JP2007155671A - 水溶液分析方法及び水溶液分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボルタンメトリによる水溶液分析方法において、検出ピークがブロードになったり、ノイズ要素と重なってしまうことを抑制し、高精度に微量成分を検出することができる水溶液分析方法およびその装置を提供することを課題とする。
【解決手段】水溶液中に導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極及び前記作用電極に対する対電極を配置し、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出する水溶液分析方法であって、
前記正電位方向及び/又は負電位方向に掃引する際に、有機化合物の酸化分解反応を起こしうる電位で予め有機化合物を酸化分解させることを特徴とする水溶液分析方法。
【選択図】図1
【解決手段】水溶液中に導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極及び前記作用電極に対する対電極を配置し、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出する水溶液分析方法であって、
前記正電位方向及び/又は負電位方向に掃引する際に、有機化合物の酸化分解反応を起こしうる電位で予め有機化合物を酸化分解させることを特徴とする水溶液分析方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、導電性ダイヤモンド電極を用いて電気化学的に水溶液中の重金属等の微量成分を高感度で、且つ、再現性よく、検出・定量することができる水溶液分析方法及び水溶液分析装置に関するものである。
従来から、水溶液中の微量成分を検出・定量する方法としては高周波誘導結合プラズマ質量/発光分析法や電気加熱原子吸光分析法等が用いられており、これらはいずれも水溶液中のppbオーダーの微量成分を検出することが可能な方法である。
しかし、高周波誘導結合プラズマ質量/発光分析法は専任オペレータによる熟練した管理測定技術等が必要であり、また、オフライン式でしか使えないという欠点があった。
また、電気加熱原子吸光分析法は検出できる成分の濃度範囲が限られており、さらに、水溶液中に含有される他の成分の影響により、目的とする微量成分の検出が困難になるという欠点があった。
一方、前記方法とは異なる電気化学的な分析方法として、水溶液中に含有される微量成分の還元電位が成分により異なることを利用して、水溶液中に含有される微量成分を検出するアノードストリッピングボルタンメトリーによる水溶液分析方法が知られている。
前記方法は、分析対象である水溶液中にカーボン電極等からなる作用電極を配置し、作用電極の電位を水の還元電位に達しない範囲で負電位方向に掃引して作用電極に被分析成分を電着させた後、水の酸化電位に達しない範囲で正電位方向に掃引して、水が電気分解しない電位範囲である水の還元電位と酸化電位の間の領域(電位窓とも呼ばれる)における電位変化に対する、作用電極と対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の微量成分を検出する方法である。この方法は、装置が簡便で安価に実施できる点及び微量成分を高感度に検出できる点から河川の水、排水、食品等に含有される微量成分を検出するために用いることができるが、前記カーボン電極等からなる作用電極の表面清浄度を確保することが困難な点や耐久性が低い点が問題であった。
前記問題を解決するために、水銀の作用電極を用いたアノードストリッピングボルタンメトリーによる水溶液分析方法も開発された。この方法によれば、前記問題はある程度解決されるが、水銀の作用電極に微量成分を電着させた後、正電位方向に電位掃引して微量成分を酸化させても、全てが完全に酸化されて水銀から放出されることはなく、一部はアマルガム化して水銀中に取り込まれたままになり、繰り返し使用する場合には測定精度が低下するという問題があった。また、このような場合には水銀を取り替えることになるが、その場合には有毒性の水銀の処理が困難であるという問題があった。
前記水銀電極を用いた場合の問題点を解決するために、例えば、以下の特許文献1に開示されたような、作用電極として、ボロンを高濃度にドープして導電性を付与した導電性ダイヤモンドをシリコン等の基板上に製膜して得られる電極(以下、導電性ダイヤモンド電極とも呼ぶ)を用いた方法も知られている。
このような、導電性ダイヤモンド電極は、化学的耐性、耐久性、耐腐食性等を有するために繰り返し使用することができ、また、電位窓の範囲が広いために、検出できる成分が多く、種々の微量成分の電気化学的検出に適した電極材である。
特開2001−91499号公報
しかしながら、導電性ダイヤモンド電極を作用電極として用いたアノードストリッピングボルタンメトリによる水溶液分析方法においては、被分析成分を検出するための作用電極と対電極との間に流れる電流を測定する場合に、電流を示すピークがブロードになったり、ノイズ要素と重なったりしてしまい、水溶液中の微量成分を正確に検出することができないことがあった。
本発明は、ボルタンメトリによる水溶液分析方法において、前記のようにピークがブロードになったり、ノイズ要素と重なってしまうことによる分析精度の低下を抑制し、高感度に微量成分を検出することができる水溶液分析方法および水溶液分析装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、導電性ダイヤモンド電極に用いられるダイヤモンドは炭素から構成されているために、種々の有機化合物等の炭素系物質に対する親和性が高く、そのために、ボルタンメトリによる水溶液分析方法において水溶液中に有機化合物が微量にでも存在する場合には、作用電極に有機化合物が付着して電気的に干渉し、このような有機化合物の干渉は目的とする被分析成分の検出を妨げると考えた。そして、このような有機化合物を酸化分解させてから測定することにより、有機化合物の干渉を小さくし、微量な被分析成分でも高精度に検出できると考えた。なお、分析対象である水溶液には、例えば、半導体製造に用いられるような高純度に精製することにより得られる水においてさえも有機化合物を完全に除去することは困難であるために、微量の有機化合物が含有されていることが知られている。
すなわち、請求項1の発明は、水溶液中に導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極及び前記作用電極に対する対電極を配置し、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出する水溶液分析方法であって、前記正電位方向及び/又は負電位方向に掃引する際に、有機化合物の酸化分解反応を起こしうる電位で予め有機化合物を酸化分解させることを特徴とする水溶液分析方法である。このような水溶液分析方法において、前記作用電極の電位を酸化分解反応を起こしうる電位にして、分析対象である水溶液中の有機化合物を予め分解することにより、水溶液中の物質を検出するための電流測定において有機化合物が干渉せず、極めて高感度に水溶液中の物質を検出することができる。
また、請求項2の発明は、前記有機化合物を酸化分解しうる電位が+2.5V以上又は−2.5V以下の電位であることを特徴とする請求項1に記載の水溶液分析方法である。このような電位においては水溶液中の有機化合物は酸化分解される。
また、請求項3の発明は、前記有機化合物を酸化分解しうる電位が、前記作用電極の電位が+0.5Vのときに流れる前記作用電極の電流密度よりも10倍以上大きい電流密度を与える電位であることを特徴とする請求項1に記載の水溶液分析方法である。このような電位においては、水の電気分解による活性種が多く発生しているために、より効果的に有機化合物を酸化分解することができる。
また、本発明の請求項4の発明は、水溶液中に導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極及び前記作用電極に対する対電極を配置し、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出することが可能な水溶液分析装置において、前記作用電極とは別に、導電性ダイヤモンド電極からなる酸化分解処理用電極を備えることを特徴とする水溶液分析装置である。前記作用電極とは別に水溶液中の有機化合物を分解させるための電極を設けることにより、より効率よく有機化合物を分解することができる。
本発明によれば、従来の導電性ダイヤモンド電極を作用電極として用いたボルタンメトリによる水溶液分析方法よりも、より高感度に水溶液中の物質を検出することができる。
本発明の水溶液分析方法は、水溶液中に導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極及び前記作用電極に対する対電極を配置し、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出する水溶液分析方法であって、前記正電位方向及び/又は負電位方向に掃引する際に、有機化合物の酸化分解反応を起こしうる電位で予め有機化合物を酸化分解させることを特徴とするものである。
以下に本発明の水溶液分析方法を図1及び図2に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明の水溶液分析方法に用いられる水溶液分析装置の一例を示す概略説明図である。
図1中、1は測定用セルであり、測定用セル1には分析対象である水溶液2が入れられている。この水溶液2は、通常、硫酸ナトリウムや塩化カリウムなどの支持電解質を含有し、また、必要に応じて緩衝液によりpH調整されている。
また、3は導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極であり、4は前記作用電極に対する対電極であり、5は参照電極、6はポテンシオスタットであり、作用電極3、対電極4及び参照電極5はそれぞれリード線3a、4a及び5aを介してポテンシオスタット6に接続されている。なお、ポテンシオスタット6にはポテンシャルスイーパ6aやレコーダ6bが必要に応じて接続される。また、7は攪拌子である。
そして、水溶液2中に浸されるようにして作用電極3、対電極4及び参照電極5が所定の間隔で隔てられて配置される。
本発明においては、作用電極3として導電性ダイヤモンド電極が用いられる。
導電性ダイヤモンド電極とは、シリコン基板等の導電性又は半導電性基板の表面に不純物としてボロン等がドープされたダイヤモンド膜が製膜された導電性の電極である。
なお、ここで導電性とはダイヤモンド膜の導電性を意味し、その程度は本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、ボロンがドープされたダイヤモンド膜が製膜された電極においては、比抵抗が10−3〜10−1Ω・cm程度になるような導電性であることが好ましい。
このような導電性ダイヤモンド電極は、マイクロ波CVD法等のプラズマCVD法により、シリコン基板等の表面にボロンを含有するダイヤモンド膜を製膜させることにより製造することができる。
具体的には、例えば、チャンバを備えたプラズマCVD装置において、チャンバ内のホルダーにシリコン基板を固定し、チャンバ内を所定の圧力になるように水素ガスで充満させ、酸化ホウ素(B2O3)やジボラン(B2H6)等からなるボロン源とアセトンとメタノールとの混合物やメタン等からなる炭素源とを含有する混合ガスを水素ガス等のキャリアガスとともに所定の速度で流し、マイクロ波により放電してプラズマを生成させることにより、シリコン基板上にボロンを含有するダイヤモンド薄膜を形成させることにより導電性ダイヤモンド電極が得られる。
一方、対電極4としては、例えば、白金、イリジウムあるいは導電性ダイヤモンド電極のような不溶性の電極が用いられる。
更に、本発明における参照電極5としては例えば、銀/塩化銀電極、飽和カロメル電極等が用いられる。
そして、本発明の水溶液分析方法は図1に示すように構成された水溶液分析装置を用いて以下のようにして行われる。
水溶液2中の被分析成分を検出するに際して、作用電極3の電位を有機化合物の酸化分解反応を起こしうる電位にし、水溶液2中に含有される有機化合物を予め酸化分解させる。
この操作により、水溶液2中に含有される有機化合物を揮発性で低級の炭素成分である、二酸化炭素、一酸化炭素等に酸化分解する。なお、前記酸化分解のメカニズムとしては、水の酸化分解等により導電性ダイヤモンド電極の表面で発生する活性種(特定することは困難であるがOHやオゾン等と考えている)が有機化合物に作用して、水溶液中に存在する有機化合物が分解されるのではないかと考えている。なお、この際には、水溶液を撹拌・流動させながら行うことが、酸化分解されて生じた低級の炭素成分等を作用電極から放して電流測定時に作用電極に電気的な干渉をすることを防ぐことができる点から好ましい。
なお、分解される有機化合物としては特に限定されないが、樹脂性の実験器具に由来する有機化合物や、ヒトに由来するようなタンパク質、アミノ酸成分等が挙げられる。
前記有機化合物を酸化分解しうる電位とは、水を電気分解することにより活性種が生成する程度の電位、言い換えれば、水の還元電位と酸化電位との間の電位範囲の上限超、あるいは、下限未満の電位である。
なお、溶媒(本発明においては水)の電気分解や支持電解質との電子の授受が起こらず、電位を変化させることによる電流の変化が小さな範囲を電気化学では電位窓と称呼されるが、前記有機化合物を酸化分解しうる電位とは電位窓の範囲外と言うこともできる。電位窓の上限を超える電位又は下限未満の範囲においては、電流値に大きな変化が生じるが、このような電流変化は主として水の電気分解や支持電解質の電子の授受に起因するものである。しかしながら、電位窓は含有される支持電解質や作用電極の種類等により変化することや、電流値の変化が生じる部分の傾きが徐々に変化すること等のために電位窓の上限あるいは下限を厳密に特定し、定義することは、実際上、困難である。
しかしながら、ダイヤモンド電極を作用電極とする水溶液においては、参照電極に対する作用電極の電位が+2.5V以上、更には+3V以上で、−2.5V以下、更には−3V以下の電位においては、通常、有機化合物を酸化分解するのに充分な電位に達していると言える。
また、被分析成分を含有しない水溶液(すなわち、水、電解質、緩衝液のみ)の電流−電位特性図(ボルタノグラムとも呼ばれる)を図2に示すように、X軸を電位(V)、Y軸を電流密度(mA/cm2)として作成した場合において、前記作用電極の電位が+0.5Vのときに流れる前記作用電極を電流密度I0.5(mA/cm2)としたときに、I0.5×10(mA/cm2)の電流密度を与える電位(ここでは、EOと呼ぶ)以上のときの電位は有機化合物を酸化分解しうる電位と言える。
さらに、具体的に特定するならば、例えば、作用電極としてダイヤモンド電極、対電極として白金を、そして、水溶液として0.1M硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合においては、−2.1V以下又は2.2V以上の電位範囲、また、作用電極としてダイヤモンド電極、対電極として金を、そして、水溶液として0.1M塩化カリウム水溶液を用いた場合においては、+2.0V以上又は−2.0V以下の電位範囲で有機化合物の酸化分解を進行させることができる。
このような、有機化合物の酸化分解反応を起こしうる電位にする操作は、前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引して前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出する操作において、水溶液中の物質を検出するための電流測定の前に有機化合物が酸化分解されていれば良く、具体的には、前記掃引前に予め所定の電位に設定して酸化分解反応してもよく、また、掃引する電位範囲に前記酸化分解しうる電位を含むようにして掃引してもよい。
なお、前記酸化分解に要する時間は、溶液中に含有される有機化合物の濃度や、電位の設定により異なるが、通常、本発明のような微量成分の検出を目的とする水溶液分析方法においては、作用電極の電位が有機化合物を酸化分解しうる電位に達してから一定時間、具体的には全有機炭素量(TOC)が100ppb以下になる程度の時間維持することが好ましい。なお、TOCは公知の全有機炭素量測定装置、具体的には、高周波誘導結合プラズマ質量/発光分析法を用いた装置や電気加熱原子吸光分析法を用いた装置で測定することができる。
そして、このようにして分析対象である水溶液中の有機化合物を酸化分解したのち、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引し、そのときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる微弱な電流を測定することにより水溶液中の物質を検出することができる。
さらに、詳しく説明すると、例えばアノードストリッピング法の場合においては、導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極の電位を負電位方向に掃引し、一定の電位で一定時間保持して、被分析成分を作用電極に電着させる。そして、その後、一定の走査速度で正電位方向に掃引する。作用電極の電位を正電位方向に掃引したときに電位窓の範囲内の電位においては、この範囲で還元反応を起こす物質が存在しない場合にはほとんど電流が流れない(バックグラウンド電流のみ)が、この範囲で還元反応を起こす物質が存在する場合には、バックグラウンド電流に変化が生じる。その変化が発生する電位は還元反応する物質に固有の還元電位であるので、この原理を利用して水溶液中の物質の検出ができる。
前記水溶液中の物質の検出方法を更に具体的に説明すると、ポテンシオスタット6で作用電極3の電位を制御しながら、作用電極3と対電極4との間に流れる電流を測定し、前記作用電極3の電位と電流の関係を示すボルタノグラムを作成すると、作用電極3の電位が所定値に到達したときに、作用電極3と対電極4との間に流れる電流値が鋭く立ち上がったピークが見られる。このピークは、この電位で、水溶液中の物質と作用電極3あるいは対電極4との間において還元反応が起こり、このために各電極に電流が流れることによると考えられる。従って、このようなピークを検出することにより、水溶液中の物質を検出することができる。
また、予め、そのような物質に対する電流の変化量と濃度の関係に基づく検量線を作成しておくことにより水溶液中に含有される物質の量を定量できる。
本発明において検出される水溶液中の物質としては、作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの電位窓の範囲内で酸化還元反応を起こす物質が対象となり、具体的には、例えば、白金、金、水銀、銅、鉛、亜鉛、錫、鉄、クロム、コバルト、ビスマス、カドミウム等の重金属類や、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、アルミニウム等の軽金属類等が挙げられる。
また、本発明の水溶液分析方法において高い再現性を維持しながら測定するためには、導電性ダイヤモンドからなる作用電極の表面を適度な酸化状態で保持することが好ましい。
すなわち、本発明の水溶液分析方法において、例えば前記作用電極を+2.5V以上の電位にして水溶液中の有機化合物を酸化分解することを繰り返した場合には、導電性ダイヤモンド電極の表面の酸化状態が変わる場合があり再現性が悪くなることがある。このような場合は、前記作用電極を−2.5V以下の電位にして、導電性ダイヤモンド電極の表面の酸化状態を回復させてから、改めて、前記酸化分解処理と水溶液中の物質の検出を行うことが好ましい。
また、本発明の水溶液分析方法に用いられる水溶液分析装置においては、導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極、前記導電性ダイヤモンド電極に対する対電極を配置した水溶液分析装置に、さらに、有機化合物の酸化分解を効率よく処理し、また、作用電極の清浄性を保つために、前記作用電極とは別の導電性ダイヤモンド電極を設けて、酸化分解処理用の電極(以下、酸化分解処理電極ともいう)としても良い。
作用電極としては、分析精度の観点からは表面積が大きすぎることは好ましくない。作用電極の表面積が大きすぎる場合には、電位の掃引中に、水溶液に流れる電流量が過大になるために、水溶液の温度が上昇し、測定結果に影響を与える恐れがあるためである。しかしながら、有機化合物の酸化分解の観点からは表面積が大きい方が処理効率が良い。作用電極の表面積が小さすぎる場合には、有機化合物の酸化分解に時間がかかるためである。従って、作用電極とは別の導電性ダイヤモンド電極として表面積の大きい酸化分解処理電極を設け、水溶液中の有機化合物を酸化分解させる際には酸化分解処理電極と対電極との間で電流を流し、そして、水溶液中の成分の分析を行う電位の掃引の際には、作用電極と対極との間に電流を流して水溶液中の物質を分析することにより、効率よく本発明の測定を実施することができる。
前記酸化分解処理電極を有する水溶液分析装置の各電極の配置の一例を示す上方から見たときの概略説明図を図3に示す。
図3において、11は測定用セル、12は水溶液、13は導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極、14は前記作用電極に対する対電極、15は参照電極を示し、17は酸化分解処理電極を示す。
図3においては1つの酸化分解処理電極を備えた装置を代表例として図示したが、酸化分解処理電極17は目的に応じて2個以上設けても良い。
酸化分解処理電極17の電極面積は、作用電極13の電極面積よりも大きいことが好ましい。更に、具体的な例としては、例えば、測定される水溶液の量が500mlの場合には、酸化分解処理電極17の電極面積が200〜400mm2程度の面積であることが好ましく、2個以上の電極を用いる場合には、それらの電極面積の合計が前記面積になるようにすることが好ましい。
本発明の水溶液分析方法及び水溶液分析装置は、水溶液中に含有される微量成分、特に、金属成分を分析するのに好ましく用いられる。具体的には、河川、排水、飲料水等の水質分析等の環境分野や、半導体装置製造等に用いられる高純度水に含有される金属成分の定性・定量、あるいは医療分野等において用いられうる。
次に本発明を実施例を用いて、更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(導電性ダイヤモンド電極の製造)
導電性ダイヤモンド電極は、マイクロ波CVD法を用いてシリコン基材表面にダイヤモンド膜を成膜させることにより製造した。
導電性ダイヤモンド電極は、マイクロ波CVD法を用いてシリコン基材表面にダイヤモンド膜を成膜させることにより製造した。
はじめに、厚さ500μmのシリコンウエハの表面をダイヤモンドが基板表面に堆積しやすくなるように、粒径0.5〜15μmのダイヤモンド粉末で10分間研磨して表面を粗化処理した。
次に、粗化処理されたシリコンウエハを、マイクロ波CVD製膜装置(Astex社製、AX6600)のホルダに固定した。
そして、水素ガス中の濃度が0.1〜5体積%の濃度になるように希釈したメタンとジボラン(B2H6)との混合物(ジボランの体積割合20〜100ppm)を原料ガスとし、前記原料ガスを水素ガスで1×104Paになるように充満された前記製膜装置のチャンバ内に導入した。
そして、前記チャンバ内のシリコン基板の温度が1000〜1200Kになるように保持し、2.45GHzのマイクロ波により出力4.0kWでプラズマを発生させて成膜速度0.1〜1μm/hで成膜し、シリコン基板上にボロンを含有する厚さ3μmの導電性ダイヤモンドの薄膜が形成された導電性ダイヤモンド電極を得た。
そして、前記導電性ダイヤモンド電極にリード線を導電性の銀ペーストで接着し、その上に、シリコン基板裏面と端面を絶縁処理して、電極面積100mm2の作用電極を得た。
(実施例1)
250mlガラスビーカー中の150mlの0.1M硫酸ナトリウム水溶液中に前記導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極、白金製の対電極及び銀/塩化銀電極の参照電極を配置した。
250mlガラスビーカー中の150mlの0.1M硫酸ナトリウム水溶液中に前記導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極、白金製の対電極及び銀/塩化銀電極の参照電極を配置した。
そして、前記作用電極、対電極、参照電極をリード線を通じてポテンシオスタット(Cypress社製)に接続し、作用電極の電位を数サイクル掃引して図4に示すようなサイリックボルタノグラムを得た。
図4のボルタノグラムからダイヤモンド電極を用いた場合の0.1M硫酸ナトリウム水溶液においては、電位窓の範囲は−2.1〜+2.2V程度の範囲であり前記範囲外の電位においては水の電気分解が生じていることが確認された。
次に、前記硫酸ナトリウム水溶液中に市販の分析用調整済試薬を用いて銅、鉛、カドミウム、亜鉛を濃度0.1〜10ppbの範囲になるように添加した。
そして、前記作用電極の参照電極に対する電位を+2.5Vにして、15分間維持した。
次に、前記電位を−2.0Vで5分間維持して前記成分を作用電極に電着させた後、走査速度:25mV/sec、パルス幅:5msec、パルス間隔:20msec、パルス振幅:25mVで作用電極の電位が0〜1Vの範囲になるように掃引し、作用電極に対する電流密度を測定した。前記測定から得られたサイリックボルタノグラムを図5に示す。
図5のサイリックボルタノグラムに示すように、それぞれ銅(還元電位0.2V)、鉛(還元電位0.42V)、カドミウム(還元電位0.65V)、亜鉛(還元電位0.88V)の存在を示す明確な4つのピークが確認され、そのピーク強度から、定量解析も可能であることが確認できた。
(比較例)
前記作用電極の参照電極に対する電位を+2.5Vにして、15分間維持する処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、作用電極の電位が0〜1Vの範囲になるように掃引し、作用電極に対する電流密度を測定し、図6に示すようなサイリックボルタノグラム得た。
前記作用電極の参照電極に対する電位を+2.5Vにして、15分間維持する処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、作用電極の電位が0〜1Vの範囲になるように掃引し、作用電極に対する電流密度を測定し、図6に示すようなサイリックボルタノグラム得た。
図6のサイリックボルタノグラムにおいては、銅(還元電位0.2V)の存在は確認されるが、その他の鉛、カドミウム、亜鉛の存在を示す明瞭なピークは確認できなかった。これは、水溶液中に不純物としてわずかに存在する有機化合物によりピークが干渉されてピークが区別できなくなったものであると考えている。このような有機化合物は、ビーカーや薬液瓶、スポイト等の実験器具から溶出したものである可能性がある。
1,11 測定用セル
2,12 水溶液
3,13 作用電極
4,14 対電極
5,15 参照電極
3a、4a、5a リード線
6,16 ポテンシオスタット
6a ポテンシャルスイーパ
6b レコーダ
7 攪拌子
17 酸化分解処理電極
2,12 水溶液
3,13 作用電極
4,14 対電極
5,15 参照電極
3a、4a、5a リード線
6,16 ポテンシオスタット
6a ポテンシャルスイーパ
6b レコーダ
7 攪拌子
17 酸化分解処理電極
Claims (4)
- 水溶液中に導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極及び前記作用電極に対する対電極を配置し、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出する水溶液分析方法において、
前記正電位方向及び/又は負電位方向に掃引する際に、有機化合物の酸化分解反応を起こしうる電位で予め有機化合物を酸化分解させることを特徴とする水溶液分析方法。 - 前記有機化合物を酸化分解しうる電位が+2.5V以上又は−2.5V以下の電位であることを特徴とする請求項1に記載の水溶液分析方法。
- 前記有機化合物を酸化分解しうる電位が、前記作用電極の電位が+0.5Vのときに流れる前記作用電極の電流密度よりも10倍以上大きい電流密度を与える電位であることを特徴とする請求項1に記載の水溶液分析方法。
- 水溶液中に導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極及び前記作用電極に対する対電極を配置し、参照電極に対する前記作用電極の電位を正電位方向及び/又は負電位方向に掃引したときの前記作用電極と前記対電極との間に流れる電流を測定することにより水溶液中の物質を検出することが可能な水溶液分析装置において、
前記作用電極とは別に、導電性ダイヤモンド電極からなる酸化分解処理用電極を備えることを特徴とする水溶液分析装置。
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JP2005355226A JP2007155671A (ja) | 2005-12-08 | 2005-12-08 | 水溶液分析方法及び水溶液分析装置 |
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