半導体レーザ素子等の製造に用いられる従来例の化学気相成長装置(MOCVD装置)の概略構成を図6及び図7に示す。
図6において、101は半導体ウエハを載置するトレイであり、図7に示すようにトレイ101には複数の半導体ウエハ114を載置可能である。102は均熱板で、103は均熱板を介してのトレイ101内の半導体ウエハを加熱するための加熱部(ヒータ)である。105は温度検出手段(熱電対)で均熱板近傍の温度を検出している。109は温調器であり、温度検出手段(熱電対)の検出温度を入力し、加熱手段(ヒータ電源)106に制御信号を出力する。加熱手段(ヒータ電源)106は、温調器109からの入力信号を基に加熱部(ヒータ)に電力を供給する。このフィードバック制御により温度検出手段105の温度が一定に制御される。104はトレイと均熱板を回転させるモータを含む回転手段であり、これにより成長中の半導体ウエハ114の温度分布の均一性を向上させて、成長層の均一性を高めることができる。108はリアクタチャンバ、110は原料となるトリメチルガリウム(TMG)等の有機金属とアルシン等の反応ガス供給系である。また、107は有機金属とアルシン等を混合ガスにして半導体ウエハまで導く流路(フローチャネル)である。111は反応後のガスを処理する除害装置である。112はMOCVD装置のプロセス動作を制御するPLC(Programable Logic Controller)で、成膜成長中のマスフローコントローラのガス流量設定やバルブの開閉制御及び、温調器109の制御温度や昇降温速度の設定を行う。また、113は半導体ウエハ上に薄膜を成長させるステップの一連の手順(レシピ)を作成し、作成したレシピをPLCへ送信するパソコンである。各ステップには、ヒータの制御温度・昇降温速度、各ガスの流量値、バルブの開閉動作、成長時間などが設定されている。115は放射温度計であり、物体表面から放射されるエネルギーを光−エネルギー変換素子によって受け、非接触で物体の表面温度を測定できる。校正用窓118を有するフローチャネル107を用いることにより、ビューポート117を通して半導体ウエハ114の表面温度を測定することが可能である。また、116はXY軸ステージで、XY軸ステージに取り付けた放射温度計115を動かすことでトレイ101内域の温度分布を測定することができる。
ところで、半導体ウエハ上への成膜は、反応ガス供給系110よりガスを供給しフローチャネル107内で混合後、加熱部(ヒータ)103により加熱された半導体ウエハ114上で熱分解することにより行われる。成膜時の膜厚は半導体ウエハ114の温度に左右されるため、半導体ウエハ114の温度を高精度に制御する必要がある。
半導体ウエハ温度を制御する方法としては、多数提案されており、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3では、放射温度計にて非接触の形態で半導体ウエハの温度を直接計測することにより、半導体ウエハの温度を制御する方法が提案されている。これらについて、以下に説明する。
CdTe,GaAs等のヘテロ基板を用いた成長を行う場合、成長初期では熱輻射のエピ層での干渉効果により放射温度計では正確な温度測定ができない。そのため、基板温度の制御を放射温度計による検出値をもとに行う制御系と、熱電対の検出値をもとに行う制御系とを備えて、それら2つの制御系を切り替え可能な構成とし、成長開始前及び成長初期は熱電対の検出値による基板温度の制御を行い、その後は放射温度計の検出値による基板温度の制御を行う方法を特許文献1では提案している。
特許文献2では、ガラス基板の温度を測定するために放射温度計を用い、ガラス基板の温度検出時にサセプタから放射される赤外線により放射温度計の検出値に生じる誤差を補正するため、放射温度計の温度表示に対するサセプタの温度とガラス基板の温度の相関データを予め設定しておき、この相関データに基づき熱電対が検出するサセプタの温度に応じて放射温度計が検出するガラス基板の温度を補正し、その補正温度によってガラス基板の温度を制御するようにしたプラズマCVD装置が開示されている。しかしながら、ガラス基板に膜が付着して放射率が変化する場合の経時変化までは補正できない。
また、特許文献3では、膜付きによる経時変化を考慮した補正方法が提案されている。具体的には、予め、放射面の状態が異なる条件にて、放射温度計の温度検出値と熱電対の温度検出値の温度換算テーブルを作成しておき、放射温度計のある出力値に対する熱電対の出力値より、被測定体の放射率を特定し、その放射率での温度換算テーブルにより放射温度計の検出値を補正して被測定体の温度制御を行っている。そのため、被測定体の放射面の状態が膜付き等で変化しても被測定体の温度制御を正確に行うことが可能である。しかしながら、放射温度計の測定経路にある窓(ビューポート)の曇りによる経時変化までは補正することはできない。
放射温度計にて半導体ウエハの温度を制御する場合の経時変化の補正方法については、特許文献4及び5で提案されている。
特許文献4では、100バッチ後のデータを取得し補正テーブルを作成することにより、経時変化の補正を行っている。また、特許文献5では、1バッチ成長直後の熱電対測定値と放射温度計測定値の差の変化量により補正を行っている。
一方、ヒーター内に設けられた熱電対の計測値で半導体ウエハの温度を間接的に制御する方法も提案されている(例えば、特許文献6を参照)。尚、ヒーター内に設けられた熱電対の計測値で半導体ウエハの温度を間接的に制御する場合は、半導体ウエハの温度と、ヒーター内に設けられた熱電対の計測温度との校正テーブルをあらかじめ作成する必要がある。そして、作成された校正テーブルを用いて、ヒーター内に設けられた熱電対の計測値に基づいて半導体ウエハの温度を制御する。
次に、図6及び図8を用いて、放射温度計で半導体ウエハの温度を測定することにより熱電対の温度校正を行う従来の方法について説明する。
まず、上記したように校正テーブルをあらかじめ作成する必要があるため、ダミーのウエハを図6のトレイ101上に載置する。そして、放射温度計115の測定温度Tpを読み込み、測定温度Tpが実際に成膜を行う時の半導体ウエハの温度値T1となるように、温調器109が、加熱手段106に、温度検出手段(熱電対)の検出温度が設定温度となるような制御信号を出力する。例えば、現状の温調器109の設定温度(SP1設定値)をSP1a’としたときに、T1>TpであればSP1設定値をSP1a’’(SP1a’’>SP1a’)に設定する。逆に、現状のSP1設定値をSP1a’としたときに、T1<TpであればSP1設定値をSP1a’’’(SP1a’’’<SP1a’)に設定する。このようにTp値がT1のある範囲内(T1±α)になるまでSP1の値の調整を繰り返す。そして、SP1設定値をSP1aに調整したときにTpの値がT1−α<Tp<T1+αになったとすれば、SP1aをT1のときの校正値とする。すなわち、半導体ウエハをT1の温度で成膜させるときは、温調器のSP1設定値をSP1aとする。T1とSP1aの対で校正テーブルの1データとなる。成膜する膜の種類により半導体ウエハの温度は異なるため、それぞれの半導体ウエハの設定温度で校正データのデータどりを行う必要がある。
図9(a)は、それぞれの半導体ウエハの設定温度においてデータどりを行って作成した校正データをプロットしたグラフである。
例えば、図9(a)の校正データの場合、半導体ウエハの温度として900℃で制御したい場合は、図8のSP1に1000℃を設定することになる。また、半導体ウエハの温度域でPIDパラメータを個別に設定する場合(例えば、半導体ウエハの温度Tp1〜Tp2の温度域では、P・I・D値として図9(b)に示すようにPa、Ia、Daと設定する場合)、図8のPIDパラメータブロックには、熱電対の温度として、Tp1、Tp2に対応するTc1、Tc2を設定する必要がある。メンテナンス時などで校正テーブルが破線のように再設定されれば、この値もTc1’、Tc2’に再設定する必要がある。
特開平4−155818号公報(1992年5月28日公開)
特開平5−190462号公報(1993年7月30日公開)
特開平4−69531号公報(1992年3月4日公開)
特開2003−1317451号公報(2003年5月9日公開)
特開2001−257169号公報(2001年9月21日公開)
特開2000−218151号公報(2000年8月8日公開)
しかしながら、放射温度計(非接触温度計)の計測値により半導体ウエハの温度制御を行う場合、計測用窓ガラスの曇り等による経時的な計測値の補正を行う必要がある。また、熱電対の計測値により間接的に半導体ウエハの温度制御を行う場合、相関テーブルを作成し、必要とする半導体ウエハ温度の目標温度を設定するが、成膜プロセス中の変化する半導体ウエハの温度に合わせたPIDの制御パラメータをリアルタイムで設定することができないという問題がある。
また、上記したように成膜する膜の種類により半導体ウエハの温度は異なるため、それぞれの温度設定値で温度校正を行う必要がある。すなわち、それぞれの半導体ウエハの成膜温度T1,2,3・・・に対応して、温調器のSP1設定値SP1d,SP1e,SP1f・・・の校正値を求める必要がある。このため、ヒータ交換等のメンテナンス時の温度校正に多くの時間を要し装置の稼動効率が悪くなっていた。
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、(1)上記曇りのような不都合を生じさせることなく、成膜中の変化するウエハ温度を正確に計測でき、それゆえ、(2)ウエハ温度をリアルタイムでPID制御部に入力することができ、且つウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができ、(3)メンテナンス時に熱電対の位置が少しずれたとしても、温度校正を行うことで、上記変換テーブルが更新され、今までのレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる、ウエハを加熱するためのウエハ加熱成膜装置、及びウエハ温度制御方法を提供するものである。
本発明に係るウエハ温度加熱装置は、上述した課題を解決するために、リアクタチャンバ内に配置されたウエハを加熱するための加熱手段と、上記ウエハの成膜対象面に成膜原料ガスを供給するための供給手段と、ウエハの温度を測定するウエハ用温度検出手段と、上記ウエハの表面温度を非接触の形態で測定する表面温度検出手段とを備えている、ウエハ加熱成膜装置であって、更に、上記加熱手段の温度を制御する温調手段を備えており、上記ウエハ用温度検出手段は、成膜対象であるウエハとは異なる調整用ウエハが上記支持体に支持されている状態では、調整用ウエハと接触するように構成されているとともに、成膜対象であるウエハが上記支持体に支持されている状態では、該ウエハと離間するように構成されており、上記温調手段は、上記ウエハ用温度検出手段によって測定される上記調整用ウエハの測定値に基づいて、上記表面温度検出手段によって測定される表面温度測定値を校正するように構成されているとともに、上記校正が施された表面温度測定値を基準にして、上記ウエハ用温度検出手段によって測定される成膜対象であるウエハの測定値を校正するように構成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、上記曇りのような不都合を生じさせることなく、成膜中の変化するウエハ温度を正確に計測できる。また、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハ温度をリアルタイムでPID制御部に入力することができ、且つウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。
具体的には、本発明の上記した構成によれば、成膜対象であるウエハが支持体に支持されている状態、すなわち成膜時には、成膜対象であるウエハとは異なる調整用ウエハが上記支持体に支持されている状態(すなわち、成膜を行う前の時点)において上記ウエハ用温度検出手段を調整用ウエハに接触させて測定したウエハ温度に基づいて校正された表面温度検出手段の測定値を基準にして、ウエハ用温度検出手段によって測定されたウエハ温度を校正するようになっている。ここで、上記ウエハ用温度検出手段により測定されるウエハ温度とは、ウエハ及びその近傍の温度のことである。表面温度検出手段は、ウエハの表面温度を非接触の形態で測定するため、従来技術における放射温度計であると換言することができる。すなわち、本発明の構成によれば、成膜時に、放射温度計を用いた計測(表面温度検出)は行わない。従って、成膜処理を進めていく過程において、従来のような曇りが生じた場合であっても、ウエハの温度は、ウエハ用温度検出手段によって制御されるため、曇りによる計測誤差を生じることはない。よって、ウエハの温度を正確に計測することができる。
また、本発明の上記した構成によれば、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハ温度を温調手段に直接入力することができる。そして、後述するように、温調手段にPID制御部が設けられていれば、ウエハ温度をPID制御部に入力することができるため、ウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。
また、本発明の上記した構成によれば、ウエハ温度加熱装置のメンテナンス時にウエハ用温度検出手段の位置が少しずれたとしても、(ウエハ用温度検出手段の)温度校正を行うことで、今まで使用していたレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる。
そして、本発明に係るウエハ温度加熱装置は、上記ウエハ用温度検出手段が、(i)成膜対象であるウエハとは異なる調整用ウエハが上記支持体に支持されている状態では、調整用ウエハと接触するように構成されており、(ii)成膜対象であるウエハが上記支持体に支持されている状態では、該ウエハと離間するように構成されている。そのため、成膜対象であるウエハとは異なる調整用ウエハが上記支持体に支持されている状態(すなわち、成膜を行う前の時点)で、ウエハ用温度検出手段が調整用ウエハと接触しているため、調整用ウエハの温度を正しく測定することができる。一方、成膜対象ウエハが上記支持体に支持されている状態(すなわち、成膜時)では、ウエハ用温度検出手段が成膜対象ウエハから離間して配置されているので、成膜対象ウエハによってウエハ用温度検出手段に傷が付くことを防ぐことができる。
また、本発明に係るウエハ温度加熱装置は、上記の構成において、上記温調手段には、上記ウエハ用温度検出手段の測定温度と、上記表面温度との相関データを準備する相関データ準備手段が設けられていることが好ましい。
上記の構成とすれば、ウエハ温度加熱装置のメンテナンス時にウエハ用温度検出手段の位置が少しずれたとしても、温度校正を行うことで、上記相関データが更新され、今まで使用していたレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる。
また、上記の構成において、上記相関データ準備手段が、上記ウエハ用温度検出手段によって測定された測定値と、上記表面温度検出手段によって測定された表面温度測定値とに基づいて上記相関データを作成するように構成されていてもよく、または、上記相関データ準備手段は、既存の相関データを外部から入力するように構成されていてもよい。
また、本発明に係るウエハ温度加熱装置は、上記温調手段が、上記表面温度検出手段が測定した表面温度測定値によるPID制御、及び/または、上記ウエハ用温度検出手段が測定した測定値によるPID制御を実行するように構成されている。温調手段において相関データを作成する場合には、表面温度測定値によるPID制御部を使用することにより、半導体ウエハの所望する温度にすばやく昇降温し安定させることができるため、温度校正データ作成に要する時間を大幅に短縮することができ、装置の稼働率を上げることができる。
また、本発明に係る、ウエハ上へ成膜原料ガスを供給する成膜工程時に行うウエハ温度制御方法は、上述した課題を解決するために、上記成膜工程の前に、成膜対象ではない調整用ウエハの温度を接触の形態で測定した測定値に基づいて、該調整用ウエハの表面温度を非接触の形態で測定した測定値を校正する前期校正工程と、成膜対象であるウエハの温度を非接触の形態で測定した測定値を、上記前期校正工程によって校正された表面温度測定値に基づいて校正する後期校正工程とを含んでおり、上記成膜工程は、上記後期校正工程によって校正された測定値に基づいて加熱手段の温度を制御する加熱手段制御工程とを含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、上記曇りのような不都合を生じさせることなく、成膜中の変化するウエハ温度を正確に計測できる。また、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハ温度をリアルタイムでPID制御部に入力することができ、且つウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。
具体的には、本発明の上記した構成によれば、成膜対象であるウエハが支持体に支持されている状態、すなわち成膜時には、成膜対象であるウエハとは異なる調整用ウエハに接触する形態で測定される調整用ウエハ温度に基づいて校正された、表面温度検出工程による測定値を基準にして、成膜対象であるウエハの温度を校正するようになっている。ここで、ウエハ用温度検出工程により測定されるウエハ温度とは、ウエハ及びその近傍の温度のことである。表面温度検出工程は、ウエハの表面温度を非接触の形態で測定するため、従来技術における放射温度計による計測であると換言することができる。すなわち、本発明の構成によれば、成膜時に、放射温度計を用いた計測(表面温度検出)は行わない。従って、成膜処理を進めていく過程において従来のような曇りが生じた場合であっても、ウエハの温度は、校正された、ウエハ用温度検出工程によって測定されたウエハ温度で制御されるので、曇りによる計測誤差を生じることはない。よって、ウエハの温度を正確に計測することができる。
また、本発明の上記した構成によれば、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。そのため、各成膜温度域への昇温または降温時に所望の温度へすばやく安定させることができる。
また、本発明の上記した構成によれば、ウエハ温度加熱装置のメンテナンス時に加熱手段温度検出工程を行う部材(ウエハ用温度検出手段)の位置が少しずれたとしても、温度校正を行うことで、今まで使用していたレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる。
また、本発明に係る加熱成膜装置を用いたウエハ温度制御方法は、上述した課題を解決するために、上記表面温度検出手段を用いてウエハの表面温度を非接触の形態で測定する表面温度検出工程とを含み、上記供給手段によってウエハの成膜対象面に成膜原料ガスを供給する成膜工程の前に、上記ウエハ用温度検出手段を成膜対象ではない調整用ウエハに接触させて測定される測定値に基づいて、上記表面温度検出工程によって測定される調整用ウエハの表面温度測定値を校正する前期校正工程と、上記前期校正工程によって校正された表面温度測定値に基づいて、上記ウエハ用温度検出手段が成膜対象であるウエハから非接触の形態で測定した測定値を校正する後期構成工程とを含み、上記成膜工程は、上記後期校正工程によって校正されたウエハ用温度検出手段の測定値に基づいて、加熱手段の温度を温調手段が制御する加熱手段制御工程を含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、上記曇りのような不都合を生じさせることなく、成膜中の変化するウエハ温度を正確に計測できる。また、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハ温度をリアルタイムでPID制御部に入力することができ、且つウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。
具体的には、本発明の上記した構成によれば、成膜対象であるウエハが支持体に支持されている状態、すなわち成膜時には、成膜対象ウエハの温度を、調整用ウエハを上記支持体に支持した状態(すなわち、成膜を行う前の時点)で上記ウエハ用温度検出手段が調整用ウエハに接触して測定したウエハ温度に基づいて校正された表面温度検出手段の測定値を基準にして、校正するようになっている。表面温度検出工程は、ウエハの表面温度を非接触の形態で測定するため、従来技術における放射温度計による計測であると換言することができる。すなわち、本発明の構成によれば、成膜時に、放射温度計を用いた計測(表面温度検出)は行わない。従って、成膜処理を進めていく過程において従来のような曇りが生じた場合であっても、ウエハの温度は、ウエハ用温度検出手段の測定値により制御されるので、曇りによる計測誤差を生じることはない。よって、ウエハの温度を正確に計測することができる。
また、本発明の上記した構成によれば、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。そのため、各成膜温度域への昇温または降温時に所望の温度へすばやく安定させることができる。
また、本発明の上記した構成によれば、ウエハ温度加熱装置のメンテナンス時にウエハ用温度検出工程を行うウエハ用温度検出手段の位置が少しずれたとしても、温度校正を行うことで、今まで使用していたレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる。
また、本発明の上記したウエハ温度制御方法は、上記後期校正工程では、上記ウエハ用温度検出手段によって測定される温度と、表面温度検出工程によって測定されるウエハの表面温度との相関データを作成する相関データ作成工程を含むことが好ましい。
上記の構成とすれば、ウエハ温度加熱装置のメンテナンス時にウエハ用温度検出手段の位置が少しずれたとしても、温度校正を行うことで、上記相関データが更新され、今まで使用していたレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる。
また、本発明の上記したウエハ温度制御方法は、上記後期校正工程と上記加熱手段制御工程とは、異なる制御ループで実行されることが好ましい。
本発明に係るウエハ温度加熱装置は、以上のように、リアクタチャンバ内に配置されたウエハを加熱するための加熱手段と、上記ウエハの成膜対象面に成膜原料ガスを供給するための供給手段と、ウエハの温度を測定するウエハ用温度検出手段と、上記ウエハの表面温度を非接触の形態で測定する表面温度検出手段とを備えている、ウエハ加熱成膜装置であって、更に、上記加熱手段の温度を制御する温調手段を備えており、上記ウエハ用温度検出手段は、成膜対象であるウエハとは異なる調整用ウエハが上記支持体に支持されている状態では、調整用ウエハと接触するように構成されているとともに、成膜対象であるウエハが上記支持体に支持されている状態では、該ウエハと離間するように構成されており、上記温調手段は、上記ウエハ用温度検出手段によって測定される上記調整用ウエハの測定値に基づいて、上記表面温度検出手段によって測定される表面温度測定値を校正するように構成されているとともに、上記校正が施された表面温度測定値を基準にして、上記ウエハ用温度検出手段によって測定される成膜対象であるウエハの測定値を校正するように構成されていることを特徴としている。また、本発明に係る、ウエハ上へ成膜原料ガスを供給する成膜工程時に行うウエハ温度制御方法は、以上のように、上記成膜工程の前に、成膜対象ではない調整用ウエハの温度を接触の形態で測定した測定値に基づいて、該調整用ウエハの表面温度を非接触の形態で測定した測定値を校正する前期校正工程と、成膜対象であるウエハの温度を非接触の形態で測定した測定値を、上記前期校正工程によって校正された表面温度測定値に基づいて校正する後期校正工程とを含んでおり、上記成膜工程は、上記後期校正工程によって校正された測定値に基づいて加熱手段の温度を制御する加熱手段制御工程とを含むことを特徴としている。さらに、本発明に係るウエハ温度制御方法は、以上のように、上記表面温度検出手段を用いてウエハの表面温度を非接触の形態で測定する表面温度検出工程とを含み、上記供給手段によってウエハの成膜対象面に成膜原料ガスを供給する成膜工程の前に、上記ウエハ用温度検出手段を成膜対象ではない調整用ウエハに接触させて測定される測定値に基づいて、上記表面温度検出工程によって測定される調整用ウエハの表面温度測定値を校正する前期校正工程と、上記前期校正工程によって校正された表面温度測定値に基づいて、上記ウエハ用温度検出手段が成膜対象であるウエハから非接触の形態で測定した測定値を校正する後期構成工程とを含み、上記成膜工程は、上記後期校正工程によって校正されたウエハ用温度検出手段の測定値に基づいて、加熱手段の温度を温調手段が制御する加熱手段制御工程を含むことを特徴としている。
以上の構成とすれば、上記曇りのような不都合を生じさせることなく、成膜中の変化するウエハ温度を正確に計測できる。また、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハ温度をPID制御部に入力することができ、且つウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。また、ウエハ温度加熱装置のメンテナンス時にウエハ用温度検出手段の位置が少しずれたとしても、温度校正を行うことで、今まで使用していたレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる。
本発明の一実施形態を図1ないし図5に基づいて説明する。尚、以下の説明では、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲が以下の実施形態および図面に限定されるものではない。
以下の説明では、まず、本発明に係るウエハ温度加熱装置の一実施形態を説明し、続いて、該ウエハ温度加熱装置において実行されるウエハ温度制御方法の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるMOCVD装置(ウエハ温度加熱装置)の構成を示した図である。本実施形態におけるMOCVD装置20は、図1に示すように、リアクタチャンバ8と、反応ガス供給系10とを少なくとも備えている。詳細は後述するが、上記リアクタチャンバ8には、反応ガス供給系10から有機金属とアルシン等を混合ガスにして半導体ウエハまで導く流路(フローチャネル)7が設けられており、反応後のガスは、図1に示す除害装置11によって処理されるように構成されている。以下に、上記リアクタチャンバ8の構成について説明する。
上記リアクタチャンバ8には、成膜対象である半導体ウエハ(ウエハ)(不図示)を載置(支持)することができるトレイ1(支持体)が設けられており、半導体ウエハは、成膜対象表面をフローチャネル7に露出するようにトレイ1に載置される。
上記トレイ1は、図7に示した構成と同じく、複数の半導体ウエハを載置可能であり、後述する回転手段4によって回転するように構成されている。
また、リアクタチャンバ8には、図1に示すように、トレイ1の背面に均熱板2と、回転手段4とが設けられている。回転手段4は、モータを有する構成となっており、トレイ1と均熱板2とを回転させることができる。このようにトレイ1と均熱板2とが回転することにより、成長中の半導体ウエハの温度分布の均一性を向上させて、成長層の均一性を高めることができる。
また、リアクタチャンバ8には、図1に示すように、トレイ1内の半導体ウエハを均熱板2を介して加熱することができるヒータ3(加熱手段)が設けられている。
上述したように、成膜時の膜厚は半導体ウエハの温度に左右されるため、半導体ウエハの温度を高精度に制御する必要がある。そのため、リアクタチャンバ8には、均熱板2近傍の温度を検出する熱電対(ウエハ用温度検出手段)5が設けられている。上記熱電対5は、均熱板2近傍に配置されており、検出温度をリアクタチャンバ8外部に出力することができるように構成されている。
MOCVD装置20は、さらに、図1に示すように、ヒータ電源6(加熱手段)と、温調器9(温調手段)と、PLC12と、放射温度計15(表面温度検出手段)とを備えている。
上記ヒータ電源6は、上記ヒータ3にエネルギーを供給することができるように構成されており、且つ、後述する温調器9から出力された指示信号を受けて、ヒータ3に供給するエネルギー量を調整することができる。
上記PLC12は、MOCVD装置のプロセス動作を制御することができ、成膜成長中の反応ガス供給系10から供給されるガス量を制御するための流量制御機器であるマスフローコントローラのガス流量設定やバルブの開閉制御及び、後述する温調器9で用いられる制御温度や昇降温速度の設定を行うように構成されている。
上記放射温度計15は、半導体ウエハ表面から放射されるエネルギーを光−エネルギー変換素子によって受け、非接触で半導体ウエハの表面温度を測定することができる。リアクタチャンバ8には、図1に示すように、校正用窓18と、ビューポート17とが設けられているため、放射温度計15は、これらを通して半導体ウエハの表面温度を測定することが可能である。また、図1に示す16は、XY軸ステージであり、XY軸ステージ16に取り付けた放射温度計15を動かすことでトレイ1内域の温度分布を測定することができる。
また、放射温度計15は、非接触で計測した半導体ウエハの表面温度を温調器9へ出力するように構成されている。
上記温調器9は、図1に示すように、上記熱電対5及び放射温度計15によって計測された温度、及び上記PLC12から出力された制御温度や昇降温速度の設定値を入力することができるように構成されている。また、温調器9は、これらの入力を受けて、上記指示信号をヒータ電源6へ出力することができるように構成されている。
図1に示す13は、半導体ウエハ上に薄膜を成長させるステップの一連の手順(レシピ)を作成し、作成したレシピをPLCへ送信することができるレシピ制御パソコンである。
以下、温調器9の詳細な構成を、MOCVD装置20において実行される本実施形態のウエハ温度制御方法と併せて説明する。尚、図2は、本実施形態のウエハ温度制御方法について示したブロック図である。
図2に示すように、温調器9は、その内部に図中PID(2)・PID(3)で示した2つのPID制御部を有している。どちらか一方のPID制御部を使用することにより、ヒータ電源6へ指示信号(制御信号)を出力し、半導体ウエハの温度が制御される。どちらのPID制御部を使用するかは入力切替ブロックで外部入力(温度校正信号または温度分布測定信号)により切替可能である。1つのPID制御部(PID(2))は熱電対5の入力をもとにヒータ電源6へ制御信号を出力し、もう1つのPID制御部(PID(3))は放射温度計15の計測値の入力をもとにヒータ電源6へ制御信号を出力する。2つのPID制御部はそれぞれの入力信号に合わせて、あらかじめP・I・D値が調整されているため、どちらのPID制御部で半導体ウエハの温度制御を行っても、温度制御において一般的に言われているオーバシュートや振動が少なく、所定の温度にすばやく安定させることができる。
2つのPID制御部の制御ループを図1で説明する。PID(2)で制御を行う場合、熱電対5の測定値を矢印R1で温調器9に入力し、温調器9の制御出力値を矢印R2でヒータ電源6に送る。ヒータ電源6からの出力電力は矢印R3でヒータ3に供給される。成膜時はPID(2)にて温度制御されるが、この場合の制御温度(SP2設定値)は、レシピ制御パソコン13で作成されたレシピ設定温度が矢印R4でPLC12へ送信され、PLC12から矢印R5で設定される。一方、PID(3)で制御を行う場合、放射温度計15の測定値を矢印R7で温調器9に入力し、温調器9の制御出力値を矢印R2でヒータ電源6に送る。ヒータ電源6からの出力電力は矢印R3でヒータ3に供給される。
図3は本発明の半導体ウエハ温度の制御フローである。図3をもとに成膜時における半導体ウエハの温度制御を説明する。
成膜時は、温調器9の温度校正信号、温度分布測定信号にレシピ制御パソコン13からOFFを入力し、入力切替ブロックをPID(2)側に設定する。レシピのステージ切替に合わせて、半導体ウエハの制御温度(SP2設定値)と昇降温速度(RR2設定値)がPLC12より温調器9に入力されてPID(2)に設定される。ステージにはガス流量やヒータ制御温度の成膜条件が記述されており、一連のステージの集まりでレシピが構成される。ヒータ3周辺に設置された熱電対5の温度が温調器9へ入力されると、温調器9内部に保持した後述する変換テーブルにより半導体ウエハ温度に変換され、その変換した半導体ウエハ温度に合ったPIDのパラメータ(P2,I2,D2)をPID(2)に設定する。各温度域でのPIDのパラメータ(P2,I2,D2)は、限界感度法や過渡応答法などの公知の方法によって、予め設定しておく。PID(2)は熱電対5の入力温度を変換テーブルで変換した半導体ウエハ温度を入力し、SP2の温度になるようにRR2の昇降温速度で、パラメータ(P2,I2,D2)の条件で制御を行い、ヒータ電源6へ算出した制御信号を出力する。
次に半導体ウエハの温度(放射温度計15による測定値)の校正方法(前期校正工程)を説明する。
温度校正を行う場合、放射温度計15にて半導体ウエハ表面の温度を測定するため、図1に示すような校正用窓18を有するフローチャネル7を予めセットしておく。また、成膜対象である半導体ウエハとは異なるダミーのウエハ(調整用ウエハ)をセットする。そして、熱電対5を調整用ウエハに接触させる。この状態で、図2の温度校正信号、温度分布測定信号をOFFし入力切替ブロックでPID(2)のPID制御部を選択するようにする。これにより熱電対5の測定値で調整用ウエハの温度を制御することになる。PID(2)のセットポイント(SP2)にある温度(これは、成膜する温度域の温度値が良い)を設定し、熱電対5の測定値がその設定値(SP2)となるようにPID制御を行う。熱電対5の測定値が設定値(SP2)で安定すれば、そのときの放射温度計15の測定値が、設定値(SP2)と同じになるように放射温度計15の放射率の設定値を調整することで、放射温度計15の校正が完了する。
次に半導体ウエハの温度(放射温度計15による測定値)と、熱電対5による測定値との校正方法(後期校正工程)を説明する。
前期校正工程と同様に、放射温度計15にて半導体ウエハ表面の温度を測定するため、図1に示すような校正用窓18を有するフローチャネル7をあらかじめセットしておく。温度校正は、まず、温度校正信号をONし入力切替ブロックでPID(3)のPID制御部を選択するようにする。これにより放射温度計15の測定値で半導体ウエハの温度を制御することになる。次に温調器9内部に保持された校正用ウエハ温度(レシピ設定温度)テーブルより、成膜時のレシピ設定温度Trp(これは成膜時の半導体ウエハの温度に相当する。)をPID(3)のセットポイント(SP3)に設定し、放射温度計15の測定値がその設定値(SP3)となるようにPID制御を行う。放射温度計15の測定値が設定値(SP3)で安定すれば、そのときの熱電対5の測定値Tcをレシピ設定温度Trp時の校正値として、温調器内部のウエハ温度(レシピ設定温度)−熱電対変換テーブルへ変更・記録させる。この一連の動作を校正用ウエハ温度(レシピ設定温度)テーブルの全てのレシピ設定温度Trpに対して行い、ウエハ温度(レシピ設定温度)−熱電対変換テーブルを完成させることで校正作業が終了する(後期校正工程)。校正作業終了後は、温度校正信号をOFFさせて、PID(2)のPID制御部で温度制御を行う。PID(2)のPID制御部では熱電対5の入力値は温度校正作業により作成されたウエハ温度(レシピ設定温度)−熱電対変換テーブルにより半導体ウエハ温度へ変換されるため、レシピで設定されるレシピ設定温度やレシピ昇降温速度は、半導体ウエハの温度(放射温度計15による測定温度)として設定される。このことにより、ヒータ3交換時において、ウエハ温度(レシピ設定温度)−熱電対変換テーブルが再設定されても、今まで使用している同一のレシピを使用することが可能となる。図4は、上述の温度校正時の制御フローである。
次に、図5を用いて具体的な温度校正フローを説明する。
図5では成膜時のレシピ設定温度が5ポイントある場合を仮定としている。図5の(a)で示しているものが、校正用ウエハ温度(レシピ設定温度)テーブルである。まず、この最初のレシピ設定温度500℃をPID(3)のセットポイント(SP3)に設定し、放射温度計の測定値で半導体ウエハを温度制御すると、図5の(c)のように時間とともに放射温度計の測定値が上がっていき、SP3の設定値500℃で安定する。このとき、図5の(d)のように、熱電対の測定値も同様に上がっていき、ある温度で安定する(図5では550℃とする)。この熱電対の安定温度550℃を読み取り、図5の(b)のウエハ温度(レシピ設定温度)−熱電対変換テーブルにレシピ設定温度500℃に対する校正値として設定する。この一連の動作を校正用ウエハ温度(レシピ設定温度)テーブルにある全てのレシピ設定温度について繰り返すことで、図5の(b)のテーブルを作成または更新する(後期校正工程)。
温度校正終了後の成膜時の温度制御についても、図5を用いて説明する。前述したように、成膜時の温度制御は熱電対5の測定値を用いて、図2のPID(2)により温度制御される。成膜時、レシピ制御パソコン13で作成されたレシピより温調器9に設定される温度(SP2に設定される。)は放射温度計15での測定値である。例えば、図5の(a)のテーブルにある500℃や680℃がSP2に設定される。仮にSP2が680℃に設定されたとすれば、PID(2)は、入力値が680℃になるように制御する。もし、この入力値が熱電対5の値をそのまま入力すれば、半導体ウエハの温度は必要とする温度(680℃)にはならない。そこで、温度校正により作成した変換テーブル(図5の(b))により、熱電対5の測定値を変換してPID(2)へ入力させる。そうすることで、PID(2)の入力が680℃に制御されれば、このときの熱電対5の測定値は732℃になる。もちろん、半導体ウエハの温度は必要な680℃に制御されることになる。
以上のように、本実施形態のMOCVD装置及びウエハ温度制御方法によれば、成膜時には、熱電対5によって測定された温度を、成膜を行う前の時点において校正された放射温度計15の測定値を基準にして、校正するようになっている。すなわち、本発明の構成によれば、成膜時に、放射温度計15を用いた計測は行わない。従って、成膜処理を進めていく過程において、従来のような曇りが生じた場合であっても、ウエハの温度は、熱電対5による制御を受けるため、曇りによる計測誤差を生じることはない。よって、ウエハの温度を正確に計測することができる。
また、上記した構成によれば、このようにウエハ温度を正確に測定することができることから、ウエハ温度をリアルタイムで温調器9に直接入力することができる。温調器9にはPID制御部が設けられていることから、ウエハ温度をPID制御部に入力することができることによって、ウエハの温度に合わせてPID制御の設定P・I・D値を変化させることができる。また、温調器において相関データを作成する場合には、放射温度計15の測定値が入力されるPID制御部を使用することにより、半導体ウエハの所望する温度にすばやく昇降温し安定させることができるため、温度校正データ作成に要する時間を大幅に短縮することができ、MOCVD装置の稼働率を上げることができる。
また、上記した構成によれば、熱電対5は、成膜対象である半導体ウエハがトレイ1に載置されている際は、該半導体ウエハと接触しない構成となっていることから、該半導体ウエハによって熱電対5に傷が付くことがなく、熱電対5の計測精度を維持することができる。
また、上記した構成によれば、MOCVD装置20のメンテナンス時(ヒータ等の交換時)に熱電対5の位置が少しずれたとしても、温度校正を行うことで、今まで使用していたレシピのレシピ設定温度や、ウエハ温度域に合わせたPIDパラメータを変更しなくても以前と同じウエハの温度で成膜を行うことができる。
すなわち、図2のPIDパラメータブロック内の半導体ウエハの温度域Tp1、Tp2、・・・は、図9(a)のように校正テーブルが変化しても変更する必要はない。
尚、温度校正後、確認のため温度分布測定を行うことがあるが、本構成によれば図1記載のXY軸ステージ16と同期をとることにより容易にトレイ1域内の温度分布を測定することが可能である。本発明での測定動作を図2をもとに説明する。
温度分布測定信号をONさせて、入力切替ブロックを切り替えることによりPID(3)で温度制御を行う。温度校正時と同様に校正用ウエハ温度(レシピ設定温度)テーブルのレシピ設定温度をSP3に設定し、その温度に放射温度計15の測定値が安定した後、XY軸ステージを駆動させることで、その温度での温度分布が測定できる。この動作を全ての温度域で繰り返すことも、必要な温度域のみで行うことも可能である。
尚、上記のような温調器9としては、例えば山武(株)製のDMC50のようなプログラマブルな温調器を使用することが可能である。
また、本発明に係るウエハ温度制御方法は、以下の構成を特徴としていると換言することができる。
すなわち、本発明に係るウエハ温度制御方法は、化学気相成長における半導体ウエハの温度制御方法であって、リアクタチャンバ内のトレイ上に半導体ウエハを載置し、前記半導体ウエハを加熱する加熱手段と、前記加熱手段の温度を検出する接触温度検出手段(熱電対)と、前記接触温度検出手段の温度検出情報に基づいて温度を制御する温調器、及び、温調器に前記半導体ウエハの目標温度を設定する制御機器、温調器からの指示信号に基づいて加熱手段に電力を供給する電源とを備え、また、前記半導体ウエハの温度と接触温度検出手段の測定温度との相関データを作成するための前記半導体ウエハの温度を検出する非接触温度検出手段(放射温度計)を備え、前記温調器は内部に接触温度検出手段の測定温度と半導体ウエハの温度との相関テーブルを保持し、前記温調器は接触温度検出手段により検出した測定温度を入力し、その入力した測定温度から前記の相関テーブルを用いて、前記半導体ウエハの現在温度を随時推定し、その推定温度が前記制御機器より設定される前記半導体ウエハの目標温度となるように前記電源を制御すること、及び、前記半導体ウエハの推定温度をもとに前記温調器のPIDパラメータを設定することを特徴としていると換言することができる。また、上記の構成において、前記温調器は、前記接触温度検出手段により検出する温度を入力し、その入力した現在温度から前記の相関テーブルを用いて、前記半導体ウエハの現在温度を随時推定することにより、その推定温度が前記制御機器より設定される前記半導体ウエハの目標温度となるように前記電源を制御する制御ループAと、非接触温度検出手段により検出する前記半導体ウエハの温度を入力し、その入力した半導体ウエハの現在温度が前記制御機器より設定される前記半導体ウエハの目標温度となるように前記電源を制御する制御ループBの2つの制御ループを備え、それら2つの制御ループはどちらか一方が選択可能で、接触温度検出手段の測定温度と半導体ウエハの温度との相関データを作成するときは、制御ループBを選択し半導体ウエハの温度を制御することが好ましい。
また、本発明に係るウエハ温度制御方法は、次のように換言することもできる。すなわち、本発明に係るウエハ温度制御方法は、化学気相成長における半導体ウエハの温度制御方法であって、リアクタチャンバ内のトレイ上に載置された半導体ウエハの現在温度を接触温度検出手段により検出する温度検出ステップと、予め準備した相関テーブルを用いて検出温度から半導体ウエハの推定温度を推定する半導体ウェハ温度推定ステップと、レシピ情報に基づき温調機の半導体ウエハの目標温度として設定する目標温度設定ステップと、目標温度に応じて温調機から電源に指示信号を出力する指示信号出力ステップと、指示信号にしたがって上記電源がヒータにエネルギーを供給するエネルギー供給ステップとを、第1の制御ループとして温度制御することを特徴としていると換言することもできる。また、上記の構成において、前記半導体ウエハの現在温度を非接触温度検出手段により検出する半導体ウエハの現在温度検出ステップと、温調機の半導体ウエハの目標温度を設定する目標温度設定ステップと、目標温度に応じて温調機から電源に指示信号を出力する指示信号出力ステップと、指示信号にしたがって上記電源がヒータにエネルギーを供給するエネルギー供給ステップとを、第2の制御ループとして温度制御することが好ましく、また、第2の制御ループを用いて、接触温度検出手段の検出温度と半導体ウエハの温度との相関データを作成することが好ましい。
また、本発明に係る温度制御装置は、以下の構成を特徴としていると換言することができる。
すなわち、本発明に係る温度制御装置は、化学気相成長における半導体ウエハの温度制御装置であって、リアクタチャンバ内のトレイ上に載置された半導体ウエハを加熱するヒータと、均熱板近傍の温度を検出する接触温度検出手段(熱電対)と、半導体ウエハが設定された目標温度になるようにヒータに指示信号を出力する温調器と、温調器からの指示信号に基づいてヒータにエネルギーを供給する電源とを備え、非接触温度検出手段(放射温度計)により測定された半導体ウエハの温度と接触温度検出手段により測定された温度との相関データを準備する相関データ準備手段と、(予め作成されたものを入手する場合または/および相関データを新たに作成する場合)相関データを用いて、接触温度検出手段により検出した温度から、半導体ウエハの推定温度を推定する半導体ウエハ温度推定手段と、温調器の前記半導体ウエハの目標温度を設定する推定温度設定手段とを備えることを特徴としていると換言することができる。また、上記の構成において、半導体ウエハの現在温度を検出する非接触温度検出手段(放射温度計)と、温調器の前記半導体ウエハの目標温度を設定する現在温度設定手段とを備えることが好ましく、半導体ウエハの推定温度または半導体ウエハの現在温度の推移をもとに、温調器のPIDパラメータを設定するPIDパラメータ設定手段を設けていることが好ましい。