JP2012077431A - 保温性繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】染着座席となる官能基を有する重合体の領域と、これとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維であって、かつ、波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、20℃65%RH下における飽和吸湿率が15重量%以上50重量%以下である保温性繊維。
【選択図】なし
Description
かつ、波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、20℃65%RH下における飽和吸湿率が15重量%以上50重量%以下である保温性繊維。
(2) 染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造を有することを特徴とする(1)に記載の保温性繊維。
(3) 架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものであることを特徴とする(1)または(2)に記載の保温性繊維。
(5) カチオン性基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施して得られるものであることを特徴とする(4)に記載の保温性繊維。
(6) カチオン性基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体であることを特徴とする(4)に記載の保温性繊維。
(7) 染着座席となる官能基を有する重合体として、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体を含み、前記染料がカチオン染料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の保温性繊維。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の保温性繊維は、後述する測定法による波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。かかる平均反射率が60%を超える場合には、光の吸収量が少なくなり、光熱変換による発熱が実感できるレベルのものとならない。また、該平均反射率の下限が0%となることは言うまでもない。
本発明の保温性繊維は染色されている繊維である。すなわち、本発明の保温性繊維においては、染色に用いる染料の種類や染色濃度によって上記の平均反射率を得るようにする。採用する染料としては、該染料で染色して得られる保温性繊維の平均反射率が上記範囲内となるような染料を選択する。ここで、本発明において「染色されている」とは、染料が容易に脱落したり、変色したりせず、安定した染色状態を保てるということであり、具体的にはJIS L 0848による汗染色堅牢度が3−4級以上であることを指す。なお、本発明の保温性繊維は、JIS L 0848による汗染色堅牢度が4級以上であることがより好ましい。
また、本発明の保温性繊維は後述する測定法による20℃65%RH下における飽和吸湿率の下限が15重量%以上であり、好ましくは20重量%以上である。かかる飽和吸湿率が15重量%未満であれば、吸湿に伴う発熱量が小さくなりすぎ、遮光されたときの温度低下を抑制する効果が得られなくなる。一方、かかる飽和吸湿率の上限は、50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下である。飽和吸湿率が50重量%を超える場合、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域が過大で染着座席となる官能基を有する重合体の領域が小さすぎる状況で、十分な光熱変換性を得られるほどの染色をすることが困難となったり、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の架橋構造が過少な状況で、該領域が吸湿時脆弱となって加工や実用において支障が出たりする場合がある。なお、「RH」は相対湿度を表し、65%RHは相対湿度65%を意味する。
また、本発明の保温性繊維は、染着座席となる官能基を有する重合体の領域とこれとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維である。
アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体としては、染色堅牢度や発色性の観点から、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体や、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施して得られるものなどを好ましく用いることができる。なお、本願発明においては、アクリロニトリルを主成分とする重合体をアクリロニトリル系重合体とも表記し、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体をカチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体とも表記する。
また、カチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体としては、スルホン酸基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体が挙げられ、なかでも、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともスルホン酸基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体(以降、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体とも言う)が好適に採用できる。スルホン酸基はカルボキシル基と比べて、カチオン染料との結合力が強く、染色堅牢度を高くできる。
一方、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体としては、アクリロニトリル系重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものを挙げることができる。前者の処理においては、窒素含有化合物とアクリロニトリル由来のニトリル基を反応させて、重合体中に架橋構造を形成し、後者の処理においては、ニトリル基を加水分解してカルボキシル基を形成させる。これにより、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が得られる。
本発明の保温性繊維は上述した染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域のみから構成されていてもよいし、これらの領域の他にこれらの領域を構成する重合体が混在する領域やこれらの領域を構成する重合体とは異なる重合体で構成される領域が存在してもよい。ここで、領域とは、単繊維中の一部分のことを指しており、例えば、染着座席となる官能基を有する重合体の領域とは、単繊維中において染着座席となる官能基を有する重合体で形成されている部分のことを指す。これらの領域の配置の代表的な例としては、染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造、染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を繊維径方向に交互に積層した多層構造、あるいは、染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の一方を海部、他方を島部とする海島構造などを挙げることができる。
上述してきた染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維の製造方法としては、いくつかの方法を挙げることができる。例えば、アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維を得る方法としては、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維を原料繊維として、該繊維に対して部分的に架橋処理および加水分解処理を施す方法を挙げることができる。かかる方法においては、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の一部が架橋処理および加水分解処理により架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域に変換され、変換されなかった部分がアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域となる。
上述した染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維のうち、カチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維を得る方法としては、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維やアクリル系スルホン酸基含有樹脂を含有するアクリロニトリル系繊維を原料繊維として、該繊維に対して部分的に架橋処理および加水分解処理を施す方法を挙げることができる。
本発明の保温性繊維は、以上のようにして得られた染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維に対して、染色を施すことにより得ることができる。
上述してきた本発明の保温性繊維は、高い吸湿性と光熱変換性とを併せ持つ繊維である。かかる本発明の保温性繊維は太陽光を照射されているときには光熱変換により発熱を続け、遮光状態となっても吸湿に伴う発熱によって温度低下が抑制されるという効果を発現する。本発明の繊維としては、後述する光熱変換効果と吸湿発熱効果の測定において、比較用試料との温度差が、照射開始10分後においては1℃以上、好ましくは2℃以上、さらに好ましくは3℃以上であることが望ましく、また、遮光開始10分後においては2℃以上、好ましくは2.5℃以上、さらに好ましくは3℃以上あることが望ましい。照射開始10分後の温度差が1℃に満たない場合や遮光開始10分後の温度差が2℃に満たない場合は、衣料品などの実用の場において保温効果の優位性が感じられない場合がある。
十分乾燥した試料約1gを精秤し(A[g])、これに200mLの水を加えた後、50℃に加温しながら1mol/L塩酸水溶液を添加してpH2にし、次いで0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求める。該滴定曲線からカルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(B[mL])を求め、次式によってカルボキシル基量を算出する。
カルボキシル基量[mmol/g]=0.1×B/A
十分乾燥した試料約0.5gを精秤し(C[g])、イオン交換が十分行われる量の0.1mol/L塩酸水溶液(D[mL])が入ったビーカーに浸漬する。試料をろ過し、ろ液にフェノールフタレイン溶液を指示薬として添加する。このろ液を0.1mmol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、残留塩酸を定量した。その時の水酸化ナトリウム水溶液の滴定量をE[mL]として、次式により、カチオン性基量を算出した。
カチオン性基量[mmol/g]=(0.1×D−0.1×E)/C
十分乾燥した試料約0.25gを精秤し(S[g])、20mLのジメチルホルムアミドに溶解させた。次いでアンバーライトIR−120B(ローム・アンド・ハース株式会社製、強酸性カチオン交換樹脂)10mLを加え、15分間撹拌した後、ろ別した。ジメチルホルムアミドを加えてろ液を50mLに希釈し、0.0075mol/Lの水酸化ナトリウムエタノール溶液で伝導度滴定を行い、滴定曲線を求めた。該滴定曲線からスルホン酸基に消費された水酸化ナトリウム消費量(V[mL])を求め、次式によってスルホン酸基量を算出した。
スルホン酸基量[mmol/g]=0.0075V/S
染色された繊維試料について、JIS−L−0848による汗染色堅牢度を評価する。
以下の方法で染色された繊維を切断し、繊維断面を光学顕微鏡で観察することにより算出する。
・アニオン染料染着座席を含有する繊維の場合
試料を、該試料の重量に対して5%の酸性染料Supranol Black VLG(DyStar社製)と試料重量に対して2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入し、沸騰状態で30分間浸漬した後、水洗する。次いで、得られた繊維を1g/LのデモールN(花王株式会社製)が入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗、乾燥を行って、染色された繊維試料を得る。
・カチオン染料染着座席を含有する繊維の場合
試料を、該試料の重量に対して2.5%のカチオン染料Nichilon Black G 200%(日成化成株式会社製)および2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入し、沸騰状態で30分間浸漬した後、水洗する。次いで、得られた繊維を2g/Lのハイドロサルファイトが入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗、乾燥を行って、染色された繊維試料を得る。
試料1gを解繊し、手で引き揃え、金ぐしで表面を整える。このようにして繊維の方向を揃えた試料を引き揃えた方向が縦になるように、U−3010形分光光度計(日立製作所製)の試料台にセットし、波長250nm〜1100nmの光に対する反射率(%)を測定する。測定結果から、波長300nm〜900nmの範囲について10nmごとの反射率を合計し、これをデータ数で除したものを平均反射率[%]とする。
試料約5.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(F[g])。次に該試料を20℃、65%RHの条件に調節した恒温恒湿器に24時間入れておく。このようにして吸湿させた試料の重量を測定する。(G[g])。以上の測定結果から、次式によって算出する。
飽和吸湿率[%]=(G−F)/F×100
繊維試料からメートル番手30番手単糸の紡績糸を作成する。該紡績糸を用い14ゲージ2プライで天竺の編地を作成し、一辺15cmの正方形に裁断して測定用試料とする。一方、通常の染色していない1.7dtexのアクリロニトリル系繊維(日本エクスラン工業(株)エクスランK8−1.7T)を用いて、上記と同様にして紡績糸、天竺の編地を作成し、一辺15cmの正方形に裁断して比較用試料とする。これらの測定用試料および比較用試料のそれぞれの中央部に熱電対温度センサーを設置し、次いで、発泡スチロール製の試料台の上に前記センサーが下側になるように各試料を置く。
アクリロニトリル86%、アクリル酸メチル11%および(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル3%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率:10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥後、湿熱処理して単繊維繊度2.2dtex、カチオン性基量0.18mmol/gの原料繊維a(繊維長51mm)を得た。該原料繊維に、水加ヒドラジン0.4%および水酸化ナトリウム2%を含有する水溶液中で、90℃×2時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Aを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
繊維Aの原料繊維aに、水加ヒドラジン0.4%および水酸化ナトリウム2%を含有する水溶液中で、90℃×1.5時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Bを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
アクリロニトリル90%、アクリル酸メチル9.7%およびメタアリルスルホン酸ナトリウム0.3%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率:10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥後、湿熱処理した単繊維繊度2.2dtexの原料繊維c(繊維長51mm)を得た。該原料繊維に、水加ヒドラジン10%を含有する水溶液中で110℃×1時間処理し、その後、水酸化ナトリウムを1.6%含有する水溶液で100℃×1時間、表層部の加水分解処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、アクリロニトリル系重合体にヒドラジンによる架橋処理のみが施された領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Cを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
繊維Aの原料繊維aを、水加ヒドラジン15%を含有する水溶液中で110℃×1.5時間処理し、その後、水酸化ナトリウムを2%含有する水溶液で100℃×1時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体にヒドラジンによる架橋処理のみが施された領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Dを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
アクリロニトリル88%、酢酸ビニル11.5%およびメタアリルスルホン酸ナトリウム0.5%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダン酸ナトリウム水溶液90部に溶解させた紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸した後、乾燥、湿熱処理して単繊維繊度1.0dtex、スルホン酸基量0.069mmol/gの原料繊維eを得た。該原料繊維を、水加ヒドラジン0.5%及び水酸化ナトリウム1.5%を含有する水溶液中、95℃で2時間架橋・加水分解処理を行い、水洗した。続いて120℃の水中で1時間熱処理した後、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Eを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
アクリロニトリル48重量%、アクリル酸メチルエステル22重量%、スルホン酸基含有モノマーとしてパラスチレンスルホン酸ソーダ30重量%をアンモニウムパーサルファイト/ピロ亜硫酸ソーダのレドックス系触媒で連続重合してスルホン酸基を1.46mmol/g含有する半透明ラテックス状のスルホン酸基含有樹脂を得た。次に、アクリロニトリル88%、酢酸ビニル12%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダン酸ナトリウム水溶液90部に溶解し、紡糸原液を作成した。前記アクリロニトリル系重合体と上記スルホン酸基含有樹脂の重量比が98.8:1.5となるように、該紡糸原液に上記スルホン酸基含有樹脂を添加、混合、溶解して混合原液を連続的に作成し、紡糸装置に導いた。次いで紡糸装置に導いた混合原液を、常法に従って紡糸、延伸した後、乾燥、湿熱処理して単繊維繊度1.0dtex、スルホン酸基量0.056mmol/gの原料繊維fを得た。該原料繊維を、水加ヒドラジン0.5%及び水酸化ナトリウム1.5%を含有する水溶液中、95℃で2時間架橋・加水分解処理を行い、水洗した。続いて120℃の水中で1時間熱処理した後、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、スルホン酸基含有樹脂を含有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Fを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
繊維Aの原料繊維aに、水加ヒドラジンの15%水溶液中で110℃×3時間処理を行い、洗浄した。得られた繊維を、8%硝酸水溶液中に浸漬し、100℃×1時間処理を行った。続いて5%水酸化ナトリウム水溶液中で100℃×1時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、繊維Gを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。断面積比率の算出については、該繊維をアニオン染料染着座席を含有する繊維として染色処理を行ったが、いわゆる汚染程度の着色にとどまり、本来の染料の色とは異なる薄い色となった。また、該繊維は染色堅牢度が2級と低く、安定した染色状態を保てる繊維ではなかった。また、繊維断面を観察したところ、断面全体が薄い色となっており、本来の染料の色に染色された領域は見られなかった。このため、かかる繊維のアクリロニトリル系重合体の領域の断面積比率を求めることはできなかった。
上述の繊維A〜Fおよび繊維Aの原料繊維aを以下の染色手順と表2に示す染色条件により染色する。
・酸性染料、反応染料、あるいは直接染料を用いる場合
繊維試料3gを、表2に記載する染料と試料重量に対して2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入して昇温し、沸騰状態で30分間浸漬した後、徐冷し水洗する。次いで、得られた繊維を1g/LのデモールN(花王株式会社製)が入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗する。次に、繊維中のカルボキシル基に対して中和度70%となるようにソーダ灰水溶液を添加して処理した後に、水洗、乾燥を行い、染色された繊維試料を得る。
繊維試料3gを、表2に記載する染料と試料重量に対して2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入して昇温し、、沸騰状態で30分間浸漬した後、徐冷し水洗する。次いで、得られた繊維を2g/Lのハイドロサルファイトが入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗する。次に、繊維中のカルボキシル基に対して中和度70%となるようにソーダ灰水溶液を添加して処理した後に、水洗、乾燥を行い、染色された繊維試料を得る。
Claims (7)
- 染着座席となる官能基を有する重合体の領域と、これとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維であって、
かつ、波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、20℃65%RH下における飽和吸湿率が15重量%以上50重量%以下である保温性繊維。 - 染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造を有することを特徴とする請求項1に記載の保温性繊維。
- 架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の保温性繊維。
- 染着座席となる官能基を有する重合体が、カチオン性基を有する重合体であり、前記染料がアニオン染料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の保温性繊維。
- カチオン性基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施して得られるものであることを特徴とする請求項4に記載の保温性繊維。
- カチオン性基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体であることを特徴とする請求項4に記載の保温性繊維。
- 染着座席となる官能基を有する重合体として、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体を含み、前記染料がカチオン染料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の保温性繊維。
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