以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
(第1実施形態)
図1は、本発明による静電気対策素子の一実施形態を概略的に示す模式平面図である。また、図2は、図1のII−II断面図であり、図3は、図1のIII−III断面図である。
本実施形態の静電気対策素子100は、絶縁性基板11と、この絶縁性基板11上に配設された一対の電極21,22と、これら電極21,22の間に配設された機能層31と、この機能層上に配設された網目状の中間電極41と、この網目状の中間電極41を覆うように形成された保護層51とを備える。本実施形態の静電気対策素子100において、電極21,22は、端子電極61と電気的に接続されている(図14参照)。
絶縁性基板11は、絶縁性表面11aを有する。絶縁性基板11は、少なくとも電極21,22及び機能層31を支持可能なものであれば、その寸法形状は特に制限されない。ここで、絶縁性表面11aを有する絶縁性基板11とは、絶縁性材料からなる基板の他、基板上の一部に又は全面に絶縁膜が製膜されたものを含む概念である。
絶縁性基板11の具体例としては、例えば、NiZnフェライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化アルミ、フォルステライト等の誘電率が50以下、好ましくは20以下の低誘電率材料を用いたセラミック基板や、単結晶基板等が挙げられる。また、セラミック基板や単結晶基板等の表面に、NiZnフェライトやアルミナ、シリカ、マグネシア、窒化アルミ、フォルステライト等の誘電率が50以下、好ましくは20以下の低誘電率材料からなる絶縁膜を形成したものも、好適に用いることができる。なお、絶縁膜の形成方法は、特に限定されず、真空蒸着法、反応性蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVDやPVD等の気相法等の公知の手法を適用できる。また、基板及び絶縁膜の膜厚は、適宜設定可能である。
絶縁性基板11の絶縁性表面11a上には、一対の電極21,22が相互に離間して配設されている。本実施形態では、一対の電極21,22は、絶縁性基板11の平面略中央位置にギャップ距離ΔG1を置いて、対向配置されている。ここで、ギャップ距離ΔG1は、一対の電極21,22間の最短距離を意味する。
電極21,22を構成する素材としては、例えば、Ni、Cr、Al、Pd、Ti、Cu、Ag、Au及びPtから選ばれた少なくとも一種類の金属、或いはこれらの合金等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、本実施形態では、電極21,22は、平面視で矩形状に形成されているが、その形状は特に制限されず、例えば、櫛歯状、或いは、鋸状に形成されていてもよい。
電極21,22間のギャップ距離ΔG1は、所望の放電特性を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されないが、通常、0.1〜50μm程度であり、低電圧初期放電を確保するという観点から、より好ましくは0.1〜20μm程度、さらに好ましくは0.1〜10μm程度である。なお、電極21,22の厚みΔT1は、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常、0.05〜10μm程度である。
電極21,22の形成方法は、特に限定されず、公知の手法を適宜選択することができる。具体的には、例えば、塗布、転写、電解めっき、無電解めっき蒸着或いはスパッタリング等により、絶縁性基板11上に所望の厚みΔT1を有した電極層を作成する方法が挙げられる。さらに、このように形成された電極層を、例えば、イオンミリング等の公知の手法を用いて加工することにより、所望のギャップ距離ΔG1を有した電極21,22を形成することができる。
上記の電極21,22間には、機能層31が配設されている。本実施形態では、上述した絶縁性基板11の絶縁性表面11a上及び電極21,22上に、機能層31が積層された構成となっている。この機能層31の寸法形状及びその配設位置は、過電圧が印加された際に自身を介して電極21,22間で初期放電が確保されるように設計されている限り、特に限定されない。
機能層31を構成する素材は、過電圧が印加された際に自身を介して電極21,22間で初期放電が確保されるように設計されている限り、特に限定されない。低電圧放電タイプの静電気保護材料として、例えば、Al2O3、TiO2及びSiO2、フォルステライト等の金属酸化物や金属窒化物等の絶縁性無機材料の他、絶縁性有機材料及び/又は絶縁性無機材料のマトリックス中に導電性無機材料が不連続に含まれる(一様に又はランダムに分散した)コンポジット等が知られている。低静電容量化を図る観点から、絶縁性無機材料のマトリックス中に導電性無機材料が分散したコンポジットであることが好ましい。絶縁性無機材料のマトリックス中に導電性無機材料が分散したコンポジットは、従来の機能層に比して薄膜化が容易であり、しかも、有機材料を用いた場合に比して耐久性及び耐熱性に優れ、その上さらに、温度や湿度等の外部環境への耐候性にも優れる傾向にある。
図4は、機能層31を説明するための模式平面図である。本実施形態では、機能層31として、絶縁性無機材料32のマトリックス中に導電性無機材料33が不連続に分散したコンポジットが採用されている。
機能層31は、絶縁性無機材料32のマトリックス中に島状の導電性無機材料33の集合体が不連続に点在した海島構造を有する。本実施形態では、機能層31は、逐次スパッタリングを行うことにより形成されている。より具体的には、絶縁性基板11の絶縁性表面11a上及び/又は電極21,22上に、導電性無機材料33をスパッタリングして部分的に(不完全に)成膜した後、引き続き絶縁性無機材料32をスパッタリングすることにより、謂わば、島状に点在した導電性無機材料33の層とこれを覆う絶縁性無機材料32の層との積層構造のコンポジットが形成されている。
マトリックスを構成する絶縁性無機材料32の具体例としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。絶縁性やコスト面を考慮すると、Al2O3、TiO2、SiO2、ZnO、NiO、CoO、V2O5、CuO、MgO、ZrO2、Mg2SiO4、AlN、BN及びSiCが好ましい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、絶縁性マトリックスに高度の絶縁性を付与する観点からは、Al2O3、SiO2、フォルステライト等を用いることがより好ましい。一方、絶縁性マトリックスに半導体性を付与する観点からは、TiO2やZnOを用いることがより好ましい。絶縁性マトリックスに半導体性を付与することで、放電開始電圧及びクランプ電圧に優れる静電気対策素子を得ることができる。ここで、絶縁性マトリックスに半導体性を付与する方法は、特に限定されないが、例えば、これらTiO2やZnOを単独で用いたり、これらを他の絶縁性無機材料32と併用すればよい。特に、TiO2は、アルゴン雰囲気中でスパッタリングする際に酸素が欠損し易く、電気伝導度が高くなる傾向にあるので、絶縁性マトリックスに半導体性を付与するにはTiO2を用いることが特に好ましい。
導電性無機材料33の具体例としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。導電性を考慮すると、C、Ni、Cu、Au、Ti、Cr、Ag,Pd及びPt、或いは、これらの合金が好ましい。
機能層31の層の厚み(本実施形態においては、後述するギャップ距離ΔG2に相当する。)は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。繰り返し使用の耐久性を確保する観点から、機能層31の層の厚みは、少なくとも電極21,22間のギャップ距離ΔG1より大きな値に設定することが好ましい。具体的には、10nm〜60μmであることが好ましく、100nm〜25μmであることがより好ましい。
本実施形態の如く、謂わば、不連続に点在した島状の導電性無機材料33の層と絶縁性無機材料32のマトリックスの層とを形成する場合、導電性無機材料33の層の厚みは、1〜10nmであることが好ましく、絶縁性無機材料32の層の厚みは、10nm〜30μmであることが好ましい。
機能層31の形成方法は、上述したスパッタリング法に限定されない。絶縁性基板11の絶縁性表面11a上及び/又は電極21,22上に、真空蒸着法、反応性蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVDやPVD等の気相法等の公知の薄膜形成方法を適用して、上述した絶縁性無機材料32及び導電性無機材料33を付与することにより、所望の厚みを有した機能層31を形成することができる。
上記の機能層31の表面31a上には、網目状の中間電極41が配設されている。本実施形態では、網目状の中間電極41は、断面視における電極21,22の上方に、より具体的には、断面視における電極21,22の上面からギャップ距離ΔG2(すなわち、機能層31の厚み)を置いて配置されている。ここで、ギャップ距離ΔG2は、電極21,22と網目状の中間電極41との間の最短距離を意味する。
中間電極41の網目形状は、放電経路の担保と低静電容量化のバランスを考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。網目の大きさが大きく、或いは、網目を構成するラインの幅が狭い程、低静電容量化に有利となる傾向にあり、一方、網目の大きさが小さく、網目を構成するラインの幅が広い程、放電経路の担保に有利となる傾向にある。なお、平面視における網目の形状は、特に限定されず、例えば、三角、四角、菱形、台形、六角形等の多角形状、星型や十字型その他の幾何学形状、円形、楕円形、不定形状等のいずれであっても構わない。また、網目の大きさや網目の配置間隔も、特に限定されない。例えば、網目の大きさが、一様であっても、或いは一様でなくてもよく、また、網目が一様な間隔に配置されていても、或いは配置されていなくてもよい。さらに、網目を構成する各々のラインが、一様な幅を有していても、或いは一様な幅を有していなくてもよい。
網目状の中間電極41の厚みΔT2は、適宜設定することができ、特に限定されない。放電最大電圧(ピーク電圧)の上昇を長期に亘って抑制し、静電気対策素子100の繰り返し使用の耐久性を高める観点から、厚い方が好ましい。具体的には、中間電極41の厚みΔT2は、電極21,22の厚みより厚いこと好ましい。中間電極41の厚みΔT2は、通常、0.1〜60μm程度で適宜設定すればよく、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは3〜15μmである。
平面視における網目状の中間電極41の外径サイズ、すなわち網目状の中間電極41の実装領域を構成する最大幅(図1において、紙面の上下方向)ΔWと最大長さ(図1において、紙面の左右方向)ΔLは、放電経路の担保と低静電容量化のバランスを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。本実施形態の如く、網目状の中間電極41の幅が電極21,22の幅に対して幅広に設定され、中間電極41の幅方向の両端部が平面視における電極21,22の幅方向の端部より外方に配置されていると、網目状の中間電極41と電極21,22との間の放電経路を幅広く確保しやすい傾向にある。また、本実施形態の如く、網目状の中間電極41の長さが比較的に短く設定され、網目状の中間電極41の長さ方向の両端部が電極21,22の長さ方向の端部より内方に配置されている(平面視で電極21、22間のギャップΔG1周辺のみが網目状の中間電極41によって覆われている/平面視で長さ方向において一部の電極21,22が網目状の中間電極41によって覆われていない)と、低静電容量化を確保しやすい傾向にある。
具体的には、例えば、網目状の中間電極41の最大長さ(図1において、紙面の左右方向)は、ギャップ距離ΔG1の初期値をaとし、ギャップ距離ΔG2の初期値をbとし、網目状の中間電極41の実装領域を構成する最大長さΔLをcとした場合に、a〜0.8cの範囲内であることが好ましく、3a〜0.5cであることがより好ましい。電極21,22の破壊が生じて2b<2ΔG2になった際であっても、網目状の中間電極41の長さ方向における長さを上記範囲内に設定すると、電極21、22の面内において、ギャップ距離ΔG2と略同等の距離(又は、ギャップ距離ΔG2より僅かに長い距離)に位置する中間電極41の存在確率が増加する傾向にあるため、放電最大電圧(ピーク電圧)の急激な上昇が抑制される。なお、図2では、ギャップ距離ΔG2について、電極21,22面から垂直方向のみ図示したが、ギャップ距離ΔG2はこれに限られない。
放電経路の担保と低静電容量化のバランス並びに強度および繰り返し使用の耐久性の観点から、網目状の中間電極41の開口率(中間電極41の外径サイズの面積に対する網目の総面積の割合(%))は、20〜80%であることが好ましく、より好ましくは30〜70%である。
電極21と網目状の中間電極41との間の放電経路、及び、電極22と網目状の中間電極41との間の放電経路の双方を最短距離で構成する観点から、網目状の中間電極41の実装領域は、平面視における電極21,22間を覆うように(電極21,22間にまたがるように)設定することが好ましい。
網目状の中間電極41を構成する素材としては、例えば、Ni、Cr、Al、Pd、Ti、Cu、Ag、Au、Ta、W、Mo及びPtなどから選ばれた少なくとも一種類の金属、或いはこれらの合金等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
網目状の中間電極41の形成方法は、公知の手法を適宜選択することができ、特に限定されない。具体的には、金属板或いは合金版又はそれらの金属箔をエッチング、イオンミリング、レーザ加工等の公知の手法を用いて加工して得た網目状の中間電極41を機能層31上に載置する方法、塗布、転写、電解めっき、無電解めっき蒸着、スパッタリング、フォトリソ、X線或いは電子線を用いた高分解能リソグラフィ等により機能層31上に網目状の中間電極41をパターン形成する方法、これらを複数組み合わせる方法等が例示される。
網目状の中間電極41の典型的な形成方法として、リフトオフ法について説明する。この方法では、まず、機能層31上にネガ型レジストを貼付し、次に、マスクを用いてパターン露光を行ない、未露光部分のネガ型レジストを除去することで、網目状パターンが打ち抜かれたレジスト硬化物層(マスク層)を機能層31上に、形成する。その後、スパッタリング法により、網目状に露出した機能層31上にCr及びCu等の積層金属薄膜を形成することにより、網目状の金属薄膜片を形成する。次いで、電解めっき法により、網目状の金属薄膜片上でCuをめっき成長させる。しかる後、レジスト硬化物層を除去することにより、所望の厚みΔT2を有する網目状の中間電極41を形成する。
また、網目状の中間電極41の他の典型的な形成方法として、フォトリソ法について説明する。この方法では、まず、機能層31上に、Cr及びCuの積層金属薄膜を略全面に形成する。次に、この積層金属薄膜上にレジストを略全面に塗布し、マスクを用いてパターン露光を行ない、その後、現像処理することにより、網目状にパターン形成されたレジスト硬化物層(マスク層)を作成する。そして、エッチング処理或いはミリング処理することにより非マスク領域の積層金属薄膜を除去することで、網目状の積層金属薄片を形成する。しかる後、レジスト硬化物層を除去し、その後、マスクを用いた電解めっき法により、網目状の積層金属薄膜片上でCuをめっき成長させることで、所望の厚みΔT2を有する網目状の中間電極41を形成する。
さらに、網目状の中間電極41の他の典型的な形成方法としては、例えば、スクリーン印刷方式が挙げられる。この方法では、機能層31上にCuのペーストを網目状に塗布し、必要に応じて乾燥・熱処理・硬化させる等して、網目状の中間電極41を形成する。
低静電容量化を図るためには、上記のように配置される網目状の中間電極41と電極21,22とが、平面視において重なる面積、すなわち重なり面積を小さくすることが重要である。0.01〜0.5pF程度の静電容量を実現する観点からは、重なり面積が20μm2〜1mm2程度であることが好ましく、より好ましくは100μm2〜0.1mm2程度である。
保護層51は、上記網目状の中間電極41を覆うように、機能層31上及び中間電極41上に配設されている。保護層51を構成する素材は、絶縁性を有するものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、絶縁性無機材料32で説明した絶縁性無機材料の他、ポリイミド、エポキシ等の樹脂等の絶縁性有機材料等が挙げられる。
保護層51の形成方法は、特に限定されない。上述した方法で形成された機能層31の表面31a上及び/又は中間電極41上に、公知の薄膜形成方法を適用して、絶縁性無機材料又は絶縁性有機材料を付与することにより、所望の厚みを有した保護層51を形成することができる。
以上、詳述したように、本実施形態の静電気対策素子100においては、網目状の中間電極41が配置されているので、放電時における一対の電極の負荷を軽減できるとともに放電による電極破壊にともなう(最短)ギャップ距離の意図せぬ急激な増大を抑制できるので、繰り返し放電にともなう放電最大電圧(ピーク電圧)の上昇を長期に亘り抑制することができる。また、一対の電極21と網目状の中間電極41との間に放電が生じた際、網目状の中間電極41の一部に破壊が生じていても、破壊が生じた局部に隣接するラインが有効に機能して面内方向へ電流を流すことができる。したがって、その後の放電、すなわち、網目状の中間電極41と電極22との間で生じる放電は、破壊が生じていない局部(ギャップ距離がより短い部分)で生じさせことができるので、繰り返し放電にともなう放電最大電圧(ピーク電圧)の上昇を長期に亘り抑制することができる。これらの効果に加えて、本実施形態の静電気対策素子100においては、平面視において多方向に亘りラインとスペースが形成された網目状の中間電極41を採用しているので、外径サイズ(実装領域)が同じサイズの従来技術の板状の中間電極を採用した場合に比して、重なり面積を大幅に減少することができる。よって、従来の板状の中間電極を採用したものに比して、低静電容量化が図られる。
とりわけ、本実施形態の静電気対策素子100においては、絶縁性無機材料32のマトリックス中に不連続に点在した島状の導電性無機材料33を含む機能層31が、低電圧放電タイプの静電気保護材料として機能する。そして、かかる構成を採用することにより、静電容量が小さく、ピーク電圧が低く、且つ、放電耐性に優れる、高性能な静電気対策素子100が容易に実現される。しかも、機能層31として、少なくとも絶縁性無機材料32と導電性無機材料33とから構成されるコンポジットが採用されているため、従来の有機−無機複合膜に比して、耐熱性が高められ、また、温度や湿度等の外部環境により特性が変動し難いので、信頼性が高められる。その上さらに、スパッタリング法により機能層31が形成可能であり、これにより、生産性及び経済性がより一層高められる。
(変形例)
なお、上述したとおり、本発明は、上記第1実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。例えば、図5に示す網目状の中間電極42の如く、網目の形状が四角形であって、長さ方向における電極21,22の端部と、格子状の中間電極42の端部420とが平面視において重なる(面一となる)ように配置した構成にしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
また、図6に示す網目状の中間電極43の如く、平面視における網目の形状を矩形状(長さ方向に一様な間隔で網目が配置された、いわゆる梯子形状)にしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。さらに、この図6に示す網目状の中間電極43を機能層31上に配置する際に、中間電極43の網目が電極21,22間のギャップの直上に配置された(電極21,22間のギャップの直上に網目状の中間電極43を構成するラインを配置しない)構成とすることで、放電による網目状の中間電極43の破損を一層回避することができる。さらにまた、網目状の中間電極44のライン幅を、図示の如く、長さ方向のライン幅la>幅方向のライン幅lbより広く形成すると、網目状の中間電極43と電極21、及び網目状の中間電極43と22との放電経路を確実に確保することができる。
また、図7に示す網目状の中間電極44の如く、平面視における網目の形状を格子状にしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
また、例えば、図8に示す網目状の中間電極45の如く、平面視における網目の形状が六角形であって、網目を一様な間隔で配置した構成にしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。さらに、図9に示す網目状の中間電極46の如く、平面視における枠内に、中央から長さ方向(外方)に向かって網目の大きさが異なるように配置した構成にしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。さらにまた、図10に示す網目状の中間電極47の如く、平面視における枠内に、網目形状を等方性に優れる幾何学形状のデザインパターンとしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図11に示すように、まず、絶縁性基板11(NiZnフェライト基板、誘電率:13、TDK株式会社製)の一方の絶縁性表面11aに、スパッタリング法により、厚み0.7μmのCuの金属薄膜を略全面に形成し、形成されたCu薄膜をフォトリソ法によりエッチングすることにより、相互に離間して対向配置された一対の帯状の電極21,22を形成した。このとき電極21,22の電極長さは0.5mm、電極幅は0.2mm、電極21,22間のギャップ距離△G1は3μmとした。
次いで、図12に示すように、上記の絶縁性基板11上及び電極21,22上に、以下の手順で、スパッタリング法により、機能層31を形成した。
まず、絶縁性基板11の電極21,22が形成された面側に、スパッタリング法によりAuを部分的に成膜することにより、厚み3nmの島状のAuの薄膜が不連続に点在した導電性無機材料33の層を形成した。このスパッタリングは、マルチターゲットスパッタ装置(商品名:ES350SU、株式会社エイコー・エンジニアリング製)を使用し、アルゴン圧力が10mTorr、投入電力が20W、スパッタ時間が40秒の条件下で実施した。
次に、島状のAu薄膜の層及び電極21,22を厚み方向に完全に覆うように、絶縁性基板11の電極21,22が形成された面側に、スパッタリング法によりアルミナを略全面に成膜することにより、厚み3μmの絶縁性無機材料32の層を形成した。このスパッタリングは、マルチターゲットスパッタ装置(商品名:ESU350、株式会社エイコー・エンジニアリング製)を使用し、アルゴン圧力が10mTorr、投入電力が400W、スパッタ時間が600分の条件下で実施した。
そして、機能層31が形成された面側に、ネガ型レジストを貼付し、次に、マスクを用いてパターン露光を行ない、未露光部分のネガ型レジストを除去することで、機能層31上に、網目状パターンが打ち抜かれたレジスト硬化物層を形成した。次に、スパッタリング法により、網目状に露出した機能層31上に厚さ10nmのCrの金属薄膜及び厚さ100nmのCuの金属薄膜を順次、略全面に形成することにより、網目状の積層金属薄膜片を形成した。次いで、電解めっき法により、この網目状の金属薄膜片上でCuをめっき成長させた。その後、レジスト硬化物層を除去することにより、図13に示すものと同等の構造を有する、網目状の中間電極41(外径サイズの最大幅340μm、最大長470μm、厚さ5μm、ライン幅20μm,網目の大きさ12100μm2、開口率 70%)を形成した。
その後、網目状の中間電極41を厚み方向に完全に覆うように、露出した機能層31及び中間電極41の機能層31と接触していない面側に、スパッタリング法によりアルミナを略全面に成膜することにより、厚み10μmの保護層51を形成した。このスパッタリングは、マルチターゲットスパッタ装置(商品名:ESU350、株式会社エイコー・エンジニアリング製)を使用し、アルゴン圧力が10mTorr、投入電力が400W、スパッタ時間が600分の条件下で実施した。
その後、図14に示すように、電極21,22の外周端部に接続するように、Cuを主成分とする端子電極61を形成することにより、図1及び図2と略同等の構造を有する、実施例1の静電気対策素子100を得た。
(比較例1)
網目状の中間電極41に代えて、以下の手順で板状の中間電極を形成すること以外は、実施例1と同様に操作して、比較例1の静電対策素子を得た。
ここでは、機能層31が形成された面側に、スパッタリング法により、厚さ10nmのCrの金属薄膜及び厚さ100nmのCuの金属薄膜を順次、略全面に形成し、形成された積層金属薄膜片をフォトリソ法によりエッチングすることにより、機能層31の略中央に幅340nm,長さ470nm,厚さ50nmの積層金属薄膜片を1つ形成し、その後、マスクを用いた電解めっき法により、この金属薄膜片上でCuをめっき成長させ、これにより、幅340nm,長さ470nm,厚さ5μmのCuからなる中間電極を1つ形成した。
(比較例2)
網目状の中間電極41を形成しないこと以外は、実施例1と同様に操作して、比較例2の静電対策素子を得た。
<静電気放電試験>
次に、上記のようにして得られた実施例1並びに比較例1及び2の静電気対策素子について、図15に示す静電気試験回路を用いて、静電気放電試験を実施した。
この静電気放電試験は、国際規格IEC61000−4−2の静電気放電イミュニティ試験及びノイズ試験に基づき、人体モデルに準拠(放電抵抗330Ω、放電容量150pF、印加電圧8kV、接触放電)して行った。具体的には、図15の静電気試験回路に示すように、評価対象の静電気対策素子の一方の端子電極をグランドに接地するとともに、他方の端子電極に静電気パルス印加部を接続した後、静電気パルス印加部に放電ガンを接触させて静電気パルスを印加した。ここで印加する静電気パルスは、放電開始電圧以上の電圧を印加した。
なお、放電開始電圧は、静電気試験を0.4kVから0.2kV間隔で増加させながら行なった際に観測される静電気吸収波形において、静電気吸収効果が現れた電圧とする。また、ピーク電圧は、IEC61000−4−2に基づく静電気試験を充電電圧8kVの接触放電で行なった際における、静電気パルスの最大電圧値とする。さらに、クランプ電圧は、IEC61000−4−2に基づく静電気試験を充電電圧8kVの接触放電で行なった際における、静電気パルスの波頭値から30ns後の電圧値とする。
なお、静電容量は、1MHzにおける静電容量(pF)を測定した。また、放電後のピーク電圧は、静電気放電試験を100回繰り返した後のピーク電圧を測定したものである。表1に評価結果を示す。
表1に示す結果より、実施例1の静電気対策素子は、放電開始電圧が2kV以下で静電容量が0.2pF程度と小さく、高速伝送系において適用可能な性能を有することが確認された。しかも、実施例1の静電気対策素子は、繰り返し放電後のピーク電圧も初期ピーク電圧も十分に低く、放電耐性においても優れた性能を有することが確認された。
また、実施例1と比較例1との比較から、網目形状の中間電極を採用することにより、平面視における一対の電極と中間電極との重なり面積が低減され、静電容量(中間電極と一対の電極とから形成される総静電容量)が大幅に低減されることが確認された。
また、実施例1と比較例2との比較から、補償回路として機能する網目状中間電極の採用により、静電容量の増大が抑制されるとともに、繰り返し放電後のピーク電圧の急激な上昇が長期に亘り抑制されることが確認された。