、放射温度計22がフローチャネル20の内部と繋がった状態になる。このようにして、図3に示した成膜処理工程(S500)を実施することができる。
このように、成膜処理を実施する工程(S530)を実施する際には可動部材42によって開口部41が閉じた状態となっているので、放射温度計22がフローチャネル20の内部に面して露出している状態(すなわち開口部41が開状態)のときのように、開口部41が開状態であることによって反応ガスの流れや温度条件などが影響を受けることはない。このため、成膜処理を実施する工程(S530)における成膜条件をより安定なものとすることができる。この結果、基板24上により優れた膜質の膜を形成することができる。
図11は、図10に示した成膜処理工程の第1の変形例を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態2における成膜処理の第1の変形例を説明する。
上述した成膜処理の場合と同様に、まず図3に示した基板準備工程(S100)から高温域昇温工程(S400)までを順次実施する。基板準備工程(S100)では、サセプタ23の凹部(ウェハポケット部)にたとえばGaN基板を設置する。そして、フローチャネル内部の圧力を減圧する。たとえば、フローチャネル内部の圧力を100Torr程度にしてもよい。また、低温域昇温工程(S200)では、熱電対温度計27でヒータ25を制御しながら、GaN基板温度をたとえば室温から500度まで昇温する。昇温時間はたとえば5分程度とすることができる。次に、基板温度が切換温度になったかどうかを判別する工程(S300)を実施する。具体的には、基板24の温度が500度になっているかどうかを判断し、YESであれば高温域昇温工程(S400)を実施する。当該工程(S400)では、可動部材42を移動させて開口部41を開状態とする。そして、放射温度計22を用いた温度制御を行ないながら、さらにGaN基板の昇温を行なう。なお、放射温度計22の周囲についてはNH3などのパージガスを供給してもよい。そして、この工程(S400)では、たとえば1100度(処理温度)まで所定の時間(たとえば5分)で基板温度を昇温する。
次に、図10に示した成膜処理と同様に成膜処理の温度条件が成立したかどうかを判別する工程(S510)を実施する。当該工程(S510)において成膜処理の温度条件が成立したと判断された場合に可動部材を閉じる工程(S520)を実施する。ここまでは図10に示した工程と同様である。
次に、熱電対温度計の出力に基づく温度制御を開始する工程(S570)を実施する。ここでは、上述したように可動部材42が開口部41上に移動して開口部41が閉じた状態となることにより、放射温度計22からの基板24の温度の測定結果が得られなくなるため、成膜処理中の温度条件については熱電対温度計27(図6参照)からの出力を用いるようにしている。なお、成膜処理の温度条件が成立した後は、基本的に温度条件はほぼ一定に保たれるため、サセプタ23に対して非接触に設置されている熱電対温度計27の出力によっても十分な制御を行なうことができる。また、図6などからも分かるように熱電対温度計27はサセプタ23の裏面側に配置されており、成膜処理の雰囲気に直接的には晒されない。そのため、成膜処理時に熱電対温度計27が当該雰囲気により損傷を受ける、あるいは熱電対温度計27の表面に不要な膜などが形成されることはないので、この点からも成膜処理時に安定して熱電対温度計27からの測定結果を得ることができる。
次に、図10に示した成膜処理工程と同様に成膜処理を実施する工程(S530)、成膜処理条件が成立したかどうかを判別する工程(S540)、当該工程(S540)においてYESと判断された場合に成膜処理を終了する成膜処理終了工程(S550)、可動部材を開ける工程(S560)までを実施する。具体的には、工程(S530)において、たとえば熱電対温度計の出力に基づいて基板24の温度を1100度に保ちつつ、反応ガス(TMGとNH3)を1時間フローチャネルに流す。この結果、GaN基板上にGaN膜が形成される。そして、工程(S540)においてYESと判断されると、工程(S550)において反応ガス(TMG)の供給を停止する。そして、工程(S560)として可動部材42を開口部41から後退させ、開口部41を開状態とする。
その後、それまで熱電対温度計27の出力に基づいて温度制御を行なっていた状態から、放射温度計22の出力に基づいて温度制御を行なうべく、放射温度計22の出力に基づく温度制御を開始する工程(S580)を実施する。このようにして、成膜処理工程(S500)(図3参照)を実施できる。
その後、図3に示したように高温域降温工程(S600)を実施する。具体的には500度まで5分で基板温度を低下させる。そして、基板温度が切換温度になったかどうかを判断する工程(S700)において、基板温度が切換え温度(500度)になったと判断されると、NH3の供給を停止する。その後、低温域降温工程(S800)を実施する。具体的には、熱電対温度計からの出力を温度制御に用いながら、室温までたとえば5分で基板温度を低下させる。その後、フローチャネル内部の圧力を常圧に戻し、基板を取出す。
図12は、本発明による成膜装置の実施の形態2における図10に示した成膜処理工程の第2の変形例を説明するためのフローチャートである。図12は図10に対応し、成膜処理工程の詳細な内容を示したものである。図12を参照して、本発明による成膜装置の実施の形態2による成膜方法の第2の変形例を説明する。
まず、図11を参照しながら説明した場合と同様に、図3に示した基板準備工程(S100)〜高温域昇温工程(S400)までを実施する。さらに、図12に示すように、成膜処理の温度条件が成立したかどうかを判別する工程(S510)、当該工程(S510)においてYESと判断された場合に可動部材を閉じる工程(S520)、熱電対温度計27の出力に基づく温度制御を開始する工程(S570)までを、図11に示した成膜処理工程と同様に実施する。そして、成膜処理を実施する工程(S530)を実施するとともに、所定のタイミングで可動部材を開閉する工程(S590)および放射温度計からの出力により温度データを補正する工程(S595)を実施する。上述した工程(S590)においては、たとえば図6に示した駆動部43を制御部28により制御することにより、可動部材42を開口部41に挿入された状態から一定時間だけ後退させて開口部41を開状態とする。この状態で、放射温度計22により基板24の温度を測定する。その後、すぐに制御部28により駆動部43を制御することにより可動部材42を開口部41へと再び挿入する。そして、工程(S595)では、このようにして得られた放射温度計22からの出力(基板24の温度の測定データ)を用いて、熱電対温度計27からの出力(基板24の温度の測定データ)を補正する。補正の方法としては、たとえば放射温度計22により基板24の温度を測定した時点での熱電対温度計27からの出力に基づく基板24の温度の測定値を、放射温度計22からの出力に基づく基板24の温度の測定値に修正し、その後は当該修正した後の基板24の温度に対する変化温度を熱電対温度計27からの出力から決定する、といった手法を用いてもよい。もちろん、温度の補正の方法としては他の手法を用いてもよい。
そして、成膜処理条件が成立したかどうかを判別する工程(S540)を図11に示した工程の場合と同様に実施する。この工程(S540)において成膜処理条件が成立したと判別されない間(工程(S540)においてNOと判断されている間)は、所定の間隔を空けて上記工程(S590)および工程(S595)が成膜処理の実施とともに繰返し行なわれる。
そして、工程(S540)においてYESと判断された場合には、図11に示した工程と同様に成膜処理終了工程(S550)、可動部材を開ける工程(S560)、放射温度計の出力に基づく温度制御を開始する工程(S580)が順次実施される。
このように、基本的には熱電対温度計の出力に基づいて温度制御を行ないつつ成膜処理を実施する場合であっても、間欠的に可動部材を開閉することによって放射温度計による基板24の温度測定を実施する。この結果、放射温度計22からの温度の測定出力に基づいて、成膜処理時の温度制御の温度データを補正することができるので、成膜処理時における温度の精度を向上させることができる。
(実施の形態3)
図13は、本発明による半導体装置の実施の形態3であって、ラピッドサーマルアニール装置(以下アニール装置ともいう)を示す模式図である。図13を参照して、本発明によるアニール装置を説明する。図13に示したように、アニール装置は、基本的には図4に示したリアクタと類似の構造を備えるが、フローチャネル20の上壁においてサセプタ23と対応する面に窓部材39を介して基板加熱用のランプ38が複数個配置されている点、図4のヒータ25が無い点が異なる。フローチャネル20の内部には、矢印に示すように雰囲気ガスを流通させることができる。このような構成のアニール装置においても、本発明による成膜装置の実施の形態1と同様に、加熱の低温時と高温時とにおいて熱電対温度計27と放射温度計22とを使い分けることにより温度の制御精度を向上させることができる。なお、ランプ38はサセプタ23の裏面側に配置されていてもよい。この場合、サセプタ23の裏面をランプ38により加熱することにより、間接的にサセプタ23上に搭載された基板を加熱することになる。
また、上述したアニール装置においては、本発明の実施の形態2に示した可動部材42を備える機構を適用してもよい。このようにしても、高温でのアニール処理時において放射温度計22が配置された部分の構造による温度制御への影響を低減することができる。
図13に示したアニール装置によるアニール工程としては、基本的に本発明の実施の形態1および実施の形態2において説明した成膜処理と同様の制御を適用できる。具体的には、図3に示した成膜処理において成膜処理工程(S500)に代えてアニール処理工程を実施すればよい。また、図10〜図12に示した成膜処理工程の詳細を説明するフローチャートにおいては、成膜処理を実施する工程(S530)に代えてアニール処理を実施する工程を、また、成膜処理条件が成立したかどうかを判別する工程(S540)に代えてアニール時間が所定の時間に到達したかどうかを判別する、アニール終了条件が成立したかどうかを判別する工程を、また、成膜処理終了工程(S550)に代えてアニール処理終了工程をそれぞれ実施すればよい。
本発明をランプアニール装置に適用した場合についても、同様に温度制御の精度向上効果を検証すべく、以下のような実験を行なった。
(本発明例)
本発明に従ったランプアニール装置を準備した。具体的には、本発明に従ったランプアニール装置は、チャンバと、ウェハ保持と均熱のためのカーボン製SiCコートサセプタと、サセプタの下部に位置するランプヒータで構成される。また、当該ランプアニール装置では、チャンバの上壁(上部ガス流入面)の一部には、窓(開口部)を設けて放射温度計を設置した。また、サセプタの裏面側の一部を掘り込み、熱電対温度計を設置した。なお、放射温度計を設置した部分の構造および熱電対温度計を設置した部分の構造は、上記実施例1での本発明による成膜装置における当該構造と同様とした。
次に、このようなランプアニール装置にGaN基板をセットした。具体的には、サセプタの上部表面に形成された凹部(ウェハポケット部)にGaN基板を設置した。そして、まず熱電対温度計でランプヒータを制御し、GaN基板温度を上昇させた。この状態で、GaN基板の温度を熱電対温度計の読み値にて500度まで上昇させた。その後、シャッタを開けた。このようにして、放射温度計による基板の温度測定を開始した。そして、放射温度計による測定に基づいてランプヒータを制御しながら、放射温度計の読み値にて700度まで基板温度を上昇させた。そして、温度が700度の状態で1分間保持した。その後、放射温度計の読み値にて500度まで温度を下げた後に、熱電対温度計によるランプヒータ制御に切り替え、室温まで基板温度を下げた。このように本発明を用いたヒータ制御を行なった場合、低温領域、成長温度領域の両者において安定した温度プロファイルが得られ、特に成長温度領域では基板温度の変化を±1度以内に抑えることができた。
(比較例)
一方、比較例としては、放射温度計のみを用いて上記プロセスを行なった。この場合、低温領域(500度以下の温度領域)において放射温度計の読み値(出力)が安定しないためランプヒータの制御が安定しなかった。そのため、低温領域(500度以下の温度領域)では予期しないプロセスが行なわれた。
また、他の比較例として、熱電対温度計のみを用いてランプヒータを制御しながら上記プロセスを行なった。低温領域については、本発明例と同様に比較的安定して温度測定およびランプヒータの制御を実施できた。一方、高温領域では、以下のような問題があった。すなわち、熱電対温度計のみにてランプヒータを制御したときの熱電対温度計による温度プロファイルは、上述した高温領域において、元来の応答速度の遅さに加えて、基板からサセプタを介し、さらにサセプタに対しても非接触である熱電対温度計を用いるので、実際の基板温度からはタイムラグや誤差があると思われる。このため、当該熱電対温度計からの出力を用いたランプヒータの制御では遅れが発生し、結果的にヒータ制御が遅れ、±3度の振動を繰返した。
次に、上記の実施の形態および実施例と重複するものもあるが本発明の実施例を羅列的に挙げて説明する。
この発明に従った半導体装置の製造方法は、処理対象物を加熱した状態で処理を行なう半導体装置の製造方法であって、以下の工程を備える:低温用測温部材(熱電対温度計27)を用いて、半導体装置を構成するべき処理対象物(基板24)の温度を測定しながら、処理対象物を加熱する工程(低温域昇温工程(S200))、処理対象物(基板24)の温度が基準値に達したとき、処理対象物の温度を測定する部材を低温用測温部材(熱電対温度計27)から高温用測温部材(放射温度計22)に切換える工程(高温域昇温工程(S400))、放射温度計22を用いて基板24の温度を測定しながら、基板24を処理温度まで加熱する工程(高温域昇温工程(S400))、基板24の温度が、処理温度になった状態で、基板24の処理を行なう処理工程(成膜処理工程(S500))。
この場合、低温域と高温域とで測温部材(温度計)の種類を切換えているので、測温部材の種類を適宜選択することによりそれぞれの温度域において優れた精度で温度測定を行なうことができる。この結果、温度の測定データの精度を向上させることができる。このため、当該測定データを用いた処理条件の調整を確実に行なうことができるので、処理の精度や質が温度の測定データの誤差などに起因して劣化することを防止できる。
上記半導体装置の製造方法において、低温用測温部材は熱電対温度計27であり、高温用測温部材は放射温度計22であってもよい。熱電対温度計27は、処理対象物を保持するサセプタ23に設置されていてもよい。放射温度計22は、処理室(フローチャネル20)の壁に形成された凹部21に配置されていてもよい。サセプタ23は移動可能であってもよく、熱電対温度計27はサセプタ23と非接触の状態で配置されていてもよい。
この場合、放射温度計22は比較的高温域での応答速度が速くかつ測定精度が高い。また、熱電対温度計27は低温域での測定データの安定性や精度に優れる。また、放射温度計22は処理対象物である基板24の表面を直接観察することになるので、この点からも高温域での温度測定精度および応答速度の向上に有利である。このように、それぞれの温度域に適した温度計を使い分けることで、広い温度域において高い精度での温度測定が可能になる。
上記半導体装置の製造方法において、処理工程(成膜処理工程(S500))では、図10や図11に示すように、高温用測温部材(放射温度計22)が処理対象物としての基板24の処理を行なう処理室(フローチャネル20)から隔離された状態で、基板24の処理が行なわれてもよい。
この場合、基板24に対する処理時に放射温度計22の表面が処理雰囲気に触れることを防止できる。このため、放射温度計22が当該処理によりダメージを受けることを防止できる(たとえば処理として成膜処理を行なう場合、放射温度計22の表面に膜が形成されることを防止できる)。したがって、そのようなダメージに起因した放射温度計22のメンテナンスを頻繁に行なう必要が無い。このため、上記メンテナンスに起因して半導体装置の製造効率が低下することを防止できるので、結果的に半導体装置の製造コストの増大を抑制できる。
上記半導体装置の製造方法では、図10〜図12に示した可動部材を閉じる工程(S520)のように、高温用測温部材(放射温度計22)と処理室(フローチャネル20)との間をつなぐ開口部41を閉じるように可動部材42(シャッタ)が開口部41を塞ぐことにより、高温用測温部材(放射温度計22)が処理室(フローチャネル20)から隔離されていてもよい。
この場合、図6〜図9に示すような、可動部材42を移動させて開口部41を塞ぐという比較的簡単な機構により、本発明による半導体装置の製造方法を実現できる。また、処理時には基板24の温度条件をほぼ一定にしておく場合、加熱部材(ヒータ25)への制御部28からの制御量(たとえば投入電流値など)を一定にするなどの対応により基板24の温度条件を容易に所定の範囲内に収めることができる。したがって、高温用測温部材(放射温度計22)による測温を行なわない状態でも十分処理を行なうことができる。
なお、処理雰囲気から常に高温用測温部材(放射温度計22)を分離する方法として、石英などの赤外線を透過するガラスにより窓を形成し、当該窓を介して処理室の内部の処理対象物(基板24)に対向するように高温用測温部材(放射温度計22)を配置することも考えられる。しかし、この場合には処理による堆積物が窓を構成するガラス表面に付着する。この結果、ガラスでの赤外線の透過が妨げられるので、放射温度計22において次第に正確な測温が難しくなる。このため、頻繁に窓などのメンテナンスが必要になるので、上述した窓を形成する方法は本発明よりもランニングコストが高くなる。
上記半導体装置の製造方法において、成膜処理工程(S500)では、図11や図12の工程(S520)〜工程(S560)に示すように、低温用測温部材(熱電対温度計27)を用いて処理対象物(基板24)の温度を測定してもよい。
この場合、図3の高温域昇温工程(S400)のように、成膜処理工程(S500)を実施可能な高温の温度条件が成立するまでは高温用測温部材(放射温度計22)を用いているので、所定の温度にまで正確に基板24を加熱している。そのため、実際の成膜処理工程(S500)において、高温域での温度検出精度や応答性において放射温度計22より劣るような低温用測温部材(熱電対温度計27)を用いても、当該基板24の温度の変動をある程度の精度で判断できる。つまり、熱電対温度計27を用いて、十分な精度の温度制御が可能になる。
上記半導体装置の製造方法において、成膜処理工程(S500)は、図12に示すように、高温用測温部材(放射温度計22)と処理室(フローチャネル20)との間を隔離するために閉じられている可動部材42を間欠的に開閉し、可動部材42が開状態であるときに処理対象物(基板24)の温度を高温測定部材(放射温度計22)により測定する工程(所定のタイミングで可動部材を開閉する工程(S590))を含んでいてもよい。
この場合、高温用測温部材としての放射温度計22は間欠的に処理雰囲気に晒されるので、常時処理雰囲気に放射温度計22が晒されている場合に比べて処理雰囲気による放射温度計22に対するダメージを少なくできる。このため、放射温度計22のメンテナンスの頻度をある程度少なくできる。また、放射温度計22により処理対象物としての基板24の温度を間欠的にでも正確に測定できるので、当該測定結果を制御に反映させることにより、処理時の基板24の温度制御の精度を向上させることができる。
上記半導体装置の製造方法において、成膜処理工程(S500)は、図12に示すように、可動部材42が開状態であるときに高温用測温部材(放射温度計22)により測定された温度データに基づいて、成膜処理工程(S500)における処理対象物(基板24)の処理条件を調整する工程(放射温度計からの出力により温度データを補正する工程(S595))を含んでいてもよい。
この場合、高温用測温部材としての放射温度計22によって処理時に一度も測温を行なわない場合より、処理対象物としての基板24の処理条件(たとえば温度条件)の精度を向上させることができる。
上記半導体装置の製造方法では、成膜処理工程(S500)において、処理対象物(基板24)の処理として有機金属化学気相成長法を用いて処理対象物(基板24)の表面に膜を形成してもよい。ここで、有機金属化学気相成長法では、形成する膜の組成などの制御を行なうために非常に細かな温度制御を行なう必要がある。したがって、本発明による半導体装置の製造方法によれば、広い温度域で比較的高い精度の温度測定を行なうことができるので、上述のような基板24の温度制御について、温度制御の精度を向上させることができる。
また、上述した有機金属化学気相成長法では、処理条件によっては秒単位で反応ガス種を変更する場合がある。この場合、高温用測温部材として比較的反応速度の速い測温部材(放射温度計22)を用いることで、高温条件において反応ガス種を変更するときの温度条件を正確に把握することができる。
上記半導体装置の製造方法では、膜は窒化物半導体(たとえばGaN)からなる膜であってもよい。ここで、窒化物半導体(GaN)は特に成長温度が高い。そこで、本発明による半導体装置の製造方法によれば、高温域においてはその温度域に適した高温用測温部材としての放射温度計22を用いるので、窒化物半導体の成膜温度の制御を精度よく行なうことができる。つまり、上記窒化物半導体(GaN)の成膜において本発明は特に効果的である。
上記半導体装置の製造方法では、図13に示した装置によるアニール処理のように、処理工程において、処理対象物(基板24)の処理としてラピッドサーマルアニールを行なってもよい。
ここで、ラピッドサーマルアニールでは、処理対象物としての基板24の温度が極めて速い速度で低温域から高温域まで上昇する。その場合、本発明によれば、低温域、高温域とそれぞれ適した測温部材(熱電対温度計27および放射温度計22)を使い分けるので、そのような早い温度上昇が発生しても正確な測温を実施できる。
上記半導体装置の製造方法では、高温用測温部材(放射温度計22)を用いて処理対象物(基板24)の温度を測定しながら、処理対象物(基板24)を処理温度まで加熱する工程(高温域昇温工程(S400)において、高温用測温部材(放射温度計22)の周囲にパージガスを供給することが好ましい。このパージガスとしては、処理対象物(基板24)の周囲の雰囲気ガスと同じ組成のガスを用いることが好ましい。また、パージガスとして水素ガスまたは窒素ガスなどを用いてもよい。また、パージガスの圧力は、処理対象物(基板24)の周囲の雰囲気圧力と同じ、または雰囲気圧力超えとすることが好ましい。この場合、放射温度計22の表面に基板への成膜処理に用いられる雰囲気ガス(反応ガス)が直接接触することを防止できるので、放射温度計22の表面に不要な膜が形成される可能性を低減できる。
この発明に従った半導体装置の製造装置は、処理室(フローチャネル20)と、加熱部材(ヒータ25)と、低温用測温部材(熱電対温度計27)と、高温用測温部材(放射温度計22)と、制御部28とを備える。処理室(フローチャネル20)は、処理対象物(基板24)を内部に保持し、処理対象物(基板24)に対する処理を行なうためのものである。加熱部材(ヒータ25)は、処理対象物(基板24)を加熱するためのものである。低温用測温部材(熱電対温度計27)は、処理対象物(基板24)の温度を測定するためのものである。高温用測温部材(放射温度計22)は、低温用測温部材(熱電対温度計27)による測定温度域より高い温度域について、処理対象物(基板24)の温度を測定するためのものである。制御部28は、低温用測温部材(熱電対温度計27)および高温用測温部材(放射温度計22)の少なくともいずれか一方からの測定データに基づいて加熱部材(ヒータ25)を制御することにより処理対象物(基板24)の温度を制御する。制御部28は、処理対象物(基板24)の温度条件に応じて、低温用測温部材(熱電対温度計27)および高温用測温部材(放射温度計22)のいずれかによる測定データに基づいて、加熱部材を制御する。この場合、上記半導体装置の製造装置を用いて、上記本発明に従った半導体装置の製造方法を実施できる。
上記半導体装置の製造装置において、高温用測温部材(放射温度計22)は、処理対象物(基板24)から処理対象物(基板24)と対向する処理室(フローチャネル20)の壁面(上壁面)に向かう方向から見て、処理室の壁面(フローチャネル20の上壁面)において、処理対象物(基板24)と重なる領域以外の領域に設置されていてもよい。上記方向は、処理対象物(基板24)と処理室の壁面(フローチャネル20の上壁面)との間の距離が最短になる方向(たとえば、壁面に対して垂直な方向)であってもよい。
この場合、処理対象物(基板24)の真上に高温用測温部材としての放射温度計22が配置されていないので、放射温度計22を配置するための凹部などが形成されることによる処理条件への影響を軽減できる。
上記半導体装置の製造装置は、高温用測温部材(放射温度計22)を処理室(フローチャネル20の内部)から隔離するための可動部材42を備えていてもよい。
この発明に従った半導体装置の製造装置は、図6〜図9に示すように、処理室(フローチャネル20)と、加熱部材(ヒータ25)と、測温部材(放射温度計22)と、可動部材42とを備える。処理室(フローチャネル20)は、処理対象物(基板24)を内部に保持し、処理対象物(基板24)に対する処理を行なうためのものである。加熱部材(ヒータ25)は、処理対象物(基板24)を加熱するためのものである。測温部材(放射温度計22)は、処理対象物(基板24)の温度を測定するためのものである。可動部材42は、測温部材(放射温度計22)の状態を、処理室(フローチャネル20)の雰囲気から隔離した状態と、処理室(フローチャネル20)の雰囲気に晒される状態との間で切換えるためのものである。
この場合、たとえば処理時に高温用測温部材(または測温部材)としての放射温度計22を処理室としてのフローチャネル20内部の処理雰囲気から可動部材42により隔離できる。このため、処理に起因して放射温度計22がダメージを受ける事が無いので、放射温度計22のメンテナンスの頻度を少なくできる。この結果、製造装置のランニングコストを低減できる。
上記半導体装置の製造装置において、可動部材42は、測温部材(放射温度計22)の状態を、処理室(フローチャネル20)の雰囲気から隔離した状態から、処理室(フローチャネル20)の雰囲気に晒される状態へと間欠的に変更可能であってもよい。あるいは、上記半導体装置の製造装置では、フローチャネル20において放射温度計22とフローチャネル20の内部の雰囲気とをつなぐ接続口としての開口部41が形成され、可動部材42は当該開口部41開閉可能に配置されていてもよい。可動部材42は開口部41を間欠的に開閉可能であってもよい。また、可動部材42および放射温度計22は、処理対象物である基板24の真上からずれた位置に配置されていてもよい。すなわち、放射温度計22は、基板24から基板24と対向する処理室(フローチャネル20)の壁面(上壁面)に向かう方向から見て、処理室の壁面(フローチャネル20の上壁面)において、基板24と重なる領域以外の領域に設置されていてもよい。上記方向は、基板24と処理室の壁面(フローチャネル20の上壁面)との間の距離が最短になる方向(たとえば、壁面に対して垂直な方向)であってもよい。
この場合、任意のタイミングで放射温度計22がフローチャネル20の雰囲気に晒される状態をつくることができる。このとき、放射温度計22によりフローチャネル20内部の基板24の温度を測定できる。つまり、任意のタイミングで放射温度計22による測温を実施できる。
上記半導体装置の製造装置において、図6に示すように、処理室の壁(フローチャネル20の上壁面)には可動部材42により開閉される開口部41が形成されていてもよい。放射温度計22は、処理室(フローチャネル20)の外側であって開口部41に面した位置に配置されていてもよい。可動部材42が閉状態であるとき、フローチャネル20の内部に露出する可動部材42の表面と、フローチャネル20の開口部41が形成された壁の表面(上壁面)とは同一面を構成するように、可動部材42の形状は決定されていてもよい。
この場合、可動部材42が塞いでいる開口部41の部分は、基本的にフローチャネル20の上壁面の表面と可動部材42の表面とが同一面を構成しているので、当該部分に起因してフローチャネル20内部での処理に用いる反応ガスの流れが乱される可能性を低くできる。この結果、処理の均一性などを向上させることができる。
上記半導体装置の製造装置において、図7に示すように、処理室の壁(フローチャネル20の上壁面)には可動部材42により開閉される開口部41が形成されていてもよい。放射温度計22は、フローチャネル20の外側であって開口部41に面した位置に配置されていてもよい。フローチャネル20の開口部41が形成された壁(上壁)の外周表面には、開口部41に隣接するように凹部48が形成されていてもよい。可動部材42は、開口部41を塞ぐように配置された閉状態と、当該凹部48の内部に後退することで開口部41を開いた状態にする開状態との間を移動可能であってもよい。
この場合、可動部材42をスライドするように移動させることで、開口部41の開閉を行なうことができる。このような可動部材42のスライドは、電動・あるいは油圧もしくは空気圧シリンダなど、簡単な駆動機構(駆動部43)により実現できる。つまり簡単な機構で開口部41を開閉できる。
上記半導体装置の製造装置において、図8または図9に示すように、処理室の壁(フローチャネル20の上壁面)には可動部材42により開閉される開口部41が形成されていてもよい。放射温度計22は、フローチャネル20の外側であって開口部41に面した位置に配置されていてもよい。可動部材42は、回転軸(シャフト44)を中心として回転することにより、開口部41を塞ぐように配置された閉状態と、当該開口部41上以外の位置に移動することで開口部41を開いた状態にする開状態との間を回転移動可能であってもよい。この場合、可動部材42による開口部41の開閉を、シャフト44を回転させるという簡単な機構により実現できる。このため、製造装置の構造を簡略化できる。
上記半導体装置の製造装置において、図9に示すように、可動部材42に接続されたシャフト44は、ジョイント部材(ジョイント部47)を介して当該シャフト44の延びる方向と異なる方向に延びるとともに、シャフト44に駆動力を伝達する他の回転軸(他のシャフト44)に接続されていてもよい。
この場合、可動部材42上の空間にはシャフト44を駆動するモータなどの駆動部43以外の部材を配置することができる。つまり、製造装置における部材の配置の自由度を大きくすることができる。なお、ジョイント部47としては歯車を利用したジョイントなど、任意のジョイント機構を用いることができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。