JP2012067371A - レーザー加工用Ni合金薄膜およびこれに用いるNi合金スパッタリングターゲット材 - Google Patents

レーザー加工用Ni合金薄膜およびこれに用いるNi合金スパッタリングターゲット材 Download PDF

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Abstract

【課題】 Niの持つ耐湿性、耐候性に優れた特性を維持しながら、レーザー光吸収特性を改善したレーザー加工用Ni合金薄膜、およびこれに用いるNi合金スパッタリングターゲット材を提供する。
【解決手段】 本発明は、Tiを10〜13原子%含有し、残部Niおよび不可避的不純物からなるレーザー加工用Ni合金薄膜である。本発明のレーザー加工用Ni合金薄膜は、Tiを10〜13原子%含有し、残部Niおよび不可避的不純物からなるスパッタリングターゲットで得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば太陽光発電素子の樹脂やステンレス等の基板上に形成される薄膜に用いられる、レーザー加工用Ni合金薄膜およびNi合金スパッタリングターゲット材に関するものである。
太陽光発電素子等の樹脂やステンレスの基板上に形成される薄膜は、一般に安価に薄膜を加工できるレーザー光による加工方法が用いられている。この方法は、樹脂やステンレスの基板上に形成した薄膜の表面に焦点を絞ったレーザー光を照射して、その部分を溶融蒸発させて除去することで薄膜のみを加工する方法である。
太陽光発電には種々の発電方式があり、それに用いられる薄膜も様々であるが、プラスチックフィルム上に発電層を形成して、その発電層を電気接続する金属電極層の最外層にNiまたはNiにTi、Ta、Cr、Moなどを添加したNi合金の薄膜を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この提案では、Niは耐湿性、耐候性に優れ、内部の低抵抗なAlやAg等の金属層の腐食を抑制する効果があり、剥離しづらいという優れた利点と、Niはレーザー光による加工時に低反射率であるという利点が開示されている。
特開平9−307126号公報
太陽光発電素子の生産性は、製造コストに大きく影響するため重要である。
上述したように、Ni薄膜は、優れた耐湿性、耐候性を有するために、最外層の膜として好適であるものの、より生産性を向上するためには、上記で述べたレーザー光による加工効率向上が要求されており、そのためにはNi薄膜の光吸収特性の改善、すなわち反射率の低減が必要である。
本発明の目的は、Niの持つ耐湿性、耐候性に優れた特性を維持しながら、レーザー光吸収特性を改善したレーザー加工用Ni合金薄膜、およびこれに用いるスパッタリングターゲット材を提供することにある。
本発明者は、添加元素としてTiを選定し、特定量添加することで、レーザー加工時の光吸収特性がさらに改善され、極めて優れたNi合金薄膜が得られることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、Tiを10〜13原子%含有し、残部Niおよび不可避的不純物からなるレーザー加工用Ni合金薄膜である。
また、本発明のレーザー加工用Ni合金薄膜を形成するためのスパッタリングターゲット材は、Tiを10〜13原子%含有し、残部Niおよび不可避的不純物からなるスパッタリングターゲット材である。
本発明のTiを10〜13原子%含有したNi合金薄膜は、Niの持つ耐湿性、耐候性に優れた特性を維持しながらNiの反射特性を低下させ、レーザー光吸収特性を一段と向上させることができる。これにより本発明は、例えば太陽光発電素子等のNi合金薄膜を用いるデバイスのレーザー加工時に低出力で蒸発できるため、レーザー加工性を向上させて、生産性向上に大きく寄与できる。
また、本発明のNi合金スパッタリングターゲット材は、ターゲット素材の延性を確保し、歩留まり良く安定して製造が可能な、優れた利点を有するものである。
本発明の重要な特徴は、NiにTiという特定の元素を特定量添加したNi合金薄膜とすることにあり、これにより純Niの場合に比べてレーザー光吸収特性を一段と向上でき、レーザー加工に最適なNi合金薄膜を提供できる。
以下に、本発明の特徴について詳細に説明する。
まず、本発明のNi合金薄膜のNiへの添加元素としてTiを選定した理由を述べる。本発明者は、種々のNi合金薄膜の反射特性を測定した結果、これまで報告されているNi−Cr等のNi合金薄膜では、純Niに対して反射率は増加するのに対して、NiにTiを添加したNi−Ti合金薄膜においては、純Niより大きく反射率が低下することを確認した。
さらに、本発明者は、レーザー加工時の大気中での処理を想定して、加熱処理を行ったところ、Ni−Ti合金薄膜の反射率はさらに低下し、光吸収特性に優れることを明らかにした。その理由は明らかではないが、純Niより酸化しやすいTiを添加することで、薄膜表面の酸化層が増加するためか、あるいは結晶構造の異なるTiの添加によりNiの電子構造が大きく変化する影響が考えられる。純Niの反射率を低減する効果は、添加量5原子%では不十分であるが、10原子%以上で大きくなり、それ以上添加してもほぼ一定となる。
一方、NiにTiを過度に添加すると、反射率を低減する効果は薄れてくる上、Ni合金薄膜の抵抗値を増加させるとともに、はんだ濡れ性を阻害する。
また、NiにTiを過度に添加すると、レーザー加工に用いられるNi合金薄膜を形成するためのスパッタリングターゲット材を製造する際の塑性加工工程において、素材角部に疵が発生したり、破断しやすくなることで製造安定性が低下する。これは、Ni−Ti合金において、Tiの添加量が増加すると、NiTiの化合物を発現し、その化合物等を起点に角疵や破断が発生することに起因すると考えられる。
また、TiのNi側での最大固溶量は、1300℃で約13原子%であり、低温ではその固溶量は低下する。このため、塑性加工時の温度が低下すると、化合物が析出して、疵や破断が発生しやすくなると考えられる。したがって、本発明では、Tiの添加量の上限を13原子%とした。
また、本発明のレーザー加工用Ni合金薄膜を形成するためのNi合金スパッタリングターゲット材は、Niに対するTiの添加量を10〜13原子%に最適化とすることで、Ni合金スパッタリングターゲット材の製造安定性を維持しながら、スパッタリングターゲット材の寿命を向上できる。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
表1に示す成分となるように、高純度電解Niに、高純度金属原料のTi、Cr、Moを所定の重量加えて、真空誘導溶解炉にて溶解して、内寸が厚み45mm、幅110mm、高さ110mmの金属製鋳型で鋳造してインゴットを作製した。次いで、各インゴットを1150℃で加熱処理を行った後に、塑性加工を施して厚み7mmの板状にした。その板状素材の外観を検査して角部の疵や破断の有無を確認した。その後、加工歪みを除くために900℃で熱処理を行った。
次に、上記で得た各板状素材から機械加工により直径100mm、厚み5mmのスパッタリングターゲット材を機械加工で切り出し、銅製のバッキングプレ−トにろう付けした。その後、スパッタ装置(株式会社アルバック製、型式番号:SBH2204)に上記で得た各スパッタリングターゲット材を取り付けて、スパッタ放電が可能であるかを確認した。このときのスパッタ放電条件は、圧力0.5Paのアルゴンガス雰囲気下で、投入電力は500Wとした。
表1に、上記で作製した各スパッタリングターゲット材の板状素材の外観検査結果およびスパッタ放電の可否を示す。尚、板状素材の検査結果は、圧延した素材の疵や破断の状態を示し、それらのないものを良好とした。
Figure 2012067371
表1に示すように、本発明例であるTiの添加量が10原子%、13原子%の試料No.4および試料No.5は、塑性加工時に割れを発生することなく、良好な外観のスパッタリングターゲット材が得られた。
一方、Tiの添加量が13%を越え、14%の試料No.6は、塑性加工後の板状素材の角部に疵が生じ、スパッタリングターゲット素材の歩留まりが低下することがわかる。さらに添加量18%では、塑性加工時に破断し、板状に加工できなかった。
スパッタ放電は、本発明例のNiにTiを10原子%、13原子%添加した試料No.4、5、および比較例の試料No.6、8〜10は、スパッタリングターゲット材の裏面に配置する磁気回路の磁束を吸収しないために、5mmという厚いスパッタリングターゲット材でもスパッタ放電可能であった。これに対し、比較例である純Niの試料No.1は、スパッタリングターゲット材の裏面に配置する磁気回路の磁束を、磁性を有するスパッタリングターゲット材が吸収したことにより、スパッタリングターゲット材の厚みが5.0mmでは厚すぎて放電できなかった。
また、Tiを加えたNi−Ti合金のスパッタリングターゲット材では、Ti添加量が10原子%以上でスパッタ放電が可能となり、5mmという厚いスパッタリングターゲット材でスパッタ放電を行うには、Ti添加量は10%以上必要であることを確認した。
これにより、本発明例のNiにTiを10原子%、13原子%添加した試料No.4、5のNi合金スパッタリングターゲット材は、5mmのスパッタリングターゲット材を使用してもスパッタ放電できるため、スパッタリングターゲット材の寿命を改善でき、Ni合金薄膜の生産性を大幅に向上させることが期待できる。
次に、試料No.4、8〜10のスパッタリングターゲット材を用いて、実施例1と同様のスパッタ放電条件にて、25×50mmのガラス基板上に厚み100nmの薄膜を形成し、反射率を測定した。また、レーザー加工時の大気中での処理を想定して、大気中にて300℃で1時間の加熱処理を行った後の反射率も測定した。反射率の測定には、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、型式番号:CM2500d)を用いた。反射率の測定結果を表2に示す。
Figure 2012067371
表2に示すように、本発明例である試料No.4のTiを10原子%添加したNi合金薄膜の反射率は、比較例である試料No.10(純Cr)より低く、大気中で加熱処理すると、さらに大幅に低下することを確認した。また、NiにCr、Moを添加した試料No.8、No.9のNi合金薄膜の反射率は、成膜時に本発明である試料No.4よりも高く、加熱処理後の反射率も低下が少ないことが確認できた。
これにより、本発明のTiを特定量添加したNi合金薄膜は、純Crや他のNi合金に比較して成膜時に反射率が低く、加熱処理後にはさらに反射率を低下させることができ、レーザー光吸収特性に優れていることが確認できた。

Claims (2)

  1. Tiを10〜13原子%含有し、残部Niおよび不可避的不純物からなることを特徴とするレーザー加工用Ni合金薄膜。
  2. 請求項1に記載されるレーザー加工用Ni合金薄膜を形成するためのスパッタリングターゲット材であって、Tiを10〜13原子%含有し、残部Niおよび不可避的不純物からなることを特徴とするNi合金スパッタリング用ターゲット材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104425416A (zh) * 2013-09-10 2015-03-18 日立金属株式会社 层叠布线膜和其制造方法以及Ni合金溅射靶材

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