JP5724998B2 - 保護膜形成用スパッタリングターゲットおよび積層配線膜 - Google Patents
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Description
上述の配線膜の微細化および薄膜化にともない、Alよりも比抵抗の低い材料である銅または銅合金を用いた配線膜が提供されている。
そこで、例えば特許文献1には、Cu配線膜の上に、Ni−Cu−(Cr,Ti)合金からなる保護膜を形成した積層膜、及び、この保護膜を形成するためのスパッタリングターゲットが提案されている。この保護膜は、銅よりも耐候性が高いことから、大気中で保管しても表面の変色を抑制することが可能となる。
また、Crを含有した場合には、エッチング後の廃液にCrが含有されることになり、廃液処理にコストが掛かるといった問題があった。
さらに、比較的高価なNiを35質量%以上84.5質量%以下と多く含有していることから、スパッタリングターゲットおよび積層配線膜の製造コストが増加するといった問題があった。
また、Niの含有量が5質量%以上15質量%以下と比較的少ないことから、このスパッタリングターゲットおよび保護膜の製造コストを大幅に削減することができる。
また、保護膜がCu基合金で構成されることになるため、塩化鉄を含むエッチング液でエッチングした場合であっても未溶解の残渣の発生を抑制することが可能となる。
さらに、Crを有していないことから、エッチング後の廃液処理を低コストで行うことができる。さらに、Niの含有量が5質量%以上15質量%以下と比較的少ないことから、積層配線膜の製造コストを大幅に削減することができる。
この保護膜形成用スパッタリングターゲットは、Znを30質量%以上50質量%以下、Niを5質量%以上15質量%以下、Mnを2質量%以上10質量%以下、残部がCuと不可避不純物とからなる組成を有している。
なお、この保護膜形成用スパッタリングターゲットは、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、熱処理、機械加工といった工程を経て製造される。
Znは、機械的特性を向上させるとともに加工性を改善する作用効果を有する元素である。Znを含有することにより、保護膜形成用スパッタリングターゲットの製造を良好に行うことが可能となる。
ここで、Znの含有量が30質量%未満の場合には、熱間加工性が十分に向上せず、熱間圧延時に割れが発生するおそれがある。一方、Znの含有量が50質量%を超えた場合には、冷間加工性が劣化し、冷間圧延時に割れが発生するおそれがある。
このような理由から、Znの含有量を、30質量%以上50質量%以下の範囲内に設定している。
Niは、Cuの耐候性を改善する作用効果を有する元素である。Niを含有することにより、変色を抑制することが可能となる。
ここで、Niの含有量が5質量%未満の場合には、耐候性が十分に向上せず、Cu配線膜11の変色を十分に抑制することができないおそれがある。一方、Niの含有量が15質量%を超えた場合には、エッチング性が劣化し、塩化鉄を含有するエッチング液でエッチングした際に未溶解の残渣が生成するおそれがある。また、熱間加工性、被削性も低下することになる。
このような理由から、Niの含有量を、5質量%以上15質量%以下の範囲内に設定している。
Mnは、Niと同様に、Cuの耐候性を向上させる作用効果を有する元素である。また、溶湯の流動性、熱間加工性、被削性を向上させる作用効果も有する。さらに、Niに比べて安価な元素であることから、Niの代替として添加することでコストを削減することが可能となる。
ここで、Mnの含有量が2質量%未満の場合には、耐候性が十分に向上せず、変色を十分に抑制することができないおそれがある。一方、Mnの含有量が10質量%を超えた場合には、エッチング性が劣化し、塩化鉄を含有するエッチング液でエッチングした際に未溶解の残渣が生成するおそれがある。また、前述のような効果の更なる向上は認められず、かえって熱間加工性、冷間加工性が劣化することになる。
このような理由から、Mnの含有量を、2質量%以上10質量%以下の範囲内に設定している。
本実施形態である積層配線膜10は、図1に示すように、基板1の上に成膜されたCu配線膜11と、Cu配線膜11の上に成膜された保護膜12と、を備えている。
ここで、基板1は、特に限定されるものではないが、フラットパネルディスプレイやタッチパネル等においては、光を透過可能なガラス、樹脂フィルム等からなるものが用いられている。
また、このCu配線膜11の厚さAは、50nm≦A≦800nmの範囲内とすることが好ましく、さらには、100nm≦A≦300nmの範囲内とすることが好ましい。
この保護膜12の厚さBは、5nm≦B≦100nmの範囲内とすることが好ましく、さらには、10nm≦B≦50nmの範囲内とすることが好ましい。
また、Cu配線膜11の厚さAと保護膜12の厚さBとの比B/Aは、0.02<B/A<1.0の範囲内であることが好ましく、さらには、0.1<B/A<0.3の範囲内とすることが好ましい。
さらに、保護膜形成用スパッタリングターゲットおよび保護膜12が、Crを有していないことから、エッチング後の廃液処理を低コストで行うことができる。
さらに、熱間加工性、冷間加工性、被削性に優れていることから、本実施形態である保護膜形成用スパッタリングターゲットを良好に製造することができる。
さらに、本実施形態では、保護膜12の厚さBが5nm≦B≦100nmの範囲内とされており、Cu配線膜11の厚さAと保護膜12の厚さBとの比B/Aが、0.02<B/A<1.0の範囲内とされているので、Cu配線膜11の変色を確実に抑制することができる。
例えば、本実施形態では、基板の上に積層配線膜を形成した構造を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、基板の上にITO膜、AZO膜等の透明導電膜を形成し、その上に積層配線膜を形成してもよい。
さらに、Cu配線膜の厚さA、保護膜の厚さB、厚さ比B/Aは、本実施形態に記載されたものに限定されるものではなく、他の構成とされていてもよい。
純度99.99質量%の無酸素銅の鋳塊を準備し、この鋳塊に対して熱間圧延、歪取焼鈍、機械加工を行い、外径:100mm×厚さ:5mmの寸法を有するCu配線膜形成用純銅ターゲットを作製した。
次に、無酸素銅製バッキングプレートを用意し、この無酸素銅製バッキングプレートに前述のCu配線膜形成用純銅ターゲットを重ね合わせ、温度:200℃でインジウムはんだ付けすることによりバッキングプレート付きターゲットを作製した。
溶解原料として、無酸素銅(純度99.99質量%)、低カーボンニッケル(純度99.9質量%)、電解金属マンガン(純度99.9質量%)、電気亜鉛(純度99.99質量%)を準備し、これらの溶解原料を高純度グラファイトるつぼ内で高周波溶解し、表1に示される組成を有する溶湯に成分を調整した後、冷却されたカーボン鋳型に鋳造し、50×50×30mm厚の大きさの鋳塊を得た。
次いで、鋳塊に対して、圧下率約10%で15mm厚まで熱間圧延し、表面の酸化物や疵を面削で除去した後、さらに圧下率10%で冷間圧延して10mm厚まで圧延し、歪取焼鈍した。得られた圧延板の表面を機械加工して、外形:100mm、厚さ:5mmの寸法を有する本発明例1〜8および比較例1〜6の保護膜形成用スパッタリングターゲットを作製した。さらに、従来例1として、Ni:64質量%、Ti:4質量%、残部がCuおよび不可避不純物からなるスパッタリングターゲットを準備した。
次に、無酸素銅製バッキングプレートを用意し、この無酸素銅製バッキングプレートに得られた保護膜形成用スパッタリングターゲットを重ね合わせ、温度:200℃でインジウムはんだ付けすることによりバッキングプレート付きターゲットを作製した。
ここで、本発明例1〜8および比較例1〜6の保護膜形成用スパッタリングターゲットにおいては、熱間圧延時および冷間圧延時に割れの有無を確認した。結果を表1に併せて示す。
Cu配線膜形成用純銅ターゲットをガラス基板(縦:20mm、横:20mm、厚さ:0.7mmの寸法を有するコーニング社製1737のガラス基板)との距離が70mmとなるようにスパッタ装置内にセットし、電源:直流方式、スパッタパワー:150W、到達真空度:5×10−5Pa、雰囲気ガス組成:純Ar、スパッタガス圧:0.67Pa、基板加熱:なし、の条件でスパッタリングを実施し、ガラス基板の表面に、厚さ:150nmを有するCu配線膜を形成した
これに引き続き、同条件で、表1に記載した保護膜形成用スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを実施し、Cu配線膜の上に、厚さ:30nmの保護膜を形成した。これにより、表2に示される本発明例11〜18および比較例11〜16の積層配線膜を形成した。
なお、従来例11として、上述した従来例1のスパッタリングターゲットを用いて、Cu配線膜の上に保護膜を成膜した積層配線膜を作製した。
JIS−K5400に準じ、1mm間隔で積層配線膜に碁盤目状に切れ目を入れた後、3M社製スコッチテープで引き剥がし、ガラス基板中央部の10mm角内でガラス基板に付着していた積層配線膜の面積%を測定する碁盤目付着試験を実施した。評価結果を表2に示す。
恒温恒湿試験(60℃、相対湿度90%で250時間暴露)を行い、目視で積層配線膜表面の変化の有無を確認した。変色が認められたものを「NG」、変色が確認できなかったものを「OK」とした。評価結果を表2に示す。
ガラス基板上に成膜した積層配線膜に、フォトレジスト液(東京応化工業株式会社製:OFPR−8600LB)を塗布、感光、現像して、30μmのラインアンドスペースでレジスト膜形成し、液温30℃±1℃に保持した4%FeCl3水溶液に浸漬して積層配線膜をエッチングして配線を形成した。
この配線の断面を、Arイオンビームを用い、遮蔽板から露出した試料に対して垂直にビームを当て、イオンエッチングを行い、得られた断面を二次電子顕微鏡で観察し、エッチング残渣の有無を調べた。比較例16の残渣観察結果を図2、本発明例18の残渣観察結果を図3に示す。ここで、残渣の長さLが300nm以上のものを×、残渣の長さLが300nm未満のものを○として評価した。評価結果を表2に示す。
保護膜形成用スパッタリングターゲットを用いて前述と同じ条件スパッタリングを実施し、前述のガラス基板上に、厚さ:150nmの保護膜を形成した。この保護膜単層のみを成膜したガラス基板を、液温30℃±1℃に保持した4%FeCl3水溶液に浸漬して保護膜をエッチングし、目視観察により保護膜がなくなるまでの時間を測定してエッチングレートを求めた。
また、比較例2の保護膜形成用スパッタリングターゲットにおいては、Znの含有量が本発明の範囲よりも多く、冷間加工時に割れが認められた。
同様に、Mnの含有量が本発明例よりも少ない保護膜形成用スパッタリングターゲットによって保護膜が成膜された比較例15の積層配線膜においては、恒温恒湿試験において変色が認められており、耐候性が不十分であった。
同様に、Mnの含有量が本発明例よりも多い保護膜形成用スパッタリングターゲットによって保護膜が成膜された比較例16の積層配線膜においては、エッチング後に残渣が残存していた。また、エッチングレートが遅く、エッチング性に劣っていた。
さらに、Ni:64質量%、Ti:4質量%、残部がCuおよび不可避不純物からなるスパッタリングターゲットによって保護膜が成膜された従来例11の積層配線膜においても、エッチング後に残渣が残存していた。また、エッチングレートが遅く、エッチング性に劣っていた。
さらに、Ni,Mnの含有量が本発明の範囲内とされた本発明例1〜8の保護膜形成用スパッタリングターゲットによって保護膜が成膜された本発明例11〜18の積層配線膜においては、密着性、耐候性、エッチング性に優れていた。
1 基板
11 Cu配線膜
12 保護膜
Claims (2)
- Cu配線膜の片面または両面に保護膜を成膜する際に使用される保護膜形成用スパッタリングターゲットであって、
Znを30質量%以上50質量%以下、Niを5質量%以上15質量%以下、Mnを2質量%以上10質量%以下、残部がCuと不可避不純物とからなることを特徴とする保護膜形成用スパッタリングターゲット。 - Cu配線膜と、このCu配線膜の片面または両面に形成された保護膜と、を備えた積層配線膜であって、
前記保護膜が、Znを30質量%以上50質量%以下、Niを5質量%以上15質量%以下、Mnを2質量%以上10質量%以下、残部がCuと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴とする積層配線膜。
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