JP2012076080A - 第四級アンモニウム塩をゲスト分子として含む水和物を用いて気体を捕集し放出する方法及びそのための装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ゲスト分子の水溶液を気体と接触させ、15℃以上の温度で冷却して、気体を捕集した水和物を生成させ、更にその水和物が前記水溶液又は水に分散又は懸濁してなるスラリーを生成させる第1の工程と、第1の工程で生成されたスラリーを加熱し、その中の水和物を融解させて、その水和物が捕集していた気体を放出させ、前記ゲスト分子の水溶液を生成させる第2の工程を有する気体を捕集し放出する方法。
【選択図】図1
Description
(1)「水和物」とは、包接水和物の略称である。ホストまたはホスト物質と呼ばれる分子又は化合物(即ち、ホスト分子)が構成するトンネル形、層状、網状、籠状などの構造(包接格子)内に、ゲスト物質と呼ばれる他の分子または化合物(即ち、ゲスト分子)が入り込む又は取り込まれることで形成され、生成される物質を包接化合物という。ゲスト分子の例としては、テトラnブチルアンモニウム塩、テトラisoペンチルアンモニウム塩、トリnブチル・ペンチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩に代表される第四級アンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩などがある。ホスト分子の例としては水やシクロデキストリンがある。ホスト分子が水である包接化合物が包接水和物である。本発明における「水和物」には、準包接水和物が含まれる。
(2)包接水和物のゲスト分子の水溶液、より詳しくは一種又は二種以上のゲスト分子を溶質とし、水を溶媒とする水溶液を、「ゲスト分子の水溶液」と略称する場合がある。
(3)「水和物のスラリー」とは、水和物がそのゲスト分子の水溶液又は水溶媒の中に分散又は懸濁してスラリー状を呈するに至ったものをいう。水和物が少量であっても(換言すれば水和物の存在比率が低くても)当該水溶液又は水溶媒に分散又は懸濁しているのであれば、それは「水和物のスラリー」に該当する。なお、「水和物のスラリー」を、文脈上又は便宜上単に「スラリー」という場合がある。
(4)「水和物生成温度」とは、水和物のゲスト分子の水溶液を冷却したとき、その水溶液の中で水和物が生成する温度をいう。
また、従来、気体の分離や濃縮に利用可能な水和物のゲスト分子として、第四級アンモニウム塩に属する多くの物質名が挙げられている。しかし、実際に研究対象として採用されている第四級アンモニウム塩は、ハロゲン化テトラnブチルアンモニウム(特に臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)や水酸化テトラnブチルアンモニウム(TBAOH)、フッ化テトラnブチルアンモニウム(TBAF))に概ね限定されているといってよい。
本発明の各形態が奏する作用効果は、以下のとおりである。
なお、本発明の各形態において好適なゲスト分子は、テトラisoペンチルアンモニウム塩又は、テトラisoペンチルアンモニウム塩とその他の第4級アンモニウム塩(特に、テトラnブチルアンモニウム塩に代表されるアルキルアンモニウム塩)である。
本実施の形態に係る気体分離装置は、第四級アンモニウム塩をゲスト分子として含む水和物を用いて、捕集目的である気体Aを含む混合気体から気体Aを分離して捕集し、捕集した気体Aを放出するための装置であり、図1に示すように、気体捕集装置15、気体放出装置17を備えている。
気体捕集装置15において15℃以上の温度で水溶液を冷却して水和物が生成できるようにゲスト分子の水溶液を選択している。
臭化テトラisoペンチルアンモニウム以外の第四級アンモニウム塩の一つとしては、臭化テトラnブチルアンモニウムであることが好ましい。臭化テトラnブチルアンモニウムは比較的安価で入手し易いので、臭化テトラisoペンチルアンモニウムと臭化テトラnブチルアンモニウムとを適切に配合することにより、水和物生成温度を15℃以上の温度に調整することが容易であるとともに経済的に優れた気体を捕集し放出する方法を構成することができる。
以下、本実施の形態の各装置の構成を詳細に説明する。
気体捕集装置15は、気体放出装置17から導入した第四級アンモニウム塩の水溶液と混合気体を混合し、15℃より高い温度で冷却し、気体Aを含む水和物を生成させることによって混合気体から気体Aを捕集する。そして、気体捕集装置15は、水和物のスラリーを生成させる機能を有している。
このような機能を有する気体捕集装置15は、混合器9、水和物スラリー生成器11、分離器13を備えている(図2参照)。
以下、これらの各機器について説明する。
第四級アンモニウム塩の水溶液(以下、単に「水溶液」という場合がある)の供給を受け、この水溶液に混合気体を供給してこれらを混合する。
水溶液への混合気体の供給は相対的なものであり、水溶液に向けて気体を放出する場合は勿論、混合気体に向けて水溶液を放出する場合もこれに該当する。前者の典型例は、水溶液が存在する領域への当該領域外からの気体のバブリングであり、その場合、気泡粒径は小さいほど好ましい。これを実現する混合器9の一つの態様としては、混合器9が水溶液を充填したタンクからなり気体が微細な気泡として水溶液中に分散されるようなものがある。この場合、気液接触面積が大きく取れるように気泡径は小さいほうが好ましい。
後者すなわち混合気体に向けて水溶液を放出する場合の典型例は、気体が存在する領域への当該領域外からの水溶液の噴霧であり、その場合水溶液滴径は小さいほど好ましい。これを実現する混合器9の態様として、気体を充填した容器内に水溶液をスプレーノズルにより噴霧して気体と接触させ水溶液に気体を溶解させるようなものがある。
前者、後者のいずれの場合においても、水溶液への気体の供給は、気体と水溶液との接触面積をより高める手法により行われることが好ましい。
水和物スラリー生成器は、冷却機能を備えており、混合器で混合された第四級アンモニウム塩の水溶液と混合気体を含む水溶液を冷却して気体Aと第四級アンモニウム塩をゲストとして含む包接水和物を生成する。
なお、水和物スラリー生成器には攪拌機構を設けるのが好ましい。
水和物スラリー生成器においては、冷却によって包接水和物が生成され、攪拌が行われることにより、包接水和物粒子が水溶液に分散した水和物スラリーが生成される。
また、水溶液が攪拌されながら冷却されることにより過冷却が速やかに解除されるので、水和物スラリーを効率よく生成できる。
また、水和物スラリー生成器においては、混合気体のうち水和物に捕集されなかった残りの部分が存在するが、これは残気体として後述の分離器13によって水和物スラリーと分離され、気体捕集装置15から排出される。
分離器13は、水和物スラリー生成器11から水和物スラリーと未反応の残気体の供給を受けて前記未反応の残気体を分離する。
分離器13の形式は任意であり、例えばサイクロンセパレータなどを利用することができるが、分離した残気体中へのスラリー液滴混入を可能な限り少なくするため、例えば衝突分離式のミストセパレータを併せて用いることが望ましい。
気体放出装置17は、加熱機能を備えており、気体捕集装置15で生成された水和物スラリーを導入し、これをさらに加熱して、水和物を融解させ水溶液を生成し、水和物に捕集されていた気体Aを放出させる。加熱機能としては熱媒を供給して加熱する熱交換器を備えることが好ましい。
気体Aと水溶液からなる混合流体は図示しない第2分離器に導入され、水溶液と気体Aとに分離され、水溶液は気体捕集装置15に送られる。分離された気体Aは排出され、適宜貯槽等に貯留されるか、又は次の処理プロセスに導入される。
捕集目的である気体A、例えば二酸化炭素を含む混合気体を気体捕集装置15に導入し(図3参照)、混合器によって第四級アンモニウム塩の水溶液と混合し、混合気体を水溶液に溶解する。
混合器によって第四級アンモニウム塩の水溶液に混合気体が溶解された後、混合流体はポンプによって水和物スラリー生成器に送られる。水和物スラリー生成器においては、混合流体を15℃より高い温度で冷却して気体Aと第四級アンモニウム塩をゲストとして含む包接水和物を生成する。生成器内で攪拌が行われることにより、包接水和物粒子が水溶液に分散した水和物スラリーが生成される。
水和物スラリー生成器で生成された水和物スラリーと未反応の残気体が分離器に供給され、水和物スラリーと未反応の残気体が分離される。この残気体に気体Aが残存している場合には、例えば残存量が一定以下になるまで、混合気体として再循環して利用する。
分離された水和物スラリーは、気体放出装置17に導入され、気体放出装置17において加熱される(図3参照)。この加熱によって、水和物が融解し、水和物に捕集されていた気体Aが放出される。気体Aが放出されることにより、気体放出装置17には気体Aと水溶液からなる混合流体が存在することになり、この混合流体は図示しない第2分離器に導入され、水溶液と気体Aとに分離される。分離された水溶液は気体捕集装置に送られ、分離された気体Aは排出され、適宜貯槽等に貯留されるか、又は次の処理プロセスに導入される。
すなわち、実施の形態によれば、気体捕集装置15における水溶液を冷却する温度が15℃以上なので、例えば1年間のうち、外気温が15℃以上になる季節(例えば春季や夏季)においては、水溶液を、格段の冷却装置を必要とすることなく又は冷却装置が必要な場合であってもその冷却装置の運転負荷を軽減しつつ、外気の熱エネルギーを利用して水溶液を冷却することができる。これにより、エネルギー消費が相対的に少なくなり、効率的且つ経済的で、従ってより現実的な適用に耐え得る気体捕集が可能になる。
実験方法、用いた試験水溶液、試験混合気体は以下の通りである。
混合器を兼ねた水和物スラリー生成器に第四級アンモニウム塩の水溶液(以下試験水溶液という)を充填する。この試験水溶液を充填した水和物スラリー生成器に混合気体を導入し30℃にて0.5MPaに昇圧した状態で混合気体供給配管に設けたバルブを閉じ、水和物スラリー生成器の熱交換部に冷媒を供給し、水和物スラリー生成器内部の液相部を攪拌しながら30℃から試験温度(15℃、20℃)にまで冷却する。
冷却により第四級アンモニウム塩と気体を含む水和物が生成され、気体が捕集されることにより水和物スラリー生成器内部の圧力が徐々に低下する。
水和物スラリー生成器内部の圧力低下が終了した後、水和物スラリー生成器内から残留している残気体を抜き出し、残気体のガス組成をガスクロマトグラフにより測定した。また、水和物スラリー生成器から水和物スラリーを抜き出し気体放出装置へ導入し、熱交換部に熱媒体を供給して水和物スラリーを加熱して水和物を融解し、捕集した気体を放出させる。そして、放出された気体(回収気体という)を抜き出し、回収気体のガス組成をガスクロマトグラフにより測定した。
(1)臭化テトラisoペンチルアンモニウム(TiPAB)5wt%水溶液
(2)臭化テトラisoペンチルアンモニウム(TiPAB)2.5wt%と臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)2.5wt%の混合水溶液
(3)比較例として、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)5wt%の混合水溶液
二酸化炭素を5%含む混合気体(例えば高炉ガスを模擬した混合気体)
分離対象ガスは、二酸化炭素である。
また、冷却温度が低いほど目的気体を多く捕集できることを確認できた。
他方、比較例の臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)5wt%の水溶液を用いた場合、水溶液への二酸化炭素の溶解により、回収気体中の二酸化炭素濃度が試験混合気体の実験前の濃度より若干高くなるが、冷却温度が20℃または15℃の条件では、臭化テトラnブチルアンモニウムの水和物が生成せず、水和物を生成することにより目的気体を捕集することはできなかったか、捕集できたかどうか明確に確認できなかった。
11 水和物スラリー生成器
13 分離器
15 気体捕集装置
17 気体放出装置
Claims (4)
- 第四級アンモニウム塩をゲスト分子として含む水和物を用いて気体を捕集し放出する方法であって、
前記ゲスト分子の水溶液を気体と接触させ、15℃以上の温度で冷却することにより、気体を捕集した水和物を生成させ、更にその水和物が前記水溶液又は水に分散又は懸濁してなるスラリーを生成させる第1の工程と、
第1の工程において生成されたスラリーを加熱し、その中の水和物を融解させることにより、その水和物が捕集していた気体を放出させるとともに、前記ゲスト分子の水溶液を生成させる第2の工程と、を有することを特徴とする気体を捕集し放出する方法。 - 前記ゲスト分子の水溶液が、テトラisoペンチルアンモニウム塩又はテトラisoペンチルアンモニウム塩を含む二以上の種類の第四級アンモニウム塩を溶質として含むことを特徴とする請求項1に記載の気体を捕集し放出する方法。
- 第四級アンモニウム塩をゲスト分子として含む水和物を用いて気体を捕集し放出する装置であって、
前記ゲスト分子の水溶液を気体と接触させ、15℃以上の温度で冷却し、これにより気体を捕集した水和物を生成し、更にその水和物が前記水溶液又は水に分散又は懸濁してなるスラリーを生成する気体捕集装置と、
該気体捕集装置において生成したスラリーを加熱し、そのスラリーの中の水和物を融解し、これにより気体を放出するとともに、前記ゲスト分子の水溶液を生成する気体放出装置と、を備えることを特徴とする気体を捕集し放出する装置。 - 前記ゲスト分子の水溶液が、テトラisoペンチルアンモニウム塩又はテトラisoペンチルアンモニウム塩を含む二以上の種類の第四級アンモニウム塩を溶質として含むことを特徴とする請求項3に記載の気体を捕集し放出する装置。
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