JP2012051522A - 車両用冷暖房装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒートポンプ式の車両用冷暖房装置において、運転状態に応じて熱交換をより適正に行えるようにする。
【解決手段】車両用冷暖房装置1は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機2と、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器3と、凝縮器3から導出された冷媒を蒸発させる第1の蒸発器7と、第1の蒸発器7と並列に設けられ、凝縮器3から導出された冷媒を蒸発させる第2の蒸発器5と、凝縮器3と第1の蒸発器7との間に設けられ、凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値となるよう冷媒の流量を調整する過冷却度制御弁42と、凝縮器3と第2の蒸発器5との間に設けられ、その開度が外部から電気的に調整される流量制御弁32と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】車両用冷暖房装置1は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機2と、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器3と、凝縮器3から導出された冷媒を蒸発させる第1の蒸発器7と、第1の蒸発器7と並列に設けられ、凝縮器3から導出された冷媒を蒸発させる第2の蒸発器5と、凝縮器3と第1の蒸発器7との間に設けられ、凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値となるよう冷媒の流量を調整する過冷却度制御弁42と、凝縮器3と第2の蒸発器5との間に設けられ、その開度が外部から電気的に調整される流量制御弁32と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置に関する。
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
ところで、このような車両用冷暖房装置において高い空調性能を維持するためには、車両がおかれる外部環境等に応じて凝縮器や蒸発器による熱交換が適切に行われることが必要となる。特に上述したヒートポンプ式の車両用冷暖房装置においては、室外熱交換器が運転状態に応じて室外凝縮器または室外蒸発器として機能し、また、内部熱交換器が室内凝縮器として機能するため、複数の凝縮器と複数の蒸発器が機能することになる。このため、各凝縮器の凝縮量や各蒸発器の蒸発量を適正に制御する必要がある。
本発明の目的の一つは、ヒートポンプ式の車両用冷暖房装置において、運転状態に応じて熱交換をより適正に行えるようにすることにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用冷暖房装置は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器と、凝縮器から導出された冷媒を蒸発させる第1の蒸発器と、第1の蒸発器と並列に設けられ、凝縮器から導出された冷媒を蒸発させる第2の蒸発器と、凝縮器と第1の蒸発器との間に設けられ、凝縮器の出口側の過冷却度が設定値となるよう冷媒の流量を調整する過冷却度制御弁と、凝縮器と第2の蒸発器との間に設けられ、その開度が外部から電気的に調整される流量制御弁と、を備える。
この態様によると、凝縮器から導出される冷媒は、一方で過冷却度制御弁を介して第1の蒸発器に供給され、他方で流量制御弁を介して第2の蒸発器に供給される。そして、外部から設定した流量制御弁の開度に応じて第1の蒸発器および第2の蒸発器へ供給される冷媒の流量の割合が調整される。これにより、各蒸発器に適正量の冷媒を供給することが可能になる。また、過冷却度制御弁によって凝縮器の出口側の過冷却度が確保されるため、下流側の第1の蒸発器に液冷媒を確実に供給することができ、除湿性能を良好に維持できるようになる。
本発明によれば、ヒートポンプ式の車両用冷暖房装置において、運転状態に応じて熱交換をより適正に行ことができる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。冷媒循環回路には、冷暖房を適切に制御するための各種制御弁が配設されている。
車両用冷暖房装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、暖房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時および除霜運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、冷房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第2冷媒循環通路と第3冷媒循環通路とで同方向となっている。
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路21を介して室内凝縮器3の入口に接続され、室内凝縮器3の出口は第2通路22を介して室外熱交換器5の入口に接続されている。室外熱交換器5の出口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。第2通路22と第3通路23とはバイパス通路25により接続され、室内凝縮器3から導出された冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器5を迂回させて蒸発器7へ供給可能となっている。さらに、第3通路23のバイパス通路25との合流点よりも上流側に分岐点が設けられ、アキュムレータ8の入口につながるバイパス通路26が設けられている。
第1冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,バイパス通路25,第3通路23,第4通路24を接続して構成される。第2冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,第3通路23,バイパス通路26を接続して構成される。第3冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,第3通路23,第4通路24を接続して構成される。そして、このような冷媒循環通路の切り替えを実現するために、第2通路22には流量制御弁32が設けられ、第3通路23には過冷却度制御弁42、差圧弁44および逆止弁46が設けられ、第4通路24には過熱度制御弁48が設けられている。また、バイパス通路25には開閉弁50が設けられ、バイパス通路26には開閉弁52および過熱度制御弁54が設けられている。
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置として機能する制御弁の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に上流側から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
流量制御弁32は、第2通路22におけるバイパス通路25との分岐点よりも下流側に設けられている。流量制御弁32は、その開度がアクチュエータへの供給電流値に応じた設定開度に自律的に調整される比例弁として構成されている。本実施形態では、流量制御弁32の弁部を駆動するアクチュエータとしてステッピングモータが採用されるが、ソレノイドであってもよい。流量制御弁32は、基本的には全開状態、大口径制御状態、小口径制御状態、閉弁状態のいずれかの状態に制御される。なお、大口径制御状態は全開状態には到らないが開度が大きい状態であり、小口径制御状態は閉弁状態には到らないが開度が小さい状態である。
流量制御弁32は、小口径制御により膨張装置としても機能する。暖房運転時においては、後述のように開閉弁50が開弁状態とされてバイパス通路25が開放される一方、流量制御弁32の開度(つまり第2通路22の開度)が調整される。このため、流量制御弁32の開度に応じて室外熱交換器5へ供給される冷媒の流量が調整される。すなわち、流量制御弁32は、室内凝縮器3から室外熱交換器5へ向かう冷媒流量と、室外熱交換器5を迂回して蒸発器7に供給される冷媒流量(バイパス通路25を流れる冷媒流量)との割合を調整する流量調整弁として機能する。
過冷却度制御弁42は、室外熱交換器5から導出された冷媒や、バイパス通路25を介して供給された冷媒を絞り膨張させて蒸発器7側に導出する「膨張装置」として機能する。過冷却度制御弁42は、冷房運転時において室外熱交換器5の出口側の過冷却度が予め設定された一定の過冷却度(設定値SC)に近づくよう冷媒の流れを制御する。また、暖房運転時において室内凝縮器3の出口側の過冷却度が予め設定された一定の過冷却度(設定値SC)に近づくよう冷媒の流れを制御する。本実施形態では、過冷却度制御弁42として、その上流側(冷房運転時においては室外熱交換器5の出口側であり、暖房運転時(除湿制御を行う特定暖房運転時)において室内凝縮器3の出口側)の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。
過冷却度制御弁42は、冷房運転時において室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SCよりも大きくなると開弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。逆に、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、過冷却度制御弁42は閉弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。過冷却度制御弁42は、その入口(室外熱交換器5の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるよう自律的に動作する。
過冷却度制御弁42は、また、特定暖房運転時においてバイパス通路25が開放されると、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも大きくなると開弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。逆に、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、過冷却度制御弁42は閉弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。過冷却度制御弁42は、その入口(室内凝縮器3の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるよう自律的に動作する。
なお、図示を省略するが、過冷却度制御弁42は、上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する弁孔とが設けられたボディと、弁孔に接離して弁開度を調整する弁体と、入口ポートから導入された冷媒の温度と圧力を感知し、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値となるよう弁体を開閉駆動する感温部とを備えるものでもよい。
差圧弁44は、過冷却度制御弁42の下流側に設けられている。差圧弁44は、第3通路23において過冷却度制御弁42側への冷媒の逆流を防止する機械式の弁として構成され、その前後差圧が設定された開弁差圧以上となったときに開弁する。
逆止弁46は、第3通路23におけるバイパス通路26との分岐点とバイパス通路25との合流点との間に設けられている。逆止弁46は、バイパス通路25を通過した冷媒が室外熱交換器5側へ逆流することを防止する機械式の弁として構成されている。
過熱度制御弁48は、その出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、その過熱度が予め設定された一定の過熱度(設定過熱度SH)に近づくよう冷媒の流れを制御する。本実施形態では、過熱度制御弁48として、その出口側(過熱度制御弁48の下流側)の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。過熱度制御弁48は、感知した過熱度が設定過熱度SHよりも大きければ弁開度を絞り、蒸発器7の蒸発圧力を上昇させることにより、蒸発器7を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を小さくし、それにより過熱度を小さくして設定過熱度SHに近づける。逆に、感知された過熱度が設定過熱度SHよりも小さければ、過熱度制御弁48は、弁開度を大きくし、蒸発器7の蒸発圧力を低下させることにより、蒸発器7を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を大きくし、それにより過熱度を大きくして設定過熱度SHに近づける。このように、過熱度制御弁48は、その出口側の過熱度が設定過熱度SHに近づくよう自律的に動作する。
なお、図示を省略するが、過熱度制御弁48は、例えば上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する弁孔とが設けられたボディと、弁孔に接離して弁開度を調整する弁体を含む弁駆動体と、出口ポート側(弁部の下流側)の内部通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知し、過熱度制御弁48の出口側(弁部の下流側)の冷媒の過熱度が設定過熱度となるよう弁体を開閉駆動する感温部とを備えるものでよい。
開閉弁50は、バイパス通路25を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドとを備える二方向電磁弁からなる。開閉弁50の開弁によりバイパス通路25を介した蒸発器7への冷媒の流れが許容される。すなわち、開閉弁50が開弁されることにより、室内凝縮器3から導出された冷媒の少なくとも一部が室外熱交換器5を迂回するようにして蒸発器7へ供給されるようになる。室外熱交換器5を経由する冷媒流量と室外熱交換器5を迂回する冷媒流量との割合は流量制御弁32により制御される。本実施形態では、開閉弁50として、ソレノイドへの通電有無によって弁部を開閉させる開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。なお、開閉弁50の弁部を駆動するアクチュエータはソレノイドでなくてもよく、ステッピングモータ等の電動機であってもよい。
また、本実施形態では、開閉弁50をバイパス通路25の中間部に設けているが、例えば第2通路22におけるバイパス通路25への分岐点に三方向切替弁として配設してもよい。あるいは、その分岐点に流量制御弁32と開閉弁50の機能を併せ持つ三方向比例弁を設け、流量制御弁32および開閉弁50を省略してもよい。すなわち、分岐点の室外熱交換器5側の通路の開度を制御する第1比例弁と、分岐点のバイパス通路25側の通路の開度を制御する第2比例弁とを含み、アクチュエータの駆動量に応じて冷媒の流量を振り分ける振分弁として機能するものでよい。その場合、三方向比例弁は、弁部を駆動するアクチュエータとしてソレノイドを備えるものであってもよいし、ステッピングモータ等の電動機を備えるものでもよい。
開閉弁52は、バイパス通路26における過熱度制御弁54の上流側に設けられている。開閉弁52は、バイパス通路26を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドとを備える二方向電磁弁からなる。開閉弁52の開弁によりバイパス通路26を介したアキュムレータ8への冷媒の流れが許容される。本実施形態では、開閉弁52として、ソレノイドへの通電有無によって弁部を開閉させる開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。なお、開閉弁52の弁部を駆動するアクチュエータはソレノイドでなくてもよく、ステッピングモータ等の電動機であってもよい。また、本実施形態では、開閉弁52をバイパス通路26の中間部に設けているが、例えば第3通路23におけるバイパス通路26への分岐点に三方向切替弁として配設してもよい。
過熱度制御弁54は、室外熱交換器5が室外蒸発器として機能するときにその蒸発圧力を調整する「蒸発圧力調整弁」として機能する。過熱度制御弁54は、その出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、その過熱度が予め設定された一定の過熱度(設定過熱度SH)に近づくよう冷媒の流れを制御する。本実施形態では、過熱度制御弁54として、その出口側(過熱度制御弁54の下流側)の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。過熱度制御弁54は、感知した過熱度が設定過熱度SHよりも大きければ弁開度を絞り、室外熱交換器5の蒸発圧力を上昇させることにより、室外熱交換器5を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を小さくし、それにより過熱度を小さくして設定過熱度SHに近づける。逆に、感知された過熱度が設定過熱度SHよりも小さければ、過熱度制御弁54は、弁開度を大きくし、室外熱交換器5の蒸発圧力を低下させることにより、室外熱交換器5を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を大きくし、それにより過熱度を大きくして設定過熱度SHに近づける。このように、過熱度制御弁54は、その出口側の過熱度が設定過熱度SHに近づくよう自律的に動作する。なお、本実施形態では、過熱度制御弁54の設定過熱度と過熱度制御弁48の設定過熱度とを等しく設定しているが、両者を異なるように設定してもよい。
なお、図示を省略するが、過熱度制御弁54は、例えば上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する弁孔とが設けられたボディと、弁孔に接離して弁開度を調整する弁体を含む弁駆動体と、出口ポート側(弁部の下流側)の内部通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知し、過熱度制御弁54の出口側(弁部の下流側)の過熱度が設定過熱度となるよう弁体を開閉駆動する感温部とを備えるものでよい。
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部100は、流量制御弁32,開閉弁50,開閉弁52などの開閉制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて流量制御弁32の設定開度を決定し、その開度がその設定開度となるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、図示のように、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は除湿運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は除霜運転時の状態を示している。ここでいう「除湿運転」は、車室内の除湿をメインとして運転状態であり、「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜gはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、流量制御弁32は全開状態とされる。一方、開閉弁50,52はともに閉弁状態を保つ。このため、バイパス通路25,26が遮断され、圧縮機2から吐出冷媒は全て室外熱交換器5に導かれるようになる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、流量制御弁32、室外熱交換器5、過冷却度制御弁42、蒸発器7、過熱度制御弁48、アキュムレータ8を経由するように第3冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室外熱交換器5を経由した冷媒が過冷却度制御弁42にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁42は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。
図2(B)に示すように、除湿運転時においては、流量制御弁32は開弁状態となり、大口径制御を実行する。このとき、流量制御弁32には前後差圧ΔPが発生する。その結果、室内凝縮器3の凝縮圧力(凝縮温度)が、室外熱交換器5の凝縮圧力(凝縮温度)よりも高く維持され、車室内の温度が必要以上に低下することが抑制される。具体的には、ドライバの足元の温度をある程度高く維持することができる。また、この場合も、過冷却度制御弁42は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。
図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、流量制御弁32は開弁状態となり、小口径制御を実行する。一方、開閉弁50,52が開弁される。そして、流量制御弁32の開度が調整されることで、蒸発器7および室外熱交換器5に向かう冷媒の流量の割合が調整される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、流量制御弁32、室外熱交換器5、開閉弁52、過熱度制御弁54、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、開閉弁50、過冷却度制御弁42、蒸発器7、過熱度制御弁48、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。そして、一方で流量制御弁32にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒が室外熱交換器5に供給されて蒸発し、他方で過冷却度制御弁42にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒が蒸発器7に供給されて蒸発する。このとき、開閉弁50は全開状態である。室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率は、流量制御弁32の開度により制御される。すなわち、流量制御弁32の開度調整により室外熱交換器5へ供給される冷媒の流量が調整される。室内凝縮器3から導出された冷媒のうちバイパス通路25へ振り分けられる冷媒の流量は、流量制御弁32の開度に応じて変化する。一方、蒸発器7へ供給される冷媒流量は、過冷却度制御弁42により室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCとなるように調整される。
この特定暖房運転においては除湿運転が良好に行われるが、その除湿制御の概要については以下のとおりである。すなわち、図2(C)に示すように、過冷却度制御弁42により室内凝縮器3の出口における所定の過冷却度SCが維持されることで(c点)、室内凝縮器3における凝縮能力が適正に維持され、室外熱交換器5(室外蒸発器)および蒸発器7(室内蒸発器)のそれぞれにおいて効率の良い熱交換が行われる。このとき、アキュムレータ8によって圧縮機2の入口の冷媒の状態が常に飽和蒸気圧曲線上に保持されるため(a点)、蒸発器7の出口の冷媒の状態(g点)は、過熱度制御弁54の出口における冷媒の過熱度(h点)とバランスするように変化する。
すなわち、図示のように過熱度制御弁54の出口側にて過熱度が発生している場合、蒸発器7の出口における冷媒の湿り度(g点)は、過熱度制御弁54の出口における冷媒の過熱度(h点)とバランスする。このとき、室外熱交換器5における外部からの熱吸収量は、過熱度制御弁54の絞り量により調整される。すなわち、過熱度制御弁54は、その出口側の過熱度が設定過熱度SHよりも大きくなると、閉弁方向に動作して室外熱交換器5における蒸発圧力Poを上昇させる。その結果、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の蒸発圧力Peとの差圧Poeが発生する。それにより、室外熱交換器5を通過する冷媒の温度が高くなり外気との熱交換量が少なくなるため、過熱度は小さくなる方向に変化する。逆に、その過熱度が設定過熱度SHよりも小さくなると、開弁方向に動作して室外熱交換器5における蒸発圧力Poを低下させる。それにより、室外熱交換器5を通過する冷媒の温度が低くなり外気との熱交換量が多くなるため、過熱度は大きくなる方向に変化する。
このように、過熱度制御弁54の出口側の過熱度が設定過熱度SHとなるよう過熱度制御弁54が自律的に動作するため、室外熱交換器5の出口側の過熱度または湿り度が過熱度制御弁54の出口側の過熱度に応じて調整される。それにより、室外熱交換器5に潤滑オイルが滞留することを防止または抑制することができる。また、外気温によっては逆に、過熱度制御弁48の出口側にて過熱度が発生する場合もある(図2(C)の括弧書き参照)。その場合には、室外熱交換器5の出口における湿り度((e)点)が、過熱度制御弁48の出口側の過熱度((i)点)とバランスするようになる。すなわち、過熱度制御弁48の出口側の過熱度が設定過熱度SHとなるよう過熱度制御弁48が自律的に動作するため、蒸発器7の出口側の過熱度または湿り度が過熱度制御弁48の出口側の過熱度に応じて調整される。それにより、蒸発器7に潤滑オイルが滞留することを防止または抑制することができる。
また、車両が極寒の環境下におかれた場合などには、室外熱交換器5が凍結して空調制御の制御性を低下させてしまうことも想定される。このため、制御部100は、外部情報に基づいて適宜除霜運転を実行する。この除霜運転において、制御部100は、まずエアミックスドア14を閉じて室内凝縮器3における熱交換を休止し、冷媒の温度低下を抑制する。このとき、蒸発器7にて熱交換が行われると車室内の温度が低下してしまうので、室内送風機12の駆動も停止させる。その状態で、図2(D)に示したように開閉弁50を閉じる一方で開閉弁52を開弁させ、流量制御弁32を開弁させる。なお、除霜運転時において室外熱交換器5と外部の空気との熱交換を抑制するために、室外熱交換器5に外気(風)が当たることを抑制するシャッタ等を設けてもよい。
このとき、流量制御弁32は大口径制御を実行する。その結果、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒が、流量制御弁32を通過して室外熱交換器5に供給され、その後、開閉弁52、過熱度制御弁54およびアキュムレータ8を経由して圧縮機2に戻る。このとき、室外熱交換器5の出口側の冷媒は過冷却しないため(e点)、過冷却度制御弁42は閉弁状態を維持する。このため、蒸発器7への冷媒の供給は遮断される。その結果、ホットガスが室外熱交換器5に供給され続ける状態となり、除霜を確実に実行することが可能となる。除霜運転が安定した状態においては図中実線にて示すように、室外熱交換器5から導出された冷媒は、アキュムレータ8に導入されることにより飽和蒸気線上に制御される(e点)。
このようにして流量制御弁32を介して高温のガス冷媒が室外熱交換器5に送られ、除霜を行うことができる。なお、開閉弁52の下流側には過熱度制御弁54が設けられているため、アキュムレータ8に想定以上の過熱ガスが供給されることは防止される。すなわち、アキュムレータ8内の液冷媒が不足等により過熱度制御弁54の出口側に過熱度が発生する場合も想定されるが、その場合には図中点線にて示すように、過熱度制御弁54がその過熱度が設定過熱度SHに近づくよう冷媒の流れを制御する。このため、過熱度制御弁54には前後差圧が発生するようになる。
図3は、流量制御弁の流量制御による作用効果を表す説明図である。同図には冷媒の流量(室外熱交換器5を流れる流量、蒸発器7を流れる流量、室外熱交換器5および蒸発器7を流れる総流量)、室内凝縮器3の出口側の過冷却度または湿り度が示されている。同図の横軸は、流量制御弁32(比例弁)の開度を示している。
図示のように、流量制御弁32が閉弁状態にあるときには、室内凝縮器3から導出された冷媒の全てが蒸発器7に供給される。暖房運転時に流量制御弁32により小口径制御が行われると、流量制御弁32の開度が増加されるにつれて室外熱交換器5に供給される冷媒流量が増加する。その際、室内凝縮器3から導出された冷媒の総流量を蒸発器7および室外熱交換器5に振り分ける割合が流量制御弁32により調整される。蒸発器7へ冷媒が供給されている間、過冷却度制御弁42によって室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCに維持される。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、過熱度制御弁や過冷却度制御弁の配置構成が異なるなど冷媒循環通路の構成が第1実施形態と異なるが、各制御弁の構成など共通する部分も有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図4は、第2実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、過熱度制御弁や過冷却度制御弁の配置構成が異なるなど冷媒循環通路の構成が第1実施形態と異なるが、各制御弁の構成など共通する部分も有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図4は、第2実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
本実施形態の車両用冷暖房装置201は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁ユニット4、室外熱交換器5、第2制御弁ユニット6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。そして、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。冷房運転時(除湿時)および暖房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時および除霜運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、冷房運転時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット6→蒸発器7→第2制御弁ユニット6→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット6→室外熱交換器5→第1制御弁ユニット4→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→第1制御弁ユニット4→室外熱交換器5→第2制御弁ユニット6→蒸発器7→第2制御弁ユニット6→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第2冷媒循環通路が開放された場合と第3冷媒循環通路が開放された場合とで逆転する。つまり、室外熱交換器5における冷媒の入口と出口は、第2冷媒循環通路が開放された場合と第3冷媒循環通路が開放された場合とで切り替わる。
具体的には、室内凝縮器3の出口につながる第2通路22がその下流側で分岐し、その一方である第1分岐通路27が蒸発器7につながり、他方である第2分岐通路28が室外熱交換器5につながっている。第3通路23における第2分岐通路28との接続点と第1分岐通路27との接続点との間には、その上流側から過冷却度制御弁42および差圧弁44が配設されている。
第1冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,第1分岐通路27,第4通路24を接続して構成される。第2冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,第2分岐通路28,第3通路23,バイパス通路26を接続して構成される。第3冷媒循環通路は、第1通路21,第3通路23,第4通路24を接続して構成される。そして、このような冷媒循環通路の切り替えを実現するために、室内凝縮器3と室外熱交換器5との接続部に第1制御弁ユニット4が設けられ、室内凝縮器3と室外熱交換器5と蒸発器7との接続部に第2制御弁ユニット6が設けられている。
第1制御弁ユニット4は、共用のボディに差圧弁250、開閉弁52および過熱度制御弁54を含むように構成される。差圧弁250は、その前後差圧(室内凝縮器3の入口側圧力と室外熱交換器5の入口側圧力との差圧)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう自律的に動作する定差圧弁(電磁弁)である。本実施形態では、差圧弁250の弁部を駆動するアクチュエータとしてソレノイドを用いるが、ステッピングモータ等の電動機を用いてもよい。差圧弁250は除湿運転時に駆動されて差圧制御を実行し、室内凝縮器3における凝縮圧力を室外熱交換器5における凝縮圧力よりも設定差圧分高く維持し、それにより室内凝縮器3における冷媒温度が過度に低下するのを防止する。具体的には、ドライバの足元を適度に暖められる程度の凝縮圧力(温度)が得られるようにするものである。
一方、第2制御弁ユニット6は、共用のボディに過冷却度制御弁42(「第2の過冷却度制御弁」に該当する)、差圧弁44、過熱度制御弁48、流量制御弁32および過冷却度制御弁242(「第1の過冷却度制御弁」に該当する)を含む。流量制御弁32は第2分岐通路28に設けられ、過冷却度制御弁242は第1分岐通路27に設けられている。
過冷却度制御弁242は、室内凝縮器3から第2通路22を介して導入された冷媒を絞り膨張させて下流側に導出する「膨張装置」としても機能する。なお、図示を省略するが、過冷却度制御弁242は、過冷却度制御弁42と同様に、上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する弁孔とが設けられたボディと、弁孔に接離して弁開度を調整する弁体と、入口ポートから導入された冷媒の温度と圧力を感知し、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値となるよう弁体を開閉駆動する感温部とを備えるものでもよい。ただし本実施例では、過冷却度制御弁242が閉弁時に冷媒の漏洩を防止するシール部材を有するのに対し、過冷却度制御弁42は閉弁時に所定流量の冷媒の漏洩を許容する冷媒漏洩通路(例えば小断面のオリフィス)が形成されている点で異なっている。
過冷却度制御弁242は、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも大きくなると開弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。逆に、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、過冷却度制御弁242は、閉弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。このように、過冷却度制御弁242は、その入口(室内凝縮器3の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるよう自律的に動作する。なお、本実施形態では過冷却度制御弁242と過冷却度制御弁42の過冷却度の設定値を等しくしたが、異なる設定値を設定してもよい。
制御部100による制御により、図示のように、流量制御弁32および過冷却度制御弁242の上流側は高圧の上流側圧力P1となり、過冷却度制御弁242の下流側は低圧の下流側圧力P3となる。また、流量制御弁32の下流側で過冷却度制御弁42の上流側は中間圧力P2となる。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図5は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は除湿運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は除霜運転時の状態を示している。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。
図5(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁ユニット4において差圧弁250が開弁され、開閉弁52が閉弁される。差圧弁250は差圧制御を行わず全開状態とされる。一方、第2制御弁ユニット6においては流量制御弁32が閉弁状態とされる。開閉弁52の閉弁によりバイパス通路26が遮断されているため、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5に導かれるようになる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、過冷却度制御弁242、蒸発器7、過熱度制御弁48、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で差圧弁250、室外熱交換器5、過冷却度制御弁42、蒸発器7、過熱度制御弁48、アキュムレータ8を経由するように第3冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が過冷却度制御弁242にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁242は、室内凝縮器3の出口側(c点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。
また、室外熱交換器5を経由した冷媒が過冷却度制御弁42にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁42は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。
図5(B)に示すように、除湿運転時においては、第1制御弁ユニット4において差圧弁250が差圧制御を実行する。このため、差圧弁250の前後差圧が設定差圧ΔPとなるように制御される。その結果、室内凝縮器3の凝縮圧力(凝縮温度)が、室外熱交換器5の凝縮圧力(凝縮温度)よりも高く維持され、車室内の温度が必要以上に低下することが抑制される。この場合も、過冷却度制御弁242は、室内凝縮器3の出口側(c点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。また、過冷却度制御弁42は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。なお、本実施形態では室内凝縮器3の出口側の過冷却度と室外熱交換器5の出口側の過冷却度とが同じ設定値となるようにしたが、変形例においてはこれらの設定値を互いに異ならせてもよい。
図5(C)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁ユニット4において差圧弁250が閉弁されて開閉弁52が開弁される一方、第2制御弁ユニット6において流量制御弁32の開度が制御される。すなわち、流量制御弁32の小口径制御がなされ、その開度が調整されることで、蒸発器7および室外熱交換器5に向かう冷媒の流量の割合が調整される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、過冷却度制御弁242、蒸発器7、過熱度制御弁48、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、流量制御弁32、室外熱交換器5、開閉弁52、過熱度制御弁54、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。そして、室内凝縮器3から導出された冷媒の一方は、流量制御弁32にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5に供給されて蒸発する。また、室内凝縮器3から導出された冷媒の他方は、過冷却度制御弁242にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に供給されて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、流量制御弁32の開度により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保でき、除湿機能を確保することができる。一方、蒸発器7へ供給される冷媒流量は、過冷却度制御弁242により室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCとなるように調整される。
この特定暖房運転においては除湿運転が良好に行われるが、その除湿制御の概要については以下のとおりである。すなわち、図5(C)に示すように、過冷却度制御弁242により室内凝縮器3の出口における所定の過冷却度SCが維持されることで(c点)、室内凝縮器3における凝縮能力が適正に維持され、室外熱交換器5(室外蒸発器)および蒸発器7(室内蒸発器)のそれぞれにおいて効率の良い熱交換が行われる。このとき、アキュムレータ8によって圧縮機2の入口の冷媒の状態が常に飽和蒸気圧曲線上に保持されるため(a点)、蒸発器7の出口の冷媒の状態(g点)は、過熱度制御弁54の出口の冷媒の状態(h点)とバランスするように変化する。
すなわち、図示のように過熱度制御弁54の出口側にて過熱度が発生している場合、蒸発器7の出口における冷媒の湿り度(g点)は、過熱度制御弁54の出口における冷媒の過熱度(h点)とバランスする。また、逆に、過熱度制御弁48の出口側にて過熱度が発生する場合には、室外熱交換器5の出口における湿り度((e)点)が、過熱度制御弁48の出口側の過熱度((i)点)とバランスするようになる。
また、除霜運転時においては、図5(D)に示すように差圧弁250を閉じる一方で開閉弁52を開弁させ、流量制御弁32を開弁させる。このとき、流量制御弁32は大口径制御を実行する。その結果、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒(ホットガス)が、流量制御弁32を通過して室外熱交換器5に供給される。このとき、室外熱交換器5の出口側の冷媒は過冷却しないため(e点)、過冷却度制御弁42は閉弁状態を維持する。このため、蒸発器7への冷媒の供給は遮断される。除霜運転が安定した状態においては図中実線にて示すように、室外熱交換器5から導出された冷媒は、アキュムレータ8に導入されることにより飽和蒸気線上に制御される(e点)。一方、アキュムレータ8内の液冷媒が不足等により過熱度制御弁54の出口側に過熱度が発生する場合には、図中点線にて示すように、過熱度制御弁54がその過熱度が設定過熱度SHに近づくよう冷媒の流れを制御する。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態または第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6は、第3実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態または第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6は、第3実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
本実施形態の車両用冷暖房装置301は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁ユニット304、室外熱交換器5、第2制御弁ユニット306、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクルを備える。そして、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、暖房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時および除霜運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、冷房運転時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット306→蒸発器7→第2制御弁ユニット306→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット306→室外熱交換器5→第1制御弁ユニット304→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第1制御弁ユニット304→室外熱交換器5→第2制御弁ユニット306→蒸発器7→第2制御弁ユニット306→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。
具体的には、第1制御弁ユニット304は、共用のボディに切替弁350および過熱度制御弁54を含む。切替弁350は、第2通路22を開閉する第1弁部と、バイパス通路26を開閉する第2弁部と、各弁部を駆動するソレノイドとを備える三方向電磁弁からなる。第1弁部は、その開弁により室内凝縮器3から第2通路22を介した室外熱交換器5への冷媒の流れを許容する。第2弁部は、その開弁により室外熱交換器5からバイパス通路26を介したアキュムレータ8への冷媒の流れを許容する。本実施形態では、切替弁350として、ソレノイドへの通電有無によって第1弁部および第2弁部の一方を開弁させて他方を閉弁させる開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。なお、切替弁350を弁部を駆動するアクチュエータはソレノイドでなくてもよく、ステッピングモータ等の電動機であってもよい。
一方、第2制御弁ユニット306は、共用のボディに流量制御弁32、過冷却度制御弁42、過熱度制御弁48および切替弁334を含む。切替弁334は、第1分岐通路27と第3通路23との合流点に設けられている。切替弁334は、第1分岐通路27を開閉する第1弁部と第3通路23を開閉する第2弁部とのいずれか一方を開弁させて流路を切り替え可能な機械式の三方弁からなる。第1弁部は、その開弁により室内凝縮器3からバイパス通路25および第1分岐通路27を介した蒸発器7への冷媒の流れを許容する。第2弁部は、その開弁により室外熱交換器5から第3通路23を介した蒸発器7への冷媒の流れを許容する。なお、切替弁350の具体的構成については後述する。
図7は、切替弁の具体的構成を表す断面図である。(A)〜(C)は、切替弁の動作を例示するものである。
切替弁334は、第1弁部311および第2弁部312を含む三方弁であり、ボディ314に共用弁体315を収容するようにして構成されている。ボディ314は、第1ボディ316の一方の側部に段付円筒状の第2ボディ318を圧入して構成される。第1ボディ316と第2ボディ318との間には、シール用のOリング319が介装されている。ボディ314の一方の側部には第1分岐通路27に連通するポート331が設けられ、その反対側の側部には第3通路23の上流側に連通するポート332が設けられている。ボディ314の他の側部には、第3通路23の下流側に連通するポート333が設けられている。ポート331とポート332とは同軸状に連通する。一方、ポート333は、ポート331とポート332とをつなぐ通路に対して直交するように連通する。
切替弁334は、第1弁部311および第2弁部312を含む三方弁であり、ボディ314に共用弁体315を収容するようにして構成されている。ボディ314は、第1ボディ316の一方の側部に段付円筒状の第2ボディ318を圧入して構成される。第1ボディ316と第2ボディ318との間には、シール用のOリング319が介装されている。ボディ314の一方の側部には第1分岐通路27に連通するポート331が設けられ、その反対側の側部には第3通路23の上流側に連通するポート332が設けられている。ボディ314の他の側部には、第3通路23の下流側に連通するポート333が設けられている。ポート331とポート332とは同軸状に連通する。一方、ポート333は、ポート331とポート332とをつなぐ通路に対して直交するように連通する。
ボディ314内におけるポート331の近傍に弁孔320が設けられ、その内方の開口端部に弁座322が設けられている。また、ボディ314内におけるポート332の近傍に弁孔324が設けられ、その内方の開口端部に弁座326が設けられている。弁孔320と弁孔324とはその中心軸に同軸状に設けられている。
共用弁体315は、段付円柱状の本体を有し、その一端部が弁孔320に挿抜可能に構成され、他端部が弁孔324に挿抜可能に構成されている。共用弁体315の一端部は、その外径が弁孔320の内径とほぼ等しくなっており、その先端には弁孔320に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。また、共用弁体315の他端部は、その外径が弁孔324の内径とほぼ等しくなっており、その先端には弁孔324に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。
共用弁体315には、その長手方向中央部に半径方向外向きに延出するフランジ部328が形成され、その一方の側に第1弁部材336が嵌着され、他方の側に第2弁部材338が嵌着されている。第1弁部材336は、環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなり、弁座322に着座して第1弁部311を気密に閉弁する。第2弁部材338は、環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなり、弁座326に着座して第2弁部312を気密に閉弁する。すなわち、共用弁体315は、その一端部が弁孔320に挿抜されることにより第1弁部311を開閉するが、弁孔320に挿通されても微少なクリアランスからの冷媒の漏洩を許容する。そして、第1弁部材336が弁座322に着座したときに完全なシール状態を実現する。同様に、共用弁体315は、その他端部が弁孔324に挿抜されることにより第2弁部312を開閉するが、弁孔324に挿通されても微少なクリアランスからの冷媒の漏洩を許容する。そして、第2弁部材338が弁座326に着座したときに完全なシール状態を実現する。
第1弁部311の開弁によりポート331とポート333とが連通し、第2弁部312の開弁によりポート332とポート333とが連通する。第1ボディ316とフランジ部328との間には、共用弁体315を第1弁部311の閉弁方向(第2弁部312の開弁方向)に付勢するスプリング329が介装されている。
本実施形態では、弁孔320と弁孔324の有効径が等しく構成されているため、共用弁体315に作用する下流側圧力P3の影響はキャンセルされる。共用弁体315は、その前後差圧、つまり上流側圧力P1と中間圧力P2との差圧(P1−P2)が設定差圧ΔPset以上であれば、図7(A)に示すように、第1弁部311を開弁させ第2弁部312を閉弁させる状態を維持する。前後差圧(P1−P2)が設定差圧ΔPsetより小さくなると、図7(B)および(C)に示すように、共用弁体315がスプリング329の付勢力によって図の右方へ動作し、第1弁部311を閉弁させ第2弁部312を開弁させる。設定差圧ΔPsetは、スプリング329の荷重調整により設定される。特に図7(B)に示すように、切替弁334は、完全なシールがなされるわけではないものの、第1弁部311と第2弁部312とが同時に閉弁する状態がある構成となっている。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図8は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は除霜運転時の状態を示している。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。
図8(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁ユニット304において切替弁350の第1弁部が開弁され、第2弁部が閉弁される。一方、第2制御弁ユニット306においては流量制御弁32が閉弁状態とされる。このとき、切替弁334は、その前後差圧(P1−P2)が設定差圧ΔPsetより小さくなるため、第1弁部311が閉弁状態(第2弁部312は開弁状態)となり、室内凝縮器3から導出された冷媒は室外熱交換器5に導かれるようになる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、切替弁350、室外熱交換器5、過冷却度制御弁42、蒸発器7、過熱度制御弁48、アキュムレータ8を経由するように第3冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室外熱交換器5を経由した冷媒が切替弁334の第2弁部312を通過して過冷却度制御弁42にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁42は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。
図8(B)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁ユニット304において切替弁350の第2弁部が開弁されてバイパス通路26が開放される一方、第2制御弁ユニット306において流量制御弁32の開度が制御される。このとき、切替弁334は、その前後差圧(P1−P2)が設定差圧ΔPsetより大きくなるために第1弁部311が開弁状態(第2弁部312は閉弁状態)となり、室内凝縮器3から導出された冷媒の一部が蒸発器7に導かれるようになる。すなわち、流量制御弁32の小口径制御がなされ、その開度が調整されることで、蒸発器7および室外熱交換器5に向かう冷媒の流量の割合が調整される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、切替弁334の第1弁部311、過冷却度制御弁42、蒸発器7、過熱度制御弁48、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、流量制御弁32、室外熱交換器5、切替弁350、過熱度制御弁54、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。そして、室内凝縮器3から導出された冷媒の一方は、流量制御弁32にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5に供給されて蒸発する。また、室内凝縮器3から導出された冷媒の他方は、過冷却度制御弁42にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に供給されて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、流量制御弁32の開度により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保でき、除湿機能を確保することができる。一方、蒸発器7へ供給される冷媒流量は、過冷却度制御弁42により室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCとなるように調整される。
この特定暖房運転においては除湿運転が良好に行われるが、その除湿制御の概要については以下のとおりである。すなわち、図8(B)に示すように、過冷却度制御弁42により室内凝縮器3の出口における所定の過冷却度SCが維持されることで(c点)、室内凝縮器3における凝縮能力が適正に維持され、室外熱交換器5(室外蒸発器)および蒸発器7(室内蒸発器)のそれぞれにおいて効率の良い熱交換が行われる。このとき、アキュムレータ8によって圧縮機2の入口の冷媒の状態が常に飽和蒸気圧曲線上に保持されるため(a点)、蒸発器7の出口の冷媒の状態(g点)は、過熱度制御弁54の出口の冷媒の状態(h点)とバランスするように変化する。
すなわち、図示のように過熱度制御弁54の出口側にて過熱度が発生している場合、蒸発器7の出口における冷媒の湿り度(g点)は、過熱度制御弁54の出口における冷媒の過熱度(h点)とバランスする。また、逆に、過熱度制御弁48の出口側にて過熱度が発生する場合には、室外熱交換器5の出口における湿り度((e)点)が、過熱度制御弁48の出口側の過熱度((i)点)とバランスするようになる。
また、除霜運転時においては、図8(C)に示すように、第1制御弁ユニット304において切替弁350の第2弁部が開弁されてバイパス通路26が開放される一方、第2制御弁ユニット306において流量制御弁32が開弁される。このとき、流量制御弁32は大口径制御を実行する。その結果、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒(ホットガス)が、流量制御弁32を通過して室外熱交換器5に供給される。除霜運転が安定した状態においては図中実線にて示すように、室外熱交換器5から導出された冷媒は、アキュムレータ8に導入されることにより飽和蒸気線上に制御される(e点)。一方、アキュムレータ8内の液冷媒が不足等により過熱度制御弁54の出口側に過熱度が発生する場合には、図中点線にて示すように、過熱度制御弁54がその過熱度が設定過熱度SHに近づくよう冷媒の流れを制御する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
上記実施形態においては、補助凝縮器として室内凝縮器を設ける例を示した。変形例においては、補助凝縮器を室外熱交換器とは別に設けられる熱交換器として構成してもよい。その熱交換器は、例えば車室外に配置され、エンジンの冷却水を利用して熱交換を行うものでもよい。具体的には、例えば図1における圧縮機2と流量制御弁32との間に熱交換器を設ける一方、ダクト10内に放熱器を配置し、これら熱交換器と放熱器とを冷却水の循環回路にて接続してもよい。その循環回路には冷却水を汲み上げるポンプを設けてもよい。このようにすれば、圧縮機2から流量制御弁32へ向かう高温の冷媒と、循環回路を循環する冷却水との間で熱交換を行うことができる。このような構成においても、圧縮機2から吐出された冷媒を熱交換器により凝縮させて流量制御弁32に供給することが可能となる。
上記第3実施形態においては、図7に切替弁334の具体的構成例を示した。変形例においては、切替弁としてこれと異なる構成を採用してもよい。図9は、変形例に係る切替弁の具体的構成を表す断面図である。なお、本変形例において図7に示した第3実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本変形例の切替弁434は、図7に示した切替弁334と比較して、共用弁体415の軸線方向の長さが短くなっている。これにより、第1弁部311と第2弁部312とがともに開弁する中間状態を形成することが可能となる。つまり、切替弁434は、第1弁部311と第2弁部312とが同時に閉弁する状態がない構成となっている。
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 凝縮器、 4 第1制御弁ユニット、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁ユニット、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 25,26 バイパス通路、 27 第1分岐通路、 28 第2分岐通路、 32 流量制御弁、 42 過冷却度制御弁、 44 差圧弁、 46 逆止弁、 48 過熱度制御弁、 50,52 開閉弁、 54 過熱度制御弁、 100 制御部、 201 車両用冷暖房装置、 242 過冷却度制御弁、 250 差圧弁、 301 車両用冷暖房装置、 304 第1制御弁ユニット、 306 第2制御弁ユニット、 311 第1弁部、 312 第2弁部、 314 ボディ、 315 共用弁体、 320 弁孔、 322 弁座、 324 弁孔、 326 弁座、 334 切替弁、 336 第1弁部材、 338 第2弁部材、 350 切替弁。
Claims (5)
- 冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器と、
前記凝縮器から導出された冷媒を蒸発させる第1の蒸発器と、
前記第1の蒸発器と並列に設けられ、前記凝縮器から導出された冷媒を蒸発させる第2の蒸発器と、
前記凝縮器と前記第1の蒸発器との間に設けられ、前記凝縮器の出口側の過冷却度が設定値となるよう冷媒の流量を調整する過冷却度制御弁と、
前記凝縮器と前記第2の蒸発器との間に設けられ、その開度が外部から電気的に調整される流量制御弁と、
を備えることを特徴とする車両用冷暖房装置。 - 車室内に配置され、前記第1の蒸発器として冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、
車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時に前記第2の蒸発器として冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、
前記室外熱交換器とは別に前記凝縮器として冷媒を放熱させる補助凝縮器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷暖房装置。 - 前記室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに前記圧縮機に対して並列となる第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路が形成され、前記第1冷媒循環通路に前記室内蒸発器が設けられ、前記第2冷媒循環通路に前記室外熱交換器が設けられることを特徴とする請求項2に記載の車両用冷暖房装置。
- 前記室外熱交換器が室外凝縮器として機能するときに、前記圧縮機に対して前記第1冷媒循環通路と並列となる第3冷媒循環通路が形成され、前記第1冷媒循環通路に前記補助凝縮器が設けられ、前記第3冷媒循環通路に前記室外熱交換器が設けられ、
前記第1冷媒循環通路における前記補助凝縮器と前記室内蒸発器との間に、前記補助凝縮器の出口側の過冷却度が第1の設定値となるよう冷媒の流量を調整する第1の過冷却度制御弁が設けられ、
前記第3冷媒循環通路における前記室外熱交換器と前記室内蒸発器との間に、前記室外熱交換器の出口側の過冷却度が第2の設定値となるよう冷媒の流量を調整する第2の過冷却度制御弁が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用冷暖房装置。 - 前記第1の過冷却度制御弁は、閉弁時に冷媒の漏洩を防止する機能を有し、
前記第2の過冷却度制御弁は、閉弁時に所定流量の冷媒の漏洩を許容する機能を有することを特徴とする請求項4に記載の車両用冷暖房装置。
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JP2001050572A (ja) * | 1999-08-06 | 2001-02-23 | Calsonic Kansei Corp | 自動車用空気調和装置 |
JP2009264661A (ja) * | 2008-04-24 | 2009-11-12 | Calsonic Kansei Corp | 空気調和システム |
-
2010
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