JP2012068053A - 銅イオンの電気化学的測定装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アンモニア又は過酸化水素が共存する試料溶液中の銅イオンの検出・濃度測定を、電気化学的に測定する装置及び方法を提供する。
【解決手段】対電極3及び導電性ダイヤモンド電極2からなる作用電極を内蔵するセル5と、試料溶液に酸を添加する酸添加手段と、前記セル内に酸性緩衝液を供給する酸性緩衝液供給手段とを備える。酸が添加された前記試料溶液に作用電極を接触させた状態で、作用電極表面に銅を電着させる電位を供給する手段と、表面に銅が電着した作用電極を酸性緩衝液に接触させた状態で、作用電極表面に電着した銅を溶出させる電位を供給する電位変動手段とを備える。作用電極と対電極との間の電流変化を検出する電流検出手段と、検出された電流変化から、銅イオンの濃度を算出する情報処理装置8と、を備えている。
【選択図】図1

Description

この発明は、アンモニア又は過酸化水素が共存する試料溶液中の銅イオンの検出・濃度測定を、電気化学的な手法及び装置を用いて、簡便かつ高感度に行うことができる測定装置及び方法に関するものである。
マイクロプロセッサーや、ロジックLSI、DRAM、フラッシュメモリー、CCD等の半導体デバイスの製造工程では、シリコンや、酸化シリコン、ガラス等の基板表面にサブミクロンからナノメーターオーダーの寸法でパターン形成や薄膜形成が行われている。
これらの半導体デバイスの製造工程においては、ICの高集積化等に伴い、微量の不純物がデバイスの性能及び歩留まりに大きく影響を及ぼすため、不純物を厳しく監視することが要求されており、基板表面の微量な汚染をも低減することが極めて重要な課題となっている。基板表面の微量汚染の中でも、特にパーティクル汚染は、デバイスの電気的特性や歩留まりを低下させるため、次工程に持ち込む前に極力低減する必要がある。このような汚染の除去には、一般的には洗浄液による基板表面の洗浄が行われている。
従来、半導体デバイス用基板のパーティクル汚染の除去に用いる洗浄液としては、アルカリ性溶液が有効であることが知られており、アンモニア、過酸化水素、及び、水を含む洗浄液(以下、「SC−1洗浄液」又は「APM洗浄液」という。)が広く用いられている。
一方、半導体デバイス製造工程では、微細化の進行にともない、配線材料として従来使われていたアルミが、高い電気伝導性を有する銅に置換わってきている。しかしながら、銅は、半導体デバイス製造工程における湿式エッチングや洗浄に汎用的に使われているフッ酸水溶液に混入するとシリコン表面に付着しやすいこと、シリコン結晶中での拡散が非常に速いことから、半導体デバイス製造工程では汚染物質として特に警戒されている。このため、SC−1洗浄液においても銅の混入に対する検査を厳密に行い、銅イオン混入による不良ロットを早期に発見することが求められている。
従来、SC−1洗浄液への銅の混入はICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)を用いて検査されており、サンプリングされたSC−1洗浄液がICP−MSを用いてバッチ検査されている。しかしながら、ICP−MSは大掛かりな装置であり、ランニングコストも高いので、多くとも1日に1回検査が行われているに過ぎない。このため、より小型の簡便な構成の装置を用いて、低ランニングコストで、簡易に、より高頻度(例えば、15分毎)でSC−1洗浄液への銅の混入を検査できる装置及び方法が求められている。
試料溶液中の銅の濃度を電気化学的に測定する方法としては特許文献1に記載の方法が知られている。しかしながら、この方法を用いてSC−1洗浄液の銅の濃度の測定を試みたところ、得られるボルタモグラムのベースラインの傾きが大きすぎ、銅に由来するピーク電流を検出することが困難であった。
特開2003−90822号公報
そこで本発明は、アンモニア又は過酸化水素が共存する試料溶液中の銅イオンの検出・濃度測定を、電気化学的な手法及び装置を用いて、簡便かつ高感度に行うことができる測定装置及び方法を提供すべく図ったものである。
本発明者が鋭意検討したところ、強アルカリ性であるSC−1洗浄液中では、銅は錯体(Cu(NH、n=1〜4)を形成しているため、作用電極に電着しにくくなり、また、SC−1洗浄液に含有される過酸化水素の分解により生じる気泡(酸素)に起因して、銅の電着が阻害されるとともに、得られるボルタモグラムのベースラインの傾きが大きくなることが判明した。本発明は、これらの問題点を解決することにより、完成されたものである。
すなわち本発明に係る銅イオンの電気化学的測定装置は、アンモニア又は過酸化水素が共存する試料溶液の銅イオンの濃度を電気化学的に測定するための装置であって、対電極、及び、その電極表面に銅を電着させる導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極を内蔵するセルと、前記試料溶液に酸を添加する酸添加手段と、前記セル内に酸性緩衝液を供給する酸性緩衝液供給手段と、酸が添加された前記試料溶液に前記導電性ダイヤモンド電極を接触させた状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を負電位方向に変動させて、前記導電性ダイヤモンド電極表面に銅を電着させる電位を供給し、次いで、表面に銅が電着した前記導電性ダイヤモンド電極を前記酸性緩衝液に接触させた状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を正電位方向に掃引して、前記導電性ダイヤモンド電極表面に電着した銅を溶出させる電位を供給する電位変動手段と、前記導電性ダイヤモンド電極の電位の変動に伴い発生する前記導電性ダイヤモンド電極と対電極との間の電流変化を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段により検出された電流変化から、銅イオンの濃度を算出する情報処理装置と、を備えていることを特徴とする。
このようなものであれば、前記試料溶液に酸を添加してから前記導電性ダイヤモンド電極表面に銅を電着させることにより、銅とアンモニアとの錯体形成が阻害され、かつ、下記式で示す過酸化水素の分解反応の平衡状態が過酸化水素側に傾き、過酸化水素の分解による気泡(酸素)発生が抑制されるので、銅を効率的に導電性ダイヤモンド電極表面に電着させることが可能となる。また、銅が電着した導電性ダイヤモンド電極を試料溶液ではなく酸性緩衝液に接触させてから銅の溶出を行うことにより、得られるボルタモグラムのベースラインの傾きを小さくすることが可能となる。このため、本発明によれば、ppb〜サブppbの銅イオンを検出して定量することが可能となる。
前記導電性ダイヤモンド電極としては、13族又は15族の元素の混入により導電性が付与されたダイヤモンド薄膜を有するものが挙げられ、なかでも、ホウ素、窒素、及び、リンからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を混入したものが好ましく、特に、ホウ素を混入したボロンドープダイヤモンド電極が好適である。
前記酸添加手段が、前記試料溶液のpHをpH3〜7に調整するものであることが好ましく、より好ましくはpH4〜6に調整するものである。pHが7を超えると、銅はアンモニアと錯体を形成して導電性ダイヤモンド電極に電着しにくくなり、また、過酸化水素が分解して気泡(酸素)を生じやすくなるので、当該気泡によっても導電性ダイヤモンド電極への銅の電着が阻害される。一方、pHを3未満にしても、それ以上銅の導電性ダイヤモンド電極への電着効率は向上しない。
また、当該酸性緩衝液は、pH3〜7のものであることが好ましく、より好ましくはpH4〜6である。pHが7を超えると、過酸化水素が分解して気泡(酸素)を生じやすくなり、当該気泡に起因して、ボルタモグラムのベースラインの傾きが大きくなる傾向がある。一方、pHを3未満にしても、それ以上ボルタモグラムのベースラインの傾きは小さくならず、銅の溶出に由来するピーク電流も大きくならない。
本発明に係る銅イオンの電気化学的測定装置により、以下のような電気化学的測定方法を実施することが可能である。すなわち、当該電気化学的測定方法は、アンモニア又は過酸化水素が共存する試料溶液の銅イオンの濃度を、対電極と導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極とを用い、電気化学的に測定する方法であって、前記試料溶液に酸を添加して前記試料溶液のpHを調整するpH調整工程と、pHが調整された前記試料溶液に前記導電性ダイヤモンド電極を接触させた状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を負電位方向に変動させて、前記導電性ダイヤモンド電極表面に銅を電着させる電着工程と、表面に銅が電着した前記導電性ダイヤモンド電極を酸性緩衝液に接触させる液交換工程と、前記酸性緩衝液に接触した状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を正電位方向に掃引して、前記導電性ダイヤモンド電極表面に電着した銅を前記酸性緩衝液中に溶出させる溶出工程と、を備えていることを特徴とする。このような銅イオンの電気化学的測定装置もまた、本発明の1つである。
このような本発明によれば、高感度で銅イオンを検出することが可能となるので、ppb〜サブppbの銅イオンを定量することが可能となる。また、本発明によれば、装置の小型化も可能となり、半導体デバイスの製造現場へ設置することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る電気化学的測定装置の構成を示す概要図。 同実施形態における測定セル(フローセル)の構成を示す概要図。 同実施形態に係る電気化学的測定装置を用いて得られたボルタモグラム。
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る電気化学的測定装置1は、図1に模式的に示すように、電気化学測定用のストップドフロー型の測定セルを備えた液体注入型の電気化学的測定装置(フローインジェクション分析装置)である。
フローインジェクション分析は、定量ポンプ等を用いて制御された連続流れをつくりだし、この流れの中で種々の反応、分離や試料注入等を行い、末端に設置したフローセルを備えた検出器により溶液中の成分を分析する方法である。
本実施形態に係る電気化学的測定装置1は、流路の上流側から、対電極3、ボロンドープダイヤモンド電極2及び参照電極4が内蔵された測定セル5、ポンプ6、を備えており、対電極3、ボロンドープダイヤモンド電極2及び参照電極4は、ポテンシオスタット7に接続され、更にポテンシオスタット7には情報処理装置8が接続されている。
以下に各部を説明する。
ボロンドープダイヤモンド電極2は、絶縁体であるダイヤモンドにホウ素が混入されることにより導電性が付与されたものであり、電気化学的測定装置1において作用電極として機能するものである。高濃度でホウ素をドープしたボロンドープダイヤモンド電極2は、電位窓が広く(酸化電位及び還元電位が広い)、他の電極材料と比較してバックグラウンド電流が低く、酸化還元種に対して感度が高く、金や白金等に比べて電極表面に物理的吸着が生じにくいため酸素・水素発生以外のピークが出にくい、といった優れた性質を有している。また、ボロンドープダイヤモンド電極2は、化学的耐久性、機械的耐久性、電気伝導度、耐腐食性等にも優れている。更に、ボロンドープダイヤモンド電極2はその硬度から化学的・物理的な洗浄を行ないやすく、電極表面を清浄な状態に維持しやすいという利点も有する。
ダイヤモンドに導電性を付与するために混入するホウ素の添加量は、ダイヤモンドに導電性を付与できる範囲で適宜決定されればよいが、例えば1×10−2〜10−6Ωcm程度の導電性を与える量であることが好ましい。
ボロンドープダイヤモンドそれ自体を基材の支持によらず電極とすることも可能であるが、基材上にボロンドープダイヤモンドの薄膜を形成し、この薄膜に導線を接続させ、電極とすることが好ましい。前記基材としては、Si(例えば、単結晶シリコン)、Mo、W、Nb、Ti、Fe、Au、Ni、Co、Al、SiC、Si、ZrO、MgO、黒鉛、単結晶ダイヤモンド、cBN、石英ガラス等が挙げられ、なかでも単結晶シリコン、Mo、W、Nb、Ti、SiC、単結晶ダイヤモンドが好適に用いられる。
ボロンドープダイヤモンド薄膜の厚さは特に限定されないが、1〜100μm程度であることが好ましく、より好ましくは5〜50μm程度である。
ボロンドープダイヤモンド電極2の形状としては、棒状又は平面状のいずれであってもよい。また、電極表面はas−grownのままでも良いが、水素アニール、電解酸化等の化学的表面処理や各種研磨による平坦化等の表面形状の物理的処理が施されていてもよい。
対電極3は電解電流を補償するものであり、例えば、白金、炭素、ステンレス、金、ダイヤモンド、SnO等からなる電極を用いることができる。
参照電極4としては公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、銀塩化銀電極、カロメル電極、標準水素電極、水素パラジウム電極等が挙げられる。
測定セル5は、図2に示すように、対電極3、ボロンドープダイヤモンド電極2及び参照電極4が、試料溶液が流れる内部流路51内に露出され、試料溶液等と接触できるよう構成されている。ボロンドープダイヤモンド電極2はそのダイヤモンド薄膜が、内部流路51内に露出され、試料溶液等と接触する。内部流路51の流入口52には試料溶液等を供給するためのチューブ等からなる供給ラインが接続されており、流入口52から内部流路51に流入した試料溶液等は図中の矢印のように流れて、流出口53に至る。そして、ボロンドープダイヤモンド電極2と対電極3との間に電圧が印加されることにより、試料溶液等中で電気化学的反応が起こる。
ポンプ6としては一定速度で試料溶液等を測定セル5に送ることができるものであれば特に限定されず、例えば液体クロマトグラフィー用ポンプ等を用いることができる。
ポテンシオスタット7は、ボロンドープダイヤモンド電極2の電位を参照電極4に対して一定にした状態で、ボロンドープダイヤモンド電極2と対電極3との間に発生した電流を検出し、その検出信号を情報処理装置8に伝達するものである。ポテンシオスタット7は、電位を一定に保つ機能のほか、電位を一定速度で走査したり、指定した電位に一定時間ごとにステップしたりする機能を持つ。これらの機能は、1台に搭載する必要はなく、例えば電位保持機能と電位走査機能とが別体に設けてあってもよい。
情報処理装置8は、CPUや、メモリ、入出力チャンネル、キーボード等の入力手段、ディスプレイ等の出力手段、A/D変換器、D/A変換器等を備えた汎用乃至専用のものであり、前記CPU及びその周辺機器が、前記メモリの所定領域に格納されたプログラムに従って協働動作することにより、ポテンシオスタット7で検出された信号が解析され、銅イオンの検出、濃度測定が行われる。なお、情報処理装置8は、物理的に一体である必要はなく、有線又は無線により複数の機器に分割されていてもよい。
次に、電気化学的測定装置1を用いてストリッピングボルタンメトリーにより銅イオンを検出・定量する方法について説明する。まず、測定対象の銅イオンを含有しないキャリア溶液のみを測定セル5に流し、いわゆるバックグラウンド電流をできるだけ小さくし、かつ安定させる。ここで、キャリア溶液としてはpH3〜7の酸性緩衝液が使用される。このような酸性緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液等が挙げられる。
次に、銅イオンを含有する試料溶液を測定セル5に流し入れる。ここで、当該試料溶液としては、銅イオンを含有するSC−1洗浄液を使用する。前記試料溶液には、あらかじめ酸が添加されており、pH3〜7に調整されている。このような酸としては、例えば、酢酸等が挙げられる。
そして、対電極3、ボロンドープダイヤモンド電極2及び参照電極4が試料溶液に接触した状態で、ポテンシオスタット7を用いてボロンドープダイヤモンド電極2の電位を負電位の方向に変動させることにより、銅イオンをボロンドープダイヤモンド電極2の表面に電着させる。この際、しばらくの間、ボロンドープダイヤモンド電極2の電位を−1.0Vに保持することにより銅イオンを濃縮し充分に電着させることができる。
ボロンドープダイヤモンド電極2の表面に銅イオンが電着したら、再び、測定セル5にキャリア溶液(酸性緩衝液)を流し入れ、測定セル5内(内部流路51内)の溶液を酸性緩衝液に置換する。その後、ポテンシオスタット7により、ボロンドープダイヤモンド電極2の電位を−1.0Vから正電位方向に掃引して、銅イオンを酸性緩衝液中に溶出させる。
銅イオンが溶出すると、これに伴いボロンドープダイヤモンド電極2と対電極3との間に電流が発生する。銅イオン溶出に起因する電流は+0.1V付近で発生し、この電流(電気信号)はポテンシオスタット7に伝達され各電極における信号の制御・検出が行われる。ポテンシオスタット7で検出された信号は情報処理装置8に送信され、予め作成された銅イオンの濃度と電流値又は電荷量との検量線と、得られた電流値又は電荷量とが対比されて、試料溶液の銅イオン濃度が算出される。この際、予めキャリア溶液のみを用いて測定されたベース電流値又はベース電荷量を、実測値である電流値又は電荷量から差し引いた差分電流値又は差分電荷量を用いて銅イオン濃度を算出することによって、より高精度に銅イオン濃度を算出することが可能となる。
電位の掃引が終わった後、しばらくの間、ボロンドープダイヤモンド電極2の電位を+1.0Vで保持することにより、電着した銅イオンを完全に溶出させ、ボロンドープダイヤモンド電極2を測定前の状態に戻して再生することができる。このようにボロンドープダイヤモンド電極2を再生することにより、同じ電極を繰り返し使用することが可能となる。なお、ボロンドープダイヤモンド電極2の再生は、一定電位の保持のみだけでなく、広い電位で繰り返し掃引を行うことによっても可能である。
このような本実施形態に係る電気化学的測定方法の具体例(実施例1)として、対電極3として白金線電極を、参照電極4として銀塩化銀電極を用い、試料溶液として0.5wt%NH、2.0wt%H、20ppbCu2+を用い、この試料溶液に酢酸を25wt%となるように添加して、ボロンドープダイヤモンド電極2の電位を10分間−1.0Vに保持して銅イオンをボロンドープダイヤモンド電極2表面に電着させた後、測定セル5内の溶液をpH5の酢酸緩衝液に置換してから、ストリッピングボルタンメトリーを行った。
また、比較例1として、pH5の酢酸緩衝液を試料溶液として用い、試料溶液への酢酸の添加と、測定セル5内の溶液の酢酸緩衝液への置換を行わなかったこと以外は実施例1と同様にしてストリッピングボルタンメトリーを行った。
更に、比較例2として、20ppbCu2+を含有するpH5の酢酸緩衝液を試料溶液として用い、試料溶液への酢酸の添加と、測定セル5内の溶液の酢酸緩衝液への置換を行わなかったこと以外は実施例1と同様にしてストリッピングボルタンメトリーを行った。
これらの実施例及び比較例により得られたボルタモグラムを図3に示した。図3に示す結果より、試料溶液にNHやHが含有されていても、本実施形態(実施例1)によれば、+0.1V付近に、銅イオン溶出に起因するピーク電流が明瞭に検出されることが確認された。
このように構成された本実施形態によれば、試料溶液に酸を添加してからボロンドープダイヤモンド電極2表面に銅イオンを電着させることにより、銅とアンモニアとの錯体形成が阻害され、かつ、過酸化水素の分解による気泡(酸素)発生が抑制されるので、銅イオンを効率的にボロンドープダイヤモンド電極2表面に電着させることが可能となる。また、銅イオンが電着したボロンドープダイヤモンド電極2を試料溶液ではなく酸性緩衝液に接触させてから銅イオンの溶出を行うことにより、得られるボルタモグラムのベースラインの傾きを小さくすることが可能となる。このため、本実施形態によれば、ppb〜サブppbの銅イオンを検出して定量することが可能となる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、測定セル5はストップドフロー型に限定されず、バッチ型の測定セル5を有する電気化学的測定装置1を使用してもよい。
更に、前記実施形態に係る電気化学的測定装置1は、ボロンドープダイヤモンド電極2、対電極3及び参照電極4が備わった三電極法による測定を行うものであるが、本発明に係る測定方法を実施するための電気化学的測定装置1としては、ボロンドープダイヤモンド電極2及び対電極3のみを備えた二電極法によるものであってもよい。三電極法の方が、ボロンドープダイヤモンド電極2と対電極3との間に印加する電圧の絶対値を制御することができるので、精度及び感度の高い測定を行うことが可能であるが、二電極法によれば、用いる電極がボロンドープダイヤモンド電極2及び対電極3の2電極ですむので、測定セル5の構造を単純化、小型化することができ、測定セル5をチップ化し使い捨てとすることも可能で、より簡便な測定を行いうる。
その他、電気化学的測定装置1は、上述の銅イオンの電気化学的測定が実施可能なものであれば、専用装置であっても汎用装置を組み合わせたものであってもよく、装置の形状や、セル容量、電極サイズ等は特に限定されない。
その他、上述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
1・・・電気化学的測定装置
2・・・ボロンドープダイヤモンド電極
3・・・対電極
4・・・参照電極
5・・・測定セル
6・・・ポンプ
7・・・ポテンシオスタット
8・・・情報処理装置

Claims (3)

  1. アンモニア又は過酸化水素が共存する試料溶液の銅イオンの濃度を電気化学的に測定するための装置であって、
    対電極、及び、その電極表面に銅を電着させる導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極を内蔵するセルと、
    前記試料溶液に酸を添加する酸添加手段と、
    前記セル内に酸性緩衝液を供給する酸性緩衝液供給手段と、
    酸が添加された前記試料溶液に前記導電性ダイヤモンド電極を接触させた状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を負電位方向に変動させて、前記導電性ダイヤモンド電極表面に銅を電着させる電位を供給し、次いで、表面に銅が電着した前記導電性ダイヤモンド電極を前記酸性緩衝液に接触させた状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を正電位方向に掃引して、前記導電性ダイヤモンド電極表面に電着した銅を溶出させる電位を供給する電位変動手段と、
    前記導電性ダイヤモンド電極の電位の変動に伴い発生する前記導電性ダイヤモンド電極と対電極との間の電流変化を検出する電流検出手段と、
    前記電流検出手段により検出された電流変化から、銅イオンの濃度を算出する情報処理装置と、を備えていることを特徴とする銅イオンの電気化学的測定装置。
  2. 前記酸添加手段が、前記試料溶液のpHをpH3〜7に調整するものであり、前記酸性緩衝液が、pH3〜7のものである請求項1記載の銅イオンの電気化学的測定装置。
  3. アンモニア又は過酸化水素が共存する試料溶液の銅イオンの濃度を、対電極と導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極とを用い、電気化学的に測定する方法であって、
    前記試料溶液に酸を添加して前記試料溶液のpHを調整するpH調整工程と、
    pHが調整された前記試料溶液に前記導電性ダイヤモンド電極を接触させた状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を負電位方向に変動させて、前記導電性ダイヤモンド電極表面に銅を電着させる電着工程と、
    表面に銅が電着した前記導電性ダイヤモンド電極を酸性緩衝液に接触させる液交換工程と、
    前記酸性緩衝液に接触した状態で、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を正電位方向に掃引して、前記導電性ダイヤモンド電極表面に電着した銅を前記酸性緩衝液中に溶出させる溶出工程と、を備えていることを特徴とする銅イオンの電気化学的測定方法。
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