JP5765570B2 - 保温性繊維 - Google Patents

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Description

本発明は高い光熱変換性と高い吸湿性を兼ね備える保温性繊維に関する。
吸湿性繊維は、体表面から発散される水蒸気を吸収して発熱する特性を有しており、冬物衣料に多用されている。このような繊維の中でも架橋アクリル酸系繊維はその吸湿性が極めて高く、発熱量が大きいことから発熱する繊維としても利用されている(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる繊維はその飽和吸湿量に達するとそれ以上の発熱ができなくなる。このため、長時間の発熱の要望には十分に応えることができない。
一方、可視光線あるいは近赤外線などを吸収して熱に変換する光熱変換物質を繊維中に練り込んだ合成繊維も知られている(例えば特許文献2参照)。かかる繊維は太陽光を吸収して発熱するものであり、太陽光が照射されている限り継続的に発熱できるが、太陽光が遮られると急速に温度が低下してしまう。冬物衣料などにおいては、日光が当たらない時にこそ暖かさが求められるが、これらの繊維はかかる要望を十分に満足するものではない。
この点について、特許文献3には蓄熱性微粒子を中綿にバインダーで付着させることで保温性を高めた中綿入り衣料が開示されている。しかしながら、バインダーによる付着では、バインダー量が少なければ蓄熱性微粒子が脱落しやすく、洗濯などでの機能低下が顕著となる。一方、脱落しないようにバインダー量を多くすれば繊維が硬くなり、風合いが低下するといった問題が発生する。加えて、蓄熱性微粒子を使用する分だけコストが高くなる。
特開2002−294556号公報 特開平1−132816号公報 特開2005−256185号公報
以上のように、発熱機能を有する繊維としての吸湿性繊維および光熱変換性繊維はそれぞれ一長一短を有するものであった。本発明はかかる現状に基づきなされたものであり、これらの繊維の長所を合わせ持った保温性繊維、すなわち、光熱変換による発熱機能と吸湿による発熱機能の両方の機能を有することで高い保温性を発現できる繊維を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の目的に対して、染色が困難であるとされている架橋アクリル酸系繊維を濃色に染色できれば、光熱変換性と吸湿性を両立しうるという着想から鋭意検討を進めた結果、以下に示す本発明に到達した。
(1) 染着座席となる官能基を有する重合体の領域と、これとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維であって、
前記染着座席となる官能基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施して得られるもの、または、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体であり、
前記架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものであり、
かつ、波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、20℃65%RH下における飽和吸湿率が15重量%以上50重量%以下である保温性繊維。
(2) 染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造を有することを特徴とする(1)に記載の保温性繊維。
(3) 前記染料がアニオン染料であることを特徴とする(1)または(2)に記載の保温性繊維。
(4) 染着座席となる官能基を有する重合体の領域と、これとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維であって、
前記染着座席となる官能基を有する重合体が、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体であり、
前記架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものであり、
かつ、波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、20℃65%RH下における飽和吸湿率が15重量%以上50重量%以下である保温性繊維。
(5) 染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造を有することを特徴とする(4)に記載の保温性繊維。
(6) 前記染料がカチオン染料であることを特徴とする(4)または(5)のいずれかに記載の保温性繊維。
本発明の保温性繊維は、高い吸湿性を有する一方で、染色された繊維である。該繊維の吸湿性は従来の架橋アクリル系繊維に準ずる高いレベルであり、濃色に染色されていることにより光熱変換性も実用的なレベルとなっている。かかる本発明の保温性繊維は以下のような作用を有している。
すなわち、本発明の保温性繊維は太陽光を照射されているときには光熱変換性により発熱を続ける。その後、遮光状態となると光熱変換性による発熱がなくなるため繊維の温度が低下し始めるが、同時に太陽光照射時の発熱で乾燥状態にあった繊維が吸湿し始めるため、吸湿による発熱が起こる。本発明の保温性繊維はかかる作用により、太陽光を利用して効率的に発熱し、遮光状態となっても温度低下が抑制されるという効果を有するものであり、保温性の求められる衣料品や防寒具などに用いる素材として有用なものである。
[平均反射率について]
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の保温性繊維は、後述する測定法による波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。かかる平均反射率が60%を超える場合には、光の吸収量が少なくなり、光熱変換による発熱が実感できるレベルのものとならない。また、該平均反射率の下限が0%となることは言うまでもない。
ここで、JIS C 8911の基準太陽光の定義においては太陽光の放射スペクトルの波長領域は305nm〜4045nmとされているので、本来であればこの305nm〜4045nmの反射率を測定することが望ましい。しかし、一般的な分光光度計の性能においては900nmが適切に測定をできる上限である。長波長を測定できる機器はあるが高価で一般的でない。また、305〜900nmの範囲の波長の光の有するエネルギーは地表に到達する太陽光エネルギーの約7割を占める。これらのことから、本発明においては波長300nm〜900nmでの平均反射率を採用する。
[染色されていることについて]
本発明の保温性繊維は染色されている繊維である。すなわち、本発明の保温性繊維においては、染色に用いる染料の種類や染色濃度によって上記の平均反射率を得るようにする。採用する染料としては、該染料で染色して得られる保温性繊維の平均反射率が上記範囲内となるような染料を選択する。ここで、本発明において「染色されている」とは、染料が容易に脱落したり、変色したりせず、安定した染色状態を保てるということであり、具体的にはJIS L 0848による汗染色堅牢度が3−4級以上であることを指す。なお、本発明の保温性繊維は、JIS L 0848による汗染色堅牢度が4級以上であることがより好ましい。
従って、用いる染料としては、少なくとも染色前の繊維の染着座席となる官能基の種類に対応する染料を選択することが望ましい。すなわち、染着座席がアミノ基などのカチオン性を示す官能基であればアニオン染料を選択し、染着座席がスルホン酸基などのアニオン性を示す官能基であればカチオン染料を選択することが好ましい。なお、本発明におけるアニオン染料としては、酸性染料、反応染料あるいは直接染料などを挙げることができる。このうち、酸性染料としては、均染型酸性染料、ミリング型酸性染料、ハーフミリング型酸性染料などが挙げられるほか、1:1型金属錯塩酸性染料や1:2型金属錯塩酸性染料などの含金染料、あるいは酸性媒染染料なども採用することができる。また、反応染料としては、ビニルスルホン系反応染料のものや多官能型反応染料などが挙げられる。かかるアニオン染料としてはスルホン酸基を有するものが好ましい。
[飽和吸湿率について]
また、本発明の保温性繊維は後述する測定法による20℃65%RH下における飽和吸湿率の下限が15重量%以上であり、好ましくは20重量%以上である。かかる飽和吸湿率が15重量%未満であれば、吸湿に伴う発熱量が小さくなりすぎ、遮光されたときの温度低下を抑制する効果が得られなくなる。一方、かかる飽和吸湿率の上限は、50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下である。飽和吸湿率が50重量%を超える場合、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域が過大で染着座席となる官能基を有する重合体の領域が小さすぎる状況で、十分な光熱変換性を得られるほどの染色をすることが困難となったり、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の架橋構造が過少な状況で、該領域が吸湿時脆弱となって加工や実用において支障が出たりする場合がある。なお、「RH」は相対湿度を表し、65%RHは相対湿度65%を意味する。
かかる飽和吸湿率を得る手段としては、繊維重量に対してカルボキシル基を1.0〜10mmol/g、好ましくは2.0〜6.0mmol/gを含有させ、かかるカルボキシル基の50%以上を塩型カルボキシル基とする手段が挙げられる。カルボキシル基量が10mmol/gを上回る場合は、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域が吸湿あるいは吸水時に脆弱となり、重合体の脱落を引き起こし、繊維形状や吸湿性能を維持できない場合がある。また、塩型カルボキシル基を構成する陽イオンの例としては、Li、Na、K等のアルカリ金属、Be、Ca、Ba等のアルカリ土類金属、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等の金属、NH、アミン等の陽イオンなどが挙げられ、複数種類の陽イオンが混在していてもよい。
[繊維の構成する重合体の役割について]
また、本発明の保温性繊維は、染着座席となる官能基を有する重合体の領域とこれとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維である。
本発明の保温性繊維において、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域は、該繊維の大きな特徴の一つである吸湿性能を主に担う部分である。架橋構造とカルボキシル基を有する重合体は、高い親水性を有するカルボキシル基を多量に有することにより高い吸湿性能を発現し、また、架橋構造を有することにより重合体の溶出や脱落などを防ぐ。ここで、カルボキシル基はカチオン染料とイオン結合しうるが、結合力が弱く、吸湿などにより水分に囲まれた状態になると容易に解離してイオン交換するために染色堅牢度が悪く、安定した染色状態を保てるような染色はできない。本発明では、かかる領域とは別に、染色性を担う部分として染着座席となる官能基を有する重合体の領域を設けることで、安定した染色状態を保てるようにしている。染着座席となる官能基を有する重合体は、染色に十分な量の染着座席となる官能基を有するとともに、吸湿などにより多くの水分を含むことがないよう、カルボキシル基などの高い親水性を有する官能基の量が抑制されたものとする。これにより一旦染着座席に結合した染料は容易に脱落することなく、JIS L 0848による汗染色堅牢度として3−4級以上の良好な染色性を発現させ、安定した染色状態を保つことが可能となる。
かかる染着座席となる官能基を有する重合体としては、アニオン染料染着座席となる官能基、すなわちカチオン性基を有する重合体やカチオン染料染着座席となる官能基、すなわちアニオン性基を有する重合体が挙げられる。言うまでもないが、本発明の保温性繊維は、前者の場合はアニオン染料で染色されたものであり、後者の場合はカチオン染料で染色されたものである。
[アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体について]
アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体としては、染色堅牢度や発色性の観点から、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体や、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施して得られるものなどを好ましく用いることができる。なお、本願発明においては、アクリロニトリルを主成分とする重合体をアクリロニトリル系重合体とも表記し、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体をカチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体とも表記する。
ここで、アニオン染料染着座席となる官能基としては、特に限定はないが、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基などのカチオン性基が挙げられる。
また、アクリロニトリルを主成分とするとは、本発明において重合体中にアクリロニトリルを40〜100重量%結合含有することを言う。アクリロニトリル以外の単量体の成分としては、特に制限はなく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体及びその塩;スチレン、酢酸ビニル等の単量体等を挙げることができる。ここで、カチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とした場合、該単量体のカチオン性基はアニオン染料の染着座席として機能する。
かかるカチオン性基を有するビニル系単量体としては、例えば化1、化2および化3で示される単量体を挙げることができる。ここで、化1、化2および化3において、R1は水素またはC4以下のアルキル基を、R2、R3及びR4はそれぞれC4以下のアルキル基を、R5はC4以下のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、R6はC4以下のアルキレン基、XはCl、Br、I、CHCOO、CHSOまたははSCNを示し、mは2〜4の整数を、nは0又は1の整数を示す。
Figure 0005765570
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これらカチオン性基を有するビニル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどを挙げることができる。
また、アクリロニトリル系重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施した場合には、かかる窒素含有化合物とアクリロニトリル由来のニトリル基が反応して重合体中に架橋構造が形成されるが、このときニトリル基と反応しなかった官能基やニトリル基とは反応したが架橋構造を形成するに至らずに副生したアミノ基などの官能基がアニオン染料染着座席となる官能基として機能すると考えられる。
1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物としては、2個以上の1級アミノ基を有するアミノ化合物やヒドラジン系化合物が好ましい。1分子中の窒素原子の数の上限は特に制限されないが、12個以下であることが好ましく、さらに好ましくは6個以下であり、特に好ましくは4個以下である。1分子中の窒素原子の数が上記上限を超えると架橋剤分子が大きくなり、重合体中に架橋を導入しにくくなる場合がある。
2個以上の1級アミノ基を有するアミノ化合物としては、エチレンジアミン、へキサメチレンジアミンなどのジアミン化合物、ジエチレントリアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)などのトリアミン系化合物、トリエチレンテトラミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロピレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブチレンジアミンなどのテトラミン系化合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどで2個以上の1級アミノ基を有するポリアミン系化合物が例示される。
また、ヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭化水素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネートなどが例示される。
[カチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体について]
また、カチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体としては、スルホン酸基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体が挙げられ、なかでも、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともスルホン酸基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体(以降、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体とも言う)が好適に採用できる。スルホン酸基はカルボキシル基と比べて、カチオン染料との結合力が強く、染色堅牢度を高くできる。
ここで、スルホン酸基を有するビニル系単量体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、4−スルホブチル(メタ)アクリレート、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートやこれらの単量体の金属塩などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有するビニル系単量体とアクリロニトリル以外の単量体を用いる場合に採用しうるビニル系単量体としては、特に制限はなく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物やスチレン、酢酸ビニル等の単量体等を挙げることができる。
[架橋構造とカルボキシル基を有する重合体について]
一方、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体としては、アクリロニトリル系重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものを挙げることができる。前者の処理においては、窒素含有化合物とアクリロニトリル由来のニトリル基を反応させて、重合体中に架橋構造を形成し、後者の処理においては、ニトリル基を加水分解してカルボキシル基を形成させる。これにより、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が得られる。
かかるアクリロニトリル系重合体および1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物としては、上述したものと同様のものを例示することができる。また、加水分解処理については、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などのアルカリ性金属塩化合物を使用することができる。
なお、ここに例示した架橋構造とカルボキシル基を有する重合体については、アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体として例示した重合体と同様に、アクリロニトリル系重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施しているが、アニオン染料で安定した染色状態を保つことのできる染色をすることはできない。これは架橋処理で一旦アニオン染料染着座席となる官能基が形成されるものの、加水分解処理を行うことによってかかる官能基が変化して、アニオン染料染着座席として機能しなくなるためであると考えられる。
[繊維中の領域の構成について]
本発明の保温性繊維は上述した染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域のみから構成されていてもよいし、これらの領域の他にこれらの領域を構成する重合体が混在する領域やこれらの領域を構成する重合体とは異なる重合体で構成される領域が存在してもよい。ここで、領域とは、単繊維中の一部分のことを指しており、例えば、染着座席となる官能基を有する重合体の領域とは、単繊維中において染着座席となる官能基を有する重合体で形成されている部分のことを指す。これらの領域の配置の代表的な例としては、染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造、染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を繊維径方向に交互に積層した多層構造、あるいは、染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の一方を海部、他方を島部とする海島構造などを挙げることができる。
染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の比率については、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の割合が高いほど吸湿率の高い繊維が得られるが、一方で染着座席となる官能基を有する重合体の領域の割合が低くなり、発色性は低下傾向となる。吸湿性及び発色性の両方のバランスのとれた繊維を得るには、乾燥状態において繊維断面積の20〜80%、より好ましくは30〜70%の面積を染着座席となる官能基を有する重合体の領域が占めるようにすることが望ましい。
ここで、上述の面積比率は、染料による染色処理後、乾燥した繊維を切断し繊維断面を光学顕微鏡で観察することにより算出することができる。すなわち、染色されている領域が染着座席となる官能基を有する重合体の領域で、染色されていないあるいは染色が確認できない領域が架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域とする。なお、このとき染着座席の種類に対応する染料を使用することは言うまでもない。
[アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域を含む繊維の製造方法について]
上述してきた染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維の製造方法としては、いくつかの方法を挙げることができる。例えば、アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維を得る方法としては、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維を原料繊維として、該繊維に対して部分的に架橋処理および加水分解処理を施す方法を挙げることができる。かかる方法においては、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の一部が架橋処理および加水分解処理により架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域に変換され、変換されなかった部分がアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域となる。
ここで、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維においては、繊維重量に対して0.15mmol/g以上、好ましくは0.17mmol/g以上のカチオン性基を有するものであることが望ましい。カチオン性基が0.15mmol/gに満たない場合は、十分な反射率を得ることのできる発色性を得るため、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を小さくすることが必要となる場合がある。なお、上限については、特に制限はないが、染色の均一性の観点から見た場合、0.40mmol/g以下であることが望ましい。
また、アクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維を原料繊維として、該繊維に対して、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による架橋処理を施した後、加水分解処理を施す方法であって、前記架橋処理を施す範囲よりも前記加水分解処理を施す範囲を小さくする方法も採用できる。かかる方法においては、まず、架橋処理により、架橋構造とともにアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域が形成され、その後の加水分解処理により該領域の一部が架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域に変換される。なお、かかる方法において、アクリロニトリル系重合体として、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体を用いた場合には、アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域において、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による架橋処理に由来するカチオン性基に加え、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体に由来するカチオン性基が含まれることになるため、カチオン性基量を高められ、より濃色に染めやすくすることができ、光熱変換による発熱量向上に有利である。
この他に、アニオン染料染着座席となる官能基を有さないアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維を原料繊維とし、これにアニオン染料染着座席となる官能基を導入した後に部分的に架橋処理および加水分解処理を施す方法や、アクリロニトリル系重合体以外のアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体を含有するアクリロニトリル系繊維を原料繊維とし、これに部分的に架橋処理および加水分解処理を施す方法なども採用することができる。
なお、上記に列挙した製造方法において、原料繊維となるアクリロニトリル系繊維中のアクリロニトリル系重合体の割合については、繊維物性や繊維形成性の観点から、アニオン染料染着座席となる官能基の有無に関わりなく、80〜100重量%であることが望ましい。
また、原料繊維となるアクリロニトリル系繊維が、少なくとも、アクリロニトリルの含有率の異なる2種のアクリロニトリル系重合体からなり、かかる含有率の差が2重量%以上であることも好ましい。これにより、架橋、加水分解のされやすさに差が生まれ、アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域が形成されやすくなる。
かかるアクリロニトリル系繊維は、2種のアクリロニトリル系重合体がサイドバイサイドに接合されてなるものでも、ランダムに混合されてなるものでも構わないが、A−B−A層からなる3層構造でなるもの、あるいは芯鞘構造のものがより好ましく、B層もしくは芯の部分がアクリロニトリルの含有率が高く、かつ多くのカチオン性基を有するものであることが好ましい。具体的には、B層もしくは芯の部分のアクリロニトリル含有率が82重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上であることが望ましく、カチオン性基の含有量が0.15mmol/g以上、好ましくは0.17mmol/g以上であることが望ましい。
なお、A−B−A層からなる3層構造のアクリロニトリル系繊維を得る方法としては、特開2000−45126号公報に記載の方法などが採用でき、この際、A成分の原液粘度がB成分の原液粘度より低くなるようにし、B成分の繊維表面への露出を少なくすることが好ましい。
以上に説明したアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維の製造方法としては、カチオン性基を有するアクリロトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維を1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物により架橋処理した後、アルカリ性金属塩水溶液により加水分解処理すること、あるいはこれらの処理を同時に行なうことにより、繊維の表層部に架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を形成し、芯部にカチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を残す方法が製造設備やコストの面から望ましい。かかる方法について以下に詳述する。
かかる方法においては、上述したカチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維に、上述した1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物を含有する水溶液による架橋導入処理およびアルカリ性金属塩化合物を含有する水溶液による加水分解処理を施す。これらの処理は架橋処理後に加水分解処理を施すという個別処理で行なうこともできるし、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物とアルカリ性金属塩化合物を共存させた水溶液を用いる同時処理で行うこともできる。いずれの場合も1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物とアクリロニトリル系繊維の表層部のアクリロニトリル系重合体が有するニトリル基が反応することで架橋構造が形成され、またアルカリ性金属塩化合物水溶液とニトリル基が反応することでカルボキシル基が形成され、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体に変換される。
上記架橋処理および加水分解処理の具体的な方法としては、処理に用いる水溶液に繊維を浸漬した状態で反応させる方法を採用することができる。また、個別処理、同時処理のいずれの場合においても、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物の濃度としては、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%である。この濃度が低すぎると架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の溶出抑制の効果が得られないことがある。一方、架橋構造の導入を繊維の表層部に止めるには、この濃度を5重量%以下とすることが望ましい。また、アルカリ性金属塩化合物の濃度については、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%である。アルカリ性金属塩化合物の濃度が低すぎると生成されるカルボキシル基量が不十分となることがある。一方、この濃度を5重量%以下に抑制することでカルボキシル基の導入を繊維の表層部に止め、芯部にカチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を残すようにできる。
また反応温度および時間については、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物および/またはアルカリ性金属塩化合物の濃度に応じて適切な範囲が異なる。同時処理の場合で、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物の濃度が0.5〜2重量%程度、アルカリ性金属塩化合物の濃度が1〜2重量%程度であれば、90〜100℃で2時間程度の条件が推奨される。
上記の個別処理の場合、架橋処理を経た繊維は、加水分解処理の前に酸処理を施してもよい。かかる酸処理により、繊維の着色を淡色化することができる。ここで使用する酸としては、硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸の水溶液、有機酸等が挙げられるが、特に限定されない。また、処理条件としては、酸濃度5〜20重量%、好ましくは7〜15重量%の水溶液に、温度50〜120℃で0.5〜10時間被処理繊維を浸漬するといった例が挙げられる。ただし、かかる酸処理は加水分解を進め、最終的に得られる繊維に残すべきアクリロニトリル系重合体、すなわち、アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域を減少させる効果があるため、このことを勘案して条件を設定することが肝要である。
以上のようにして得られた加水分解あるいは架橋・加水分解同時処理後の繊維は、そのままでもアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維として利用できるが、さらに酸性水溶液によって洗浄してもよい。これにより、より高白度の繊維を得ることができ、染色後の色相が良好なものとなりやすい。
また、アニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維の製造方法としては、上述したアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維を原料繊維として、該繊維に対して、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による架橋処理を施した後、加水分解処理を施す方法であって、前記架橋処理を施す範囲よりも前記加水分解処理を施す範囲を小さくする方法も好ましい方法である。かかる方法においては、架橋処理を施す範囲を加水分解を施す範囲よりも広くするため、まず、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物の濃度を高く設定した溶液で架橋処理を施し、その後加水分解処理を行う。例えば、芯鞘構造とする場合であれば、繊維全体に架橋処理を施すため、窒素含有化合物の濃度を好ましくは7〜20重量%、より好ましくは10〜20重量%として、90〜120℃で1〜3時間程度処理を行う。かかる処理後の繊維表層部の加水分解処理の条件については、アルカリ性金属塩化合物の濃度が1〜2重量%程度であれば、90〜100℃で1〜2時間程度の条件を採用すればよく、必要に応じ上述した酸処理の調整も行えばよい。
[カチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域を含む繊維の製造方法について]
上述した染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維のうち、カチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維を得る方法としては、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維やアクリル系スルホン酸基含有樹脂を含有するアクリロニトリル系繊維を原料繊維として、該繊維に対して部分的に架橋処理および加水分解処理を施す方法を挙げることができる。
ここで、原料繊維となるアクリロニトリル系繊維においては、繊維重量に対して0.03mmol/g以上のスルホン酸基を有するものであることが必要であり、好ましくは0.05mmol/g以上、より好ましくは0.055mmol/g以上、さらに好ましくは0.065mmol/g以上のスルホン酸基を有するものであることが望ましい。
アクリロニトリル系繊維にスルホン酸基を導入する方法としては、アクリロニトリル系重合体を重合して得る際にレドックス触媒を用いて末端にスルホン酸基を導入する方法や、上述したスルホン酸基含有単量体を共重合させる方法を採用することができる。
また、アクリロニトリル/アクリル酸メチルエステル/スチレンパラスルホン酸ソーダ単量体からなるアクリル系スルホン酸基含有樹脂等をアクリロニトリル系重合体に混合して紡糸を行い、原料繊維を得る方法も採用することができる。かかる原料繊維としては、80重量%以上のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系重合体90〜99重量%と残部が10〜70重量%のアクリロニトリルを結合含有するアクリル系スルホン酸基含有樹脂1〜10重量%とからなるものであることが好ましい。
また、上述したアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維の場合と同様に、原料繊維となるアクリロニトリル系繊維が、少なくとも、アクリロニトリルの含有率の異なる2種のアクリロニトリル系重合体からなり、かかる含有率の差が2重量%以上であることも好ましい。A−B−A層からなる3層構造でなるもの、あるいは芯鞘構造のものの場合、B層もしくは芯の部分のアクリロニトリル含有率が82重量%以上であることが好ましく、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、スルホン酸基の含有量が0.05mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.07mmol/g以上、さらに好ましくは0.1mmol/g以上である。
上述したようなスルホン酸基を含有するアクリロニトリル系繊維に対して、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物により架橋を導入し、アルカリ性金属塩水溶液により加水分解すること、あるいはそれらの処理を同時に行なうことにより部分的に架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を形成し、スルホン酸基を含有するアクリロニトリル系重合体の領域、すなわち、カチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域を残すことができる。なお、架橋の導入や加水分解において推奨される条件や薬剤については、上述したアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域からなる繊維の製造方法におけるカチオン性基を有するアクリロトリル系重合体からなるアクリロニトリル系繊維に対する処理と同様である。
以上の方法によりカチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を得ることができるが、該繊維においてはさらに熱処理を施すことが好ましい。熱処理を行う工程は、上述した工程のどの工程の間でもよく、また架橋加水分解前であっても、上記工程のすべての工程が終了した後でも構わないが、架橋加水分解後、あるいは酸性水溶液による洗浄後に行うことが望ましい。この熱処理により発色性が向上し、染色による反射率の調整も容易となる。
かかる熱処理は、湿熱であっても乾熱であっても構わないが、100〜130℃の熱水により、10秒以上、好ましくは10分以上処理することが望ましい。なお、アクリロニトリル系繊維のスルホン酸基が0.05mmol/g以上の場合、あるいはアクリル系スルホン酸基含有樹脂によりかかる量以上のスルホン酸基を含有せしめた場合、さらには、2種以上のアクリロニトリル系重合体を使用した場合には、必ずしも必要ではないが、より優れた発色性を得るためには、熱処理を行うことが好ましい。
[染色方法について]
本発明の保温性繊維は、以上のようにして得られた染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維に対して、染色を施すことにより得ることができる。
染色する方法としては、用いる染料の種類によって一般的に行われている染色方法を採用することができる。例えば、上述してきたようなアクリロニトリル系繊維を原料にして得られたカチオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維に対しては、一般的なアクリル繊維用のカチオン染料を用いて、アクリル繊維を染色する方法と同様の方法を用いることにより、染色を施すことができる。また、アクリロニトリル系繊維を原料にして得られたアニオン染料染着座席となる官能基を有する重合体の領域と架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域からなる繊維に対しては、アニオン染料を用いて、酸性可染性アクリル繊維を酸性染料で染色する方法と同様の方法によって染色することができる。
なお、染色処理においてはpH調整を行うため、得られた繊維中のカルボキシル基のカウンターイオンはそのpHの度合いや使用した薬剤の種類に基づくものとなっている。上述したように飽和吸湿率を15重量%以上とするにはカルボキシル基の50%以上を塩型カルボキシル基とすることが望ましく、必要に応じて染色後の繊維を金属塩の水溶液などで処理して、塩型カルボキシル基量や塩型の種類を調整することにより本発明の保温性繊維が得られる。なお、金属塩の種類としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Ba、Alなどの水酸化物,ハロゲン化物,硝酸塩,硫酸塩,炭酸塩などが挙げられる。
[本発明の保温性繊維の有する効果について]
上述してきた本発明の保温性繊維は、高い吸湿性と光熱変換性とを併せ持つ繊維である。かかる本発明の保温性繊維は太陽光を照射されているときには光熱変換により発熱を続け、遮光状態となっても吸湿に伴う発熱によって温度低下が抑制されるという効果を発現する。本発明の繊維としては、後述する光熱変換効果と吸湿発熱効果の測定において、比較用試料との温度差が、照射開始10分後においては1℃以上、好ましくは2℃以上、さらに好ましくは3℃以上であることが望ましく、また、遮光開始10分後においては2℃以上、好ましくは2.5℃以上、さらに好ましくは3℃以上あることが望ましい。照射開始10分後の温度差が1℃に満たない場合や遮光開始10分後の温度差が2℃に満たない場合は、衣料品などの実用の場において保温効果の優位性が感じられない場合がある。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。実施例中の特性の評価方法は以下のとおりである。
(1)カルボキシル基量
十分乾燥した試料約1gを精秤し(A[g])、これに200mLの水を加えた後、50℃に加温しながら1mol/L塩酸水溶液を添加してpH2にし、次いで0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求める。該滴定曲線からカルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(B[mL])を求め、次式によってカルボキシル基量を算出する。
カルボキシル基量[mmol/g]=0.1×B/A
(2)原料繊維のカチオン性基量
十分乾燥した試料約0.5gを精秤し(C[g])、イオン交換が十分行われる量の0.1mol/L塩酸水溶液(D[mL])が入ったビーカーに浸漬する。試料をろ過し、ろ液にフェノールフタレイン溶液を指示薬として添加する。このろ液を0.1mmol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、残留塩酸を定量した。その時の水酸化ナトリウム水溶液の滴定量をE[mL]として、次式により、カチオン性基量を算出した。
カチオン性基量[mmol/g]=(0.1×D−0.1×E)/C
(3)原料繊維のスルホン酸基量
十分乾燥した試料約0.25gを精秤し(S[g])、20mLのジメチルホルムアミドに溶解させた。次いでアンバーライトIR−120B(ローム・アンド・ハース株式会社製、強酸性カチオン交換樹脂)10mLを加え、15分間撹拌した後、ろ別した。ジメチルホルムアミドを加えてろ液を50mLに希釈し、0.0075mol/Lの水酸化ナトリウムエタノール溶液で伝導度滴定を行い、滴定曲線を求めた。該滴定曲線からスルホン酸基に消費された水酸化ナトリウム消費量(V[mL])を求め、次式によってスルホン酸基量を算出した。
スルホン酸基量[mmol/g]=0.0075V/S
(4)汗染色堅牢度
染色された繊維試料について、JIS−L−0848による汗染色堅牢度を評価する。
(5)アクリロニトリル系重合体の領域の断面積比率
以下の方法で染色された繊維を切断し、繊維断面を光学顕微鏡で観察することにより算出する。
・アニオン染料染着座席を含有する繊維の場合
試料を、該試料の重量に対して5%の酸性染料Supranol Black VLG(DyStar社製)と試料重量に対して2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入し、沸騰状態で30分間浸漬した後、水洗する。次いで、得られた繊維を1g/LのデモールN(花王株式会社製)が入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗、乾燥を行って、染色された繊維試料を得る。
・カチオン染料染着座席を含有する繊維の場合
試料を、該試料の重量に対して2.5%のカチオン染料Nichilon Black G 200%(日成化成株式会社製)および2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入し、沸騰状態で30分間浸漬した後、水洗する。次いで、得られた繊維を2g/Lのハイドロサルファイトが入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗、乾燥を行って、染色された繊維試料を得る。
(6)平均反射率
試料1gを解繊し、手で引き揃え、金ぐしで表面を整える。このようにして繊維の方向を揃えた試料を引き揃えた方向が縦になるように、U−3010形分光光度計(日立製作所製)の試料台にセットし、波長250nm〜1100nmの光に対する反射率(%)を測定する。測定結果から、波長300nm〜900nmの範囲について10nmごとの反射率を合計し、これをデータ数で除したものを平均反射率[%]とする。
(7)飽和吸湿率
試料約5.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(F[g])。次に該試料を20℃、65%RHの条件に調節した恒温恒湿器に24時間入れておく。このようにして吸湿させた試料の重量を測定する。(G[g])。以上の測定結果から、次式によって算出する。
飽和吸湿率[%]=(G−F)/F×100
(8)光照射時の昇温効果と遮光時の保温効果
繊維試料からメートル番手30番手単糸の紡績糸を作成する。該紡績糸を用い14ゲージ2プライで天竺の編地を作成し、一辺15cmの正方形に裁断して測定用試料とする。一方、通常の染色していない1.7dtexのアクリロニトリル系繊維(日本エクスラン工業(株)エクスランK8−1.7T)を用いて、上記と同様にして紡績糸、天竺の編地を作成し、一辺15cmの正方形に裁断して比較用試料とする。これらの測定用試料および比較用試料のそれぞれの中央部に熱電対温度センサーを設置し、次いで、発泡スチロール製の試料台の上に前記センサーが下側になるように各試料を置く。
このようにして準備した試料に対して、23℃、45%RHの測定環境の下、写真用レフランプ(パナソニック株式会社製PRF−500WB)を用いて、照射距離30cmとして照射を10分間行い、直ちに消灯して遮光状態で10分間静置する。この間20分間の試料温度を1分間隔で測定する。測定結果から、照射開始10分後および遮光開始10分後の温度について、比較用試料との温度差を求める。前者は光照射時の昇温効果を反映し、後者は遮光時の保温効果を反映するものである。
[アニオン染料染着座席を含有する繊維Aの製造方法]
アクリロニトリル86%、アクリル酸メチル11%および(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル3%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率:10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥後、湿熱処理して単繊維繊度2.2dtex、カチオン性基量0.18mmol/gの原料繊維a(繊維長51mm)を得た。該原料繊維に、水加ヒドラジン0.4%および水酸化ナトリウム2%を含有する水溶液中で、90℃×2時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Aを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
[アニオン染料染着座席を含有する繊維Bの製造方法]
繊維Aの原料繊維aに、水加ヒドラジン0.4%および水酸化ナトリウム2%を含有する水溶液中で、90℃×1.5時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Bを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
[アニオン染料染着座席を含有する繊維Cの製造方法]
アクリロニトリル90%、アクリル酸メチル9.7%およびメタアリルスルホン酸ナトリウム0.3%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率:10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥後、湿熱処理した単繊維繊度2.2dtexの原料繊維c(繊維長51mm)を得た。該原料繊維に、水加ヒドラジン10%を含有する水溶液中で110℃×1時間処理し、その後、水酸化ナトリウムを1.6%含有する水溶液で100℃×1時間、表層部の加水分解処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、アクリロニトリル系重合体にヒドラジンによる架橋処理のみが施された領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Cを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
[アニオン染料染着座席を含有する繊維Dの製造方法]
繊維Aの原料繊維aを、水加ヒドラジン15%を含有する水溶液中で110℃×1.5時間処理し、その後、水酸化ナトリウムを2%含有する水溶液で100℃×1時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、カチオン性基を有するアクリロニトリル系重合体にヒドラジンによる架橋処理のみが施された領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Dを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
[カチオン染料染着座席を含有する繊維Eの製造方法]
アクリロニトリル88%、酢酸ビニル11.5%およびメタアリルスルホン酸ナトリウム0.5%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダン酸ナトリウム水溶液90部に溶解させた紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸した後、乾燥、湿熱処理して単繊維繊度1.0dtex、スルホン酸基量0.069mmol/gの原料繊維eを得た。該原料繊維を、水加ヒドラジン0.5%及び水酸化ナトリウム1.5%を含有する水溶液中、95℃で2時間架橋・加水分解処理を行い、水洗した。続いて120℃の水中で1時間熱処理した後、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Eを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
[カチオン染料染着座席を含有する繊維Fの製造方法]
アクリロニトリル48重量%、アクリル酸メチルエステル22重量%、スルホン酸基含有モノマーとしてパラスチレンスルホン酸ソーダ30重量%をアンモニウムパーサルファイト/ピロ亜硫酸ソーダのレドックス系触媒で連続重合してスルホン酸基を1.46mmol/g含有する半透明ラテックス状のスルホン酸基含有樹脂を得た。次に、アクリロニトリル88%、酢酸ビニル12%からなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.2)10部を48%ロダン酸ナトリウム水溶液90部に溶解し、紡糸原液を作成した。前記アクリロニトリル系重合体と上記スルホン酸基含有樹脂の重量比が98.8:1.5となるように、該紡糸原液に上記スルホン酸基含有樹脂を添加、混合、溶解して混合原液を連続的に作成し、紡糸装置に導いた。次いで紡糸装置に導いた混合原液を、常法に従って紡糸、延伸した後、乾燥、湿熱処理して単繊維繊度1.0dtex、スルホン酸基量0.056mmol/gの原料繊維fを得た。該原料繊維を、水加ヒドラジン0.5%及び水酸化ナトリウム1.5%を含有する水溶液中、95℃で2時間架橋・加水分解処理を行い、水洗した。続いて120℃の水中で1時間熱処理した後、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、スルホン酸基含有樹脂を含有するアクリロニトリル系重合体の領域を芯部、ヒドラジンによる架橋処理と加水分解処理を施された領域を鞘部とする芯鞘構造の繊維Fを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
[繊維Gの製造方法]
繊維Aの原料繊維aに、水加ヒドラジンの15%水溶液中で110℃×3時間処理を行い、洗浄した。得られた繊維を、8%硝酸水溶液中に浸漬し、100℃×1時間処理を行った。続いて5%水酸化ナトリウム水溶液中で100℃×1時間処理を行い、pH2以下の硝酸水溶液で洗浄し、水洗、乾燥することにより、繊維Gを得た。得られた繊維の特性を表1に示す。断面積比率の算出については、該繊維をアニオン染料染着座席を含有する繊維として染色処理を行ったが、いわゆる汚染程度の着色にとどまり、本来の染料の色とは異なる薄い色となった。また、該繊維は染色堅牢度が2級と低く、安定した染色状態を保てる繊維ではなかった。また、繊維断面を観察したところ、断面全体が薄い色となっており、本来の染料の色に染色された領域は見られなかった。このため、かかる繊維のアクリロニトリル系重合体の領域の断面積比率を求めることはできなかった。
繊維Gについては、加水分解処理条件を強くしたため、繊維全体で加水分解が起こり、原料繊維の有していたカチオン性基の多くが失われたものと考えられる。加えて、架橋剤に由来するアニオン染料染着座席となる官能基についても、加水分解により別の官能基に変化したり、あるいは、該官能基の周辺に加水分解によりカルボキシル基が多く形成され、水を吸収し膨潤しやすい構造になって、染料が染着しても水に接触して流出しやすくなったりしてアニオン染料染着座席として十分に機能しなくなったものと考えられる。
Figure 0005765570
[実施例1〜15、比較例1〜2]
上述の繊維A〜Fおよび繊維Aの原料繊維aを以下の染色手順と表2に示す染色条件により染色する。
・酸性染料、反応染料、あるいは直接染料を用いる場合
繊維試料3gを、表2に記載する染料と試料重量に対して2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入して昇温し、沸騰状態で30分間浸漬した後、徐冷し水洗する。次いで、得られた繊維を1g/LのデモールN(花王株式会社製)が入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗する。次に、繊維中のカルボキシル基に対して中和度70%となるようにソーダ灰水溶液を添加して処理した後に、水洗、乾燥を行い、染色された繊維試料を得る。
・カチオン染料を用いる場合
繊維試料3gを、表2に記載する染料と試料重量に対して2%の蟻酸が入った染色浴(浴比1:50)に投入して昇温し、、沸騰状態で30分間浸漬した後、徐冷し水洗する。次いで、得られた繊維を2g/Lのハイドロサルファイトが入った浴(浴比1:50)に投入し、60℃で15分間処理してソーピングを行い、水洗する。次に、繊維中のカルボキシル基に対して中和度70%となるようにソーダ灰水溶液を添加して処理した後に、水洗、乾燥を行い、染色された繊維試料を得る。
上記のようにして染色された繊維について、汗染色堅牢度、波長300nm〜900nmでの平均反射率、20℃、相対湿度65%雰囲気下における飽和吸湿率、および、光照射時の昇温効果と遮光時の保温効果を測定した結果を表2に示す。
Figure 0005765570
実施例1〜15は、いずれも本発明の規定する平均反射率と飽和吸湿率を満足するものであり、十分な保温効果を有するものであった。一方、比較例1においては染色していないため、平均反射率が高く、光照射時の昇温効果が低くなり、遮光後に吸湿発熱するものの保温効果が劣るものとなった。また、比較例2においては、光照射時の昇温効果は高いものの、飽和吸湿率が低いため遮光後の温度低下が速く、保温効果が劣るものとなった。

Claims (6)

  1. 染着座席となる官能基を有する重合体の領域と、これとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維であって、
    前記染着座席となる官能基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に、1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理を施して得られるもの、または、アクリロニトリルを主成分とし、少なくともカチオン性基を有するビニル系単量体を共重合成分とする重合体であり、
    前記架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものであり、
    かつ、波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、20℃65%RH下における飽和吸湿率が15重量%以上50重量%以下である保温性繊維。
  2. 染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造を有することを特徴とする請求項1に記載の保温性繊維。
  3. 前記染料がアニオン染料であることを特徴とする請求項1または2に記載の保温性繊維。
  4. 染着座席となる官能基を有する重合体の領域と、これとは別の領域である架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域の少なくとも2種類の領域を含み、前記染着座席となる官能基を有する重合体の領域が染料で染色されている繊維であって、
    前記染着座席となる官能基を有する重合体が、スルホン酸基を有するアクリロニトリル系重合体であり、
    前記架橋構造とカルボキシル基を有する重合体が、アクリロニトリルを主成分とする重合体に1分子中に2個以上の窒素原子を有する窒素含有化合物による処理、および、加水分解処理を施して得られるものであり、
    かつ、波長300nm〜900nmでの平均反射率が60%以下であり、20℃65%RH下における飽和吸湿率が15重量%以上50重量%以下である保温性繊維。
  5. 染着座席となる官能基を有する重合体の領域を中心部、架橋構造とカルボキシル基を有する重合体の領域を表層部とする芯鞘構造を有することを特徴とする請求項4に記載の保温性繊維。
  6. 前記染料がカチオン染料であることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の保温性繊維。

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