JP2012078011A - 蓄熱装置及び該蓄熱装置を備えた空気調和機 - Google Patents

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Abstract

【課題】蓄熱槽と圧縮機外表面に隙間が生じることなく蓄積装置を提供すること。
【解決手段】圧縮機6を囲むように配設され、圧縮機6で発生した熱を蓄積するための蓄熱装置であって、圧縮機6で発生した熱を蓄積する蓄熱材36を収容する蓄熱槽32と、アスカーC硬度計で50度以下の硬度を有し、熱伝導度が0.43W/mK以上あり、厚さが1〜5mmであって、圧縮機6と対向する位置に配置されて圧縮機6と密着するための密着部材52とを備え、当該蓄熱槽32と圧縮機6をバンドあるいはネジ締めによって押し付けるように密着固定したことで、断熱材となる空気層を小さくして、圧縮機6で発生した熱を蓄熱材に効率的に伝熱、蓄積することができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、圧縮機を囲むように配置され圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材を収容する蓄熱装置及びこの蓄熱装置を備えた空気調和機に関する。
従来、ヒートポンプ式空気調和機による暖房運転時、室外熱交換器に着霜した場合には、暖房サイクルから冷房サイクルに四方弁を切り替えて除霜を行っている。この除霜方式では、室内ファンは停止するものの、室内機から冷気が徐々に放出されることから暖房感が失われるという欠点がある。
そこで、室外機に設けられた圧縮機に蓄熱装置を設け、暖房運転中に蓄熱槽に蓄えられた圧縮機の廃熱を利用して除霜するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図9は、従来の蓄熱装置の一例を示す縦断面図である。図9において、蓄熱装置100は、圧縮機102の周囲に少なくとも圧縮機外周表面の一部と接する形状をした容器である蓄熱槽101を配設し、圧縮機102と蓄熱槽101の隙間にはシリコン系の充填材104を充填し、蓄熱槽101の中には蓄熱材103を充填している。
特許第1873598号公報
上述したように、図9に示される従来の蓄熱装置では、蓄熱槽101は、圧縮機102の外表面に接するように配設されているが、実際には、蓄熱槽101と圧縮機102の外表面に隙間が生じることなく蓄積装置を製造することは難しい。さらには、上述のようにこの隙間にシリコン系の充填材104を充填しても、この隙間が大きい場合や、圧縮機102と蓄熱槽101の接触面積が大きい場合などには、十分に隙間を埋めることができず、殆どの場合、圧縮機102と蓄熱槽101との間には大きい面積の隙間が生じてしまう。このような隙間には断熱材として作用する空気層が存在することになり、圧縮機102からの熱を蓄熱材103に効率的に蓄積することができなくなるという問題点がある。
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、圧縮機で発生した熱を蓄熱材に効率的に蓄積することが可能な蓄熱装置及びこの蓄熱装置を用いた空気調和機を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は、圧縮機を囲むように配設され、圧縮機で発生した熱を蓄積するための蓄熱装置であって、圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材を収容する蓄熱槽とを設け、蓄熱槽が圧縮機と接する伝熱部と圧縮機との間に、アスカーC硬度計で50度以下の硬度を有する密着部材をはさんだものである。
本発明によれば、密着部材は十分な柔らかさと厚さを備えており、かつ圧縮機との対向位置に配置されているので、密着部材は、蓄熱槽を固定するための押し付け圧によって、
圧縮機と蓄熱槽の隙間が小さい部分が薄くなるように変形することで、接触面積を十分大きくすることができる。したがって、断熱材となる空気層を小さくすることになり、圧縮機で発生した熱を蓄熱材に効率的に伝熱、蓄積することが可能となる。
本発明に係る蓄熱装置を備えた空気調和機の構成を示す図 図1の空気調和機の通常暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式図 図1の空気調和機の除霜・暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式図 圧縮機とアキュームレータを取り付けた状態の本発明に係る蓄熱装置の斜視図 本発明に係わる蓄熱装置の断面を示す模式図 伝熱性能(熱通過率)と40分で可能な蓄熱量の関係を示すグラフ アスカーC硬度とヤング率の関係を示すグラフ 密着部材のアスカーC硬度と必要押し付け力の関係を示すグラフ 従来の蓄熱装置の断面を示す模式図
本発明は、圧縮機を囲むように配設され、圧縮機で発生した熱を蓄積するための蓄熱装置であって、前記圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材と、前記蓄熱材を収容する蓄熱槽とを設け、蓄熱槽が圧縮機と接する伝熱部と圧縮機との間にアスカーC硬度計で50度以下の硬度を有する密着部材をはさんだ構成としている。
この構成により、密着部材は、蓄熱槽を固定するための押し付け圧によって、圧縮機と蓄熱槽の隙間が小さい部分が薄くなるように変形することで、接触面積を十分大きくすることができる。したがって、断熱材となる空気層を小さくすることになり、圧縮機で発生した熱を蓄熱材に効率的に伝熱、蓄積することができる。
また好ましくは、密着部材の熱伝導率は、変形圧縮されない状態において、0.43W/mK以上である。
また好ましくは、密着部材の厚さは、変形圧縮されない状態において、1乃至5mmである。
また好ましくは、密着部材の面積が150乃至600cmの範囲である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る蓄熱装置を備えた空気調和機の構成を示しており、空気調和機は、冷媒配管で互いに接続された室外機2と室内機4とで構成されている。
図1に示されるように、室外機2の内部には、圧縮機6と四方弁8とストレーナ10と膨張弁12と室外熱交換器14とが設けられ、室内機4の内部には、室内熱交換器16が設けられ、これらは冷媒配管を介して互いに接続されることで冷凍サイクルを構成している。
さらに詳述すると、圧縮機6と室内熱交換器16は、四方弁8が設けられた第1配管18を介して接続され、室内熱交換器16と膨張弁12は、ストレーナ10が設けられた第2配管20を介して接続されている。また、膨張弁12と室外熱交換器14は第3配管2
2を介して接続され、室外熱交換器14と圧縮機6は第4配管24を介して接続されている。
第4配管24の中間部には四方弁8が配置されており、圧縮機6の冷媒吸入側における第4配管24には、液相冷媒と気相冷媒を分離するためのアキュームレータ26が設けられている。また、圧縮機6と第3配管22は、第5配管28を介して接続されており、第5配管28には第1電磁弁30が設けられている。
さらに、圧縮機6の周囲には蓄熱槽32が設けられ、蓄熱槽32の内部には、蓄熱熱交換器34が設けられるとともに、蓄熱熱交換器34と熱交換するための蓄熱材(例えば、エチレングリコール水溶液)36が充填されており、蓄熱槽32と蓄熱熱交換器34と蓄熱材36とで蓄熱装置を構成している。
また、第2配管20と蓄熱熱交換器34は第6配管38を介して接続され、蓄熱熱交換器34と第4配管24は第7配管40を介して接続されており、第6配管38には第2電磁弁42が設けられている。
室内機4の内部には、室内熱交換器16に加えて、送風ファン(図示せず)と上下羽根(図示せず)と左右羽根(図示せず)とが設けられており、室内熱交換器16は、送風ファンにより室内機4の内部に吸込まれた室内空気と、室内熱交換器16の内部を流れる冷媒との熱交換を行い、暖房時には熱交換により暖められた空気を室内に吹き出す一方、冷房時には熱交換により冷却された空気を室内に吹き出す。上下羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて上下に変更し、左右羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて左右に変更する。
なお、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁12、電磁弁30,42等は制御装置(図示せず、例えばマイコン)に電気的に接続され、制御装置により制御される。
上記構成の本発明に係る冷凍サイクル装置において、各部品の相互の接続関係と機能を暖房運転時を例にとり冷媒の流れとともに説明する。
圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、第1配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16へと至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て第2配管20を通り、膨張弁12への異物侵入を防止するストレーナ10を通って、膨張弁12に至る。膨張弁12で減圧した冷媒は、第3配管22を通って室外熱交換器14に至り、室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管24と四方弁8とアキュームレータ26を通って圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、第1配管18の圧縮機6吐出口と四方弁8の間から分岐した第5配管28は、第1電磁弁30を介して第3配管22の膨張弁12と室外熱交換器14の間に合流している。
さらに、内部に蓄熱材36と蓄熱熱交換器34を収納した蓄熱槽32は、圧縮機6に接して取り囲むように配置され、圧縮機6で発生した熱を蓄熱材36に蓄積し、第2配管20から室内熱交換器16とストレーナ10の間で分岐した第6配管38は、第2電磁弁42を経て蓄熱熱交換器34の入口へと至り、蓄熱熱交換器34の出口から出た第7配管40は、第4配管24における四方弁8とアキュームレータ26の間に合流する。
次に、図1に示される空気調和機の通常暖房時の動作及び冷媒の流れを模式的に示す図
2を参照しながら通常暖房時の動作を説明する。
通常暖房運転時、第1電磁弁30と第2電磁弁42は閉制御されており、上述したように圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、第1配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16に至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て、第2配管20を通り膨張弁12に至り、膨張弁12で減圧した冷媒は、第3配管22を通って室外熱交換器14に至る。室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管24を通って四方弁8から圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、圧縮機6で発生した熱は、圧縮機6の外壁から蓄熱槽32の外壁を介して蓄熱槽32の内部に収容された蓄熱材36に蓄積される。
次に、図1に示される空気調和機の除霜・暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式的に示す図3を参照しながら除霜・暖房時の動作を説明する。図中、実線矢印は暖房に供する冷媒の流れを示しており、破線矢印は除霜に供する冷媒の流れを示している。
上述した通常暖房運転中に室外熱交換器14に着霜し、着霜した霜が成長すると、室外熱交換器14の通風抵抗が増加して風量が減少し、室外熱交換器14内の蒸発温度が低下する。本発明に係る空気調和機には、図3に示されるように、室外熱交換器14の配管温度を検出する温度センサ44が設けられており、非着霜時に比べて、蒸発温度が低下したことを温度センサ44で検出すると、制御装置から通常暖房運転から除霜・暖房運転への指示が出力される。
通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行すると、第1電磁弁30と第2電磁弁42は開制御され、上述した通常暖房運転時の冷媒の流れに加え、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒の一部は第5配管28と第1電磁弁30を通り、第3配管22を通る冷媒に合流して、室外熱交換器14を加熱し、凝縮して液相化した後、第4配管24を通って四方弁8とアキュームレータ26を介して圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、第2配管20における室内熱交換器16とストレーナ10の間で分流した液相冷媒の一部は、第6配管38と第2電磁弁42を経て、蓄熱熱交換器34で蓄熱材36から吸熱し蒸発、気相化して、第7配管40を通って第4配管24を通る冷媒に合流し、アキュームレータ26から圧縮機6の吸入口へと戻る。なお、合流する場所はアキュームレータ26と圧縮機6の間でも良く、その場合、アキュームレータ26自身が持つ熱容量によって熱を奪われること避けることができる。
アキュームレータ26に戻る冷媒には、室外熱交換器14から戻ってくる液相冷媒が含まれているが、これに蓄熱熱交換器34から戻ってくる高温の気相冷媒を混合することで、液相冷媒の蒸発が促され、アキュームレータ26を通過して液相冷媒が圧縮機6に戻ることがなくなり、圧縮機6の信頼性の向上を図ることができる。
除霜・暖房開始時に霜の付着により氷点下となった室外熱交換器14の温度は、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒によって加熱されて、零度付近で霜が融解し、霜の融解が終わると、室外熱交換器14の温度は再び上昇し始める。この室外熱交換器14の温度上昇を温度センサ44で検出すると、除霜が完了したと判断し、制御装置から除霜・暖房運転から通常暖房運転への指示が出力される。
図4、5は蓄熱装置を示しており、蓄熱装置は、上述したように、蓄熱槽32と蓄熱熱交換器34と蓄熱材36とで構成されている。なお、図4は、圧縮機6と、圧縮機6に組み付けられるアキュームレータ26に、バンドを用いて蓄熱装置を押し付けるように取り
付けた状態を比較的写実的に示している。また、図5は蓄熱装置の特に本発明に係わる各構成要素の関連を模式的に示した断面図である(アキュームレータは図示せず)。なお、これまで使用した図1〜3は冷媒の流れを説明するために描かれており、特に蓄熱装置の圧縮機まわりの位置関係に関しては、図4、5がより正確である。
図5に示されるように、蓄熱槽32は、側壁46aと底壁を有し、上方が開口した樹脂製の蓄熱槽本体46と、この蓄熱槽本体46の上方開口部を閉塞する樹脂製の蓋体48を備え、蓋体48は蓄熱槽本体46に螺着される。また、蓄熱槽本体46の側壁46aの一部(つまり、側壁46aで圧縮機6と対向する部分)は特に圧縮機6の外表面を構成する胴シェル6aからの伝熱に寄与する伝熱側壁46aaで、胴シェル6aと伝熱側壁46aaの間には密着部材52がはさみ込まれている。
密着部材52は、アスカーC硬度で5度と非常に柔軟なシリコンゲルあるいはシリコンゴム等で、金属を別とすれば比較的高い熱伝導率(1〜15W/mK)を有する素材で形成されている。蓄熱槽32は、胴シェル表面に貼り付けられた密着部材52に、図4に示すバンド50によって押し付けられ、その押し付け圧で、密着部材52の少なくとも一部が変形圧縮されることで、密着部材52と伝熱側壁46aaの密着性を維持している。
蓄熱熱交換器34は、例えば銅管等を蛇行状に折曲したもの(詳細形状は図示せず)で、蓄熱槽本体46の内部に収容されており、蓄熱熱交換器34の両端は蓋体48から上方に延出され、一端は第6配管38(図1参照)に接続される一方、他端は第7配管40(図1参照)に接続される。また、蓄熱熱交換器34が収容され、側壁46aと底壁と伝熱側壁46aaで囲繞された蓄熱槽本体46の内部空間には、蓄熱材36が充填される。
次に、上記構成の蓄熱装置の作用を説明する。
なお、以下の説明では、本発明のような蓄熱装置において、上記密着部材の仕様が実際にどの程度の数値範囲である必要があるかを分かり易くするため、具体的かつ代表的な数値を用いて説明するが、いうまでもなく、本発明のような蓄熱装置においてある程度の数値の違いがあっても、以下の説明と同じ傾向の、類似の量の効果を奏することはいうまでもない。
<必要とされる伝熱性能>
まず、本発明のような蓄熱装置がどの程度の蓄熱量を必要とするかを説明する。本発明においては、蓄熱量は除霜運転時に暖房運転をする場合に不足する熱量の補充に使用される。
除霜運転時の暖房能力がいかほどかについては、次のように考えられる。
本発明のような蓄熱装置を装備した空気調和機が使用される一般家屋の一部屋の広さとしては、大半が6畳から23畳(約10〜38m)程度と考えられる。また、日本の温暖地における住宅の断熱性能は、1999年の省エネ基準によれば、損失係数2.7W/mKであることから、例えば着霜の起こる冬季の気温2℃時に、室内を20℃に維持する場合、38mの部屋であれば、38×2.7×(20−2)=約1850Wの暖房能力が必要である。(なお、欧米や寒冷地では外気温も低いが、それに応じて住宅の断熱性能も高いためこの数値は大差ない。また、実際の住宅の断熱性能は千差万別であるとしても、上記の数値は設計値としてはほぼ妥当と考えられる)。
本蓄熱装置は、除霜運転時にも、室内を暖房するための熱源である。一般の、空気調和機の除霜運転においては、暖房能力はゼロで、除霜運転中の熱量供給源である圧縮機6の入力は、すべて除霜(及びそのための室外熱交換器の温度上昇)のための熱量に振り向け
られる。したがって、本発明のように蓄熱という別の熱源がある場合、その熱量はすべて暖房能力に振り向けても、除霜能力は低下しない。
一般的に、除霜運転は5分程度で完了するので、この間、上記の暖房能力1850Wを維持するためには、蓄熱量として5×60×1850=555kJ必要である。
次に、上記の蓄熱量を確保するためには、圧縮機から蓄熱材に対してどのように伝熱が行われなければならないかを説明する。
空気調和機の暖房運転中の着霜進行を簡単に説明すると、室外熱交換器の表面温度が室外空気の露点温度以下で、なおかつ氷点下である場合、霜が着く条件が整う。このような条件で、霜が着き始めると、徐々に熱交換器が霜で覆われ、熱交換器の通風抵抗が増加して、空気調和機の暖房能力が低下するとともに、熱交換器の温度も低下する。しかし、顕著な暖房能力の低下や熱交換器温度の低下が起こり、除霜運転が必要になるとともに、熱交換器温度変化によって除霜運転開始の必要なことを検出可能になるのは、相当に着霜量が増加しての後のことであり、多くの場合40分±10分程度までは、暖房能力の変化はわずかで、暖房運転を継続可能である。
つまり、この約40分間に、圧縮機6から蓄熱槽32の蓄熱材36に、上述の555kJの熱量を蓄熱する必要がある。
図4の構成において、本発明のような蓄熱装置を装備した空気調和機において、圧縮機6の胴シェル6a部直径120mm、密着部材を介して伝熱に係わる部分の高さ200mmは極一般的なサイズである。また、本実施例では伝熱部に係わる部分が、圧縮機のほぼ3/4周を占めていることから、この伝熱に係わる部分の面積は120×π×200×3/4×1/100=約565cmである。
ところで、一般的に胴シェルは厚さ2mm前後の鋼板を丸く形成し、接合部を溶接して製作するのであるが、通常完成した胴シェルと真円との間には場所によって、1〜2mm程度の寸法差が存在する。一方、蓄熱槽の伝熱側壁46aaについても、真円との差は存在するし、さらに固定時にバンドで締めることによる変形も生じる。このことから、胴シェル6aと蓄熱槽伝熱側壁46aaとの隙間は一定にはならず、仮に密着部材がなければ、固定時には、最も近い点が接触した場合にも、それ以外の場所は0〜2mm程度の隙間が空いている状態となっている。このように、固体同士が接触せず、空気を介して伝熱する場合の伝熱量は極めて小さい。
この隙間に密着部材52が入っている場合、密着部材52が変形して、密着する部分の面積が増加し、密着した面積分が伝熱面積として機能する。
図6は、代表的なケースとして暖房中の圧縮機6の温度が70℃、蓄熱材36の初期温度を10℃とした場合における、圧縮機6から蓄熱材36への熱通過率と40分間での蓄熱量の関係を示したグラフである。なお、本実施例では、蓄熱材は25%エチレングリコール水溶液、蓄熱材容積は3L、伝熱面積は上記のように565cmである。このグラフから、この条件で蓄熱量555kJを実現するためには、熱通過率は約6.9W/Kが必要である。なお、一般に熱通過率は通過面積当りの数値として定義するが、ここでは便宜上、通過面積を乗じた値を使用している。
<必要とされる硬度>
次に、密着部材が変形して密着する過程を説明する。
一般に、この種の密着部材52として使用される市販品は伝熱シートと呼ばれ、主に電
子部品の冷却性能向上のために使われることが多く、ゴムやシリコンゲルなどで形成されている。しかし、このような使用例では一般的に数cm角であり、本発明のように硬度を厳密に検討しなくとも、以下に述べるような押し付けのために大きい力が必要なケースは少ない。
この種の材質の硬さを表す指標としてはアスカーC硬度が用いられることが多いが、その硬度値は、ヤング率との相関が強いことが知られている。図7は、本実施例で用いた密着部材52のアスカーC硬度とヤング率の関係を示したグラフである。
このグラフによれば、本実施例で用いた密着部材52はアスカーC硬度が5度なので、ヤング率はほぼ0.06MPa程度に相当する。なお、いうまでもなく、アスカーC硬度とヤング率は本来異なる指標であり、正確に1:1で対応するものではないが、計算にはヤング率が便利なため、今後の説明はヤング率に基づいて行う。
代表的な場合として、胴シェル6aと蓄熱槽伝熱側壁46aaの隙間のばらつきが2mmの場合、密着部材の厚さはこれ以上が必要なので3mmを用いるとする。この条件で、完全に密着した場合、最も密着部材の変形が少ない場合は、密着部材の厚みは1mmから3mmの間で分布する。
上記のように、ヤング率を0.06Mpaとし、変形後の密着部材52の平均厚みを2mmと仮定した場合、歪は(3−2)/3=33%であり、応力は0.06MPa×0.33=20000Paなので、この変形を起こさせるために必要な押し付け力は20000Pa×565cm=115kgfである。
上記を代表的な例として、本発明のような構成において一般的な、胴シェル6aと蓄熱槽伝熱側壁46aaの隙間のばらつきが0.5〜2mm、密着部材の厚さが1〜5mmの範囲で、アスカーC硬度と押し付け力の関係をグラフ化したものが図8である。
本実施例のバンド50による押し付け力は通常50kgf程度で、最大3本用いるとしても150kgf程度が上限と考えられる。これは、蓄熱槽の強度から見ても実用的な上限と考えられる。図8のように隙間寸法やシート厚さが上述のようなほぼ妥当と思われる数値を取る場合、押し付け力が150kgf以下の条件で限定すれば、少なくともアスカーC硬度は50度程度以下である必要がある。
また、硬度の下限に関しては、上述のような理由から柔らかければ柔らかいほどよいが、通常、1度以下では殆ど液状となるため、組み立てが困難となるため現実的ではない。
また、厚さについても、押し付け力に関しては厚いほど望ましいが、当然のことながら厚くすれば伝熱性能が低下するほか、隙間のばらつきも上限は2mm程度であることから、5mm前後が実用上の上限と考えられる。
すなわち、密着部材の硬度は50度程度以下でなければ、広い面積で変形して、広い伝熱面積を確保することは、実用上困難であると考えられる。
<必要とされる熱伝導率>
また、前述のように、密着部材が広い伝熱面積を実現するだけでなく、熱通過率も6.9W/K程度の性能を持つことが必要である。熱の通過は、胴シェル表面から、密着部材、蓄熱槽伝熱側壁を介して、最終的には蓄熱材の熱伝達率によって伝えられる。本実施例における蓄熱材の熱伝達率は約800W/mKなので、密着部材、蓄熱槽伝熱側壁の熱通過率は、1/(1/6.9−1/(800×565/10000)=8.14W/K程度である。
ここで、仮に蓄熱槽の伝熱側壁の熱抵抗はないという理想状態を仮定すると、密着部材の熱通過率が8.14W/Kなので、この場合厚さ3mmの密着部材に求められる熱伝導率は、8.14×(3/1000)/(565/10000)=0.43W/mK以上である。蓄熱槽の側壁が熱伝導率の高い金属性の場合が、この状態に相当する。
また、仮に蓄熱槽の伝熱側壁46aaが熱抵抗の大きい厚さ2mmの合成樹脂性の場合、一般に合成樹脂の熱伝導率は0.3W/mK程度であるので、この場合は、密着部材の熱通過率は、1/(1/8.14−1/(0.3×(565/10000)/(2/1000)))=206W/Kなので、この場合厚さ3mmの密着部材に求められる熱伝導率は、206×(3/1000)/(565/10000)=10.9W/mK以上なければならない。合成樹脂の厚さがさらに厚い場合などは、さらに高い熱伝導率が必要なことはいうまでもない。
また、ここまでの説明は、広さ38mの部屋に対して、565cmの伝熱面積(密着部材面積)の例をあげて説明してきたが、広さが10mの部屋に対しては、150cm程度の伝熱面積を考えるだけでもよいが、その場合でも本発明はそのまま適用できる。
さらに、圧縮機に蓄熱槽伝熱側壁を押し付けるのにバンドを使う例を説明したが、ネジ締め等、同様の作用を持つ方法で代替しても差し支えない。
さらには、密着部材52の厚さや熱伝導率はいうまでもなく、圧縮されて変形すれば数値が変わるが、本明細書内で特に断りのない場合は、厚さ、熱伝導率ともに圧縮されない状態での値を指す。
これらのことから、本発明のような構成において、密着部材52はアスカーC硬度において50度以下の硬度程度の柔らかさが求められ、一方において、その伝熱性能に関しては、0.43W/mK以上の高い熱伝導性能を有する必要がある。
本発明に係る蓄熱装置は圧縮機と蓄熱槽の間に、アスカーC硬度において50度以下の柔軟な密着部材を備えており、圧縮機で発生した熱を蓄熱材に効率的に蓄積することができるので、空気調和機、冷蔵庫、給湯器、ヒートポンプ式洗濯機等に有用である。
2 室外機、 4 室内機、 6 圧縮機、 6a 胴シェル、
8 四方弁、 10 ストレーナ、
12 膨張弁、 14 室外熱交換器、 16 室内熱交換器、 18 第1配管、
20 第2配管、 22 第3配管、 24 第4配管、 26 アキュームレータ、
28 第5配管、 30 第1電磁弁、 32 蓄熱槽、 34 蓄熱熱交換器、
36 蓄熱材、 38 第6配管、 40 第7配管、 42 第2電磁弁、
44 温度センサ、 46 蓄熱槽本体、 46a 側壁、 46aa 伝熱側壁、
48 蓋体、 50 バンド、 52 密着部材。

Claims (6)

  1. 圧縮機を囲むように配設され、該圧縮機で発生した熱を蓄積するための蓄熱装置であって、
    前記圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材と、前記蓄熱材を収容する蓄熱槽と、を備え、前記蓄熱槽が前記圧縮機と接する伝熱部と前記圧縮機との間に、アスカーC硬度計で50度以下の硬度の密着部材をはさんだことを特徴とする蓄熱装置。
  2. 前記密着部材の熱伝導率は、変形圧縮されない状態において、0.43W/mK以上であることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
  3. 前記密着部材の厚さは、変形圧縮されない状態において、1乃至5mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱装置。
  4. 前記密着部材の面積は、150乃至600cmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
  5. 前記蓄熱槽と、前記圧縮機を、バンドあるいは、ネジ締めによって、前記密着部材を緩衝材として、押し付けるように密着固定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
  6. 圧縮機と、該圧縮機を囲むように配設された請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蓄熱装置と、を備えることを特徴とする空気調和機。
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